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今の時差改定方式は欠陥品/高騰金パラ「逆ザヤ」問題の根本解決は待ったなし【連載】私の目に映る歯科医療界④

歯科医悩ます「銀歯」高 診療報酬 改定追いつかず 貴金属相場、マネー流入で急騰


 こう見出しを打った記事が五月初旬の日本経済新聞に載った。歯の治療に不可欠な「銀歯」、いわゆる金パラなど歯の補填物に使う金属材料高騰のあおりで、「逆ザヤ(赤字)」問題が歯科診療所経営に猛威を振るう現状を的確に伝える良い記事だ。

 

随時改定Ⅰ・Ⅱ導入も真の問題解決には程遠い現実

 確かに、金、銀、パラジウムの価格高騰が続いているが、その補填を一人でかぶらなければならない歯科医師にしてみれば、「たまったもんじゃない」ことだろう。
 保団連をはじめ、歯科関連団体は厚生労働省にこの問題の解決を強く求め続けてきた。2020年度には、金属材料の公示価格(歯科医師にとっては支払われる価格)の改定制度で成果を出している。4月、10月に5%以上の高騰(下落もだが)があった場合に改定する従来の制度(随時改定Ⅰ)に加え、その合間の1月、7月にも15%以上の高騰があった場合にも改定できる随時改定Ⅱを獲得したわけだ。
 理論的には、金属材料の変動リスクをよりタイムリーに避けられるようになったわけだが、危惧した通り、問題の真の解消には程遠い現実も見えてきている。

過去の価格変動で将来の価格高騰埋めるは無理筋

 この問題を引き起こす要因は複数あるが、根本原因を一つ挙げろと言われれば、改定するかどうかの基準となる変動幅(随時改定Ⅱでは15%以上なら公示価格を改定し、15%未満なら元の公示価格のまま据え置く)が下記計算式をもとに計算されることになっている点だ。
 今回でいえば、4月時点での過去9カ月間の値動きで、3カ月後の7月の改定実施時の値段を決めることになる。この算定式に基づき、今年7月の金パラ公示価格値上げはなしと決まった。
 しかし、6月3日開催の「6・3初夏の歯科総行動集会」の時の保団連資料によれば、今年5月の金パラの推定実勢価格は10万577円、現行の公示価格の8万40円だと、実に2万533円、率にして26%もの逆ザヤになっている。実態には、まったく合っていないわけだ。
 さらに、6月以降も金属材料がこのまま値上がりが続けば、次の改定時の10月まで、この逆ザヤが毎月、歯科医師の経営に覆いかぶさる。

透明かつ根本的な毎月改定など制度改定が必要

 実勢価格を毎月タイムリーに公示価格に反映する制度導入が、唯一の根本解決策なのは明らかだ。
 ほかに、公的価格のある商品サービスで同じ逆ザヤ問題が起きているかどうか、私自身は寡聞にして知らないところだが、IT化の進むいま、実勢価格を把握し毎月の公示価格に反映することは、技術的には可能ではないだろうか。
 仮に、毎月の公示価格改定が技術的または費用対効果的に難があるならば、その時は3カ月後に、例えば歯科医師がその間にかぶった逆ザヤ分は、厚生労働省が遡及して返すような仕組みにすべきだろう。
 この場合、変動費用を予算枠で手当てする工夫が必要になるだろうが、個人的思い付きではあるが、予備費などで担保できるのではないか。少なくとも議論、検討するだけの価値はあるのではないかと考える。
 金属材料の値上がりが続く局面では、補綴物に国が支払う額は増えるわけだが、これは歯科医師が懐に入れるものでもなく、国民が負担するものとして捉えるべき筋合いの話だ。
 今年は、2022年度診療報酬改定という絶好の議論の場がある。歯科技工士問題でも厚労省は自身が行う実勢価格調査の結果を非公開にする。この「金パラ」逆ザヤ問題でも、自ら依拠する貴金属の市場実勢価格を明らかにしていないと聞く。行政の透明性では大問題だ。国民の立場からも、関係団体にはこの点も含め、厚労省には強く改善を要求してほしい。

筆者:東洋経済新報社 編集局報道部記者 大西 富士男

(東京歯科保険医新聞2021年7月号10面掲載)

自民党が来夏参院選挙の第1次公認46名を発表/歯科系議員の関口・山田両議員も公認

自民党が来夏参院選挙の第1次公認46名を発表/歯科系議員の関口・山田両議員も公認

自民党は714日、2022年夏に予定されている第26回参院選挙の第一次公認候補46名(選挙区29名、比例代表17名)を発表した。その中には、歯科系議員の関口昌一参議院議員(歯科医師・埼玉選挙区・68歳・4)、歯科医師ではないものの歯科医療界に理解を示し、骨太方針にも歯科を取り込むことに活躍した山田宏参議院議員(比例・63歳・1)が明記されている。

与野党ともに、既に来夏参院選に向けての選挙活動を開始しており、他の政党の公認候補発表なども含め、今後の展開が注目されよう。

 

【受付は終了しました】7月18日開催:歯初診、外来環、歯援診、か強診のための講習会

※満席になりましたので、ご受講はできません※

日時 :

2021年7月18日(日)

・4つの施設基準対応:午後1時~6時30分(予定)

・外来環、院内感染防止対策のみ:午後4時~6時30分(予定)

講師:

繁田雅弘 氏(東京慈恵会医科大学精神医学講座 教授)

坂下英明 氏(明海大学名誉教授/朝日大学客員教授/我孫子聖仁会病院口腔外科センター長)

馬場安彦 氏(東京歯科保険医協会 副会長)

森元主税 氏(東京歯科保険医協会 理事)

 

内容:

在宅医療・介護等、歯科疾患の重症化予防に資する継続管理(口腔機能の管理を含む)、高齢者の心身の特性(認知症を含む)、院内感染防止、緊急時対応、医療事故、偶発症等

 

会場:(ご受講される施設基準によって会場が異なりますのでご注意ください)

午後1時からの「歯初診・外来環・歯援診・か強診」に対応した施設基準の講習会へご参加の先生はこちら↓↓↓

●TAP高田馬場

https://t-ap.jp/room/access.html

午後4時からの「歯初診・外来環」に対応した施設基準の講習会へご参加の先生はこちら↓↓↓

●ワイム貸会議室高田馬場

https://waim-group.co.jp/space/takadanobaba/access.html

 

対象者:

当会会員限定※代理の方の出席は認められません。

定員:

100名(定員数に限りございますので、お早めに)※感染拡大防止の観点から、定員を縮小しての開催となります。

参加費:

「4つの施設基準対応」:¥8,000(修了証代込)

「外来環」「院内感染防止対策」のみ:¥5,000(修了証代込)

要予約:施設基準の要件等を必ず確認の上、ご予約ください。

ご予約はこちらから↓↓↓

https://forms.gle/ZooR8xsPaNbxYZ9Z8

※遅刻・途中退室の場合は、修了証の発行はできません。

※修了証の発行は会員ご本人に限らせていただきます。

※次回の開催は、12月を予定しています。

【歯科医療情報観測】歯科情報の利活用および標準化とは何か③

 前回まで述べた生前情報の蓄積と死後情報とのマッチングであるが、レセプトデータやレセコンの電子カルテ、乳児検診、成人歯周病健診によって得られた口腔診査情報を身元確認に利用できるとの法的根拠はなく、オプトアウトによる利活用はできないため、事前に患者さんからの承諾が必要となる。今後この方面での法整備が必要になるが、口腔内情報は極めてセンシティブな情報なので、慎重な対応が求められている。

「口腔診査情報標準コード」について
 レセコンや歯科電子カルテ、歯科健診ソフトなどに入力された口腔診査情報は「口腔診査情報標準コード」に置き換えられ、「口腔状態スナップショット」として出力する。診療や検診の度に「口腔状態スナップショット」は最新の状態に保たれる。口腔の状態を共通の「口腔診査情報標準コード」で保存することにより、入力したプログラムでなくても同じ情報を得ることが可能となる。つまり「口腔状態スナップショット」にアクセスできれば身元確認での活用が可能となる。
 東日本大震災前は、身元不明のご遺体の口腔状態については、紙での手書きフォームに記載されたものを用い、警察経由で各診療所に問い合わせがあった。また、乳幼児・学校健診、節目・高齢者の歯周病健診などの健診事業では、紙で集計された数字が行政に上がっていた。
 震災直後の混乱の中、当時東北大学で開発された「Dental Finder」で、ご遺体の口腔情報を電子情報に置き換えるためのフォーマットを用い、問い合わせを始めた。しかし、各診療所や病院のデータ形式が統一されていなかったため、データ収集に時間がかかり、身元確認作業での活用が困難な状態であった。
 「口腔診査情報標準コード」では歯種、現在歯・欠損歯の有無、現在歯の内容、欠損歯の内容、歯列・咬合の情報等が格納される。カルテ一号用紙の口腔内の状態をイメージすると分かりやすい。この他歯科医師会行動計画(改定版)のデンタルチャート(死後記録)項目と過去災害例からの代表的な表記、インターポールの災害犠牲者身元確認(DVI)フォームで使われる項目も収載している。
 これらの項目は「口腔状態スナップショット」として「CSV形式データ」で保存される。これにより、歯科レセコンベンダが取り組みやすくなり、またHL7形式に変換しやすくなる。HL7形式に変換することにより、医科との共有がしやすくなる。
 次回では、標準化のための段階を初期から順番に述べていきたい。

協会理事/広報・ホームページ部長 早坂 美都

(東京歯科保険医新聞2021年7月号3面掲載)

第2回メディア懇談会を開催/中医協での歯科材料議論の可能性や歯科医師のワクチン接種などに関心集まる

第2回メディア懇談会をWEB方式で開催/中医協での歯科材料議論の可能性や歯科医師のワクチン接種などに関心集まる

協会は79日、第2回(通算83回)メディア懇談会をWEB方式で開催した。WEB開催は前回5月に続き2回連続となり、説明と報告は坪田有史会長が行い、司会は広報・ホームページ部長の早坂美都理事が務めた。

冒頭、613日の第49回定期総会で会長に就任した坪田会長が、総会全体の模様と「決議」について報告を行い、さらに今期スタート当たっての挨拶を行った。続いて、①政策委員長談話「歯科医師によるワクチン接種は適法性があることを法に明記すべき」、②金銀パラジウム合金の問題(逆ザヤシミュレーター)、③2020年学校健診後治療調査、④歯科医師による新型コロナワクチン接種のための筋肉注射実技研修の紹介―について説明を行い、その後、協会側と参加者による懇談に移った。

その中では、今後の中医協の検討の中で歯科材料が議論の俎上にのる可能性があることが注目されたほか、歯科医師による新型コロナワクチン接種を巡り、日本歯科医師会のeラーニング受講や協会が筋肉内注射の実技研修会の実施を予定していることなどについて関心が集まった。

次回開催は本年9月の予定。

説明・報告に当たる坪田有史会長

司会を務めた広報・ホームページ部長の早坂美都理事

 

【受付終了】9月5日(日)新規開業医講習会

緊急事態宣言が発出されたことで、新規個別指導の実施が先送りされています。
2019年開業の先生方は、新規個別指導が概ね終了していますが、2020年以降に開業の先生方は、
これから指導を迎えます。新規個別指導を終了した先生方は一様に「日頃の対策が良かった」と
おっしゃっています。コロナ禍で指導が先送りされている今であればこそ、
保険請求のルールについて学びましょう。
新規開業医講習会は新規指導対策、カルテ記載の留意点などを解説する33年の歴史ある講習会です。

講義内容は

  • カルテ記載・文書提供・レセプト記載の留意点
  • 新規個別指導の際の持ち物や注意点
  • 開業医として知っておきたい保険診療のルール

など、新規指導をこれから控えている先生に知っていただきたい内容です。

会員の先生だけが参加できますが、未入会の先生も、
これを機にご入会いただければご参加いただけます。
ぜひ、お申込みください。

※ご参加の会員の先生方は、感染防止対策のためマスク着用など、
 ご自身及び周囲への感染予防の配慮をお願いいたします。
※新型コロナウィルスの影響により中止・延期の場合があります。

会場となるTAP高田馬場の新型コロナウイルス感染症に対する取り組みについて
https://t-ap.jp/room/pdf/covid19_202102.pdf

    日   時95日(日) 12001700(予定)

    講   師:協会講師団

    会   場:TAP高田馬場 (新宿区高田馬場1-31-18  高田馬場センタービル3F

    定   員:50名(会員のみ)

    参加費:13,000

    【お申込みはこちら(Googleフォーム)】

    https://forms.gle/s8ry4QrJeuNkkLyDA

    【問合せ先】
    ☎03-3205-2999(担当:組織部) 

    東京都中小企業者等月次支援給付金 7月1日より申請開始

    7月1日より、東京都中小企業者等月次支援給付金の申請が始まりました。

    売上の減少が30%以上の個人事業主に対しては5万円の支援金が給付されます。

    国で行っている月次支援金の受給要件は2022年の4・5・6月の売上が2019年または2020年の4・5・6月の売上と比較し50%減少していることとなっていましたが、今回の東京都独自の月次支援給付金は30%減少していることが受給要件となっており、要件が緩和されています。

    また、既に国から月次支援金をもらっている場合も追加申請ができます。

    詳細は以下の通りです。

     

    東京都中小企業者等月次支援給付金

    1 申請受付について

    (1)申請受付期間

     申請開始:令和3年7月1日(木曜日)

     申請期限:令和3年10月31日(日曜日)(消印有効)

    (2)申請方法

      ① オンライン申請:専用ポータルサイトから申請できます。

         https://tokyogetsuji.metro.tokyo.lg.jp/

      ② 郵送申請:簡易書留など郵便物の追跡ができる方法で、以下の宛先にご郵送ください。

        【宛先】〒111-8691 浅草郵便局 私書箱:121

            東京都中小企業者等月次支援給付金 申請受付 宛

     

    2 申請要件

    (1)都内に本社・本店のある中小企業等及び都内に住所のある個人事業者等であること(業種を問いません)

    (2)都内に本社・本店のある酒類販売事業者であること

    (3)緊急事態措置又はまん延防止等重点措置に伴う飲食店の休業・時短営業又は外出自粛等の影響を受けていること

    (4)2021年の456月における各月売上額が2019年又は2020年の同月の売上額と比べて30%以上減少していること

    (5)今後も事業の継続及び立て直しのための取組を実施する意思があること

    ※東京都のホームページでは給付対象の具体例として医療・福祉関連の事業者をあげており、コールセンターでは緊急事態措置又はまん延防止等重点措置に伴う外出自粛等の影響で売上が減少していれば、歯科診療所も対象となり得ると回答しています。

     

    3 給付額

      2019年又は2020年の基準月の売上ー2021年の対象月の売上
    50%以上減少 30%以上50%未満減少
    中小企業等 酒類販売事業者 上限20万円/月 上限10万円/月
    その他の事業者 上限5万円/月 上限10万円/月
    個人事業者等 酒類販売事業者 上限10万円/月 上限5万円/月
    その他の事業者 上限2.5万円/月 上限5万円/月

    ※ 月ごとに売上高の減少額に応じて給付額を決定(定額給付ではありません)

    ※ 対象月:2019年又は2020年の同月比で、売上が30%以上減少した2021456

    ※ 基準月:2019年又は2020年における対象月と同じ月

    ※50%以上減少の場合は国からの月次支援金に上乗せする金額、申請には国の月次支援金の給付決定通知が必要

     

    4 問い合わせ先

    東京都中小企業者等月次支援給付金コールセンター

    電話 03-6740-5984

    900分から1900分まで(土曜日・日曜日・祝日含む))

    中医協総会がWEB開催/9月メドに「意見の整理」取りまとめの予定

    中医協総会がWEB開催/9月メドに「意見の整理」取りまとめの予定

    7月7日、中医協はWEB方式で総会を開催した。今回の議題として、「次期診療報酬改定に向けた主な検討内容」、「コロナ・感染症対策(その1)」、「外来(その1)」の3項目について取り上げた。これにより、第1ラウンドの議論が本格的にスタートした形だ。

    これらのうち「次期診療報酬改定に向けた主な検討内容」について、「主な内容」として①コロナ・感染症対応、②外来、③入院、④在宅、⑤歯科、⑥調剤―の6項目を提示し、さらに、「個別事項」として、①働き方改革の推進、②不妊治療の保険適用、③医薬品の適切な使用の推進、④歯科用貴金属の随時改定―の4項目を示し、合計10項目を提起した。

    今後は、これら項目に関する協議・検討を進めるとともに、論点整理を行い、本年9月をメドに「意見の整理」の取りまとめを行う予定だ。さらに、その後は第2ラウンドとして次期診療報酬改定に向けての、より具体的な議論を進めることになる。

    【受付終了】支援補助金やその他補助金、コロナ対応全般のお悩み解決!7月29日開催会員WEB懇談会

    会員WEB懇談会~コロナ禍の経営について~

    今回も会員懇談会をWEB上で「コロナ禍の経営について」をテーマに開催します。協会に寄せられた相談(給付金や助成金、コロナ発生時の診療所の対応など)や事前にいただくアンケートをもとに、先生方のお悩みにお応えします。

    コロナの助成金や給付金についての申請・実績報告方法を直接聞きたい!コロナが発生した際の診療所の対応をしっかりと聞いてみたい!といった先生は是非ご参加ください。

    ※Zoomミーティングを活用した開催です。顔出しでご参加いただき、活発な懇談会となるようご協力をお願いします。

    ※顔出しでのご参加を原則としていますが、難しい場合はその旨備考欄にご記入ください。

     【日 時】 7月29日(木) 開始:午後7時00分(予定) 終了:8時30分(予定)

     ※開始・終了時間は変更となる場合がございます。

    【会 場】 WEB(Zoomミーティングルーム)

    【参加費】 無料

    【定 員】 15名程度

    【要予約】 会員本人のみ※下記のお申込フォームからご予約ください

    お問い合わせは、組織部まで(℡:03-3205-2999)

     お申込フォーム

    都議会議員選挙の投開票実施される/投票率は都議選史上2番目に低い42.39%

    都議会議員選挙の投開票実施される/投票率は都議選史上2番目に低い42.39%にとどまる

    東京都議会議員選挙の投開票が7月4日に行われた。その結果、自民党が現有議席を上回る33議席を得て第1党となった。小池百合子都知事が特別顧問を務める地域政党の「都民ファーストの会」は31議席となった。

    なお、投票率は42.39%となっており、都議選史上最低だった1997年の投票率40.80%に次ぎ、2番目に低い投票率となった。

    都議会議事堂正面

    【受付終了】9/25(土)開催:第2回若手歯科医師向け学術ベーシック講座

    【テーマ】

    CAD/CAMクラウンのベーシック

    【抄録】

    20209月より全部位(条件付き)においてCAD/CAMレジン冠が保険適用となりました。また最近では、ガラスセラミックスやジルコニアセラミックスなどによる保険適用外のクラウンにおいても、CAD/CAMシステムを用いた製作方法が主流となってきました。そこで、本手法で製作したクラウンについて、材料の選択や支台歯形成、接着のベーシックについて解説していきたいと思います。(講師より)

    【日時】

    9月25日(土) 午後7時~午後9時

    【講師】

    阿部 菜穂 氏(東京歯科保険医協会 社保・学術部  江東区開業)

    【会場】

    Zoomまたは協会会議室(新宿区高田馬場1-29-8 6階)

    【対象者】

    40歳代までの当会会員限定(ご本人のみ)

    【参加費】

    4,000円

    【定員】

    Zoomミーティング20名

    協会会場 10名

    ※感染症の蔓延の観点から、Zoomミーティングと会場のハイブリッド開催となります。

    【要予約】

    ↓↓↓Googleフォームより必要事項をご入力頂き、お申込みください。↓↓↓

    https://forms.gle/QaV6MR495Ffk2gnG7

     

    コロナワクチンを接種した医療従事者・患者の対応について

     本稿ではワクチン接種後の医療従事者の感染対策やワクチン接種を終えた患者さんについての知見をまとめました。

     お引き受けいただきましたのは、国立研究開発法人国立国際医療研究センター病院副病院長で同センター歯科・口腔外科診療科長の丸岡 豊氏。(「東京歯科保険医新聞」2021年7月1日 第616号掲載)

     

    ワクチン接種を終えた医療者の「ふるまい」について

      結論から申し上げますと、「ワクチン接種終わった」→「飲み会・会食 即OK」ではありません。ワクチン接種によって「発症」「重症化」を防ぐ効果は確認されておりますが、「感染」「伝播」を防ぐ効果はまだよくわかっておりません。 

     依然として医療機関を受診する患者さんはワクチン未接種の方が大多数です。そのため、ワクチンを接種した医療者が発症しなくても、気づかないうちに患者さんに新型コロナウイルスを感染させ、患者さんが発症してしまうかもしれません。引き続きマスクの常時着用、手指衛生、3密回避をはじめ、今まで徹底してきた感染対策を変わらずに継続することが重要です。

     感染するリスクが極めて高いのが会食です。歓送迎会などを含め同居人以外との会食の自粛が求められます。自宅などに複数人で集まっての食事も会食になりますし、院内での朝食会議・ランチ会議も会食に該当します。

     少なくとも私たちがスプレッダーにならないような自重は引き続き必要と思います。私たち医療従事者がなぜ優先接種の対象になったのかの意味をお考えください。

     

    ワクチン接種を受けた患者さんの取り扱いについて

      ワクチン接種前に手術を受けた方は術後どれだけの期間を空ければ良いのか、あるいはワクチン接種後にどれほどの期間を空ければ手術を受けられるのか、というお悩みがあると思います。

     一般社団法人日本医学会連合からの423日付の提言では、これについてはエビデンスに基づく明確な基準は現在のところない、としています。術後には身体に加わった侵襲に伴う免疫応答や異化の亢進などの理由でワクチン接種は2週間ほど待機することが一般的であり、適切な接種時期の決定にかかる参考となる事実もないため、この2週間というのが妥当ではないか、ということのようです。同様にワクチン接種後の手術については一過性の副反応の頻度が少なくなる接種後3日目以降であれば手術は可能なのではないかとしています。医学会連合が発出した「COVID-19 ワクチンの普及と開発に関する提言(修正第4 2021423日)」をご参照ください。

     ただ注意すべきこととして、この提言には公益社団法人日本麻酔科学会が名を連ねておりません。日本麻酔科学会は「mRNA COVID-19 ワクチン接種と手術時期について」を別に提言しており、微妙な温度差が垣間見えます。「全身麻酔関連についていえばまだまだわからないことはたくさんある」という立場のようですので、麻酔科担当医師との意思疎通が必要と思われます。

     

    ※注釈※

    発症=症状が出ること

    重症化=入院や集中治療が必要な状態になること

    感染=ウイルスをもらうこと

    伝播=ウイルスを他の人にうつすこと

     

     現在、新規感染者数は再び増加の様相を呈し、このままではオリンピックに関連して8月初め頃に第5波襲来との予測もあり、やはり予断を許さないところです。

     私たちは今、未体験の時代を生きています。日本より早くワクチン接種が進んでいる各国では様々な推奨のもと、一部緩和がされ始めております。しかし、それらの推奨をどこまで取り入れていくかについては、ワクチン接種後の対応や行動に関して、今後の流行状況やワクチン接種の状況を踏まえて判断されますので、常に最新情報には注意を払う必要があるでしょう。

     

    ―一般社団法人医学会連合が提言した「COVID-19 ワクチンの普及と開発に関する提言(修正第 4 2021 4 23 日)」PDF

    https://www.jmsf.or.jp/uploads/media/2021/04/20210426063706.pdf

     

    ―公益社団法人日本麻酔科学会が提言した「mRNA COVID-19 ワクチン接種と手術時期について」PDF

    https://anesth.or.jp/img/upload/ckeditor/files/2003_35_700_1.pdf

     

     

     【プロフィール】

    丸岡 豊 (まるおか・ゆたか)

    [現職]

    国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院 副病院長

     同 歯科・口腔外科 診療科長

    東京医科歯科大学 歯学部 臨床教授

     

    [略歴] 

    1990年 東北大学 歯学部 卒業

    1994年 東京医科歯科大学大学院 修了(博士・歯学)

    1997年 米国Vanderbilt University Medical School, Cell Biology, Research Associate

    2004年 東京医科歯科大学大学院 顎口腔外科学分野 講師

    2007年 国立国際医療研究センター病院 歯科・口腔外科 診療科長

    2019年 国立国際医療研究センター病院 副病院長(併任)

    現在に至る

    【開催終了】10/20(水),11/25(木)開催 第2回ドクター・スタッフ講習会 ~シャープニング・SRP実習~

     

    開催を終了いたしました。

     

    第2回ドクター・スタッフ講習会  

    ~シャープニング・SRP実習~

     毎年好評を頂いております「シャープニング・SRP実習」の講習会です。

    11月は、「SRP(超音波スケーラー)編」を行います。

    シャープニングやSRP、超音波スケーラーのノウハウを基本から学びたい歯科医師・歯科衛生士の方はぜひご参加ください。

    ※各回参加人数に制限があります。お申込みいただくタイミングによってはご参加いただけない場合があります。予めご了承ください。

     

     

     

    日 時: 11月25日(木)午後6時30分~9時「SRP(超音波スケーラー)編」

     

    講 師:新田 浩 氏(東京医科歯科大学病院 歯系診療部門 歯科総合診療科教授)他

     

    会 場:東京歯科保険医協会・会議室           

        住所 新宿区高田馬場1-29-8 いちご高田馬場ビル6F

     

    交 通:JR中央・地下鉄東西線・西武新宿線 高田馬場駅徒歩5分

     

    対象者:歯科衛生士・歯科医師 (※歯科医師のみでのお申込みは出来ません。)

     

    参加費:1名につき10,000円

     

    定 員 16名(各回共通)

    ※ご予約は1診療所につき2名様まで。

     

    お申込みはこちらから

    SRP(超音波スケーラー編)

     

     

    【開催終了】歯科医師による新型コロナワクチン接種のための筋肉注射 実技研修

     新型コロナウイルス感染症に係るワクチン接種のための筋肉内注射の歯科医師による実施については、厚生労働省の2021年426日付事務連絡により、筋肉内注射の経験がない場合、筋肉内注射の実技研修を受講することが要件の一つとなっています。
     この度、東京都の依頼により、東京保険医協会の協力のもと、当会会員向けに実技研修を実施することといたしました。各回人数に限りがありますので、お早めにお申込みください。
     ※東京歯科保険医協会の会員限定となります。非会員の先生はご入会が必要となりますので、ご了承ください。

    <実習の予約はこちらから>

    https://reserva.be/tokyosk418


    <日 時>

    7月22日(木)、723日(金)各日5

    第1部 11451235

    第2部 13051355

    第3部 14251515

    第4部 15:451635

    第5部 17051755 

    <定 員>

    各回30名
    <対象者>
    日本歯科医師会で実施しているワクチン接種に係るEシステム(e-ラーニング)による教育研修を修了した東京歯科保険医協会の会員
    e-ラーニングを未受講の方は、こちらから受講してください。
    https://www.nskjs.jda.or.jp/webpc/login.aspx
    ※歯科医師会非会員でも受講可能です。受講用IDの発行は、医療機関所在地の都道県歯科医師会が行います。詳しくは、各都道府県歯科医師会のHPをご確認ください。受講用IDの発行までに1週間程度かかる場合がありますので、早めにお申し込みください。


    <要予約>

    実習はこちらからご予約ください。
    https://reserva.be/tokyosk418
    予約後、7月21日までに、日本歯科医師会で実施しているワクチン接種に係るEシステム(e-ラーニング)の修了証をメール添付またはFAXでお送りください。
    メール:tsk-vaccine@doc-net.or.jp
    FAX:03-3209-9918


    <会 場>

    TAP高田馬場 A+Bルーム
    地図はこちら
    https://t-ap.jp/room/access.html


    <講 師>

    佐藤 一樹先生(東京保険医協会理事・医学博士・いつき会ハートクリニック院長)、看護師4


    <参加費>

    無料


    <担 当>

    政策委員会

    当会未入会の方はご参加いただくことができません。
    ご入会をご希望の方は、まずは電話番号ください。
    (スマトフォンの方は下記をクリック)

    「骨太の方針2021」を閣議決定/「生涯を通じた切れ目のない歯科健診」を提唱

    「骨太の方針2021」を閣議決定/「生涯を通じた切れ目のない歯科健診」を提唱

    政府は6月18日、「経済財政運営と改革の基本方針2021」、いわゆる「骨太方針2021」を閣議決定した。今回の骨太方針のメインテーマは「「日本の未来を拓く4つの原動力~グリーン、デジタル、活力ある地方創り、少子化対策~」となっている。同日の閣議に先立って開催された経済財政諮問会議では、議長の菅義偉首相が「骨太方針では、まずは新型コロナ対策に最優先で取り組みながら、特にグリーン、デジタル、活力ある地方づくり、少子化対策の4つの課題に重点的な投資を行い、長年の課題に答えを出し、力強い成長を目指していく」とし、感染症が拡大、蔓延延した場合の病床の確保、ワクチンや治療薬の実用化などの法的措置について、速やかに検討する方針を明らかにしている。

    「骨太の方針2021」全体の構成は、①新型コロナウイルス感染症の克服とポストコロナの経済社会のビジョン、②次なる時代をリードする新たな源泉~4つの原動力と基盤づくり、③感染症で顕在化した課題等を克服する経済・財政一体改革、④当面の財政運営と令和4年度予算編成に向けた考え方―の4章からなり、その下に中項目、小項目が設けられ、具体策が明記されている。全体的としては、政府の最重要事項はコロナ対策であることを打ち出している。

    ◆今回指摘された歯科関連事項

    4章の中で、特に歯科に関しては③の「感染症で顕在化した課題等」の中で触れており、「全身との関連性を含む口腔の健康の重要性に係るエビデンスの国民への適切な情報提供、生涯を通じた切れ目のない歯科健診、オーラルフレイル対策・疾病の重症化予防にもつながる歯科医師、歯科衛生士による歯科口腔保健の充実、歯科医療専門職間、医科歯科、介護、障害福祉機関等との連携を推進し、歯科衛生士・歯科技工士の人材確保、飛沫感染等の防止を含め歯科保健医療提供体制の構築と強化に取り組む」方針を打ち出すとともに、「今後、要介護高齢者等の受診困難者の増加を視野に入れた歯科におけるICTの活用を推進する」とし、歯科におけるICT活用を重視する方針を打ち出している。

    ◆これまでの歯科の記述

    過去、骨太方針で明記された歯科関連内容を振り返ると、「骨太方針2019」で初めて歯科関連事項が打ち出され、口腔の健康は全身の健康にもつながることから、生涯を通じた歯科健診の充実、入院患者や要介護者を始めとする国民に対する口腔機能管理の推進など歯科口腔保健の充実や地域における医科歯科連携の構築など歯科保健医療の充実に取り組む、病院・診療所の機能分化・機能連携等を推進しつつ、かかりつけ機能の在り方を踏まえながら、かかりつけ医、かかりつけ歯科医、かかりつけ薬剤師の普及を進める2点が明記された。一方、「骨太方針2020」では、「感染症の予防という観点も含め、口腔の健康が全身の健康にもつながるエビデンスの国民への適切な情報提供、生涯を通じた歯科健診、フレイル対策・重症化予防にもつながる歯科口腔保健の充実、歯科医療専門職間、医科歯科、介護等関係者との連携を推進し、歯科保健医療提供体制の構築と強化に取り組む」などが明記された。双方ともに「生涯を通じた歯科健診」が必須である点を強調しており、この点は今回の骨太方針でも継承されている。

    また、今年の方針で歯科関連事項の中で新たに打ち出された視点は、「飛沫感染防止」と「歯科におけるICT活用」の2点だ。

    ◆医療費削減策の緻密化や医療費扶助の在り方検討も

    一方、医療費削減に関する取り組みについては、都道府県医療費適正化計画での「医療に要する費用の見込み(以下「医療費の見込み」という。)については、定期改訂や制度別区分などの精緻化」を図りつつ、医療費が見込みを著しく上回る場合の対応、都道府県の役割や責務の明確化を図るとしている。また、「後期高齢者医療制度の在り方、生活保護受給者の国保及び後期高齢者医療制度への加入を含めた医療扶助の在り方の検討を深める」方針を打ち出している。

    ◆マイナンバーとオンライン

    そのほか注視すべき点を見ると、昨年暮れに閣議決定された「デジタル・ガバメント実行計画」との関連で、「2022年度末にほぼ全国民にマイナンバーカードが行き渡ることを目指すとの方針の下普及に取り組む」とし、具体策として「マイナンバーカードの健康保険証、運転免許証との一体化などの利活用拡 大、スマホへの搭載等について、国民の利便性を高める取組を推進する」方針も打ち出している。

    また、「デジタル時代の官民インフラを今後5年で一気呵成に作り上げる。」ことや「オンライン化されていない行政手続の大部分を、5年以内にできるものから速やかにオンライン化し、オンライン化済のものは利用率を大胆に引き上げる」など、向こう5年以内のオンライン化目標を掲げている。

    非常時の弱さと泥縄対策がコロナ下で露呈/歯科技工士問題など歯科でも平時に本格議論を【連載】私の目に映る歯科医療界③

     緊急事態宣言の期間延長・地域拡大など、この原稿執筆時点でも新型コロナ感染の収束については依然、見えない。そうした中で、いかに非常時への日本の備えがぜい弱であったかが見えてきた。
     感染防止の「頼みの綱」のワクチン接種率は未だ3%台であり、欧米先進国のみならず、お隣の韓国などにも劣る。感染症対策の入り口ともいうべきPCR検査率も人口比10%程度と、後発開発途上国水準だ。欧米などよりコロナ感染者数が少ないにもかかわらず生じている日本の医療逼迫も深刻な問題だ。

     

    国産ワクチン開発遅れの根本対策をスルー

     国内メーカーによるワクチンの開発遅れが気になるのだろう。多くの健常人を対象にした最終臨床試験(第3相試験/フェーズ3)をせずに、その前の第2相試験のデータで承認しようという動きが政府・自民党にある。塩野義製薬が開発中のワクチンが念頭にあると思うが、河野太郎ワクチン担当大臣の「年内にも国産ワクチンの実用化もありうる」との発言ともこれは平仄が合う。
     今回のような非常時に、厚生労働省は新薬を素早く認める米国の緊急使用許可制度を導入する計画を進めている。これは、米ファイザー社のワクチン承認が英米などに比べ2カ月遅れになったことが頭にある。少しでも海外製の新薬・ワクチンの日本への導入を早めようと、国内治験データが出揃ってない段階でも、海外で使用されるワクチン・新薬を日本でも使える(保険適用できる)ようにする内容が含まれている。

    米国は厳格なデータ収集に基づき審査実施

     米国版は米国内第3相試験までしっかり実施し、厳格なデータを取ったうえで審査を早める承認制度だから、日本で導入しようとするのは米国版とは似て非なるもの。
     有効性・安全性の観点からは、許可時に国内治験をスルーするのは問題のある動きで、泥縄対策だ。
     なぜ新型コロナ用のワクチン・新薬を国内製薬企業が欧米や中国のメーカーのように迅速に、遺伝子情報を活用した新規技術なども駆使して開発できないのかの、根本問題の解決にはつながらないからだ。

    製薬企業への国による各種支援が必要

     本当は、製薬企業の開発・生産・海外治験などに、国がもっと支援する必要がある。米国の前トランプ政権は、ワクチン開発加速や生産構築支援に1兆円超を投じた。発生源ながら感染が早く収まった中国は、ワクチンメーカーが早くから中後期治験を海外で実施した。開発支援や海外治験に中国政府の後押しがあったのは確かで、これを考えれば、日本政府の支援の在り方に問題があるのはよくわかる。
     PCR検査体制や医療体制での問題もしかりだ。医療費抑制、保健所人員や医療病床の削減・病院再編ばかりの国の従来の医療政策の欠点が、今回のコロナ感染勃発で見事に露呈したに過ぎないことは明白だ。

    泥縄対策は歯科医師駆り出しにも影響

     PCR検査、そしてワクチン接種での歯科医師での駆り出しにも、政府の慌てぶりはよく表れている。
     日本歯科医師会は、厚労省通達で一定条件が得られたということで協力をする「大人の方針」だ。国難だけに国民の生命・安全のために歯科医師の皆さんには大いに頑張っていただきたいが、日本の歯科医師の場合、日常業務で多忙な個人歯科診療所の経営者やそこに勤務する歯科医師が大半なだけに、どれだけワクチン接種に割ける余力があるのか。PCR検査での実績を見ると、心もとないのは私だけだろうか。

    ▼平時から突き詰めておくことの大事さ
     さらに考えてほしいことは、歯科医療や歯科経営でも、緊急事態があってからでなく、平時から、こういう事態が起きるのではないかと予測し、今からどう備えるかを突き詰めておくことの大事さである。

    ▼確実に緊急事態となる筆頭は歯科技工士問題
     個人的には、歯科業界全体の観点から確実に歯科技工士不足が到来するという意味では、緊急事態がくるのが見えている歯科技工士問題がその筆頭候補と考える。
     医科に比べ点数が抑えられている歯科の保険点数の在り方、10万人を超し過剰と言われる歯科医師の需給や、個人経営が大半を占める歯科診療所経営も問題が大きく時間がかるだけに、今からしっかり議論する必要がある。その動きにも注目したい。

    筆者:東洋経済新報社 編集局報道部記者 大西 富士男

    (東京歯科保険医新聞2021年6月号10面掲載)

    「2020年学校健診後治療調査」、保団連マスコミ懇談会で報告!

    2021年6月17日に保団連において行われた「マスコミ懇談会」に当会の森元・橋本両理事が報告者として参加してきました。この場では、当会も取り組んだ「学校健診後治療調査」について報告してきました。

    NHKや朝日新聞等、複数社が参加しました。

    懇談会後、橋本理事がNHK(報道局 社会部)から取材を受けました。

    「学校健診後治療調査(全国版)」の概要はこちらから

    学校検診後治療調査(全国版)

    この取材の模様がNHKでも取り上げられました。オンライン配信はこちらから

    NHKオンライン配信「”コロナ禍 子どもの健康悪化が” 4割の学校調査結果がまとまる

    「学校健診後治療調査(東京版)」の概要はこちらから

    学校健診後治療調査(東京版)

    「学校歯科治療調査報告書(2018年3月発表分)」はこちらから

    学校歯科治療調査報告書(2018年3月発表分)

     

     

     

     

    2020年度第3次補正予算による感染拡大防止補助金(25万円)7月末までに交付終了見込

    2020年度感染拡大防止補助金25万円(2021年2月28日締切)の入金がいまだにされないという問い合わせが多く寄せられている。

    協会は保団連などと連携し、厚労省に交付遅れの実情を伝え、迅速な対応を求めており、参院内閣委員会でも審議された。国会で厚労省は、感染防止対策補助金について、遅くとも7月末までにすべての交付を終える見込みであると回答した。

    また、感染防止補助金の概算払い申請について、まずはコールセンターで個別の申請状況を回答する体制を取ると回答している。医療機関からコールセンターに個別の申請状況を紹介する際は、医療機関コードを伝える必要がある。

    7月末までに入金がない場合は、コールセンターに確認を取るなどの対応をしていただきたい。

    問合せ:厚生労働省医療提供体制支援補助金コールセンター 0120‐336‐933(受付時間は平日9時30分~18時まで)

    【受付終了】7月11日(日)開催「医科歯科連携研究会2021」三角筋の詳細解剖解説による正しい筋肉注射と 迷走神経反射対策

    毎年恒例となりました、当協会と東京保険医協会、千葉県保険医協会の3協会による医科歯科連携研究会を今年も開催いたします。今回は、新型コロナウイルスワクチン接種に役立つ、三角筋解剖解説と、迷走神経反射の対策について講演いただきます。迷走神経反射は日常の歯科診療でも起こりえる症状です。ぜひご参加ください。

    [ 日 時]
    7月11日(日) 14:30 ~ 16:00

    [ 演 題]
    ◎ 医師・歯科医師・看護師必見 ◎ ~紛争回避~
    三角筋の詳細解剖解説による正しい筋肉注射と迷走神経反射対策

    [講 師]
    佐藤  一樹 氏(いつき会 ハートクリニック 院長)

    [抄 録]
     新型コロナウイルスワクチンでは三角筋への筋肉注射接種が指定され、安全に接種するためには、個別の解剖学的特徴も含めた三角筋自体の解剖の理解が前提となります。
     また、精神的肉体的条件が整っていない非接種者、特に高齢者では立ちくらみなどの迷走神経反射を起こす確率が高いことから、その対策を含めて講演します。

    [ 対象者]
    会員および会員の診療所スタッフ

    [ 参加費]
    無 料

    [ 定 員]
    会場 50人(定員に達しました)

    Zoomウェビナー 500人(先着順)

    ※会場とZoomウェビナーの併用で開催いたします。
    ※会場参加は定員に達したため、お申込み頂けません。

    ↓↓↓{お申込みはこちらから(Zoomウェビナー)}↓↓↓

    https://us02web.zoom.us/webinar/register/WN_DfFs_OVOTv68pTfMh5azWA

    [問い合わせ先]
    ☎03-3205-2999(担当:医科歯科連携委員会)

    [ 会 場]
     東京保険医協会セミナールーム(新宿区西新宿3-2-7 KDX新宿ビル4F

     

    「骨太の方針2021(仮称)原案」の内容判明/歯科分野では「受診困難者を視野に入れた歯科におけるICTの活用」の方針打ち出す

    「骨太の方針2021(仮称)原案」の内容判明/歯科分野では「受診困難者を視野に入れた歯科におけるICTの活用」の方針打ち出す

    6月9日、第8回経済財政諮問会議(議長:菅義偉/内閣総理大臣)が総理大臣官邸で開催された。その際に内閣府事務局から資料として「経済財政運営と改革の基本方針2021(仮称)原案」、いわゆる「骨太の方針2021」が提示され、構成員による協議・検討が加えられた。第1章では「新型コロナウイルス感染症の克服とポストコロナの経済社会のビジョン」を取り上げ、政府としての最重要事項がコロナ対策であることを打ち出している。

    特に歯科に関係する事項・記述を見ると、第3章「感染症で顕在化した課題等を克服する経済・財政一体改革」の中で、「全身との関連性を含む口腔の健康の重要性に係る国民への適切な情報提供、生涯を通じた歯科健診、オーラルフレイル対策・重症化予防にもつながる歯科医師、歯科衛生士による歯科口腔保健の充実、歯科医療専門職間、医科歯科、介護、障害福祉機関等との連携を推進し、飛沫感染等の防止を含め歯科保健医療提供体制の構築と強化に取り組む」ことを強く訴えるとともに、「今後、要介護高齢者等の受診困難者の増加を視野に入れた歯科におけるICTの活用を推進する」としている。

    これまでの骨太の方針の中における歯科に関連の記述を振り返ると、「骨太方針2019」では、口腔の健康は全身の健康にもつながることから、生涯を通じた歯科健診の充実、入院患者や要介護者を始めとする国民に対する口腔機能管理の推進など歯科口腔保健の充実や地域における医科歯科連携の構築など歯科保健医療の充実に取り組む、病院・診療所の機能分化・機能連携等を推進しつつ、かかりつけ機能の在り方を踏まえながら、かかりつけ医、かかりつけ歯科医、かかりつけ薬剤師の普及を進める2点を初めて打ち出した。また、「骨太方針2020」では、「感染症の予防という観点も含め、口腔の健康が全身の健康にもつながるエビデンスの国民への適切な情報提供、生涯を通じた歯科健診、フレイル対策・重症化予防にもつながる歯科口腔保健の充実、歯科医療専門職間、医科歯科、介護等関係者との連携を推進し、歯科保健医療提供体制の構築と強化に取り組む」ことが明記された。

    それらに対し、今年の「骨太方針2021」は、新たに「飛沫感染防止とICT活用」という視点を打ち出したものとうかがえる。

    オーラルフレイルを巡り歯科専門家3氏の見解を紹介/6月20日付「サンデー毎日」誌上で取り上げる

    オーラルフレイルをめぐり歯科専門家3氏の見解を紹介/「サンデー毎日6月20日号」誌上で取り上げる

    サンデー毎日の620日号で「オーラルフレイル/人は口から老化する/オーラルフレイル万全対策/わが家が一番危ない!/大反響第29弾<人は口から老化する>」として、オーラルフレイル対策について詳細に取り上げている。

    歯科の2代疾患である齲蝕、歯周病にも触れてはいるが、柱はあくまでも「咬む、飲む、話す」などの口腔機能となっている。さらに、口腔機能低下による「口腔機能低下症」の意味、およびそれへの対応に言及し、日常生活上の注意点を含め、歯科の重要性を訴えている。そして、①口の汚れから全身疾患リスク、②口の渇きから全身QOL低下、③うがいは究極の口腔トレ―の3点について、平野浩彦氏(東京都健康長寿医療センター歯科口腔外科部長)、稲垣幸司氏(愛知学院大学短期大学部教授)、伊藤加代子氏(新潟大学医歯学総合病院口腔リハビリテーション科助教)の3氏の見解が紹介されている。

    協会が2021年度第49回定期総会を開催/会長に坪田氏を互選

    協会が2021年度第49回定期総会を開催/坪田有史氏を会長に互選

    協会は613日、中野区の中野サンプラザにおいて、2021年度第49回定期総会を開催した。今回は昨年と同様、新型コロナ禍での開催となったため、総会記念講演、懇親会は開催せず、総会のみの開催とした。

    第49回定期総会会場風景。議案6本全てを了承

    総会には、役員と一般会員が41名が出席。委任状は1115名、両者を加えると1156名の参加となり、総会成立要件である会員数の10%を満たし、総会は成立した。予定していた以下の議案6本は、すべて承認された。

    ・第1号議案:2020年度活動報告の承認を求める件

    ・第2号議案:2020年度決算報告の承認を求める件/付・会計監査報告

    ・第3号議案:2021年度活動計画案の件

    ・第4号議案:2021年度予算案の件

    ・第5号議案:役員改選の件

    ・第6号議案:決議採択の件

    会長就任後、今後の協会活動を巡り抱負を語る坪田有史氏

    また、第5号議案にある通り、今総会は役員改選に当たっていることから、規約に基づき、総会で理事22名と監事2名の合計24名を選出した。さらに、理事の中から会長および5名の副会長を総会後の第6回臨時理事会で互選。会長には坪田有史氏が選出され、今後の協会活動を巡り抱負を述べた(下記①参照)。

    なお、第6号議案では「決議(案)」が賛成多数で採択された(下記②参照)。「決議」は以下の通り。

     

     

     

     

     

    ◆①理事・監事紹介/役職名・氏名(開業地)

    ・会 長(1名):坪田有史(文京区)

    ・副会長(5名):山本鐵雄(大田区)、川戸二三江(渋谷区)、松島良次(目黒区)、馬場安彦(世田谷区)、加藤 開(豊島区)

    ・理 事(16名):阿部菜穂(江東区)、岡田尚彦(渋谷区)、川本 弘(足立区)、呉橋美紀(大田区)、相馬基逸(品川区)、高山史年(豊島区)、中川勝洋(港区)、橋本健一(東村山市)、濱﨑啓吾(練馬区)、早坂美都(世田谷区)、半田紀穂子(台東区)、福島 崇(大田区)、本橋昌宏(荒川区)、森元主税(北区)、矢野正明(板橋区)、横山靖弘(港区)

    ・監 事:西田 紘一(八王子市)、藤野 健正(渋谷区)

    ◆②第49回定期総会「決議」

    協会が厚生労働省に行った歯科用金銀パラジウム合金の原価割れに関する改善要求から、昨年7月に歯科用貴金属に関する「随時改定」が新設された。しかし、原価割れは依然続いており、問題は一向に解決していない。医療機関の経営は更に厳しさを増しており、歯科医療に従事する人材を維持・確保できなくなる恐れがあるなど、医療提供体制の崩壊が懸念される。

    昨年から続く新型コロナウイルスの感染拡大や度重なる緊急事態宣言で、医療用物資の高騰や患者の受診抑制が続いている。4月から「歯科外来等感染症対策実施加算」が新設されたが、従来株よりも感染しやすい変異株が蔓延しつつある状況では、診療間隔を空けて密を避けるなどの対策を徹底・強化している。そもそもコロナ禍以前より院内感染防止対策に係る診療報酬の評価は十分とは言えず、さらに当該加算は今年9月診療分までの時限的な対応となっている。国は速やかに院内感染防止対策の適切な評価を行い、当該加算の算定期間を延長するべきである。

    新型コロナウイルスの感染拡大を受け、厚生労働省は、今年度の集団的個別指導に選定した医療機関に対して、高点数による個別指導を実施しないことにした。これは、協会が廃止を求めてきた成果の1つであり、必要性が乏しいことを厚生労働省は認めたと言える。萎縮診療にもつながる当該指導は、速やかに廃止すべきである。

    国は、一定の収入がある75歳以上の国民(約370万人)の負担割合を、1割から2割に引き上げる。2025年には団塊の世代が75歳に至り、在宅医療の医療提供や健康寿命の延伸が喫緊の課題となる中で、その負担割合を引き上げる動きには反対である。

    世界保健機関(WHO)憲章に掲げられた、人種、宗教、政治信条や経済的・社会的条件によって差別されることなく最高水準の健康に恵まれることは、あらゆる人々にとっての基本的人権の1つであるとの理念を踏まえ、健康と平和を脅かす動きに反対する。

    また、政府が推し進めている今後爆発的に増える高齢者のために一人当たりの社会保障費を削減する動きや、患者への安心安全な医療の実現を妨げる動きに断固反対し、国民の生活と歯科医療のより一層の充実に向けた運動を国民とともに力を合わせ、推進するために、以下の要求を国民、政府及び歯科保険診療に携わる全ての方に表明する。

    一.国は、現行の社会保障を後退させず、世界の国々が模範とする日本の社会保障制度や自治体が実施する歯科保健に関する事業などを更に充実させること。

    一.国は、これ以上の患者負担増計画は中止し、医療保険や介護保険の自己負担率を引き下げること、または公費助成を充実させることにより、国民負担を軽減すること。

    一.国は、院内感染防止対策の評価がコストに見合っていないなど診療報酬の問題を改善すること。

    一.国は、歯科用金銀パラジウム合金の原価割れが生じないよう、制度改善を行うこと。

    一.国は、高点数の保険医療機関を対象とした指導を廃止すること。

    一.私たち歯科医師は、命と健康や平和を妨げるすべての動きに反対する。

    2021年613

    東京歯科保険医協会

    49回定期総会

    第49回定期総会「決議」(機関紙2021年7月1日号<No.616>掲載予定)

    第49回定期総会「決議」(機関紙2021年7月1日号<No.616>掲載予定)

    決議 

    協会が厚生労働省に行った歯科用金銀パラジウム合金の原価割れに関する改善要求から、昨年7月に歯科用貴金属に関する「随時改定Ⅱ」が新設された。しかし、原価割れは依然続いており、問題は一向に解決していない。医療機関の経営は更に厳しさを増しており、歯科医療に従事する人材を維持・確保できなくなる恐れがあるなど、医療提供体制の崩壊が懸念される。

    昨年から続く新型コロナウイルスの感染拡大や度重なる緊急事態宣言で、医療用物資の高騰や患者の受診抑制が続いている。4月から「歯科外来等感染症対策実施加算」が新設されたが、従来株よりも感染しやすい変異株が蔓延しつつある状況では、診療間隔を空けて密を避けるなどの対策を徹底・強化している。そもそもコロナ禍以前より院内感染防止対策に係る診療報酬の評価は十分とは言えず、さらに当該加算は今年9月診療分までの時限的な対応となっている。国は速やかに院内感染防止対策の適切な評価を行い、当該加算の算定期間を延長するべきである。

    新型コロナウイルスの感染拡大を受け、厚生労働省は、今年度の集団的個別指導に選定した医療機関に対して、高点数による個別指導を実施しないことにした。これは、協会が廃止を求めてきた成果の1つであり、必要性が乏しいことを厚生労働省は認めたと言える。萎縮診療にもつながる当該指導は、速やかに廃止すべきである。

    国は、一定の収入がある75歳以上の国民(約370万人)の負担割合を、1割から2割に引き上げる。2025年には団塊の世代が75歳に至り、在宅医療の医療提供や健康寿命の延伸が喫緊の課題となる中で、その負担割合を引き上げる動きには反対である。

    世界保健機関(WHO)憲章に掲げられた、人種、宗教、政治信条や経済的・社会的条件によって差別されることなく最高水準の健康に恵まれることは、あらゆる人々にとっての基本的人権の1つであるとの理念を踏まえ、健康と平和を脅かす動きに反対する。

    また、政府が推し進めている今後爆発的に増える高齢者のために一人当たりの社会保障費を削減する動きや、患者への安心安全な医療の実現を妨げる動きに断固反対し、国民の生活と歯科医療のより一層の充実に向けた運動を国民とともに力を合わせ、推進するために、以下の要求を国民、政府及び歯科保険診療に携わる全ての方に表明する。

     

     

    一.国は、現行の社会保障を後退させず、世界の国々が模範とする日本の社会保障制度や自治体が実施する歯科保健に関する事業などを更に充実させること。

    一.国は、これ以上の患者負担増計画は中止し、医療保険や介護保険の自己負担率を引き下げること、または公費助成を充実させることにより、国民負担を軽減すること。

    一.国は、院内感染防止対策の評価がコストに見合っていないなど診療報酬の問題を改善すること。

    一.国は、歯科用金銀パラジウム合金の原価割れが生じないよう、制度改善を行うこと。

    一.国は、高点数の保険医療機関を対象とした指導を廃止すること。

    一.私たち歯科医師は、命と健康や平和を妨げるすべての動きに反対する。

    2021年6月13日

    東京歯科保険医協会 第49回定期総会

     

    【歯科医療情報観測】歯科情報の利活用および標準化とは何か ②

     前回は、歯科医療の変革について述べた。では、歯科医療情報標準化のために最初に何を始めたのか。
     2011年3月、東日本大震災が起こり、2013年から厚生労働省で標準化に向けた事業を開始した。口腔状態の表現を標準化し、診療情報の交換様式を視野に入れ、2017年には利活用および標準化普及事業が始まり、2020年に厚生労働省の標準規格が決定した。
     標準化事業の目的の一つである身元の確認のためには、データ交換ができることが必要となる。口腔を過不足なく表現し、歯科医療機関で共有でき、医科(SS-MIX2)との連携が必要となる。
     そのために、標準化仕様の定義に従った口腔状態の電子的記録を「口腔状態のスナップショット」と呼ぶことにして、身元の検索や確認ができるコード体系を作ることとした。標準化仕様である口腔診査情報標準コードに準拠することで、歯科医療機関同士で情報の共有化ができ、「口腔状態のスナップショット」を最新の状態に保つことで大規模災害での身元確認に資するデータが蓄積される。
     ここで先に述べるが、今後重要となるポイントがいくつかある。個人の口腔内の情報はセンシティブな個人情報に該当するため、利活用にかかわる法的側面が重要である。背景としては以下の法律がある。

    ①個人情報保護法(2003年)生きている個人に関する法律。
    ②医療情報システムの安全管理ガイドライン(2005年)厚生労働省
     ※死者の情報も対象であり、守秘義務がある。
    ③改正個人情報保護法(2017年)要配慮個人情報。医療情報はすべて要配慮個人情報であるから、オプトアウト(※)で提供できない。
     ※「オプトイン」は、臨床研究は文書もしくは口頭で説明を行い、患者さんからの同意(インフォームド・コンセント)を得て行われること。
      また、「オプトアウト」は研究の目的や実施についての情報を通知または公開し、研究のため
      に自分のデータが使用されるのを望まない場合は、拒否の機会を保障すること。

     将来的には、「口腔状態のスナップショット」は、生前情報の蓄積と死後情報のマッチングを目指していく。具体的には、乳幼児健診から後期高齢者歯周病健診まで一連の電子記録を蓄積し、管理できることを目指していく。
     次号では、標準化までの具体的な経緯について述べていきたい。

    協会理事/広報・ホームページ部長 早坂 美都

    (東京歯科保険医新聞2021年6月号3面掲載)

    歯科保健医療対策の充実に向け地域医療介護総合確保基金の一層の活用を/厚生労働省

    歯科保健医療対策の充実に向け地域医療介護総合確保基金の一層の活用を/厚生労働省

    厚生労働省はこのほど、地域医療介護総合確保基金における歯科保健医療関連施策を取りまとめ各都道府県に、この基金の一層の活用を指示した。

    この基金は、平成266月に成立した医療介護総合確保推進法に基づき、各都道府県に設置したもので、この基金を活用することで①病床の機能分化・連携に必要な基盤の整備、②在宅医療の推進、③慰労従事者等の確保・要請に必要な事業―などを支援するというもの。歯科保健医療に関する事業についても、「在宅歯科医療の体制整備」、「歯科衛生士・歯科技工士の確保」など、地域の事情に応じた諸対策を実施できることになっている。

    さらに同省は、これまでに同基金で実施してきた歯科保健医療関連の具体的な事業例を医科の用に提示した。

    【地域医療介護総合確保基金における事業例(歯科関連事業のみ抜粋)】

    1.地域医療支援病院やがん診療連携拠点病院等の患者に対する歯科保健医療の推進:

    ・地域医療支援病院やがん診療連携拠点病院等の患者に対して全身と口腔機能の向上を図るため、病棟・外 来に歯科医師及び歯科衛生士を配置又は派遣し、患者の口腔管理を行う。 また、病院内の退院時支援を行う部署(地域医療連携室等)等に歯科医師及び歯科衛生士を配置又は派遣し、退院時の歯科診療所の紹介等を行うための運営費に対する支援を行う。

     2.在宅医療の実施に係る拠点の整備:

    ・市町村及び地域の医師会が主体となって、在宅患者の日常療養生活の支援・看取りのために、医師、歯科医師、薬剤師、訪問看護師が連携し、医療側から介護側へ支援するための在宅医療連携拠点を整備することにかかる経費に対する支援を行う。

    3.在宅歯科医療の実施に係る拠点・支援体制の整備:

    ・在宅歯科医療を推進するため、都道府県歯科医師会等に在宅歯科医療連携室を設置し、在宅歯科医療希望 者の歯科診療所の照会、在宅歯科医療等に関する相談、在宅歯科医療を実施しようとする医療機関に対する歯科医療機器等の貸出の実施にかかる運営費等に対する支援を行う。

    4.在宅歯科医療連携室と在宅医療連携拠点や地域包括支援センター等との連携の推進:

    ・現在、都道府県歯科医師会等に設置されている在宅歯科医療連携室を都道府県単位だけでなく二次医療 圏単位や市町村単位へ拡充して設置し、在宅医療連携拠点、在宅療養支援病院、在宅療養支援診療所、在宅療養支援歯科診療所、地域包括支援センター等と連携し、在宅歯科医療希望者の歯科診療所の照会、在宅歯科医療等に関する相談、在宅歯科医療を実施しようとする医療機関に対する歯科医療機器等の貸出にかかる運営費等に対する支援を行う。

    5.在宅で療養する疾患を有する者に対する歯科保健医療を実施するための研修の実施:

    ・在宅で療養する難病や認知症等の疾患を有する者に対する歯科保健医療を実施するため、歯科医師、歯科衛生士を対象とした、当該疾患に対する知識や歯科治療技術等の研修の実施に必要な経費の支援を行う。

    6.在宅歯科医療を実施するための設備整備:

    ・在宅歯科医療を実施する医療機関に対して在宅歯科医療の実施に必要となる、訪問歯科診療車や在宅歯科 医療機器、安心・安全な在宅歯科医療実施のための機器等の購入を支援する。

    7.在宅歯科患者搬送車の設備整備:

    ・在宅歯科医療を実施する歯科医療機関(在宅療養歯科支援歯科診療所等)でカバーできない空白地域の患者に対して必要な医療が実施できるよう、地域で拠点となる病院等を中心とした搬送体制を整備する。

    8.在宅歯科医療を実施するための人材の確保支援:

    ・在宅歯科医療を実施する歯科診療所の後方支援を行う病院歯科等の歯科医師、歯科衛生士の確保を行う。

    9.医科・歯科連携に資する人材養成のための研修の実施:

    ・医科・歯科連携を推進するため、がん患者、糖尿病患者等と歯科との関連に係る研修会を開催し、疾病予防・疾病の早期治療等に有用な医科・歯科の連携に関する研修会の実施にかかる支援を行う。

    10.歯科医師、歯科衛生士、歯科技工士の確保対策の推進:

    ・歯科医師、歯科衛生士、歯科技工士を確保するため、出産・育児等の一定期間の離職により再就職に 不安を抱える女性歯科医師等に対する必要な相談、研修等を行うための経費に対する支援を行う。また、今後、歯科衛生士、歯科技工士を目指す学生への就学支援を行う。

    11.歯科衛生士・歯科技工士養成所の施設・設備整備:

    ・歯科衛生士、歯科技工士の教育内容の充実、質の高い医療を提供できる人材を育成するために必要な 施設・設備の整備を行う。

    きき酒 いい酒 いい酒肴 No.40『<最終回>お酒を通じ礼節を身に着け精神性高める』(機関紙2020年1月1日号/No.598号)

    きき酒 いい酒 いい酒肴 No.40『<最終回>お酒を通じ礼節を身に着け精神性高める』(機関紙2020年1月1日号/No.598号)

    新年明けましておめでとうございます。平成2年、2020年を迎えました。昨年は、年号が「令和」に代わり、新しい時代がやってきたことに期待が込められた年だったと思います。この年末年始、会員の先生方はどのようにお過ごしでしょうか。ご家族やご友人方と賑やかに過ごしたり、もしくは、お一人の時間を静かに楽しんでいることでしょう。新年を祝う席には、お屠蘇やシャンパンが用意されているかも知れません。

    ◆人類とお酒の歩み

    最初に人類が酒類を作った時期は諸説あります。ワインは約7000年前、ビールは約5000年前からだと言われています。

    コーカサス地方から始まったワイン作りは、ローマ時代にヨーロッパ全土に広まりました。中世のヨーロッパでは、ワインは「キリストの血」と言われ、神に捧げるお酒として大変神聖で貴重なものでした。

    一方、ビールは古代メソポタミアやエジプトから始まりました。当時のビールは、大事な栄養源で、古い壁画にもビール造りの様子が残されています。メソポタミアで起こったシュメール文明では、すでにビールが飲まれていました。初期のビールの製法は、まず麦を乾燥して粉にしたものをパンに焼き上げ、このパンを砕いて水を加え、自然に発酵させるという方法だったようです。後に現在のヨーロッパに伝えられ、地形や気候により、それぞれの地方特有のビールが生まれました。現在、ビールは100種類以上あるといわれています。

    中世に入ると醸造酒を蒸留する技術が確立され、蒸留酒が造られます。麦からウイスキー、ブドウからブランデー、芋類からウォッカ、リュウゼツラン(竜舌蘭/多肉植物)からテキーラなど、世界各地で蒸留酒が次々と誕生しました。

    ◆風土の中で変化へ

    このように、お酒は各地の風土の中でさまざまな進化を遂げ、人々に愛されてきました。古代ギリシャではワインの神バッカス、ビールの神ガンブリヌス、日本では大物主大神(おおものぬしのおおかみ)が祀られてきました。昔から宗教的な儀式やお祝いの行事でお酒を用いるなど、単なる飲み物ではなく、文化や習慣において重要な要素であったのです。

    ◆日本人の最初のお酒

    日本人にとっての最初のお酒は、野生のブドウが自然発酵したものだったそうで、縄文時代には酒造が行われていたという説もあります。奈良時代には米と麹を用いた醸造法が確立されましたが、主に特権階級が飲むものでした。お酒が庶民でも入手できるようになったのは、造り酒屋ができ始めた鎌倉時代以降のことです。江戸時代になると、現代と同じような醸造法で作られたお酒が流通し、日常的に楽しむようになりました。明治維新後は、西洋の食文化とともに、ビール、ワイン、ウイスキーなどが日本に入ってきました。

    古来、日本ではお酒を神々にお供えすることにより、神聖なものとして扱ってきました。現代でも、お酒は神棚へのお供え、お清め、儀式や行事に用いられ、神様と人々をつなぐ役目を果たしています。日本人はお酒に対して飲みもの以上の価値や嗜み方を高めてきました。古来の日本では酒を造る行為そのものが神事として行われてきました。酒造りの工程毎に、専用の祠(ほこら)が用意され、祝詞を読み上げて執り行われていました。神様への敬意とともに、儀式としての意味合いが強かったのでしょう。江戸時代の随筆を集めた「百家説林」には、日本人の飲酒の考え方が記されています。「礼を正し、労をいとい、憂を忘れ、鬱をひらき、気をめぐらし、病を避け、毒を消し、人と親しみ、縁を結び、人寿を延ぶ」とあります。また、足利時代に生まれたとされる「酒道」は「酔うのを目的とするな酒は優雅で素晴らしいもの」を基本精神に、お酒を通じて礼節を身に付け、精神性を高めようとしました。

    桜や月、紅葉など、四季の花鳥風月を愛でながらお酒を楽しむのも、日本人らしい優雅な風習です。現代の私たちにも、先人たちよりお酒にまつわる美意識や研ぎ澄まされた感性が受け継がれているはずです。

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     ☆最終回に寄せて☆

    早いもので、「きき酒 いい酒 いい酒肴」は、2014年より隔月で連載を始めて6年が経ちました。お酒は単に酔うものではなく、人と人をつなぎ、長い歴史の中で楽しみだけではなく、苦しみも生んできたものです。神聖なものをして崇められ、絵画や彫刻といった芸術、オペラや歌舞伎といった舞台、クラシックやジャズなどの音楽とも密接に関わってきました。

    また、元日のお屠蘇や桜の季節の花見酒などの四季折々の年中行事、人生の祝い事の乾杯、亡き人を偲ぶ献杯など、人々の暮らしとともに心をつなぐ架け橋となっています。そんな世界観を少しでもお伝えできれば幸いです。

    長い間、ご愛読ありがとうございました。

    【 早坂美都 】

    ・東京歯科保険医協会理事

    ・フランスボルドーワイン委員会デュプロマ  C.I.V.E.Diploma

    ・パリフェミナリーズワインコンクール審査員

    ・ジャパンウィスキーコンベンション審査員

    ・スピリッツコンベンション焼酎部門審査員

    ・FBO 認定  FBO公認講師

    ・SSI認定 利酒師  日本酒学講師  酒匠

    ・ANSA認定  ソムリエ

    ・BSA認定  ビアアドバイザー  スピリッツアドバイザー

    ・CCA認定  チーズコーディネーター

    きき酒 いい酒 いい酒肴 No.39『秋の味覚 香り高いトリュフ』(機関紙2019年11月1日号/No.596号)

    きき酒 いい酒 いい酒肴 No.39『秋の味覚 香り高いトリュフ』(機関紙2019年11月1日号/No.596号)

    少しずつ秋が深まってきました。この季節になると、茸類が美味しくなります。良い香りの代表として、世界三大珍味の1つであるトリュフがあげられるでしょう。トリュフには、黒トリュフと白トリュフがあり、特に有名なのが黒トリュフで、流通量が多いのも黒トリュフです。

    黒トリュフの旬は6月から11月と12月から翌年2月の年2回あります。それぞれ、サマートリュフ、ウインタートリュフと呼ばれ、年間を通じて産出されますが、旬は秋から冬にかけてのものがもっとも上質とされています。この季節に採れたものは、優雅な香りがいたします。ヨーロッパ産のものがほとんどで、フランスのプロヴァンス地方がその本場です。他にもスペイン、イタリアなどで産出されています。

     「黒いダイヤモンド」と称される黒トリュフは生でも食べますが、主に加熱することが多く、パスタやパン、お肉などと相性が良いので、幅広く利用されています。

    トリュフには、消化酵素の一種であるジアスターゼが含まれています。

    メインのお肉料理に添えられることが多いですが、でんぷんを分解するため、ご飯やパン、パスタといった主食を食べる時に良い食材です。

    また、トリュフには椎茸などにも多く含まれるビタミンDも含まれています。ビタミンDは、腸でカルシウムが吸収される働きを高め、血中のカルシウム濃度を向上させる効果があり、骨を丈夫にすることにつながります。

    一食で摂取するトリュフの量は少量ですが、このような効果があることも、頭の片隅に置いておくのも良いかも知れません。

    料理だけではなく、ケーキにもトリュフが使われることがあります。今年の帝国ホテルのクリスマスケーキは、「料理人がつくるクリスマスケーキ」というコンセプトで、旬の高級食材であるトリュフをケーキの素材とするそうです。

    トリュフの入ったダコワーズ生地に、キルシュ香るホワイトチョコレートを合わせたクリームでダークチェリーをはさみ、チョコレートムースで包んだ「フォレノワール」風のケーキです。ケーキの上部には、トリュフのムースを中に入れたトリュフの形をしたチョコレートを飾り、さらに枝や枯葉、鳥の羽の形をチョコレートで彩ることで森を表現し、さらにスライスした本物のトリュフも添えた豪華なケーキです。

    昨年の春、私は、フランスの深い森が広がるランドック地方のワイナリーを訪問しました。ここはトリュフの産地です。トリュフの採れる森の近くにあるブドウ畑から作った美味しいワイン。地元の人たちの誇りでもあることから、「テロワール・ドゥ・トリュフ 」というワインが生まれました。

    このワイン、実は、今まで日本に輸入されていなかったのですが、とても美味しかったので、知り合いのワイン輸入業者の方に「ぜひ日本に輸入してください」とお願いしました。現地に足を運んだバイヤーの方が「これなら間違いない」と判断し、昨年の秋より日本に輸入されることが決定されたのです。トリュフの森の近くで作られたワインと、トリュフを挟んだチーズとの相性はとても良いです。秋ならではの贅沢な楽しみです。

    (協会理事/早坂美都)

    きき酒 いい酒 いい酒肴 No.38『はんなりとした吟醸香 伏見の銘酒「玉乃光」』(機関紙2019年9月1日号/No.594号)

    きき酒 いい酒 いい酒肴 No.38『はんなりとした吟醸香 伏見の銘酒「玉乃光」』(機関紙2019年9月1日号/No.594号)

    先日、夏の暑い盛りに京都の「愛宕神社千日詣」に参加する機会に恵まれました。愛宕神社とは、京都愛宕山の山頂に鎮座し、全国に約900社ある愛宕神社の総本社で、火伏せ・防火に霊験のあることで知られています。731日の夜9時より始まる夕御饌祭(ゆうみけさい)から81日の早朝2時から始まる朝御饌祭(あさみけさい)までに参拝すると、千日分の御利益があるそうです。今回、夜11時に登山開始、早朝2時前に登頂し、山頂の愛宕神社ご神事後、「火迺要慎(ひのようじん)」の御札をいただいて下山しました。参道は多くの参拝の方々であふれ、夜の山道はたくさんの灯りがともされています。ご縁があって、祇園の芸妓さんたちと登りましたが、彼女たちは何十枚というたくさんの御札を受け取っていました。挨拶回りに持参するそうです。ちょうど、81日は「八朔(はっさく)」となります。八朔というのは、旧暦で81日(八月朔日ついたち)を指します。もともと「田の実の節」といって、実った田の稲穂に感謝し、豊作を祈ったところから始まっているそうです。「田の実」は「頼み」に通じることから、芸妓さんや舞妓さんが、芸事の師匠やお茶屋などに、日ごろの感謝の気持ちを伝える祇園の年中行事となっています。

    猛暑の中の登拝後、水分補給をして少し落ちついたところで無事下山をしたことを祝い、冷たい清酒で乾杯しました。京都市南の玄関口、伏見の銘酒「玉乃光」です。伏見は、かつて「伏水」とも書かれていて伏流水が豊富な土地です。桂川、鴨川、宇治川に沿った平野部と、桃山丘陵を南端とする東山連峰からなっています。

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    伏見の歴史は古く、「日本書記」には「山城国俯見村」として記されています。

    平安時代には、風光明媚な山紫水明の地として皇室や貴族の別荘が置かれ、安土桃山時代には豊臣秀吉が伏見城を築城し、一大城下町を形成しました。その後、京都と大坂を結ぶ淀川水運の玄関口として栄え、幕末には坂本龍馬をはじめとする勤王の志士たちとともに、近代の夜明けの舞台となりました。

    玉乃光で酒造りに使われている水は、豊臣秀吉が醍醐の茶会の時に汲み上げたといわれている御香水(ごこうすい)と同じ伏流水で、「日本の名水百選」にも選ばれています。

    また、「祝(いわい)」という京都産酒造好適米を使っています。「祝」は、良質酒米として伏見の酒造で多く使用され、丹波・丹後で栽培されていましたが、稲の背が高く倒れやすく、収量が少ないことなどが原因で、姿を消してしまいます。しかし、伏見酒造組合の働きかけによって、府立農業総合研究所などで栽培法を改良、試験栽培が始まりました。その後、1990年には農家での栽培が始まり、1992年には「祝」の酒が製品化されました。口に含むと優しい吟醸香がひろがります。また、すっきりとした旨味は料理を引き立て、京都ならではの食材との相性が素晴らしいのです。

    (協会理事/早坂美都)

    きき酒 いい酒 いい酒肴 No.37『ゴールドの輝きをはなつオーストリアのワイン』(機関紙2019年7月1日号/No.592号)

    きき酒 いい酒 いい酒肴 No.37『ゴールドの輝きをはなつオーストリアのワイン』(機関紙2019年7月1日号/No.592号)

    2019年は、日本・オーストリア友好150周年に当たる記念すべき年です。これを祝うべく、ウィーン・ミュージアム、ウィーン美術史博物館、オーストリア・ギャラリー・ベルヴェデーレが日本で特別展覧会を開催しています。開催地は東京都、大阪府、愛知県です。東京では上野の東京都美術館が、420日より711日まで「クリムト展 ウィーンと日本1900」が開催されています。足を運ばれた会員の先生もいらっしゃるでしょう。東京開催のあと、723日からは愛知県の豊田市美術館で巡回開催されます。

    大日本帝国とオーストリア・ハンガリー二重帝国の間には1869年、日墺修好通商航海条約が締結され、友好関係がスタートし、日本は1873年にウィーンの万国博覧会に公式参加したのでした。

    クリムト展に行かれた方はご覧になったかと思いますが、「ベートーベンフリーズ」という大作の複製が展示されています。これは、ベートーベンに捧げるクリムトのオマージュとして有名で、ベートーベンの交響曲第九番に沿って製作されています。「幸福への憧れ」、「敵対する力」、「詩」、「この接吻を全世界に」の大きな4つのテーマで成り立つ長い壁画です。この作品に接し、本物を見たくなり、先の連休にウィーンに行きました。「ウィーン分離派館」という建物の地下に展示してある壁画を見た時の感動もさることながら、上野で展示してある複製の技術力の高さに驚きました。しかも、展示室のスピーカーから、小さな音でベートーベンの交響曲第九番「歓喜の歌」が流れているのです。気持ちが大変盛り上がり、日本ならではの素晴らしい展示方法だと感じました。

    ウィーン分離派館での展示は、地下ながら自然光に近い明るさです。クリムト独特のタッチ、きらびやかなゴールドの輝き、ゆったりとした空間と時間の流れを感じさせる巻物のような美しさ。分離派という変わった名前は、若手芸術家たちによって作られたものです。世紀末のウィーンで展示会場を持っていたのはクンストラーハウスという芸術団体だけでしたが、その保守性に不満をもつ若手芸術家たちがクリムトを中心に結成したのが造形美術協会、のちの分離派となるのです。

    日本でも、クリムトの絵画がラベルになった美しいワインが見かけることがあります。オーストリアワインの多くは辛口の白ワインで、主にグリューナー・ヴェルトリーナー種(Grüner Veltliner)というブドウから製造されています。スパイス、リンゴやパイナップルのような果実の香りが感じられます。このブドウは、オーストリアでは最も生産量の多く、辛口から高貴な甘口まで、大変幅広いワインとなります。有名なワイングラスメーカー「リーデル」の本社もウィーンにあります。日本オーストリア友好150周年に当たる令和元年。世紀末を駆け抜けた若い芸術家たちの思いを感じながら、オーストリアの味わいを楽しむのはいかがでしょうか。

    (協会理事/早坂美都)