広報・ホームページ部

慶応大学と東京歯科大学の統合協議が見直しに

昨年、慶応大学と東京歯科大学が2023年4月を目途に統合することを明らかにし、協議に入っていた。ところが、1125日、両校はこの統合への協議スケジュールの見直しを行う旨を発表した。協議自体はメドを立てず継続して行うこととしており、見直し理由は、「新型コロナウイルスの影響で、協議する時間的余裕がなかった」というものだ。

両校の統合については、昨年116日、東京歯科大が慶大に対して、歯学部の統合と法人の合併について、申し入れを行った。これを受けた慶大側は、昨年1126日の評議会で歯学部統合、法人合併について協議を開始することを決めていた。

東京歯科保険医新聞2021年(令和3年)11月1日

東京歯科保険医新聞2021年(令和3年)11月1日

こちらをクリック▶東京歯科保険医新聞2021年(令和3年)11月1日 第620号

【1面】

1.コロナ加算等廃止に抗議/9月末終了の感染症対策実施加算等について

2. 効率的に提供する体制を検討/在宅医療及び医療・介護連携に関するワーキンググループ

3. コロナ感染拡大防止で継続支援補助金実施

4. 金パラ等歯科用貴金属/1月歯科用貴金属価格随時改定Ⅱ見送り

5. 新春号特別企画

6.ニュースビュー

7.「探針」

【2面】

8.コロナ加算廃止に伴い陽性患者への新たな評価を新設

9.十分なのか…コロナ加算廃止と引き換えの支援金

10.支援補助金の振込遅れに対し保団連が個別照会対応を実施

11.11月から新たな補助金(8万円)の申請開始

12.東京歯科保険医協会ホームページ

【3面】

13.中医協総会/2022年1月 歯科用貴金属随時改定は見送り

14.歯科技工士業務のあり方検討に本腰

15.CAD/CAMクラウン装着の要点を解説

16.ドクター・スタッフ講習会/シャープニング・SRP実習

17.象牙質レジンコーティングを巡り講演

18. 医療広告ガイドラインで最初に気をつけるべきポイント

【4面】

19.経営&税務相談Q&A No.387

20.法律相談、経営&税務相談

5面】

21.研究会・行事案内

67面】

22.インタビュー  日本補綴歯科学会 理事長 馬場一美さん

8面】

23.教えて!会長!!Vol.52

24.歯科保険医協会にぜひご入会ください/組織部

25.歯科情報をお知らせします/Facebook

26.改定情報の早い発信を/第11回レセコンメーカー懇談会

27.共済部だより

9面】

28.症例研究/歯肉剥離掻爬手術(FOp)時にリグロスを併用した症例

10面】

29.連載/私の目に映る歯科医療界⑧

30.理事会だより

31.協会活動日誌 202110

11面】

32.都立・公社病院の独法化/撤回・反対の「要望書」提出

33.秋の署名活動/国の予算を増やし次期改定ではプラス改定を

34.渡辺孝一・島村大氏/両歯系議員が政務官に就任

35.参議院比例 比嘉奈津美氏繰り上げ当選決定

12面】

36.年末年始休診案内ポスター

37.神田川界隈/開院20周年を迎えて(早坂美都・理事)

38.通信員便り No.115

財務省「躊躇なくマイナス改定をすべき」と主張

 財務省主計局は1118日に開催した財政制度等審議会財政制度分科会の中で、2022年度診療報酬改定について、診療報酬本体(医療費)が高止まりしているとして「躊躇なくマイナス改定をすべき」と強調した。

 財務省は、診療報酬本体について、2002年度改定、2006年度改定を除き、「プラス改定」が続いてきたとし、2000年を起点として考えた場合の機械的な試算では、診療報酬改定以外の高齢化等の要因により年平均伸び率1・6%で増加してきた計算となるとした。仮に「マイナス改定」が続いてきたとしても、2年に1度の診療報酬(本体)の改定率が平均マイナス3・2%を下回らない限り、理論上は、高齢化等による市場の拡⼤から医療機関等が収⼊増加を享受することが可能であると主張している。そのうえで、診療報酬(本体)改定率について医療費の適正化とは程遠い対応を繰り返してきたと言わざるを得ず、診療報酬(本体)の「マイナス改定」を続けることなくして医療費の適正化は到底図れないとした。

 また、薬価部分の引き下げ分に関して財源を診療報酬本体に回すべきだとする意見に対しては、診療報酬本体を適正化する必要がある中で、「フィクションにフィクションを重ねたものというより他はない」とけん制し、薬価差の是正で生み出される薬価引き下げ財源を医療費本体へ回すことを強く否定した。

第4回メディア懇談会 金パラ署名など意見交換

(左から)馬場安彦副会長、早坂美都理事

◆金パラ署名・診療報酬改善要求も議題に

協会は1112日、第4回(通算86回)メディア懇談会をWEBで開催。馬場安彦副会長が説明、広報・ホームページ部長の早坂美都理事が司会を務め、報道各社から参加者が集まった。今回は①秋の運動、②中央社会保険医療協議会、③都立・公社病院独立行政法人化、④診療報酬改善要求、⑤感染症対策実施加算等を議題として扱った。

秋の運動では協会の運動や、署名など諸活動の経過を報告。1000筆の目標に達した金銀パラジウム合金の原価割れ改善を求める署名については、メディアから医療機関が抱える苦労や負担に対する鋭い質問が飛んだ。

◆都立・公社病院独法化の影響を議論

また、③都立・公社病院独立行政法人化に関しては、東京保険医協会と連名で独法化反対と撤回の要望書を提出したことで一石を投じることになったと説明。参加者とともに、東京都が都立・公社病院の独法化を進める背景や医療現場、都民に与える影響などを議論した。

最後には協会の活動に対しメディア側から激励の言葉もあり、闊達な意見交換の場となった。

ワクチン3回目接種 死亡・入院リスク低減に高い有効性

11月現在、国内では新型コロナウイルスの感染状況が落ち着きを見せる中、3回目以降のワクチン接種の有効性について議論が交わされている。3回目の接種は、2回目完了からおおむね8カ月以上経過していることが条件で、早ければ12月からの実施が想定される。

医療従事者の追加接種

 これまでに接種を行った歯科医師会の会員や医療従事者に対しては、東京都福祉保健局が通知を出している。一方、一般の人々については、住民票のある自治体から2回接種した人に対し、接種券一体型予診票等を3回目の接種時期にあわせて送付。居住する地域で接種を受けることが基本だが、東京都が設置する大規模接種会場でも接種が可能となる。(詳細は下記通り)

 そうした中、3回の接種による効果を実証する調査も報告されている。Lancet誌電子版(※)に掲載されたイスラエルのNoam Barda氏らによる研究では、3回目の接種を終えた人と、一定条件下の2回接種済みの人を対象とした調査を実施。その結果、入院を93%、重症化を92%、死亡については81%の予防効果があることを示した。

 現状、韓国やヨーロッパでは感染が再拡大し、ロックダウンを行う国々もある。ワクチン接種率の頭打ちに加え、3回目以降の接種という新たな局面を迎える中、新型コロナウイルス感染症の収束に向けた最善の策を選択する必要がある。

◆新型コロナワクチン3回目接種方法について(東京都福祉保健局)

1、東京都が設置する大規模接種会場で追加接種を希望する場合

・大規模接種会場のWEBサイトで予約を行ってください。大規模接種会場の場所等については、追ってご案内いたします。

・接種を受ける際には、WEBサイトに記載の注意事項をお読みいただき、接種券・身分証をお持ちの上、予約の日時に接種会場にお越しください。

2、居住する住所地で追加接種を希望する場合

・各自治体の予約方法に従い予約のうえ、接種を受けてください。

【教えて!会長!! Vol.52】あるべき歯科医師像とかかりつけ歯科医の機能・役割

― 厚生労働省で歯科医療の提供体制に関して、定期的に検討会が開かれているそうですね。

坪田有史会長:10月7日、オンラインによる「歯科医療提供体制等に関する検討会」が開催されました。本検討会は、第1回(2月19日)、第2回(6月2日)、第3回(7月29日)に開催されており、今回の検討会は第4回の開催です。主に「あるべき歯科医師像とかかりつけ歯科医の機能・役割」が議論されました。われわれ歯科医師にとって重要な将来の歯科保健医療の提供のあり方について検討しています。
これらの議論は、社会保障制度のあり方にも通じ、次期診療報酬改定にも影響すると考えられ、当会も同検討会の議論に高い関心を持って注視しています。 

― この検討会の目的を教えてください。

坪田:2017年(平成29年)12月にまとめられた「歯科保健医療ビジョン」において、高齢化の進展や歯科保健医療の需要の変化を踏まえ、これからの歯科保健医療の提供体制について、歯科医療従事者などが目指すべき姿を提言されました。その中身は、地域完結型歯科保健医療の提供のため、「あるべき歯科医師像とかかりつけ歯科医の機能・役割」「歯科疾患予防策」「具体的な医科歯科連携方策」「地域包括ケアシステムにおける歯科医療機関などの役割」について検討されました。
その2017年に「歯科保健医療ビジョン」でまとめられた提言は、その後、少子高齢化などのわが国の将来を考慮すると、高齢化による医療の需要拡大への対応、生産年齢人口が減少する中での地域医療の確保、健康寿命の延伸へ向けた取り組みを進めることが重要とされ、歯科保健医療の提供のあり方について、改めて検討することを目的としています。

― 検討会が議論する論点を教えてください。

坪田:歯科医療提供体制等に関する検討にあたっては、以下①~⑦の論点および「歯科医療提供体制等事業」における調査結果をふまえつつ、具体的に議論を行うこととしています。
まず、歯科医療提供体制については、①歯科疾患の予防、重症化予防の推進とかかりつけ歯科医の役割、②歯科医療機関の機能分化と連携、かかりつけ歯科医の機能、③地域包括ケアシステムの構築における歯科の役割(食べる機能の維持・回復への支援)、他の関係職種(医療・介護)との連携、要介護高齢者などへの在宅歯科医療の推進など、④地域における障がい者(障がい児)への歯科医療提供体制、⑤行政の取り組み―等です。
次いで歯科専門職の需給については、⑥今後の歯科医療のニーズを踏まえた歯科医師の需給、⑦今後の歯科衛生士の業務のあり方と需給―です。
今後の歯科医療提供体制の検討スケジュールは、歯科医療提供体制に関する議論に関しては進捗状況により、必要に応じて開催することとしており、2022年(令和4年)3月ごろまでに新たな歯科保健医療ビジョンをとりまとめる見込みです。歯科医師、歯科衛生士の需給に関する議論は、歯科医療提供体制に関する議論の状況をみつつ、2022年3~4月ごろに検討会を開催する方向です。
 歯科技工士の業務のあり方と需給については、別途議論を行う場で検討することとしており、9月30日に第1回歯科技工士の業務のあり方等に関する検討会が開催され(3面)、歯科技工所の業務形態改善について、「歯科技工所におけるテレワークのあり方」「歯科技工所間の連携のあり方」等を議論することとしています。開催回数を重ね、議論がある程度進んだ段階で、歯科技工士に関する検討会の内容を紹介します。

― 開業医の立場からは、「かかりつけ歯科医」が気になります。

坪田:ここでの「かかりつけ歯科医」は、保険制度上での限定的な「かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所(か強診)」を直接的には議論はしていません。通常、「かかりつけ歯科医」は、患者側からみて「定期的に歯科健診を受けるなど、自分の歯や口の状態を管理してくれている歯科医」「困った時に診てくれる歯科医」であるとされています。
しかし、行政側が示している「かかりつけ歯科医」とは、地域包括ケアシステムの推進を前提としていることから、「歯科保健医療サービスを提供する時間帯、場所、年齢が変わっても、切れ目なくサービスを提供できる」「患者が求めるニーズにきめ細やかに、安心、安全な歯科保健医療サービスが提供できる」とされています。このことを背景として、かかりつけ歯科医自体を評価するのではなく機能を評価するとし、歯周病安定期治療(Ⅱ)(SPT(Ⅱ))、エナメル質初期う蝕管理加算などを行政誘導として用い、多数の施設基準を満たす医療機関を「か強診」として評価しています。「か強診」は、その施設基準から、複数回の在宅歯科診療を行い、積極的に地域包括ケアシステムに参画する歯科医療機関に対しての評価といえます。
現在、中医協において、この「か強診」の現状、特に訪問診療の実績の要件が低いことに対して疑問視する発言が見受けられます。
そのため、「か強診」、そして「か強診」以外の「かかりつけ歯科医」が行う長期管理について、次期診療報酬改定で何らかの措置を講じてくる可能性があると考えています。その際、国民側・歯科側の双方にとってより良い改定になることを強く望んでいます。

             東京歯科保険医協会 会長 坪田 有史
(東京歯科保険医新聞2021年11月号8面掲載)

医療広告ガイドラインで最初に 気をつけるべきポイント No.1

WEBに係る歯科関連の法令やトラブル対応などについて、
歯科専門にサイト制作、運用、コンサルティングを手掛ける専門家が解説する連載。
初回は、医療広告について―。

 2018年6月1日に改定された厚生労働省の「医療広告ガイドライン」によって、対象物が「広告」から「広告その他の医療を受ける者を誘引するための手段としての表示」へと変更され、WEBサイトによる情報提供も規制の対象となりました(医療法等改正法)。
 変更点のポイントは、今までは閲覧者が自主的に開くWEBサイトは「広告」としての機能を持ち合わせていないという視点でしたが、これが患者の誘導として広告的に使用されているという考えに変更され、テレビCMのように規制を受けるということです。この規制に反した歯科診療所のWEBサイト、SNS、ブログ、ポータルサイトなどは、自治体(主に保健所)から指導が入ります。
 具体的には、文章による通知、もしくは電話連絡があります。そこから、1カ月以内に問題箇所を訂正して、訂正完了の申請を行えばペナルティなどはありません。しかしながら、放置すると「行政指導」「報告命令」「立入検査」「中止命令」「是正命令」と、段階ごとにペナルティを受ける可能性があります。次回No.2ではなぜ広告に気をつけるのか、どこに気をつければ良いのかを解説します。

クレセル株式会社

(東京歯科保険医新聞2021年11月号3面掲載)

東京医科歯科大「Voice Retriever」クラウドファンディングのご紹介

(左から)山田大志氏、戸原玄氏

◆「もう一度声を取り戻す!Voice Retrieverの開発」

現在、東京医科歯科大学摂食嚥下リハビリテーション学分野教授の戸原玄氏、同大学院の山田大志氏が、声帯の機能を失った人々の声を取り戻す機器「Voice Retriever」の改良に向けたクラウドファンディングを実施しています(2021年11月25日23:00まで)。

Voice Retriever

「Voice Retriever」とは、喉頭摘出などで声を失った人に対する新たな人工喉頭です。従来の機器は首にうまく当てられないと共鳴しない、どうしても人工的な音になるなどの特徴があり、それらを改善してより簡便で自然な発声を目的とした口腔内装置を目指しています。
今後さらなる研究に向けてのクラウドファンディングです。

▼詳細はページURLよりご確認ください。

◆「Voice Retriever」クラウドファンディング詳細

・ページURL:https://readyfor.jp/projects/voiceretriever
・目標金額:1800万円
・形式:寄附金控除型/All of Nothing * All of Nothing形式は、期間内に集まった寄付総額が目標金額に達した場合にのみ、実行者が寄付金を受け取れる仕組み。
・公開期間:9月27日(月)~11月25日(木)
・資金使途:Voice Retrieverおよび外部装置の開発、改良、および量産化
・連絡先:yamadent68@gmail.com(山田大志)

私の目に映る歯科医療界⑧ 歯科口腔保健法10年の成果と課題/医科と共同戦線組み歯の健康予防前進を

歯科口腔保健法10年の成果と課題/医科と共同戦線組み歯の健康予防前進を

2021年は、国民皆保険制度始動から60年目、「歯科口腔保健の推進に関する法律」(以下、「歯科口腔保健法)」の制定から10年の節目の年であったが、果たしてこの10年の間に、歯科口腔保健法は十分な成果が上がったのだろうか。新型コロナウイルス禍や政治の激変に紛れて、この検証はすっかり忘れ去られてしまっている。

Ⅰ.検診率のアップなど法律の成果は道半ばの状況

歯科口腔保健法は歯科口腔保健の推進に的を絞った法律としては本邦初で、コンセプトも歯科疾患の事前予防を通じて最終的に国民の健康格差の縮小を目指すという、ある意味、歯科医療界だけでなく、国民にとっても画期的な法律の誕生だった。

この法律は、目標実現のために関連知識等の普及啓発、定期的な歯科検診の推奨、予防措置、調査・研究の推進などの施策を組み込む形になっており、歯科医療界の期待も大きかった。

しかし、現時点では手放しで成功とはいえない。確かにこの法律と同時並行で進む、いわゆる「8020運動」の成果もあって、高齢者における「歯の健康」の改善効果は出ている。8084歳での平均残歯数は2011年の12.2本から16年には15.3本に増えた。しかし、それでも北欧スウエーデンなどの先進国の水準と比べれば、まだ追いついていない。

本紙本年9月号(第618号)本欄でも指摘をしたが、高齢者の歯科治療ニーズは高いが、それに十分に歯科医療界が応え切れていない現実があることも、この法律の成果と関連づけて強調しておきたい。

何よりも、「歯の健康」予防推進に大きな役割を果たすはずの日本の歯科診療受診率は2019年度は16%弱という、厚生労働省のデータを基にした歯科機器メーカーの松風の推計がある。歯の定期的検診を受ける回数では、欧米などの先進国にまだ見劣りする。

乳幼児や児童・生徒世代の歯科健診は義務化されているが、働き盛りの現役世代から74歳までは、40歳、50歳、60歳、70歳の節目に市町村が歯周疾患検診を実施してはいるが、研究者の間からは、2015年度段階のその平均受診率は4%台にとどまっているとの推定が出ている。法律の狙いほどには、日本の歯科検診率は上がっていないのが現実だろう。

Ⅱ.口腔の健康と全身疾患の関係示す研究進む

口腔保健の予防推進によって、健康に過ごすことができる健康寿命を延ばすこと。歯科医療界や厚生労働省などの関係者がこの法律に期待したのは、まさに、このことだったはずだ。死ぬまでの寿命ではなく、いかに長く健康で暮らせるかが、本来、人にとって大事なのは当然のことだ。口腔状態が糖尿病などの様々な疾患と密接な関係があり、人間の身体的健康全般の改善にも影響するという科学的なエビデンスが当時、既に広がっていたことが、歯科口腔保健法制定の背後にあったことは間違いない。

この10年間では医学・歯学両方の研究が進み、この点を裏付ける、あるいは示唆する成果が増えている。

特に、歯周病を引き起こす口腔内の「悪玉」細菌の研究はホットな分野になっている。この細菌は、血管を通じて全身を駆け巡り、人体の各臓器に炎症などの〝悪さ〟を引き起こす。大腸経由で脳血液関門という狭い関所を通過し、脳内の炎症を促し、アルツハイマー型認知症など、中枢神経系の変性疾患に何らかの作用を及ぼしていることを示唆する研究も進んでいる。

米国ではこの仮説に基づき、実用化を目指して人に開発薬を投与し、その有効性や安全性を確認する最終臨床試験(治験)に進んでいるものも出ている。

Ⅲ.歯科健診の組み込みなど医科と予防で共同戦線を

少子高齢化の進展と高額薬剤の増加を背景に、歯科も含めた国民医療費の増加圧力は増す方向にある。

その一方で、国の予算には制約がある。その中で難題ではあるが、先の法律が目指した歯科も含めた予防医療を前進させるためにも、具体的な施策への予算を増やすことは不可避だ。

歯周病と他の疾患との関係を調べる研究や、そこから派生する疾患治療薬の開発などへの国の支援も必要だ。医科と歯科という従来の〝境〟を横断する施策も、この新しい予防分野では増えてくるだろう。

今年度末までに結論を迫られている次期診療報酬改定では、医科と歯科に分かれた従来の予算の枠取りは依然有効だろうが、研究開発や健康予防措置に投じる予防医療への予算では、医科、歯科の両医療界の敷居にこだわるあり方を変える必要があるのではないか。

研究開発もそうだが、予防措置も医科、歯科の境界をまたぐ措置が必要だ。例えば、働き盛り世代の歯周疾患等健診を、会社などで毎年実施する健康診断に組み込むことだ。この構想自体は、既に検討課題に挙がってはいるが、実現はまだ先のことだ。会社の健康診断のメニューには、眼科や耳鼻科領域の項目はあるのに、歯科健診がなくていいという理由は乏しい。人生で働き盛り期間中心の約40年間の国民の健康増進・予防のためにも、先進国として政府が率先して歯科健診受診率の向上を図る必要があるはずだ。

医科と歯科の従来の縄張り・意識の壁が、もしここで邪魔をしているのだとしたら、国民の健康と安全のためにも、大きな損失につながる由々しき問題だ。

歯科医療界から医科と共同戦線を張れるものがないのか、歯科口腔保健法の施行10年の節目の年に当たって、じっくり再考し、積極的に提案してみてはいかがだろうか。

筆者:東洋経済新報社 編集局報道部記者 大西 富士男

「東京歯科保険医新聞」2021111日号10面掲載

医薬情報ネットワークの基盤の在り方を検討

 厚生労働省は1110日、「医薬情報ネットワークの基盤に関するワーキンググループ」をオンラインで開催した。同ワーキンググループは、健康・医療・介護情報利活用検討会の検討事項のうち、全国的な医療情報ネットワークの基盤に関する議論を行うため設置されたもの。

 データヘルス改革に関する工程表に従って、医療情報ネットワークの基盤の在り方(主体、費用、オンライン資格確認等システムや政府共通基盤との関係、運用開始時期等)や、技術的な要件について、2022年度までに結論を得る。

 同日は医療情報の活用の現状や、電子カルテ情報と交換方式の標準化などをテーマに議論し、医療現場で必要な情報を共有すべきか意見交換が行われた。

 ワーキンググループでは2021年度中に、①電子カルテ情報の標準化と地域医療情報連携ネットワークの現状、②中央に集約して共有する医療情報と施設間などで交換する医療情報の検討、③医療情報の共有・交換に関する手続きと方式の検討、④電子カルテの普及方策と情報化支援基金の要件などの検討―について論点を整理する。

過去最高の44兆3895億円/厚生労働省が「2019年度国民医療費」を発表

厚生労働省は9日、「2019年度国民医療費」(確定値)を発表した。国民医療費全体の金額は対前年度比2.3%増の443895億円となり、前年度を上回る過去最高額となっているほか、国民1人当たりでは2.5%増の351800円となり、過去3年で見ると、ともに過去最高額となっている。その背景には、高齢化進展、医療の高度化などがあるものとみられる。また、国民医療費が40兆円を超えるのは7年連続となっている。各メディアの報道によると、厚生労働省は、新型コロナ禍の影響に関しては、「2019年度は、本格的に感染が拡大する前だったため、その影響はない」としている。

◆歯科医療費は構成比6.8%で3150億円に

今回の国民医療費を診療種類別にみると、医科診療医療費は319,583億円(構成割合72.0%)、そのうち入院医療費は168,992億円(同38.1%)、入院外医療費は15591億円(同33.9%)となっている。

また、歯科診療医療費は3150億円(同6.8%)、薬局調剤医療費は78,411億円(同17.7%)、入院時食事・生活医療費は7,901億円(同1.8%)、訪問看護医療費は2,727億円(同0.6%)、療養費等は5,124億円(同1.2%)となっている。

対前年度増減率をみると、医科診療医療費は2.0%の増加、歯科診療医療費は1.9%の増加、薬局調剤医療費は3.6%の増加となっている。

65歳以上の医療費は27629億円に

そのほか、年齢階層別に国民医療費を見ると、65歳以上の高齢者の総額が27629億円で全体の約6割を占めた。1人当たりでは65歳未満が191900円だったのに対し、65歳以上は754200円で4倍近い水準となっている。

渡辺孝一氏が4回目の当選果たす/2021年10月31日の第49回衆議院選挙

昨日、1031日に行われた第49回衆議院選挙で、歯科医師の国会議員、いわゆる歯系議員として立候補していた渡辺孝一氏が4回目の当選を果たした。また、同じく歯系議員として立候補していた長谷川嘉一氏は、惜しくも及ばなかった。

渡辺孝一(わたなべ・こういち)氏は、19571125日生まれ64歳。東日本学園大学卒(現:北海道医療大学)卒。所属政党は自由民主党で、今回の衆議院選挙で当選4回目。選挙区は、比例北海道ブロックとなっている。

◆衆参両院の歯系議員4名はすべて与党自民党議員

なお、現在、歯系議員は衆参両院合わせ、以下の5氏となっているが、すべて自民党議員となっている。

【衆議院議員】

①渡辺孝一(わたなべ・こういち):東日本学園大学卒(現:北海道医療大学)

1957年1125日生まれ56歳/選挙区:比例北海道ブロック/政党:自民党

【参議院議員】

②島村大(しまむら・だい):東京歯科大学卒

1960年811日生まれ53歳/選挙区:神奈川選挙区/政党:自民党

③関口昌一氏(せきぐち・まさかず):城西歯科大学(現・明海大学)歯学部卒

1953年64日生まれ60歳/選挙区:埼玉県/政党:自民党

④比嘉奈津美(ひが・なつみ):福岡歯科大学卒

1958年103日生まれ63歳/選挙区:比例代表/政党:自民党

新春号特別企画<写真作品の募集>

 

◆東京歯科保険医新聞では、2022年新春の紙面を彩る会員読者の写真の募集をしています

 写真のテーマは『希望』です。2020年から新型コロナウイルスが世界的に流行し、私たちは生活様式の変化を余儀なくされました、終息にはまだ時間を要すると思われますが、しかし、その中でも、必ず「希望」はあるはずです。新春の紙面を飾る「希望」を表現した写真作品の投稿を期待しています。皆さまからのご応募をお待ちしております。

▽締め切り 11月30日必着

▽応募方法 

E-mail もしくは郵送でご応募ください。

E-mail:info@tokyo-sk.com

郵送先:〒169-0075 東京都新宿区高田馬場1-29-8

宛先:東京歯科保険医協会 広報・ホームページ部

▽作品

写真データは1MB以上。写真プリントの場合、サイズは2L判(白黒またはカラープリント)。必ず作品名を明記してください。写真とともに「作品名」「氏名」「地区」を掲載いたします。

ご応募いただいた写真データ等はご返却いたしません。なお、掲載する写真は、厳正な審査を経て決定いたします。

【教えて!会長!! Vol.51】2022年度 診療報酬改定に向けて

― 2022年4月の「2022年度診療報酬改定」まで6カ月ですが、改定はどうなりそうですか。

坪田有史会長:現在までに、中央社会保険医療協議会総会(以下、「中医協」)で、「歯科用貴金属価格の随時改定について」「歯科医療(その1)」「在宅(その1) について」が議論され、9月15日に「診療報酬改定に係る議論の中間とりまとめについて」で中医協委員から出された主な意見がとりまとめられています。
8月4日の中医協で厚生労働省側は、「歯科医療に係る歯科診療報酬上の評価について」として、下記のようにまとめています。
これらの論点を受けての中医協委員の発言を踏まえ、私見を述べさせていただくと、以下のようになります。

▼かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所(か強診)や在宅療養支援歯科診療所(歯援診)の役割
 や要件が、行政側の目指している地域包括ケアシステムの推進に対して十分でないとの意見があ
 り、現在の施設基準などの見直しが行われる可能性があります。
▼歯科側は、さらなる重症化予防や口腔機能の継続管理について評価を求めていて、一定の成果は
 認識されている。しかし、治療と予防の境界線を明瞭にすべきとの意見があり、将来の歯科医療
 を考えれば、継続管理の重要性をさらに訴える必要があります。
▼歯科矯正治療は、原則保険給付外ですが、小児の口腔機能の改善を含め、必要性が認められ、保
 険での矯正治療の適用範囲拡大が議論される可能性があります。
▼歯科用貴金属の代替材料について、現時点ではその範囲は限定的であるため、さらなる代替技
 術・材料への推進が必要とされています。今回の改定には難しいですが、PEEK材などの研究を産
 学臨の協働により進め、高いレベルでのエビデンスを構築した上で保険適用が望まれます。

 紙面の都合上、そのほか多くを記せませんが、行政側が明確に決めていることは、まだないと考えています。今後、「歯科医療(その2)」などの中医協の議論に注視する必要があります。

― より良い改定になるためにできることはありますか。

坪田:協会は、今月から保団連が全国で行う「疲弊した医療提供体制を立て直す診療報酬改定を求める医師・歯科医師要請署名」に賛同して会員の先生方に署名をお願いします。より良い改定を求めるため、日々歯科医療を提供している先生方のご意見をぜひお寄せください。多くの先生方の声を集め、行政・立法側に要請しますので、よろしくお願い申し上げます。

             東京歯科保険医協会 会長 坪田 有史
(東京歯科保険医新聞2021年10月号8面掲載)

第1回在宅医療及び医療・介護連携に関するワーキンググループ

 厚生労働省は10月13日、第1回在宅医療及び医療・介護連携に関するワーキンググループをオンライン開催した。本ワーキンググループは、今後の高齢化の進展や地域医療構想により、病床の機能分化・連携による受け皿としての医療需要増大に対して、在宅医療を効率的に提供できる体制を構築するために、介護との連携を含めた今後の在宅医療の在り方等について、具体的に検討するために設置されたもの。
 第1回ワーキンググループでは、①第8次医療計画における在宅医療及び医療・介護連携の体制整備の取組について、②その他在宅医療及び医療・介護連携に係る施策の実施に必要な事項―について検討した。
 今後は「在宅医療の基盤整備」「患者の状態に応じた、質の高い在宅医療提供体制の確保」「災害時や新興感染症拡大時における在宅医療の提供体制」について検討していく。
 なお、同ワーキンググループの座長には、田中滋氏(公立大学法人埼玉県立大学理事長)を選出した。
 構成員は以下の通り。(敬称略)
大三千晴(徳島県美波町福祉課長)、荻野構一(日本薬剤師会常務理事)、長内繁樹(大阪府豊中市市長)、角野文彦(滋賀県健康医療福祉部理事)、佐藤保(日本歯科医師会副会長)、島田潔(全国在宅療養支援医協会常任理事)、鈴木邦彦(日本医療法人協会副会長)、髙砂裕子(全国訪問看護事業協会副会長)、田中滋(埼玉県立大学理事長)、田母神裕美(日本看護協会常任理事)、中林弘明(日本介護支援専門員協会常任理事)、増井英紀(全国健康保険協会本部企画部長)、松本吉郎(日本医師会常任理事)、馬屋原健(日本精神科病院協会常務理事)、本見研介(全国介護事業者協議会理事)

私の目に映る歯科医療界⑦ アンケートデータは有効な武器になる/中長期課題は国民を説得できる方策の構築を

アンケートデータは有効な武器になる/中長期課題は国民を説得できる方策の構築を

本年8月末、厚生労働省から2020年度の概算医療費が発表された。その金額は42.2兆円で、前年度比で1.4兆円、率で3.2%の減少となった。16年度以来5年ぶりの減少で、減少幅も大きかったことが特徴だ。

その主因は、新型コロナウイルス感染拡大による患者の受診控えだ。 診療分野別に見ると、外来と入院を合わせた医科は31.3兆円(前年度比3.8%減)、調剤7.5兆円(同2.7%減)に対し、歯科は3.0兆円(同0.8%減)となっている。

Ⅰ.概算医療費は歯科微減もコロナの打撃は小さくない

この数字だけを見れば、歯科へのコロナのダメージは浅いように見えるが、そんなことはない。受診した延患者数(受診延日数)は7%近くも減少していて、1日あたりの診察点数・1件当たりの点数の伸びでカバーしているのが実態だ。歯科診療所の経営は楽でないが、報道の仕方次第では、国民の受け止めも違ってくる。

9月1日の日経新聞の1面記事は、「医療費最大の1.4兆円減」と大きく打った大見出しに加え、「コスト抑制の余地映す」との小見出しがついている。記事本文も識者の声を混じえながら、コロナ受診控えとは別に、医療費の助成が大きな小児科などを例に挙げながら、過剰診療の可能性があることなどを指摘している。不要不急の受診を抑え、医療費抑制の取り組みの必要性を強調する内容になっている。うがった見方をすれば、概算医療費の減少からは、過去に無駄な診療があったことが分かったとも読み取れる記事になっている。 これを完全否定する必要はないが、必要な治療を遅らせてしまっていないかなどの受診控えのマイナス面にも目を向けてほしかった、というのが率直な思いだ。

Ⅱ.コロナ感染の影響実態映す東京歯科保険医協会アンケート

そうした中、たまたまコロナ感染症の影響などを尋ねた東京歯科保険医協会の会員アンケートの集計結果が出ているのを知り、ホームページに載っている詳細な内容を拝見した(概要は91日付けの当機関紙にもグラフ付きで報じられている)。

2021年4月の1年前との比較だが、医業総収入が増加したとの回答が43%で、減少したとの34%を少し上回っている。最新の概算医療費のデータは213月までの1年間の動きをまとめていて、対象年月の違いから正確な対比はできないが、増加組と減少組がかなり拮抗するとの貴協会の回答は、歯科の概算医療費微減とほぼ足並みを合わせた動きのように推察できる。

貴協会の今回のデータで興味深かったのは、訪問診療の動きだ。1年前と比べて増加したと回答した会員が21%を占め、減少したとの回答割合30%を下回っている。外来患者数は1年前に比べ増加したとの回答が43%、減少したとの回答34%を上回っていて回復の兆しが見えるのと違って、立ち直りが鈍い傾向が見て取れる。居宅にせよ、介護等施設住まいにせよ、訪問診療の主顧客である高齢者や介護業者などが、コロナ感染を恐れる等の理由から歯科での訪問診療を手控えしている様子が、このデータ結果の背後にうかがえる。

もうひとつ、このアンケート実施がよかったのは、新型コロナ感染拡大の患者への影響を会員の歯科医師などに聞いている点だ。

直接診察している歯科医師の目から見た回答は、コロナ禍を知る上で国民にとっても非常に貴重だ。概算医療費の数字上の動きからは決して分からない患者への影響を知る、つまり先述の日経記事に欠けている視点を補う上でも重要なデータといえるからだ。

回答総数586件のうち、回答が多かった順に挙げると、歯周病の悪化が378件、う蝕の進行が303件、義歯の脱離・不適合168件と続いている。

「感染拡大の影響で検診の自粛や受診控えが見られるため、来院時には悪化しているケースが多くなっている」「高齢者の(来院)中断から再開までの期間が長くなり予後不良になるケースが目につく」など、患者の症状悪化につながる悪影響を指摘する会員歯科医師の声の、まさにオンパレードとなっていて、実に興味深かった。

Ⅲ.国民向けにいかにうまく伝えられるかが課題に

患者治療に携わる歯科医師からの生の声、医療現場に根差した実際の諸データが、年末に向け本格化する中医協の議論にも、政治家や厚労省などへの陳情・要求する上でも、強力な武器になることは間違いない。

歯科技工士、金パラ逆ザヤ、今回のコロナ感染拡大の影響などタイムリーなアンケートを実施し、公開してきた貴協会の努力には敬意を表するが、さらに一歩進んで、これを国民にどううまく伝えられるかも検討されてはどうか。

中長期での医療費増加の解決は、日本の大きな課題だ。国民の中にも歯科を含めて医療費に過剰診療要素があり、診療報酬の引き下げを漠然と支持する空気があることも事実だ。これには正確な情報不足に起因する部分も少なくない。そのためにも、低く抑えられてきた歯科診療報酬のアップが、歯科医師の利益というだけでなく、国民にとっても歯科治療の質向上の観点から必要なことを、厚労省や政治家、中医協の委員など従来のインナーサークルだけでなく、最終的な費用負担者である国民からも納得してもらうこと、さらにはその前門になるメディアにも理解を深めてもらうことが、どうしても必要になる。

◆困難な課題だが歯科医療界を挙げ…

困難な課題だが、歯科医療界を挙げて、真正面からここにぶつかることからしか道は開けないはずだ。

筆者:東洋経済新報社 編集局報道部記者 大西 富士男

2021年(令和3年)101日号10面掲載

第4回歯科医療提供体制等に関する検討会

 厚生労働省は107日、第4回 歯科医療提供体制等に関する検討会(座長:須田英明(東京医科歯科大学医歯学総合研究科名誉教授)をオンラインにより開催した。各地域におけるサービスの過不足について、統計調査やアンケート結果等によって評価を行ったうえで不足しているサービスの充実を図れるか、また、かかりつけ歯科医の充実度等についてどのような指標で可視化が図れるかについて、第3回検討会の意見を踏まえ議論した。

 「歯科医療機関の機能分化と連携」と「かかりつけ歯科医の機能」

  前検討会は、構成員から「地域で必要な歯科の診療内容を吟味し、それに対応できる診診連携、病診連携の状況を見る必要がある」「『連携』について、具体的に『いつ』『誰が』『何を』等を検討することが重要。客観的に評価可能な指標や基準があるとよい」「地域によって、今後どのような歯科医療が必要となるかを評価する指標が必要」などの意見が上がっていた。

 今回は、前回の議論等を踏まえ、①各地域におけるサービスの過不足について、統計調査やアンケート結果等によって評価を行ったうえで、当該評価結果に基づき、不足しているサービスの充実を図るべきであると考えるが、病診連携、診診連携、医科歯科連携等に係るニーズに対する過不足等について、どのような指標で見える化を図ることができるか、②かかりつけ歯科医の充実度等について、どのような指標で見える化を図ることができるか―などについて、検討が加えられた。

 地域における障害者(障害児)への歯科医療提供体制

  また、地域における障がい者(障がい児)への歯科医療提供体制も論議し、①通院や受療が困難な地域の障がい児・者等への歯科保健医療サービス、②各地域におけるサービスの過不足について、統計調査やアンケート結果等の評価に基づき、各地域で不足しているサービスの充実を図るべきだが、地域の障がい児・者等への歯科保健医療の充足状況の把握が進まない理由としては何か、③地域の障がい児・者等への歯科保健医療の充実度等は、どのような指標で見える化できるか―などが論点とされ、構成員に意見が求められた。

歯系議員の渡辺・島村両議員が大臣政務官に就任/10月6日の臨時閣議で決定

10月4日の岸田内閣の発足に伴い、政府は6日に臨時閣議を開催、各省庁担当の副大臣と政務官を決定した。副大臣は26人で、その中で女性は1人となっている。また、副大臣は同じく26人で、女性は1人となっている。

その中で、特に歯科医療界との関連から注目されるのは、歯科医師で国会議員を務める、いわゆる「歯系議員」の渡辺孝一衆議院議員が総務大臣政務官、島村大参議院議員が厚生労働大臣政務官と内閣府大臣政務官を兼任することになった点であろう。内閣府大臣政務官の立場は、行政全体の運営への知識、経験、見識などが求められる。

渡辺氏は3期目。東日本大学(現北海道医療大学)歯学部卒業。北海道の岩見沢市長を務めた経験をもつ。その後、比例北海道で出馬し、2012年に初当選。その後、防衛大臣政務官などを務めた経験を持つ。

島村議員は2期目。東京歯科大学卒業。参院神奈川県選挙区で2017年に初当選。その後、参院厚労委員会委員長などを務めた経験を持つ。

ちなみに、岸田新内閣における厚生労働大臣以下の陣容は、以下の通り。なお、厚生労働大臣政務官に医系議員と歯系議員が就任するのは初めてのこと。

◆厚生労働大臣

・後藤茂之衆議院議員:長野県選挙区4区/6期・自民党

◆厚生労働副大臣

・古賀篤衆議院議員:福岡3区/3期・自民党

・山本博司参議院議員:比例代表/2期・公明党・再任

◆厚生労働大臣政務官

・大熊和英衆院議員:比例近畿ブロック(大阪府第10区)

2期・自民党・聖マリアンナ医大卒・医師

・島村大参議院議員:神奈川県選挙区/2期・自民党・東京歯科大卒・歯科医師

岸田新内閣の厚生労働大臣に後藤茂之氏が就任/旧大蔵官僚出身

岸田新内閣の厚生労働大臣に後藤茂之氏が就任/旧大蔵官僚出身

自民党の岸田文雄総裁は、10月4日召集の臨時国会で第100代首相に指名され、新内閣を発足させた。

その中で、医療や福祉、新型コロナウイルス対策など社会保障制度を所管する厚生労働大臣には、自民党内で新型コロナウイルス感染症対策本部の座長を務め、元法務副大臣の経歴も持つ後藤茂之氏(65歳)が就任した。

後藤氏は、旧大蔵省出身で長野4区選出。当選6回。自民党内では、新型コロナウイルス感染症対策本部座長のほか、厚生労働部会長、社会保障制度調査会事務局長、社会保障制度調査会介護委員長などを務めた経験を持つ。そのほか、衆議院厚生労働委員長や国土交通大臣政務官、法務副大臣なども務めた経験を持つ。

なお、現在の歯科医療界では、2022年度診療報酬改定問題に留まらず、金パラ問題、コロナ禍対策など緊急的な課題のほか、医科歯科連携、歯科医師需給問題、IT化対応、生涯を通じた歯科健診問題、歯科技工士と歯科衛生士を巡る諸問題など、解決すべき問題が山積している。

認知機能と口腔機能  相関関係の解明を目指す<日本補綴歯科学会 日本老年精神医学会>

 日本補綴歯科学会(馬場一美理事長)と日本老年精神医学会(池田学理事長)は9月3日、共同で「認知機能と口腔機能に関する医科歯科連携研究プロジェクト」を発足し、同月7日に調印式とプレスセミナーが行われた。このプロジェクトは、「ECCO(エコ)プロジェクト」という略称でよばれ、「認知機能」と「口腔機能」に関する相関関係を医科歯科連携により解明し、認知症対策といった社会的問題へ取り組むことを目的としている。


 まずは認知症専門医と歯科医師を対象に、連携状況や課題についてアンケート調査を実施する予定としており、アンケート結果を踏まえて「認知」と「口腔」に関する臨床研究を行うとしている。ECCOプロジェクトによって、超高齢社会で役割が増している補綴治療による患者の健康長寿の延伸実現に向け、共同研究を推進していくと強調している。

「歯科医師によるワクチン接種業務」に従事して/木下 優(品川区開業)

ワクチン接種会場

先日、「歯科医師によるワクチン接種業務」に従事しましたので報告いたします。参加したのは都内の職域接種で、モデルナワクチン2回目接種でした。

◆協会の筋肉内注射実技研修

 協会主催の「新型コロナウイルスワクチン接種のための筋肉内注射実技研修」および「三角筋の詳細解剖解説による正しい筋肉注射と迷走神経反射対策」(講師は、いつき会ハートクリニック院長の佐藤一樹先生)に参加。研修と実習で三角筋ワクチン接種への理解が一層深まりました。

講義内容を反復し、さらに理解を深め、教わったことを現場で確実に実行することに努めた。お嫁にいき、2人のチビちゃんを子育て中の我が娘でリハーサル。上腕部筋肉が母親らしく大変立派にたくましくなっていることを見た時、とても嬉しい気持ちになりました。

◆接種業務当日の模様

 午前9時半から医療従事者のミーティング開始。モデルナワクチン異物混入の質問があった場合の対応など。業務時間は、午前10時から午後5時30分まで。昼休みは1時間。

 被接種者の問診表のチェック、年齢(モデルナは18歳以上) 、右腕接種か左腕接種かをRあるいはLで記載。注射針が抜けやすいので必ず押し込み、保護キャップは右手だけで外せるよう、あらかじめ緩めておきます。被接種者に挨拶とともに、「肩を出して筋肉を確認しますね」と声をかけ、手首に軽く触れ腕を45度外転させます。視診、必要であれば触診を行って三角筋を正確に確認し、その中心で筋肉が一番厚い場所を接種位置とします。私の三横指は約4・5センチなので肩峰から1センチ下から三横指が接種位置と重なります。被接種者の腕は重力に任せて落下させ三角筋を脱力させる。接種位置を中央にして、左手の親指と人差し指薬指で逆Ⅴ字を作ります。右手だけで保護キャップを外し、ペンホールドで表皮に対し90度の角度で、太さ25G、長さ25ミリの針を根元まで穿刺します。痺れがないこと、および注射器の固定を確認し、ゆっくりと最後までしっかり左手の親指でワクチン0・5ccを注入します。抜針後、すぐ針捨てボックスに注射器を捨てる。接種後は、「2回目が無事に終わって本当によかったですね」と声かけを行い、たくさんの笑顔に接することができました。

接種ブース内の様子

 私が担当した接種ブース(歯科医師1名・看護師1名)の接種人数は150名弱。廃棄ワクチン(注射器の落下、ワクチンの液漏れなど)なし、迷走神経反射なしでした。ペアの看護師さんにも恵まれ、終始和やかに笑い溢れる接種ブースで気持ちよく業務することができました。

◆日本でのワクチン接種の現況 

ワクチン接種実技研修の資料

欧米に遅れをとった日本のワクチン接種ですが、9月末には2回目接種終了者が全人口の6割弱になるようです。菅義偉総理の功績はもちろんですが、全国の医療従事者の献身的な働きに加え、日本国民の真面目さと優れた協調性が現在の状況を作り出だしたと考えています。

◆平和な日々が戻ることを…

 1年9カ月におよぶ、この災害。早く平和な日々が戻ることを、切に願っています。(木下 優/品川区開業)

ワクチン接種には娘の協力もあった

 

第1回歯科技工士の業務のあり方等に関する検討会

 厚生労働省は9月30日、歯科技工士の業務のあり方等に関する検討会を創設しその初会合をオンライン開催し、「『歯科技工士の業務のあり方等に関する検討会』開催要綱」「歯科技工士の業務のあり方等に関する検討について」「歯科技工におけるリモートワークについて」について議論が行われた。座長には、昭和大学客員教授の赤川安正氏が選出された。

 この検討会は、近年、歯科技工技術の高度化やデジタル化、就業歯科技工士数の減少など、歯科技工士を取り巻く状況の変化を踏まえ、デジタル技術を活用した歯科技工や、チェアサイドでの歯科技工など、歯科技工士の業務の在り方や必要な教育等に関して具体的な検討を行うために設置したされたもの。

 第1回検討会では、歯科技工業の多様な業務モデルに関する研究結果や業務内容の見直しに向けた調査研究、また歯科技工に関する検討会の議論などを振り返り、2021年6月18日に閣議決定した規制改革実施計画の「デジタル化の進展等に対応するための歯科技工業務の見直し」に対応するため、2021年度中に歯科技工士の業務形態について、①歯科技工におけるリモートワークのあり方、②歯科技工所間の連携のあり方―について検討することになっており、今回の議論では、「歯科技工におけるリモートワークを行う場所、リモートワークを行う者についてどう考えるか」「歯科技工においてリモートワークが想定される業務として、どのような業務が考えられるか」「歯科技工におけるデジタルデータの情報管理や、歯科技工所と歯科医療機関とのデジタルデータの授受方法についてどう考えるか」などを取り上げた。2022年度中に①歯科技工士の業務について(チェアサイドにおける業務についても含む)、②業務の検討に応じた教育内容等について―を検討する。

 構成員は以下の通り。(敬称略)

【構成員】赤川安正(昭和大学客員教授)、扇照幾(OAK Dental Studio)、大島克郎(全国歯科技工士教育協議会会長)小畑真(弁護士法人小畑法律事務所代表弁護士)、尾松素樹(公益社団法人日本歯科医師会)、陸誠(株式会社コアデンタルラボ横浜代表取締役社長)、杉岡範明(公益社団法人日本歯科技工士会会長)、馬場一美(公益社団法人日本補綴歯科学会理事長)古畑公治((株)デントライン インターナショナル)、三代知史(公益社団法人日本歯科医師会)、柳澤智仁(東京都多摩立川保健所 歯科保健担当課長)

【専門委員】野﨑一徳(大阪大学歯学部附属病院医療情報室室長)、松井哲也((株)ハーテック・デンタルサービス)、山下茂子((株)Dental Digital Operation

医療費国庫補助10兆円超に 2022年度厚労省概算要求案

◆オンライン資格確認システムも推進

 厚生労働省の2022年度(令和4年度)予算概算要求案が8月31日、財務省に提出されたが、そのうち保険局関係の主な要求内容が明らかになった。 

 保険局予算案の柱は、①地域包括ケアシステムの構築等に向けた安心で質の高い医療・介護サービスの提供、②健康で安全な生活の確保、③地域共生社会の実現に向けた地域づくりと暮らしの安全確保、④東日本大震災や熊本地震をはじめとした災害からの復旧・復興への支援―の4本となっている。 

 これらのうち、①の地域包括ケアシステムの構築に向けた安心で質の高い医療等サービスの提供では、各医療保険制度などに関する医療費国庫負担を2022年度予算では10兆1788億円(2021年度予算では9兆8533億円)、 国民健康保険への財政支援3104億円(同3104億円)、被用者保険への財政支援825億円(同820億円)―などを要求している。

 これにより、各医療保険制度などに関する医療費国庫負担に要する経費を確保し、その円滑な実施を図り、保険料の軽減対象となる低所得者数に応じた保険者への財政支援の拡充、保険者努力支援制度等の継続実施に必要な経費を確保し、拠出金負担の重い被用者保険者の負担の軽減と短時間労働者の適用拡大にかかる財政支援に必要な経費を確保する方針。

 また、医療分野等におけるデータ利活用を推進させるため、医療保険のオンライン資格確認等システム等の改修およびオンライン資格確認等システム導入の周知広報等に関する必要経費を確保し、レセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)や介護保険総合データベースなど健康・医療・介護情報を連結・解析する環境を整備・拡充。

 研究者や民間事業者など幅広い主体への提供等を行い、国民健康保険団体連合会が診療報酬の審査支払等を行うための国保総合システムと社会保険診療報酬支払基金との審査基準の統一化や審査システムの整合的、効率的な運用を実現するため、2021年3月に策定した「審査支払機能に関する改革工程表」に基づき、2024年度の次期更改に向け、システム整備の支援を行うとしている。

2022年度予算要請 東京都と意見交換

東京都庁

 協会は、9月2日に東京都第二庁舎10階会議室にて、東京都福祉保健局と2022年度東京都予算に関する意見交換を行った。今回の要請では、新型コロナウイルス感染症の感染拡大による緊急事態宣言下にあることを踏まえて、東京都側の一部回答者がWEBによるオンラインでの参加となった。
 今回、当会からは、「①緊急事態宣言時の指導」「②高点数による個別指導」、③生活保護の医療要否意見書、④妊産婦への医療費助成制度、④介護保険の自己負担額の軽減策、⑤自治体が行う歯科健診、⑥子ども医療費助成制度、⑦訪問診療の推進、⑧在宅歯科医療実践ガイドブック、⑨緊急時の医療提供体制、⑩医療機関の減収補填、⑪検査費用等の補助、⑫歯科衛生士の再就職、⑬歯科衛生士学校について―など17項目について東京都に対して要請を行った。


――高点数による個別指導は廃止を求める
 厚労省保険局医療課指導監査室から発令された事務連絡「令和3年度における指導監査等について」(2021年1月18日)では、今年度の高点数の保険医療機関等に対する個別指導は実施しないことや今年度の集団的個別指導に選定された医療機関に対しては、2022年度も引き続き、高点数であっても2023年度における高点数を理由とする個別指導は実施しないことが盛り込まれている。情報提供や再指導などによる個別指導に対して、高点数による個別指導を行う必要性が乏しいことを示していると考えられる。当会は東京都福祉保健局に対し、高点数による個別指導廃止の要望があることを報告。関東信越厚生局東京事務所から厚生労働省に向け、意見を上げるよう求めた。
 東京都側は、協会の考えに理解を示した上で、高点数による指導は、指導大綱に基づき実施している点を強調。関東信越厚生局には、要望があったことを伝えると返答した。


――妊産婦に関する医療の在り方を検討
 東京では、2025年以降人口が減少し、少子高齢化がさらに進行することが見込まれている。そのため生産年齢人口の減少、単独世帯や高齢世帯の増加などが懸念されている。2019年に東京都が行った「都政モニターアンケート」調査によれば、少子化に歯止めがかからない背景には、「働きながら子育てができる社会環境が十分でない」(49・1%)が最も高く、「経済的な理由で結婚に踏み切れない人が増えている」(48・0%)、「結婚する必要性を感じない人が増えている」(45・8%)などと続いている。当会は、東京都福祉保健局に対し、現役世代への補助が大切であることを訴え、妊産婦への助成は重要とデータを基に説明し、東京都でも妊産婦に新たな助成制度を設けることを求めた。
 東京都側は、妊産婦への対応は重要であることを述べ、妊産婦に関する医療の在り方について検討していく方針を示した。


――歯科衛生士の復職支援の場は必要
 また、昨年に続いて、歯科衛生士問題に関しても要請を行った。現在、歯科衛生士の有資格者は約27万人いるにも関わらず、実際に就業している人数は約13万人に留まっている。その点について、日本歯科衛生士会が行った「勤務実態調査」によれば、非就業者の47・2%が「自分のスキル」を再就職の障害とし、再就職に結びついていないと考えられている。当会は、新型コロナウイルス禍で就職先を失った有資格者である歯科衛生士の就職の幅を広げるためにも、東京都は復職支援の場を設けることを求めた。


 東京都側は、引き続き東京都歯科衛生士会に支援を行うとした。

第3回メディア懇談会を開催 ワクチン接種研修や政府補助金などを巡り議論

第3回メディア懇談会を開催/ワクチン接種研修や政府補助金などを巡り議論

協会は9月10日、第3回メディア懇談会を開催した。今回もコロナ禍に配慮し、WEB開催とした。加藤開副会長が説明にあたり、広報・ホームページ部長の早坂美都理事が司会を務めた。

今回の議題は、①「新型コロナワクチン接種のための筋肉内注射実技研修報告」、②「東京歯科保険医協会 歯科会員アンケート」、③「次期改定に向けて、金パラ『逆ザヤ』の抜本的な解消を求める署名」、④「診療報酬に関する厚労省要請(7月28日)」、⑤「新型コロナウイルス感染防止に関する補助金 厚労大臣要請(8月4日)」、⑥「2022年度東京都予算に関する東京都福祉健康局との意見交換および都議会各党とのヒアリング」―などとした。

①については、参加者から「研修では具体的に何を実施したのか」や「ワクチンの副反応には打ち方や接種箇所に問題があるのか」などの質問が矢継ぎ早に飛んだ。これに対し、研修の様子とともに、注射角度や部位を誤ると副反応に繋がることを解説。「正しく三角筋に打つことで、偶発的な事故を防ぐことができる」と説明した。

また、②および⑤では、会員アンケートの回答をもとに、ひっ迫する歯科診療所の経営状況を報告。感染防止対策の経費や受診控えにより経営が圧迫される上、第3次補正予算案では、厚労省が一括窓口となったため、手続きが混乱している現状を指摘した。参加者からも疑問の声が上がり、議論が交わされた。

 

写真左は加藤開副会長、右は早坂美都理事

【歯科医療情報観測】歯科情報の利活用および標準化とは何か⑤/完

 前回までは、各診療所、病院における口腔内データをCSV形式で入力し、HL7形式に変換して蓄積させていくことを述べた。
 学校健診のデータ収集については、児童、生徒の移動といった特有の事情もあり、うまくいかなかった点もあった。また、手書きであった健診も、電子ペンを導入して健診票を電子化することが始まっている。これにより、紙に書かれている情報のばらつき、表記の揺れが少なくなり、データとしての制度が高まる。
 歯科診療記録、健診データを検索閲覧できる仮想環境は、クラウド上に既に作られているので、将来的に各地で展開することが可能な段階になってきている。蓄積されたデータを利活用するためには、データの検索方法、アクセスの権限や管理をどのようにするかが大きな課題となってくる。
 身元確認を主な目的として始まったこの流れであるが、データが集積された暁には、悉皆的口腔情報がリアルタイムで参照可能となり、集計作業のオートメーション化につながり、常に最新の情報にアップデートされていくことになる。この段階になると歯科診療情報データを、治療応報、材料ごとの臨床効果の測定、既存の医療ビックデータとの突合により、医科情報などと歯科情報を組み合わせた分析などへの利活用が可能となる。
 また、HL7FHIRへ応用することにより、医療界だけではなく他職種でもデータを使うことが可能になってくる。つまり、上記図のような流れが現実的になってくるだろう。
 情報の利活用は、良い面もあれば、解決しなければならない側面もある。企業などが利益のために情報を活用することは、これまでも度々起きてきた。機微な個人情報が、本人の知らない間に活用されることは、慎重に検討すべき課題である。これらの面を後回しにしたり、見ぬふりをするようなことがあってはならないと考える。利活用に関しては、良い面とともにこれらの課題に真摯に向き合いながら進めることが大事であろう。

 初回より、これまでの記事のまとめであるが、①令和3年3月29日、厚労省による「歯科情報標準化」決定。ここに至るまでの考え方、昔と今の歯科治療について、②東日本大震災をきっかけにして、身元確認には歯科が大切なことが認識された。東北大学によりプログラムが提供されたが、個々のデータに互換性がなく、苦労された話、③身元確認だけではない情報集計により、乳幼児健診から成人健診、介護までデータを蓄積することが目標である。しかし学校健診では、小学校から中学校まで6年間同じフォーマットであるが、途中で転校などがあり、途絶えてしまってうまくいかない、④標準化する際に、大切なことは個々人の最終的な(最新の)口腔状態を一元化したコードで表記できれば便利。標準化コードを用いてCSV形式で個々のクリニックがデータをつくり、それをHL7形式に変換する、これによって医科との連携ができるようになる、⑤最終的には、個人データをHL7FEIR形式にしてクラウドに保存すると、医療機関だけではなく、他職種も使える。しかし、それには法改正も必要なので、今後を注視していく必要がある。

 現在、厚労省で行われている「歯科情報標準化」についての背景と経緯について、5回にわたって述べてまいりました。今のところ、標準コードができた段階となっており、まだ実用化には時間がかかると思われます。今後、コンピューターの仕様書に「口腔診査情報標準コードに準拠したデータの入出力ができること」この文言が必要になってくるかも知れません。

 最後までお読みくださり、ありがとうございました。(了)

協会理事/広報・ホームページ部長 早坂 美都

(東京歯科保険医新聞2021年9月号3面掲載)

私の目に映る歯科医療界⑥歯周病治療など放置の歯科ニーズが存在/歯科報酬改革含め官民共同での対応急務

歯周病治療など放置の歯科ニーズが存在/歯科報酬改革含め官民共同での対応急務

8020運動」の成果もあって、日本の高齢者、8084歳の平均残存歯数は15本強になっている。20本以上の歯が残るスウェーデン級にはまだ届かないものの、格段に改善が見られる。

Ⅰ.歯周病は全年齢で悪化が続く国民病

ただ、もう一つの歯の国民病、歯周病のほうはまだ成果は見えない。厚生労働省の「歯科疾患実態調査」では、歯周病の指標となる4mm以上の歯周ポケットのある人の割合は3539歳でも40%、85歳以上になると実に70%(対象となる歯がない人を除く)に達するなど、年齢が上がるごとにその割合も上昇している。時系列的にも日本人の歯周病の数値は、前回調査の2011年に比べて2016年には、5歳階層ごとのほぼ全年齢層で悪化傾向にある。

口腔内にいる様々な細菌が引き起こす疾患が歯周病だ。これが口内炎症をもたらし、その結果発生する炎症性物質が血管を通じて全身をかけ巡り、実に多様で厄介な疾患の直接・間接の原因になりうることが、近年の医科・歯科双方の研究成果で明らかになりつつある。

前回の連載記事でも触れたが、米国で新薬承認が出て話題のアルツハイマー病などの認知症もそうだし、心臓疾患(狭心症・心筋梗塞など)、糖尿病、脳梗塞、誤嚥性肺炎などにも、歯周病は何らかの形で関与している可能性が指摘されている。その意味でも、歯周病の予防・治癒は、ただ単に歯の健康をもたらすだけでなく、健康全般につながる国民的な重大事だ。

Ⅱ.歯周病など満たされぬ歯科の高齢者需要は膨大

歯科診療にかかる日本の医療費は65歳~69歳、7074歳、75歳以上で増加している(「国民医療費」、総務省統計局「人口推計」参照)。これは、高齢化の進展が続き、この年齢層の人口がまだ増えているためだ。歯科診療所の経営も、この高齢層への依存は大きい。

高齢者の歯科ニーズは大きい。要介護高齢者の約七割が何らかの歯科治療を必要とし、そのうち早急な対応が必要と判断された人の割合も12%あったとする日本老年歯科医学会の調査研究報告がある。義歯治療ニーズが約55%と最も多いが、歯周病治療でも32%が必要とされていた。

問題はこのニーズがどれだけ満たされているかだ。この調査ではこの点が不明だが、これを埋める別のデータがある。要介護高齢者(調査対象は290人、平均年齢86.9±6.6歳)だ。この調査では歯科治療の必要性がある人の割合は64.3%だったが、実際に歯科治療を受けた人は、たった2.4%しかいなかった(2019年の日本歯科医学会の研究)。歯科では高齢者の膨大なアンメットニーズが放置されたままになっている。

厚生労働省の「患者調査」データによれば、歯周病では7074歳で歯科外来受診率はピークを迎えその後は落ちていく。高齢者施設に入るなど自力での通院が難しくなっているのかもしれないが、75歳以上の高齢者の潜在ニーズが落ちているわけではない。

それは同じ「患者調査」で、6574歳と並び、75歳以上の慢性歯周炎の推定患者数が2017年時点で、1996年比で急増していることからも強く推測できる。

Ⅲ.歯科が潜在ニーズに応えきれない原因とは何か

そこで疑問。なぜこれだけの潜在ニーズがあるのにも関わらず、歯科市場の成長は鈍いのか。

答えは単純。ニーズに応え切れていないからだ。その原因の一つは、歯科医師などの側の努力不足がある。通院できなくなった自宅住まい、高齢者施設居住、病院で治療中の高齢者ニーズをすくい取れるような歯科訪問診療のあり方の研究と実践、フィードバック。自治体、医科の病院・診療所、介護施設やそこに従事する多種多様な職種の医療・福祉介護従事者との連携(俗にいう「医科歯科連携」はその一つ)を深めた上で、ニーズを掘り起こすこと。外来に比べ手間や効率が下がることをカバーする工夫などが、まだ足りないと思われる。

従来にない知恵を絞り出せるかが、今民間にも問われているわけだ。個別の歯科医師・経営者や歯科診療所で解決できない部分は、業界全体でカバーする手立てがあるのかを、早急に検討する必要もあるだろう。

もう一つ、歯科の大きな潜在ニーズを阻害するものがある。厚生労働省など政府による歯科分野での顕著な低医療費政策だ。先進国に比べ低く抑えられた保険診療単価は、多数の患者獲得でカバーせざるを得ない形で日本の歯科保健診療・経営をゆがめている。一気に解決することは難しくとも、諸外国との比較も交えた本来あるべき価値ベースの技術料・診療単価のアップに厚労省が頭を切り替えないと、肝心要の歯周病など国民の健康全般の予防・治療にも関わる重大課題の成果が上がらず、台無しになりかねない。中医協などの協議の場でも、歯科は医科とタッグを組んでも論理的に主張していく必要がある。

先の国会で承認された75歳以上の患者負担引き上げは、一定以上の所得者に限定はしたが、今でも満たせぬニーズを高齢者にさらに諦めさせる危険があり、現役世代の将来にも影を落とす。これでどうやって矛盾なく歯周病などでの歯科診療拡大の実を上げうるのか、政策当局だけでなく、国民に対しても問題提起し、徹底的に論戦することが、ここでも必須といえよう。

筆者:東洋経済新報社 編集局報道部記者 大西 富士男

2021年(令和3年)91No.61810面掲載