【教えて!会長!! Vol.52】あるべき歯科医師像とかかりつけ歯科医の機能・役割

― 厚生労働省で歯科医療の提供体制に関して、定期的に検討会が開かれているそうですね。

坪田有史会長:10月7日、オンラインによる「歯科医療提供体制等に関する検討会」が開催されました。本検討会は、第1回(2月19日)、第2回(6月2日)、第3回(7月29日)に開催されており、今回の検討会は第4回の開催です。主に「あるべき歯科医師像とかかりつけ歯科医の機能・役割」が議論されました。われわれ歯科医師にとって重要な将来の歯科保健医療の提供のあり方について検討しています。
これらの議論は、社会保障制度のあり方にも通じ、次期診療報酬改定にも影響すると考えられ、当会も同検討会の議論に高い関心を持って注視しています。 

― この検討会の目的を教えてください。

坪田:2017年(平成29年)12月にまとめられた「歯科保健医療ビジョン」において、高齢化の進展や歯科保健医療の需要の変化を踏まえ、これからの歯科保健医療の提供体制について、歯科医療従事者などが目指すべき姿を提言されました。その中身は、地域完結型歯科保健医療の提供のため、「あるべき歯科医師像とかかりつけ歯科医の機能・役割」「歯科疾患予防策」「具体的な医科歯科連携方策」「地域包括ケアシステムにおける歯科医療機関などの役割」について検討されました。
その2017年に「歯科保健医療ビジョン」でまとめられた提言は、その後、少子高齢化などのわが国の将来を考慮すると、高齢化による医療の需要拡大への対応、生産年齢人口が減少する中での地域医療の確保、健康寿命の延伸へ向けた取り組みを進めることが重要とされ、歯科保健医療の提供のあり方について、改めて検討することを目的としています。

― 検討会が議論する論点を教えてください。

坪田:歯科医療提供体制等に関する検討にあたっては、以下①~⑦の論点および「歯科医療提供体制等事業」における調査結果をふまえつつ、具体的に議論を行うこととしています。
まず、歯科医療提供体制については、①歯科疾患の予防、重症化予防の推進とかかりつけ歯科医の役割、②歯科医療機関の機能分化と連携、かかりつけ歯科医の機能、③地域包括ケアシステムの構築における歯科の役割(食べる機能の維持・回復への支援)、他の関係職種(医療・介護)との連携、要介護高齢者などへの在宅歯科医療の推進など、④地域における障がい者(障がい児)への歯科医療提供体制、⑤行政の取り組み―等です。
次いで歯科専門職の需給については、⑥今後の歯科医療のニーズを踏まえた歯科医師の需給、⑦今後の歯科衛生士の業務のあり方と需給―です。
今後の歯科医療提供体制の検討スケジュールは、歯科医療提供体制に関する議論に関しては進捗状況により、必要に応じて開催することとしており、2022年(令和4年)3月ごろまでに新たな歯科保健医療ビジョンをとりまとめる見込みです。歯科医師、歯科衛生士の需給に関する議論は、歯科医療提供体制に関する議論の状況をみつつ、2022年3~4月ごろに検討会を開催する方向です。
 歯科技工士の業務のあり方と需給については、別途議論を行う場で検討することとしており、9月30日に第1回歯科技工士の業務のあり方等に関する検討会が開催され(3面)、歯科技工所の業務形態改善について、「歯科技工所におけるテレワークのあり方」「歯科技工所間の連携のあり方」等を議論することとしています。開催回数を重ね、議論がある程度進んだ段階で、歯科技工士に関する検討会の内容を紹介します。

― 開業医の立場からは、「かかりつけ歯科医」が気になります。

坪田:ここでの「かかりつけ歯科医」は、保険制度上での限定的な「かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所(か強診)」を直接的には議論はしていません。通常、「かかりつけ歯科医」は、患者側からみて「定期的に歯科健診を受けるなど、自分の歯や口の状態を管理してくれている歯科医」「困った時に診てくれる歯科医」であるとされています。
しかし、行政側が示している「かかりつけ歯科医」とは、地域包括ケアシステムの推進を前提としていることから、「歯科保健医療サービスを提供する時間帯、場所、年齢が変わっても、切れ目なくサービスを提供できる」「患者が求めるニーズにきめ細やかに、安心、安全な歯科保健医療サービスが提供できる」とされています。このことを背景として、かかりつけ歯科医自体を評価するのではなく機能を評価するとし、歯周病安定期治療(Ⅱ)(SPT(Ⅱ))、エナメル質初期う蝕管理加算などを行政誘導として用い、多数の施設基準を満たす医療機関を「か強診」として評価しています。「か強診」は、その施設基準から、複数回の在宅歯科診療を行い、積極的に地域包括ケアシステムに参画する歯科医療機関に対しての評価といえます。
現在、中医協において、この「か強診」の現状、特に訪問診療の実績の要件が低いことに対して疑問視する発言が見受けられます。
そのため、「か強診」、そして「か強診」以外の「かかりつけ歯科医」が行う長期管理について、次期診療報酬改定で何らかの措置を講じてくる可能性があると考えています。その際、国民側・歯科側の双方にとってより良い改定になることを強く望んでいます。

             東京歯科保険医協会 会長 坪田 有史
(東京歯科保険医新聞2021年11月号8面掲載)