経営・税務相談コーナー

新型コロナ感染症対策のための労務/2020年4月号掲載(No.601)

新型コロナ感染症対策のための労務/20204月号掲載(No.601 

質問1 新型コロナウイルス感染症に従業員や患者さんを巻き込むわけにはいかないので、休診にしようと思うのだが、その場合の従業員の給与はどうなるか。

回答1 新型コロナウイルスの感染予防のための休診に関しては20203月時点では事業主都合と判断される可能性が高く、労働基準法第26条では60%の給与の支払いを定めています。パート従業員などは、労働契約に定めている日数や時間を基準とするのが一般的です。仮にこれを破った場合、罰則として、従業員1人当たり30万円以下の罰金が科されます。また、万が一、従業員が罹患した場合は、新型コロナウイルスについては指定感染症となっており、感染症法上の就業不能となりますので、給与の支払い義務はなくなります。感染拡大を考えれば、休診もやむを得ない状況ですが、患者さんも働く従業員も先生の診療所が休診になってしまうと、生活に困る事態になりかねません。まずは、協会ホームページややデンタルブックで最新の情勢を把握していただき、感染対策を万全にして感染拡大を防ぎましょう。 

質問2 新型コロナウイルス感染症による小学校等の休業に関して、従業員に有給休暇を与えるなどの対応をした場合、助成金が受け取れるようになったと聞いたが、どのような制度か。

回答2 227日〜331日までの間に新型コロナウイルス感染症に関する対応として、臨時休業等をした小学校や幼稚園、保育園などに通う子どもの世話を保護者として行うことが必要になった労働者に対し、年次有給休暇とは別に、有給休暇を取得させた事業主に対する助成金が創設されました。助成金は11人当たり8330円を上限とし、事業主に対して給付されます。年次有給休暇や欠勤を事後的に特別休暇に振り替えた場合も対象です。半日単位や時間単位の休暇も対象になります。申請の手続きや詳細については左記QRコードをご覧ください。 

質問3 新型コロナウイルス感染症の対策のため、変形労働時間制を導入したり、変更するにはどうしたらよいか。

回答3 労働基準法第32条の4において労使協定を結び、1年以内の変形期間を平均して1週間あたりの労働時間が44時間(医療機関の特例)を超えない範囲内で、1週に1回の休日が確保される等の条件を満たせば、18時間・144時間の法定労働時間を超えて労働させることができるとされています。新型コロナウイルス感染症に関連して、人手不足のために労働時間が長くなる場合や、労働時間が短くなる場合については、変形労働時間制を導入することも1つです。また、今回の新型コロナウイルス感染症対策により、変形労働時間制を既に採用している診療所において、当初の予定通りに変形労働時間制を実施することが困難となる場合、特例的に改めて協定し直すことも可能と考えられます。ただし、協定の解約が労働者にとって不利益変更にならないよう注意が必要です。

 

従業員募集・採用時の注意点について/2020年3月号掲載(No.600)

従業員募集・採用時の注意点について/20203月号掲載(No.600 

質問1 若い従業員を雇用したいのだが、応募が少ない。年齢を絞って募集してもいいものか。

回答1 基本的に年齢制限を設けることは認められていません。年齢だけで判断せずに、募集に来た方の能力や適性などを個別に判断して採用を決めることが求められています。例外的に、長期勤続によるキャリア形成を図る観点から、期間の定めのない雇用をする場合などは年齢制限を設けることが認められることもあるので、それを踏まえ、募集要項を変更することについて、検討されてみてはいかがでしょうか。 

質問2 歯科衛生士の募集をハローワークで行っているが、応募者が少なく困っている。インターネットを活用したほうが応募は増えるものか。

回答2 最近は業種・年代を問わず、インターネットを活用する方が増えていますので、活用することで応募が増える可能性はあります。また、診療所のホームページなどを事前に見て診療所内の雰囲気などをチェックする人もいます。協会の歯科衛生士の雇用状況についてのアンケートでは、職場や人間関係に対する不安や悩みがあるという回答が多いため、どのような職場環境、診療方針なのかを明確に伝えることでミスマッチの防止が期待できます。そのため、ホームページなどで、診療所の様子や院長や従業員の方たちの紹介などが掲載されていれば、自分自身がどのように働いていけるのかを想像しやすく、応募に前向きになる方が増える可能性があります。しかし、実態と違う内容を掲載した場合には、採用後にトラブルになりますので、どのような内容を掲載するのかを、よく検討したほうがいいでしょう。また、一度採用すると簡単には解雇することはできませんので、採用面接では職場に馴染めるかどうかも慎重に判断しましょう。 

質問3 採用して間もない従業員が退職したいと言ってきた。こちらとしても納得がいかない。まだ、労働条件は通知していないので、給与を減額したうえで退職してもらいたいのだが、問題はないか。

回答3 基本的には、本人の同意なく給与を減額して退職させることはできません。また、労働条件を通知していないとのことですが、労働基準法では、雇用する際に契約期間や更新基準、仕事をする場所と仕事内容、始業・終業時刻、休日・休暇、賃金の決定方法や退職(解雇の事由を含む)などの労働条件を書面で明示することが義務付けられています。これに違反すると三十万円以下の罰金が科せられる可能性がありますので、採用時には必ず書面で労働条件を通知してください。また、本人の同意なく給与を減額すると、労働紛争に発展する可能性もあり、場合により違法と認定される可能性もあります。苦労して採用した従業員が急に来なくなると診療にも影響が出るので、お困りなのはよくわかりますが、そういったトラブルを避けるためにも採用時は条件面などについてよく確認し合い、お互いにギャップが生じないよう努めることが重要です。

 

 

青色事業専従者給与について/2020年2月号掲載(No.599)

青色事業専従者給与について/20202月号掲載(No.599 

質問1 開業を控えている。妻には、診療所で経理や事務などを担当してもらう予定である。妻の給与を専従者給与として扱ったほうがいいとアドバイスを受けたが、どうなのか。また、注意点を伺いたい。

回答1 生計を一にしている配偶者の場合、先生が給与を支払っても原則として必要経費として認められません。しかし、一定の要件を満たすと必要経費と認められる特例があり、それ「青色専従者給与」といいます。この給与の受給者を「青色専従者」といいますが、左記に該当する必要があります。

・先生自身が青色申告者であり、事前に届出書を税務署へ届け出ていること(その適用を受けようとする年の315日までなど個別の期限あり)。

・先生と生計を同一にする親族であること。

・当該年度の1231日に15歳以上であること。

・その該当する人が先生の事業に、6カ月を超える期間において専ら従事していること。

該当する人が15歳以上であっても学生の場合には、その事業に専ら働くことができないため、青色専従者給与として認められないことがあります。そのほか、青色専従者で問題となりやすいのが、該当者が副業をしている場合です。該当者は先生の事業に専ら従事する必要があるため、副業をしていた場合、青色専従者としては認められませんが、副業の日数が少ないなどの理由があれば認められるケースもあります。このように青色専従者となるかは一律に判断することはできませんので、迷った場合には税務署か税理士など専門家に確認していただいたほうがいいでしょう。

 

質問2 妻に青色専従者給与を毎月支払っているが、少額であれば、配偶者控除なども受けることはできるものか。

回答2 先生が青色専従者給与を支払っている場合、給与額が少額であっても所得税・住民税の計算において、配偶者控除や扶養控除は受けられません。配偶者と扶養親族の要件に「青色申告者の事業専従者として、その年を通じて一度も給与の支払を受けていないこと又は白色申告者の事業専従者でないこと」と定められているためです。その年の所得金額によって負担する所得税率が異なりますので、青色専従者給与として必要経費に算入するか、その親族を配偶者控除や扶養控除の対象にして先生の所得金額を減少させ税金を計算するか、さらに専従者の所得金額に対する税額も含めて、どちらが節税効果を期待できるのかを検討された方がいいでしょう。 なお、協会では確定申告に関してポイントをまとめた「保険医の経営と税務―2020年版―」を希望する会員に1冊まで無料にて送りします(5面参照)。書籍をご希望される方は経営管理部までお問い合わせくださいTEL 033205-2999)

 

医療広告のガイドラインについて/2020年1月号掲載(No.598)

医療広告のガイドラインについて/20201月号掲載(No.598 

質問1 一般財団法人日本消費者協会から、「貴医療機関のウェブサイトに関する注意喚起について」という通知が届いた。ホームページの内容がガイドラインに抵触しているとのことだが、どのようにしたらいいか。

回答1 医療に関する広告は、患者等の利用者保護の観点から、「医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針 (医療広告ガイドライン)」が定められており、それに即したものを作成する必要があります。ガイドラインには限定的に認められた事項以外は、原則として広告を禁止すると記載されています。禁止されている内容は

①比較優良広告、②誇大広告、③公序良俗に反する内容の広告、④患者その他の者の主観又は伝聞に基づく、治療等の内容又は効果に関する体験談の広告、⑤治療等の内容又は効果について、患者等を誤認させるおそれがある治療等の前又は後の写真等の広告―とされていますので、以上の項目に抵触しない広告を作成する必要があります。2018年の6月からはホームページも広告の対象とされ、厚労省が委託事業として「医療機関ネットパトロール」を実施しております。今回はそちらのパトロールでホームページが確認され、通知が届いたのだと思われますので、指摘があった箇所を訂正し、ガイドラインに即した内容に変更してください。 

質問2 ホームページなどで、患者さんの治療経過を掲載しようと思うのだが、ガイドラインには抵触しないだろうか。また、ガイドラインに即した内容であれば近隣にポスティングしていいか。

回答2 患者さんの治療経過などは医療広告ガイドラインの禁止広告の「患者その他の者の主観又は伝聞に基づく、治療等の内容又は効果に関する体験談の広告」に該当しますので、基本的には禁止されていますが、写真と一緒に、通常の必要な治療の内容や、費用に関する情報、治療の主なリスク・副作用などといった詳細な説明があれば掲載も可能とされています。リスクの説明などを小さく表記するなど、患者側があえて見づらくするような表記はガイドラインに抵触する可能性が高いので、注意が必要です。ポスティング行為自体は、ガイドラインや法律により規制はされておりませんが、記載内容をガイドラインに即したものにしていても、近隣の他の医院から苦情などが寄せられる可能性もあるため、内覧会や従業員の募集以外の場合は、慎重に実施する必要があります。医療広告のガイドラインに抵触しているかどうかの判断は、内容がそれぞれ異なり、一律に判断することが難しいため、少しでも不安があれば、所管の保健所までご相談ください。

 

賞与・退職金と評価制度年末年始の宴席について/2019年12月号掲載(No.597)

賞与・退職金と評価制度年末年始の宴席について/2019年12月号掲載(No.597)

質問1 スタッフに賞与と退職金は必ず支給しなければならないのか。

回答1 賞与と退職金の支給は、法律上で義務付けられていませんので、必ず支給をしなければいけないというわけではありませんが、就業規則や労働条件通知書等で支給を規定していれば支給義務があります。賞与や退職金の支給など福利厚生面を充実させることは、求人で有利になったり、従業員のモチベーションアップにもつながる面もあります。雇用関係でお悩みであれば導入を検討するのも一つです。

質問2 スタッフに賞与支給を検討している。仕事ぶりを評価して金額に反映させるような評価制度を導入したいのだが、問題はないか。

回答2 評価基準を賞与支給の要件として設けることは法律上、問題はありません。評価方法などでトラブルになってしまう可能性もあるので、導入するのであれば、先生の主観のみで判断しないよう、どういった点を評価しているのか明確にする必要があります。例えば、業務は正確でミスがなかったか、期待されている業務量をこなしたかなど、評価しやすい項目を立てるといいでしょう。評価をするということは人の優劣を決定づけてしまい、職場内の雰囲気を悪くしてしまう可能性もあります。仮に悪い評価を付けざるを得ないケースでも、スタッフとよくコミュニケーションを図り、今抱えている悩みはないか、業務上で困っていること・わからないことはないかなど、今後の改善に向けてアドバイスができるような関係作りをすることが大切です。

質問3 忘年会や新年会などを診療所のスタッフたちと毎年行っているが、まったく参加しないスタッフがいる。原則全員参加としても問題はないか。

回答3 アルコールが入る宴席であっても全員参加とするのであれば労働時間とみなされます。仕事としての位置付けにしないのであれば、参加は任意にされたほうがいいでしょう。忘年会や新年会などの宴席は、仕事中では話しづらいことを話すことができ、仕事中では話しずらいことを話すことができ、職場のコミュニケーションを円滑にする効果も期待できますが、宴席の場で気が緩み、不快に思われる発言や行動をしてしまい、関係が悪化してしまうことも考えられます。せっかくの宴席の場ですので、参加している方全員が楽しめるような配慮を心がけましょう。 なお、働き方改革法などを含んだ労務全般に関わる問題やお悩みに役立つ書籍「医院経営と雇用管理―2019年版―」が今月発刊となりました。希望する会員の先生方には一冊無料でお配りします。また、12月5日には就業規則の作成をテーマに研究会も予定しておりますので、参加ご希望の場合は、経営管理部までお申し込みください。

賞与・退職金と評価制度年末年始宴席への必須参加について/2019年11月号掲載(No.596号)

賞与・退職金と評価制度年末年始宴席への必須参加について

質問1 スタッフに賞与と退職金は必ず支給しなければならないのか。

回答1 賞与と退職金の支給は、法律上で義務付けられていませんので、必ず支給をしなければいけないというわけではありませんが、就業規則や労働条件通知書等で支給を規定していれば支給義務があります。賞与や退職金の支給など福利厚生面を充実させることは、求人で有利になる、あるいは、従業員のモチベーションアップにもつながる面もあります。雇用関係でお悩みであれば導入を検討するのも一案です。

質問2 スタッフに賞与支給を検討している。仕事ぶりを評価して金額に反映させるような評価制度を導入したいのだが、問題はないか。

回答2 評価基準を賞与支給の要件として設けることは法律上、問題はありません。評価方法などでトラブルになってしまう可能性もあるので、導入するのであれば、先生の主観のみで判断しないよう、どういった点を評価しているのか明確にする必要があります。例えば、業務は正確でミスがなかったか、期待されている業務量をこなしたかなど、評価しやすい項目を立てるといいでしょう。評価をするということは人の優劣を決定づけてしまい、職場内の雰囲気を悪くしてしまう可能性もあります。仮に悪い評価を付けざるを得ないケースでも、スタッフとよくコミュニケーションを図り、いま抱えている悩みはないか、業務上で困っていること、分からないことはないかなど、今後の改善に向けてアドバイスができるような関係作りをすることが大切です。

質問3 忘年会や新年会などを診療所のスタッフたちと毎年行っているが、まったく参加しないスタッフがいる。原則、全員参加としても問題はないか。

回答3 アルコールが入る宴席であっても全員参加とするのであれば、労働時間とみなされます。仕事としての位置付けにしないのであれば、参加は任意にされたほうがいいでしょう。忘年会や新年会などの宴席は、仕事中では話しづらいことを話すことができ、職場のコミュニケーションを円滑にする効果も期待できますが、宴席の場で気が緩み、不快に思われる発言や行動をしてしまい、関係が悪化してしまうことも考えられます。せっかくの宴席の場ですので、参加している方全員が楽しめるような配慮を心がけましょう。

なお、働き方改革法などを含んだ労務全般に関わる問題やお悩みに役立つ書籍「医院経営と雇用管理―2019年版―」が完成しています。希望する会員の先生方には一冊無料でお配りします。参加ご希望の場合は、FAXに署名、お名前、会員番号、送付先住所、電話番号をご明記の上、経営管理部宛てにお申し込みください。

事業主都合の休業に伴う給与支払いと就業規則/2019年10月号掲載(No.595号)

事業主都合の休業に伴う給与支払いと就業規則

質問1 台風の影響で、患者の来院およびスタッフの出勤は危険と判断し、急きょ休業とした。この場合、スタッフの給与は支払わなくても良いのか。

回答1 建物の倒壊や浸水などの被害により、診療ができずに休業とした場合、賃金を支払う必要はありませんが、天候不良により休業とした場合は、事業主都合になりますので、賃金を支払う必要があります。労働基準法第26条では「使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の60%以上の手当を支払わなければならない」と定めており、「責に帰すべき事由」とは、法的に責任を取らなければならない事由を指し、例えば、自然災害により通勤できない場合は含まれません。休業とした日が出勤日となっていた場合、パートやアルバイトのスタッフにも賃金を支払う必要があります。「平均賃金」とは、休業日前の3カ月間に支払われた賃金の総額を労働日数で割った金額となり、残業代や通勤手当も含まれます。上記の規定に違反した場合には、経営者に30万円以下の罰金が課せられます。また、就業規則などで取り決めをしていなければ、60%以上の賃金支払を求められる可能性もあります。なお、電車等の交通機関の運休により出勤ができないとスタッフから申出があった場合は、事業主都合ではありません。災害時の対応については、事前に従業員とよく話し合いをし、就業規則上に事業主都合の休業時の取り決めを盛り込むなど、準備を整えておくことが重要です。

質問2 働き方改革関連法を受け、当院でも就業規則を作成することにした。注意点などを教えてほしい。

回答2 就業規則がないため労働条件が明確化されておらず、トラブルになってしまったなどの相談が多く寄せられます。無用なトラブルを避けられるよう、就業規則を作成することをお勧めします。就業規則には必ず記載しなければならない「絶対的必要記載事項」と義務ではない「相対的記載事項」があります。「絶対的記載事項」には、

 ①労働時間に関すること

 ②賃金の決定、計算・支払の方法、賃金の締切り・支払の時期、昇給に関する事項

 ③退職・解雇の事由に関する事項

などがあります。

「相対的記載事項」には、

 ①退職手当に関すること

 ②臨時の賃金(賞与)、最低賃金額に関する事項

 ③スタッフの服務規律に関する事項

 ④カルテや保険証など個人情報の取り扱いに関する事項

などがあります。詳細は、デンタルブックの「経税Q&A 経営管理ニュース」内の「労働条件の通知」をご参照ください。現在就業規則を設けている診療所も、働き方改革関連法に対応したものに見直しをする必要があります。例年、協会では10月から12月頃に就業規則に関する「経営管理研究会」を開催しています。就業規則作成上の注意点や、就業規則の見直しはどのように行うべきかなど、歯科に精通した社会保険労務士を迎え解説していただきます。開催が決まりました際には、機関紙6・7面「研究会・行事のご案内」やこのホームページ、デンタルブック、ファクスニュース「F-nex」に掲載します。ご留意ください。

消費税増税に係る価格表示についての注意点/2019年9月号掲載(No.594号)

消費税増税に係る価格表示についての注意点

質問1 診療所内の窓口で販売している商品などについては、2019年10月1日以降、すべての価格表示を変更する必要があるか。

回答1 価格の表示に関しては、料金表の変更が間に合わないなどの事情を鑑みた特別措置があります。①2019年10月以降も旧税率に基づく価格表示が残る場合や、②前もって表示価格を変更することにより、消費税が上がる前に新税率に基づく価格表示をすることが一時的に認められています。その際は「表示価格の一部は、旧税率8%(もしくは新税率10%)となっています。レジにて精算させていただきます」等の掲示を行う必要があります。旧税率と新税率を併用した価格表示も可能ですが、患者に誤解を与えかねないので、どちらかに統一したほうがよいでしょう。

質問2 2019年10月以降、消費税増税分を据え置こうと考えている。問題はないだろうか。

回答2 消費税分を据え置くことに問題はありませんが、いくつか留意点があります。据え置いたとしても消費税率は10%となりますので、本体価格を調整する必要があります。また、消費税転嫁対策特別措置法では、消費税分を値引きする等の宣伝や広告は禁止されています。そのため「消費税増税分据え置いています」、「消費税還元」、「消費税増税分は当診療所が負担します」などの宣伝広告やキャンペーン等を行うことはできません。医療広告ガイドラインでもそのような広告は禁止されているため、安易に据え置いて患者の誘因を図ることはやめましょう。

質問3 今回の消費税増税に伴い、自費治療の価格調整を行いたいと考えている。その際、注意点があれば教えてほしい。

回答3 消費税増税に便乗した値上げはできません。他に合理的な理由がないにもかかわらず、税率の上昇以上の値上げをすると、便乗値上げと見なされる場合があります。ただし、便乗値上げに該当しないケースもあります。

医院承継について/2019年8月号掲載(No.593号)

医院承継について

質問1 将来的に息子に医院承継をする予定だが、テナントではなく自己所有の土地と建物であり、最近、近隣の土地価格が高騰しているので、相続の際に税金がかかるのではないかと心配になってきた。今年から個人でも事業承継する際に税制優遇が受けられると聞いた。メリットがあれば活用したいので、どのような制度なのか聞きたい。

回答1 2019年度の税制改正で、新しく「個人版事業承継税制」が創設されました。これは、「特定事業用資産」を承継時に贈与・相続した際に、贈与税・相続税の支払いが猶予される、といった制度です。「特定事業用資産」とは、土地建物、固定資産(ユニット、デジタルX線撮影装置、事業用車両など)を指します。なお、「特定事業用資産」として認められるためには、青色申告の決算書への記載が必要です。あくまでも相続税・贈与税の支払いが猶予されるだけであり、「減免」されるわけではありません。また、申請するにあたって、「個人事業承継計画」の提出が必要になります。土地建物限定で相続税・贈与税の負担軽減を考えるのであれば、事業用宅地の評価額が最大で80%減額される「小規模宅地の特例」を活用したほうがメリットが大きい場合もあります。承継の際は先生の現状に沿って、どれが一番有利な制度であるかを勘案した上で制度の活用を検討しましょう。また、協会では月に1度、協会顧問税理士の無料相談を行っています。ぜひ、ご活用ください。

質問2 現在、個人で医院を経営しているが、高齢のため医院承継を考えている。一緒に働いている息子が継ぐ予定なのだが、どのように承継したらいいか。暫くは一緒に働く予定だが、どういった手続きが必要なのか。

回答2 医院承継の手続きに関しては、現院長(以下、「大先生」)は廃業、次期院長(以下、「若先生」)は新規開業の手続きが必要です。それぞれ保健所、厚生局、税務署、労働基準監督署など、必要な行政機関へ届出を行い、開設者・管理者を変更します。届出には、新規と遡及の2種類があり、患者さんを継続して診療する場合は、遡及の届出が必要です。しかし、形式的に開設者・管理者を変更することだけが、医院承継ではありません。大先生が長年診療してきた患者さんは、代替わりにより先生が変更になり、不安に感じるでしょう。円滑に引き継ぐために、日頃から患者さんのカルテなどについて意見交換をしましょう。また、大先生と若先生が、お互いの考えを明確にし、経営理念・治療方針を統一していかなければ、衝突してしまうこともあり、患者さんだけでなくスタッフにも混乱が生じかねません。若先生が勤務医として一緒に診療しているのであれば、1度にすべてを承継するのではなく、徐々に若先生に経営を任せられるように、今までどのような経営理念・治療方針を掲げて診療をしてきたのかを伝えていくといいでしょう。諸手続きの内容の詳細に関しては全国保険医団体連合会発行の「保険医の経営と税務」を参考にしてください。まだ、お手元にない先生は、協会の経営管理部までお問い合わせください。連絡先は、☎03-3205-2999です。

採用・解雇時の留意点/2019年7月号掲載(No.592号)

採用・解雇時の留意点

質問1 本年8月から新たに常勤の歯科衛生士を採用する。採用にあたり、どのような手続きをすればいいか。

回答1 新規採用にあたり、歯科衛生士の場合は保健所に「開設届出事項一部変更届」を提出します。届出は雇い入れから10日以内に行い、氏名や免許番号、就職日の記載が必要になります。添付書類として免許証の原本(照会のため)とコピーが必要です。新規採用が歯科医師の場合は、保健所への届出の他に、関東信越厚生局東京事務所に「保険医療機関・保険薬局の届出事項変更の届出」を提出する必要があります。また、非常勤の従業員を採用する際は、所定労働時間が週20時間以上かつ31日以上雇用する見込みの従業員に関しては雇用保険、1週間の所定労働時間と1カ月の所定労働日数が常勤の従業員と比べ3/4以上の従業員に関しては、雇用保険の他に社会保険の加入が必要です。ただし、社会保険加入に関しては、従業員が常時5人未満の個人立診療所の場合は必要ありません。労災保険に関しては、1人でも従業員を雇用した場合は、必ず手続きをする必要があります。

 

質問2 新規採用時に、従業員に明示する必要のある労働条件の項目を教えてほしい。

回答2 新規採用時の労働条件の明示にあたり、労働基準法に義務付けられている書面に記さなければいけない事項としては、①労働契約の期間、②就業の場所・従事する業務内容、③労働時間に関する事項(始業・終業時間、残業の有無、休憩・休日等)、④賃金、⑤退職に関する事項―の五点です。加えて、パート職員の場合は「昇給の有無」、「退職手当の有無」、「賞与の有無」、「雇用管理の相談窓口」の記載が必要です。有期雇用契約の場合は、書面に①~⑤に加えて「契約更新の基準の明示」が必要です。

 

質問3 新入職員が診療所の職務に合わないため、解雇したい。注意点を。

回答3 まず初めに、解雇が及ぼす影響は他の従業員の不安を煽ることや、解雇する従業員の生活に打撃を与えることを理解した上で、解雇することを検討してください。雇用から2週間以内であれば、事業主都合で特に理由なく解雇することができます。それ以上経過した場合は、社会通念上妥当だと認められる理由と即時解雇の場合、向う1カ月分の解雇予告手当(30日前までの予告なら不要)が発生します。これは有期雇用で更新を前提としている場合にも適用されます。解雇に際しては、できる限り自己都合で退職してもらうように促しましょう。これを退職勧奨と言います。退職勧奨にあたっては、強制的に辞めさせるような言葉は控え、自院に合わない理由を伝え、次の職場のあっせんや失業保険について等の説明、場合によっては退職金の積み増しなどを提示しつつ、従業員の退職後の不安を払拭する努力をしましょう。それでも退職が難しい場合に限り、解雇をします。強制解雇は労働裁判などに発展するケースも多く、社会通念上妥当だと認められない場合、解雇が無効になります。また、事業主都合による解雇になれば、従業員側は早く失業保険をもらえますが、経歴に傷がつく上、事業主側はおおむね半年間雇用に関わる助成金の申請ができなくなります。解雇に踏み切る際は充分に相互理解を深めた上で、行うようにしましょう。

テナントのトラブル~水漏れと家賃値上げ~/2019年6月号掲載(No.591号)

テナントのトラブル~水漏れと家賃値上げ

質問1 ビルの3階で開業した。下の階にも複数のテナントが入っているので、水漏れ発生などの時が心配である。どのような備えをすべきか。

回答1 診療所には水を使う設備が多く、水漏れ事故や配管トラブル等が発生することが多いです。ご相談のように、ビル内での水漏れは、診療所以外のテナントにも被害が出ることが考えられます。例えば、水漏れや配管トラブルが業者のミスであれば、瑕疵担保責任に伴い当該業者に賠償を求めることができますが、民法上の時効は10年(法改正により2020年からは民法上の時効は20年)です。瑕疵によるものだと証明する義務は訴えた側にあるので、証拠となる写真などが必要となります。しかし、年数が経過すると、老朽化によって生じた可能性もあり、業者ミスが原因なのか証明が難しくなります。その場合は診療所内、階下のテナントに対する損害賠償なども含めて、業者側に請求することが難しくなる可能性があります。ビルのテナント内でのトラブルに関しては、契約の中に修繕費の負担について盛り込まれていることが多いため、テナント契約時にはどのような場合に診療所側が費用を負担するのか、十分確認をする必要があります。また、水漏れなどのトラブルで診療所側が負担する契約内容になっている場合は、施設賠償責任保険や店舗総合保険などに加入し、備えることが一般的です。まずはご自身の診療所の契約内容を確認し、どのような備えが必要なのか、見極をしめましょう。

 

質問2 借りているビルの施工ミスなどにより、休診を余儀なくされた場合、損害賠償請求を行うことはできるか。

回答2 施工ミスであれば、オーナー側に補償などを求めることができます。ただし、この場合でも契約締結時に、修繕は借主負担とするなどの文言が含まれている場合は、補償がされない可能性もあります。交わされている契約があまりにも不利な内容であれば、変更することが可能な場合もありますが、オーナー側が変更に応じない場合は、裁判を起こす必要が出てくることがあります。

 

質問3 テナントのオーナーから、近隣の家賃も上昇しているので、次回の契約更新時に賃料を値上げすると通告してきた。この場合、応じなければならないのか。

回答3 賃貸契約更新時の賃料の改定については、借地借家法第32条により、理由なく改定することができないことになっています。近隣の家賃相場などの上昇は、賃料改定の正当な根拠となり得ますが、事実と異なるのであれば応じる必要はありません。オーナーの言い分の根拠となる資料を求めるなど、話し合いの場を設け、こちらには賃上げに応じない意思があることを伝えましょう。それでも賃料の値上げを実施しようとするなど、オーナーとのトラブルに発展しそうであれば、早い段階で弁護士などに相談することをお勧めします。協会では、毎月第3木曜日に法律・税務に関して、専門家による無料相談を実施しておりますので、お困りの際はぜひお問い合わせください。

採用の定着~職場環境の整備を~/2019年5月号掲載(No.590号)

採用の定着~職場環境の整備を~

質問1 新しく採用した従業員がすぐ辞めてしまうのだが、どうしたら良いのか。

回答1 厚生労働省の調査によると、大卒新入社員の3人に1人が3年以内に退職しています。協会にも「採用」をはじめ労務に関する相談が多く寄せられています。従業員採用・定着については、明確な解答がない分、非常に難しく、事業主側は常に頭を悩ませています。では、従業員を上手く指導して離職を防ぐ手立てを講じるにはどうしたら良いか考えてみましょう。

1、採用前とのギャップ防止/やはり、採用前に診療所をよく知ってもらうことが重要です。募集をかける時も、仕事内容、習得できるスキルなど、具体的な記載をすると良いでしょう。診療所の特色を理解して採用に繋がった従業員は「思っていたのと違う」ということは少ないでしょう。

2、従業員を知る/これから一緒に仕事をしていく上で重要なのはチームワークです。従業員のやる気を促すには、相手の事をよく知り円滑な人間関係を築くようにしましょう。

3、失敗できる場を作る/たとえ失敗しても致命的なダメージを受けない場を用意しましょう。「失敗から学べ」とは、昔からよく言われる言葉ですが、立ち直れるチャンスがあってこそです。以上の内容は、あくまでも一例として参考にしていただき、各診療所で創意工夫して対応してください。

 

質問2 従業員が出産や介護などで退職してしまう。再度、採用するにはお金がかかるが、何か良い方法はないか。

回答2 職場環境を支援する取り組みの中に国の助成金があり、生活と仕事の両立を実現しようとする取り組みをしています。助成金とは、採用・環境改善などさまざまな雇用関係の改善を行う企業に対して、一定の要件を満たした場合に国から支給される返済不要なものをいいます。詳しくは、厚生労働省や各自治体のホームページをご参照ください。助成金活用には、表1のような基本的な要件を満たした事業所が対象になります。

なお、年度(4月1日~翌年3月31日)で区切って助成金の新設や廃止が決定されるため、次年度分は改定される場合もありますので、確認が必要となります。

※注意/助成対象の診断および受給額の無料査定をするといった記載の書面を一方的に送付することによって、助成金の活用を勧誘する業者の情報が寄せられています。厚生労働省や労働局、ハローワークは、このような勧誘に関与していませんので、充分にご注意ください。

 

 

休日手当と時間外労働について/2019年4月号掲載(No.589)

休日手当と時間外労働について

 質問1 本年5月の大型連休で従業員に勤務をさせた場合、休日手当は付けなければいけないのか。また、つけなくても良いケースを教えてください。

 回答1 割増賃金については、労働基準法第37条に時間外労働は125%、深夜労働は125%、時間外深夜労働は150%、休日労働は135%、休日深夜労働は160%、60時間越えの時間外労働は150%、60時間越え時間外深夜労働は175%の割増賃金を支払わなければならないと定められています。労働者の数が300人未満の事業所については、2023年3月31日まで60時間越えの割増賃金の支払い及び引き上げ分の支払いに代わる休暇の付与の適用が猶予されます。今回の大型連休で休日手当の対象となるのは、医院として休日をどう定めているかが焦点になります。詳しくは、このコーナーの2019年2月1日号(No.587)「  2019年5月の10連休の労務対応について」本欄、もしくはデンタルブック内のコンテンツをご覧ください。また、大型連休中の勤務が休日手当の対象となる場合、その日の振替休日を別に設けることで、休日手当の付与を避けることができるケースもあります。ただし、これには就業規則への明記、もしくは労働者への周知が必要になります。明記や周知のない場合、労働者側の訴えがあれば過去2年分の休日出勤手当の賠償をしなければなりません。

 質問2 振替休日と代休の違いについて教えてください。

 回答2 振替休日は事前に労働者と使用者との個別合意によって休日と労働日の位置を変更することをいいます。これには就業規則への明記、もしくは労働者への周知が必要です。これにより、あらかじめ休日と定められた日が労働日となり、その代わりとして振り替えられた日が休日となります。ただし、振り替えたことによって、その週の労働時間が一週間の法定労働時間を超えた場合は、時間外労働分の割増賃金の支払いが必要になります。代休は休日労働が行われた場合、その代償として以後の特定の労働日を休みとするものであって、前もって休日を振り替えたことにはなりません。したがって、休日労働分の割増賃金を支払う必要があります。

 質問3 当院では従業員は原則定時で帰ってもらっているが、普段からどうしても勤務時間を過ぎて労働をしてもらわなければいけないことがある。8時間は超えていないのだが、取り扱いは時間外労働になるのか。

 回答3 法律では8時間を超えた段階から時間外の支払い義務が生じます。所定労働時間が7時間で残業を1時間した場合、超過した1時間分の賃金を支払う必要はありますが、割増をつける必要はありません。ただし、会社の就業規則に所定労働時間を超えた場合に時間外手当を支給するなどの文言があれば、そちらに従い、1時間の時間外手当を支給する必要があります。どのような取り扱いをしてきたかによる労使慣行なども優先されますので、取り扱いは就業規則に明記するといいでしょう。

定期健康診断と結核健診について/2019年3月号掲載(No.588)

定期健康診断と結核健診について

 質問1 労働基準監督署から「健康診断個人票」を提示するよう連絡があった。これまで、当院では従業員に健康診断を受けさせていないのだが、必ず受けさせなければならないものか。法的根拠、および罰則規定などはあるか。

 回答1 常時使用する労働者(正職員および一週間の所定労働時間が正職員の1週間の所定労働時間の3/4以上であればパートも含む)が1人でもいる場合は、1年に1度、健康診断を受けさせなければいけません。「労働安全衛生法第66条」には「事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による健康診断を行なわなければならない」と記載があります。また、健康診断の実施結果については、健康診断個人票を作成し、5年間保存しなければいけません。従業員に健康診断を受診させる義務を果たしていないとみなされる場合は、事業主に対し、従業員1人につき50万円以下の罰金が科せられることがあります。

 質問2 健康診断の費用負担は、事業主側で負わなければならないのか。

 回答2 健康診断を受けさせるのは事業主の義務になりますので、事業主が費用負担すべきものとされています。ただし、従業員が事業主側の用意した場所以外での健康診断を希望する場合は、従業員負担でも問題ありません。また、再検査やオプション検査などは原則として、事業主で負担する必要はありません。受診に要する時間については、労使間の協議によって賃金が発生するかどうかを定めるべきとされていますが、事業主側が義務としていることを勘案すれば、受診に要する時間の賃金を事業主が支払うことが望ましいでしょう。健康診断の費用に関しては、福利厚生費として経費扱いすることができますので、受けさせた後は必ず領収書をもらうようにしましょう。

 質問3 保健所から結核の定期健康診断(結核健診)の報告を出してほしいというお知らせが届いた。これは義務なのか。また、従業員から胸部エックス線検査を受けたくないという声があるのだが、受けさせなくても良いか。

 回答3 現行法規では、歯科医療機関の従業員は結核健診を受ける義務があります。これは、歯科医療機関が「感染症法で結核に係る健康診断の対象とされている施設」に指定されているためです。結核健診は、結核の罹患率が高い者や結核を発病すると周囲に感染させるおそれが高い者等に対する健康診断の実施を義務付けることにより、結核を早期に発見し、集団感染を防ぐことを目的としており、健康診断同様、1年に1度、必ず受けさせる必要があります。最近は相談事例のように保健所からの連絡が来たというご相談が増えています。「平成29年結核登録者情報調査年報集計結果」によれば、全体の結核罹患患者数は減少しているのに対して、医療従事者の結核罹患者は若干の増加傾向にあり、感染予防の観点からも、結核健診に対する呼びかけが行われているのかと考えられます。検査を受けられない事情があるという従業員がいる場合は、管轄の保健所に相談して対応してください。

  2019年5月の10連休の労務対応について/2019年2月号掲載(No.587)

  2019年5月の10連休の労務対応について

 質問1 2019年5月のゴールデンウィークは10連休になると新聞で見たが、もし連休中に診療し、従業員を働かせた場合には、休日手当などをつける必要があるのか。

 回答1 2019年5月1日に新天皇の即位の礼が行われます。政府はこの日を2019年限りの祝日としました。「国民の祝日に関する法律(祝日法)」の第3条3項に「その前日及び翌日が『国民の祝日』である日(『国民の祝日』でない日に限る。)は、休日とする」とあり、2019年に限り、4月29日、5月1日、5月3日が祝日であることから、間に挟まれた4月30日、5月2日も休日という扱いになりました。これにより、4月27日㈯から5月6日㈪の振替休日までの十日間が、完全週休二日制を取る多くの会社で休日となりました。これが2019年5月に10連休が発生する理由です。従業員の休日の取り扱いは、各診療所の就業規則や労使慣行に従うことになります。例えば、就業規則上で休日の定義を「国民の祝日及び国民の祝日に関する法律で定める休日」と掲げている場合や、普段から振替休日を休日扱いしている場合は、祝日法で定められている「休日」を休みにしているため、十連休中の祝日でない休日については法律通り休日扱いになり、勤務をさせるのであれば、休日手当の支給対象となります。就業規則上で「国民の祝日」のみを休日としている場合や、普段から振替休日などに関係なく診療をしている場合は、祝日法に定められている「休日」を休み扱いとしていないので、十連休中の祝日でない休日については普段通り平日扱いとなります。就業規則がどのように定められているか、もしくは普段からどのような扱いをしているかによって、休日になるか否かが決まるため、よく確認してから、対応をしてください。

 

 質問2 今まで就業規則上で休日を「国民の祝日及び国民の祝日に関する法律で定める休日」としていたが、これを「国民の祝日」のみに変更することは可能か。

 回答2 労働者と使用者の合意により、労働条件は変更することができますが、不利益変更に当たる場合は、「変更後の就業規則を労働者に周知させた」ことに加え、「就業規則の変更が合理的なものである」という要件を満たさなければいけません。勝手に変更したり、理由なく変更を一方的に通知した場合などは、労働基準法違反に問われ、罰則を科せられる可能性もあります。休日の取り扱いを変更しないと診療所の経営が成り立たなくなってしまう、もしくは休日の取り扱いを変更したほうほうが、従業員にとってメリットが大きいなどの理由がない限りは、変更を求めることは難しいと考えられます。

   2019年4月以降の有給休暇取得義務について/2019年1月号掲載(No.586)

   2019年4月以降の有給休暇取得義務について

 質問1 労働基準法の改正により、従業員の年次有給休暇の取得が義務化されたが、歯科医療機関でも有給休暇の取得は必ずさせなければいけないか。

 回答1 2019年4月から、歯科医療機関でも、使用者は年次有給休暇の日数が10日以上付与される従業員に対し、5日間は必ず与えなければいけないことになりました。あわせて年次有給休暇の管理簿の作成も義務化されました。これを守らない場合、労基法第39条違反となり、罰則規定「6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金」の対象になる場合があり、罰則は労働者ごとに適用されます。従業員の現在の就労状況や年次有給休暇の付与日数(下記有休付与日数表参照)をよく確認してください。

 質問2 年次有給休暇の日数が10日以上付与される労働者とは、昨年の繰越分も含めて有給休暇の権利が10日以上ある場合も含まれるのか。

 回答2 年次有給休暇付与の付与日に10日以上の年次有給休暇を付与する従業員が対象で、繰越分も含め10日以上になる場合は含まれません。例えば、週所定労働日数四日、週所定労働時間30時間未満のパート社員は、全労働日数の8割以上出勤した場合、入社後6カ月で年次有給休暇を7日、その1年後に8日を付与され、年次有休休暇の日数は繰越分を含めて10日以上となりますが、5日間の取得義務は発生しません。

 質問3 5日間の年次有給休暇は夏休みにまとめて取得させられるか。また、年次有給休暇の付与要件に合致しない新入職員の取り扱いについて。

 回答3 労使協定を締結することにより、5日間については年次有給休暇の計画的付与として、一斉付与をすることができます。ただし、夏休みを今まで有給休暇扱いしていない場合(休日の規定などに夏休みを入れていた等)、有給休暇の5日間を消化することは労働条件の不利益変更にあたりますので、事前に従業員との協議が必要になります。夏休みに年次有給休暇の一斉付与を行う場合、まだ年次有給休暇が付与されていない新入職員については、その日数を特別休暇(有給)扱いにするか、または事業主都合による休業扱いとして、平均賃金の六割以上の休業手当を支払うかして賃金面で不利益にならないような措置を講じる必要があります。協会では1月23日に経営管理研究会を開催します。有給休暇取得義務化を含め、労務について歯科に精通した社労士に対策などをお話していただきます。労務について不安がある、これからの対策について勉強したい先生はこの機会にぜひご参加ください。

2018年分の年末調整とマイナンバー制度/2019年12月号掲載(No.351)

2018年分の年末調整とマイナンバー制度

 質問1 2018年分の年末調整について、変更点や注意点をご教示いただきたい。

 回答1 今年から配偶者控除および配偶者特別控除の取り扱いが変更されました。合計所得金額が1000万円を超える所得者については、配偶者控除の適用を受けることはできないこととされました。また、配偶者特別控除の対象となる配偶者の合計所得金額が38万円超123万円以下とされ、控除額の変更も行われています。詳しくは、国税庁のホームページをご確認ください。配偶者控除につきましては、夫婦の双方がお互いに配偶者特別控除の適用を受けることはできませんので、いずれか一方の配偶者は、この控除を受けることはできません。手続き上も、今までは「給与所得者の保険料控除申告書兼給与所得者の配偶者特別控除申告書」の1種類を提出すればよかったものが、2018年分は、「給与所得者の保険料控除申告書」と「給与所得者の配偶者控除等申告書」の2種類の様式の提出が必要になりましたのでご注意ください。

 質問2 年末調整の書類の中にマイナンバー記載が必要な書類がある。マイナンバーは従業員から必ず集めなければならないか。

 回答2 マイナンバー法により、事業主は従業員のマイナンバーを収集し、社会保険関係の届出や税務署への提出書類に従業員のマイナンバーを記載することが義務となっています。政府は提出されたマイナンバーについて、預金口座との結びつけや、健康保険証と一体化する方策などを提案しており、事業主の管理責任は重大なものとなってきていますが、従業員にマイナンバーの提出を拒否された場合、記載せずに提出することもできます。収集できなかったことによる罰則は今のところはなく、税務署もマイナンバーの記載がなくても書類は受け取ると回答しています。事業主として、収集は努力義務なので、マイナンバーの提供を拒否された場合、収集に努めたが収集できなかった旨を必ず記録として残してください。

 質問3 年末調整のマイナンバーの取り扱いで歯科医院における実務の種類について。

 回答3 事業主が個人番号関係事務の実施者となり、①マイナンバーの取得・本人確認、②利用・管理、③マイナンバーの提供、のそれぞれの実務を実施します。①の従業員のマイナンバーの取得については前述の通りですが、提出を受けた際には本人のもので間違いがないか、運転免許証や住民票などで確認を行う必要があります。ただし、従業員の扶養家族については扶養者である従業員に本人確認義務があるので、事業主が行う必要はありません。 ②のマイナンバーの利用について、番号法で定められている利用範囲を超えて利用することはできないため、利用範囲をあらかじめ本人に伝える必要があります。管理については漏えいを防ぐために厳重な管理が必要になり、漏えいした場合は罰則の対象になる可能性があります。③のマイナンバーの提供とは従業員のマイナンバーを含む特定個人情報を第三者へ開示することです。ただし、事業主が特定個人情報を第三者へ提供できるのは番号法第19条に定められている場合に限定されます。当該法に該当しない場合は要求を拒否する必要があります。

知っていますか?租税特別措置法第26条/2019年11月号(No.350号掲載)

知っていますか?租税特別措置法第26条

質問1 租税特別措置法第26条(以下、「措置法26条」)を適用すると、節税対策になるという話を聞いたのだが、措置法26条とはどのような内容なのか。

 回答1 措置法は「租税特別措置法」を指し、その中の第26条では医療機関の事業所得を計算する場合、年間の社会保険診療報酬の額が5000万円以下であれば、特例計算により概算経費により所得を計算することができることを定めています。原則、必要経費は実際にかかった金額で計算しますが、社会保険診療報酬に関する必要経費については概算で計算することを認めることで、歯科医師、医師が業務に集中できるようにするために定められたといわれています。措置法26条の「社会保険診療報酬の所得計算の特例」の適用を受けるためには「1年間の社会保険診療収入が5000万円以下であること」、「自由診療収入なども含めた1年間の総収入金額が7000万円以下であること」の2つの要件を満たす必要があります。仮に措置法26条の適用を受けながら要件を満たしていなかった場合は、修正申告などをしなければいけないことになるので、十分注意しましょう。

 質問2 措置法26条を使うとどのような節税効果が得られるのか。

 回答2 措置法26条を適用した場合は、社会保険診療収入にかかる必要経費について、実際に発生した金額の代わりに、次の算式によって計算した概算経費金額を用います。

   「 社会保険診療収入 ×概算経費率 + 加算額 =概算経費金額 」

概算経費率は別表の通りです。例えば、社会保険診療収入が3200万円の場合、

「3200万円×62%+290万円=2274万円」

となり、社会保険診療収入にかかる必要経費が2274万円未満でも、2274万円を必要経費として計上することができます。社会保険診療収入が多いほど、概算経費率が上がるため、自院の自費と保険の収入を比較し、計算式に当てはめて適用するかどうかを判断してください。措置法26条を使用する場合は、税務調査の際に必要経費などのチェックがあることが多いため、記帳は正確に行うようにしましょう。税務調査の連絡が来た際の対応方法について「保険医への税務調査―心構えと対応のポイント―2018年改訂版」が発行されました。ご希望の先生には一冊無料で配布しております。

消費税増税に係る価格表示についての注意点/2019年10月号(No.359)より

消費税増税に係る価格表示についての注意点

 

質問1 院内の窓口で販売している商品などについては、10月1日以降、すべての価格表示を変更する必要があるか。

回答1 価格の表示に関しては、料金表の変更が間に合わないなどの事情を鑑みた特別措置があります。①10月以降も旧税率に基づく価格表示が残る場合や、②前もって表示価格を変更することにより、消費税が上がる前に新税率に基づく価格表示をすることが一時的に認められています。その際は「表示価格の一部は、旧税率8%(もしくは新税率10%)となっています。レジにて精算させていただきます」等の掲示を行う必要があります。旧税率と新税率を併用した価格表示も可能ですが、患者に誤解を与えかねないので、どちらかに統一したほうがよいでしょう。

質問2 10月以降、消費税増税分を据え置こうと考えている。問題はないだろうか。

回答2 消費税分を据え置くことに問題はありませんが、いくつか留意点があります。据え置いたとしても消費税率は10%となりますので、本体価格を調整する必要があります。また、消費税転嫁対策特別措置法では、消費税分を値引きする等の宣伝や広告は禁止されています。そのため「消費税増税分据え置いています」「消費税還元」「消費税増税分は当診療所が負担します」などの宣伝広告やキャンペーン等を行うことはできません。医療広告ガイドラインでもそのような広告は禁止されているため、安易に据え置いて患者の誘因を図ることはやめましょう。

質問3 今回の消費税増税に伴い、自費治療の価格調整を行いたいと考えている。その際、注意点があれば教えてほしい。

回答3 消費税増税に便乗した値上げはできません。他に合理的な理由がないにもかかわらず、税率の上昇以上の値上げをすると、便乗値上げと見なされる場合があります。ただし、以下のようなケースは便乗値上げに該当しません。

◆便乗値上げには該当しないケース◆

Ⅰ.あるものについては据え置きとする反面、あるものについては2%を超える値上げとなっていても、事業全体の値上げ率が税率変更に見合った転嫁となっている。

Ⅱ.消費税納税が免除されている診療所が、仕入価格に含まれる税額を転嫁する。

 

働き方改革関連法対応!労務のトラブルシューティング本!「医院経営と雇用管理-2019年版-」発刊!

『医院経営と雇用管理』の改訂版が3年ぶりに発刊されました!既に多くの先生から注文をいただき好評をいただいております。

2019年4月から、有給休暇5日間取得義務化やパート・アルバイトの同一賃金の規定など、労務について大きな変更がありました。これらの働き方改革法に対応した内容を丁寧に解説しています。また、社会保険の手続きや就業規則のひな形なども掲載しており、実務に沿った内容でご利用いただけます。

【会員の先生方へ】

ご希望の先生に、1冊まで無料でお送りします(2冊目以降は1冊1,500円での有料販売となります)。新規にご入会いただいた先生にも、入会特典として1冊贈呈いたします。書籍をご希望の方は、会員番号、氏名、診療所名、郵送先住所、電話番号、書籍名を記載の上、経営管理部までFAX(03-3209-9918)をお願いします。[box] 〔目次〕

第1章 職員雇用に必須の労働法・パート関係法令 -労働基準法・労働契約法・パート労働法のポイント-

第2章 求人と採用・試用期間

第3章 職場における規律

第4章 労働時間・休憩時間

第5章 休日・休暇

第6章 賃金

第7章 安全衛生・健康管理

第8章 労働保険・社会保険

第9章 女性に関する特別規制

第10章 育児・介護休業制度

第11章 ハラスメント

第12章 退職・解雇 -労働契約の終了ー

第13章 懲戒

第14章 就業規則の意義と記載事項 各種様式集/参考資料[/box]  

日々の帳簿の整理や確定申告などのポイントを分かりやすく解説!「保険医の経営と税務-2020年版-」発刊!

税務の最新情報を盛り込んだ『保険医の経営と税務-2020年版-』が発刊されました!

「税制改正の主要点」として、2019年分確定申告のポイントや医業所得の計算、措置法、診療所の開業から継承、閉院における各種手続きもわかりやすく解説しています。医療機関の収入に関する課税関係、控除額等計算一覧表、確定申告書の記載例など、確定申告に役立つ情報が登載されておりますので、申告の際にはぜひご活用ください。

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第1章 医業所得計算と日常業務

第2章 共済制度と税金

第3章 消費税

第4章 開業・承継・閉院

第5章 相続税・贈与税

第6章 スタッフの税務と給与実務の留意点

第7章 勤務医師の税務

第8章 地方税の計算

☆付録:確定申告書の記載例、財産債務調書、控除額等計算一覧表、税務調査対応の心得 10のポイント[/box]  

10月からの消費税増税~その対応と留意点について/機関紙2019年9月1日号(No.360)より

10月からの消費税増税~その対応と留意点について 

 

☆はじめに☆

10月より消費税が8%から10%へ増税されました。今後、医療機関の「損税」負担はますます大きくなることは必至です。協会は消費税増税を中止し、医療機関に「ゼロ税率」の適用を求める会員署名に取り組んできており、引き続き、医療への「ゼロ税率」適用を求めていきますが、今回の増税に関する医療機関の対応について会員から相談が寄せられていますので、その留意点についてQ&Aの形式でご紹介します。

 

◆経費編◆

質問1 毎月、翌月分のテナント料の支払いをしており、9月末に10月分のテナント料を支払うことになっている。額面は変わっていないのだが、内訳消費税は何%になるのか。

回答1 10%になります(経過措置の適用が受けられる場合は8%)。

【解説】前払い費用は、実際に支払った時期ではなく、役務(サービス)の提供があった時に費用計上します。したがって、9月中に10月分のテナント料を支払ったとしても費用計上は10月となり、消費税は10%なります。ただし下記の「質問2」の条件を満たす場合には、経過措置が適用されます。 

 

質問2 テナント料、駐車場代といった消費税の課税対象となる不動産の賃貸について、101日以降であっても旧税率の8%が適用される条件があると聞いたが、どのようなものか。

回答2 条件を満たす場合は、「経過措置」の適用を受けることができます。

【解説】2019331日以前に契約を締結していて、19101日以降も継続して賃貸する場合において、当該契約の内容が以下のA・BまたはA・Cの要件に該当する場合は旧税率8%が適用されます。

A.当該契約に係る資産の貸付期間、および対価の額が定められていること。

B.事業者の事情等により、対価の額を変更できる旨が定められていないこと。

C.契約期間中に解約の申入れをすることができる旨の定めがないこと。 

 

質問3 201991日に1年間の機器のメンテナンス契約をするとともに、1年分のメンテナンス料金を支払った。消費税はどうなるか。

回答3 原則として10%です。

【解説】消費税法基本通達(915)では、メンテナンス契約など物の引渡しを要しない契約については、役務の全部を完了した日が譲渡の時期とされています。事案では役務の全部が完了する日は1年後の20831日となり、原則として新税率である10%適用されます。しかし、契約または慣行により、業者が消費税増税の施行日の前日(19930日)までに売上に計上している場合は、旧税率8%を適用して差し支えありません。請求書等を見ても分からない時は、業者に問い合わせることをお薦めします。

 

質問4 材料の注文を9月中に行った。業者は9月中に出荷したが、納品は10月以降になった場合、消費税は何%か。

回答4 業者の売上計上日によって変わります。

【解説】基本的に、新税率か旧税率かが決まるのは「商品の引渡日がいつか」によって変わります。「引渡日」の判定基準は「出荷日」、「納品日(種類・数量等を点検して受け取る)などいくつか種類があります。そのため、その業者が普段「出荷日」に売上を計上している場合は8%で、「納品日」に売上を計上している場合は10%となります。請求書を見てもわからない時は、業者に問い合わせることをお薦めします。 

◆収入編◆

質問5 91日以前に仕入れた歯ブラシを10月以降に販売した。販売価格に対する消費税はどうなるか。

回答5 10%となります。

【解説】新消費税法は施行日以後に行われる資産の譲渡、および課税仕入れについて適用されます。したがって、101日より前に仕入れた歯ブラシについての消費税は8%であっても、診療所が101日以降に患者へ販売する場合の消費税は10%となります。

 

質問6 9月中に自費治療の契約を結んでおけば、治療が10月以降であったとしても消費税は8%でよいのか。

回答6 10%となります。

【解説9月中に治療契約を結んでいたとしても、10月以降に治療すれば消費税は10%となります。契約の際にその旨を伝えるように注意しましょう。

 

質問7 9月に治療契約を結び、見積書に基づく治療費を10月に受領した。自費の補綴物のセットは10月になったが、消費税は何%か。

回答7 10%となります。

【解説】口腔内にセットした日が役務の提供日となります。9月中に代金を受領していたとしても、売上に計上するタイミングは口腔内にセットをした日となり、消費税は10%となります。なお、9月中に受領した代金はいったん「前受金」、「預り金」等として、会計処理は口腔内にセットした時に「売上高」へ振替えすることになります。

 

 

質問8 9月にインプラントの埋入まで行い、10月に上部構造を入れた。このような場合、消費税はどうなるか。

回答8 10%となります。

【解説】消費税法基本通達(915)では、物の引渡しを要する場合、譲渡の時期は『目的物の全部を完成して相手に引き渡した日』となっています(下図参照)。したがって、10月に上部構造を入れたときが完成となり、その時点で売上に計上しますので、消費税は10%となります。

 

 

 

 

 

 

 

質問9 9月中に治療が終了した。患者の都合もあり代金の支払は10月になった。消費税は何%となるか。

回答9 8%となります。

【解説】代金の支払いは10月ですが、役務である治療の終了は9月であることから消費税は8%になります。会計上、医院では治療の終了にともない「未収金」、「売掛金」等として売上に計上する必要があります。10月以降、患者から受領した代金は「未収金」、「売掛金」の回収となります。

 

質問10 9月中に矯正治療の契約をして治療が始まった。矯正装置の装着は10月以降となる。消費税はどうなるか。

回答10 矯正装置の装着時に全額を受領する場合は10%です。それ以外の方法で受領する場合は、以下の解説に示す日付による消費税率となります。

【解説】 国税庁では、矯正装置の装着時に全額を受領しない場合、収入の時期を次のようにしています。

Ⅰ.期間の経過又は役務の提供の程度等に応じて、所定の基本料等を請求し受領することとしている場合には、その期間が経過した日又はその役務の提供を了した日。

Ⅱ.支払日が定められている場合にはその支払日。

Ⅲ.支払日が定められていない場合には、その支払を受けた日(請求により支払う場合にはその請求の日)。

Ⅳ.支払日が矯正治療を完了した日後とされているものは、矯正治療を完了した日。

 

◆消費税対策政策編◆

質問11 消費税増税対策として、キャッシュレス決済をした際、5%ポイント還元を受けることができると聞いたが、診療所もポイント還元の対象になるか。

回答11 保険医療機関は五%ポイント還元の対象にはなっていません。

【解説】まず初めに、保険医療機関であっても診療所にクレジットカードや電子マネーなどのキャッシュレス決済の導入をすることはできます。しかし、今回政府が進めている「キャッシュレス・消費者還元事業」では保険医療機関は対象外とされており、5%ポイント還元を受けることはできません。自由診療(保険医療機関以外の医療機関で行うものを含む)についても同様に対象外とされています。

 

質問12 プレミアム付商品券の取り扱い事業所についてのチラシが届いた。保険医療機関も取扱事業所となってプレミアム付商品券を使用することができるのか。

回答12 保険医療機関も取扱事業者になることができます。

【解説】プレミアム付商品券は、消費税増税に伴い、低所得者、子育て世帯の消費に与える影響を緩和し、地域における消費の喚起・下支えを目的として、導入が予定されています。2019101日から20331日までの期間で金券として使用でき、取扱事業所になった保険医療機関では、一部負担金などの支払いに充てることが可能です。ただし、プレミアム付商品券を使用した支払いに関しては、お釣りが出せませんので、取扱には注意が必要です。詳細については、保険医療機関のある各区市町村にお問い合わせください。

 

質問13 歯科診療所に関わる軽減税率については、どのようなものがあるか。

回答13 食品表示法で定める飲食料品が軽減税率の対象になります。

【解説】例えば窓口で販売しているガムなどの飲食料品については8%の軽減税率の対象となります。売上げ(本則課税の場合は仕入れも)を税率ごとに区分して税額計算を行う必要があります。10%の税率となる商品(歯ブラシ等)と一緒に販売する場合は領収書にそれぞれの消費税率の記載が必要です。

 

医院承継について/2019年8月号(No.359)より

医院承継について

 

質問1 将来的に息子に医院承継をする予定だが、テナントではなく自己所有の土地と建物であり、最近、近隣の土地価格が高騰しているので、相続の際に税金がかかるのではないかと心配になってきた。今年から個人でも事業承継する際に税制優遇が受けられると聞いた。メリットがあれば活用したいので、どのような制度なのか聞きたい。

回答1 2019年度の税制改正で、新しく「個人版事業承継税制」が創設されました。これは、「特定事業用資産」を承継時に贈与・相続した際に、贈与税・相続税の支払いが猶予される、といった制度です。「特定事業用資産」とは、土地建物、固定資産(ユニット、デジタルX線撮影装置、事業用車両など)を指します。なお、「特定事業用資産」として認められるためには、青色申告の決算書への記載が必要です。あくまでも相続税・贈与税の支払いが猶予されるだけであり、「減免」されるわけではありません。また、申請するにあたって、「個人事業承継計画」の提出が必要になります。土地建物限定で相続税・贈与税の負担軽減を考えるのであれば、事業用宅地の評価額が最大で80%減額される「小規模宅地の特例」を活用したほうがメリットが大きい場合もあります。承継の際は先生の現状に沿って、どれが一番有利な制度であるかを勘案した上で制度の活用を検討しましょう。また、協会では月に一度、協会顧問税理士の無料相談を行っています。ぜひ、ご活用ください。

 

質問2 現在、個人で医院を経営しているが、高齢のため医院承継を考えている。一緒に働いている息子が継ぐ予定なのだが、どのように承継したらいいか。暫くは一緒に働く予定だが、どういった手続きが必要なのか。

回答2 医院承継の手続きに関しては、現院長(以下、「大先生」)は廃業、次期院長(以下、「若先生」)は新規開業の手続きが必要です。それぞれ保健所、厚生局、税務署、労働基準監督署など、必要な行政機関へ届出を行い、開設者・管理者を変更します。届出には、新規と遡及の二種類があり、患者さんを継続して診療する場合は、遡及の届出が必要です。しかし、形式的に開設者・管理者を変更することだけが、医院承継ではありません。大先生が長年診療してきた患者さんは、代替わりにより先生が変更になり、不安に感じるでしょう。円滑に引き継ぐために、日頃から患者さんのカルテなどについて意見交換をしましょう。また、大先生と若先生が、お互いの考えを明確にし、経営理念・治療方針を統一していかなければ、衝突してしまうこともあり、患者さんだけでなくスタッフにも混乱が生じかねません。若先生が勤務医として一緒に診療しているのであれば、一度にすべてを承継するのではなく、徐々に若先生に経営を任せられるように、今までどのような経営理念・治療方針を掲げて診療をしてきたのかを伝えていくといいでしょう。諸手続きの内容の詳細に関しては全国保険医団体連合会発行の「保険医の経営と税務―2019年版―」を参考にしてください。まだ、お手元にない先生は、協会の経営管理部までお問い合わせください。

採用・解雇時の留意点/2019年7月号(No.358)より

採用・解雇時の留意点

 

質問1 本年8月から新たに常勤の歯科衛生士を採用する。採用にあたり、どのような手続きをすればいいか。

回答1 新規採用にあたり、歯科衛生士の場合は保健所に「開設届出事項一部変更届」を提出します。届出は雇い入れから10日以内に行い、氏名や免許番号、就職日の記載が必要になります。添付書類として免許証の原本(照会のため)とコピーが必要です。新規採用が歯科医師の場合は、保健所への届出の他に、関東信越厚生局東京事務所に「保険医療機関・保険薬局の届出事項変更の届出」を提出する必要があります。また、非常勤の従業員を採用する際は、所定労働時間が週20時間以上かつ31日以上雇用する見込みの従業員に関しては雇用保険、1週間の所定労働時間と1カ月の所定労働日数が常勤の従業員と比べ4分の3以上の従業員に関しては、雇用保険の他に社会保険の加入が必要です。ただし、社会保険加入に関しては、従業員が常時5人未満の個人立診療所の場合は必要ありません。労災保険に関しては、1人でも従業員を雇用した場合は、必ず手続きをする必要があります。

 

質問2 新規採用時に、従業員に明示する必要のある労働条件の項目を教えてほしい。

回答2 新規採用時の労働条件の明示にあたり、労働基準法に義務付けられている書面に記さなければいけない事項としては、①労働契約の期間、②就業の場所・従事する業務内容、③労働時間に関する事項(始業・終業時間、残業の有無、休憩・休日等)、④賃金、⑤退職に関する事項―の5点です。加えて、パート職員の場合は「昇給の有無」、「退職手当の有無」、「賞与の有無」、「雇用管理の相談窓口」の記載が必要です。有期雇用契約の場合は、書面に①~⑤に加えて「契約更新の基準の明示」が必要です。

 

質問3 新入職員が診療所の職務に合わないため、解雇したい。注意点を。

回答3 まず初めに、解雇が及ぼす影響は他の従業員の不安を煽ることや、解雇する従業員の生活に打撃を与えることを理解した上で、解雇することを検討してください。雇用から2週間以内であれば、事業主都合で特に理由なく解雇することができます。それ以上経過した場合は、社会通念上妥当だと認められる理由と即時解雇の場合、向う1カ月分の解雇予告手当(30日前までの予告なら不要)が発生します。これは有期雇用で更新を前提としている場合にも適用されます。解雇に際しては、できる限り自己都合で退職してもらうように促しましょう。これを退職勧奨と言います。退職勧奨にあたっては、強制的に辞めさせるような言葉は控え、自院に合わない理由を伝え、次の職場のあっせんや失業保険について等の説明、場合によっては退職金の積み増しなどを提示しつつ、従業員の退職後の不安を払拭する努力をしましょう。それでも退職が難しい場合に限り、解雇をします。強制解雇は労働裁判などに発展するケースも多く、社会通念上妥当だと認められない場合、解雇が無効になります。また、事業主都合による解雇になれば、従業員側は早く失業保険をもらえますが、経歴に傷がつく上、事業主側はおおむね半年間雇用に関わる助成金の申請ができなくなります。解雇に踏み切る際は充分に相互理解を深めた上で、行うようにしましょう。

 

テナントのトラブル~水漏れと家賃値上げ/2019年6月号(No.357)より

テナントのトラブル~水漏れと家賃値上げ

 

質問1 ビルの3階で開業した。下の階にも複数のテナントが入っているので、水漏れ発生などの時が心配である。どのような備えをすべきか。

回答1 診療所には水を使う設備が多く、水漏れ事故や配管トラブル等が発生することが多いです。ご相談のように、ビル内での水漏れは、診療所以外のテナントにも被害が出ることが考えられます。例えば、水漏れや配管トラブルが業者のミスであれば、瑕疵担保責任に伴い当該業者に賠償を求めることができますが、民法上の時効は10(法改正により2020年からは民法上の時効は20年)です。瑕疵によるものだと証明する義務は訴えた側にあるので、証拠となる写真などが必要となります。しかし、年数が経過すると、老朽化によって生じた可能性もあり、業者ミスが原因なのか証明が難しくなります。その場合は診療所内、階下のテナントに対する損害賠償なども含めて、業者側に請求することが難しくなる可能性があります。ビルのテナント内でのトラブルに関しては、契約の中に修繕費の負担について盛り込まれていることが多いため、テナント契約時にはどのような場合に診療所側が費用を負担するのか、十分確認をする必要があります。また、水漏れなどのトラブルで診療所側が負担する契約内容になっている場合は、施設賠償責任保険や店舗総合保険などに加入し、備えることが一般的です。まずはご自身の診療所の契約内容を確認し、どのような備えが必要なのか、見極をしめましょう。

 

質問2 借りているビルの施工ミスなどにより、休診を余儀なくされた場合、損害賠償請求を行うことはできるか。

回答2 施工ミスであれば、オーナー側に補償などを求めることができます。ただし、この場合でも契約締結時に、修繕は借主負担とするなどの文言が含まれている場合は、補償がされない可能性もあります。交わされている契約があまりにも不利な内容であれば、変更することが可能な場合もありますが、オーナー側が変更に応じない場合は、裁判を起こす必要が出てくることがあります。

 

質問3 テナントのオーナーから、近隣の家賃も上昇しているので、次回の契約更新時に賃料を値上げすると通告してきた。この場合、応じなければならないのか。

回答3 賃貸契約更新時の賃料の改定については、借地借家法第32条により、理由なく改定することができないことになっています。近隣の家賃相場などの上昇は、賃料改定の正当な根拠となり得ますが、事実と異なるのであれば応じる必要はありません。オーナーの言い分の根拠となる資料を求めるなど、話し合いの場を設け、こちらには賃上げに応じない意思があることを伝えましょう。それでも賃料の値上げを実施しようとするなど、オーナーとのトラブルに発展しそうであれば、早い段階で弁護士などに相談することをお勧めします。協会では、毎月第3木曜日に法律・税務に関して、専門家による無料相談を実施しておりますので、お困りの際はぜひお問い合わせください。

 

採用の定着~職場環境の整備を~/2019年5月号(No.356)より

採用の定着~職場環境の整備を~

 

質問1 新しく採用した従業員がすぐ辞めてしまうのだが、どうしたら良いのか。

回答1 厚生労働省の調査によると、大卒新入社員の3人に1人が3年以内に退職しています。協会にも「採用」をはじめ労務に関する相談が多く寄せられています。従業員採用・定着については、明確な解答がない分、非常に難しく、事業主側は常に頭を悩ませています。では、従業員を上手く指導して離職を防ぐ手立てを講じるにはどうしたら良いか考えてみましょう。

1、採用前とのギャップ防止:やはり、採用前に診療所をよく知ってもらうことが重要です。募集をかける時も、仕事内容、習得できるスキルなど、具体的な記載をすると良いでしょう。診療所の特色を理解して採用に繋がった従業員は「思っていたのと違う」ということは少ないでしょう。

2、従業員を知る:これから一緒に仕事をしていく上で重要なのはチームワークです。従業員のやる気を促すには、相手の事をよく知り円滑な人間関係を築くようにしましょう。

3、失敗できる場を作る:たとえ失敗しても致命的なダメージを受けない場を用意しましょう。「失敗から学べ」とは、昔からよく言われる言葉ですが、立ち直れるチャンスがあってこそです。以上の内容は、あくまでも一例として参考にしていただき、各診療所で創意工夫して対応してください。

 

質問2 従業員が出産や介護などで退職してしまう。再度、採用するにはお金がかかるが、何か良い方法はないか。

回答2 職場環境を支援する取り組みの中に国の助成金があり、生活と仕事の両立を実現しようとする取り組みをしています。助成金とは、採用・環境改善などさまざまな雇用関係の改善を行う企業に対して、一定の要件を満たした場合に国から支給される返済不要なものをいいます。詳しくは、厚生労働省や各自治体のホームページをご参照ください。助成金活用には、基本的な要件を満たした事業所が対象になります。なお、年度(41日~翌年331日)で区切って助成金の新設や廃止が決定されるため、次年度分は改定される場合もありますので、確認が必要となります。

※注意:助成対象の診断および受給額の無料査定をするといった記載の書面を一方的に送付することによって、助成金の活用を勧誘する業者の情報が寄せられています。厚生労働省や労働局、ハローワークは、このような勧誘に関与していませんので、充分にご注意ください。

 

休日手当と時間外労働について/2019年4月号(No.355)より

休日手当と時間外労働について

 

1 本年五月の大型連休で従業員に勤務をさせた場合、休日手当は付けなければいけないのか。また、つけなくても良いケースを教えてください。

1 基準法第37条に時間外労働は125%、深夜労働は125%、時間外深夜労働は150%、休日労働は135%、休日深夜労働は160%、60時間越えの時間外労働は150%、60時間越え時間外深夜労働は175%の割増賃金を支払わなければならないと定められています。労働者の数が300人未満の事業所については、2023331日まで60時間越えの割増賃金の支払い及び引き上げ分の支払いに代わる休暇の付与の適用が猶予されます。今回の大型連休で休日手当の対象となるのは、医院として休日をどう定めているかが焦点になります。詳しくは、第587号本紙(201921日号)本欄、もしくはデンタルブック内のコンテンツをご覧ください。また、大型連休中の勤務が休日手当の対象となる場合、その日の振替休日を別に設けることで、休日手当の付与を避けることができるケースもあります。ただし、これには就業規則への明記、もしくは労働者への周知が必要になります。明記や周知のない場合、労働者側の訴えがあれば過去2年分の休日出勤手当の賠償をしなければなりません。

 

2 振替休日と代休の違いについて教えてください。

2 振替休日は事前に労働者と使用者との個別合意によって休日と労働日の位置を変更することをいいます。これには就業規則への明記、もしくは労働者への周知が必要です。これにより、あらかじめ休日と定められた日が労働日となり、その代わりとして振り替えられた日が休日となります。ただし、振り替えたことによって、その週の労働時間が一週間の法定労働時間を超えた場合は、時間外労働分の割増賃金の支払いが必要になります。代休は休日労働が行われた場合、その代償として以後の特定の労働日を休みとするものであって、前もって休日を振り替えたことにはなりません。したがって、休日労働分の割増賃金を支払う必要があります。

 

3 当院では従業員は原則定時で帰ってもらっているが、普段からどうしても勤務時間を過ぎて労働をしてもらわなければいけないことがある。8時間は超えていないのだが、取り扱いは時間外労働になるのか。

3 法律では8時間を超えた段階から時間外の支払い義務が生じます。所定労働時間が7時間で残業1時間をした場合、超過した1時間分の賃金を支払う必要はありますが、割増をつける必要はありません。ただし、会社の就業規則に所定労働時間を超えた場合に時間外手当を支給するなどの文言があれば、そちらに従い、1時間の時間外手当を支給する必要があります。どのような取り扱いをしてきたかによる労使慣行なども優先されますので、取り扱いは就業規則に明記するといいでしょう。