新型コロナ感染症対策のための労務/2020年4月号掲載(No.601)

新型コロナ感染症対策のための労務/20204月号掲載(No.601 

質問1 新型コロナウイルス感染症に従業員や患者さんを巻き込むわけにはいかないので、休診にしようと思うのだが、その場合の従業員の給与はどうなるか。

回答1 新型コロナウイルスの感染予防のための休診に関しては20203月時点では事業主都合と判断される可能性が高く、労働基準法第26条では60%の給与の支払いを定めています。パート従業員などは、労働契約に定めている日数や時間を基準とするのが一般的です。仮にこれを破った場合、罰則として、従業員1人当たり30万円以下の罰金が科されます。また、万が一、従業員が罹患した場合は、新型コロナウイルスについては指定感染症となっており、感染症法上の就業不能となりますので、給与の支払い義務はなくなります。感染拡大を考えれば、休診もやむを得ない状況ですが、患者さんも働く従業員も先生の診療所が休診になってしまうと、生活に困る事態になりかねません。まずは、協会ホームページややデンタルブックで最新の情勢を把握していただき、感染対策を万全にして感染拡大を防ぎましょう。 

質問2 新型コロナウイルス感染症による小学校等の休業に関して、従業員に有給休暇を与えるなどの対応をした場合、助成金が受け取れるようになったと聞いたが、どのような制度か。

回答2 227日〜331日までの間に新型コロナウイルス感染症に関する対応として、臨時休業等をした小学校や幼稚園、保育園などに通う子どもの世話を保護者として行うことが必要になった労働者に対し、年次有給休暇とは別に、有給休暇を取得させた事業主に対する助成金が創設されました。助成金は11人当たり8330円を上限とし、事業主に対して給付されます。年次有給休暇や欠勤を事後的に特別休暇に振り替えた場合も対象です。半日単位や時間単位の休暇も対象になります。申請の手続きや詳細については左記QRコードをご覧ください。 

質問3 新型コロナウイルス感染症の対策のため、変形労働時間制を導入したり、変更するにはどうしたらよいか。

回答3 労働基準法第32条の4において労使協定を結び、1年以内の変形期間を平均して1週間あたりの労働時間が44時間(医療機関の特例)を超えない範囲内で、1週に1回の休日が確保される等の条件を満たせば、18時間・144時間の法定労働時間を超えて労働させることができるとされています。新型コロナウイルス感染症に関連して、人手不足のために労働時間が長くなる場合や、労働時間が短くなる場合については、変形労働時間制を導入することも1つです。また、今回の新型コロナウイルス感染症対策により、変形労働時間制を既に採用している診療所において、当初の予定通りに変形労働時間制を実施することが困難となる場合、特例的に改めて協定し直すことも可能と考えられます。ただし、協定の解約が労働者にとって不利益変更にならないよう注意が必要です。