8月定例報告を巡り歯科医療機関大混乱 協会への問い合わせ 8月累計2000件超
◆施設基準や選定療養の報告が大幅変更
施設基準の届出や選定療養の報告を行っている医療機関では、毎年8月1日時点の状況を同月31日までに厚生局へ報告することが義務付けられている。2025年度に報告が必要な施設基準等の総数は12項目あり、そのうち一般的な診療所で届出や報告が必要だったのは4から8項目ほどだ。
これに対し、26年度の定期報告からは金属床義歯、歯科衛生実地指導料などの算定状況、初診料(歯科)の注1の報告などが不要となったため、求められる報告は、特別なものを除けばわずか2項目のみに減少した。無駄な事務作業が減ることは大歓迎だが、この大幅な削減が事前に十分に周知されていなかったため、現場では「何を提出すればよいか分からない」など大きな混乱が生じた。
◆混乱の中心はベースアップ評価料の報告
26年度の歯科診療報酬改定では、ベースアップ評価料の仕組みが大幅に変更された。その影響で、同評価料を25年度から算定しており、26年度も引き続き算定を希望する医療機関は、6月1日までに再届出を迫られることとなった。さらに、8月には25年度分の実績報告書および26年度分の中間報告書の提出も必要となり、現場は対応に追われた。
加えて、同評価料の算定を26年度から新たに開始した医療機関においては、6月1日までに算定開始のための届出をするのに加え、8月には26年度分の中間報告書の提出を求められ、混乱に拍車がかかった。
その結果、実績報告書や中間報告書の提出が間に合わない医療機関が続出。最終的に提出締め切りが延長される事態となり、受け手である厚生局の窓口でも大混乱が生じることとなった。
◆分かりにくい制度の問題が露呈
実績報告等の報告書への記載内容自体も分かりづらく、困惑が広がった。そもそも「定期昇給」と「ベースアップ」が明確に区別されていない小規模な歯科医院にとって、ベースアップ評価料の概念自体が理解しにくい。さらに、非常勤やパートタイムの職員を雇用している場合、何を基準に計算すべきかが不透明であった。また、評価料の過不足が生じた際の処理方法や、法定福利費分の扱いが、現場の実務に即していないことも混乱を深める原因となった。
◆交付金との連動でさらに複雑化
東京都の診療所等賃上げ支援事業(給付額15万円)の交付金を、報告書にどのように記載すべきかも大きな問題となった。交付金を活用して引き上げた分は、評価料による賃上げではないため、報告書の計算から除外しなければならない。給与の引き上げ分を、ベースアップ評価料による部分と、交付金による部分、それ以外の部分に分割して計算することが必要となった。
さらに、この交付金制度そのものの設計も不自然であった。制度内容が公表されたのは2月であるにもかかわらず、交付金の対象となる賃上げ期間は「昨年12月から今年5 月まで」と、過去にさかのぼる形に設定されていた。そのため、過去の対象月分については一時金(賞与など)として遡及支給するなどのイレギュラーな対応が必要となり、報告を含めた事務処理を極めて複雑にした。
◆直前の情報開示とつながらない厚生局
必要な様式の公表の遅れもあった。3月に改定内容が発表されていたにもかかわらず、8月報告の用紙や詳細なマニュアルが公開されたのは、5ヵ月も経過した報告書提出月の8月だった。また、ベースアップ評価料関連の届け出に限っては、従来の施設基準の届け出方式とは異なり、原則電子メールでの提出を求められるなど、医療機関は厚生局の都合に振り回され続けた。
こうした状況下で、歯科医療機関が確認のために問い合わせを試みても、厚生局の電話回線は常に話し中で、全くつながらない状態が続いた。
協会への問い合わせ件数も、8月としては異例の2千200件を上回った。
◆混乱の原因を明らかにし改善を
26年度の診療報酬改定は、医療DXの一環として施行時期を後ろ倒しにしてから2回目の改定であった。にもかかわらず、これほどまでに現場が混乱した原因はどこにあるのか。
これまでも混乱を引き起こした診療報酬改定は多々あった。しかし、そのほとんどは診療内容にかかわるものである。
今回の混乱の原因は、診療には直接かかわらない施設基準を設定していること、歯科医療機関の実態を考慮せず、どのような混乱が起きるかも想定せず、ただただ政府の都合で対応を進めたことにあると考えられる。
そもそも施行時期後ろ倒しの本来の目的は、「医療機関・薬局等やベンダの集中的な業務負荷を平準化する」(23年8月2日・第551回中央社会保険医療協議会)ことであったはずだ。しかし、医療機関での業務負荷は平準化どころか、過度の一途をたどっている。厚生労働省は今回の事態の原因を反省し、同じような混乱を起こさないよう対策を取るべきである。





















