経営・税務相談コーナー

休日手当と時間外労働について/2019年4月号(No.355)より

休日手当と時間外労働について

 

1 本年五月の大型連休で従業員に勤務をさせた場合、休日手当は付けなければいけないのか。また、つけなくても良いケースを教えてください。

1 基準法第37条に時間外労働は125%、深夜労働は125%、時間外深夜労働は150%、休日労働は135%、休日深夜労働は160%、60時間越えの時間外労働は150%、60時間越え時間外深夜労働は175%の割増賃金を支払わなければならないと定められています。労働者の数が300人未満の事業所については、2023331日まで60時間越えの割増賃金の支払い及び引き上げ分の支払いに代わる休暇の付与の適用が猶予されます。今回の大型連休で休日手当の対象となるのは、医院として休日をどう定めているかが焦点になります。詳しくは、第587号本紙(201921日号)本欄、もしくはデンタルブック内のコンテンツをご覧ください。また、大型連休中の勤務が休日手当の対象となる場合、その日の振替休日を別に設けることで、休日手当の付与を避けることができるケースもあります。ただし、これには就業規則への明記、もしくは労働者への周知が必要になります。明記や周知のない場合、労働者側の訴えがあれば過去2年分の休日出勤手当の賠償をしなければなりません。

 

2 振替休日と代休の違いについて教えてください。

2 振替休日は事前に労働者と使用者との個別合意によって休日と労働日の位置を変更することをいいます。これには就業規則への明記、もしくは労働者への周知が必要です。これにより、あらかじめ休日と定められた日が労働日となり、その代わりとして振り替えられた日が休日となります。ただし、振り替えたことによって、その週の労働時間が一週間の法定労働時間を超えた場合は、時間外労働分の割増賃金の支払いが必要になります。代休は休日労働が行われた場合、その代償として以後の特定の労働日を休みとするものであって、前もって休日を振り替えたことにはなりません。したがって、休日労働分の割増賃金を支払う必要があります。

 

3 当院では従業員は原則定時で帰ってもらっているが、普段からどうしても勤務時間を過ぎて労働をしてもらわなければいけないことがある。8時間は超えていないのだが、取り扱いは時間外労働になるのか。

3 法律では8時間を超えた段階から時間外の支払い義務が生じます。所定労働時間が7時間で残業1時間をした場合、超過した1時間分の賃金を支払う必要はありますが、割増をつける必要はありません。ただし、会社の就業規則に所定労働時間を超えた場合に時間外手当を支給するなどの文言があれば、そちらに従い、1時間の時間外手当を支給する必要があります。どのような取り扱いをしてきたかによる労使慣行なども優先されますので、取り扱いは就業規則に明記するといいでしょう。

 

定期健康診断と結核健診について /2019年3月号(No.354)より

定期健康診断と結核健診について 

1 労働基準監督署から「健康診断個人票」を見せるよう連絡があった。これまで、当院では従業員に健康診断を受けさせていないのだが、必ず受けさせなければならないものか。法的根拠、および罰則規定などはあるか。

1 常時使用する労働者(正職員および1週間の所定労働時間が正職員の1週間の所定労働時間の4分の3以上であればパートも含む)が1人でもいる場合は、1年に1度、健康診断を受けさせなければいけません。「労働安全衛生法」には「事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による健康診断を行なわなければならない」と記載があります。また、健康診断の実施結果については、健康診断個人票を作成し、5年間保存しなければいけません。従業員に健康診断を受診させる義務を果たしていないとみなされる場合は、事業主に対し、従業員1人につき50万円以下の罰金が科せられることがあります。 

2 健康診断の費用負担は、事業主側で負わなければならないのか。

2 健康診断を受けさせるのは事業主の義務になりますので、事業主が費用負担すべきものとされています。ただし、従業員が事業主側の用意した場所以外での健康診断を希望する場合は、従業員負担でも問題ありません。また、再検査やオプション検査などは原則として、事業主で負担する必要はありません。受診に要する時間については、労使間の協議によって賃金が発生するかどうかを定めるべきとされていますが、事業主側が義務としていることを勘案すれば、受診に要する時間の賃金を事業主が支払うことが望ましいでしょう。健康診断の費用に関しては、福利厚生費として経費扱いすることができますので、受けさせた後は必ず領収書をもらうようにしましょう。 

3 保健所から結核の定期健康診断(結核健診)の報告を出してほしいというお知らせが届いた。これは義務なのか。また、従業員から胸部エックス線検査を受けたくないという声があるのだが、受けさせなくても良いか。

3 現行法規では、歯科医療機関の従業員は結核健診を受ける義務があります。これは、歯科医療機関が「感染症法で結核に係る健康診断の対象とされている施設」に指定されているためです。結核健診は、結核の罹患率が高い者や結核を発病すると周囲に感染させるおそれが高い者等に対する健康診断の実施を義務付けることにより、結核を早期に発見し、集団感染を防ぐことを目的としており、健康診断同様、1年に1度必ず受けさせる必要があります。最近は相談事例のように保健所からの連絡が来たというご相談が増えています。「平成29年結核登録者情報調査年報集計結果」によれば、全体の結核罹患患者数は減少しているのに対して、医療従事者の結核罹患者は若干の増加傾向にあり、感染予防の観点からも、結核健診に対する呼びかけが行われているのかと考えられます。検査を受けられない事情があるという従業員がいる場合は、管轄の保健所に相談して対応してください。

 

2019年5月の10連休の労務対応について/2019年2月号(No.353)より

20195月の10連休の労務対応について

Q1 20195月のゴールデンウィークは10連休になると新聞で見たが、もし連休中に診療し、従業員を働かせた場合には、休日手当などをつける必要があるのか。

1 201951日に新天皇の即位の礼が行われます。政府はこの日を2019年限りの祝日としました。「国民の祝日に関する法律(祝日法)」の第33項に「その前日及び翌日が『国民の祝日』である日(『国民の祝日』でない日に限る。)は、休日とする」とあり、2019年に限り、429日、51日、53日が祝日であることから、間に挟まれた430日、52日も休日という扱いになりました。これにより、427日㈯から56日㈪の振替休日までの10日間が、完全週休二日制を取る多くの会社で休日となりました。これが20195月に10連休が発生する理由です。従業員の休日の取り扱いは、各診療所の就業規則や労使慣行に従うことになります。例えば、就業規則上で休日の定義を「国民の祝日及び国民の祝日に関する法律で定める休日」と掲げている場合や、普段から振替休日を休日扱いしている場合は、祝日法で定められている「休日」を休みにしているため、10連休中の祝日でない休日については法律通り休日扱いになり、勤務をさせるのであれば、休日手当の支給対象となります。就業規則上で「国民の祝日」のみを休日としている場合や、普段から振替休日などに関係なく診療をしている場合は、祝日法に定められている「休日」を休み扱いとしていないので、10連休中の祝日でない休日については普段通り平日扱いとなります。就業規則がどのように定められているか、もしくは普段からどのような扱いをしているかによって、休日になるか否かが決まるため、よく確認してから、対応をしてください。 

2 今まで就業規則上で休日を「国民の祝日及び国民の祝日に関する法律で定める休日」としていたが、これを「国民の祝日」のみに変更することは可能か。

2 労働者と使用者の合意により、労働条件は変更することができますが、不利益変更に当たる場合は、「変更後の就業規則を労働者に周知させた」ことに加え、「就業規則の変更が合理的なものである」という要件を満たさなければいけません。勝手に変更したり、理由なく変更を一方的に通知した場合などは、労働基準法違反に問われ、罰則を科せられる可能性もあります。休日の取り扱いを変更しないと診療所の経営が成り立たなくなってしまう、もしくは休日の取り扱いを変更したほうほうが、従業員にとってメリットが大きいなどの理由がない限りは、変更を求めることは難しいと考えられます。

 

2019年4月以降の有給休暇取得義務について/2019年1月号:No.352

2019年4月以降の有給休暇取得義務について

Q1 労働基準法の改正により、従業員の年次有給休暇の取得が義務化されたが、歯科医療機関でも有給休暇の取得は必ずさせなければいけないか。

A1 2019年4月から、歯科医療機関でも、使用者は年次有給休暇の日数が10日以上付与される従業員に対し、5日間は必ず与えなければいけないことになりました。あわせて年次有給休暇の管理簿の作成も義務化されました。これを守らない場合、労基法第39条違反となり、罰則規定「6か月以下の懲役または30万円以下の罰金」の対象になる場合があり、罰則は労働者ごとに適用されます。従業員の現在の就労状況や年次有給休暇の付与日数をよく確認してください。

Q2 年次有給休暇の日数が10日以上付与される労働者とは、昨年の繰越分も含めて有給休暇の権利が10日以上ある場合も含まれるのか。

A2 年次有給休暇付与の付与日に10日以上の年次有給休暇を付与する従業員が対象で、繰越分も含め10日以上になる場合は含まれません。例えば、週所定労働日数4日、週所定労働時間30時間未満のパート社員は、全労働日数の8割以上出勤した場合、入社後6カ月で年次有給休暇を7日、その1年後に8日を付与され、年次有休休暇の日数は繰越分を含めて10日以上となりますが、5日間の取得義務は発生しません。

Q3 5日間の年次有給休暇は夏休みにまとめて取得させられるか。また、年次有給休暇の付与要件に合致しない新入職員の取り扱いについて。

A3 労使協定を締結することにより、5日間については年次有給休暇の計画的付与として、一斉付与をすることができます。ただし、夏休みを今まで有給休暇扱いしていない場合(休日の規定などに夏休みを入れていた等)、有給休暇の5日間を消化することは労働条件の不利益変更にあたりますので、事前に従業員との協議が必要になります。夏休みに年次有給休暇の一斉付与を行う場合、まだ年次有給休暇が付与されていない新入職員については、その日数を特別休暇(有給)扱いにするか、または事業主都合による休業扱いとして、平均賃金の六割以上の休業手当を支払うかして賃金面で不利益にならないような措置を講じる必要があります。協会では1月23日に経営管理研究会を開催します。有給休暇取得義務化を含め、労務について歯科に精通した社労士に対策などをお話していただきます。労務について不安がある、これからの対策について勉強したい先生はこの機会にぜひご参加ください。

広告についての留意点/機関紙2017年9月1日号(№570号)より 

広告についての留意点

質問1 歯科医院が広告宣伝する際、広告と広告でないものの区別はどうすればいいのか。

回答1 法律上、歯科医業は営利目的ではないものとされており、公衆衛生に大きく関わるものであるため、医療法により、広告に制限がかけられています。厚生労働省より出されている「医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関して広告し得る事項等及び広告適正化のための指導等に関する指針(医療広告ガイドライン)」によると、


①患者の受診等を誘因する意図があること(誘因性)。
②医業若しくは歯科医業を提供する者の氏名若しくは名称又は病院若しくは診療所の名称が特定可能であること(特定性)。
③一般人が認知できる状態にあること(認知性)。


の3点を満たすものが広告に該当するとされています。一方、広告に当たらないものとして、

①新聞や雑誌などでの掲載(新聞が特集した治療法の記事などであり、その歯科医院における改善率など広告が認められていない事項が含まれていないものを広告に引用又は掲載することも認められています)。
②患者自らが自発的かつ無報酬で記載する体験談や手記。
③希望する者にのみ配布する院内掲示やパンフレット。
④歯科医院と直接関係のある者の申出に応じて送付するパンフレットや電子メール。

を挙げています。また、以前は規制対象外であったウェブサイトも2017年7月の医療法改正により、比較広告や誇大広告、客観的事実が証明できない広告等が広告規制の対象になりましたので、ご留意ください。

質問2 広告できない事項についてご教示願いたい。

回答2 医療広告ガイドラインより比較広告、誇大広告、広告を行うものが客観的事実であることを証明できない広告、公序良俗に反する内容の広告については、広告することが禁止されています。また、標榜できる診療科名については厚生労働大臣の許可を受けたもののみとされているため、歯科、小児歯科、矯正歯科、歯科口腔外科以外の標榜は認められていません。なお、インプラント治療については「自由診療のうち医薬品医療機器等法の承認又は認証を得た医療機器を用いる検査、手術、その他の治療の方法」に該当することから、「公的医療保険が適用されない旨」と「治療に掛かる標準的な費用」が併記されていれば、広告が可能であるとされています。

質問3 具体的にどのような表現を広告に用いることが医療法に抵触するのか、ご教示を。

回答3 例えば「最高」「最良」などの比較表現、「無痛治療」などの客観的な事実であるか証明できないもの。患者が元気になっていく様子を書いたイラストなど効果に関する事項。アンチエイジングなど診療科名として認められていないものなどが挙げられます。医療法上、正しいか否か判断がつかない場合は、管轄の保健所に確認してから広告を出すのがいいでしょう。

 

医療安全対策と保健所の検査/機関紙2017年8月1日号(№569号)より 

医療安全対策と保健所の検査 

質問1 医療機関の管理者は、医療の安全を確保するための措置をすることが医療法で規定されていると聞いたのだが、具体的にどのようなことをすればよいか。

回答1 医療機関の管理者は、医療の安全を確保するための指針の策定、従業員に対する研修の実施をはじめとする医療の安全を確保するための措置を講じなければならないことが、医療法施行規則第6条の10に規定されています。具体的措置としては、①医療安全管理、②院内感染対策、③医薬品安全管理、④医療機器安全管理-の4項目の体制確保が義務付けられており、指針の策定や職員・従業員の研修、事故報告などを行わなければいけません。下記表をご参照ください。なお、①~④の指針の例示をご希望の方も、協会までお問い合わせください。

質問2 個人診療所で開業して6年になる。まだ当院は保健所の立ち入り検査が入っていないのだが、5年に1度、立ち入り検査が入ると友人から聞いた。そろそろ立ち入り検査が入るのではないかと考えているのだが、どのような準備をすべきか。

回答2 保健所の立ち入り検査は、無床の診療所について「できる限り実施する事」とされていますが、大くの歯科医療機関は無床の診療所に当たると思います。しかし、5年に1度という規定はありません。ただ、いつ立ち入り検査が入ってもおかしくはないので、日頃から医療安全対策には万全を期しましょう。主に以下の点には十分に注意してください。


①院内掲示物が広告規制に反していないか(心配であれば保健所に確認する)。
②カルテなどがきちんと整理されているか、保管場所は施錠されているか。
③劇薬の保管は鍵のかかる保管場所を確保しているか、それ以外の薬品と一緒に保管していないか。
④消火器の期限や避難経路の確保はされているか。
⑤エックス線装置・エックス線漏洩テスト・サーベイ・メーターによる漏洩テストは行われているか。
⑥医療安全管理に関する指針、院内感染対策、医療品安全管理、医療機器安全管理の指針の作成などはできているか。
⑦健康診断は行っているか。
⑧産業廃棄物関連は整理されているか。
⑨個人情報保護に関しては規約を作って周知してい るか。
⑩技工指示書の内容の確認はできているか。


 医療安全管理対策に関するものは、患者さんの安全を守ること同時に、従業員や先生ご本人を守ることにもつながります。日頃から管理体制を整え、安心安全の歯科診療所を目指しましょう。

個人情報管理における 注意事項/機関紙2017年7月1日号(№568号)より 

個人情報管理における注意事項

質問1 最近は、個人情報保護法に関する報道が多いこともあり、患者の個人情報に対する意識も高くなっている。患者の個人情報管理には、どのような点に注意すべきか。

回答1 個人情報とは、個人情報保護法第2条に示された、生存する個人に関する情報であり、当該情報に含まれる氏名、生年月日、その他の記述などにより個人を特定できるもの(ほかの情報と容易に照合することができ、それにより特定の個人を識別することができるもの)と定められています。2017年5月30日の同法の改正に伴い、取り扱いデータ5000件以下の歯科医療機関も個人情報保護法の対象となったため、規模の大小に関わらず個人情報の管理には十分に配慮するする必要があります。もし、情報管理を適切に行わず、情報流出が起これば、社会的評価の低下のみではなく、守秘義務違反などの損害賠償を請求されるおそれもあります。ただし、個人情報保護法などでは管理についての詳細が規定がされているわけではありません。あくまでも適切なルールに基づき、管理されているかが問題となります。最近では「個人情報保護規定」を独自に設け、公表している歯科医療機関も増加しています。厚生労働省が発表している「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取り扱いのためのガイダンス」も個人情報保護規定を作成することを勧めています。安全管理措置として、保管場所やデータの保存日時の記録、責任者の公表、個人情報の漏洩時の対応など、ガイダンスに沿った規定を設けるのがよいでしょう。

質問2 従業員が退職することになったのだが、個人情報の漏洩が心配だ。どのような対策をとるべきか。

回答2 退職に当たり、誓約書を書いてもらい、歯科医療機関で知り得た情報の一切を口外しないことを誓約させるのが望ましいです。秘密保持誓約書などを書かせることで、情報流出に対する心理的制約をかけ、少しでも情報流出を防ぐように心がけましょう。また、入職の際にも個人情報についての取り決めの説明をしたり、従業員にデータの持ち帰りなどをさせないことが重要です。近年では、大手通信会社などでも、従業員が自宅にデータを持ち帰り、情報が流出してしまう事件などが起きています。未然に防ぐために、取り扱いのルールをしっかり決めておきましょう。

質問3 診療所を廃業する際の個人情報の取り扱いについて、ご教示願いたい。

回答3 個人情報保護法には、保管期間についての特段の定めはありませんが、医療法には、カルテに関しては管理者が五年間保管する義務を定めています。また、歯科診療所には個人情報を含む帳票類が多く、個人情報保護法の対象如何に関わらず、保管期間が定められているものが多く存在するため、廃業後も法定の保管期間は個人情報を管理する必要があります。法定期間を過ぎても、患者からの訴訟などに備えるためにも、民法上の法的責任がある十年間は、引き続き管理することをお勧めします。

リース契約・委託契約などに関する注意点/機関紙2017年6月1日号(№567号)より 

リース契約・委託契約などに関する注意点

質問1 ユニットなどの設備をリース契約しようと検討中。リース契約を利用する際の注意点をご教示願いたい。

回答1 リース契約とはリース会社が借主の希望する設備・物品を購入し、リース物件の購入金額とリース取引の諸費用を借主が分割してリース料として支払う契約のことです。医療機器は高価なものが多いため、高額な資金が必要となりますが、リース契約であれば一括で支払う金額を抑えることができ、リース料金もすべて経費として処理できます。リース契約は初期費用面のメリットは大きいですが、リース料にかかる金利や契約終了時におけるリース物件の買い取りの可否、保証期間経過後の修理費用などについて該当する契約条項を確認しておく必要があります。リース物件は購入するわけではないので、固定資産税や機器等に対する損害保険料がかからず、減価償却費を計算する必要もありません。ただし、保証期間終了後の修理やメンテナンスは借主の負担になることが多いため、リース物件が使用できなくなった場合の代替機を使用できるか、メンテナンスの費用負担がどちら側にあるかなど、契約条項を十分に確認することが必要です。また、医療機器を購入した場合の税法上の特別償却が受けられない上に、リース会社が当該医療機器を購入し、購入代金をリース代金として支払う形式なので、原則として中途解約できません。閉院した後もリース料金を支払い続けなければならない場合があるので、あらかじめ注意が必要です。また、リース契約の支払いをカード会社を通して行っていたところ、契約中に倒産し、カード会社に対する支払いだけが残ってしまった等のトラブルが過去に何度もあるので、契約を交わす際はリース会社の信用性調査も行うのが良いでしょう。リース物件の所有権はリース会社にあるので、リース契約の継続をしたい場合は再リース契約として契約を延長する必要があります。

質問2 医療廃棄物の処理業者と委託契約を交わすのだが、医療廃棄物の処理に関する委託契約に関し、詳細をご教示願いたい。

回答2 歯科医療機関が感染性廃棄物の処理を業者に委託する場合は、事前に廃棄物処理法に定められている主に以下の内容に沿った委託契約を交わす必要があります。

 


①運搬については運搬業者に、処分については処分業者にそれぞれ委託しなければならない、
②契約は業者と書面により直接締結しなければならない、
③契約書には委託する感染性廃棄物の種類および数量をはじめ、一定の事項についての条項が含まれていなければならない、
④医療関係機関などは、業者が都知事または東京都内で保健所を設置する区市長から感染性廃棄物の収集・運搬または処理業の許可を受けたものであることを確認しなければならない。また、歯科医療機関は業者に感染性廃棄物を引き渡す際に、廃棄物の種類、数量、性状 取り扱い方法などを記載した産業廃棄物管理表(マニフェスト)を交付 し、適正に処理されたことを業者から返送されるマニフェストで確認しなければならない。

 

以上のことが定められています。

テナントをめぐる オーナーとのトラブル/機関紙2017年5月1日号(№566号)より 

テナントをめぐる オーナーとのトラブル

質問1 歯科医院のテナントオーナーから家賃の値上げを言い渡された。最近は周辺の建物の賃料が上がっているとのことで、それに伴う値上げを行いたいそうだ。値上げを拒むことはできるか。

回答1 借地借家法第32条より、建物の賃料が土地や建物の租税や価格、その他の経済事情の変動、または近くの同種の建物と比較して不相当となった時は、契約の条件に関わらず、当事者は賃料の額の増減を請求することができると定められています。ただし、一定期間建物の賃料を増額しない旨の特約がある場合には、その定めに従うことになるので、まずは契約書を見直しましょう。今回のケースでは周辺地域の経済事情の変動による賃料の値上げを求めているため、近隣の賃貸物件などの相場がどの程度のものかを把握し、交渉するときの参考にしてください。

質問2 テナントオーナーから「最近患者さんが増えているようなので、賃料を上げさせてもらってもいいか」と言われ、困惑している。実際はそれほど患者さんが増えておらず、値上げされては困るのだが、どう対応すべきか。

回答2 値上げの請求については、借地借家法第32条より借主の許可がなくとも行うことができますが、必ず応じなければいけないわけではありません。値上げに応じたくない場合は双方で話し合いの場を持ちましょう。話し合いの期間は従前の家賃の支払いを行ってください。支払いがない場合は家賃不払いで契約を解除される可能性があります。賃料の交渉が折り合わず、従前の家賃をオーナーが受け取らない場合は、家賃を供託金として供託所に納めることで、家賃不払いによる立ち退きを免れることができます。話し合いや調停で合意がなされない場合、裁判により適正な家賃を決めてもらうことになります。

質問3 新しいオーナーに代わり「分譲マンションにしたいので、テナントを購入するか、立ち退いてくれ」と言われている。この要求には必ず応じなければならないか。

回答3 立ち退きや購入に応じる義務はありません。立ち退きについては、借地借家法第28条より、正当な事由がなければ認められません。今回のケースは、どうしても分譲にしたいので立ち退いてもらいたいということであれば、オーナー側が借主側に立ち退き料を支払うことで正当事由を補完する必要があります。購入の依頼についても、オーナー側の都合になりますので、応じる必要はありません。最近は、テナントに関する相談が多く寄せられています。思わぬところで日常診療の妨げを作らないためにも、契約を行う時は、契約書の内容をしっかり確認した上で行いましょう。また、この機会にぜひ、契約内容を再度ご確認ください。協会では月に一度、無料で顧問弁護士による法律相談を行っていますので、お困りの際はぜひ、協会経営管理部までご相談ください(電話/03―3205―2999)。

採用時の留意点/機関紙2017年4月1日号(№565号)より 

採用時の留意点

質問1 4月から新しく常勤の歯科衛生士を採用する。採用にあたり、どのような手続きをすればいいか。

回答1 新規採用にあたり、歯科衛生士の場合は保健所に「開設届出事項一部変更届」を提出します。届出は雇い入れから10日以内に行い、氏名や免許番号、就職日の記載が必要になります。添付書類として免許証の原本(照会のため)とコピーが必要です。新規採用が歯科医師の場合は、保健所への届出の他に、関東信越厚生局東京事務所に「保険医療機関・保険薬局の届出事項変更の届出」を提出する必要があります。また、非常勤の歯科衛生士を採用する際は、所定労働時間が週20時間以上かつ31日以上雇用する見込みの従業員に関しては雇用保険、1週間の所定労働時間と1カ月の所定労働日数が常勤の従業員と比べ4分の3以上の従業員に関しては、雇用保険の他に社会保険の加入が必要です。ただし、社会保険加入に関しては従業員が常時5人未満の個人診療所の場合は必要ありません。労災保険に関しては1人でも従業員を雇用した場合に必ず手続きをする必要があります。

質問2 新規採用時に従業員に明示する必要のある労働条件の項目を教えてほしい。

回答2 新規採用時の労働条件の明示にあたり、労働基準法に義務付けられている書面に記さなければいけない事項として、①労働契約の期間、②就業の場所・従事する業務内容、③労働時間に関する事項(始業・終業時間、残業の有無、休憩・休日等)、④賃金⑤退職に関する事項―の5点です。加えて、パート職員の場合は「昇給の有無」「退職手当の有無」 「賞与の有無」 「雇用管理の相談窓口」の記載が必要です。有期雇用契約の場合は書面に①~⑤に加えて「契約更新の基準の明示」が必要です。これらをまとめた書面を労働条件通知書といいます。雇用後にトラブルにならないように、新規採用時には必ず渡すようにしましょう。

質問3 従業員を初めて採用する。採用にあたり提出を求める書類、診療所に備え付け必須の書類についても。

回答3 提出を求めるものとして、「住民票記載事項の証明書(従業員の住所・氏名・生年月日があるもの)」「扶養控除等申告書」があります。他に、緊急時に備えて、緊急時の連絡先届や、給与計算時に使う通勤経路届、個人情報に関する誓約書などの提出を求めるとよいでしょう。また、従業員を雇用し続ける限り、労働者名簿・賃金台帳・出勤簿を備え付ける必要があります。これらは法定帳簿と呼ばれ、労働者名簿、賃金台帳には最低限記載しなければいけない事項が定められており、従業員1人1人ごとに作成する必要があります。出勤簿については、タイムカードでの代用が認められています。これらの法定帳簿には3年間の保存義務があり、社会保険、労働保険の手続きや、労基署・税務署の調査などに必要な書類になります。法定帳簿や、労働条件通知書のひな形など、『医院経営と雇用管理2016年版』に記載があります。会員の先生には1冊無料で進呈しておりますので、ご要望の先生は、協会経営管理部まで、お電話またはFAXしてください。

育児休業 介護休業の付与/機関紙2017年3月1日号(№564号)より 

育児休業 介護休業の付与

質問1 雇って五年目の常勤歯科衛生士から育児休業を取りたいと言われた。育休は必ず与えるべきものなのか。

回答1 育児・介護休業法第6条と12条より、事業主は従業員から育児休業や介護休業の申出があった場合は拒むことができないとされています。育児休業は、子が1歳になるまで(両親ともに育児休業を取得する場合で、一定の要件に該当する場合は1歳2カ月になるまで)の間に原則1人の子に対して1回、出産日以降の産前・産後休業期間と合わせて1年を限度として取得できます。子が保育所に入所できない、または配偶者が子の養育をすることが困難になった等、一定の要件に該当する場合には育児休業期間を1歳6カ月まで延長することができます。パートタイマーも法適用となりますが、契約期間の定めのある従業員の場合は申出の時点で以下の条件を満たしていれば育児休業を取得できます。
 ①同一の事業主に引き続き雇用された期間が1年以上であること。
 ②養育する子が1歳6カ月になる日の前日までに労働契約(更新される場合は更新後の契約)の期間が満了し、更新されないことが明らかでないこと。
また、育児休業の取り組みをすることで申請できる助成金制度(両立支援助成金等)もあります。

質問2 育児休業中の社会保険料の取り扱いはどうなるか。

回答2 育児休業中は申請をすれば、健康保険と厚生年金保険の保険料が従業員、事業主共に免除されます。保険料は支払っているものとみなされ、保険による診療を受けることができ、また、年金においても加入期間として将来受け取る年金の受給額に反映されます。2014年4月1日からは育児休業中だけでなく、産前産後休業中の健康保険と厚生年金保険の保険料に関しても同様に免除されることになりました。

質問3 10年以上働いている歯科衛生士から介護休業を取りたいと言われた。これは、与えなければいけないものか。

回答3 介護休業は従業員からの申出があった際、これを拒むことができないとされています。介護休業をすることができるのは、要介護状態にある対象家族(配偶者、父母、子、祖父母、兄弟姉妹、孫、配偶者の父母)を介護する従業員です。対象家族1人につき、通算して93日まで3回を限度として取得できます。パートタイマーも法適用となりますが、契約期間の定めのある従業員の場合は申出の時点で以下の条件を満たしていれば介護休業を取得できます。
 ①同一の事業主に引き続き雇用された期間が1年以上であること。
 ②取得予定日から起算して93日を経過する日から6カ月を経過する日までに労働契約(更新される場合は更新後の契約)の期間が満了し、更新されないことが明らかでないこと。
 また、2017年1月1日施行の改正育児・介護休業法において、介護休業の分割取得が可能になり、半日単位の取得や、所定労働時間の短縮措置が介護休業とは別に利用できるようになりました。介護や育児を理由とした不利益な扱いは法律で禁じられていますので、育児・介護休業が必要な従業員が働きやすい職場づくり、従業員との無用なトラブルを防ぐためにも就業規則の整備をお勧めします。

機関紙2月号「2016年 税制改正のポイント」のお詫びと訂正

【お詫びと訂正】

東京歯科保険医新聞2017年2月1日号(№563号)第4面の「2016年分 税制改正のポイント」の「図2 定額法償却率0.067」は、正しくは「図2 定率法償却率0.133」です(以下に訂正版を掲載します)。お詫びして訂正させていただきます。

訂正記事のダウンロードは、ここをクリック。

 

 

 

 

未収金に関する税務と減価償却資産について/機関紙2017年2月1日号(№563号)より 

未収金に関する税務と減価償却資産について

質問1 自由診療で分割支払いしている患者さんがいる。二月時点でまだ未収金があるのだが、この未収分について、確定申告ではどう申告すればいいか。

回答1 未収金(売掛金)についても売上として計上する必要があります。会計処理は実際の現金収支の時期とは関係なく、診療があった時に売上を計上しなければいけません。そのため、未収金についても、代金回収を見越して売上に計上する必要があります。売上に計上した未収金を回収した場合、会計処理としては未収金の回収として、未収金残高を減らします。

質問2 未収金が回収できないまま、患者さんが遠方に引っ越してしまった。この場合の会計処理はどうすればいいか。

回答2 未収金を回収できないことが明らかになった場合、それが明らかになった事業年度において貸倒金として経費処理をすることができます。ただし、この会計処理を行うためには未収金が売上に計上されている必要があります。一般的には、1年を経過して、まだ回収できない未収金については、貸倒金として取り扱うことが多いようです。また、代金が回収できなかった証拠が必要になります。具体的には、普通郵便で請求書を送り、その後簡易書留や内容証明を利用し、何度も回収に努めたことや、患者さんと音信不通となり、回収不能となったことを説明できる証拠などを取った上で、経費処理をする必要があります。

質問3 診療所開業に伴い、土地や建物、医療機器を購入した。土地、建物、機器などには減価償却できるものとできないものがあると聞いたが、どういう理由か。

回答3 減価償却は価値の減少する資産に限られます。価値の減少しない土地などは減価償却の対象になりません。診療所等の建物や医療機器に関しては、経年劣化や使用による価値の減少があるので、年によって使用期間に応じた必要経費の算入が必要になります(所税法第2条)。10円未満の固定資産についてはその年の必要経費となります(所税法第138条)。10万円以上20万円未満の固定資産については、一括償却資産として、3年間で償却することになり、年ごとに3分の1を必要経費として算入します(所税法第139条)。

質問4 改装時に200万円の医療機器を購入した。減価償却資産にも固定資産税はかかるのか。

回答4 減価償却資産についても固定資産税はかかります。減価償却資産について、その年の1月1日現在の所有者に対して市町村から課税されます。年の途中に譲渡してもその年の1月1日に償却課税台帳に登録されている名義者が納税する義務を負います。税額は土地などと同様、償却資産課税台帳に登録されている価格に1.4%(注)を乗じて算出します。固定資産税には免税点があり、償却資産の課税価額の合計が150万円未満の場合は課税されません。

※注/地方税は市区町村によって税率が異なる場合があります。

有期契約での雇用について/機関紙2017年1月1日号(№562号)より 

≪有期契約での雇用について≫

質問1 長年勤めていた歯科衛生士が辞めたため、新しく有期契約による雇用を検討している。雇用するにあたり、どのような点に注意したらよいか。

回答1 歯科衛生士の場合、契約期間の上限は3年間になります(労働基準法第14条)。歯科助手や受付なども同様です。期間の定めがある労働契約については、やむをえない事由がある場合でなければ契約期間が終了するまで労働契約の解除はできません。ちなみに、歯科医師を有期雇用したい場合、特例として5年まで認められています。1回の契約が1年を超える有期雇用契約を締結した従業員は、労働契約の期間の初日から1年を経過した日以降は、使用者に申し出ることでいつでも退職することができます。また、契約時には必ず労働条件を明示しなければなりません。労働条件通知書を渡しましょう。

質問2 有期労働契約について、最近、報道で無期契約への転換というものを見たが、どういうものか。

回答2 同1の使用者との間で5年を超えて繰り返し更新される有期雇用契約について、従業員の申込みにより、無期雇用契約に転換されるというものです。2012年8月に公布(労働契約法第18条)され、2013年4月1日以降の契約が対象です。よって、2018年以降で、通算期間が5年を超える有期雇用契約の従業員(または5年を超えることが確定している有期雇用契約の従業員)について、その契約期間の初日から末日の間に無期転換の申込みが可能になります。この申込みについては、従業員の権利になり、申し込みするかどうかは従業員の自由で、口頭での申込も法律上有効となります。しかし、使用者としては、口頭での契約はトラブルになりかねないため、書面で契約を交わしましょう。無期に転換されるタイミングは有期雇用契約終了の翌日になります。なお、無期転換を申し込まないことを契約更新の条件とするなど、申込権の放棄を契約に盛り込むことはできません。

質問3 無期雇用契約に転換した従業員の労働条件は正社員と同様なのか。

回答3 労働条件は就業規則などに定めがない限り、直前の有期雇用契約と同一になります。無期転換後の労働条件は、あらかじめ有期雇用契約時に使用者・従業員ともによく確認し、無期転換前と異なる労働条件とする場合、就業規則や労働協約などに定める必要があります。注意したいのは、有期雇用の従業員に適用されない定年などの労働条件項目です。別段規定しておきしょう。

労働基準監督署の調査について

2016年11月頃から、労基署の調査が入ったと会員の先生からご相談がよせられています。2016年1月号の機関紙“経営・税務相談Q&A”コーナーに“「労働基準条件に関する調査の実施」への対応”をテーマに掲載しましたが、再掲しますのでご覧ください。

 

 


2016年分の年末調整とマイナンバー制度/機関紙2016年12月1日号(№561号)より 

2016年分の年末調整とマイナンバー制度/機関紙2016年12月1日号(№561号)より 

質問① 税務署から※「平成29年分給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」という書類が届くなど、従業員の社会保険手続きや年末調整等でマイナンバーを使用する場面が増えてきたが、従業員からマイナンバーを集めて記載しなければならないのか。

回答①  今年度から事業主に、従業員の年末調整の際のマイナンバーの収集義務が課されました。事業主は従業員のマイナンバーを収集し、社会保険関係の届け出や税務署への提出書類に従業員のマイナンバーを記載することが義務となります。ただし、従業員にマイナンバーの提出を拒否された場合、記載せずに提出することもできます。収集できなかったことによる罰則は今のところはなく、内閣官房でもマイナンバーの記載がなくても書類は受け取ると回答しています。事業主として、収集は努力義務なので、マイナンバーの提供を拒否された場合、収集に努めたが収集できなかった旨を必ず記録として残しておいてください。

質問② 年末調整のマイナンバーの取り扱いについて、歯科診療所での実務はどのようなものがあるか。

回答② 事業主が個人番号関係事務の実施者となりますので、①マイナンバーの取得・本人確認、②利用・安全管理、③マイナンバーの提供、の各段階に応じて注意すべき事項があります。まず①ですが、従業員のマイナンバーを取得する際に、本人のもので間違いがないか運転免許証や住民票などで確認を行います。ただし、従業員の扶養家族については扶養者である従業員に本人確認義務がありますので、従業員の扶養家族のマイナンバーまで確認を行う必要はありません。次に ②ですが、マイナンバーの利用について、番号法で定められている利用範囲を超えて利用することはできないため、マイナンバーをむやみに利用・提供することはできません。最後に③ですが、マイナンバーの提供とは従業員のマイナンバーを含む特定個人情報を第三者へ開示することです。ただし、事業主が特定個人情報を第三者へ提供できるのは番号法第19条に定められている場合に限定されます。当該法に該当しない場合は要求を拒否する必要があります。

質問③  来年度から毎年5月に郵送される住民税特別徴収の通知書に、従業員のマイナンバーが記載された状態で郵送されてくるという報道を見た。どういうことか。

回答③ 事業主が個人番号関係事務の実施者となりますので、①マイナンバーの取得・本人確認、②利用・安全管理、③マイナンバーの提供、の各段階に応じて注意すべき事項があります。まず①ですが、従業員のマイナンバーを取得する際に、本人のもので間違いがないか運転免許証や住民票などで確認を行います。ただし、従業員の扶養家族については扶養者である従業員に本人確認義務がありますので、従業員の扶養家族のマイナンバーまで確認を行う必要はありません。次に ②ですが、マイナンバーの利用について、番号法で定められている利用範囲を超えて利用することはできないため、マイナンバーをむやみに利用・提供することはできません。最後に③ですが、マイナンバーの提供とは従業員のマイナンバーを含む特定個人情報を第三者へ開示することです。ただし、事業主が特定個人情報を第三者へ提供できるのは番号法第19条に定められている場合に限定されます。当該法に該当しない場合は要求を拒否する必要があります。

成年後見制度とは/機関紙2016年11月1日号(№560号)より 

成年後見制度とは/機関紙2016年11月1日号(№560号)より 

質問① 高齢の父の認知症が進み、判断能力が不十分な状態。成年後見制度を使うとよいと、診療所のスタッフに勧められたのだが、そもそもどのような制度なのか。

回答① 成年後見制度は、認知症や知的障害、精神障害などの理由で判断能力が不十分な方々を介護などのサービス契約や遺産分割協議をする際に支援したり、悪徳商法などの不利益な契約から保護したりする制度です。成年後見制度は、①法定後見制度、②任意後見制度―の2つに分かれています。まず、①の法定後見制度は、家庭裁判所によって選任された成年後見人が被成年後見人の利益を考えながら裁判所と協議し、被成年後見人を保護・支援する制度です。後者②の任意後見制度は、被成年後見人に十分な判断能力があるうちに、あらかじめ成年後見人を指定し、公正証書で任意後見契約を結ぶというものです。任意後見契約を結んだ成年後見人が、任意後見契約で決められた事務を、家庭裁判所が指定した任意後見監督人の監督の下で行います。そのため、被成年後見人の代理として契約することや、遺産分割協議は、家庭裁判所や任意後見監督人の監督の下で行われるため、被成年後見人の利益を一番に考えた支援が可能です(参考:>法務省http://www.moj.go.jp/)。

 

質問② 実際に、成年後見制度を利用する場合の手続きをご教示願いたい。

回答② 成年後見制度を利用する場合、家庭裁判所に申し立てすることになります。成年後見制度の申し立てをするには、医師の鑑定書、戸籍謄本、登記事項証明書などが必要になります。審理期間は個々の事案によりさまざまですが、多くの場合、申し立てから法定後見の開始まで4カ月となっています。鑑定手続きや成年後見人などの候補者の適格性の調査、被成年後見人の陳述聴取などのために、一定の審理期間を要することになります(参考:法務省民事局『成年後見制度成年後見登記』より)。また、一度、成年後見制度を利用し始めると、被成年後見人の判断能力が回復したと認められない限り、制度の利用を途中でやめることはできませんのでご注意ください。

 

質問③ 成年後見制度については理解ができたが、成年後見登記制度について、よく理解できない。かみ砕いてご教示願いたい。

回答③ 家庭裁判所で後見人の審理が終わると、後見人が後見人であることを証明するための登記が法務局に委託されます。登記された(成年後見人であるという)内容を登記事項証明書という書類で証明することにより、被成年後見人に代わって銀行、その他の契約の場で、正式な成年後見人であるという証明ができることになります。この制度を成年後見登記制度といいます。なお、取引相手であることを理由に、登記事項証明書を請求することはできず、登記事項証明書の交付を請求したい場合は、登記されている本人、その配偶者、四親等内の親族、成年後見人など、特定の人物が請求する必要があります。

閉院の届出および書類等の保存期間/機関紙2016年10月1日号(№559号)より 

閉院の届出および書類等の保存期間/機関紙2016年10月1日号(№559号)より 

質問① 近く、閉院することとなった。必要な届出や手続きなどをご教示願いたい。

回答① 閉院時には、①医療法・健康保険法に関する届出、②税務関連の届出、③社会保険・労働保険に関する届出が必要になります。まず①については、『診療所の廃止届』を廃止した日から10日以内に保健所へ。『保険医療機関廃止届』は廃止後速やかに関東信越厚生局東京事務所へ、生活保護法や労災保険などの指定を受けている場合は廃止届をそれぞれの認可を受けた福祉事務所や労基署へ届け出します。②については、『個人事業の開業・廃業等届出書』『給与支払い事務所等の廃止届出書』を閉院から1カ月以内に税務署に提出します。『個人事業の開業・廃業等届出書』は税務署のほか、都税事務所にも提出します。また、消費税課税事業者の場合は『事業廃止届出書』を廃止後速やかに提出します。所得税の青色申告を取りやめる場合には、取りやめの翌年3月15日までに『所得税の青色申告の取りやめ届出書』を提出します。なお、不動産所得などがあり、青色申告を継続する場合、提出は不要です。③については、『健康保険・厚生年金保険適用事業所全喪届』を管轄の年金事務所・健保組合に閉院した日から5日以内に提出します。雇用保険については『雇用保険適用事業所廃止届』を閉院から10日以内に公共職業安定所(ハローワーク)に提出します。労働保険の関係は閉院とともに消滅しますが、閉院した日から50日以内に管轄の労基署に保険料の確定清算が必要になります。

 

質問② 開業してから10年が経ち、たまった書類の整理を考えている。各書類等の保存期間は何年か。

回答② カルテをはじめ、保存が義務付けられている書類として、X線フィルムや歯科技工指示書の控えなどがあります。別表をご参照ください。どの書類も完結の日から起算することとされていますのでご注意ください。カルテの保存期間は5年ですが、歯科診療に過誤や不満があったとして患者さんから訴えられた際、カルテがないとどのような診療を行ったか証拠が残らないことになり、歯科医院側が不利になる可能性があります。保存の目安として、債務不履行に基づく損害賠償請求の消滅時効期間の10年を経過するまで、とするとより安心でしょう。また、閉院の際も保存義務があり、その場合は開設者でなく、管理者に保存義務が生じますのでご注意ください。税務書類に関しては税務調査の最大遡及期間の7年間は保存しておく必要があります。本年9月から、協会に税務調査の相談が増えています。協会では『保険医への税務調査2013年版』をご希望の会員の先生に一冊を無料で配布しております。ご希望の先生は協会経営管理部(TEL:03―3205―2999)までご連絡ください。

 

印紙税、罰金、自家診療した際の税務/機関紙2016年9月1日号(№558号)より 

印紙税、罰金、自家診療した際の税務/機関紙2016年9月1日号(№558号)より 

質問① 診療で五万円を超える請求をした。患者から「印紙が必要なのでは」といわれたが、今まで領収証に印紙を貼ったことがない。診療所の領収証には印紙が必要なのか。

回答① 歯科医師が作成する受取書には印紙を貼る必要はありません。売上代金にかかる金銭や有価証券の受取書は、1通につき5万円以上のものはすべて印紙を貼付し、印紙税を納めなければいけないことになっていますが、印紙税法別表第1の17号より、営業に関しない受取書は非課税とされており、歯科医師が業務上作成する受取書は営業に関しないものとして取り扱われていますので、印紙を貼付する必要はありません。ただし、歯科医師が作成する受取書であっても、不動産売買や建築請負等に関する契約書や手形などについては、印紙が必要になります。

 

質問② 訪問診療中に駐車違反で反則金の通告処分を受けました。訪問診療中の交通違反などの罰金は必要経費として算入できますか。

回答② 罰金は事業に関連して支払ったとしても、必要経費には参入できません。また、事業主が従業員に対して科された罰金などを負担した場合において、それが事業に関連して課されたものであっても必要経費とはなりません。従業員に対しての補填をしたい場合は、給与として反則金相当額を支払い、必要経費に算入する方法もあります。なお、レッカー車代等、罰金に該当しないものは必要経費に算入できます。

 

質問③ 従業員や友人、家族などを保険診療した場合、税務上どのように処理をすれば良いか。また、自由診療の場合はどうか。

回答③ 険診療の場合はいずれもいったんは窓口負担金の受領が必要です。従業員を保険で診療し、受領した窓口負担金分を福利厚生として従業員に還元するときは、窓口負担金額を保険収入として計上し、その同額を福利厚生費にも計上します。友人などを保険で診療し、もらった窓口負担金分を交際費などとして友人に還元したい場合は、同様に窓口負担金額を保険収入と接待交際費の両方に計上します。家族を保険診療した場合は、一般の患者さんと同様で、窓口負担金額を保険収入に計上します。経費としての計上はできません。また、自由診療で家族を診療した場合は棚卸資産の家事消費にあたりますので「原価相当部分」を自由診療収入に計上します。従業員の場合は、「原価相当部分」を自由診療収入に計上し、同額をその従業員に対する現物給与とし、源泉徴収をします(「保険医の経営と税務2016年版」54~55ページ参考)。その他、確定申告時のポイントや共済制度と税金、消費税、開業・承継・閉院、相続税、スタッフの税務などをまとめた「保険医の経営と税務2016年版」は会員の先生方に1冊無料で進呈しておりますので、まだお持ちでない先生は、ぜひ、協会経営管理部までご連絡ください(担当/経営管理部:TEL  03―3205―2999)

支払基金のマイナンバー収集/機関紙2016年8月1日号(№557号)より 

支払基金のマイナンバー収集/機関紙2016年8月1日号(№557号)より 

質問① 支払基金からマイナンバーの収集キットが届いた。マイナンバーの提供は義務なのか。

回答① マイナンバーの提供は義務ではありません。7月13日頃から先生方のお手元にマイナンバーの収集キットが届き始めているかと思います。社会保障・税番号制度の実施に伴い、税務署に提出する診療報酬などに係る支払い調書に「個人番号又は法人番号」の記載が義務となり、今回、支払基金から収集に関する通知文が届いています。記載がないことによって税務署が書類を受け取らないことはありません。また、先生方に何か不利益になるようなこともありません。 支払基金本部にも問い合わせをしたところ「マイナンバー提供は任意であり、提供しないことで不利益は起こりえない」と回答を得ています。

 

質問② さまざまな方面で情報流出が報道されている昨今、提供は拒否したいと考えている。どう対応すればいいか。

回答② マイナンバーの提供を拒否したい意志を明確にし、支払基金から届いた収集キットにその旨を記載した用紙を入れるなどして、提供しない旨を報告してください。収集する側はマイナンバーを提供する側にマイナンバーの提供の必要性を周知する義務があり、かつ提供が受けられない場合はその経過を記録し、収集の義務に違反していないことを明確にしておく必要があります(国税庁ホームページ「社会保障・税番号制度(マイナンバー)FAQ」Q1―2より)。支払基金としては収集の義務があるため、先生方に収集の通知文を出し、提供を促しています。また、先生方から期日までに収集キットが返送されてこない場合、収集義務違反にならないように、催促をすることもあると考えられます。支払基金は「提供しないという意思表示があれば、それ以上の催促はしない」と回答しています。提供したくない場合は、「個人情報の流出が心配なので、今回は提供をしません」などの意思表示を返信用紙の余白に記入し、収集キットを期日の8月15日までに返送すれば、それ以上の催促はありません。ちなみに、マイナンバーが収集できなかったことで、支払基金の方に何か不利益があるということはありません。

 

質問③ 国保連合会からは、支払基金のようなマイナンバーの収集に関する通知などが来るか。

回答③ 国保連合会は今のところ医療機関のマイナンバー収集はしないとしています。国保については所得税法上、診療報酬に関してのマイナンバー収集の規定がないとのことです。マイナンバー提供をするかしないかは、先生のご判断によるところになりますが、分からないことがありましたら、すぐに協会経営管理部までお気軽にご相談下さい(担当/経営管理部:TEL 03―3205―2999)。

試用期間と労働条件通知書/機関紙2016年7月1日号(№556号)より 

試用期間と労働条件通知書/機関紙2016年7月1日号(№556号)より 

質問① 採用に当たり試用期間を設ける予定である。どのような点に注意すればよいか。

回答① 試用期間に関して、歯科診療所の場合、法律の規定はないので、就業規則に定めておくことが必要です。一般的には2週間から3カ月の範囲で決めているところが多いようです。賃金に関しては、最低賃金を守れば本採用になるまでは「採用後の給与の8割を支給する」などと決めることもできます。ただし、1年を超える試用期間は無効とされた判例もあるので、安易に長い試用期間を設定するのは避けましょう。労働保険や社会保険は要件に当てはまれば加入する必要があります。

 

質問② 試用期間中(1カ月)の従業員を業務態度が良くないので解雇しようと考えている。問題ないか。

回答② 労働基準法第21条では、試用期間中の者について解雇予告の必要はないと定めていますが、これは就業規則が定めた試用期間のすべてではなく、試用期間開始から14日以内に限られています。14日を超えてしまった場合の解雇手続きに関しては、通常の労働者と同じく、労働基準法第20条が定める30日前の解雇予告、または30日分の平均賃金の支払いが必要になります。今回は雇用してから1カ月の従業員ということなので、30日後の解雇予告、または30日分の平均賃金の支払いが必要になります。また、試用期間中の解雇であっても、法律上、解雇をするという行為は客観的に合理的な理由や社会通念上相当として認められる場合に限られるとされていますので、安易に決断すべきではないでしょう。

 

質問③ 新しく雇った従業員から「労働契約に関する通知書がほしい」といわれた。今まで、このような文書を従業員に手渡したことがないのだが、どのようなことを記載すればよいのか。

回答③ 労働基準法第15条では、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間、その他の労働条件を明示しなければならない、とされています。もし明示しなければ、30万円以下の罰金に処せられる場合もあります。書面の交付により明示しなければならない労働条件は、労働基準法施行規則第5条に、①労働契約の期間、②就業の場所および従事すべき業務、③始業および就業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇ならびに労働者を2組以上に分けて就業させる場合における就業時転換、⑤賃金、⑥退職―と明記されています。また、就業規則などで別途、賞与や退職金、休職や表彰などの定めがある場合も明示しなければなりません。労働条件通知書や就業規則のたたき台は、保団連発行の「医院経営と雇用管理2013年版」にひな形が掲載されています。当協会では、同書を会員の先生に1冊無料で進呈していますので、ご希望の先生は協会までご連絡ください(TEL  03―3205―2999/担当:経営管理部)。

「税務調査」その実際と対応/機関紙2016年6月1日号(№555号)より 

「税務調査」その実際と対応/機関紙2016年6月1日号(№555号)より 

質問① 開業して間もないのだが、税務調査とはどのようなものか。

回答① 税務調査は確定申告の内容に間違いがないか、税務署の職員が書類等を調査することです。税務調査には「強制調査」と「任意調査」の2種類があります。強制調査とは、国税局査察部が脱税疑いのある納税者に対して強制的に調査を行うものです。令状を持って強制的に調査が行われることから、事前に脱税の証拠を固めてから行われます。税金に関してあらゆるものを押収できるため、ほぼ抵抗はできません。しかし、強制調査の対象は脱税額が偽り不正により多額である時、または悪質なものであるといわれているので、税務調査の大半は任意調査になります。任意調査は、納税者の同意、協力を得て行われています。ただし、税務署には質問検査権という権利があり、質問については正当な理由がない限り拒否してはならないということになっています。正当な理由がないにもかかわらず断った場合には、所定の罰則が科せられます。このように、任意調査は間接的に強制力のある税務調査といえます。3~5年ごとに定期的に税務調査があるといわれていますが、そのようなケースでは、ある程度の売上高や規模がある、または会計処理や税務処理に問題がある場合が多く、実際には開業してから10年以上も税務調査がないケースもあります。

 

質問② 税務調査(任意調査)の通知を受ける際、どのようなことに注意すればよいか。

回答② 国税通則法第74条の9では、税務調査(任意調査)を行う際に、税務職員は一定事項について予め納税者等に通知することが定められています。具体的には、「調査を行う場所」「調査の目的」「調査の対象となる税目」「調査の対象となる期間」「調査の対処となる帳簿書類その他の物件」などであり、これらをすべて通知しなければいけません。そもそも「任意調査」は、「される」のではなく「させる」のが基本です。「なぜ調査をするのか」「何を調べたいのか」その説明を求め、調査の範囲を限定させることが大事です。つまり、予め通知した事項に反する調査はできません。例えば、「過去三年分の調査」と通知を受けたのであれば、調査中に税務署職員が「過去五年分について調査したい」ということは原則的にできません。したがって、口頭で行われる通知内容は納税者側できちんと把握する必要があります。協会では事前通知チェックシートも用意していますので、お気軽にご相談ください。

 

質問③ 事前に、どのようなことを準備すればよいのか。

回答③ 税務調査において、税務署の勝手な見解で税金を課すことはできません。法律に規定があるかないかが非常に重要になります。法的に対処するには証拠が重要ですので、例えば、領収証に一緒に食事した相手の名前・目的を控えるなど、日頃からこまめに証拠の保存を心がけましょう。歯科診療所の税務調査で特に指摘されやすいのは「自費治療」「金属売却益」「専従者給与」「交際費」などです。税務調査の中ではアポイント帳と日計表を突き合せ、アポイント帳に記載のある患者の収入が日計表に記載がない場合、「自費治療の計上漏れ」と指摘することが多いそうです。義歯の無償修理の場合でも、あたかも自費治療の計上漏れのように指摘されるケースもあるので、日計表で無償修理と分かるように記載しておきましょう。近年、「金属売却益」の計上漏れを指摘されるケースが目立っています。これは「雑収入」に該当するので、会計処理の際にご注意ください。そのほか、専従者給与の妥当性を指摘されるケースも目立ちます。専従者については業務日誌を作成し、労務に従事した期間や労務提供の程度などを税務署側に説明できるように準備してください。税務調査の中では帳簿の持ち帰りを求められるケースが非常に多くあります。国税通則法第七十四条の七では、帳簿書類について、必要があれば留め置き(帳簿の持ち帰り)を認めていますが、事務運営方針の中では納税者に必要性を説明した上で「その理解と協力の下、承諾を得て実施する」としています。したがって、業務に支障があると判断したような場合は留め置きを断ることができます。税務署から調査を行いたい旨の連絡があった場合は帳簿の留め置き、カルテの閲覧要請、どう対応すべきかなど、準備事項はたくさんあるので、ぜひ協会へご相談ください。

歯科医師への相続税贈与について/機関紙2016年5月1日号(№554号)より 

歯科医師への相続税贈与について/機関紙2016年4月1日号(№553号)より 

質問① 子どもが2人いる。2人とも歯科医師だが息子は独立している。そこで、小生の歯科診療所を娘(歯科医師)に承継させ、残りの財産を息子と娘に相続させたい。この場合、相続税を娘だけにまとめて負担させることはできるか。

回答① 相続税は相続により財産を取得した者が、その取得に応じた割合で負担する制度となっています。そのため、相続財産と切り離して相続税を一部の相続人に負担させることはできません。なお、死亡後に後日振り込まれる死亡保険金や死亡退職金は相続税の計算に含まれる(一定額非課税)ことになっているのでご注意ください。相続税の納付金については、まず、被相続人から相続される財産・債務の総額を求め、基礎控除を差し引いて、法定相続分により各人の相続税を算定します。その上で、各相続人の実際に引き継ぐ財産・債務金額が相続される財産・債務の総額に占める割合に応じて、相続税の総額を各相続人に振り分けて、税務署に支払う各相続人の相続税が確定します。なお、死亡後10カ月以内にこの相続税の申告と納付を完了する必要があります。相続税は原則、金銭一時納付となっていますが、困難な場合については一定の要件を満たすことにより、分割払いの延納制度や金銭以外の相続財産で納税する物納制度も認められています。

 

質問② 父親から1500万円の現金を贈与してもらい、歯科診療所を開業することになった。この場合、どのような税がかかるか。

回答② 贈与を受けた者が、1月1日から12月31日の1年間に贈与された現預金、不動産などの贈与財産の合計額から110万円を差し引いた残額に対して贈与税がかかります。年間に受け取った贈与財産の価額の合計額が110万円以下であれば申告の必要はありません。例えば、今回のケースのような歯科診療所の新規開業の場合の資金援助などが贈与税の対象に該当します。将来の相続税のことを考えて、親が生きている間に財産を子に贈与することもあると思いますが、生前の贈与については、相続税よりも高い税率が課され、死亡前3年以内の贈与は相続税の計算に組み戻されるため、贈与税は相続税の補完税とも呼ばれます。なお、贈与を受けた者が、贈与税の申告をする場合、贈与を受けた日の年の翌年2月16日から3月15日までに申告と納付を完了しなければなりません。より詳しい計算方法などを知りたい先生は、当協会で毎月第3木曜日に行われている「会員無料相談デー」にぜひ、お越しください。

 

※会員無料相談デーのご利用は、事前予約が必要です(経営管理部:03―3205―2999)。

労働条件の変更と昼休みの電話当番/機関紙2016年4月1日号(№553号)より 

労働条件の変更と昼休みの電話当番/機関紙2016年4月1日号(№553号)より 

質問① 患者が減ってしまって経営が苦しい。週三日勤務を週一日勤務に変更する提案をしたいのだが、残りの契約期間内のパートの労働時間を減らしても、問題はないか。

回答① 労働契約法第九条より、本人の同意がないと変更はできません。もし、同意が得られない場合は、その変更がないと経営の危機に直面するということであっても、休業手当として給与の六割を保証しなければいけません。今回のケースは、一時的な休業でなく、労働条件の変更という観点から考えると、勤務日数・勤務時間を減らすといった、一度定めた労働条件を変更するためには、従業員の同意が必要になります。特に、賃金の減少を伴う変更を一方的に行うことは、合理性がないと認められません。そのため、契約期間終了後に改めて契約内容を提示して、双方合意の上で契約することが望ましいと思います。また、従業員を解雇して人員を減らすことは、客観的、合理的理由があり、社会通念上妥当と判断されない限りは認められません。従業員の労務トラブルは近年増えてきているため、労働条件通知書の見直しなど、事前に対策を打ちましょう。

 

質問② 当診療所では昼休み中に歯科衛生士や助手、受付に電話当番をお願いしている。先日、他の診療所の先生から、「昼休み中の電話当番は違法」だという話を聞いた。万が一のために対策は、どうすればいいか。

回答② 昼休みという名目で休憩時間内に電話当番を依頼しているということであれば、労働基準法違反にあたります。休憩時間は自由に利用させなければいけないとされており、実際に労働には従事していないが、いつ使用者から働くように命ぜられるか不明確な時間や、外来患者のいない場合でも受付時間中として電話や来患があれば直ちに対応できるように待機させている時間は、休憩時間に該当しないと労働基準法に定められています。八時間以上の労働時間には少なくとも一時間、六時間を超える労働時間には少なくとも四十五分以上の休憩時間を与える必要があります。しかし、休憩時間は労働時間の途中に与えれば良いもので、一斉に与える必要はありません。どうしても昼休みに電話が多いとのことでしたら、三十分毎に休憩時間をずらして与えるなど、検討されてはいかがでしょうか。ただ、休憩時間をずらしたり、三十分毎に分断したりすることで、従業員が不利益を被るのであれば、それは労働条件の不利益変更にあたりますので、従業員の同意がなければ変更することができません。昨今では「昼休みは一切電話を取らないで留守電に切り替える」といった診療所もあります。従業員の方々とご相談の上、先生の歯科診療所に合った休憩時間制度を確立していくのが良いでしょう。

平成28年度扶養控除等(異動)申告書の変更点/機関紙2016年3月1日号(№552号)より 

平成28年度扶養控除等(異動)申告書の変更点/機関紙2016年3月1日号(№552号)より 

質問① 昨年10月からマイナンバー(以下、「個人番号」)が交付されたが、従業員に提出してもらう『給与所得者の扶養控除等(異動)申告書 』については、どのような変更点があるのか。

回答① 『給与所得者の扶養控除等(異動)申告書』については、マイナンバー制度の導入に伴い、新たに被保険者の「個人番号」欄が追加されました。従業員から個人番号が提出された際には必ず本人確認として番号確認・身元確認を行う必要があります。申告書には、給与支払者・給与所得者・扶養親族の個人番号をそれぞれ記入する欄があります。平成27年度の確定申告や年末調整等、税務上の管理では使用しないので、実務上は28年分の年末調整までに取得すれば問題はありません。また、28年度からの変更点として、非居住者(国外居住親族)である親族については扶養控除などの適用を受ける場合、「親族関係書類」の提示または提出を受けることとなりました。年末調整においては、「生計を一にする事実」の欄に送金額を記載し、「送金関係書類」の提示または提出を受ける必要があります。

 

質問② 従業員の扶養親族の個人番号における本人確認はどのように実施すればよいのか。

回答② 従業員の扶養親族の個人番号を取得する時は、その扶養親族の個人番号の提供が誰に義務づけられているかによって異なります。健康保険の扶養親族の届出や所得税の扶養親族の届出は、従業員が「個人番号関係事務実施者」として、その扶養親族の本人確認を行うことになります。そのため、歯科診療所側では扶養親族の本人確認を行う必要はありません。

 

質問③ 従業員が個人番号の提出を拒否した場合、どのように対応をとればいいのか。

回答③ 従業員は個人番号の提出について、法律上は義務とされていますが、記載しなかった場合の罰則はなく、歯科診療所側には、個人番号の提出について法律上の強制力はありません。そのため「提出を促したが、拒否された」旨の記録を残しておいてください(国税庁ホームページQ1-18)。その際、書類の提出先の機関の指示に従う必要がありますが、内閣官房が設置しているマイナンバーコールセンター(TEL 0120―95―0178)では「個人番号の記載がなくとも受理する。不利益はない」と回答しています。

なお、従業員から個人番号が提出された場合は、①本人確認(番号確認と身元確認)、②安全管理措置、③委託先の必要かつ適切な監督―の3点を行う必要があります。もし、これを怠ったまま漏えい事故が起こってしまうと、監督機関である「特定個人情報保護委員会」からの指導や勧告を受けることになりかねませんので充分、ご注意下さい。

採用時と年1回健康診断の実施義務/機関紙2016年2月1日号(№551号)より 

採用時と年1回健康診断の実施義務/機関紙2016年2月1日号(№551号)より 

質問① 最近、知人の歯科医院から、事業主は従業員に対し1年に1回、健康診断を実施することが義務づけられているとの話を聞いたのだが。

回答① その通りです。事業主は、雇用している従業員に対し、雇い入れ時および1年に1回、必ず健康診断を実施することが義務づけられています。また、従業員がパートやアルバイトであっても、①期間の定めがないか、期間の定めがあったとしても更新により1年以上の使用が予定されているか、継続して使用されていること、②1週間の労働時間が正社員の1週間の労働時間の4分の3以上であること―の2つの条件に該当すれば、健康診断を受けさせなければいけません。

 

質問② 健康診断の費用負担はどうしたらよいのか。また、一概に健康診断といってもさまざまな種類があるが、健康診断の内容の規定はあるのか。

回答② 結論から申しあげると、定期健康診断における費用は事業主側が負担するというのが実際です。健康診断は事業主の命令(事業主側にとっては義務ですが)により従業員が受けるということになりますから、原則、事業主が健康診断の費用を負担すべきものとされています。ただし例外として、事業主側が用意した健康診断の場ではなく、従業員が自らの意思により、別の診療所等で健康診断を受ける場合、その費用は事業主側が負担しなくてもよいことになっています。また、健康診断の実施結果に基づき、健康診断個人票を五年間保存する義務が労働安全衛生規則で課されています。健康診断の内容は、雇入時と定期健康診断で若干異なりますが、基本的な項目は、 既往歴および業務歴の調査、 自覚症状および他覚症状の有無の検査、 身長、体重、腹囲、視力および聴力の検査、 胸部エックス線検査(および喀痰検査)、 血圧の測定、貧血検査 、肝機能検査 、血中脂質検査、 血糖検査 、尿検査、心電図検査などです。従業員が1人でもいる場合は、健康診断の受診が義務づけられており、違反した場合には、50万円以下の罰金などの罰則規定が定められています。

労働基準条件に関する調査の実施」への対応/機関紙2016年1月1日号(№550号)より 

労働基準条件に関する調査の実施」への対応/機関紙2016年1月1日号(№550号)より 

質問① 当院に労働基準監督署から「労働基準条件に関する調査の実施について」という用紙が送られてきた。調査日が指定されており、併せて裏面の「自主点検票」を記入の上、事前にFAXを送ることとされているが、出席しなければならないのか。また、なぜ当院に調査が入ったのか。

回答① 従業員を雇用する事業所においては労働基準関係法令に則した労務管理を行わなければなりませんが、適正な労働条件の調査ですので、代表者または労務担当責任者の出席が必要です。ただし、診療日などで指定された日時の出席が困難な場合は、事前にその旨の連絡を入れ調整してください。協会では、現在新宿労働基準監督署が管轄する新宿区、中野区、杉並区の歯科診療所に定例調査として実施されていることを把握しています。

 

質問② 当院は、パートタイム3名、フルタイム2名を雇用している。調査日当日の持参物に、表の11項目を提示されたが、これについて。

回答② 下記の表をご覧いただきたい。主な持参物として、表の④の「就業規則」に関しては、10名以上の従業員を使用する診療所は作成して従業員の代表の意見書を添付し、所轄労基署長に届出する必要があります(労基法第89条、90条)。⑨の労働条件通知書は、従業員を雇い入れる際に労働条件を明示するために作成し、配布して下さい。⑩の労働者名簿は、1名でも従業員を使用すれば作成が必要です。必要事項は、「氏名、性別、生年月日、従事する業務の種類、住所、雇入れ年月日、退職年月日、履歴(職歴)」です。用紙の雛形は、厚生労働省やインターネットからダウンロード可能です(※)。⑪の健康診断個人票は、雇い入れ時と定期健康診断の結果を指します。事業主は、従業員に対し1年に1回健康診断を実施することが義務づけられており、その結果に基づき、健康診断個人票の5年間の保存義務が課されています(労働安全衛生法第66条、労働安全衛生法規則第43条、44条)。

なお、パートタイムの方の定期健康診断に関しては、「1週間の所定労働時間が同じ事業所で同種の業務に従事する通常の従業員に比べ4分の3以上である者」などの条件があります。

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2015年分の年末調整とマイナンバー制度/機関紙2015年12月1日号(№549号)より 

2015年分の年末調整とマイナンバー制度/機関紙2015年12月1日号(№549号)より 

質問① 去る十月からマイナンバー(以下、「個人番号」)が交付され、従業員の社会保険手続きや年末調整などで個人番号を取り扱う必要性が出てくるが、今年度の年末調整の扱いはどうなるのか。また、歯科診療所の実務に与える影響についても知りたい。

回答① 今年度の年末調整で従業員に個人番号を求める必要はありません。来年度末の年末調整から必要になります(ただし、取得が必要になるケースもあり、質問2を参照)。歯科診療所は従業員の個人番号を取得し、社会保険関係の届出や税務署への提出書類に従業員の個人番号を記載することになります。また、歯科診療所は個人番号関係事務の実施者となるため、①個人番号の取得・本人確認、②利用・安全管理、③提供―の各段階に応じて注意すべき事項があります。まず、①の注意点ですが、従業員の個人番号を取得する時、個人番号が本人のもので間違いがないかを運転免許証や住民票などで確認します。ただし、従業員に扶養家族がいる場合、その扶養家族については、扶養者である従業員に本人確認義務があるので、歯科診療所は従業員の扶養家族の個人番号まで確認を行う必要はありません。また、②の注意点は、個人番号は原則として番号法で定められている利用範囲を超えて利用することはできないので、個人番号を含む特定の個人情報をむやみに利用・提供することはできません。さらに③の注意点は、提供とは従業員の個人番号を含む特定個人情報を第三者へ開示することです。

質問② 税務署から「平成二十八年分給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」という書類をもらったが、これはどう扱うのか。

回答③ この申告書には、すでに個人番号の記載欄がありますが、年内は制度実施前で記入する必要はありません。2016年1月以降にスタッフが退職した場合、個人番号がないと来年の年末調整ができませんので、2016年1月からのスタートですが、今年の年末調整時に個人番号が必要になります。

質問③ 従業員が個人番号の提出を拒否した場合、どのような対応が必要か。

回答③ その場合は空欄で問題ありません。事業主としては収集に努めたが、収集できなかった旨を記録として残して下さい。

 

※国税庁のホームページに、2016年の様式が掲載されていますので、ご参照ください。

有給休暇の計画年休取得について/機関紙2015年11月1日号(№548号)より 

有給休暇の計画年休取得について/機関紙2015年11月1日号(№548号)より 

質問① 質 問 夏期休暇や年末年始に対応するため「計画年休(※注)」制度を導入している。先日、従業員から乳幼児が病気やケガをした際に備えて、有給休暇の取得日はすべて自分で決めたいとの申し出があった。どのように対応すべきか。

回答① 計画年休は、年休消化率を高めることや、計画的な事業運営を可能にすることなどを目的として導入されたものですが、反面、年休の付与日があらかじめ決まっていることから不都合が生じる場合があります。今回のように乳幼児を保育園などに預けて働いている従業員などは、特に子どもが病気したときなどに備えて年休をとっておきたいなどの事情があると思います。そこで、厚生労働省は、特別の事情があって年休の計画付与が適当でない労働者については、計画付与の対象から除外するなどの配慮を求める通達を出しています。また、2005年4月より看護休暇制度が導入され、小学校入学前の子どもをもつ親は、有給休暇とは別に、子どもの看護休暇として1年に5日間利用できる制度もあります。この看護休暇は子どもの病気やケガは突発的に発生することから、業務の運営が妨げられるからといって、日程の変更を求めることはできません。ただし、この休暇を有給とするか無給とするかの法的定めはありませんので、従業員の合意を得た上で就業規則で定めるか、あるいは、話し合いによって定めたのかを、文書で残すことが必要です。これらの制度と併用して対応を検討してみてはいかがでしょうか。

(※注)年次有給休暇の5日を超える部分については、労使協定により事業所全体で一斉に有給休暇を取得する等の計画的付与ができます(労働基準法第39条第5項)。

従業員の給与支払/機関紙2015年10月1日号(№547号)より 

従業員の給与支払/機関紙2015年10月1日号(№547号)より 

質問① 電車遅延で従業員が一時間ほど遅刻した場合、一時間分の賃金はどうなるのか。

回答① 法的義務から説明しますと、その従業員は一時間の労働義務を履行できなかったことになりますので、事業者は従業員に対して1時間分の賃金を支払う義務はありません。「遅延証明書」を提出したとしても同じです。ただし、例外があります。就業規則や労働協約、個別の雇用契約書で「電車の遅延等は遅刻控除をしない」等の定めがある場合は、控除しないことになります。また、従業員から「通勤手段がない」との連絡を受け、自宅待機等を命じた場合は、労働基準法第26条に規定する「使用者の責に帰すべき事由による休業」となり、平均賃金の六割以上の支払いが必要となります。一方、「通勤手段が無いので休みたい」「迂回するので遅れる」など、出勤するかしないかは本人の選択に任せ、その結果、休む場合には有給取得になる等の説明をします。また、遅れて出勤してきた場合には、遅れて労働した時間分の賃金カットも許されます。しかし、電車遅延は、本人の不可抗力によるものであることから、賃金カット等をすれば労使の信頼関係に悪影響を与える可能性もあり、使用者の判断で賃金カットをしない事業者も少なくありません。

そのため、このような場合にどう対応をするか、事前に院内で取り決めをしておいた方がよいでしょう。

質問② 従業員が出勤予定の日が、医院の都合で急に休診することになった時の賃金支払いは必要になるのか。

回答② 労基法第26条では「使用者の責に帰すべき事由による休業の場合」には「その平均賃金の60%以上の手当てを支払わなければならない」と規定されているので、この場合は、支払義務があるといえます。

ここで注意すべきトラブルとして、賃金支払が100%か60%かで揉めるケースが挙げられます。これは、「使用者の責に帰すべき事由」について、民法の規定が適用されるケースがあるためです。よって、事業者の故意・過失等による休診の場合は、事業者に賃金全額(100%)の支払義務が生じることになります。労基法第26条との違いは、民法が「使用者の故意、過失又は信義則上これと同視すべきもの」がある場合にのみ賃金支払義務を負わせているのに対し、労基法はそれよりも広く、不可抗力の場合を除いて事業者に賃金支払義務を負わせる形になっていることです。民法上の要件を満たして賃金全額(100%)の請求権があれば、労基法にも該当しているといえるため、少なくとも平均賃金の60%以上を支払わない限り労基法違反となり、罰則適応の対象ということになります。休診の事情によっては、民法の規定は適用されず、労基法のみ適用される場合もあります。トラブルを回避するためにも、就業規則等で「医院の責に帰すべき事由による休診の場合は、労基法第12条に規定する平均賃金の百分の60を支給する」など、明確な定めをすることが重要です。