年別アーカイブ: 2022年

地区懇談会、3年ぶりに会場開催

 3年ぶりに現地会場で会員地区懇談会を北千住(城東7月16日)、大井町(城南7月23日)、立川(多摩7月30日)で開催した。「いまさら聞けない?CAD/CAMインレーや総医など改定後の疑問点を解決しよう!」と題し、2022年度診療報酬改定の内容で講師陣が直面した実際に困った事例や協会に多く寄せられた相談をもとに事前にアンケートを行った上で、参加した会員の疑問点を中心に話題提供を行い、実際に困っている点、具体的な事例など交え発言してもらい、懇談を行った。
 懇談時に、「CAD/CAM冠の症例数の実態や実際どれくらいの割合で他の診療所は請求を出しているのか知りたい」「オンライン資格確認の電子加算が新たに創設されたが、どのくらいの診療所が導入し、算定しているか状況を知りたい」などの日々の業務に直結する質問が寄せられ、協会講師陣が自分自身でどのように対応をしたかという具体例や現在都内の歯科診療所がどのような状況になっているかなどを丁寧に回答し、懇談した。
 終了後アンケートでは「知らなかったことも多くあり、今後の診療に活かしていける内容でした」「直接会場に参加したことで、近くの先生方の状況などを知ることができ、少し安心できた。また次回も参加したい」といった感想が寄せられた。
 開催直前にコロナの感染者数が爆発的に増加したこともあり、開催が危ぶまれたが、現地で直接聞くことのるメリットは大きいとの声もあり、可能な感染対策を講じ開催した。
 これからも会員地区懇談会は感染状況を注視しつつ、会場で開催していく予定だ。既にご参加いただいている会員はもとより、まだ参加されていない会員は、ぜひ一度ご参加いただき、協会に直接意見をお寄せいただきたい。

明日からの臨床に活かせる TBI&PMTC・ デブライドメント講習開催

 協会は8月7日、ワイム貸会議室高田馬場にて、第1回スタッフ講習会「TBI&PMTC・デブライドメント」を開催した。講師は、古畑歯科医院勤務の歯科衛生士の波多野映子氏が務め、43名の歯科衛生士が参加した。3人掛けのテーブルに一人のみの着席とするなど、新型コロナ感染防止対策を徹底し、万全を期しての開催となった。
 今回は、「ライフステージに沿った口腔衛生指導」をテーマとするTBIに関する声掛けや口腔衛生指導方法の講義、また「プロフェッショナルケアの極意」をテーマに歯科衛生士の実践的立場からPMTC・デブイドメント、歯周治療とSPTに関する講習を行った。波多野氏は古畑歯科医院の多くの症例を用いつつ、指導方法や患者さんへの声掛け方法を紹介した。参加者からは、「実際の症例を用いての講義でわかりやすかった」「患者さんの症状に合わせた声掛けのヒントを紹介されとても参考になった」などの感想が寄せられた。
 TBI&PMTC・デブライドメントの講習会は来年度も開催予定。協会では、会員のスタッフ向けの講習会を定期的に開催しているため、スタッフ教育や研修にぜひご活用いただきたい。

WEBサイトによる診療所PRのポイント①

WEBに係る歯科関連の法令やトラブル対応などについて、
歯科専門にサイト制作、運用、コンサルディングを手掛ける専門家が解説する本連載。
今回は医院情報サイトについて―。

 2022年現在、WEBサイト(医院が運営するサイト)を活用している歯科医院の数は、かなり多いのではないでしょうか。しかし、WEBサイトはどのような効果が出れば「成功」で、一方どのような状況であれば「改善」の必要があるのか、わかりづらいのが現実です。そこで、情報発信の手段としての歯科医院のWEBサイトについて考えていきたいと思います。
 まず、サイトの目的を明確にするところからはじめる必要がありますが、目的は「大勢の新患が希望の治療を受けるために来院する」と思われる方が大半であることは間違いありません。残念ながら、この“大勢”という言葉をもっと具体的に意識できなければ、サイトからの新規患者の来院はそれほど望めないでしょう。
 現在運営されているサイトの成果指標として「1カ月の新規患者数の20%以上がWEBサイトからになっているか」を確認してみてください。20%を下回る場合、サイト上の課題、歯科医院の認知がそもそもないことの問題(開院直後など)、ネット上に競合が多すぎるなどの原因があります。20~40%くらいは正常、もしくは健全な数字ですので、今後は新たなコンテンツを追加するなどの対策を検討してみてください。
 そして、40%以上は「危険な状態」と言えるでしょう。サイトがたくさんの患者を集めている状態が「危険?」と思われる方が多いと思います。仮に80%がサイトからの患者とします。「サイトのサーバーが障害でダウンした」「検索サイトからペナルティを受けてサイトの来訪者が0になった」などのトラブルに見舞われると、患者の8割を失うことになります。すぐに復旧できるものであれば良いですが、4週間も続けば経営に関わる非常事態です。
 インターネットという現実に存在しない世界に、患者の大半を依存することの危険性を経営視点で振り返る必要があります。次回からは、インターネットマーケティングをそのまま歯科医院サイトに持ち込む時の注意点などを考えます。
(※数値等データは自社の分析に基づく)

クレセル株式会社

(東京歯科保険医新聞2022年9月号4面掲載)

10月から75歳以上の負担割合2割化 物価高騰の中で強行

当協会も反対してきた75歳以上で一定の所得がある患者の負担割合が、10月より1割から2割に引き上げられる。配慮措置はあるものの、複雑な制度による窓口での混乱、受診抑制、そのことが原因での重症化が懸念される。

 

被保険者証は9月に発送

 
10月からの負担割合変更に伴い、今年は通常の7月に続いて9月にもすべての75歳以上の後期高齢者に対して新しい被保険者証が発行される(表1)。10月以降に診療をする際には、窓口で水色(東京都の場合)の被保険者証の提示を求めて確認する必要がある。

 

負担増加額が3,000円以下になるよう領収


窓口負担の増加額の上限を3,000円とする配慮措置が、2025年9月まで設けられている。この配慮措置は、同一医療機関での受診の場合は払い戻しではなく現物給付となっているため、医療機関で診療毎に計算し、1カ月当たりの負担増加額が3,000円を超えないように負担金を領収することになる。
今のところレセコンメーカー側で対応する予定となっているが、仕組みとして、負担増加額が3,000円以上になった場合は2割負担から1割負担+3,000円に変更となり、患者への説明など窓口業務が煩雑になることが懸念される(表2)。
複数の医療機関を受診している場合は、合算した1カ月当たりの負担増の上限を3,000円とする配慮措置もあるが、超えた分は最短で4カ月後に患者自身が事前登録した口座へ払い戻される。口座が登録されていない患者には、9月中旬に申請書が郵送される。後期高齢者である患者には、その手続きの負担も増えることになる。

 

「10月までに治療を終えてほしい」相談増加も?


例えば、後期高齢者である患者Aさんは、「値上がり前に治療できないでしょうか」と主治医に相談をしたとする。10月から負担割合が1割から2割になる可能性があり、家族と相談し、値上がり前に治療を終えたいと考えたようである。このような相談が医療機関で頻発することが危惧される。しかし、歯科治療は症状によって一定の期間が必要になることもあり、すべての治療を9月でまに終わらせることは難しいケースも少なくない。
岸田文雄首相は、物価・賃金・生活総合対策本部を立ち上げ、物価高騰に関する追加対策策定を指示する方針を示した。ただし、追加策はエネルギーと食料品に集中して講じるとしており、医療については触れていない。
10月から負担割合が2割になる対象は約370万人であり、75歳以上の患者の2割にも相当する。引き上げを中止する、あるいは窓口負担金について対策を講じるべきである。

理事会声明 オンライン資格確認システム導入の義務化撤回を

 中医協総会で、医療等におけるオンライン資格確認システム導入が、20234月から原則義務化される方針案が了承され、厚生労働大臣に答申された。

 この義務化は、療養担当規則において紙レセプト請求以外の医療機関にオンライン資格確認システムの体制整備を義務付けるとともに、診療報酬の変更、補助金の内容を見直して体制整備を強制する内容である。

 システム導入普及率の遅れを取り戻すべく政府・行政は、「電子的保健医療情報活用加算」から「医療情報・システム基盤整備体制充実加算」に10月から再編するなど、医療機関から提供する医療サービスへの対価であるべき診療報酬の在り方を歪めた。

 現在、全医療機関における運用段階に至った割合は現状26%、医科診療所では17.5%、歯科診療所では18.1%である。20233月末までに義務化となれば、その導入準備は困難を極める。

 オンライン資格確認システムを導入した医療機関からは、システムの不安定さや情報漏洩のリスク、院内ネットワークの障害、患者への窓口対応、医療機関での導入コスト、ランニングコストの問題も指摘されるなど、問題点は残されたままだ。

 ほかにも訪問診療や生活保護の患者さんへの対応もできておらず、システム改善が行われない状況では、導入を義務化すべきではないという意見が上がっている。

 政府・行政は場当たり的な施策によって医療機関、また国民に負担を強いるのではなく、コロナ禍で疲弊した医療機関等の立て直しに向けて施策すべきだ。医療機関と国民に疑念を抱かせたことに猛省を促したい。オンライン資格確認システム導入の義務化の撤回を求める。

2022年98

東京歯科保険医協会

10回理事会

長期維持管理政策の歴史 vol.3

「か初診」の登場とその後

前回は、2000年診療報酬改定で登場した「か初診」(かかりつけ歯科医初診料)の算定要件等と、その後、橋本龍太郎元首相への献金問題を経て2006年度改定で「か初診」廃止
に至るまでの経緯を紹介した。
ところで、「か初診」導入時の2000年から2002年に向けては、膨張する医療費をどうするのかが政権のテーマとなり、混合診療が取り上げられた時期でもあった。歯科では、従来から補綴の金属床総義歯と歯冠修復物に関しては特別な料金(自費)と認められていた。歯周病に関してP特養が医療保険の特定療養費(保険)に適合するかどうかが厚労省医療保健福祉協議会作業委員会で検討され、「継続的な治療管理は保険診療特定療養費の活用」との報告がなされ、中医協の診療報酬基本問題委員会でも「再発抑制に必要なセルフケアを継続して行く上での指導管理の評価」が議論の中心となり、この流れの中で「か初診」廃止後はこの保険者主導の長期管理路線が以降改定ごとに少しずつ取り入れられて来ていると言える。

月に1回 基本治療あり 基本治療なし
1~9歯 310点 210点
10~19歯 450点 270点
20歯以上 620点 360点


2002年4月、日本歯周病学会は「治癒と病状安定」の考えの流れを示すフローチャートを発表し、2002年4月の診療報酬改定では、メインテナンスに係わる総合評価として「歯周疾患継続治療診断料100点」が新設され、1~3カ月間隔で再診時に歯周組織検査・歯周基本治療・指導管理を行った場合に歯周疾患継続総合診療料として表1を算定する取り扱いとなった。
2005年は、小泉純一郎首相による衆議院の電撃解散によって小泉劇場の幕が切って落とされた。基本政策は当時の英国のサッチャー政権と同じ小さな政府であり、構造改革路線の延長として「財政再建」を打ち出した。その中の一つが「医療制度改革」であり、これを受けて厚労省は2005年10月19日、「医療制度構造改革試案」を発表、2025年に向けての医療費の伸びの削減方向を示した。その中で短期的な方向として、①公的保険給付の内容・範囲の見直し、②診
療報酬改定―の2点を挙げた。政府は2005年12月1日、「医療制度改革大綱」を決定。すでに廃止の憶測が流れていた「か初診」は、2006年4月の診療報酬改定で廃止された。しかし、長期維持管理路線=「か初診路線」が強化される方向は変わらなかった。
マスコミは、「医療は高コスト」と表現するが、当事者の我々からすれば、日本の医療は低報酬・低コストであり、先進諸国と比較してもGDP比最低である。良質な医療を低コストで提供しているのが日本であると、WHOも認めていた。
2008年4月改定の中で政府は、「質の高い医療を効率的に提供すための視点」と180度転換、「歯科医療の充実について」との記述が加えられた。その主たるものは2007年11月の日本歯科医学会の「歯周病の診断と治療に関する指針」の発表に基づくもので、分かり易いフローチャートも発表された。その内容は表2のように、管理料の大行列となった。

 

中川勝洋
東京歯科保険医協会 第3代会長、協会顧問

なかがわ・かつひろ:1967年東京歯科大学歯学部卒業、1967年桜田歯科診療所開設、1981年東京歯科保険医協会理事、昭和大学医学部医学博士授与。1993年協会副会長、2003年協会会長、2011年協会会長を辞し理事に。2022年理事を勇退し協会顧問に就任。

オンライン資格確認のシステム導入義務化の撤回等を求める 医師・歯科医師要請署名とアンケートへのご協力のお願い

政府の「骨太の方針2022」では、これまで医療機関において任意とされてきた「オンライン資格確認」のシステム導入について、「2023年4月より医療機関・薬局に原則義務付ける」としました。また、「2024年度中を目途に保険者による保険証発行の選択制の導入を目指す」とともに、「システム導入状況等を踏まえ、保険証の原則廃止を目指す」ともしています。誰もが使わざるを得ない保険証を廃止して、マイナンバーカードの取得を事実上義務化するものです。
 続く8月の中医協には、紙レセプト請求以外の医療機関等に義務付ける具体案が示され了承されました。医科診療所の97%、歯科診療所の91%が義務化対象となります。このままでは対応できない医療機関を閉院・廃業に追い込み、医療アクセスが阻害される危険性があります。
 マイナンバーカードは、申請・更新の煩わしさ、カード紛失による個人情報漏洩の危惧など様々な問題があります。マイナンバーカードを取得した人は、大切に保管している人がほとんどで、国民の多くは、マイナンバーカードを保険証として利用することを望んでいません。オンライン資格確認導入の原則義務化は明らかに行きすぎです。あくまでマイナンバーカードの取得は任意です。保険証廃止後も、加入者が申請すれば保険証を交付するとしていますが、わざわざ発行申請を行う負担を国民に課すことは納得できません。これまで同様、保険証は交付したうえで、マイナンバーカードの利用は任意とする方がはるかに簡便で合理的です。
 当会では歯科医師署名とアンケートを取り組みます。
 ぜひ下記リンク(Googleフォーム)より歯科医師署名とアンケートにご協力ください。

 

下記よりダウンロード、印刷いただき、FAX(03-3209-9918)で送信いただいても結構です。

会員署名 ダウンロー 会員アンケート ダウンロード

経営管理部長談話 「オンライン資格確認システムの導入は自由意思に任せるべき ―義務化は撤回を―」

 厚労省は2023年4月より「保険医療機関及び保険医療養担当規則」に、保険医療機関等での「電子資格確認」の実施を盛り込むことで、義務化を行うとした。しかし国民や保険医療機関は義務化に必要性を感じているであろうか。今回のオンライン資格確認システムの導入義務化は医療を利用してマイナンバーカード(以下マイナカード)普及を行う政策であることは明らかで、歯科医療に携わるものとして疑問を感じる。

 オンライン資格確認システムは、マイナカードに健康保険証機能を紐づけした「マイナ保険証」を読み取る機械=顔認証付きカードリーダー(以下カードリーダー)を保険医療機関等に設置し、本人確認を行う仕組みで、国は「医療DX」の基盤と位置付けている。

 マイナカードの普及はポイントを付与するなどして、普及促進を図っているが、「必要性が感じられない」「身分証明書は他にもある」「個人情報の漏えいが心配」「紛失や盗難が心配」(マイナンバー制度に関する世論調査 内閣府)などの理由で普及が進んでいない。そのため、だれもが利用する健康保険証の機能を追加し、医療機関にカードリーダーの設置を義務付けることで、導入促進を図ろうとしているのだろう。

 マイナ保険証の利用に関しても問題が多い。マイナ保険証は受診の度に提出が必要である。他にもマイナカードそのものに有効期限があり期限が切れれば使用ができない、更新の際には役所に行く必要があるなども指摘されている。

 カードリーダーの申し込み状況は、東京の歯科保険医療機関では47.7%(7/31現在)に留まっている。紙レセプトでの請求が認められている保険医療機関等は義務化の例外となったが、東京で67.6%の歯科医療機関が利用しているCD等による請求は義務化の対象となったままである。

 会員からは「保険証が有効であるか確認できる安心感がある」との声も聞くが、「カードリーダーやパソコンを置く場所が無い」「1日の来院患者が少ない当院では利用目的がよくわからない」「保険証だけで十分なのに、なぜわざわざマイナンバーを取り扱う必要があるのか、セキュリティ面の不安が増えるだけだ」など、必要性を疑問視する声が圧倒的だ。

 特に問題なのは、何も知らない高齢者などが端末にマイナカードを置いてしまい、知らないうちに保険証と紐付けられて2度と紐付けを解けないことだ。さらには、その作業に医療機関が協力してしまうことも大きな問題だ。また、通信障害や機械のエラーで利用ができなかった場合、このシステムを義務化した国は患者や医療機関に対して保障をするのだろうか。医療機関としてはマイナ保険証のみを持参した患者に対して、システムが使えない場合は10割負担で患者に受診してもらわざるを得なくなる。中医協の資料では導入することのメリットしか記されていないが、根本的にシステムが使えなくなるトラブルが起こった場合の対応など、まったく起こりえないような議論しかされていない。導入を義務化するのであれば、トラブルが起こった場合の対応について十分な議論が必要なのではないだろうか。

 厚労省ではオンライン資格確認システムの普及促進のため、カードリーダーを申し込んでいない医療機関等に電話をかけ、簡易書留での案内を始めた。案内を受け取った医療機関では不安になり、協会に問い合わせが多く寄せられている。

 私自身カードリーダーを導入し、実際にどのような問題があるか検証した。まず、設置の為の手続きやネット環境の整備が非常に複雑で大変であった。設置工事には半日を要しその間はカルテを見る事ができず保険診療ができなくなった。また狭い受付スペースへの設置のため場所が取られ不自由している。設置4ヶ月が経過した現在、マイナカードを使用した患者はたったの2名であった。乳幼児医療費助成制度(マル乳)等を利用の場合は、受給者証を原本で確認が必要なため、窓口業務は変わらない事にも気づいた。顔認証に使用するパソコンはWindowsに限定されており、更新の度に端末が使用不能になり、業者に連絡を取らざるを得ず、数時間利用できない等の問題が発生した。幸い現在は利用者が少なく大きなトラブルにはなっていないが、患者側の立場からすれば、使おうと思ったときに使えないことがあれば、義務化を指示した国ではなく医療機関に不信感を抱くだろう。このような問題点がある中での導入は院長の自由な判断に委ねられるべきであり、導入を決める際には実際にトラブルが起きた場合の対応をよく考える必要があるだろう。

 政府・厚労省には、現場の声に耳を傾け、現場が不安を抱かないよう丁寧に説明をするよう求める。「義務化になったら仕事を引退する」「保険医を辞める」と話している先生もいる。オンライン義務化のために辞めるのでは、地域医療へ与える影響も懸念される。現場にとってはそれほど重要な問題である。導入は自由意思に任せるべきで、強制的な「義務化」は撤回するよう強く求める。

2022年8月23日

経営管理部部長 相馬 基逸

東京歯科保険医新聞2022年(令和4年)8月1日

こちらをクリック▶東京歯科保険医新聞2022年(令和4年)8月1日 第629号

1面】

   1.社会医療診療行為別統計/20年間で構成割合 大きく変化
   2.「開業歯科会員アンケート」へのご協力のお願い
   3.ワクチン4回目接種拡大/医療・介護従事者
   4.ニュースビュー
   5.「探針」

2面】

   6.医療機関 個別指導日程が明らかに
   7.生活保護指定医療機関 個別指導7件実施へ
   8.新規開業医講習会 持参物・指摘事項・算定要件…40人が受講
   9.知識と技術を高める/研究会・行事のご案内QRコード
   10.夏季休診のご案内ポスター
   11.電子書籍「デンタルブック」ご案内

3面】

   12.歯系議員2氏は再選果たす/自民63、立憲17、維新12
   13.夏のあとがき~参院選後の今こそ、思いを巡らす~/会員投稿・菊地三四郎氏
   14.接遇講習会 2年ぶりの対面開催/患者に選ばれるため診療所全体の底上げを

【4面】

   15.経営・税務相談Q&A No.395 年次有給休暇 夏季休暇にあてられる?
   16.研究会・行事のご案内①
   17.Facebookお知らせ
   18.法律相談、経営&税務相談

【5面】

   19.研究会・行事のご案内②

【6面】

   20.能楽師・野村太一郎氏インタビュー「亡き父から最期の言葉 伝統継承を目指す若き才能」

【7面】

   21.暑中お見舞い名刺広告

【8面】

   22.協会史を振り返り現在・未来を見つめる Vol.2/「か初診」の登場とその後・中川勝洋氏
   23.教えて!会長!!Vol.61

【9面】

   24.症例研究/混合歯列期の患者に対するP重防

【10面】

   25.連載/私の目に映る歯科医療界⑰(東洋経済新報社・大西富士男氏)マイナ保険証使うシステム強制は大問題 国の義務化議論に欠くユーザー国民視点
   26.理事会だより
   27.協会活動日誌/2022年7月
   28.診療報酬改定 関連書籍「歯科疾患管理計画書」ご案内

11面】

   29.会員投稿「声」本日休診~小説「ツユクサ」を読み~石渡利幸先生
   30.IT相談室/Googleの口コミを気にしなくていい理由/氏(クレセル株式会社)
   31.保団連夏季セミナー
   32.新理事就任のお知らせ/池川裕子氏(葛飾区)
   33.会員優待サービスのお知らせ
   34.共済部だより

12面】

   35.第2回メディア懇談会/歯科医療総枠拡大に向け「国民の信頼を獲得するしかない」
   36.神田川界隈/医療費の総枠拡大はなぜできない?(加藤開副会長/豊島区)
   37.通信員便り No.124
   38.ひまわりのそばに(上)「戦後77年を迎え―」/黒田政俊氏
   39.新聞に投稿してみませんか?/投稿案内

13・14面】

   40.開業歯科会員アンケート

Google の 口コミを気にしなくていい理由

WEBに係る歯科関連の法令やトラブル対応などについて、
歯科専門にサイト制作、運用、コンサルディングを手掛ける専門家が解説する本連載。
今回は医院情報サイトについて―。

 「Googleにネガティブな口コミを書かれた」とのご相談が減ることなく寄せられます。
口コミに対する対応策は、以前の本連載でお伝えしましたが、今回はそもそも「Googleの口コミは気にしなくていい」理由を解説します。
 歯科に限らず医療機関の口コミは、概ねネガティブなことを書かれるケースが多い傾向にあります。それは医療サービスを「望み通りに処置してくれて当たり前」という、日本人ならではの先入観があり、“現実との対比”によって発生する不満足が原因です。
経験則ですが、書き込みを行う理由は、①本当に問題と思われる出来事があった、②漠然とした不満足の矛先が抽象的なネガティブ書き込みになっている、③クレームを書きたいだけ―という3つが代表的です。
 ①に対しては、口コミサイト上の返信機能を使うことで、他者が読んだ時に歯科医療機関側の誠意を示すことができ、「本当は過剰表現ではないか」という気持ちにさせることができます。
 ③については、書き込みをしている人のアイコンをタップ(クリック)すると、その人がどのような口コミを書いているか見ることができるので、確認してみてください。様々なところでクレームの書き込みを行い、それを楽しんでいる方です。
 したがって、現在悩みの種になっているのは②と③の書き込みについてです。歯科以外の病院や医療サービスサイトを見ると、概ねほぼ②と③の書き込みか、感謝のポジティブな書き込みしかないことに気がつきます。閲覧者は、「感謝」か、①~③の書き込みくらいにしかGoogleの口コミが使用されないことを肌感覚で知っているので、「歯科医院の選択材料」にGoogleの口コミを重視している方は少ないと言えるでしょう。
 これが過剰にGoogleのネガティブな口コミを気にしなくてよい理由です。ただし、明確な誹謗中傷や具体的過ぎる内容については、法的な対応を検討されることをおススメします。

クレセル株式会社

(東京歯科保険医新聞2022年8月号11面掲載)

長期維持管理政策の歴史 vol.2

「か初診」の登場とその後

2000年(平成12年)の診療報酬改定で、歯科初診料186点とは別に「かかりつけ歯科医初診料」、いわゆる「か初診」が270点で導入され医科初診料と同じになったが、再診料は40点で医科とは異なった。初・再診料の医科歯科格差解消は歯科の長年の要望であったが、か初診以外は従来のままで据え置かれた。その算定要件は、以下の3項目であった。
そして、この要件の中で「同意と文書提供」という縛りを付け、再び「か初診」を算定できるのは、治療終了後3カ月目からとし、また、説明手段のスタディモデル(50点)と口腔内写真(50点)は包括化され算定できない。「か初診」は医科と同じになったが、指導管理を主とする医科との格差はむしろ拡大したと言え、1口腔1初診の歯科の概念が強化された。医科でも00年度診療報酬改定に際して「かかりつけ医機能」について検討され、指導料に対する継続管理加算が導入された。
1日平均16名~20名の患者数の歯科では加算点数はなく、270点だけの算定であり、医科と比べて厳しい「かかりつけ機能」の要件となっており、歯科の中での「かかりつけ機能」の定義付けがされていない中、最初に270点ありきであった。

02年(平成14年)の改定は、初のマイナス改定となった。初診料は186点から180点へ引き下げられたが、「か初診」は270点のまま据え置かれた。また、歯周病に「治癒と病状安定」の概念が取り入れられ、2回目の歯周病検査で病状安定と判断されたら継続治療診断(基本検査・精密検査)を行い100点を算定、①継続治療計画を作成し、②1~3カ月間隔で検査・基本治療・指導という「継続管理」を行う。算定点数は左記表の通りだ。
05年は憂鬱な年となった。橋本龍太郎元首相への1億円献金がワイロとの疑いで日本歯科医師会・日本歯科医師連盟元会長の臼田貞夫氏をはじめ5名の逮捕者を出し、「か初診」と「1億円献金」が連日のように新聞・テレビに取り上げられることとなり、結果、中医協に歯科側委員は出席せず、保険者側の「保険者機能を推進する会」の活動が活発化した。06年(平成18年)の改定で「か初診」は廃止となり、保険者主導のかかりつけ歯科医路線へと姿をかえた。
02年以降、協会は「かかりつけ歯科医」は歯科医師が決めることではなく患者さんが選択することだとして、「か初診」の廃止運動を行ってきた。協会アンケートでは会員の92%は算定していなかった。しかし、患者さんへの情報提供は必要であるので「お口の治療計画書」を協会独自に作成し、従前から会員に提供してきたが、9月の保団連理事会では、いくつかの協会から廃止運動と矛盾しているとの発言がなされた。保団連歯科理事会議ではそのような発言はなされいなかったので、9月に保団連に意見書を提出し、訂正を求めた。

中川勝洋
東京歯科保険医協会 第3代会長、協会顧問

なかがわ・かつひろ:1967年東京歯科大学歯学部卒業、1967年桜田歯科診療所開設、1981年東京歯科保険医協会理事、昭和大学医学部医学博士授与。1993年協会副会長、2003年協会会長、2011年協会会長を辞し理事に。2022年理事を勇退し協会顧問に就任。

【教えて!会長!! Vol.61】CAD/CAMインレー

—4月の診療報酬改定でCAD/CAMインレーが保険収載されました。

坪田有史会長:新しい技術が保険収載された場合、今まで多くの技術で医療技術評価提案書を提出した学会や関連学会から診療指針(ガイドライン)が示されてきました。現時点でCAD/CAMインレーに関しては学会からの診療指針が示されていません。4月の改定以降、本会にCAD/CAMインレーに関して会員から多数の質問や問い合わせがあります。そこで今回、臨床的な視点でCAD/CAMインレーについて解説します。

—診療報酬上の算定について教えてください。

坪田:CAD/CAMインレーを保険で行うにはCAD/CAM冠と同じく、施設基準の届出が必要ですが、既に4月の改定前からCAD/CAM冠の届出を行っている医療機関は再度の届出は不要です。院内掲示物の名称を、「CAD/CAM冠」から「CAD/CAM冠及びCAD/CAMインレー」に変更してください。
「表1」に22年7月現在のCAD/CAMインレーとメタルインレーの比較を示します。なお、12%金銀パラジウム合金(以下、「金パラ」)の材料料の点数は、10月1日に予定されている随時改定により変更される可能性があります。
CAD/CAMインレーの適用は、小臼歯と第一大臼歯の複雑窩洞に限られます。なお、上下左右すべての第二大臼歯が残存し左右の咬合支持があり、過度な咬合圧が加わらない場合に第一大臼歯に適用できます。歯科用金属アレルギー患者はすべての臼歯部に適用できますが、大臼歯については医科と連携の上、診療情報提供に基づく場合に限られます。

—窩洞形成の注意点を教えてください。

坪田:図にCAD/CAMインレーの窩洞形成について示します。表内の形成量には注意が必要です。「表2」に窩洞形成の注意点を示します。
間接法で作業模型からの製作のみが認められているため、精確な印象採得を行い、製作されてきたCAD/CAMインレーの装着は、必ず接着性レジンセメントを使用し、装着前処理として接着面にアルミナ・サンドブラスト処理およびシラン処理(内面処理加算1:45点)を行うことが推奨されます。

会長 坪田有史

(東京歯科保険医新聞2022年8月号8面掲載)

 

【キャンセル待ち】9/14(水)、10/27(木)、11/16(水)シャープニング・SRP講習会

毎年好評を頂いておりますシャープニング・SRP実習の講習会です 9月はキュレット型スケーラーの形態に基づいた望ましいスケーラーのシャープニング法について講義、その後グループに分かれ、少人数制で分度器やルーペなどを使用しながら実際の研ぎ方を学びます。10月は「SRP(手用スケーラー)編」11月は「SRP(超音波スケーラー)編」を行います。シャープニングやSRPのノウハウを基本から学びたい方はぜひご参加ください。

全3回、ご好評につき、定員に達しました。

キャンセル待ちのみ承ります。キャンセル待ちのお申込みをご希望の方は下記予約URLよりお申込みください

 

◆日 時 9月14日(水) 午後6時30分~9時「シャープニング編」

     10月27日(木) 午後6時30分~9時「SRP(手用スケーラー)編」

     11月16日(水) 午後6時30分~9時「SRP(超音波スケーラー)編」

◆講 師 新田 浩氏

     (東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科総合診療歯科学分野 教授)

◆会 場 東京歯科保険医協会 会議室

◆定 員 「シャープニング編」25名

     SRP(手用スケーラー)編」20

     SRP(超音波スケーラー)編」20名

◆参加費 10,000(各回)

◆予 約 9/14(水)「シャープニング編」  https://forms.gle/iBY5AjMKH314y2kH8 

     10/27(水)SRP(手用スケーラー)編」https://forms.gle/N1NPX5xnw8PGma5L7

     11/16(水)SRP(超音波スケーラー)編」https://forms.gle/u26gZCSm65oHVfTU9

 

      ※コースの選択のお間違いのないよう、お気を付けください。

【受付終了】10/29(土)若手歯科医師向け学術ベーシック講座

【演題】 デンチャーのベーシック 【抄録】 義歯を装着して、しばらくしたら患者がフェードアウトしていたという経験はありませんか?きっと、その患者さんは、今よりもより良い義歯を求めて他の歯科医 院を探しているでしょう。恐らく、皆さんの義歯に関する知識は学生と変わらないと思います。排列する時には歯槽頂間線の法則、下顎の床後縁はレトロモラーパッ ドを覆うことが大切だと本気で思っているんでしょうか?今回のベーシック講座では、臨床にこだわった考え方やテクニックについてお話 ししたいと思います。一緒に補綴の王道を歩みましょう。(講師より) 【日時】 10月29日(土)午後7時00分~9時00分 【講師】 山本 鐵雄 氏(東京歯科保険医協会 副会長 大田区開業) 【場所】 東京歯科保険医協会会議室(Zoom併用なし) アクセスマップ | 東京歯科保険医協会 (tokyo-sk.com) 【対象】 40歳代までの会員 【定員】 15名(要予約) 【参加費】 4,000円(事前振込制) 【申込はこちら】 https://forms.gle/6sD9FeXALYex1cbHA

【受付中】9/29(木)第1回学術研究会

【演題】

COVID-19とどう付き合うか令和の時代に求められる歯科医療について

【抄録】

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、ワクチン接種も進んでいるにも関わらず、感染の勢いは収まっていない。感染力が高まった変異株に置き換わり、飛沫などによる感染防止に対して積極的に取り組むことが歯科医療には重要である。本講演では、令和時代における歯科医療に求められる役割を考察しながら、新型感染症に対してどのように戦っていくか、口腔の秘めたるパワーについて論じながら、COVID-19の今後について考察していきたい。(講師より)

【日時】

9月29日(木)午後7時00分~9時00

【講師】

泉福 英信 氏(日本大学松戸歯学部感染免疫学講座 教授)

【配信方法】

Zoomウェビナー+協会会議室18名(先着順)

【対象】

会員とそのスタッフ

【参加費】

無料(会場参加の場合、同伴者1名につき1,000円)

【申込はこちら】

https://forms.gle/pa3mv1iqoDBKqHjR9

 

 

 

【受付中】10月16日(日)新規開業医講習会

新規個別指導は2022年4月まで延期されていたが、今年5月から指導が再開されています。

実施延期の影響もあり、開業してから概ね1年以内の選定が現在では開業してから概ね2年を経過した医療機関が選定されている状況です。

新規開業医講習会は新規指導時の持ち物や指摘事項、保険の算定要件に加えて、SOAP(S:主観的情報、O:客観的情報、A:評価、P:計画)に基づくカルテ記載など、開業して間もない先生が知っておくべき内容を凝縮した長い歴史を持つ協会の看板とも言える講習会です。
オンラインの開催は予定していません。
感染対策には細心の注意を払っていますが、必ずマスクの着用とご自分の体調を考慮しての参加をお願いします。

※ご参加の会員の先生方は、感染防止対策のためマスク着用など ご自身及び周囲への感染予防の配慮をお願いいたします。
※新型コロナウィルスの影響により中止・延期の場合があります。

会場となるTAP高田馬場の新型コロナウイルス感染症に対する取り組みについて
https://t-ap.jp/room/pdf/covid19_202102.pdf

◆日 時 10月16日(日)12時00分~17時00分(予定)
◆講 師  協会講師団
◆会 場  TAP高田馬場(地図)
◆定 員  50名
◆参加費  13,000円 

→ご予約はこちらから

東京歯科保険医新聞2022年(令和4年)7月1日

こちらをクリック▶東京歯科保険医新聞2022年(令和4年)7月1日 第628号

1面】

   1.第50回定期総会を開催/22年度活動計画ほか7議案を承認
   2.個別指導を計画/東京都
   3.東京23区、高校生等の医療費無償化へ/所得制限設けず 自己負担なし
   4.ニュースビュー
   5.「探針」

2面】

   6.記念講演 チタン・CAD/CAM冠の適用拡大を求める 金パラ代替テーマに
   7.決議/第50回定期総会
   8.東京歯科保険医協会 第50回定期総会 祝電・メッセージ等一覧

3面】

   9.会員寄稿“声”「参院選前に歯科医師の地位向上を考える」(菊地三四郎氏/渋谷区)
   10.声明 オンライン資格確認システムの導入“義務化”に反対する
   11.共済部だより

【4面】

   12.経営・税務相談Q&A No.394 水漏れ事故の対応は?備えは必要?
   13.IT相談室/登録した覚えがない医療情報サイトから請求が…どうする?/氏(クレセル株式会社)
   14.診療報酬改定 関連書籍/歯科疾患管理計画書のご案内
   15.法律相談、経営&税務相談

【5面】

   16.研究会・行事のご案内

【6面】

   17.Special Serial No.5 「新型コロナウイルス感染症は転換期を迎えている」山本光昭氏(社会保険診療報酬支払基金理事)
   18.教えて!会長!!Vol.60
   19.中川理事が今期で勇退

【7面】

   20.協会史を振り返り現在・未来を見つめる Vol.1/長期維持管理政策の歴史・中川勝洋氏
   21.(一社)日本接着歯学会 理事長に坪田氏

【8面】

   22.information≪研究会・行事≫
   23.歯科医院からも多数申請 事業復活支援金の特徴点/税理士・櫻木敦子氏
   24.電子書籍「デンタルブック」
   25.夏季休診案内ポスター&卓上型タイプ

【9面】

   26.症例研究/レジン前装チタン冠、総合医療管理加算

【10面】

   27.連載/私の目に映る歯科医療界⑯(東洋経済新報社・大西富士男氏)骨太方針に突如「国民皆歯科健診」入る
   28.理事会だより
   29.協会活動日誌2022年6月

11面】

   30.<国会要請>75歳以上窓口2割化中止を求める
   31.神田川界隈/四方山話(橋本健一理事/東村山市)
   32.第26回参議院選挙 投開票は7月10日に
   33.会員優待サービスご案内
   34.好評博す施設基準の講習会開催/歯初診・外来環・歯援診・か強診に対応
   35.院内感染防止対策講習会/「徹底した洗浄」が鍵 重要な3要素を解説

12面】

   36.通信員便り No.123
   37.「骨太方針2022」に国民皆歯科健診を明記
   38.金銀パラジウム合金等 引き上げに/銀合金、メタルコアおよび14Kも改定

【教えて!会長!! Vol.60】第50回定期総会を終えて

― 6月19日、中野サンプラザ(東京・中野)で第50回定期総会を開催されました。

坪田有史会長:まず、本会定期総会にご出席いただいた先生方、また委任状を提出していただいた先生方に御礼申し上げます。定期総会では、審議をお願いした議案に、複数のご質問をいただき、それぞれ回答させていただいた上で、全7議案すべてを承認していただき、感謝いたします。
定期総会の位置付けは、本会規約第5章、第14条に「総会は本会の最高議決機関であり、会長が招集する」と記されています。すなわち、総会は本会の中で最も高い位置付けとなります。今回、定期総会が「第50回」という節目の数字となりました。本会がスタートした1973年の会員数は180名と過去の資料に記録されています。その後、会員数が着々と増加し、2022年6月1日現在、5938名と本会スタートから半世紀で約33倍の会員数になっています。この場をお借りして、会員の先生方、会務を担当された先輩方、そして歴代の事務局の方々のご努力に心から感謝申し上げます。
なお2023年は、本会が50歳、すなわち50周年にあたります。本会50周年を迎えるにあたり、会員の先生方と共に祝う感謝の会を現在企画中です。その際は、多くの会員の先生方に参加いただきたいので、よろしくお願いいたします。

― 2022年度の活動計画を教えてください。

坪田:詳細は、総会に向けて郵送させていただいた「第50回定期総会議案書」をご参照いただきたいのですが、ここでは先生方と共有しておきたい具体的な活動計画をいくつか述べさせていただきます。

1 新型コロナウイルス感染症対策
 ・助成金、支援金の申請の補助、労務上の相談へ対応する。
 ・歯初診の研修である院内感染防止対策講習会を複数回、開催する。
2 歯科医療改善の取り組み
 ・今次診療報酬改定の内容を分析し、問題点や不合理な点の是正、改善を厚労省に求める。
 ・オンライン資格確認の導入、マイナンバーカードの保険証利用についてメリット、デメリット   
  を検討し、会員への周知に努める。
3 審査、指導の対策
 ・コロナ禍で一時中断されていた各個別指導が再開されており、会員からの相談に適宜対応す
  る。
 ・レセプト審査が公正・公平に行われるよう情報収集し、問題があれば改善を求める。
4 講習会・説明会などの開催
 ・コロナ禍により始まったオンライン、ハイブリッド形式などを活用し、充実した講習会などを
  開催する。
 ・コロナ禍で中止していた地区懇談会を7月に3地区で開催し、会員との懇談を行う。
5 共済制度の普及・充実
 ・安心して診療に従事できるよう、共済制度の充実、免責事項の改善などに努める。
6 医療改善を求める
 ・患者・国民のため、さらに「保険でよい歯科医療」が進むよう活動を行う。
 ・一部の75歳以上の患者への医療費窓口負担2割化阻止に向けた活動を行う。
 ・都立・公社病院独法化に対して反対する活動を行う。
7 「健康まつり」の開催
 ・コロナ禍で延期していた東京保険医協会と本会とが主催する「保険医協会 健康まつり2022」を
  10月23日(日)、12〜16時、東京都新宿区西新宿の新宿駅西口広場イベントコーナーで開催す
  る予定で準備を進めている。開催目的は、①医療団体として健康増進をアピールする、②医
  師・歯科医師の連携をアピールする、③医科歯科両保険医協会を広く認知してもらうようアピ
  ールする、④国民皆保険制度の重要性をアピールする―などである。

以上、2022年度も引き続き会員の先生方のご理解、ご協力のほど、よろしくお願い申し上げます。

             東京歯科保険医協会 会長 坪田 有史

(東京歯科保険医新聞2022年7月号6面掲載)

【受付中】9/26(月)開催:第1回これから始める歯科訪問診療講習会

【概要】

これから訪問診療を始めようと思っている先生や、改めて保険請求の方法を確認したい先生に向けて、保険請求(介護保険も含む)の基本事項にフォーカスし、講習会を開催します。

超高齢社会が加速する中、在宅医療の必要性は年々増加しています。また、国も地域包括ケアシステムの構築をさらに進めようとしており、地域において歯科訪問診療の体制の整備がますます必要になっています。このような動きがある中で、ある調査によると、「訪問診療に関して一番困っていること、知りたいこと」の大半は、「訪問診療に伴う保険請求」でした。講習会に参加して、訪問診療を始めましょう。

なお、10月には、これから始める歯科訪問診療講習会(臨床編)の開催を予定しています。

【日時】

9月26日(月)午後7時00分~9時00分(予定)

【講師】

池川裕子氏(地域医療部 部員/出張歯科 四ツ木)

【配信方法】

会場+Zoomウェビナー

【予約】

https://forms.gle/WT1stWHhGCdCxj9e8

税務調査の事前通知聞き取り項目について

例年夏ごろから税務調査の連絡があったという相談が寄せられ始めます。

税務調査では税務署より事前に連絡があります。その際に法律で定められている以下の11項目を必ず聞き取ってください。

1,実地の調査を行うことの旨

2,調査官の所属官署と氏名

3,調査を受けるものの氏名・名称と住所

4,調査開始日時

5,調査開始場所

6,調査開始日時と調査開始場所は合理的理由があれば協議できるという説明

7,調査の目的

8,調査の対象となる税目

9,調査の対象期間

10,調査の対象となる帳簿書類や物件

11,通知事項以外に非違が行われることとなった事項は改めて通知しなくても調査できるという説明

 

なお、調査開始日時や調査開始場所については都合が悪ければ変更できます。

また、無予告で来院した場合は、身分証明書や質問検査証の提示を求め、氏名・所属を確認しましょう。捜査令状のない調査は、強制調査ではなく、全て任意調査です。都合がつかない場合などはきっぱりと断り、改めて日程調整をするようにしましょう。

 

登録した覚えがない医院情報サイトから請求が…どうする?

WEBに係る歯科関連の法令やトラブル対応などについて、
歯科専門にサイト制作、運用、コンサルディングを手掛ける専門家が解説する本連載。
今回は医院情報サイトについて―。

 相談件数としては多くありませんが、「医院の基本情報を掲載するサイトからの請求」という身に覚えのない要求にお困りの方が過去にいました。多いのは、まず簡単な情報だけ掲載して、より詳しい情報を有料で掲載しないかという営業電話がかかってくる場合です。
 前提として、勝手に医院情報を掲載して掲載費用を請求することなどはビジネスとして論外で、取り合う必要はありません。事前合意のない請求は無効です。
 どちらかと言えば、最初に医院の基本情報を無料で掲載して、その後に「情報の更新をするなら有料契約が必要」「削除も有料」などと、掲載済みの情報を人質のように扱って、有料契約を迫ってくる場合がありますので注意が必要です。
 以前、そのような相談があった時にこちらから掲載サイトの業者と電話をした時には次のような主張でした。「公開されている医院の基本情報を当サイトに掲載することは、法的に問題ありません。ただ情報の更新や削除などに要する人件費は有料となります」。とんでもない主張だと思いましたが、「法的に」という言葉で泣き寝入りしてしまう方もいらっしゃるようです。以前、飲食情報サイト「食べログ」へ勝手に掲載されてしまい、店側が訴えた結果、敗訴した事例がありました。おそらく、このような事例を盾にしているものと考えられます。
 情報の削除、改訂については対応してもらえることが多いはずです。しかし、登録して自力で改変する、もしくは費用を要求されるなど「確信犯的に」情報を掲載している業者もいるので、その場合は、即座に弁護士を通じてやり取りをすることが望ましいです。

クレセル株式会社

(東京歯科保険医新聞2022年7月号4面掲載)

2022年度施設基準等の7月定例報告について

  2022年度施設基準等の7月定例報告について

 施設基準の届出を行った保険医療機関は、毎年7月1日現在で届出書の記載事項について地方厚生(支)局長(東京の場合、関東信越厚生局 東京事務所)へ報告を行うこととされています。

 各医療機関には、7月上旬に「施設基準の届出状況等の報告について」というハガキが送られてきます。

 厚生局Webサイトの該当ページはこちら。

 提出期限は7月29日(金)です。

 以下、歯科における報告の手順について掻い摘んでご紹介します。

 ※東京都内の医療機関向けに作成しています。 都外の場合、書類の提出先や該当リンクなどが異なります。

デンタルブックに届け出用紙の例をUPしています。

デンタルブックマイページへ

  1.届け出ている施設基準を確認する

東京の届出受理医療機関名簿(PDFファイル)に、医療機関ごとの届出状況が掲載されています(「受理番号」の列)。

 ※PDFがリンク切れの場合、こちら(施設基準受理状況一覧)から探してください。
 略称で掲載されているため、略称一覧(PDFファイル)を適宜参照してください。


 地区順に並んでいますが、掲載量が膨大なので、文字列検索でご自身の医療機関名を検索するのが早いです。

Windowsなら「Ctrl+F」(Ctrlキーを押しながらFキー)

Macbookなら「Command+F」(Commandキーを押しながらFキー)

で検索窓が開きます。

Macbookの場合の注意:Safariで「医療機関ごとの届出状況」のPDFを表示した場合、うまく「Command+F」で検索ができない場合があります。そのため「プレビュー」などアプリで「Command+F」をお試しください。Firefoxでは検索ができることが確認できました。

  2-1.施設基準を満たしているか自己点検する

 施設基準の要件は、協会会員にお送りしている「歯科保険診療の研究」や、厚生局Webサイト基本診療料の届出一覧特掲診療料の届出一覧などで確認してください。

  2-2.施設基準を満たしていないものがある場合

 基準を満たしていないものについて、
施設基準の届出の確認について(報告)(PDF)

辞退届(PDF)
の提出(郵送)が必要となります。

 提出先は、関東信越厚生局 東京事務所です。
関東信越厚生局 東京事務所
〒163-1111
東京都新宿区西新宿6-22-1 新宿スクエアタワー11階
TEL 03-6692-5119


  3.定例報告が必要なものは、所定の様式で報告する


 報告が必要なものおよび様式はこちら(歯科診療所に係る定例報告等について)でご確認ください。報告については、所定の様式に必要事項を記載したものを、上記 関東信越厚生局東京事務所宛に1部のみ郵送します。

 

  4.これで定例報告は終了

 なお、届け出ている点数の施設基準を全て満たしており、かつ「3.の定例報告が必要なもの」を届け出ていない医療機関は、特に提出するものはありません。

 東京歯科保険医協会では、会員向けに施設基準に関するご質問も受け付けております。会員の方はお気軽にお問い合わせください。

デンタルブックに届け出用紙の例をUPしています。

デンタルブックマイページへ

長期維持管理政策の歴史 vol.1

はじめに

2003年6月の第31回定期総会において、大多和彦二会長の辞任に伴い、私が会長に指名された時から26年が経ちました。その私が2011年に会長を退いて以降も協会理事、保団連理事と会務を務めてまいりましたが、2022年6月19日の第50回定期総会をもって会務から退くことといたしました。協会の活動に参加してから42年にわたり、これまで会員の皆様よりのご協力をいただきありがとうございました。今後は協会顧問として、協会の諸活動を見守らせていただきます。(中川勝洋)

 

―今後の論議を注視国民皆歯科健診

6月7日に「骨太の方針2022」が発表され、「歯科専門職による口腔健康管理の充実」「医療機関連携の推進」「オーラルフレイル対策」等が示され、その中に「国民皆歯科健診の具体的な検討」が盛り込まれたことが明らかになりました。これを行うことで、医療費全体の削減に寄与できるとしています。率直なところ、「遂に、長期維持管理政策がここまで来たか」、との思いがします。
まだ詳細は分かりませんが、歯科健診が義務化されると、ドイツのように歯科健診を受けない国民へのペナルティーが導入されるかもしれません。今後の論議を見守りたいと思います。


―改定変遷の振り返り 「か初診」から「か強診」へ

1990年から2020年まで、「歯界展望」(医歯薬出版株式会社刊)誌上に診療報酬改定ごとに書かせていただいた「診療報酬改定の特徴と評価」を読み返して厚生労働省の歯科医療、歯科保健政策の変遷を振り返ってみました。
1996年(平成8年)3月末、それまでのPⅠ型・PⅡ型などの歯周病治療から現在の歯周病治療の体系である「歯周病の診断と治療のガイドライン」に再編されました。基本検査と精密検査に基づく治療の流れが示され、初診月には算定できなかった指導料も65点で導入されました。同時に歯冠修復物に対する補綴物維持管理料、いわゆる「補管」が2年間の縛り付きで導入されています。
日本歯科医師会は改定財源を確保するためだとし、「責任と保証」という言葉遣いでの説明は回避。しかし、2年以内の破損等での再製作に係わる費用が算定できないことは、診療側が責任を取り、維持管理料という名前の保証料で再製作を引き受けるということです。歯冠修復物の再製作での請求が多いことへの対応ではありますが、クラウン150点、ブリッジ 5歯以上500点、6歯以上670点のためか、保団連の一部は反発したものの大きな運動にはならず、結果は歯冠修復物の請求が減少し、保証料を下回りました。


―英独海外視察の原点

この制度もドイツで充填、補綴物の保証というペナルティーとともに導入されており、後日、協会による2006年のイギリス・ドイツへの歯科医療視察団派遣の原点となりました。

 

 

中川勝洋
東京歯科保険医協会 第3代会長、協会顧問

なかがわ・かつひろ:1967年東京歯科大学歯学部卒業、1967年桜田歯科診療所開設、1981年東京歯科保険医協会理事、昭和大学医学部医学博士授与。1993年協会副会長、2003年協会会長、2011年協会会長を辞し理事に。2022年理事を勇退し協会顧問に就任。

第26回参議院議員選挙 投開票は7月10日に

 第26回参議院議員選挙は6月22日公示、7月10日投票の日程で行われる。今回の選挙は任期満了等に伴う125議席を巡って実施されるが、その内訳は、①非改選の議席を除く選挙区の74議席、②神奈川で欠員となっている非改選の1議席、③比例代表の50議席―となっている。また、6月22日に全国の立候補者が公示されたが、それによると、全国の45選挙区には定員75人に対し367人、定員50人の比例代表には178人の合わせて545人が立候補している。
 今回の参院選投票日の決定は、政府が去る6月15日に第208通常国会が150日間の会期を終えて終了したことを受け、同日午後に臨時閣議を開き、6月22日公示、7月10日投票の日程で参議院選挙を行うことを決めたもの。参議院選挙は、公職選挙法によって国会が閉会してから24日以後30日以内に行われることになっている。
 また、今夏参議院選挙以降、国政選挙は2025年秋まで行われない(この年の10月21日に衆議院が任期満了を迎える)。


◆選挙の争点


 今回の選挙の争点と考えられるのは、①岸田内閣のロシアによるウクライナ侵略への対応、②ウクライナ情勢などによる物価高騰を受けた経済対策とエネルギー対策、③新型コロナウイルス対応、④敵基地攻撃能力の保有を含む安全保障政策の見直し、④憲法改正の是非、⑤デジタル庁に続いて「こども家庭庁」「内閣感染症危機管理庁」などが立ち上がるが、国民への便益はどうなるのか―など。

「骨太方針2022」に  国民皆歯科健診を明記

 政府は6月7日、「経済財政運営と改革の基本方針2022/新しい資本主義へ~課題解決を成長のエンジンに変え、持続可能な経済を実現~」(通称「骨太方針2022」)を閣議決定した。
 今回の骨太方針の柱は、①我が国を取り巻く環境変化と日本経済、②新しい資本主義に向けた改革、③内外の環境変化への対応、④中長期の経済財政運営、⑤当面の経済財政運営と令和5年度予算編成に向けた考え方―の5本。その中で、医療政策に関する重要点は①と④、特に④の中の「全世代型社会保障の構築」および「社会保障分野における経済・財政一体改革の強化・推進」で取り上げられ、総理を本部長とする「医療DX推進本部(仮称)」の設置を提唱し、2023年度からのオンライン資格確認の原則義務化、および2024年度中の保険証発行の選択制導入などを主眼とする医療のDX化を推進する方針を提示した。
 また、医療情報の利活用を巡り法制上の措置等を講じることや、AIホスピタルの推進と実装などを新たに盛り込んでおり、これらが大きな特徴となっている。
 さらに、歯科医療に関しては、「国民皆歯科健診」の具体的検討の推進が盛り込まれた点が注目されている。

東京23区、高校生等の医療費無償化へ/所得制限設けず 自己負担なし

 東京23区長でつくる特別区長会は6月21日に緊急記者会見を行い、現在中学生までを対象としている子どもの医療費無償化について、2023年度から高校生に拡大することを明らかにし、所得制限や自己負担は設けず無償化すると発表した。

 東京都は2022年1月、子どもの医療費助成の対象を中学生から高校生までに拡大するすることを発表。高校生の医療費を巡っては、所得制限を設け、小中高生における通院1回につき上限200円を自己負担とした上で、残りを助成する方針を表明していた。
 その後、東京都は2023年度から2025年度までの3年間は都の財源で経費を全額負担し、2026年度以降の負担割合は今後の協議とすることを特別区に提案。特別区長会は今回、2023年度から事業を実施するため、2026年(令和8年)度以降の財源等については東京都との協議を継続することとし、東京都の提案をいったん了承した。なお、東京都は所得制限を設け、200円の自己負担を求める方式を主張している。
 特別区長会は、特別区として所得制限や自己負担を設けない完全無償化で事業を実施するため、東京都の補助金でまかなえない財源は、23区が自主財源で負担する方針。東京23区の負担分は13億円以上と見込む。

オンライン資格確認システムの導入〝義務化〟に反対する

   
 マイナンバーカードを利用したオンライン資格確認システムの運用を開始した医科・歯科医療機関及び保険薬局数は2022年5月22日時点で4万4284機関、参加率は19・3%となっている。そのうち、全国の歯科医療機関数は9263機関、同13・1%、東京の歯科医療機関数は903機関、同8・4%にとどまっている。協会には実際に導入している歯科医療機関からオンライン資格確認システムの利用者は月1~2人の利用者しかいないという声も寄せられている。
 導入した医療機関には毎月のランニングコストの負担や受付の患者対応などの負担がかかる。そのため、診療報酬改定で、電子的保健医療情報活用加算が新設された。
 しかし、政府は患者負担が増えることが報道されると、同加算の廃止を早々と打ち出した。加算が廃止されればオンライン資格確認システムのランニングコストなどは完全に医療機関側が負担することとなる。また、診療報酬の諮問機関である中医協を飛び越えて、政府が方針を打ち出すのはいかがなものだろうか。
 また、患者負担があるため、オンライン資格確認システムの利用者が少ないという声もあるが、そもそもマイナンバーカードの全国普及率は5月1日時点で44・0%であり、東京では47・8%である。健康保険証利用登録が済んでいるのは全人口でわずか7%未満に過ぎない。いったい、マイナンバーカードを健康保険証として持ち歩く国民がどの程度いるだろうか。
 現行システムでは、資格確認以外の薬剤情報や特定健診記録などの医療情報へアクセスするためにはマイナポータルでの登録が必要である。マイナポータルの利用規約にはすべてのトラブルについて「自己責任」での解決をすることが定められており、全ての責任を利用者に押し付ける内容となっている。医療機関にあるオンライン資格確認システムのカードリーダーはその場で健康保険証とマイナンバーカードの紐づけができるため、医療機関で紐づけを行えば、医療機関側がマイナポータルの利用規約への同意を促してしまうことになる。また、一旦紐づけが完了してしまえば取り消すことはできないため、取り消しを希望する患者さんとの間で新たなトラブルともなりかねない。
 さらに、昨今の半導体不足の影響で、オンライン資格確認システムに使用する機器なども不足しており、導入まで半年以上待たされているという医療機関も存在する。半導体の世界的需要の高まりやウクライナ情勢の影響で、物資供給が不安定な中で優先的に導入を進めていくべきものなのかは甚だ疑問である。
 オンライン資格確認システムの最大のメリットは健康保険の資格確認がその場でできることとされてきたが、2021年10月より支払い側で資格喪失後のレセプトの振替などの作業を行っており、返戻は減りつつあるため歯科での導入のメリットは少ない。導入を義務化すれば、必要のない新たな負担を強いられるなどのデメリットが大きくなる。
 コロナ禍で経済的に打撃を受けている医療機関に対し、マイナンバーカードの普及率の低さを解消するため、オンライン資格確認システムの導入を〝義務化〟し、負担を強いることが今求められていることなのか。マイナンバーカードの普及については、政府が正しく運用するのであれば、新型コロナウイルスに係る給付金などに活用をすることができることなどから、推進をしていく必要性もあると思われるが、現状ではさまざまな点で不安が払しょくできない。そもそも医療をマイナンバーカード普及の出しに使うことについて、国民に理解を得られているとは到底考えられない。
 以上よりオンライン資格確認システムの導入〝義務化〟に反対する。

2022年6月9日
東京歯科保険医協会
第5回理事会