労働条件の変更と昼休みの電話当番/機関紙2016年4月1日号(№553号)より 

労働条件の変更と昼休みの電話当番/機関紙2016年4月1日号(№553号)より 

質問① 患者が減ってしまって経営が苦しい。週三日勤務を週一日勤務に変更する提案をしたいのだが、残りの契約期間内のパートの労働時間を減らしても、問題はないか。

回答① 労働契約法第九条より、本人の同意がないと変更はできません。もし、同意が得られない場合は、その変更がないと経営の危機に直面するということであっても、休業手当として給与の六割を保証しなければいけません。今回のケースは、一時的な休業でなく、労働条件の変更という観点から考えると、勤務日数・勤務時間を減らすといった、一度定めた労働条件を変更するためには、従業員の同意が必要になります。特に、賃金の減少を伴う変更を一方的に行うことは、合理性がないと認められません。そのため、契約期間終了後に改めて契約内容を提示して、双方合意の上で契約することが望ましいと思います。また、従業員を解雇して人員を減らすことは、客観的、合理的理由があり、社会通念上妥当と判断されない限りは認められません。従業員の労務トラブルは近年増えてきているため、労働条件通知書の見直しなど、事前に対策を打ちましょう。

 

質問② 当診療所では昼休み中に歯科衛生士や助手、受付に電話当番をお願いしている。先日、他の診療所の先生から、「昼休み中の電話当番は違法」だという話を聞いた。万が一のために対策は、どうすればいいか。

回答② 昼休みという名目で休憩時間内に電話当番を依頼しているということであれば、労働基準法違反にあたります。休憩時間は自由に利用させなければいけないとされており、実際に労働には従事していないが、いつ使用者から働くように命ぜられるか不明確な時間や、外来患者のいない場合でも受付時間中として電話や来患があれば直ちに対応できるように待機させている時間は、休憩時間に該当しないと労働基準法に定められています。八時間以上の労働時間には少なくとも一時間、六時間を超える労働時間には少なくとも四十五分以上の休憩時間を与える必要があります。しかし、休憩時間は労働時間の途中に与えれば良いもので、一斉に与える必要はありません。どうしても昼休みに電話が多いとのことでしたら、三十分毎に休憩時間をずらして与えるなど、検討されてはいかがでしょうか。ただ、休憩時間をずらしたり、三十分毎に分断したりすることで、従業員が不利益を被るのであれば、それは労働条件の不利益変更にあたりますので、従業員の同意がなければ変更することができません。昨今では「昼休みは一切電話を取らないで留守電に切り替える」といった診療所もあります。従業員の方々とご相談の上、先生の歯科診療所に合った休憩時間制度を確立していくのが良いでしょう。