採用・解雇時の留意点/2019年7月号掲載(No.592号)

採用・解雇時の留意点

質問1 本年8月から新たに常勤の歯科衛生士を採用する。採用にあたり、どのような手続きをすればいいか。

回答1 新規採用にあたり、歯科衛生士の場合は保健所に「開設届出事項一部変更届」を提出します。届出は雇い入れから10日以内に行い、氏名や免許番号、就職日の記載が必要になります。添付書類として免許証の原本(照会のため)とコピーが必要です。新規採用が歯科医師の場合は、保健所への届出の他に、関東信越厚生局東京事務所に「保険医療機関・保険薬局の届出事項変更の届出」を提出する必要があります。また、非常勤の従業員を採用する際は、所定労働時間が週20時間以上かつ31日以上雇用する見込みの従業員に関しては雇用保険、1週間の所定労働時間と1カ月の所定労働日数が常勤の従業員と比べ3/4以上の従業員に関しては、雇用保険の他に社会保険の加入が必要です。ただし、社会保険加入に関しては、従業員が常時5人未満の個人立診療所の場合は必要ありません。労災保険に関しては、1人でも従業員を雇用した場合は、必ず手続きをする必要があります。

 

質問2 新規採用時に、従業員に明示する必要のある労働条件の項目を教えてほしい。

回答2 新規採用時の労働条件の明示にあたり、労働基準法に義務付けられている書面に記さなければいけない事項としては、①労働契約の期間、②就業の場所・従事する業務内容、③労働時間に関する事項(始業・終業時間、残業の有無、休憩・休日等)、④賃金、⑤退職に関する事項―の五点です。加えて、パート職員の場合は「昇給の有無」、「退職手当の有無」、「賞与の有無」、「雇用管理の相談窓口」の記載が必要です。有期雇用契約の場合は、書面に①~⑤に加えて「契約更新の基準の明示」が必要です。

 

質問3 新入職員が診療所の職務に合わないため、解雇したい。注意点を。

回答3 まず初めに、解雇が及ぼす影響は他の従業員の不安を煽ることや、解雇する従業員の生活に打撃を与えることを理解した上で、解雇することを検討してください。雇用から2週間以内であれば、事業主都合で特に理由なく解雇することができます。それ以上経過した場合は、社会通念上妥当だと認められる理由と即時解雇の場合、向う1カ月分の解雇予告手当(30日前までの予告なら不要)が発生します。これは有期雇用で更新を前提としている場合にも適用されます。解雇に際しては、できる限り自己都合で退職してもらうように促しましょう。これを退職勧奨と言います。退職勧奨にあたっては、強制的に辞めさせるような言葉は控え、自院に合わない理由を伝え、次の職場のあっせんや失業保険について等の説明、場合によっては退職金の積み増しなどを提示しつつ、従業員の退職後の不安を払拭する努力をしましょう。それでも退職が難しい場合に限り、解雇をします。強制解雇は労働裁判などに発展するケースも多く、社会通念上妥当だと認められない場合、解雇が無効になります。また、事業主都合による解雇になれば、従業員側は早く失業保険をもらえますが、経歴に傷がつく上、事業主側はおおむね半年間雇用に関わる助成金の申請ができなくなります。解雇に踏み切る際は充分に相互理解を深めた上で、行うようにしましょう。