2022.08.01 (6)野村太一郎氏(能楽師狂言方 和泉流)
#野村萬斎 #野村万蔵 #狂言 #能楽 #古典芸能 #鬼滅の刃 #情報経営イノベーション専門職大学 #青山学院大学
2022.08.01 (6)野村太一郎氏(能楽師狂言方 和泉流)
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― 6月19日、中野サンプラザ(東京・中野)で第50回定期総会を開催されました。
坪田有史会長:まず、本会定期総会にご出席いただいた先生方、また委任状を提出していただいた先生方に御礼申し上げます。定期総会では、審議をお願いした議案に、複数のご質問をいただき、それぞれ回答させていただいた上で、全7議案すべてを承認していただき、感謝いたします。
定期総会の位置付けは、本会規約第5章、第14条に「総会は本会の最高議決機関であり、会長が招集する」と記されています。すなわち、総会は本会の中で最も高い位置付けとなります。今回、定期総会が「第50回」という節目の数字となりました。本会がスタートした1973年の会員数は180名と過去の資料に記録されています。その後、会員数が着々と増加し、2022年6月1日現在、5938名と本会スタートから半世紀で約33倍の会員数になっています。この場をお借りして、会員の先生方、会務を担当された先輩方、そして歴代の事務局の方々のご努力に心から感謝申し上げます。
なお2023年は、本会が50歳、すなわち50周年にあたります。本会50周年を迎えるにあたり、会員の先生方と共に祝う感謝の会を現在企画中です。その際は、多くの会員の先生方に参加いただきたいので、よろしくお願いいたします。
― 2022年度の活動計画を教えてください。
坪田:詳細は、総会に向けて郵送させていただいた「第50回定期総会議案書」をご参照いただきたいのですが、ここでは先生方と共有しておきたい具体的な活動計画をいくつか述べさせていただきます。
1 新型コロナウイルス感染症対策
・助成金、支援金の申請の補助、労務上の相談へ対応する。
・歯初診の研修である院内感染防止対策講習会を複数回、開催する。
2 歯科医療改善の取り組み
・今次診療報酬改定の内容を分析し、問題点や不合理な点の是正、改善を厚労省に求める。
・オンライン資格確認の導入、マイナンバーカードの保険証利用についてメリット、デメリット
を検討し、会員への周知に努める。
3 審査、指導の対策
・コロナ禍で一時中断されていた各個別指導が再開されており、会員からの相談に適宜対応す
る。
・レセプト審査が公正・公平に行われるよう情報収集し、問題があれば改善を求める。
4 講習会・説明会などの開催
・コロナ禍により始まったオンライン、ハイブリッド形式などを活用し、充実した講習会などを
開催する。
・コロナ禍で中止していた地区懇談会を7月に3地区で開催し、会員との懇談を行う。
5 共済制度の普及・充実
・安心して診療に従事できるよう、共済制度の充実、免責事項の改善などに努める。
6 医療改善を求める
・患者・国民のため、さらに「保険でよい歯科医療」が進むよう活動を行う。
・一部の75歳以上の患者への医療費窓口負担2割化阻止に向けた活動を行う。
・都立・公社病院独法化に対して反対する活動を行う。
7 「健康まつり」の開催
・コロナ禍で延期していた東京保険医協会と本会とが主催する「保険医協会 健康まつり2022」を
10月23日(日)、12〜16時、東京都新宿区西新宿の新宿駅西口広場イベントコーナーで開催す
る予定で準備を進めている。開催目的は、①医療団体として健康増進をアピールする、②医
師・歯科医師の連携をアピールする、③医科歯科両保険医協会を広く認知してもらうようアピ
ールする、④国民皆保険制度の重要性をアピールする―などである。
以上、2022年度も引き続き会員の先生方のご理解、ご協力のほど、よろしくお願い申し上げます。
東京歯科保険医協会 会長 坪田 有史
(東京歯科保険医新聞2022年7月号6面掲載)
WEBに係る歯科関連の法令やトラブル対応などについて、
歯科専門にサイト制作、運用、コンサルディングを手掛ける専門家が解説する本連載。
今回は医院情報サイトについて―。 相談件数としては多くありませんが、「医院の基本情報を掲載するサイトからの請求」という身に覚えのない要求にお困りの方が過去にいました。多いのは、まず簡単な情報だけ掲載して、より詳しい情報を有料で掲載しないかという営業電話がかかってくる場合です。
前提として、勝手に医院情報を掲載して掲載費用を請求することなどはビジネスとして論外で、取り合う必要はありません。事前合意のない請求は無効です。
どちらかと言えば、最初に医院の基本情報を無料で掲載して、その後に「情報の更新をするなら有料契約が必要」「削除も有料」などと、掲載済みの情報を人質のように扱って、有料契約を迫ってくる場合がありますので注意が必要です。
以前、そのような相談があった時にこちらから掲載サイトの業者と電話をした時には次のような主張でした。「公開されている医院の基本情報を当サイトに掲載することは、法的に問題ありません。ただ情報の更新や削除などに要する人件費は有料となります」。とんでもない主張だと思いましたが、「法的に」という言葉で泣き寝入りしてしまう方もいらっしゃるようです。以前、飲食情報サイト「食べログ」へ勝手に掲載されてしまい、店側が訴えた結果、敗訴した事例がありました。おそらく、このような事例を盾にしているものと考えられます。
情報の削除、改訂については対応してもらえることが多いはずです。しかし、登録して自力で改変する、もしくは費用を要求されるなど「確信犯的に」情報を掲載している業者もいるので、その場合は、即座に弁護士を通じてやり取りをすることが望ましいです。
クレセル株式会社
(東京歯科保険医新聞2022年7月号4面掲載)
去る5月29日㈰、
「国民皆歯科健診」検討開始へ 骨太方針
こう見出しを打って、産経新聞デジタル版が特ダネ記事を流した。
6月上旬にまとめる「経済財政運営と改革の基本方針」、いわゆる「骨太方針」で「全国民に毎年の〝国民歯科健診〟の導入検討を始めるのを明記する」というのがその肝となる内容だ。通常のペーパー版には翌5月30日㈪版に掲載されているので、そちらをご覧になった方も多いと思う。
我が国では1歳半、3歳時点の乳幼児や小・中・高時代を除けば、歯科健診は義務ではない。健康増進法で40~70歳の国民は40歳、50歳、60歳、70歳と節目の10年ごとに1回、歯科健診を受ける機会を持つ。この法律で努力義務を課せられる自治体のうち約7割が住民に歯科健診を実施しているが、実際の受診率は1割未満と低い。
事業主に毎年の実施が義務づけられている歯科以外の健診と比べ、大きく遅れをとっている歯科健診を一気に全国民義務化へと方向転換するというのだから、驚きのニュースだったわけだ。
そして、6月7日に閣議決定された「骨太方針」には、実際に「生涯を通じた歯科健診(いわゆる国民皆歯科健診)の具体的な検討」という文言が入った。
Ⅰ.全国民に義務化は本当か?不明点多い骨太方針入り
ただ、記事に疑問もある。
第一に情報源だ。可能性が高いのは、政府・自民党に歯科健診拡大を働きかけてきた日本歯科医師会か自民党の関係者だろう。
すぐ目の前に参議院選挙が迫っている。歯科医師の票がほしい自民党と支援団体の双方に情報を流す動機がある。どちらのサイドにも、全国の歯科医師やその関係者に「運動の成果」をアピールできるからだ。
本質的な疑問は、産経記事がいう「全国民に義務付ける」という部分だ。事業主や自治体ではなく、直接、全国民に義務付けるのかどうか(産経記事は「全国民に毎年健診を義務付ける」と書いている)。
もしそうならば、歯科健診を受けない国民へのペナルティーはどうなるのか、毎年、全国民を対象に実施する際の侮りがたい費用負担をどうするのか、負担の主体は国・自治体・事業主のどこなのか、国民の直接負担もあるのか、全国民に毎年歯科健診を受けさせる手段として職場と自治体の両方を動員するのか、など様々な謎があるのだが、記事は「健保組合などが毎年行う健康診断の際に唾液を提出してもらう」などの例を挙げるのみだ。
具体的には、まだ煮詰まっていないのが本当なのだろうが、「全国民に義務付け」を字義通り受け取るべきか、疑問符が付く。
Ⅱ.財務省はかねて予防医療に懐疑的具体化時点で反対に回る可能性も
財務省がこれを黙認する理由も謎だ。今年も例年通り骨太方針の前、5月25日に財政制度等審議会の財務大臣への答申があった。そこには①かかりつけ医の制度化、②給付費の伸びと経済成長率の整合性、③医療法人の事業報告書の電子開示、④リフィル処方箋―など、医療費を狙い撃ちにし、その削減を求める内容が入っている。これについては、日本医師会も特に大きな問題として注視している。
医療費(本体を含めた診療報酬)の削減に関しては、2022年度診療報酬改定で見せた強硬路線をさらに強力に進める方針を打ち出している。歯科医療界の将来にとっても、大きな意味を持つ内容になっている。
財務省は、予防医療には極めて懐疑的だ。かつて、厚生労働省が財務省の反対を押し切って進めた「生活習慣病の予防の徹底」など予防医療政策が、医療費適正化効果を出せずに終わったことを、わざわざ具体的数値を列挙しつつ今年の答申でも強調しているほどだ。
「国民皆歯科健診」推進の大義名分に挙げられるのは、歯周病予防など歯・口腔の健康維持が他の病気の発症を抑え、医療費全体の抑制につながるという理屈だ。
この歯科版の予防医療の効果には、財務省は否定的なはず。少なくとも国の財政出動となれば強く反対すると思われるが、骨太方針には「国民皆歯科健診」が入っている。なぜか。
大事な選挙前だから目をつむっているとすれば、選挙が終わり具体策を作り、予算付けの段階になれば、注文が付く可能性が強い。
Ⅲ.まずは歯の健康向上を訴え様々な課題克服を目指すべき
国民の間にも、「選挙目当て」「団体利権」など、懐疑的な見方があるのも確かだ。
それでも歯の健診の受診率が、わずか10%のままで良いはずがない。高校を出た後で、歯の健診でいち早く歯周病などの予防、早期発見・改善につなげる機会を増やすことは、国民の健康の観点のみならず、生活の質の維持・向上を図る観点からも望ましいことは確かだ。
歯の健康維持(健診効果)、およびそのほかの病気・医療費の削減との因果関係の検証・エビデンスの確率は、今後じっくり構築すれば良い。まず最優先すべきは、歯・口腔の健康向上に照準を絞り、費用対効果を考えた上で、国が関与しての歯科健診の制度的拡大を進めていくことだ。
歯科医療関連団体は、懐疑的な国民・財政当局に対して、健診拡大による歯の健康の維持・向上効果を粘り強く訴えていく活動を進めてほしい。
健診の本格的拡大のためには、歯科医師だけでなく不足する歯科衛生士などの人員増強も必要になるかもしれない。その待遇改善も併せて実施しなければ「国民皆歯科健診」は絵に描いた餅になる可能性もある。
「国民皆歯科健診」の実現は、巷間、言われるほど簡単ではない。超えるべき課題は多く、関係者の努力と覚悟が必要になることだけは間違いない。
東洋経済新報社 編集局 報道部 記者 大西富士男
「東京歯科保険医新聞」2022年7月1日号10面掲載
2003年6月の第31回定期総会において、大多和彦二会長の辞任に伴い、私が会長に指名された時から26年が経ちました。その私が2011年に会長を退いて以降も協会理事、保団連理事と会務を務めてまいりましたが、2022年6月19日の第50回定期総会をもって会務から退くことといたしました。協会の活動に参加してから42年にわたり、これまで会員の皆様よりのご協力をいただきありがとうございました。今後は協会顧問として、協会の諸活動を見守らせていただきます。(中川勝洋)
6月7日に「骨太の方針2022」が発表され、「歯科専門職による口腔健康管理の充実」「医療機関連携の推進」「オーラルフレイル対策」等が示され、その中に「国民皆歯科健診の具体的な検討」が盛り込まれたことが明らかになりました。これを行うことで、医療費全体の削減に寄与できるとしています。率直なところ、「遂に、長期維持管理政策がここまで来たか」、との思いがします。
まだ詳細は分かりませんが、歯科健診が義務化されると、ドイツのように歯科健診を受けない国民へのペナルティーが導入されるかもしれません。今後の論議を見守りたいと思います。
1990年から2020年まで、「歯界展望」(医歯薬出版株式会社刊)誌上に診療報酬改定ごとに書かせていただいた「診療報酬改定の特徴と評価」を読み返して厚生労働省の歯科医療、歯科保健政策の変遷を振り返ってみました。
1996年(平成8年)3月末、それまでのPⅠ型・PⅡ型などの歯周病治療から現在の歯周病治療の体系である「歯周病の診断と治療のガイドライン」に再編されました。基本検査と精密検査に基づく治療の流れが示され、初診月には算定できなかった指導料も65点で導入されました。同時に歯冠修復物に対する補綴物維持管理料、いわゆる「補管」が2年間の縛り付きで導入されています。
日本歯科医師会は改定財源を確保するためだとし、「責任と保証」という言葉遣いでの説明は回避。しかし、2年以内の破損等での再製作に係わる費用が算定できないことは、診療側が責任を取り、維持管理料という名前の保証料で再製作を引き受けるということです。歯冠修復物の再製作での請求が多いことへの対応ではありますが、クラウン150点、ブリッジ 5歯以上500点、6歯以上670点のためか、保団連の一部は反発したものの大きな運動にはならず、結果は歯冠修復物の請求が減少し、保証料を下回りました。
この制度もドイツで充填、補綴物の保証というペナルティーとともに導入されており、後日、協会による2006年のイギリス・ドイツへの歯科医療視察団派遣の原点となりました。
なかがわ・かつひろ:1967年東京歯科大学歯学部卒業、1967年桜田歯科診療所開設、1981年東京歯科保険医協会理事、昭和大学医学部医学博士授与。1993年協会副会長、2003年協会会長、2011年協会会長を辞し理事に。2022年理事を勇退し協会顧問に就任。
東京23区長でつくる特別区長会は6月21日に緊急記者会見を行い、現在中学生までを対象としている子どもの医療費無償化について、2023年度から高校生に拡大することを明らかにし、所得制限や自己負担は設けず無償化すると発表した。
東京都は2022年1月、子どもの医療費助成の対象を中学生から高校生までに拡大するすることを発表。高校生の医療費を巡っては、所得制限を設け、小中高生における通院1回につき上限200円を自己負担とした上で、残りを助成する方針を表明していた。
その後、東京都は2023年度から2025年度までの3年間は都の財源で経費を全額負担し、2026年度以降の負担割合は今後の協議とすることを特別区に提案。特別区長会は今回、2023年度から事業を実施するため、2026年(令和8年)度以降の財源等については東京都との協議を継続することとし、東京都の提案をいったん了承した。なお、東京都は所得制限を設け、200円の自己負担を求める方式を主張している。
特別区長会は、特別区として所得制限や自己負担を設けない完全無償化で事業を実施するため、東京都の補助金でまかなえない財源は、23区が自主財源で負担する方針。東京23区の負担分は13億円以上と見込む。
マイナンバーカードを利用したオンライン資格確認システムの運用を開始した医科・歯科医療機関及び保険薬局数は2022年5月22日時点で4万4284機関、参加率は19・3%となっている。そのうち、全国の歯科医療機関数は9263機関、同13・1%、東京の歯科医療機関数は903機関、同8・4%にとどまっている。協会には実際に導入している歯科医療機関からオンライン資格確認システムの利用者は月1~2人の利用者しかいないという声も寄せられている。
導入した医療機関には毎月のランニングコストの負担や受付の患者対応などの負担がかかる。そのため、診療報酬改定で、電子的保健医療情報活用加算が新設された。
しかし、政府は患者負担が増えることが報道されると、同加算の廃止を早々と打ち出した。加算が廃止されればオンライン資格確認システムのランニングコストなどは完全に医療機関側が負担することとなる。また、診療報酬の諮問機関である中医協を飛び越えて、政府が方針を打ち出すのはいかがなものだろうか。
また、患者負担があるため、オンライン資格確認システムの利用者が少ないという声もあるが、そもそもマイナンバーカードの全国普及率は5月1日時点で44・0%であり、東京では47・8%である。健康保険証利用登録が済んでいるのは全人口でわずか7%未満に過ぎない。いったい、マイナンバーカードを健康保険証として持ち歩く国民がどの程度いるだろうか。
現行システムでは、資格確認以外の薬剤情報や特定健診記録などの医療情報へアクセスするためにはマイナポータルでの登録が必要である。マイナポータルの利用規約にはすべてのトラブルについて「自己責任」での解決をすることが定められており、全ての責任を利用者に押し付ける内容となっている。医療機関にあるオンライン資格確認システムのカードリーダーはその場で健康保険証とマイナンバーカードの紐づけができるため、医療機関で紐づけを行えば、医療機関側がマイナポータルの利用規約への同意を促してしまうことになる。また、一旦紐づけが完了してしまえば取り消すことはできないため、取り消しを希望する患者さんとの間で新たなトラブルともなりかねない。
さらに、昨今の半導体不足の影響で、オンライン資格確認システムに使用する機器なども不足しており、導入まで半年以上待たされているという医療機関も存在する。半導体の世界的需要の高まりやウクライナ情勢の影響で、物資供給が不安定な中で優先的に導入を進めていくべきものなのかは甚だ疑問である。
オンライン資格確認システムの最大のメリットは健康保険の資格確認がその場でできることとされてきたが、2021年10月より支払い側で資格喪失後のレセプトの振替などの作業を行っており、返戻は減りつつあるため歯科での導入のメリットは少ない。導入を義務化すれば、必要のない新たな負担を強いられるなどのデメリットが大きくなる。
コロナ禍で経済的に打撃を受けている医療機関に対し、マイナンバーカードの普及率の低さを解消するため、オンライン資格確認システムの導入を〝義務化〟し、負担を強いることが今求められていることなのか。マイナンバーカードの普及については、政府が正しく運用するのであれば、新型コロナウイルスに係る給付金などに活用をすることができることなどから、推進をしていく必要性もあると思われるが、現状ではさまざまな点で不安が払しょくできない。そもそも医療をマイナンバーカード普及の出しに使うことについて、国民に理解を得られているとは到底考えられない。
以上よりオンライン資格確認システムの導入〝義務化〟に反対する。
2022年6月9日
東京歯科保険医協会
第5回理事会

定期総会後半の「記念講演」では、協会の坪田有史会長が壇上に上がった。テーマは「臨床の視点で金パラの代替を考える」。昨今の診療報酬改定や基本診療料の点数の変遷、金パラの代替材料についての現状、そして近未来について持論を展開した。司会は阿部菜穂理事が務めた。
2022年度診療報酬改定について
坪田会長は、まず2022年度診療報酬改定について触れ、基本認識、基本的視点として、口腔疾患の重症化予防、口腔機能低下への対応の充実、QOLに配慮した歯科医療の推進を挙げ、それらを通じて、国民の健康寿命の延伸とQOLの改善に寄与することと説明した。
診療報酬改定率については、全体としてプラス0・43%(財源:300億円)、歯科では、プラス0・29%の87億円と紹介。坪田会長が歯科医師となった1989年には国民医療費における歯科医療費の割合は10%であったが、20年後の2019年では6・8%に減ってしまったとし、国民医療費における歯科医療費の割合が10%で維持できていれば、約1兆円も少ない現状であると指摘した。
基本診療料の変遷を前に
2022年度改定で、歯科の初診料は261点から264点、再診料は53点から56点へと、各3点ずつアップした。医科の初診料と再診料は、歯科の初診料より24点、再診料は17点高く、会員からは「医科と同じ点数にすべき」との声があがっている。歯科は初診料を1点上げるのに8億円、再診料を1点上げるのに32億円、初診料・再診料を各1点ずつ上げるのに40億円が必要とし、2022年度改定で初診料・再診料を各3点ずつ上げたので、120億円の財源の確保が必要と説明した。その上で、歯科の財源の不足分は、P基処の廃止により充当されたと説明した。P基処の廃止により、110億7000万円の削減となるため、初診料・再診料の点数が上がったメリットを享受できていないと感じる歯科医師が多いと指摘した。
さらに、過去10年間における初診料・再診料の変遷において、点数は引き上げられているものの、消費税率の引き上げに伴う対応分が含まれているため、実質的な基本診療料の評価には繋がっていないことを指摘し、歯科において国民の健康寿命の延伸やQOLの改善だけでなく、歯科に係る諸問題を改善するために歯科医療費の総枠拡大の必要性を強く訴えた。

金パラの代替材料
保団連が実施した金パラモニター調査のデータを引用し、金パラ告示価格と実勢価格が乖離している状況や、パラジウム、金の先物チャート図をもとに、世界情勢の影響を受けやすく、投資家の投機対象となる材料を保険の材料としていることを問題視。また、歯科用貴金属の価格変動が歯科医療機関に与える影響を緩和するため、年4回公定価格の改定を行うなど、対応が行われたが、金パラ告示価格と実勢価格が乖離している状況は改善されないとし、抜本的な対応を国に求めていくと強調した。
さらに、金パラによる歯冠修復の問題点として、審美障害や金属アレルギーが挙げられるが、接着の技術改善により、接着ブリッジやCAD/CAM冠などのメタルフリーの歯冠修復物の適用が拡大していると説明した。金パラの代替材料として、メタル系ではチタン、コバルトクロム合金、合成樹脂としては、コンポジットレジン(HJC、CRインレー)、ハイブリッドレジンブロック(CAD/CAM冠、CAD/CAMインレーなど)、PEEK、無機材料としては、セラミック(ジルコニア)をピックアップした。
ただし、フルジルコニアクラウンの保険収載は財源が大幅に増加しなければ厳しいという見解を示した。今後は、国としても脱メタル化を推し進めているため、メタルフリーの歯冠修復における保険適用の拡大がさらに進むとの見解を示した。
そのほか、各材料の臨床における特徴や問題点を実際の臨床データを用いながら解説。保険適用となったチタンの改善案としては、①CAD/CAM冠用のチタンブロックを用いて、CAD/CAM技術での製作を行う、②ブリッジへの適用拡大―の2点を挙げた。このうち、②のブリッジへの適用拡大については、保団連を通じて働きかけていくとした。
そして、CAD/CAM冠の適用の問題として、第二大臼歯のすべてが残存していなければ第一大臼歯には適用不可となっているが、その条件におけるデータやエビデンスがあまりにも少ないと指摘した。一律的にルールに縛られているため、患者に保険で適切な治療を行うことが難しい状況にあることから、歯科医師の裁量を認めさせる必要があると強調した。
歯科医療費総枠拡大
坪田会長は改めて金パラの代替材料として、チタンやCAD/CAM冠の適用拡大の必要性を強調し、患者への適切な治療のためには、歯科医師の裁量権の拡大が不可欠とし、歯科業界を取り巻く諸問題の抜本的な解決策として、歯科医療費の総枠拡大の必要性を訴えた。
そして、歯科医療費の総枠拡大が果たせなければ、歯科医師が望む保険適用の拡大や、増点は望めないとし、国会議員や厚生労働省への働きかけを強めていくと強調した。
歯科医師が日々できることは、高点数を理由とする個別指導を恐れた萎縮診療に陥るのではなく、患者、国民の健康維持、健康寿命の延伸のため、エビデンスに基づいた正しい保険請求を行うことであり、それが歯科医療費の総枠拡大に繋がると訴え、結びとした。
講演後の質疑応答では、オーラルスキャナーを用いたCAD/CAMインレーの保険収載の可能性など、フロアーからの質問に、坪田会長が回答した。
当会第5代会長 坪田有史
定期総会
協会は6月19日、中野サンプラザで第50回定期総会を開催した。会場には一般会員と役員合わせて50名が出席。委任状は994名で、両者を合わせると1044名の出席となり、総会成立要件である会員数の10%を超え、総会は成立した。昨年と一昨年は総会のみの開催であったが、新型コロナウイルス感染拡大が緩和したこともあり、今回は記念講演を3年ぶりに実施し、協会の坪田有史会長が講師を務めた。
総会は、山本鐵雄副会長の開会の言葉で幕を開け、冒頭、坪田会長が挨拶に立ち、まずコロナ禍にも関わらず総会に参加いただいた会員に対し謝意を表明。さらに、2021年度の総会で掲げた3つの目標を振り返り、1つ目の会員数増加については「6月19日時点で5949名が会員となり、6000名という大台が見えてきた。引き続き会員拡大に注力したい」と強調。2つ目の協会のデジタル化、特にペーパーレス化推進については「まだ紙媒体もあるが、徐々に進んでいる」と説明。3つ目の事務局のスキルアップに関しては「各個人が自己研鑽しており、一定のスキルアップができた」と報告した。
その後、早坂美都理事が関係団体や議員からの祝電を披露したほか、多数のメッセージが寄せられていることを紹介。議事に入る前には、議長に橋村威慶氏(文京区)、副議長に池川裕子氏(葛飾区)が選出され、議事が進められた。
続いて、議案7本の審議に入ったが、加藤開副会長が第1号議案「2021年度活動報告の承認を求める件」、半田紀穂子理事が第2号議案「2021年度決算報告の承認を求める件」、西田紘一監事が「会計監査報告」を提案し、いずれも賛成多数で承認された。
次に、坪田会長が第3号議案「役員の件(顧問の承認)」、川戸二三江副会長が第4号議案「2022年度活動計画案の件」、半田理事が第5号議案「2022年度予算案の件」、坪田会長が第6号議案「選挙管理委員承認の件」、最後に川本弘理事より第7号議案として「決議採択の件」がそれぞれ提案され、いずれも賛成多数で承認された。
議案の質疑応答では、会場から「オンライン資格確認は医療DX化の基本とされ、電子カルテの標準化なども進めるとされているが、現状では電子カルテをまともに活用できるシステムはなく、対応するのはかなり厳しい。協会はどのように考えているか」「診療報酬改定では、歯科医療の改善が依然として実現されていないように思う。歯保連で実施したタイムスタディ調査の結果をもとに、さらに行政に改善を求めるなど、もっと歯科医師の技術料が評価されるような仕組みにしてほしい」「オンライン資格確認の義務化は行政の暴走であるように感じる。行政に改善を求めてほしい」などの質問や要望があり、担当役員が丁寧に回答した。
最後に松島良次副会長が挨拶を行い、閉会した。
コロナ禍の中で世の中は物価の上昇、また診療報酬の改定はゼロ改定であり歯科医院の経営環境は一層厳しくなっている。そんな中、協会の役員を務めている手当のベースアップは更なる協会活動のためにも必要だと思うが、ベースアップする予定はあるのか。
歯科医師のおける環境のことはおっしゃるとおりであり、そのような提言をしていただき感謝申し上げます。しかしながら、他団体などと比較しても決して手当は安いわけではなく、私自身の感覚では妥当な金額と考えています。あくまでも金額については個人的な感覚など、異なる点もあり、歯科業界がさらに苦しくなっていくこともあるかと思うので、今後そのようなご意見を踏まえ、検討していく必要があると思います。ご意見ありがとうございました。
歯科業界は引き続き厳しいと思うが、協会の会費の値上げがされる可能性はあるのか。
他の保険医協会の会費と比較して東京歯科は最も低い水準にあるものの、総会の中で報告した通り健全な財政を維持しています。そういった中で会費を値上げする理由はないので現時点では値上げする必要はないと考えています。
歯科医療の改善について。今回の改定の中で、新技術や新病名、新しい検査なども盛り込まれました。しかし、開業してから30年になりますが、改善されているという実感がわきません。それは技術の部分が評価されず、低い点数のままで改善されていないことが原因であると思う。その評価方法についてはタイムスタディなどが挙げられ、歯保連でタイムスタディについての考え方が示されたが考慮されているとは思えない。その結果、人数を多くさばくことによって点数を多く稼ぐしかなくなる。協会ではタイムスタディの活用など考えているのか。考えていなければぜひ検討していただきたい。
改定はやはり財源という大きな問題があり、増点するのは厳しいのだと思う。タイムスタディの報告を厚労省はあまり参考にしていないように感じます。そうなるとそれをもとに点数の増点を要請するのは厳しい。しかし、先生方の臨床が満足いくように協会として改善を求めていく必要はあると考えている。
(質問:会員S先生)
わかりました。歯科はブラック企業のようなものだと行政に強く訴えてほしい。
オンライン資格確認の問題で、マイナンバーカードの義務化など報じられており、行政の暴走を感じる。協会としてはどのように捉えているか。
協会として義務化には強く反対をしている。義務化というと一律でそれを強制させることになるので、それを容認するのは厳しいと思う。義務化には反対だが、将来的に必要とされ、取り入れていく必要はあるように感じている。そのバランスを踏まえて協会として活動していく必要があると思う。
協会には休業保障で非常にお世話になり感謝している。先ほどのM先生の質問にオンライン資格確認があった。その歯科のDX化の中で電子カルテ化というものも挙げられているが、歯科で電子カルテとして機能しているものがあるかは疑問である。もし本当に電子カルテ化というものを目指すのであれば、保険診療の仕組み自体を大幅に見直す必要もあるのではないか。協会としての考えを伺いたい。
オンライン資格確認はマイナンバーカードから患者の情報を得るということになるが、その際はオンライン請求が要件になっています。しかし、それはオンライン請求のみでカルテの内容を見るということではありません。それもゆくゆくは対応の必要があるかもしれませんし、将来的には国はそれを一定進めたいのだと思います。先生のご質問は電子カルテについてですが、まともに機能しているものがあるかどうかはわからないですが、単に電子レセプトにのみ対応している先生方が多いと思います。医科は電子カルテに対応しているという体裁になっているが、実態としては100%出来てはいないのではないでしょうか。今後は実態を見て、電子カルテについての必要性などを考えなければならないでしょう。協会としては、まず電子カルテの現状について改めて調査した上で会員に周知していく必要があると思います。
協会はレセコンメーカーと懇談会を実施しています。電子カルテに求められていることをレセコンメーカーの中で対応できている、できていない、費用面などの話題も大事です。先生からのご質問など、具体的な話がメーカーから回答できるかもしれません。ぜひレセコンメーカーと懇談会に向けてご意見をお寄せいただきたい。
2020年1月、国内で初めて新型コロナの感染事例が確認された頃には、「封じ込め」を目指す「戦略」が取られ、感染者の隔離のみならず濃厚接触者にも厳重な措置をとるなどの「戦術」が開始されたが、その時点においてはそれなりの妥当性があった。しかしながら、本連載で既述したように、現在においては、「封じ込め」が不可能であること、ワクチンや診断・治療法が確立し、致死率が着実かつ大幅に減少してきていることから、「戦略」を見直し、「戦術」を改めるときに至っている。
これまでの感染者の全数届出・隔離、濃厚接触者の行動制限という「封じ込め」を目指す戦略から、「重症化・死亡者数の最小化」とともに「恐怖の病原体というイメージの払拭」を目指す戦略へ転換する段階に現在到達している。
重症化や死亡のリスクは、高齢者や高度肥満者、コントロールが良くできていない糖尿病等の基礎疾患を合併している患者という知見が明らかとなっている。小児や若年者は、無症状か軽症者が大多数であり、感染すること自体を問題視するよりも、重症化リスクが高く死に至る人をいかに守るかに保健医療資源を充てていくべきである。
また、「防災」ではなく「減災」というコンセプトがあるように、感染リスクゼロを目指すような感染拡大の「防止戦略」から、感染機会や重症化リスクの「軽減戦略」への発想転換も考慮されるべきではないか。
広くまん延し、封じ込めができないということから、今となっては濃厚接触者の行動制限の意義は低く、即刻止めるべきである。その上で、感染者の重症化予防のための的確な診断、適時適切な治療へのアクセスの確保が重要であり、保健所を絡ませず、診療所等の外来機能による早期発見・早期治療、医療機関連携による患者紹介、転院、救急搬送といった通常の医療システムに戻すことが急務である。そのためにも、新型コロナの全数届出は不要とし、定点医療機関におけるサーベイランス対象感染症といった運用に切り替え、風邪やインフルエンザのごとく、一般の診療所や中小病院における受け入れがなされるようにすることが重要である。また、流行時には、高齢者施設や病院等における会話時のマスク着用など感染リスクの軽減も必要であろう。
なお、重症化予防の事前策としての、高齢者、高度肥満や基礎疾患等を有する者に対する重症化予防の「個人防衛」としての定期的なワクチン追加接種の勧奨も必須である。
元々「恐怖の病原体」というものは、社会から隔離・排除すべきという意識と根強い「偏見・差別」意識と連動する。これは、ハンセン病やHIV感染症での経験そのものであり、治療法等の確立によって「恐怖の病原体」「不治の病」では無くなり、その疾病イメージが変わり、偏見・差別問題は改善するという歴史が繰り返されている。
一方、高齢者などでは続発する細菌性肺炎等で死に至ることが多々ある風邪症候群や季節性インフルエンザなどは、仮に罹患しても、偏見・差別を受けることはほぼ無く、それは「恐怖の病原体」というイメージが作られていないからである。このため、新型コロナウイルス感染症に対する疾病イメージを変えて、感染のリスクはすべての人にあり、感染自体を恐れるべきでないという政策を進め、偏見・差別、風評被害を無くしていくことが求められている。
幸い、4回目のワクチン接種は高齢者および基礎疾患を有する者を対象にしたり、屋外での非会話時のマスク着用は不要としたりなど、私が提言してきた戦略・戦術が徐々に政府でも取り上げられつつある。
新型コロナウイルス感染症問題の収束に期待するとともに、今回の教訓を踏まえた次の新たな危機的な感染症の発生に向けた医療・公衆衛生体制の更なる充実も期待して、本連載を終えたい。
1984年3月、神戸大学医学部医学科卒業後、厚生省に入省。横浜市衛生局での公衆衛生実務を経て、広島県福祉保健部健康対策課長、厚生省健康政策局指導課課長補佐、同省国立病院部運営企画課課長補佐、茨城県保健福祉部長、厚生労働省東京検疫所長、内閣府参事官(ライフサイエンス担当)、独立行政法人国立病院機構本部医療部長、独立行政法人福祉医療機構審議役、厚生労働省近畿厚生局長などを歴任し、2015年7月、厚生労働省退職。兵庫県健康福祉部医監、同県健康福祉部長、東京都中央区保健所長を経て、2021年4月より現職。
定期総会後半の「記念講演」では、協会の坪田有史会長が壇上に上がった。テーマは「臨床の視点で金パラの代替を考える」。昨今の診療報酬改定や基本診療料の点数の変遷、金パラの代替材料についての現状、そして近未来について持論を展開した。司会は阿部菜穂理事が務めた。
―2022年度診療報酬
改定について
坪田会長は、まず2022年度診療報酬改定について触れ、基本認識、基本的視点として、口腔疾患の重症化予防、口腔機能低下への対応の充実、QOLに配慮した歯科医療の推進を挙げ、それらを通じて、国民の健康寿命の延伸とQOLの改善に寄与することと説明した。
診療報酬改定率については、全体としてプラス0・43%(財源:300億円)、歯科では、プラス0・29%の87億円と紹介。坪田会長が歯科医師となった1989年には国民医療費における歯科医療費の割合は10%であったが、20年後の2019年では6・8%に減ってしまったとし、国民医療費における歯科医療費の割合が10%で維持できていれば、約1兆円も少ない現状であると指摘した。
―基本診療料の変遷を前に
2022年度改定で、歯科の初診料は261点から264点、再診料は53点から56点へと、各3点ずつアップした。医科の初診料と再診料は、歯科の初診料より24点、再診料は17点高く、会員からは「医科と同じ点数にすべき」との声があがっている。歯科は初診料を1点上げるのに8億円、再診料を1点上げるのに32億円、初診料・再診料を各1点ずつ上げるのに40億円が必要とし、2022年度改定で初診料・再診料を各3点ずつ上げたので、120億円の財源の確保が必要と説明した。その上で、歯科の財源の不足分は、P基処の廃止により充当されたと説明した。P基処の廃止により、110億7000万円の削減となるため、初診料・再診料の点数が上がったメリットを享受できていないと感じる歯科医師が多いと指摘した。
さらに、過去10年間における初診料・再診料の変遷において、点数は引き上げられているものの、消費税率の引き上げに伴う対応分が含まれているため、実質的な基本診療料の評価には繋がっていないことを指摘し、歯科において国民の健康寿命の延伸やQOLの改善だけでなく、歯科に係る諸問題を改善するために歯科医療費の総枠拡大の必要性を強く訴えた。
―金パラの代替材料
保団連が実施した金パラモニター調査のデータを引用し、金パラ告示価格と実勢価格が乖離している状況や、パラジウム、金の先物チャート図をもとに、世界情勢の影響を受けやすく、投資家の投機対象となる材料を保険の材料としていることを問題視。また、歯科用貴金属の価格変動が歯科医療機関に与える影響を緩和するため、年4回公定価格の改定を行うなど、対応が行われたが、金パラ告示価格と実勢価格が乖離している状況は改善されないとし、抜本的な対応を国に求めていくと強調した。
さらに、金パラによる歯冠修復の問題点として、審美障害や金属アレルギーが挙げられるが、接着の技術改善により、接着ブリッジやCAD/CAM冠などのメタルフリーの歯冠修復物の適用が拡大していると説明した。金パラの代替材料として、メタル系ではチタン、コバルトクロム合金、合成樹脂としては、コンポジットレジン(HJC、CRインレー)、ハイブリッドレジンブロック(CAD/CAM冠、CAD/CAMインレーなど)、PEEK、無機材料としては、セラミック(ジルコニア)をピックアップした。
ただし、フルジルコニアクラウンの保険収載は財源が大幅に増加しなければ厳しいという見解を示した。今後は、国としても脱メタル化を推し進めているため、メタルフリーの歯冠修復における保険適用の拡大がさらに進むとの見解を示した。
そのほか、各材料の臨床における特徴や問題点を実際の臨床データを用いながら解説。保険適用となったチタンの改善案としては、①CAD/CAM冠用のチタンブロックを用いて、CAD/CAM技術での製作を行う、②ブリッジへの適用拡大―の2点を挙げた。このうち、②のブリッジへの適用拡大については、保団連を通じて働きかけていくとした。
そして、CAD/CAM冠の適用の問題として、第二大臼歯のすべてが残存していなければ第一大臼歯には適用不可となっているが、その条件におけるデータやエビデンスがあまりにも少ないと指摘した。一律的にルールに縛られているため、患者に保険で適切な治療を行うことが難しい状況にあることから、歯科医師の裁量を認めさせる必要があると強調した。
―歯科医療費総枠拡大
坪田会長は改めて金パラの代替材料として、チタンやCAD/CAM冠の適用拡大の必要性を強調し、患者への適切な治療のためには、歯科医師の裁量権の拡大が不可欠とし、歯科業界を取り巻く諸問題の抜本的な解決策として、歯科医療費の総枠拡大の必要性を訴えた。
そして、歯科医療費の総枠拡大が果たせなければ、歯科医師が望む保険適用の拡大や、増点は望めないとし、国会議員や厚生労働省への働きかけを強めていくと強調した。
歯科医師が日々できることは、高点数を理由とする個別指導を恐れた萎縮診療に陥るのではなく、患者、国民の健康維持、健康寿命の延伸のため、エビデンスに基づいた正しい保険請求を行うことであり、それが歯科医療費の総枠拡大に繋がると訴え、結びとした。
講演後の質疑応答では、オーラルスキャナーを用いたCAD/CAMインレーの保険収載の可能性など、フロアーからの質問に、坪田会長が回答した。
厚生労働省に行った歯科用金銀パラジウム合金の材料費が診療報酬の告示価格を上回る問題に関する改善要求から、今次診療報酬改定において、変動幅に係らず3ヶ月毎に告示価格を改定する仕組みが新設された。しかし、ウクライナ侵攻などから歯科用金銀パラジウム合金の市場流通価格は日々高騰を続けており、問題は一向に解決していない。医療機関の経営は更に厳しさを増しており、歯科医療に従事する人材を維持・確保できなくなる恐れがあるなど、医療提供体制の崩壊が懸念される。
長期化する新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、医療用物資の高騰や患者の受診抑制が慢性化している。今次診療報酬改定で初診料および再診料が僅か各々3点しか引き上げられておらず、そもそもコロナ禍以前より院内感染防止対策に係る評価は十分とは言えず、国は速やかに院内感染防止対策の適切な評価を行うべきである。
なお、感染拡大を受け、厚生労働省は今年度も高点数による個別指導を実施しないこととした。これは、協会が廃止を求めてきた成果の1つであり、必要性が乏しいことを厚生労働省は認めたと言える。萎縮診療にもつながる当該指導は、速やかに廃止すべきである。
国は、一定の収入がある75歳以上の国民の負担割合を、今年10月から1割から2割に引き上げる。健康寿命の延伸や在宅医療の医療提供が喫緊の課題となる中で、その患者の負担割合を引き上げる動きには反対である。
「経済財政運営と改革の基本方針2022」の原案において、国民皆歯科健診の検討が盛り込まれた。疾病の早期発見および健康寿命の延伸に繋がると期待され、実現に向けてできる限り協力したい。なお、実施の際には患者が負担を気にせず健診が受けられるよう、適切な制度設計が検討されるべきである。
2月24日に開始されたロシア軍のウクライナ侵攻は、国連憲章および国際法を踏みにじる行為であり、いかなる理由であっても許されるものではない。国民の命と健康を守る団体、そして唯一の被爆国として、人の命を奪う戦争や核兵器使用で世界の諸国を威嚇するいかなる行動にも断固として反対する。
また、政府が推し進めている今後増加する高齢者のために一人当たりの社会保障費を削減する動きや、患者への安心安全な医療の実現を妨げる動きに断固反対し、国民の生活と歯科医療のより一層の充実に向けた運動を国民とともに力を合わせ、推進するために、以下の要求を国民、政府及び歯科保険診療に携わる全ての方に表明する。
記
一.国は、現行の社会保障を後退させず、世界の国々が模範とする日本の社会保障制度を更に充実させること。
一.国は、これ以上の患者負担増計画は中止し、医療保険や介護保険の自己負担率を引き下げること、または公費助成を充実させることにより、国民負担を軽減すること。
一.国は、患者が負担を気にせずにかかりつけの医療機関で健診が受けられるよう、国民皆歯科健診の適切な制度設計を行うこと。
一.国は、院内感染防止対策の評価を更に引き上げるなど診療報酬の諸問題を改善すること。
一.国は、歯科用金銀パラジウム合金の材料費が診療報酬の告示価格を上回ることのないよう、さらなる制度改善を行うこと。
一.国は、高点数の保険医療機関を対象とした指導を廃止すること。
一.私たち歯科医師は、平和を妨げるすべての動きに反対する。
2022年6月19日
東京歯科保険医協会 第50回定期総会
― 日本歯科技工士会が歯科技工士実態調査報告書を公表したと聞きました。
坪田有史会長:本年4月に公益社団法人日本歯科技工士会(杉岡範明会長/以下、「日技」)は、「2021歯科技工士実態調査報告書」(以下、「2021報告書」)を公表しました。この調査は、日技が3年ごとに調査を実施しています。
既に会員の先生方は認識されていると思いますが、以前から本邦の歯科技工士周辺には様々な問題があり、「技工士問題」として取り上げられています。歯科技工士の長時間労働、低賃金、そして離職や歯科技工士養成校の廃校、定員割れなどによる就業歯科技工士数の減少など、将来、歯科医療全体に影響を及ぼす可能性が高いと言えます。
そのため、本会は歯科技工士問題検討委員会を発足し、歯科技工士側の実態を知る目的で、2020年9月に都内23区の歯科技工所(1126件)に対して、アンケート調査を行い、その内容を2021年1月に公表しました(※)。
そして、今回公表された「2021報告書」を含め、歯科医療の一翼を担っていただいている歯科技工士の方々の調査時点の実態調査により、歯科技工を委託する側の歯科医師がその内容を知り、理解する必要があると考えています。なお、「2021報告書」は日技のホームページから閲覧できます。2022年度診療報酬改定では、金パラの代替材料として、新たにCAD/CAMインレー、チタン前装冠が保険収載され、委託する技工物の種類が増えました。「2021報告書」は、これらの技術が保険収載される以前の調査ですが、多くの興味深い結果が示されています。本会としては、会員の先生方に、そして本稿を読んでいただいた全国の歯科関係者に、将来の歯科医療を考えるため、「2021報告書」の内容を確認していただきたいです。
― 歯科技工問題への行政側の対応は?
坪田:厚生労働省は、「歯科技工士の養成・確保に関する検討会」の報告書を2020年3月に公表し、その後、「歯科技工士の業務のあり方等に関する検討会」の第1回目を2021年9月に開催し、本年2月に中間報告を公表しています。その内容をみると、「歯科技工のリモートワーク」と「歯科技工士間の連携」が検討されています。これらが、現在の「歯科技工問題」や「2021報告書」での歯科技工士側からの改善要求に必ずしも合致しているとは私には思えません。歯科技工士側を守っているとは言えない医療保険制度の仕組みや、委託する側の歯科医師側の問題など、多くの課題があることを承知の上ですが、結局「歯科医療費の総枠拡大」がなければ、これらの現実的な諸問題の解決に繋がらないと考えます。これからも本会は、歯科医療の将来のため「歯科技工問題」を考え、行動します。ご理解のほど、よろしくお願い申し上げます。
東京歯科保険医協会 会長 坪田 有史
(東京歯科保険医新聞2022年6月号8面掲載)
WEBに係る歯科関連の法令やトラブル対応などについて、
歯科専門にサイト制作、運用、コンサルディングを手掛ける専門家が解説する本連載。
今回はインターネット回線について―。 診療所にインターネット回線を引いている先生は多いと思いますが、「その回線のプロバイダがどこかご存知ですか?」という質問に答えられる方は少ないのではないでしょうか。開業時に業者に一括でお願いをして、それっきりというパターンがほとんどかもしれません。
ネット回線が高速道路だとしたら、プロバイダは高速の料金所だと考えてみてください。高速道路というインフラを使用するために、世界中のコンピュータを繋ぐ環境整備や付属サービスを一括して行い、利用者から料金を徴収します。厳密には、ネット回線とプロバイダは別業者ですのでインターネットを開通させるには2つの業者と契約することになります。現在では契約を煩雑にしないために、ネット回線業者とプロバイダの請求書が一本化されていることもあります(NTTなど同列会社がどちらも行っている場合など)。
大切なのは、回線業者とプロバイダは別々に選べるということです。建物によって回線工事が可能な業者が少ない可能性もありますが、プロバイダは個別に選ぶことができるのです。回線業者を変えずにプロバイダだけの変更も可能です。スマートフォンは同じものでも、ドコモ、ソフトバンク、auなどのキャリアを変えられるのと感覚的には近いのではないでしょうか。
では、プロバイダをどのように選ぶか。ポイントは「回線の安定性」「料金」「速度」の3点です。メールアドレスなどの付加サービスが差別化になることもありますが、インターネットの快適性は以上3点で決まります。回線が不安定でよく切れたり、速度が遅かったりするとストレスが溜まりますし、同様の快適性であれば料金で選んでも良いと思います。
プロバイダがどういうものかを理解していれば、選定の優先順位はおのずと決まってきます。今契約しているプロバイダをぜひ点検してみてください。
クレセル株式会社
(東京歯科保険医新聞2022年6月号3面掲載)
Ⅰ.米国で長期進行する歯科医師の個人診療所離れ
冒頭で、米国で歯科診療所を所有・経営する歯科医師の割合が、2005年の84・7%から21年には73%に下落していることが取り上げられている。16年間のトレンドは今後とも不可逆だと専門家はみている。ここには複数要因が関係している。
◆増える女性歯科医師の診療所経営DSO
まず、診療所経営比率が男性に比べ、元々低い女性歯科医師が増えている。現在、米国の全歯科医師のうち34・5%を占めている女性歯科医師の割合は、2040年には、ほぼ半分にまで増加する見通しだ。
人口の年齢層の中で、診療所経営比率の高いベビーブーマー世代が引退期を迎え、逆に若手世代の歯科医師が大量流入する。
元々、若手の診療所の所有・経営比率は低いうえ、上の世代に比べ単独の診療所経営志向が低いという、この世代の特徴もある。これが先述した傾向にさらに拍車をかけそうだ。
個人所有の歯科診療所に様々な経営サービスなどを提供するDSO(歯科医支援機関)が成長していることも、単独経営の歯科診療所比率を下げる要因になっている。学校を卒業したばかりの歯科医師でDSO参加計画がある人の割合は、15年の12%から20年には30%に上昇している。このことは、単独経営診療所比率をさらに落とすことにつながるはずだ。
Ⅱ.英国では歯科医師が公的保険から大量 Escape
二つ目は、英ガーディアン紙の5月1日付け記事。
「イングランドに〝歯科医師砂漠〟が出現」の見出し通り、内容も衝撃的だった。
「治療を受けるまで長時間待たされる」として、評判はいま一つのNHS(National Health Service/国民保健サービス)により、国民皆保険を享受できるはずの英国で、こと歯科医療サービスで、この制度破綻の予兆にもなりかねない由々しき事態が生じている様を記事は詳述している。
20年の951人に続き、21年には約2000人の歯科医師が公的保険医を辞めた。歯科医師1人で平均約2000人の患者を抱えているため、公的な歯科医療サービスを利用できず困っている国民が、昨年だけで400万人も生まれたと、記事はいう。
残った歯科医師も、公的保険の上限を使い切った後は患者に自費診療料金を請求する。患者も、公的保険の歯科医師にいくら電話しても無駄なので、結局、自費診療をする羽目になっている。
その結果出現したのが、周囲に公的保険の歯科医師が一人もいなくなってしまった「歯科医師砂漠」。そこでは、公的サービスを提供する人口10万人当たりの歯科医師数が、最小地域ではなんと32人になっているのである。
こうした地域の住民の中には、遠出して公的な歯科医療機関を受診する人まで出現している。問題の本質は、政府の歯科医療費支出の少なさ、抑制からくる公的医療保険の歯科医療サービスの低価格に対し、歯科医師から反乱が起きているということだろう。
国民皆保険を謳いながら、英国ではそこに風穴が開きつつある。もちろん記事中でも識者が指摘するように、最もしわ寄せを受けるのは子どもや体の不自由な人、介護施設で生活する人をはじめとする、いわゆる社会的弱者に他ならない。
Ⅲ.金パラ問題も公的保険の本質巡る観点で論議を
◆米国で注目され始めたDSOへの参加
女性医師の比率上昇や個人経営の小規模診療所への競争圧力の増加は、日本も米国と同じ。米国の個人立歯科診療所では、診療所長を務める歯科医師が経営強化・維持のため、その所有や経営から離れる動きが生まれ、米国特有の動きとしてDSOへの個人立歯科診療所の参加が加速している現状がある。
大方が個人立診療所経営の道を志向してきた日本の歯科医師は、米国と同様の問題に直面した場合、どう解決の道を見出そうとするのだろうか。ここは、歯科医療関連団体を含めて真剣に考えるべきだろう。
英国の例も対岸の火事とはしていられないはずだ。問題の根にある英国政府の医療財政抑制政策は、程度の差こそあれ日本も同じだ。歯科診療価格を抑制し過ぎれば、相対的に高い料金を請求できる自費診療へ歯科医師が逃げ出す形で、国民皆保険制度の実質空洞化を招きかねない。
空洞化が起きれば歯科診療への公的支出は減るかもしれない。だが、これが国民的に望ましいかは英国の例を見るまでもなく、大いに疑問だ。
高い自費診療を受ける経済的な余裕のある人でも歯科診療への出費はさらに増えるうえ、自費診療が受けられない社会的弱者との格差問題は、さらなる国民的分断を促すことになる。
既に東京歯科保険医協会は、歯科医療費の総枠拡大、歯科診療報酬引き上げ、75歳以上の窓口負担引き上げ撤回に加え、本年3月には金銀パラジウム合金の原価割れへの公的資金投入などによる解消を決議している。金パラへの公的資金投入については内部でも様々な議論があったようだが、問題提起の意義は大きい。
本年5月、政府が緊急避難的に金パラ合金の価格アップを決めたのは、地道な改善を求めてきた貴協会を含め、関係者には歓迎すべきことだが、そもそも異常な金パラ価格上昇を患者サイドに負わせることや、価格改定制度の根本的な欠陥が、歯科医師などへの逆ザヤ(損失)負担を強いていることについて、公的医療保険の本質やその維持の観点から適切か否かを国民的に議論する必要がある。
その際の論点の一つとして、政府は歯科医師が患者さんに対し、逆ザヤ分だけ不当に安い公的保険サービスを提供させている形になっているため、英国同様に、行き過ぎれば公的保険空洞化の発生リスクが内包されていることを忘れないでほしい。
東洋経済新報社 編集局 報道部 記者 大西富士男
「東京歯科保険医新聞」2022年6月1日号10面掲載
マイナンバーカードを利用したオンライン資格確認システムの運用を開始した医科・歯科医療機関及び保険薬局数は2022年5月22日時点で44,284機関、参加率は19.3%となっている。そのうち、全国の歯科医療機関数は9,263機関、同13.1%、東京の歯科医療機関数は903機関、同8.4%にとどまっている。協会には実際に導入している歯科医療機関からオンライン資格確認システムの利用者は月1~2人の利用者しかいないという声も寄せられている。
導入した医療機関には毎月のランニングコストの負担や受付の患者対応などの負担がかかる。そのため、診療報酬改定で、電子的保健医療情報活用加算が新設された。
しかし、政府は患者負担が増えることが報道されると、同加算の廃止を早々と打ち出した。加算が廃止されればオンライン資格確認システムのランニングコストなどは完全に医療機関側が負担することとなる。また、診療報酬の諮問機関である中医協を飛び越えて、政府が方針を打ち出すのはいかがなものだろうか。
また、患者負担があるため、オンライン資格確認システムの利用者が少ないという声もあるが、そもそもマイナンバーカードの全国普及率は5月1日時点で44.0%であり、東京では47.8%である。健康保険証利用登録が済んでいるのは全人口でわずか7%未満に過ぎない。いったい、マイナンバーカードを健康保険証として持ち歩く国民がどの程度いるだろうか。
現行システムでは、資格確認以外の薬剤情報や特定健診記録などの医療情報へアクセスするためにはマイナポータルでの登録が必要である。マイナポータルの利用規約にはすべてのトラブルについて「自己責任」での解決をすることが定められており、全ての責任を利用者に押し付ける内容となっている。医療機関にあるオンライン資格確認システムのカードリーダーはその場で健康保険証とマイナンバーカードの紐づけができるため、医療機関で紐づけを行えば、医療機関側がマイナポータルの利用規約への同意を促してしまうことになる。また、一旦紐づけが完了してしまえば取り消すことはできないため、取り消しを希望する患者さんとの間で新たなトラブルともなりかねない。
さらに、昨今の半導体不足の影響で、オンライン資格確認システムに使用する機器なども不足しており、導入まで半年以上待たされているという医療機関も存在する。半導体の世界的需要の高まりやウクライナ情勢の影響で、物資供給が不安定な中で優先的に導入を進めていくべきものなのかは甚だ疑問である。
オンライン資格確認システムの最大のメリットは健康保険の資格確認がその場でできることとされてきたが、2021年10月より支払い側で資格喪失後のレセプトの振替などの作業を行っており、返戻は減りつつあるため歯科での導入のメリットは少ない。導入を義務化すれば、必要のない新たな負担を強いられるなどのデメリットが大きくなる。
コロナ禍で経済的に打撃を受けている医療機関に対し、マイナンバーカードの普及率の低さを解消するため、オンライン資格確認システムの導入を“義務化”し、負担を強いることが今求められていることなのか。マイナンバーカードの普及については、政府が正しく運用するのであれば、新型コロナウイルスに係る給付金などに活用をすることができることなどから、推進をしていく必要性もあると思われるが、現状ではさまざまな点で不安が払しょくできない。そもそも医療をマイナンバーカード普及の出しに使うことについて、国民に理解を得られているとは到底考えられない。
以上よりオンライン資格確認システムの導入“義務化”に反対する。
2022年6月9日
東京歯科保険医協会 第5回理事会
2022.06.01 (4)大槻昌幸氏(一般社団法人日本歯科審美学会理事長)
#審美 #学会 #幸福感 #医療技術評価 #東京医科歯科大学 #歯科医師 #歯科衛生士 #歯科技工士
新型コロナウイルス感染症の感染症法上のカテゴリーを2類相当から5類相当へ変更すべきという議論があるが、そもそも、既に同感染症は2類相当という運用はなされていない。
本来2類であれば、感染症指定医療機関へ入院勧告するが、一般病院に入院させるし、ホテルや自宅療養すらしている。
現状の新型コロナ対応が2類相当の運用ではない以上、5類相当の運用にすべきというのは議論の本質ではなく、言葉だけが一人歩きしている状態であり、私が考える5つの論点を紹介したい。
今となっては、新型コロナで隔離する必要はない。実際、膨大な数の感染者がいることから、隔離は不可能な状態に陥っているが、家のなかで閉じこもっていなくても、外で唾液を飛び散らかせるような行為を行わなければ感染は広がらない。保健所の実施した多くの疫学調査の結果からも、会話時のマスクが徹底されている場合、感染の拡大は起きていないことが圧倒的である。
初期の頃は感染経路等の検証のためにも全数届出が必要であったが、新型コロナに関しては結核などと異なり感染拡大防止対策としての貢献度が低く、医療・公衆衛生の限られた人的・物的資源を有効に使うには、今となっては全数届出を止めるべきである。医療機関及び保健所における全数把握するための労力の多大さに比べ、得られる便益が低すぎる。また、全数届出であるが故に、万一クラスターが待合室や病棟等で起きれば、「バッシング」を受けることを恐れ、受け入れに消極的な医療機関すらあるはずである。一般的に、感染者数の多い感染症は全数届出でなく、定点医療機関からの届出により、地域別の流行状況の把握や変異等に関するモニタリングを行ない、情報提供している。この情報提供により、流行時にはワクチンの追加接種や会話時のマスク着用などの行動を地域住民に促すことが効果的であろう。
まず、最も厳しいエボラ出血熱等の1類感染症であっても、一義的に、感染症指定医療機関という医療機関の管理下において治療がなされる。そもそも、画像検査や血液検査、投薬が出来ない保健所が管理するより、医療機関が直接管理するほうが病状にあった迅速な処置や投薬が可能だ。特に、「自宅療養」という名目の「自宅放置」のもと、実際に死者が出たことは最悪の悲劇であり、保健所の健康管理下におかない方が良い。患者の希望により早期に適切な診断・治療が可能な、わが国の抜群のアクセスの通常の医療システムに戻さなければならない。わが国が優れているのは、CTも含む画像診断装置の普及をはじめとする地域医療の質の高さと、機能に応じた医療機関同士の役割分担と連携にあるからである。
ワクチンには感染予防と重症化予防という、大きく分けて2つの効果がある。感染予防に期待が集まっているが、今回のコロナワクチンは重症化予防を目的に実施すべきものと私は考えている。新型コロナは封じ込めが不可能な病原体なので、「社会防衛」的に全員が接種することによる封じ込め効果は期待できない。そのためにも、個人の「接種しない」という判断は、得られる利益と副反応のバランスを勘案して許容されるべきで、接種しない者に対する差別は決してあってはならない。なお、高齢者をはじめ重症化リスクが高い人は重症化を防ぎ自らの命を守るためにワクチンを「個人防衛」として接種すべきで、当面の間、追加接種を継続的に実施していくべきであろう。
5類相当になると通常の保険診療で3割自己負担となるから反対という考えもあるようだが、これは本質的な問題ではない。難病の医療費助成制度と同様に、例えば、まだ十分には解明されていない「後遺症」のデータを収集し治療研究を推進するという理屈であれば、当面の間、引き続き公費で助成していくこともありえるからである。
次回は、わが国における今後のあるべき戦略・戦術について、解説する。
1984年3月、神戸大学医学部医学科卒業後、厚生省に入省。横浜市衛生局での公衆衛生実務を経て、広島県福祉保健部健康対策課長、厚生省健康政策局指導課課長補佐、同省国立病院部運営企画課課長補佐、茨城県保健福祉部長、厚生労働省東京検疫所長、内閣府参事官(ライフサイエンス担当)、独立行政法人国立病院機構本部医療部長、独立行政法人福祉医療機構審議役、厚生労働省近畿厚生局長などを歴任し、2015年7月、厚生労働省退職。兵庫県健康福祉部医監、同県健康福祉部長、東京都中央区保健所長を経て、2021年4月より現職。
東京歯科保険医協会第50回定期総会を下記の通り開催致します。
2022年6月19日(日)午後2時30分~6時00分
定期総会 午後2時30分~4時15分
記念講演 午後4時30分~6時00分
「臨床の視点で金パラの代替について考える」
講師 坪田有史(東京歯科保険医協会会長)

【抄録】
金銀パラジウム合金(以下、「金パラ」)の価格は、コロナショックによる素材価格の上昇、そして2022年に入ってウクライナショックにより、さらに上昇した。
2022年度診療報酬改定で歯科用貴金属価格の随時改定の仕組みが変更され、さらに急遽5月に改定が行われたが、素材価格が様々な因子によって上下動するため、根本的な解決とはならない。これらの問題から厚生労働省は、金パラの代替材料の保険適用を積極的に進めてきた。
2014年度診療報酬改定では、小臼歯限定でCAD/CAM冠が保険収載され、その6年後の2020年には条件付きで上下顎第一大臼歯、そして前歯部までCAD/CAM冠に適用拡大され、またチタン冠が保険収載された。そして今回の2022年度改定では、CAD/CAMインレーが保険収載された。これらの「脱金パラ」の流れは、今後もさらに進むであろう。
今回、臨床例を交えて金パラの代替について考察する。
中野サンプラザ 13階コスモルーム (住所:東京都中野区中野4-1-1)
交通 中野駅北口より徒歩5分
第1号議案 2021年度活動報告の承認を求める件
第2号議案 2021年度決算報告の承認を求める件付・会計監査報告
第3号議案 役員の件(顧問の承認)
第4号議案 2022年度活動計画案の件
第5号議案 2022年度予算案の件
第6号議案 選挙管理委員承認の件
第7号議案 決議採択の件
以下に該当する方のご参加はご遠慮ください。
・37.5℃以上の発熱がある方。
・体調のすぐれない方(味覚、嗅覚などの異常を含む)。
・新型コロナウイルス感染症「陽性」と診断されている方、または同感染症「陽性者」と診断された方と濃厚接触された方。
※昨年同様、感染症防止対策を十分に行います。
※ご出席の際は、マスク着用などご自身および周囲への配慮をお願い致します。
※定期総会後の懇親会は、新型コロナウイルス感染症の影響により昨年同様に開催を中止とさせていただきます。
※今後の感染拡大状況によって、定期総会の開催・運営に関して大きな変化が生じる場合は、当会ホームページもしくはデンタルブック等でお知らせ致します。

▲卓上型 夏季休診案内
診療所などで使える夏季休診案内をご用意しました。壁に貼って使えるポスタータイプと受付に置いて卓上タイプがございます。
以下のPDFをダウンロード、プリントアウトの上、診療所の夏季休診にあわせてご利用ください。
また、郵送をご希望の方(会員限定)は、フォームからお申し込みください。
夏季休診案内ポスター① →ダウンロードはここをクリック
夏季休診案内ポスター② →ダウンロードはここをクリック
夏季休診案内(卓上型) →ダウンロードはここをクリック
― 今次改定でF局の対象が変更になりました。
坪田有史会長:「エナメル質初期う蝕(傷病名:Ce)」は改定前からの変更はありませんが、う蝕多発傾向者(傷病名:C管理中)の対象年齢が引き上げられ、判定基準が緩和されました。したがって、う蝕多発傾向者に対する指導である「フッ化物洗口加算(F洗)」の対象年齢は、「4歳から13歳未満」が「4歳から16歳未満」となりました。また、「フッ化物歯面塗布処置(F局)」の対象年齢も、「0歳から13歳未満」が「0歳から16歳未満」に引き上げられました。F洗、F局ともに乳歯や萌出直後の永久歯のう蝕抵抗性を高め、う蝕予防の効果に高いエビデンスがあります。F局の場合、歯科医師や歯科衛生士が多く扱っているフッ化物歯面塗布剤は、フッ化物濃度として9000ppmと高濃度といえます。とくに低年齢時の使用時には、急性中毒を避けるため、使用量に注意が必要です。例として小児の場合、1回の塗布に使用する薬剤の量は2gとされています。多くの歯科医療機関で問題ないと思いますが、今次改定を機会に院内でF局の実際の処置について確認することをお勧めします。一方、対象年齢と判定基準を覚えられない私の場合、治療スペースに「2022年改定の要点と解説」の41ページの表をコピーしていつでも確認できるようにしています。
― 初期の根面う蝕のF局については?
坪田:初期の根面う蝕のある患者へのフッ化物歯面処置は、2014年度(平成26年度)改定で在宅などでの療養患者に限られていましたが、今次改定で外来受診の場合でも歯管を算定した65歳以上の患者であれば算定可能となりました。この適用拡大は、2014年度改定時から長年、在宅療養患者だけでなく外来での患者にも認めるべきであると本会は厚労省に要望してきました。そのほか、保団連を始め、各団体の臨床現場の声が認められ、日本歯科医学会から提出される医療技術評価提案書にはない項目として適用拡大されました。このことは65歳以上の口腔内の健康維持を図り、健康寿命の延伸のために歯科診療を行なっている歯科医療機関にとって、評価できる適用拡大といえます。
我が国の高齢化は、さらに一層進みます。高齢者の根面う蝕の罹患率は高く、さらに年齢が高くなるにつれて根面う蝕が増加することには複数の報告があります。また、日本歯科保存学会の「う蝕治療ガイドライン 第2版」では、根面う蝕の対応として「欠損の浅い初期活動性根面う蝕の場合は、まずフッ化物を用いた非侵襲的治療を行って再石灰化を試み、う蝕を管理するよう推奨される」と記載されています。したがって、各高齢者の様々な口腔内の状況に対し、定期的なメインテナンスを行うにあたり、初期の根面う蝕が重症化しないように予防・管理のため、適切なF局による処置が必要と考えます。今次改定で評価できる項目の一つであるF局について、理解を深め、正しい運用によって患者のう蝕予防に役立てましょう。
東京歯科保険医協会 会長 坪田 有史
(東京歯科保険医新聞2022年5月号8面掲載)
WEBに係る歯科関連の法令やトラブル対応などについて、
歯科専門にサイト制作、運用、コンサルディングを手掛ける専門家が解説する本連載。
今回はインターネット取引について―。 近年は、消耗品(歯科材料や感染防止品など)を院内からネットで購入するケースが増えてまいりました。自宅で行う個人的な注文と同じ感覚でできてしまいますが、簡単だからこそ医療機関としての注意が必要です。
まず、ネットで購入決済をするPCはインターネットに接続しますが、院内の他のPCにも接続されていないでしょうか?
ネット購入用のPCは、購入時の自動返信メールも受信することになりますので、セキュリティに懸念があります。そのPCが患者の個人情報(極端な例ではレセコンやデジタルレントゲンなどの情報、治療予約の情報など)にネットワーク上で接続されていると、それだけで大きなリスクになります。診療用のネットワークと外部との接続可能なネットワークは、今すぐにでも切り離すべきです。
ネット購入は、院長ではなく受付などの院内スタッフが定期的な業務として行う場合も多いですが、購入時の報告や在庫管理など徐々に面倒になり、スタッフに「丸投げ」になる事も注意が必要です。
院内スタッフですから決済機能を悪用することは少ないと思いますが、丸投げゆえに「スタッフ個人の判断で購入を行った」などどちらが悪いとも言えないような医院運営上の問題が発生しかねません。
誤操作による発注ミスや決算時に問題にならないため、在庫管理を徹底するための台帳の作成、情報の共有など後々のことを考えて管理体制を整えておくほうがより安全と言えます。
クレセル株式会社
(東京歯科保険医新聞2022年5月号4面掲載)
今後、診療報酬の大幅なアップを期待したいが、実現的には前途多難だろう。日本は少子高齢化という長期の構造問題を抱えており、医療費増加は今後も加速する。政府は、医療費の増加抑制に血眼だ。その結果が先の診療報酬アップ縮小だ。声高に診療報酬のマイナス改定を叫ぶ財務省の圧力を、いつまでかわせるかは予断を許さない。
医科や調剤薬局は、診療や治療、調剤に使う処方薬などの購入価格を医薬品卸会社との交渉で引き下げ、公的価格(償還価格)との鞘を抜く薬価差という利益をひねり出せる。しかし歯科の場合は、コスト全体に占める医薬品購入額の比率は小さく、医科や調剤薬局のような薬価差も享受できない。
保険点数が頭打ち、薬価差メリットも得られないとなれば、保険診療の外、自費診療に活路を見出す選択肢はある。実際、この動きも続いているが、業界が雪崩を打ってこの市場に向かえば、大げさな言い方になるが、質の良い歯科サービスを手の届く料金であまねく国民に提供する公的医療保険制度の理念に背くことになる。
Ⅱ.中長期で歯科医師需給緩和歯科訪問診療などが構造変革促す
前号(第625号本紙)でも触れたが、歯科医師の需給を巡る見方は、一時あった供給過剰論一色は薄れて、2040年までには供給不足になる(歯科医師が足りなくなる)というデータも提出されている。そこまで行かなくとも、専門家の間では、現在の歯科医師過剰の状態から需給ギャップは縮小に向かうという見方が強まっている。
歯科医師年齢層の最大の山は60歳代にあり、70歳以上の歯科医師も増えている。この年齢層の歯科医師の多くは歯科医師一人で切り盛りする歯科診療所を経営しているが、あと10年もすると高齢等が原因で引退する。10年以上続く事実上の参入規制(歯科医師国家試験合格者を2000人前後に抑える施策)により、新規参入も抑えられてきた。人口減少に伴う需要減があるとしても、供給減も大きくなるため、歯科医師の需給ギャップは縮小するというわけだ。この見通しの通りになれば、現在起きている歯科診療所過多による顧客(患者)の獲得競争が緩和されることにつながる可能性が高い。暗い将来性ばかりが一人歩きする歯科業界にあって、この点は、特にこれから歯科医師になる若い世代には朗報になるのかもしれない。
歯科業界にとっては、長期の日本の人口減少がマイナス要因となる一方で、高齢化は歯科サービスへの潜在ニーズが高い高齢者が増える点ではプラスだ。
歯科業界全体、歯科診療所経営の観点からも、この膨大で成長する潜在市場をどう取り込むのかは重要課題だ。
70歳代も半ばになると、歯科外来受診が顕著に減る。この人たちの需要がなくなるわけではない。介護施設や自宅で生活する要介護世代になり、在宅での歯科訪問診療を受けたいが、そのニーズを満たしてもらえないのが実態だ。厚労省の資料では、要介護者の9割が歯科治療などを必要とするのに、実際に治療を受けたのは27%だという。要介護者は現在680万人だから、単純計算で446万人の潜在需要が放置されたままだ。
この在宅への歯科訪問診療を担う在宅療養支援歯科診療所(歯援診)の数は、2020年度に8367施設と、前年度の1万1361施設から初めて減少に転じた。
歯科訪問診療の市場規模は、潜在ニーズの大きさの割には緩やかだ。問題は供給面にあり、歯科医師が歯科訪問診療に二の足を踏んでいるのが実態だ。厚労省の2018年度調査では、歯科訪問診療を実施しない理由のトップに、人手不足などが挙がる。
ここには、歯科業界が抱える問題が潜んでいるように見える。歯科医師が1人という個人経営の診療所が大半を占める業界の構造問題だ。こうした診療所では、拡大する歯科訪問診療ニーズを取り込もうとしても、現在の医業収益の柱である外来を犠牲にすることはできず、それがジレンマとなっている現実がある。
Ⅲ.女性歯科医師の増加も今後の構造転換への引き金に
女性の歯科医師の増加も、歯科業界に構造変化を促すかもしれない。
歯科医師国試合格者では、すでに女性比率が45%を突破した(下表)。一定期間は出産・子育てに時間を取られる女性歯科医師のライフスタイルを考慮すれば、週5日、1日8時間のフルタイム勤務ではなく、週2日や1日のうちで都合の良い時間帯のシフト勤務などのニーズが高まる。
現在の歯科業界構造は、一人の歯科医師だけに頼る個人歯科診療所が主体となっているため、女性歯科医師の積極的な市場参加には対応できないかもしれない。
同じサービス業の性格を持ち、個人経営が多い点でも歯科業界に類似性を持つ弁護士事務所や保険代理店でも、一人経営から合併・集約・大規模化の動きが出ている。
◆法曹界等での合併・集約・大規模化に注意
たとえ業種が違い、その原因は異なるにしても、市場飽和が進み、それに伴い市場競争が激化し経営合理化が背中を押している点では、歯科業界とも共通点を持っている。
歯科業界にも同じ波が押し寄せてきているのかもしれない。将来をにらみ、今から構造転換への議論を進めておくべきだろう。
東洋経済新報社編集局報道部記者 大西富士男
「東京歯科保険医新聞」2022年5月1日号10面掲載
新型コロナの特性の把握や対応法も確立していなかった段階では、感染拡大防止のために「封じ込め」の可能性を意識して、無症状者も含めて検査を実施し、陽性者の把握、濃厚接触者の特定・行動制限などを実施することにはそれなりの合理性があった。
しかしながら、この2年にわたる知見の集積の中で、新型コロナに関しては、①人から猫などの動物にも感染し、再び動物から人に感染するという、変異を繰り返しながらの永遠のサイクルになること、②無症状や軽症のことが多いため、感染拡大しやすいこと、③ワクチンの効果が6カ月程度で減弱することなどから、反復してのワクチン接種や早期発見・隔離などを徹底しても「封じ込め」は不可能であること―が明らかとなり、検査の目的を再検討すべき時期に至っている。
病院における新型コロナ検査では、LAMP法やPCR法を同時に実施することも多い。すると、LAMP陽性、PCR陰性など、異なる結果が出ることがある。検体が正確に採取できていたかどうかによっても、結果が左右されるからである。例えば、インフルエンザ検査キットは、特異度は高く、結果が陽性であればほぼ感染していると言える反面、陰性であっても感染していないとは言い切れない。感染している人を正しく陽性と判定する割合を「感度」というが、インフルエンザ検査の感度は60%程度と言われ、新型コロナの検査も同程度と言われている。すなわち、見落とし(偽陰性)は多く、少数とはいえ〝濡れ衣(偽陽性)〟の可能性もある。その意味で、一つの検査を絶対視するのは不可解としか言いようがない。
さらに、検査の陽性はあくまでも、感染したという「結果」を確認しているにしか過ぎない。本来、感染しないための予防という「行動」こそが「感染拡大防止」につながるわけで、無症状者が検査陰性といって安心し、感染リスクの高い行為を重ねることこそ、感染拡大につながっているともいえる。すなわち、「陰性証明」の検査こそ、感染拡大につながっている可能性すら、ありうるわけである。
それでは、なぜ、今なお日本も含め、世界においても感染拡大防止につながると思い込み、無症状者も含めPCR検査や抗原検査が行われるのか。私は、日本だけなく世界でも、検査の意義や限界、目的が理解できていない人たちが発言し、それがそのまま鵜呑みにされている社会構造にあるのではないかと感じている。
検査は本来、疾病の治療を目的に行うべきである。また、歯科医療も含め、通常の医療においては疾病診断にあたり、必ず複数の検査を実施し、総合的な判断のもと、治療を実施していく。
新型コロナが疑われる場合、まずウイルスのタンパク質をみる抗原検査、遺伝子をみるLAMP法やPCR法などの手法の異なる複数の検査を駆使し、ウイルスの活性状況を判定する。そして、会話時のマスク着用など、他者への感染の配慮の上で通常のように医療機関に通院してもらいながら、患者を的確に医療機関の管理下に置き、鎮痛解熱剤といった症状を和らげる薬なども処方し、症状が深刻であれば、血液検査やCTなどの画像検査を実施する。
このように様々な検査を駆使しながら、患者の重症化リスクを検討する一方、中和抗体療法や抗ウイルス薬投与などを考慮する。そして、重症化が想定される場合や酸素投与が必要な場合などは入院させ、免疫暴走により急激な悪化が起こった場合は、ステロイド剤を投与するといった治療を行うのである。
新型コロナの予防・診断・治療法が確立した今、一刻も早く、アクセスの良い通常の医療システムに戻すべきである。
次回は、新型コロナウイルス感染症のカテゴリー議論について、解説する。
1984年3月、神戸大学医学部医学科卒業後、厚生省に入省。横浜市衛生局での公衆衛生実務を経て、広島県福祉保健部健康対策課長、厚生省健康政策局指導課課長補佐、同省国立病院部運営企画課課長補佐、茨城県保健福祉部長、厚生労働省東京検疫所長、内閣府参事官(ライフサイエンス担当)、独立行政法人国立病院機構本部医療部長、独立行政法人福祉医療機構審議役、厚生労働省近畿厚生局長などを歴任し、2015年7月、厚生労働省退職。兵庫県健康福祉部医監、同県健康福祉部長、東京都中央区保健所長を経て、2021年4月より現職。
2022.05.01 (6)平山秀幸氏(映画「ツユクサ」監督

©2022「ツユクサ」製作委員会 配給:東京テアトル
4月29日(金・祝)全国公開
<キャスト>
小林聡美
平岩紙 斎藤汰鷹 江口のりこ
桃月庵白酒 水間ロン 鈴木聖奈 瀧川鯉昇
渋川清彦 / 泉谷しげる / ベンガル
松重豊
<スタッフ>
監督:平山秀幸 脚本:安部照雄
音楽:安川午朗 主題歌:中山千夏「あなたの心に」(ビクターエンタテインメント)
#ツユクサ #映画 #歯科治療 #東京テアトル
― 2022年度診療報酬改定で初・再診料が増点されましたね
坪田有史会長:歯科初診料の注1(以下「歯初診」)の届出医療機関は、歯初診の施設基準を満たす院内感染防止対策の現行の研修項目に、新興感染症への対応および標準予防策が追加され、基本診療料である初診料が3点、再診料が3点、それぞれ増点され、初診料が264点、再診料が56点となりました。他方、歯初診の未届出医療機関の場合、初診料240点、再診料44点と変更されませんでした。その結果、届出の有無による差は初診料で24点、再診料で12点とさらに点差が広がりました。この扱いは、厚生労働省として院内感染防止対策を推進する観点から、すべての歯科保険医療機関が歯初診の届出を行うことを目指していると理解できます。
初・再診料を1点ずつ上げるには約40億が必要とされていますから、初・再診料を上げるには多くの財源が必要です。なお、今次改定の歯科の改定率は、プラス0.29%で前回改定時の改定率のプラス0.59%と比較すると0.3ポイントも下回った値になりました。なお、プラス0.29%は、概算で約90億円と言われていますのでかなり財源的に厳しい状態です。そこで厚労省は、初・再診料を増点するための財源に、歯周基本治療処置(P基処)10点の廃止・包括分で充てたのです。財源が少ない中、仕方がないという見方もありますが、日常診療の点数を犠牲にしたことには疑問があります。
― そこまでして初・再診料を引き上げる理由は
坪田:長年、歯科側は、医科との基本診療料の格差是正を望んでいます。そこで、院内感染防止対策、および新興感染症への対策を理由として、18年度改定から今次改定まで、初・再診料の増点が行われています。なお、医科は21年から消費増税への対応のみの増点で、実質初・再診料は据え置かれています。しかし、未だ医科歯科格差は解消されていないのが現状です。
歯科初・再診料は、点数だけみると12年の初診料218点、再診料42点から、10年経過した今次改定で初診料264点、再診料56点と各46点、14点増点していますが、その内、初診料30点、再診料6点は、消費税率引き上げへの対応です。したがって、院内感染防止対策および新興感染症への対策のための今次改定までの増点は、初診料16点、再診料8点となります。
― それを聞くと、引き上げ幅が少ないような…
坪田:その通りです。10年間で院内感染防止対策および新興感染症への対策を理由とした増点は、初診料で16点、再診料で8点です。この増点を院内感染防止対策のコストに限ってみると、そのコストについては、2007年の中医協では、268.16円や、19年に中医協で出された意見が約568円ですから、実際にかかっている院内感染防止対策のコストに見合っているとは思えません。
結局、改定財源がなければ、院内感染防止対策のコストを十分に補完することはできません。したがって、「歯科医療費の総枠拡大」が進まなければ、希望は叶わないのです。
国民医療費に占める歯科医療費の割合は、私が歯科医師になった平成元(1989)年では10%ありました。それが30年後の令和元(2019)年では6.8%です。この間、高齢化が進んで国民医療費の全体が増加しましたが、その中で歯科医療費の割合が減少していったのです。もし、10%のまま維持できていたならば、現在の歯科医療費の3兆円は、4兆円になっていたはずです。今更ながら残念なことです。
しかし、過去は変えられません。よりよい未来にするために声をあげていきましょう。声が小さくても、集まれば大声になります。現在全国の協会とともに取り組んでいる署名を含め、協会活動にさらなるご理解、ご協力をお願いします。
東京歯科保険医協会 会長 坪田 有史
(東京歯科保険医新聞2022年4月号8面掲載)