広報・ホームページ部

【決議】東京歯科保険医協会 第50回定期総会(2022年6月19日)

 厚生労働省に行った歯科用金銀パラジウム合金の材料費が診療報酬の告示価格を上回る問題に関する改善要求から、今次診療報酬改定において、変動幅に係らず3ヶ月毎に告示価格を改定する仕組みが新設された。しかし、ウクライナ侵攻などから歯科用金銀パラジウム合金の市場流通価格は日々高騰を続けており、問題は一向に解決していない。医療機関の経営は更に厳しさを増しており、歯科医療に従事する人材を維持・確保できなくなる恐れがあるなど、医療提供体制の崩壊が懸念される。

 長期化する新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、医療用物資の高騰や患者の受診抑制が慢性化している。今次診療報酬改定で初診料および再診料が僅か各々3点しか引き上げられておらず、そもそもコロナ禍以前より院内感染防止対策に係る評価は十分とは言えず、国は速やかに院内感染防止対策の適切な評価を行うべきである。

 なお、感染拡大を受け、厚生労働省は今年度も高点数による個別指導を実施しないこととした。これは、協会が廃止を求めてきた成果の1つであり、必要性が乏しいことを厚生労働省は認めたと言える。萎縮診療にもつながる当該指導は、速やかに廃止すべきである。

 国は、一定の収入がある75歳以上の国民の負担割合を、今年10月から1割から2割に引き上げる。健康寿命の延伸や在宅医療の医療提供が喫緊の課題となる中で、その患者の負担割合を引き上げる動きには反対である。

 「経済財政運営と改革の基本方針2022」の原案において、国民皆歯科健診の検討が盛り込まれた。疾病の早期発見および健康寿命の延伸に繋がると期待され、実現に向けてできる限り協力したい。なお、実施の際には患者が負担を気にせず健診が受けられるよう、適切な制度設計が検討されるべきである。

 2月24日に開始されたロシア軍のウクライナ侵攻は、国連憲章および国際法を踏みにじる行為であり、いかなる理由であっても許されるものではない。国民の命と健康を守る団体、そして唯一の被爆国として、人の命を奪う戦争や核兵器使用で世界の諸国を威嚇するいかなる行動にも断固として反対する。

 また、政府が推し進めている今後増加する高齢者のために一人当たりの社会保障費を削減する動きや、患者への安心安全な医療の実現を妨げる動きに断固反対し、国民の生活と歯科医療のより一層の充実に向けた運動を国民とともに力を合わせ、推進するために、以下の要求を国民、政府及び歯科保険診療に携わる全ての方に表明する。

 

 

一.国は、現行の社会保障を後退させず、世界の国々が模範とする日本の社会保障制度を更に充実させること。

一.国は、これ以上の患者負担増計画は中止し、医療保険や介護保険の自己負担率を引き下げること、または公費助成を充実させることにより、国民負担を軽減すること。

一.国は、患者が負担を気にせずにかかりつけの医療機関で健診が受けられるよう、国民皆歯科健診の適切な制度設計を行うこと。

一.国は、院内感染防止対策の評価を更に引き上げるなど診療報酬の諸問題を改善すること。

一.国は、歯科用金銀パラジウム合金の材料費が診療報酬の告示価格を上回ることのないよう、さらなる制度改善を行うこと。

一.国は、高点数の保険医療機関を対象とした指導を廃止すること。

一.私たち歯科医師は、平和を妨げるすべての動きに反対する。

2022年6月19日

東京歯科保険医協会 第50回定期総会

東京歯科保険医新聞2022年(令和4年)6月1日

こちらをクリック▶東京歯科保険医新聞2022年(令和4年)6月1日 第627号

1面】

     1.診療報酬/オンライン資格確認 原則義務化
     2.第50回定期総会のご案内
     3.定期総会議案書
     4.ニュースビュー
     5.「探針」

2面】

     6.会員寄稿“声”「今後不可欠な『訪問歯科』 現場の視点で見る改定」(葛飾区・池川裕子氏)
     7.会員寄稿“声”「歯科はなぜ疲弊しているのだろうか?」(文京区・太田順子氏)
     8.歯科訪問診療/初電・再電の摘要欄記載不要に
     9.遡及による新規個別指導 4月から対象変更

3面】

     10.経営・税務相談Q&A No.393 賞与・退職金~導入で気を付けることは?~
     11.IT相談室/インターネットに関するプロバイダの選び方/(クレセル株式会社)
     12.診療報酬改定 関連書籍/歯科疾患管理計画書のご案内
     13.法律相談、経営&税務相談

【4面】

     14.インタビュー「歯科医師、歯科技工士、歯科衛生士 三位一体で活動する場が必要」日本歯科審美学会・大槻昌幸さん

【5面】

     15.研究会・行事のご案内

【8面】

     17.Special Serial No.4 「新型コロナウイルス感染症は転換期を迎えている」山本光昭氏(社会保険診療報酬支払基金理事)
     18.教えて!会長!!Vol.59

【9面】

     19.症例研究/2022年度診療報酬改定 初期の根面う蝕のF局および咬調

【10面】

     20.連載/私の目に映る歯科医療界⑮(東洋経済新報社・大西富士男氏)他人事ではない!英国の歯科保険難民発生
     21.理事会だより
     22.協会活動日誌2022年5月

11面】

     23.金パラ原価割れ解消へ 国会議員に要請/金パラ問題 理解示す
     24.視点/若者の投票率向上へ 政治理解深める教育を
     25.夏季休診案内ポスター
     26.第2休業保障制度(団体所得補償保険)募集キャンペーンのご案内
     27.第33回全国保険医写真展ご案内

12面】

     28.7月金パラ引き上げ/1g3413円→3715円に
     29.第1回メディア懇談会「患者側の意識は?」金パラ価格変動について議論
     30.神田川界隈/今年度改定のご評価は?(西田紘一監事/八王子市)
     31.通信員便り No.122
     32.電子書籍「デンタルブック」ご案内
     33.会員優待サービスご案内

13・14面】

     34.第2休業保証制度(団体所得補償保険)募集キャンペーン

【教えて!会長!! Vol.59】日本歯科技工士会 2021歯科技工士実態調査報告書

― 日本歯科技工士会が歯科技工士実態調査報告書を公表したと聞きました。

坪田有史会長:本年4月に公益社団法人日本歯科技工士会(杉岡範明会長/以下、「日技」)は、「2021歯科技工士実態調査報告書」(以下、「2021報告書」)を公表しました。この調査は、日技が3年ごとに調査を実施しています。
既に会員の先生方は認識されていると思いますが、以前から本邦の歯科技工士周辺には様々な問題があり、「技工士問題」として取り上げられています。歯科技工士の長時間労働、低賃金、そして離職や歯科技工士養成校の廃校、定員割れなどによる就業歯科技工士数の減少など、将来、歯科医療全体に影響を及ぼす可能性が高いと言えます。
そのため、本会は歯科技工士問題検討委員会を発足し、歯科技工士側の実態を知る目的で、2020年9月に都内23区の歯科技工所(1126件)に対して、アンケート調査を行い、その内容を2021年1月に公表しました(※)。
そして、今回公表された「2021報告書」を含め、歯科医療の一翼を担っていただいている歯科技工士の方々の調査時点の実態調査により、歯科技工を委託する側の歯科医師がその内容を知り、理解する必要があると考えています。なお、「2021報告書」は日技のホームページから閲覧できます。2022年度診療報酬改定では、金パラの代替材料として、新たにCAD/CAMインレー、チタン前装冠が保険収載され、委託する技工物の種類が増えました。「2021報告書」は、これらの技術が保険収載される以前の調査ですが、多くの興味深い結果が示されています。本会としては、会員の先生方に、そして本稿を読んでいただいた全国の歯科関係者に、将来の歯科医療を考えるため、「2021報告書」の内容を確認していただきたいです。

※=参照:歯科技工所アンケート 報告書が完成しました!

― 歯科技工問題への行政側の対応は?

坪田:厚生労働省は、「歯科技工士の養成・確保に関する検討会」の報告書を2020年3月に公表し、その後、「歯科技工士の業務のあり方等に関する検討会」の第1回目を2021年9月に開催し、本年2月に中間報告を公表しています。その内容をみると、「歯科技工のリモートワーク」と「歯科技工士間の連携」が検討されています。これらが、現在の「歯科技工問題」や「2021報告書」での歯科技工士側からの改善要求に必ずしも合致しているとは私には思えません。歯科技工士側を守っているとは言えない医療保険制度の仕組みや、委託する側の歯科医師側の問題など、多くの課題があることを承知の上ですが、結局「歯科医療費の総枠拡大」がなければ、これらの現実的な諸問題の解決に繋がらないと考えます。これからも本会は、歯科医療の将来のため「歯科技工問題」を考え、行動します。ご理解のほど、よろしくお願い申し上げます。

             東京歯科保険医協会 会長 坪田 有史
(東京歯科保険医新聞2022年6月号8面掲載)

インターネットに関するプロバイダの選び方

WEBに係る歯科関連の法令やトラブル対応などについて、
歯科専門にサイト制作、運用、コンサルディングを手掛ける専門家が解説する本連載。
今回はインターネット回線について―。

 診療所にインターネット回線を引いている先生は多いと思いますが、「その回線のプロバイダがどこかご存知ですか?」という質問に答えられる方は少ないのではないでしょうか。開業時に業者に一括でお願いをして、それっきりというパターンがほとんどかもしれません。
 ネット回線が高速道路だとしたら、プロバイダは高速の料金所だと考えてみてください。高速道路というインフラを使用するために、世界中のコンピュータを繋ぐ環境整備や付属サービスを一括して行い、利用者から料金を徴収します。厳密には、ネット回線とプロバイダは別業者ですのでインターネットを開通させるには2つの業者と契約することになります。現在では契約を煩雑にしないために、ネット回線業者とプロバイダの請求書が一本化されていることもあります(NTTなど同列会社がどちらも行っている場合など)。
 大切なのは、回線業者とプロバイダは別々に選べるということです。建物によって回線工事が可能な業者が少ない可能性もありますが、プロバイダは個別に選ぶことができるのです。回線業者を変えずにプロバイダだけの変更も可能です。スマートフォンは同じものでも、ドコモ、ソフトバンク、auなどのキャリアを変えられるのと感覚的には近いのではないでしょうか。
 では、プロバイダをどのように選ぶか。ポイントは「回線の安定性」「料金」「速度」の3点です。メールアドレスなどの付加サービスが差別化になることもありますが、インターネットの快適性は以上3点で決まります。回線が不安定でよく切れたり、速度が遅かったりするとストレスが溜まりますし、同様の快適性であれば料金で選んでも良いと思います。
 プロバイダがどういうものかを理解していれば、選定の優先順位はおのずと決まってきます。今契約しているプロバイダをぜひ点検してみてください。

クレセル株式会社

(東京歯科保険医新聞2022年6月号3面掲載)

理事会声明 オンライン資格確認システムの導入“義務化”に反対する

 マイナンバーカードを利用したオンライン資格確認システムの運用を開始した医科・歯科医療機関及び保険薬局数は2022年5月22日時点で44,284機関、参加率は19.3%となっている。そのうち、全国の歯科医療機関数は9,263機関、同13.1%、東京の歯科医療機関数は903機関、同8.4%にとどまっている。協会には実際に導入している歯科医療機関からオンライン資格確認システムの利用者は月1~2人の利用者しかいないという声も寄せられている。

 導入した医療機関には毎月のランニングコストの負担や受付の患者対応などの負担がかかる。そのため、診療報酬改定で、電子的保健医療情報活用加算が新設された。

 しかし、政府は患者負担が増えることが報道されると、同加算の廃止を早々と打ち出した。加算が廃止されればオンライン資格確認システムのランニングコストなどは完全に医療機関側が負担することとなる。また、診療報酬の諮問機関である中医協を飛び越えて、政府が方針を打ち出すのはいかがなものだろうか。

 また、患者負担があるため、オンライン資格確認システムの利用者が少ないという声もあるが、そもそもマイナンバーカードの全国普及率は5月1日時点で44.0%であり、東京では47.8%である。健康保険証利用登録が済んでいるのは全人口でわずか7%未満に過ぎない。いったい、マイナンバーカードを健康保険証として持ち歩く国民がどの程度いるだろうか。

 現行システムでは、資格確認以外の薬剤情報や特定健診記録などの医療情報へアクセスするためにはマイナポータルでの登録が必要である。マイナポータルの利用規約にはすべてのトラブルについて「自己責任」での解決をすることが定められており、全ての責任を利用者に押し付ける内容となっている。医療機関にあるオンライン資格確認システムのカードリーダーはその場で健康保険証とマイナンバーカードの紐づけができるため、医療機関で紐づけを行えば、医療機関側がマイナポータルの利用規約への同意を促してしまうことになる。また、一旦紐づけが完了してしまえば取り消すことはできないため、取り消しを希望する患者さんとの間で新たなトラブルともなりかねない。

 さらに、昨今の半導体不足の影響で、オンライン資格確認システムに使用する機器なども不足しており、導入まで半年以上待たされているという医療機関も存在する。半導体の世界的需要の高まりやウクライナ情勢の影響で、物資供給が不安定な中で優先的に導入を進めていくべきものなのかは甚だ疑問である。

 オンライン資格確認システムの最大のメリットは健康保険の資格確認がその場でできることとされてきたが、2021年10月より支払い側で資格喪失後のレセプトの振替などの作業を行っており、返戻は減りつつあるため歯科での導入のメリットは少ない。導入を義務化すれば、必要のない新たな負担を強いられるなどのデメリットが大きくなる。

 コロナ禍で経済的に打撃を受けている医療機関に対し、マイナンバーカードの普及率の低さを解消するため、オンライン資格確認システムの導入を“義務化”し、負担を強いることが今求められていることなのか。マイナンバーカードの普及については、政府が正しく運用するのであれば、新型コロナウイルスに係る給付金などに活用をすることができることなどから、推進をしていく必要性もあると思われるが、現状ではさまざまな点で不安が払しょくできない。そもそも医療をマイナンバーカード普及の出しに使うことについて、国民に理解を得られているとは到底考えられない。

以上よりオンライン資格確認システムの導入“義務化”に反対する。

2022年6月9日

東京歯科保険医協会 第5回理事会

新型コロナウイルス感染症は 転換期を迎えている Special Serial No.4

「2類か」「5類か」ではなく、本質的な議論を

新型コロナウイルス感染症の感染症法上のカテゴリーを2類相当から5類相当へ変更すべきという議論があるが、そもそも、既に同感染症は2類相当という運用はなされていない。
本来2類であれば、感染症指定医療機関へ入院勧告するが、一般病院に入院させるし、ホテルや自宅療養すらしている。
現状の新型コロナ対応が2類相当の運用ではない以上、5類相当の運用にすべきというのは議論の本質ではなく、言葉だけが一人歩きしている状態であり、私が考える5つの論点を紹介したい。

① 隔離が必要か

今となっては、新型コロナで隔離する必要はない。実際、膨大な数の感染者がいることから、隔離は不可能な状態に陥っているが、家のなかで閉じこもっていなくても、外で唾液を飛び散らかせるような行為を行わなければ感染は広がらない。保健所の実施した多くの疫学調査の結果からも、会話時のマスクが徹底されている場合、感染の拡大は起きていないことが圧倒的である。

② 全数届出が必要か

 初期の頃は感染経路等の検証のためにも全数届出が必要であったが、新型コロナに関しては結核などと異なり感染拡大防止対策としての貢献度が低く、医療・公衆衛生の限られた人的・物的資源を有効に使うには、今となっては全数届出を止めるべきである。医療機関及び保健所における全数把握するための労力の多大さに比べ、得られる便益が低すぎる。また、全数届出であるが故に、万一クラスターが待合室や病棟等で起きれば、「バッシング」を受けることを恐れ、受け入れに消極的な医療機関すらあるはずである。一般的に、感染者数の多い感染症は全数届出でなく、定点医療機関からの届出により、地域別の流行状況の把握や変異等に関するモニタリングを行ない、情報提供している。この情報提供により、流行時にはワクチンの追加接種や会話時のマスク着用などの行動を地域住民に促すことが効果的であろう。

③ 保健所による直接の健康管理が妥当か

まず、最も厳しいエボラ出血熱等の1類感染症であっても、一義的に、感染症指定医療機関という医療機関の管理下において治療がなされる。そもそも、画像検査や血液検査、投薬が出来ない保健所が管理するより、医療機関が直接管理するほうが病状にあった迅速な処置や投薬が可能だ。特に、「自宅療養」という名目の「自宅放置」のもと、実際に死者が出たことは最悪の悲劇であり、保健所の健康管理下におかない方が良い。患者の希望により早期に適切な診断・治療が可能な、わが国の抜群のアクセスの通常の医療システムに戻さなければならない。わが国が優れているのは、CTも含む画像診断装置の普及をはじめとする地域医療の質の高さと、機能に応じた医療機関同士の役割分担と連携にあるからである。

④ ワクチン接種をどう考えるか

ワクチンには感染予防と重症化予防という、大きく分けて2つの効果がある。感染予防に期待が集まっているが、今回のコロナワクチンは重症化予防を目的に実施すべきものと私は考えている。新型コロナは封じ込めが不可能な病原体なので、「社会防衛」的に全員が接種することによる封じ込め効果は期待できない。そのためにも、個人の「接種しない」という判断は、得られる利益と副反応のバランスを勘案して許容されるべきで、接種しない者に対する差別は決してあってはならない。なお、高齢者をはじめ重症化リスクが高い人は重症化を防ぎ自らの命を守るためにワクチンを「個人防衛」として接種すべきで、当面の間、追加接種を継続的に実施していくべきであろう。

⑤ 医療費の公費負担をどう考えるか

5類相当になると通常の保険診療で3割自己負担となるから反対という考えもあるようだが、これは本質的な問題ではない。難病の医療費助成制度と同様に、例えば、まだ十分には解明されていない「後遺症」のデータを収集し治療研究を推進するという理屈であれば、当面の間、引き続き公費で助成していくこともありえるからである。
次回は、わが国における今後のあるべき戦略・戦術について、解説する。

山本光昭(やまもと・みつあき)
前 東京都中央区保健所長 / 現 社会保険診療報酬支払基金 理事

1984年3月、神戸大学医学部医学科卒業後、厚生省に入省。横浜市衛生局での公衆衛生実務を経て、広島県福祉保健部健康対策課長、厚生省健康政策局指導課課長補佐、同省国立病院部運営企画課課長補佐、茨城県保健福祉部長、厚生労働省東京検疫所長、内閣府参事官(ライフサイエンス担当)、独立行政法人国立病院機構本部医療部長、独立行政法人福祉医療機構審議役、厚生労働省近畿厚生局長などを歴任し、2015年7月、厚生労働省退職。兵庫県健康福祉部医監、同県健康福祉部長、東京都中央区保健所長を経て、2021年4月より現職。

東京歯科保険医協会 第50回定期総会 開催のご案内

東京歯科保険医協会第50回定期総会を下記の通り開催致します。

日時

2022年6月19()午後2時30分~6時00

定期総会 午後2時30分~4時15

記念講演 午後4時30分~6時00

「臨床の視点で金パラの代替について考える」

講師 坪田有史(東京歯科保険医協会会長)

 【抄録】

金銀パラジウム合金(以下、「金パラ」)の価格は、コロナショックによる素材価格の上昇、そして2022年に入ってウクライナショックにより、さらに上昇した。

2022年度診療報酬改定で歯科用貴金属価格の随時改定の仕組みが変更され、さらに急遽5月に改定が行われたが、素材価格が様々な因子によって上下動するため、根本的な解決とはならない。これらの問題から厚生労働省は、金パラの代替材料の保険適用を積極的に進めてきた。

 2014年度診療報酬改定では、小臼歯限定でCAD/CAM冠が保険収載され、その6年後の2020年には条件付きで上下顎第一大臼歯、そして前歯部までCAD/CAM冠に適用拡大され、またチタン冠が保険収載された。そして今回の2022年度改定では、CAD/CAMインレーが保険収載された。これらの「脱金パラ」の流れは、今後もさらに進むであろう。

今回、臨床例を交えて金パラの代替について考察する。

会場

中野サンプラザ 13階コスモルーム (住所:東京都中野区中野4-1-1

交通 中野駅北口より徒歩5分

 

総会議事

第1号議案  2021年度活動報告の承認を求める件

第2号議案 2021年度決算報告の承認を求める件付・会計監査報告

第3号議案 役員の件(顧問の承認)  

第4号議案 2022年度活動計画案の件

第5号議案 2022年度予算案の件

第6号議案 選挙管理委員承認の件

第7号議案 決議採択の件    

 

新型コロナウイルス感染症の感染防止に関わるお知らせ

以下に該当する方のご参加はご遠慮ください。

37.5℃以上の発熱がある方。

・体調のすぐれない方(味覚、嗅覚などの異常を含む)。

・新型コロナウイルス感染症「陽性」と診断されている方、または同感染症「陽性者」と診断された方と濃厚接触された方。

※昨年同様、感染症防止対策を十分に行います。

※ご出席の際は、マスク着用などご自身および周囲への配慮をお願い致します。

※定期総会後の懇親会は、新型コロナウイルス感染症の影響により昨年同様に開催を中止とさせていただきます。

※今後の感染拡大状況によって、定期総会の開催・運営に関して大きな変化が生じる場合は、当会ホームページもしくはデンタルブック等でお知らせ致します。

【この夏ご利用ください】夏季休診案内のご案内(2023年版)

 

▲卓上型 夏季休診案内

診療所などで使える夏季休診案内をご用意しました。壁に貼って使えるポスタータイプと受付に置いて卓上タイプがございます。

以下のPDFをダウンロード、プリントアウトの上、診療所の夏季休診にあわせてご利用ください。

また、郵送をご希望の方(会員限定)は、フォームからお申し込みください。

 

 夏季休診案内ポスター①

 

夏季休診案内ポスター②

 

夏季休診案内(卓上型)

東京歯科保険医新聞2022年(令和4年)5月1日

こちらをクリック▶東京歯科保険医新聞2022年(令和4年)5月1日 第626号

1面】

     1.在宅歯科医療の改定内容に限定/第3回新点数説明会を開催)

     2.保険請求時の留意点を指摘/第4回新点数説明会

     3.第50回定期総会案内

     4.講演の模様はオンデマンド配信中

     5.ニュースビュー

     6.「探針」

2面】

    7.レセプト記載要領の主な変更点

    8.22年度改定疑義解釈/咬合調整は改定前の状況に関わらず4月から算定可

    9.東京都知事および都議会各会派へ撤回を求める

    10.高点数による個別指導実施せず2022年度指導計画

3面】

    11.会員が見た診療報酬「私から見た歯科訪問診療の実際と診療報酬改定」(葛飾区・池川裕子)

    12.会員が見た診療報酬「DXの視点から見た診療報酬改定―メリットがあるのは誰?」(町田市・杉島康義)

    13.会員寄稿“声”「米国の人手不足 トヨタの賃上げ そして歯科は?」(練馬区・船木勝介)

    14.2022年診療報酬改定書籍「歯科保険診療の研究」お届けします

【4面】

    15.経営・税務相談Q&A No.392 これってパワハラ?「パワーハラスメント防止措置」の義務化

    16.IT相談室/インターネット取引(歯科材料、感染防止品)の注意点/(クレセル株式会社)

    17.法律相談、経営&税務相談

【5面】

    18.「点数変わらない」6割強/新点数説明会アンケート

    19.5月金パラが引き上げに ―銀合金、メタルコアおよび14Kも改定―

    20.Facebookご案内

【6面】

    21.インタビュー「ホワッと観て ホクっと… そんな映画でありたい」映画監督・平山秀幸さん

【7面】

    22.研究会・行事のご案内

    23.会員優待サービスご案内

    24.デンタルブックご案内

【8面】

    25.Special Serial No.3 「新型コロナウイルス感染症は転換期を迎えている」山本光昭氏(社会保険診療報酬支払基金理事)

    26.教えて!会長!!Vol.58

    27.東京歯科保険医協会公式サイト

【9面】

    28.症例研究/2022年診療報酬改定 CAD/CAMインレーの新設

【10面】

    29.連載/私の目に映る歯科医療界⑭(東洋経済新報社・大西富士男)訪問診療や女性医師増が歯科業界に構造転換迫る

    30.理事会だより

    31.協会活動日誌2022年4月

11面】

    32.4・21国会要請行動/渡辺・伊藤両衆議院と懇談実現―金パラ原価割れ解消も強く訴える

    33.電子書籍「デンタルブック」ご案内

    34.「保団情報サービス」ご案内

    35.共済制度ご案内

12面】

    36.現場の声で 5月に緊急改定/7月随時改定を待たずに引き上げを

    37.神田川界隈/今年度改定のご評価は?(本橋昌宏理事/荒川区)

    38.通信員便り No.121

    39.日本歯科評論 別冊「保険診療と歯冠修復」/2022年診療報酬改定関連書籍

【教えて!会長!! Vol.58】F局の適用拡大

― 今次改定でF局の対象が変更になりました。

坪田有史会長:「エナメル質初期う蝕(傷病名:Ce)」は改定前からの変更はありませんが、う蝕多発傾向者(傷病名:C管理中)の対象年齢が引き上げられ、判定基準が緩和されました。したがって、う蝕多発傾向者に対する指導である「フッ化物洗口加算(F洗)」の対象年齢は、「4歳から13歳未満」が「4歳から16歳未満」となりました。また、「フッ化物歯面塗布処置(F局)」の対象年齢も、「0歳から13歳未満」が「0歳から16歳未満」に引き上げられました。F洗、F局ともに乳歯や萌出直後の永久歯のう蝕抵抗性を高め、う蝕予防の効果に高いエビデンスがあります。F局の場合、歯科医師や歯科衛生士が多く扱っているフッ化物歯面塗布剤は、フッ化物濃度として9000ppmと高濃度といえます。とくに低年齢時の使用時には、急性中毒を避けるため、使用量に注意が必要です。例として小児の場合、1回の塗布に使用する薬剤の量は2gとされています。多くの歯科医療機関で問題ないと思いますが、今次改定を機会に院内でF局の実際の処置について確認することをお勧めします。一方、対象年齢と判定基準を覚えられない私の場合、治療スペースに「2022年改定の要点と解説」の41ページの表をコピーしていつでも確認できるようにしています。

― 初期の根面う蝕のF局については?

坪田:初期の根面う蝕のある患者へのフッ化物歯面処置は、2014年度(平成26年度)改定で在宅などでの療養患者に限られていましたが、今次改定で外来受診の場合でも歯管を算定した65歳以上の患者であれば算定可能となりました。この適用拡大は、2014年度改定時から長年、在宅療養患者だけでなく外来での患者にも認めるべきであると本会は厚労省に要望してきました。そのほか、保団連を始め、各団体の臨床現場の声が認められ、日本歯科医学会から提出される医療技術評価提案書にはない項目として適用拡大されました。このことは65歳以上の口腔内の健康維持を図り、健康寿命の延伸のために歯科診療を行なっている歯科医療機関にとって、評価できる適用拡大といえます。
我が国の高齢化は、さらに一層進みます。高齢者の根面う蝕の罹患率は高く、さらに年齢が高くなるにつれて根面う蝕が増加することには複数の報告があります。また、日本歯科保存学会の「う蝕治療ガイドライン 第2版」では、根面う蝕の対応として「欠損の浅い初期活動性根面う蝕の場合は、まずフッ化物を用いた非侵襲的治療を行って再石灰化を試み、う蝕を管理するよう推奨される」と記載されています。したがって、各高齢者の様々な口腔内の状況に対し、定期的なメインテナンスを行うにあたり、初期の根面う蝕が重症化しないように予防・管理のため、適切なF局による処置が必要と考えます。今次改定で評価できる項目の一つであるF局について、理解を深め、正しい運用によって患者のう蝕予防に役立てましょう。

             東京歯科保険医協会 会長 坪田 有史
(東京歯科保険医新聞2022年5月号8面掲載)

インターネット取引(歯科材料、感染防止品)の注意点

WEBに係る歯科関連の法令やトラブル対応などについて、
歯科専門にサイト制作、運用、コンサルディングを手掛ける専門家が解説する本連載。
今回はインターネット取引について―。

 近年は、消耗品(歯科材料や感染防止品など)を院内からネットで購入するケースが増えてまいりました。自宅で行う個人的な注文と同じ感覚でできてしまいますが、簡単だからこそ医療機関としての注意が必要です。
 まず、ネットで購入決済をするPCはインターネットに接続しますが、院内の他のPCにも接続されていないでしょうか?
 ネット購入用のPCは、購入時の自動返信メールも受信することになりますので、セキュリティに懸念があります。そのPCが患者の個人情報(極端な例ではレセコンやデジタルレントゲンなどの情報、治療予約の情報など)にネットワーク上で接続されていると、それだけで大きなリスクになります。診療用のネットワークと外部との接続可能なネットワークは、今すぐにでも切り離すべきです。
 ネット購入は、院長ではなく受付などの院内スタッフが定期的な業務として行う場合も多いですが、購入時の報告や在庫管理など徐々に面倒になり、スタッフに「丸投げ」になる事も注意が必要です。
 院内スタッフですから決済機能を悪用することは少ないと思いますが、丸投げゆえに「スタッフ個人の判断で購入を行った」などどちらが悪いとも言えないような医院運営上の問題が発生しかねません。
 誤操作による発注ミスや決算時に問題にならないため、在庫管理を徹底するための台帳の作成、情報の共有など後々のことを考えて管理体制を整えておくほうがより安全と言えます。

クレセル株式会社

(東京歯科保険医新聞2022年5月号4面掲載)

新型コロナウイルス感染症は 転換期を迎えている Special Serial No.3

PCR検査の意義や限界、目的が理解できていない

封じ込めは不可能であり、検査目的を再検討すべき

新型コロナの特性の把握や対応法も確立していなかった段階では、感染拡大防止のために「封じ込め」の可能性を意識して、無症状者も含めて検査を実施し、陽性者の把握、濃厚接触者の特定・行動制限などを実施することにはそれなりの合理性があった。

しかしながら、この2年にわたる知見の集積の中で、新型コロナに関しては、①人から猫などの動物にも感染し、再び動物から人に感染するという、変異を繰り返しながらの永遠のサイクルになること、②無症状や軽症のことが多いため、感染拡大しやすいこと、③ワクチンの効果が6カ月程度で減弱することなどから、反復してのワクチン接種や早期発見・隔離などを徹底しても「封じ込め」は不可能であること―が明らかとなり、検査の目的を再検討すべき時期に至っている。

PCR検査を絶対視する不可思議

病院における新型コロナ検査では、LAMP法やPCR法を同時に実施することも多い。すると、LAMP陽性、PCR陰性など、異なる結果が出ることがある。検体が正確に採取できていたかどうかによっても、結果が左右されるからである。例えば、インフルエンザ検査キットは、特異度は高く、結果が陽性であればほぼ感染していると言える反面、陰性であっても感染していないとは言い切れない。感染している人を正しく陽性と判定する割合を「感度」というが、インフルエンザ検査の感度は60%程度と言われ、新型コロナの検査も同程度と言われている。すなわち、見落とし(偽陰性)は多く、少数とはいえ〝濡れ衣(偽陽性)〟の可能性もある。その意味で、一つの検査を絶対視するのは不可解としか言いようがない。

さらに、検査の陽性はあくまでも、感染したという「結果」を確認しているにしか過ぎない。本来、感染しないための予防という「行動」こそが「感染拡大防止」につながるわけで、無症状者が検査陰性といって安心し、感染リスクの高い行為を重ねることこそ、感染拡大につながっているともいえる。すなわち、「陰性証明」の検査こそ、感染拡大につながっている可能性すら、ありうるわけである。

それでは、なぜ、今なお日本も含め、世界においても感染拡大防止につながると思い込み、無症状者も含めPCR検査や抗原検査が行われるのか。私は、日本だけなく世界でも、検査の意義や限界、目的が理解できていない人たちが発言し、それがそのまま鵜呑みにされている社会構造にあるのではないかと感じている。

今となっては診療の一環、治療目的と考えるべき

検査は本来、疾病の治療を目的に行うべきである。また、歯科医療も含め、通常の医療においては疾病診断にあたり、必ず複数の検査を実施し、総合的な判断のもと、治療を実施していく。

新型コロナが疑われる場合、まずウイルスのタンパク質をみる抗原検査、遺伝子をみるLAMP法やPCR法などの手法の異なる複数の検査を駆使し、ウイルスの活性状況を判定する。そして、会話時のマスク着用など、他者への感染の配慮の上で通常のように医療機関に通院してもらいながら、患者を的確に医療機関の管理下に置き、鎮痛解熱剤といった症状を和らげる薬なども処方し、症状が深刻であれば、血液検査やCTなどの画像検査を実施する。

一刻も早く通常の医療システムに戻すことが必要

このように様々な検査を駆使しながら、患者の重症化リスクを検討する一方、中和抗体療法や抗ウイルス薬投与などを考慮する。そして、重症化が想定される場合や酸素投与が必要な場合などは入院させ、免疫暴走により急激な悪化が起こった場合は、ステロイド剤を投与するといった治療を行うのである。

新型コロナの予防・診断・治療法が確立した今、一刻も早く、アクセスの良い通常の医療システムに戻すべきである。

次回は、新型コロナウイルス感染症のカテゴリー議論について、解説する。

山本光昭(やまもと・みつあき)
前 東京都中央区保健所長 / 現 社会保険診療報酬支払基金 理事

1984年3月、神戸大学医学部医学科卒業後、厚生省に入省。横浜市衛生局での公衆衛生実務を経て、広島県福祉保健部健康対策課長、厚生省健康政策局指導課課長補佐、同省国立病院部運営企画課課長補佐、茨城県保健福祉部長、厚生労働省東京検疫所長、内閣府参事官(ライフサイエンス担当)、独立行政法人国立病院機構本部医療部長、独立行政法人福祉医療機構審議役、厚生労働省近畿厚生局長などを歴任し、2015年7月、厚生労働省退職。兵庫県健康福祉部医監、同県健康福祉部長、東京都中央区保健所長を経て、2021年4月より現職。

インタビュー 平山秀幸 氏(映画「ツユクサ」監督)

2022.05.01 (6)平山秀幸氏(映画「ツユクサ」監督

©2022「ツユクサ」製作委員会 配給:東京テアトル 

4月29日(金・祝)全国公開

<キャスト>

小林聡美

平岩紙 斎藤汰鷹 江口のりこ

桃月庵白酒 水間ロン 鈴木聖奈 瀧川鯉昇

渋川清彦 / 泉谷しげる / ベンガル

松重豊

 

<スタッフ>

監督:平山秀幸  脚本:安部照雄  

音楽:安川午朗  主題歌:中山千夏「あなたの心に」(ビクターエンタテインメント)

過去のインタビューはこちら

#ツユクサ #映画 #歯科治療 #東京テアトル

東京歯科保険医新聞2022年(令和4年)4月1日

こちらをクリック▶東京歯科保険医新聞2022年(令和4年)4月1日 第625号

1面】

    1.新点数説明会開催(3月24日)

    2.過去最大 22年度予算成立/国家予算

    3.設立50年に向け前進を続ける(組織部長・福島崇)

    4.第50回定期総会案内

    5.在宅医療およびレセプト記載要領等の留意点を4月に

    6.ニュースビュー

    7.「探針」

2面】

    6.談話 都内全域への「子ども医療費助成制度」の拡充を求める(地域医療部長・横山靖弘)

    7.理事会声明 プラス改定を感じられない

    9.22年度診療報酬改定の主なポイント

3面】

   10.会員が見た診療報酬「関心を集めるCAD/CAMインレー導入に際して」(足立区・川本弘)

    11.会員が見た診療報酬「算定ハードル 導入コスト…小規模改定も中止が必要」(板橋区・小林顕)

    12.2022年3月31日限りで廃止となる主な経過措置医薬品一覧

    13.会員寄稿“声”「歯科医療に影を落とすウクライナ侵攻 金パラ使用の再考」(杉島康義・町田市)

    14.歯科診療報酬2022年改定特設ページ

【4面】

    15.オンライン資格確認の現状と注意すべき点

    16.法律相談、経営&税務相談

【5面】

    17.研究会・行事案内

    18.会員優待サービス

【6面】

    19.インタビュー「予防歯科の観点から目指す地域貢献」前厚生労働省医政局歯科保健課長・田口円裕さん

【7面】

    20.新型コロナウイルス濃厚接触 対応フローチャート

    21.新型コロナウイルス関連で申請できる助成金・支援金

【8面】

    22.Special Serial No.2 「新型コロナウイルス感染症は転換期を迎えている」山本光昭氏

    23.教えて!会長!!Vol.57

【9面】

    24.症例研究/2022年度診療報酬改定 一本化されたSPT

【10面】

    25.連載/私の目に映る歯科医療界⑬(東洋経済新報社・大西富士男)厳しい診療報酬改定に パラジウム等高騰と多難

    26.理事会だより

    27.協会活動日誌2022年3月

11面】

    28.窓口負担2割化中止求め 国会内集会に100人

    29.今年10月実施「75歳以上の窓口負担2割化」を中止させよう!

    30.春の募集キャンペーン中!この機会に、ぜひご加入ください!(共済部長・川戸二三江)

    31.診療所ホームページで患者が最も見ているのは?/クレセル株式会社

    32.「2022年改定の要点と解説」正誤表(2022年3月25日)

12面】

    33.第6回メディア懇談会/診療報酬改定 質問多数

    31.神田川界隈/2022年度診療報酬改定に思うこと(阿部菜穂 理事/江東区)

    32.通信員便り No.120

    33.第115回歯科医師国家試験 合格者は1969名

    34.罪なき人々を巻き込む戦禍 一刻も早い終息を願う

    35.理事会声明 ロシアのウクライナ侵略を断固非難する

【教えて!会長!! Vol.57】歯科初・再診料の増点

― 2022年度診療報酬改定で初・再診料が増点されましたね

坪田有史会長:歯科初診料の注1(以下「歯初診」)の届出医療機関は、歯初診の施設基準を満たす院内感染防止対策の現行の研修項目に、新興感染症への対応および標準予防策が追加され、基本診療料である初診料が3点、再診料が3点、それぞれ増点され、初診料が264点、再診料が56点となりました。他方、歯初診の未届出医療機関の場合、初診料240点、再診料44点と変更されませんでした。その結果、届出の有無による差は初診料で24点、再診料で12点とさらに点差が広がりました。この扱いは、厚生労働省として院内感染防止対策を推進する観点から、すべての歯科保険医療機関が歯初診の届出を行うことを目指していると理解できます。
初・再診料を1点ずつ上げるには約40億が必要とされていますから、初・再診料を上げるには多くの財源が必要です。なお、今次改定の歯科の改定率は、プラス0.29%で前回改定時の改定率のプラス0.59%と比較すると0.3ポイントも下回った値になりました。なお、プラス0.29%は、概算で約90億円と言われていますのでかなり財源的に厳しい状態です。そこで厚労省は、初・再診料を増点するための財源に、歯周基本治療処置(P基処)10点の廃止・包括分で充てたのです。財源が少ない中、仕方がないという見方もありますが、日常診療の点数を犠牲にしたことには疑問があります。

― そこまでして初・再診料を引き上げる理由は

坪田:長年、歯科側は、医科との基本診療料の格差是正を望んでいます。そこで、院内感染防止対策、および新興感染症への対策を理由として、18年度改定から今次改定まで、初・再診料の増点が行われています。なお、医科は21年から消費増税への対応のみの増点で、実質初・再診料は据え置かれています。しかし、未だ医科歯科格差は解消されていないのが現状です。
歯科初・再診料は、点数だけみると12年の初診料218点、再診料42点から、10年経過した今次改定で初診料264点、再診料56点と各46点、14点増点していますが、その内、初診料30点、再診料6点は、消費税率引き上げへの対応です。したがって、院内感染防止対策および新興感染症への対策のための今次改定までの増点は、初診料16点、再診料8点となります。

― それを聞くと、引き上げ幅が少ないような…

坪田:その通りです。10年間で院内感染防止対策および新興感染症への対策を理由とした増点は、初診料で16点、再診料で8点です。この増点を院内感染防止対策のコストに限ってみると、そのコストについては、2007年の中医協では、268.16円や、19年に中医協で出された意見が約568円ですから、実際にかかっている院内感染防止対策のコストに見合っているとは思えません。
結局、改定財源がなければ、院内感染防止対策のコストを十分に補完することはできません。したがって、「歯科医療費の総枠拡大」が進まなければ、希望は叶わないのです。
国民医療費に占める歯科医療費の割合は、私が歯科医師になった平成元(1989)年では10%ありました。それが30年後の令和元(2019)年では6.8%です。この間、高齢化が進んで国民医療費の全体が増加しましたが、その中で歯科医療費の割合が減少していったのです。もし、10%のまま維持できていたならば、現在の歯科医療費の3兆円は、4兆円になっていたはずです。今更ながら残念なことです。
しかし、過去は変えられません。よりよい未来にするために声をあげていきましょう。声が小さくても、集まれば大声になります。現在全国の協会とともに取り組んでいる署名を含め、協会活動にさらなるご理解、ご協力をお願いします。

             東京歯科保険医協会 会長 坪田 有史
(東京歯科保険医新聞2022年4月号8面掲載)

診療所ホームページで患者が最も見ているのは?

WEBに係る歯科関連の法令やトラブル対応などについて、
歯科専門にサイト制作、運用、コンサルディングを手掛ける専門家が解説する本連載。
今回は診療所のホームページについて―。

 歯科診療所の運営にインターネットを活用することは、今や「当たり前」と感じる方も多いのではないでしょうか。そして、その「常識」に本心ではついて行けない方から、よくこんな質問をいただきます。「診療所のホームページって、どこに力を入れれば効果があるの?」。ITの専門家ではない歯科医療従事者の方々は、煌びやかな競合医療機関のホームページを見て、頭を悩ませている方が多いようです。
 弊社の管理しているサイトのアクセス集計(アクセス数、ページごとのアクセス状況、サイト訪問時に検索したワードなど)を分析すると、ほとんどのサイトに同じ傾向がありました。トップページを除く歯科診療所ホームページで、最も見られているページに共通点があり、仮説を元にこのページを強化することで、効率よく患者さんへのメッセージを届けられます。
 最も見られているページとは、「診療所内装(設備も含めて)」「スタッフ」の2種類です。サイトに訪れた患者予備軍の方々は、必ずこの2ページを最初に開きます。これから通院する診療所が、「どんな場所」で「誰が」治療してくれるのか、この2点をほぼすべての人が最重要視していることがわかります。
 したがって、院内、スタッフの写真をできるだけ多く使用し(スマホでも綺麗に撮影できます)、自己紹介や患者へのメッセージを丁寧に掲載することで、「相手に寄り添ったメッセージ」を伝えることが可能です。ちなみに、自費治療のページは相対的に閲覧者が少ないことが一般的です。
 まず「どんな場所」で「誰が」治療するのかわかりやすく発信し、患者側の最初の審査を通過する必要がありそうです。

クレセル株式会社

(東京歯科保険医新聞2022年4月号11面掲載)

新型コロナウイルス感染症は 転換期を迎えている Special Serial No.2

飛沫感染防止のため 会話時のマスク着用の徹底を

保健所の疫学調査で得られた感染経路の知見

新型コロナの発生当初は、感染経路が必ずしも明らかとは言えず、飛沫感染や接触感染、さらには空気感染の可能性も言われた。そのため、感染予防対策として「ソーシャル・ディスタンス」や「三密対応」などが打ち出されたわけである。
しかしながら、保健所における膨大な疫学調査の印象では、圧倒的に多い感染経路は、マスクなしの会話など「唾」の飛沫が飛び交い、吸い込む場面であり、接触感染もありうるかもしれないが、空気感染の可能性はほぼ考えにくいということであった。
ところで、1990年代の前半、HIV感染症は当時確実に死に至るという恐怖の感染症であり、血液媒介のため、外科的処置を伴う歯科医療においては大きな課題となった。
それを乗り越えてきた歯科医療は、感染経路やメカニズムの理解とともに効果的な感染予防対策が徹底されていることから、医科や福祉・介護分野などとは異なり、新型コロナに関しクラスターが発生していない。

効果的な感染予防対策は

日本だけでなく、世界においても、最初の発生国における街中をマスク姿で歩く映像に感化され、追随してしまった。発生初期は、感染経路も明瞭でなかったので、仕方ない側面はあったとしても、現在に至っては、検査検体として使われる「唾」が感染原因であることから、街中を一人黙々と歩いていたり、公園で一人座っていたりして、感染することはありえず、マスクは不要といえよう。

 総花的な感染予防の限界

当初、唾液での検査は信頼性に乏しい、すなわち十分なウイルス量が採取できないとされ、鼻咽頭ぬぐい液にこだわっていたが、2020年6月には同等性ありとした。本来なら、この時点で「唾」が感染経路になることを強調すべきで、会話時におけるマスク着用の徹底に啓発をシフトすべきであった。「三つの密(密閉、密集、密接)」の回避や「人と人との距離の確保」「マスクの着用」「手洗いなどの手指衛生」などと十中八九感染予防対策をしているにもかかわらず、感染が拡大する一番の原因は、勤務時間外や休憩時間などの時間にマスクをせず気楽な会話を楽しむなどといった、自粛疲れや自粛慣れから、リスクの最も高い行為をしているためではないか。
現在の感染予防に関する啓発の最大の問題は、感染経路として高リスクと低リスクのものを総花的に同列扱いにしていることである。圧倒的なのは検査検体にも使う「唾」が飛び交い、吸い込むことであり、飲食店でアルコール消毒に検温して、人間心理として、十中八九対策をしているからと、マスクなしで会話を楽しむといった最も感染リスクの高い行為だけをして、感染という話となる。逆に、同一職場で感染者が勤務していても、執務中は会話時のマスクが徹底されるため、感染していないことが多い。
平熱であっても、検査陰性でも、ワクチン接種済みでも感染していることはあり、病原体を含む唾液を飛散させて他者にうつすことが多々あることから、「唾」のコントロールを意識してもらうほうが、はるかに重要である。

 効果的な対策で経済損失を抑える

ところで、「人の流れ(人流)」が「感染拡大」の要因と、一見、科学っぽい「数値解析」のミスリードにより、「唾」の飛沫感染を防ぐという「基本」が忘れ去られ、「風が吹けば桶屋が儲かる」的論理構成で、「飲酒感染」という感染経路が導き出された。本来、飲食店におけるマスク着用での会話の徹底、お店の定員削減や仕切り板の設置などの有効な予防策の推進ではなく、「営業時間短縮」という直接効果の乏しい方法に加えて、「禁酒」というとんでもない感染対策を実施し、休業補償の名のもとに莫大な税金が投入されている。
飲食店における感染予防には、例えば隣のグループの「唾」を吸い込むリスクを減らすためにお店の定員を半減させることなどの方が効果的と考えられ、その代わり、客の回転の倍増と営業時間延長を認め、経済的損失も抑えることが本来のあるべき対策であろう。
次回は、新型コロナウイルス感染症のPCR検査に対する誤解について解説する。

山本光昭(やまもと・みつあき)
前 東京都中央区保健所長 / 現 社会保険診療報酬支払基金 理事

1984年3月、神戸大学医学部医学科卒業後、厚生省に入省。横浜市衛生局での公衆衛生実務を経て、広島県福祉保健部健康対策課長、厚生省健康政策局指導課課長補佐、同省国立病院部運営企画課課長補佐、茨城県保健福祉部長、厚生労働省東京検疫所長、内閣府参事官(ライフサイエンス担当)、独立行政法人国立病院機構本部医療部長、独立行政法人福祉医療機構審議役、厚生労働省近畿厚生局長などを歴任し、2015年7月、厚生労働省退職。兵庫県健康福祉部医監、同県健康福祉部長、東京都中央区保健所長を経て、2021年4月より現職。

理事会声明「プラス改定を感じられない」

全体でみればプラスにならない

 今次改定では、かかりつけ歯科医機能、訪問診療及び医科歯科連携の拡充が行われ、わずかだが基礎的技術料が引き上げられた。しかし、歯科の改定率は+0.29%と近年まれにみる低い改定率となっており、初・再診料を引き上げるために日常診療の点数が犠牲になるなど、点数の付け替えが行われた。

 「一物二価」との批判のあった歯周病安定期治療の() ()が統合されたが、これまで歯周病安定期の治療に真摯に取り組んできた歯科医院の努力を置き去りにした改定の手法には納得がいかない。

 長期化する新型コロナウイルス感染症により、治療の中断あるいは受診を手控える状況が頻繁に起きている。その結果、徐々に患者が減少し、医院経営をあきらめざるを得ない会員も出ている。

 今次改定は、感染対策によりコストがかかる歯科医院経営からみて、不十分と言わざるを得ない改定である。

金銀パラジウム合金の原価割れが解消されていない

 金銀パラジウム合金(以下、金パラ)の原価割れの解消を求めて、協会は改善を求める署名を厚生労働省に提出した。今次改定では乖離幅に係らず3か月ごとに歯科用貴金属価格が改定されるほか、その元となる素材価格の参照時期のタイムラグが改定の3ヶ月前から2ヶ月前までに短縮される。タイムラグの短縮により市場価格との乖離は多少改善されるが、会員が求めていたのは原価割れが生じない仕組みである。

 今次改定で償還価格が1g当たり3,149円に引き上げられるが、ロシアによるウクライナ侵攻などによって特にパラジウムが高騰し、医療機関での金パラの購入額はこれを超えて赤字のままである。改定があっても赤字が解消されない異常事態だ。

 厚生労働省は、今次改定の附帯意見の中に、随時改定の見直し後の影響を検討することを盛り込まなかった。消極的である。まずは、7月の随時改定を待つことなく、早急な対応を図る必要がある。

 金パラの高騰で患者負担も増えるため、国が責任をもって金パラの配給を行うなどの対策を講ずるべきである。今次改定でレジン前装チタン冠が導入されたが、製作は鋳造に限られているため、鋳造欠陥が発生しやすい。粗悪な補綴物を提供できないため歯科技工士を悩ませている。また、チタンによるブリッジは保険適用外であり、レアメタルを含む金パラを使用することは、心も懐にも痛みを感じる。

 CAD/CAMインレーの導入も金パラの代替としての評価はするものの、金パラに比べ耐久性が劣る。再製作となればその分医療費が増えることや患者の信頼を損なうことに繋がる。

医科歯科連携や訪問診療の推進が小幅

 医科歯科連携では、総合医療管理加算の施設基準の廃止及び対象疾病にHIVを追加、ならびに医科が歯科に訪問診療を依頼する際の診療情報提供料()の加算の対象拡大などが行われた。しかしながら、総合医療管理加算の対象疾病の追加は1疾病のみ、さらに周術期等口腔機能管理料に関する推進策がないなど、改善は小幅である。

 訪問診療では、在宅療養支援歯科診療所2の施設基準の要件が引き下げられたが、訪問診療に取り組む医療機関を推進する策は示されていない。

総枠拡大をしなければ、歯科の展望は開けない

 今次改定で歯科改定率が0.29%と低値であったが、重要項目に十分な評価がされなかった。歯科が国民に果たす役割を発揮させるためには、相応の財源を確保した上で、評価の充実を行う必要がある。

 本声明は、歯科の低い改定率で不十分な評価がされていない問題を指摘し、根本的な問題である歯科医療費の総枠拡大を求めるものである。

 

2022年310

22回理事会

決議

 2022年度歯科診療報酬の歯科改定率は、僅か0.29%の引き上げに留まった。改定財源の確保のため、歯周基本治療処置、SPTⅡなどの点数の廃止ならびに点数の付け替えが行われた。今次改定では、院内感染防止対策をさらに推進するための初・再診料及び抜髄などの基礎的技術料の引き上げなど、個々では改善が図られているが、全体でみればとてもプラスを実感できる内容ではない。

 また、金銀パラジウム合金(金パラ)の原価割れの解消を目指し、歯科用貴金属価格の随時改定の仕組みが変更されるが、市場価格と保険償還価格の差額が発生するという根本的な問題は全く解消されていない。この不十分な対策をあざ笑うかのように、ロシアのウクライナ侵攻を起因としたパラジウムの著しい高騰を受け、既に多くの医療機関で原価割れに陥っている。適切な医療を提供するために公的資金を導入してでも価格の安定を図るべきである。

 一方、患者の受診状況は、コロナ禍も加わり、経済的な理由による治療の中断あるいは受診を手控える状況が多数起こっている。こうした状況の中、政府は今年10月から「75歳以上の医療費窓口負担2割化」を実施しようとしている。

 私たちは、診療報酬の引き上げとともに、患者負担増の中止及び患者窓口負担の軽減を求め、以下の事項を要望する。

一、歯科医療費の総枠拡大を行い、安心安全な医療を提供できるよう診療報酬を改善すること

① 歯科保険医の診療対価としての基礎的技術料を更に引き上げること

② 診療報酬の複雑すぎるルールを是正すること

 

一、金銀パラジウム合金の原価割れを公的資金導入により解消すること

 

一、「75歳以上の窓口負担2割化」の方針を撤回し、患者窓口負担を軽減すること

2022年3月 東京歯科保険医協会 新点数説明会

参加者一同

東京歯科保険医新聞2022年(令和4年)3月1日

こちらをクリック▶東京歯科保険医新聞2022年(令和4年)3月1日 第624号

1面】

    1.初・再診料3点引き上げ/中医協 診療報酬改定答申(2月9日)

    2.パブリックコメント688件/半数が歯科医師/厚労省

    3.高点数個別指導開催求める/厚生局

    4.ニュースビュー

    5.「探針」

2・3面】

    6.2022年改定特集/歯科診療報酬改定のポイント

    7.歯科診療報酬2022年改定特設ページ/バナー

    8.談話「大多数の保険医はがっかりしている」/松島良次

【4面】

    9.経営&税務相談Q&A No.391

    10.マイナポータル「利用規約」を読み解く~3つの点に着目~

    11.春の共済募集キャンペーン(休保制度・グループ生命保険・保険医年金)

【5面】

    12.研究会・行事案内(2022年度診療報酬改定新点数説明会)

    13.電子書籍デンタルブック

    14.ご紹介ください!/組織部ご案内

    15.会員優待ご案内

【6・7面】

    16.インタビュー「ダイヤモンド・プリンセス号から学ぶ教訓」前厚生労働省健康局長・正林督章さん

【8面】

    17.中央社会保険医療協議会 個別改定項目/2022年診療報酬改定

    18.教えて!会長!!Vol.56「CAD/CAMインレー」

【9面】

    19.症例研究/大臼歯のチタン冠

【10面】

    20.連載/私の目に映る歯科医療界⑫(東洋経済新報社・大西富士男)過去に類なき異例事態が医療界で勃発

    21.理事会だより

    22.協会活動日誌2022年2月

11面】

    23.第50回保団連大会/総勢343名集う 文書・口頭発言は151件

    24.ネガティブな口コミへの対応策No.3/クレセル株式会社

    25.東京反核医師の会 総会開催

    26.高齢者の窓口負担 2割化中止を求め国会内集会開催

    27.乳腺外科医の裁判/最高裁が有罪判決破棄

    28.75歳以上窓口負担2割化の中止を/署名にご協力を

    29.法律相談、経営&税務相談

12面】

    30.通信員便り No.119

    31.神田川界隈/DXは何だろう?(岡田尚彦/世田谷区)

    32.濃厚接触者に抗原検査キット無料配布

    33.確定申告・個別相談会を開催

    34.保険医年金予定利率変更に伴う年金受給のご注意/保険医休業保障共済保険制度 改善のお知らせ

第115回歯科医師国家試験の合格者は1,969名

合格率は全体で61.6%

新卒のみは1,542名で77.1%占める

厚生労働省は316日、第115回歯科医師国家試験の合格者を発表した。試験そのものは本年12930日の2日間にわたり、東京都他7会場で実施されている。

◆合格者は2000名を割る

今回の歯科医師国試は、全体では出願者数3,667名(うち、新卒者は2,413名)、受験者数3,198名(同1,999名)、合格者数1,969名(同1,542名)となっており、合格率は全体で61.6%、新卒のみで見ると77.1%となっており、合格者数は2018年の第111回国試から2021年の第114回国試まで、4年続けて2000名を上回っていたが、ここに来て2022年の第115回国試は2000名を割る結果となった。また、全体の合格率は前回の64.6%よりも3.0ポイント低くなっている。

なお、今回の合格発表は、前回に引き続き、新型コロナウイルス感染症対策のため、厚労省2階大講堂での名簿閲覧は中止された。

◆女性の合格者

一方、合格者数を男女別に見ると、第115回国試は合格者1969人のうち女性合格者は904名で全合格者の45.9%を占めている。女性の占める率のみを遡ってみると、114回:42.0%、113回:42.3%、112回:42.5%、111回:43.0%となっており、第115回は過去5年間で最も高い比率で増加傾向を示している。

◆今回の国試の合格基準

なお、厚労省が明らかにしている今回の第115回国試の合格基準は以下の通りである。

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115 回歯科医師国家試験の合格基準は、一般問題(必修問題を含む)を11点、臨床実地問題を13点とし、

① 領域A(総 論) 59点以上/ 99

② 領域B(各論106点以上/162

③ 領域C(各論131点以上/209

④ 必 修 問 題 64点以上/ 80

但し、必修問題の一部を採点から除外された受験者にあっては、必修問題の得点について総点数の80%以上とする。

※第115回歯科医師国家試験合格者発表に関する厚労省ホームページは以下を参照。

115回歯科医師国家試験の合格発表について.pdf

【教えて!会長!! Vol.56】CAD/CAMインレー

― 4月の診療報酬改定でCAD/CAMインレーが保険収載されますが。

坪田有史会長:本紙2・3面(※)に、2022年度診療報酬改定の主なポイントを掲載しました。その内容は、本稿の執筆時点と同じく、2月9日の中医協総会で「答申」が佐藤英道厚生労働副大臣に提出された段階のものです。なお、3月24日開催予定の第1回新点数説明会の前に本会会員に送付させていただく「2022年改定の要点と解説」を全国の協会・医会の担当者・事務局員とともに、現在、鋭意作成中です。今次改定の新規項目や変更点を分かりやすく解説し、会員の先生方の理解が深まる内容となるよう議論し、編集を進めております。今しばらくお待ちください。
なお、今次改定で新たに保険収載されるCAD/CAMインレーについて、すでに協会や私にも多くの質問が寄せられており、注目されている項目といえます。臼歯部1歯につき技術料は750点ですが3月上旬に保険医療材料、すなわちCAD/CAMインレー用に使用できるレジンブロックの材料料が通知されるため、現時点では合計点数は示すことができません。また、拘束力はありませんが、大臣告示(1988年5月)による歯科技工士の製作技術料7割、歯科医師の製作管理料3割からみると、歯科技工士への委託製作技工料は5250円となり、歯科医師側は2250円になります。歯科技工士に委託しないで歯科医師自身がレジンインレーを製作すれば、レジンインレーの複雑な点数が、改定後も材料料が同じと仮定すると、今次改定で220点(2200円)と同等になります。厚労省の担当者は、そこまで考えて技術料を決めているのでしょうか。
現在、特定保険医療材料の機能区分として、CAD/CAM冠用材料は小臼歯部、大臼歯部および前歯部により、ⅠからⅣまでに区分されていますが、CAD/CAMインレー用材料がどの区分のレジンブロックを使用できることになるかは、まだ分かりません。一方、すでに市販され、保険治療で使用されているCAD/CAM冠用のレジンブロックの複数製品の添付文書を調べると、多くの製品で使用用途に「インレーの歯冠修復物」の記載があります。すべての市販の製品は調べられませんでしたが、保険医療材料の多くの製品がすでに「インレーの歯冠修復物」として薬機法の承認を得ていると推測されます。

※参照=東京歯科保険医新聞3月号

― 関連する点数を。

坪田:3月の通知を待たなければいけませんが、歯冠形成は修形120点、あるいはKP「単純なもの」60点、「複雑なもの」86点、印象採得料は、連合印象で64点、咬合採得料は18点、装着材料料と現行のメタルインレーやレジンインレーと同じと考えられます。装着時の装着材料料は、歯科用合着・接着材料Ⅰ(接着性レジンセメント)になるので17点、装着料45点に加え、装着前に接着面に対して内面処理(アルミナ・サンドブラスト処理とシランカップリング処理)を行った場合、内面処理加算1.45点が算定できます。余談になりますが、この内面処理加算1は、今次改定でCAD/CAD冠、高強度硬質レジンブリッジ、そしてCAD/CADインレーのみで認められることになりますが、レジンインレー、硬質レジンジャケット冠の装着時にも通常行っている処理なのに、これらの修復物には算定が認められていない点には疑問があります。認めないのならば、その理由を明確に示すべきです。

― 窩洞形成での形成量はどうなりますか。

坪田:特定非営利活動法人日本歯科保存学会が医療技術評価提案書(保険未収載技術用)で「CAD/CADインレー修復」を作成し、昨年6月に日本歯科医学会から厚労省に提出されました。したがって、通称「学会ルート」による保険収載となります。その提案書には、「従来通りの間接法による2日法および口腔内スキャナーでの光学印象採得で行う1日法も可能である」と記載されています。すなわち、「CAD/CADインレー」と併せ、口腔内スキャナーによる光学印象採得の保険収載も希望した文章になっています。
ご質問の窩洞形成での形成量は「レジンインレーと同様にインレー歯冠形成を行い…」と記載されているのみです。レジンインレーに使用する材料よりも既存のCAD/CAD冠用レジンブロックの機械的強度は高いので、レジンインレーよりも形成量が少なくて済むことはあっても、増えることはないでしょう。なお懸念される歯髄症状に対しては、その対策として有効な象牙質レジンコーティングが、歯冠形成の生PZのみでの算定で、修形やKPでは算定できず、窩洞形成後に象牙質レジンコーティングを行っても無償サービスとなることは問題です。
歯学教育の教科書である「保存修復学21 第3版」(永末書店)のコンポジットレジンインレー修復の章には、「メタルインレー修復窩洞よりも深めに形成し、小窩部で1.5mm、インレー体に平均2mmの厚みを持たせる。特に、Ⅱ級窩洞ではイスムス部で破折しやすいので、十分な厚みを与える」と記載されています。なお今まで保険に新しい技術が収載された際は、日本歯科医学会から臨床指針が発表されています。したがって、4月の改定時前後にCAD/CADインレーの臨床指針が示されると思われますので、参考にしてください。

             東京歯科保険医協会 会長 坪田 有史
(東京歯科保険医新聞2022年3月号8面掲載)

ネガティブな口コミへの 対応策 No.3

WEBに係る歯科関連の法令やトラブル対応などについて、
歯科専門にサイト制作、運用、コンサルディングを手掛ける専門家が解説する本連載。
今回は「ネット上の口コミについて」の3回目―。

 Googleの口コミに書かれた悪評に、どう抗うかが今回のポイントです。
 一番良い方法は「気にしないこと」です。悪い口コミが多い歯科医院で盛況なところはいくらでもあります。口コミを見ないで医院を選ぶ方がとても多く、匿名の口コミを信用しないネットリテラシーを持った人も増えてきました。したがって、医院経営に一番メリットの多い対応方法は「気にしないこと」です。
 しかしながら、悪評口コミは医院運営者の精神を蝕みます。そこで、簡単にできる対応方法を解説いたします。Googleの口コミは「Googleマイビジネス」という店舗情報の管理画面から「返信」が可能です。悪評は情緒的で誇大表現をしている場合が多く、院内でそのようなことが行われていない旨を理路整然と説明し、その口コミを「ただのクレーマー」にすることができます。
 返信の最後には「誤解があるようでしたら一度医院へお越しください。納得いくまでご説明させていただきます」と書けば、その後のリアクションはなくなるどころか、その返信を見た第三者は診療所の真摯な姿勢を評価するのではないでしょうか。
 事実として、返信をこまめに誠実に書いている医院の口コミは概ね良い評価ばかりになっていきます。これは悪評対策でもあり、良い評価を集める表裏一体の方法と言えます。Googleの口コミは、慌てず気にせず、もし評価が気になるようであれば返信機能の活用がおすすめです。

クレセル株式会社

(東京歯科保険医新聞2022年3月号11面掲載)

新型コロナウイルス感染症は 転換期を迎えている Special Serial No.1

当たり前と思っていた「日常」を「昨日の世界」に変えてしまった新型コロナウイルス感染症(COVID―19)は、私たちの「明日」と「未来」をも奪うのであろうか・・・。岐路に立たされている「現在」において、このウイルスの特性や感染力、各種の検査、日本の感染状況、そして出口戦略などの様々な側面について、医師で保健所長として豊富な経験と知見を持ち、現在は社会保険診療報酬支払基金理事を務める山本光昭氏にご寄稿いただく。

日本国内の初感染事例は2020年1月

新型コロナの日本国内での初感染事例は2020年1月に確認された中国からの観光客を乗せたバスの運転手で、同年2月には国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがあるとして感染症法の指定感染症とされた。中国の武漢で発生した当時、感染者の約5%が亡くなると言われ、空気感染もあるのではと感染経路も必ずしも明らかではなく、致死率の高い恐怖の感染症と考えられたためである。

当時と現時点における「致死率」の比較

上記の表は、公表データより各時点における累計者数を確認し、ある期間の新規死亡者数を同期間の新規感染者数で割るということで、筆者が独自に算出してみた東京都における致死率の推移である。個々の症例の転帰から算出したものではないが、2020年4月に東京都で初めての緊急事態宣言が出された期間の致死率は約6・5%とほぼ武漢なみとなっているが、その後の緊急事態宣言以降は、新規感染者数に対する新規死亡者数の割合(致死率)は激減し、オミクロン株の流行が始まった2022年1月以降では、約0・06%である。
このように致死率が下がってきた要因は、検査体制の拡充により陽性者の把握がかなり実数に近づいてきたことと、ワクチンの開発とともに治療法が確立し重症化や死亡者を減らすことが可能となってきたためと考えられる。

恐れることなかれ ただし侮ることなかれ

この2年近くの保健所における疫学調査により、感染の主たる経路も、会話などで唾液が飛び散り、それを吸い込むことによる感染が圧倒的に多いことがわかり、接触に関しては感染経路でありうるが、空気感染に至ってはかなり可能性が低い。また、診療や研究開発の知見の膨大な蓄積により、ワクチンや抗ウイルス薬の開発、重症化へのリスク評価法やステロイド薬の投与など重症化予防や治療法も確立してきた。
すなわち、致死率が高く、予防法も治療法もよくわからないという発生当初の状況からは大きく変わってきている。新型コロナウイルス感染症は、もはや「恐怖の感染症」ではなく、社会経済活動を正常化しながら、「恐れることなかれ、ただし侮ることなかれ」という転換期を迎えているといえよう。
次回以降、日本をはじめ世界も含めて、新型コロナウイルス感染症の感染予防対策やPCR検査などに対する誤解、わが国における今後のあるべき戦略などについて、解説していく。

 

 

感染拡大抑制のための社会的介入 新規感染者数 新規死亡者数 致死率
第1回 緊急事態宣言期間
(2020年4月7日~5月25日) 3,941人 257人 約 6.5%
第2回 緊急事態宣言期間
(2021年1月8日~3月21日) 45,918人 962人 約 2.1%
第3回 緊急事態宣言期間
(2021年4月25日~6月20日) 33,903人 321人 約 0.9%
第4回 緊急事態宣言期間
(2021年7月12日~9月30日) 193,276人 664人 約 0.3%
今回 オミクロン株による感染拡大
(2022年1月1日~2月23日) 558,222人 352人 約 0.06%

山本光昭(やまもと・みつあき)
前 東京都中央区保健所長 / 現 社会保険診療報酬支払基金 理事

1984年3月、神戸大学医学部医学科卒業後、厚生省に入省。横浜市衛生局での公衆衛生実務を経て、広島県福祉保健部健康対策課長、厚生省健康政策局指導課課長補佐、同省国立病院部運営企画課課長補佐、茨城県保健福祉部長、厚生労働省東京検疫所長、内閣府参事官(ライフサイエンス担当)、独立行政法人国立病院機構本部医療部長、独立行政法人福祉医療機構審議役、厚生労働省近畿厚生局長などを歴任し、2015年7月、厚生労働省退職。兵庫県健康福祉部医監、同県健康福祉部長、東京都中央区保健所長を経て、2021年4月より現職。

金・パラジウム等の価格が高騰

国内の金の価格が、過去最高値を更新している。田中貴金属工業は2月28日、金小売価格の指標となる1グラム当たりの販売価格(税込み)を前週末より20円値上げして7847円と決めた。

またパラジウムも高騰している。パラジウムは産出量の4割をロシアが占めており、1月には価格が2週間で2割超上がっている。

ロシアによるウクライナへの軍事侵攻に絡み、各国がロシアに対し措置を講じることと、それに対抗してロシアが核戦力をちらつかせていることが不安視され、金やパラジウムをはじめ、様々なコモディテー価格が高騰している。

医学部合格率、初めて男女逆転 国公私立大の半数超で

 文部科学省は、2021年度の大学医学部(医学科)入学者選抜における合格率を発表。女性が13.60%、男性が13.51%で、データが残る13年度以降で初めて女性の合格率が男性を上回った。調査対象は、医学部医学科を有する全国81校の国公私立大学。合格率が女性の方が高かったのは、北海道大学、名古屋大学、広島大学、長崎大学など42校で対象校の半数を超えた。

 18年に女性の受験生に対する入試差別が発覚した後、文科省は2012月に医学部の男女別合格率を毎年調査することを決定。19年度は男性12.11%、女性11.37%、20年度は男性12.56%、女性11.42%と推移していた。

東日本大震災から11年~被災者支援の現在地~

 間もなく迎える3月11日、東日本大震災からは11年の時が経とうとしている。依然として復興への道のりは長く、全国の避難者数は3・9万人(復興庁発表、1月28日現在)にのぼり、福島第一原子力発電所の廃炉作業、避難指示が解除された地域への住民の回帰など、課題は山積している。

 昨年3月末、住民税課税世帯に対する医療費免除制度の期限を迎えた。非課税世帯についても同年12月までで制度が終了した。延長されていた国民健康保険や後期高齢者医療保険、協会けんぽ他の加入者のうち、原発事故により現に帰還困難区域に指定されている人などを対象とする免除措置についても、今年2月28日までとしている。

 被災者の生活再建にあたり、経済的負担を軽減させること、十分な医療を受けられる環境を整えることは、決して疎かであってはならない。