定期健康診断と結核健診について/2019年3月号掲載(No.588)

定期健康診断と結核健診について

 質問1 労働基準監督署から「健康診断個人票」を提示するよう連絡があった。これまで、当院では従業員に健康診断を受けさせていないのだが、必ず受けさせなければならないものか。法的根拠、および罰則規定などはあるか。

 回答1 常時使用する労働者(正職員および一週間の所定労働時間が正職員の1週間の所定労働時間の3/4以上であればパートも含む)が1人でもいる場合は、1年に1度、健康診断を受けさせなければいけません。「労働安全衛生法第66条」には「事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による健康診断を行なわなければならない」と記載があります。また、健康診断の実施結果については、健康診断個人票を作成し、5年間保存しなければいけません。従業員に健康診断を受診させる義務を果たしていないとみなされる場合は、事業主に対し、従業員1人につき50万円以下の罰金が科せられることがあります。

 質問2 健康診断の費用負担は、事業主側で負わなければならないのか。

 回答2 健康診断を受けさせるのは事業主の義務になりますので、事業主が費用負担すべきものとされています。ただし、従業員が事業主側の用意した場所以外での健康診断を希望する場合は、従業員負担でも問題ありません。また、再検査やオプション検査などは原則として、事業主で負担する必要はありません。受診に要する時間については、労使間の協議によって賃金が発生するかどうかを定めるべきとされていますが、事業主側が義務としていることを勘案すれば、受診に要する時間の賃金を事業主が支払うことが望ましいでしょう。健康診断の費用に関しては、福利厚生費として経費扱いすることができますので、受けさせた後は必ず領収書をもらうようにしましょう。

 質問3 保健所から結核の定期健康診断(結核健診)の報告を出してほしいというお知らせが届いた。これは義務なのか。また、従業員から胸部エックス線検査を受けたくないという声があるのだが、受けさせなくても良いか。

 回答3 現行法規では、歯科医療機関の従業員は結核健診を受ける義務があります。これは、歯科医療機関が「感染症法で結核に係る健康診断の対象とされている施設」に指定されているためです。結核健診は、結核の罹患率が高い者や結核を発病すると周囲に感染させるおそれが高い者等に対する健康診断の実施を義務付けることにより、結核を早期に発見し、集団感染を防ぐことを目的としており、健康診断同様、1年に1度、必ず受けさせる必要があります。最近は相談事例のように保健所からの連絡が来たというご相談が増えています。「平成29年結核登録者情報調査年報集計結果」によれば、全体の結核罹患患者数は減少しているのに対して、医療従事者の結核罹患者は若干の増加傾向にあり、感染予防の観点からも、結核健診に対する呼びかけが行われているのかと考えられます。検査を受けられない事情があるという従業員がいる場合は、管轄の保健所に相談して対応してください。