テナントをめぐる オーナーとのトラブル/機関紙2017年5月1日号(№566号)より 

テナントをめぐる オーナーとのトラブル

質問1 歯科医院のテナントオーナーから家賃の値上げを言い渡された。最近は周辺の建物の賃料が上がっているとのことで、それに伴う値上げを行いたいそうだ。値上げを拒むことはできるか。

回答1 借地借家法第32条より、建物の賃料が土地や建物の租税や価格、その他の経済事情の変動、または近くの同種の建物と比較して不相当となった時は、契約の条件に関わらず、当事者は賃料の額の増減を請求することができると定められています。ただし、一定期間建物の賃料を増額しない旨の特約がある場合には、その定めに従うことになるので、まずは契約書を見直しましょう。今回のケースでは周辺地域の経済事情の変動による賃料の値上げを求めているため、近隣の賃貸物件などの相場がどの程度のものかを把握し、交渉するときの参考にしてください。

質問2 テナントオーナーから「最近患者さんが増えているようなので、賃料を上げさせてもらってもいいか」と言われ、困惑している。実際はそれほど患者さんが増えておらず、値上げされては困るのだが、どう対応すべきか。

回答2 値上げの請求については、借地借家法第32条より借主の許可がなくとも行うことができますが、必ず応じなければいけないわけではありません。値上げに応じたくない場合は双方で話し合いの場を持ちましょう。話し合いの期間は従前の家賃の支払いを行ってください。支払いがない場合は家賃不払いで契約を解除される可能性があります。賃料の交渉が折り合わず、従前の家賃をオーナーが受け取らない場合は、家賃を供託金として供託所に納めることで、家賃不払いによる立ち退きを免れることができます。話し合いや調停で合意がなされない場合、裁判により適正な家賃を決めてもらうことになります。

質問3 新しいオーナーに代わり「分譲マンションにしたいので、テナントを購入するか、立ち退いてくれ」と言われている。この要求には必ず応じなければならないか。

回答3 立ち退きや購入に応じる義務はありません。立ち退きについては、借地借家法第28条より、正当な事由がなければ認められません。今回のケースは、どうしても分譲にしたいので立ち退いてもらいたいということであれば、オーナー側が借主側に立ち退き料を支払うことで正当事由を補完する必要があります。購入の依頼についても、オーナー側の都合になりますので、応じる必要はありません。最近は、テナントに関する相談が多く寄せられています。思わぬところで日常診療の妨げを作らないためにも、契約を行う時は、契約書の内容をしっかり確認した上で行いましょう。また、この機会にぜひ、契約内容を再度ご確認ください。協会では月に一度、無料で顧問弁護士による法律相談を行っていますので、お困りの際はぜひ、協会経営管理部までご相談ください(電話/03―3205―2999)。