長期維持管理政策の歴史 vol.2

「か初診」の登場とその後

2000年(平成12年)の診療報酬改定で、歯科初診料186点とは別に「かかりつけ歯科医初診料」、いわゆる「か初診」が270点で導入され医科初診料と同じになったが、再診料は40点で医科とは異なった。初・再診料の医科歯科格差解消は歯科の長年の要望であったが、か初診以外は従来のままで据え置かれた。その算定要件は、以下の3項目であった。
そして、この要件の中で「同意と文書提供」という縛りを付け、再び「か初診」を算定できるのは、治療終了後3カ月目からとし、また、説明手段のスタディモデル(50点)と口腔内写真(50点)は包括化され算定できない。「か初診」は医科と同じになったが、指導管理を主とする医科との格差はむしろ拡大したと言え、1口腔1初診の歯科の概念が強化された。医科でも00年度診療報酬改定に際して「かかりつけ医機能」について検討され、指導料に対する継続管理加算が導入された。
1日平均16名~20名の患者数の歯科では加算点数はなく、270点だけの算定であり、医科と比べて厳しい「かかりつけ機能」の要件となっており、歯科の中での「かかりつけ機能」の定義付けがされていない中、最初に270点ありきであった。

02年(平成14年)の改定は、初のマイナス改定となった。初診料は186点から180点へ引き下げられたが、「か初診」は270点のまま据え置かれた。また、歯周病に「治癒と病状安定」の概念が取り入れられ、2回目の歯周病検査で病状安定と判断されたら継続治療診断(基本検査・精密検査)を行い100点を算定、①継続治療計画を作成し、②1~3カ月間隔で検査・基本治療・指導という「継続管理」を行う。算定点数は左記表の通りだ。
05年は憂鬱な年となった。橋本龍太郎元首相への1億円献金がワイロとの疑いで日本歯科医師会・日本歯科医師連盟元会長の臼田貞夫氏をはじめ5名の逮捕者を出し、「か初診」と「1億円献金」が連日のように新聞・テレビに取り上げられることとなり、結果、中医協に歯科側委員は出席せず、保険者側の「保険者機能を推進する会」の活動が活発化した。06年(平成18年)の改定で「か初診」は廃止となり、保険者主導のかかりつけ歯科医路線へと姿をかえた。
02年以降、協会は「かかりつけ歯科医」は歯科医師が決めることではなく患者さんが選択することだとして、「か初診」の廃止運動を行ってきた。協会アンケートでは会員の92%は算定していなかった。しかし、患者さんへの情報提供は必要であるので「お口の治療計画書」を協会独自に作成し、従前から会員に提供してきたが、9月の保団連理事会では、いくつかの協会から廃止運動と矛盾しているとの発言がなされた。保団連歯科理事会議ではそのような発言はなされいなかったので、9月に保団連に意見書を提出し、訂正を求めた。

中川勝洋
東京歯科保険医協会 第3代会長、協会顧問

なかがわ・かつひろ:1967年東京歯科大学歯学部卒業、1967年桜田歯科診療所開設、1981年東京歯科保険医協会理事、昭和大学医学部医学博士授与。1993年協会副会長、2003年協会会長、2011年協会会長を辞し理事に。2022年理事を勇退し協会顧問に就任。