広報・ホームページ部

年末年始休診案内ポスター

年末年始休診日 案内ポスターのご案内

年末年始の休診日にご使用いただける『休診日案内』をご用意いたしました。

ご入用の方は、お好みのデザインをダウンロードのうえご使用ください。

郵送をご希望の方は、お電話でお申し込みください(03-3205-2999)。

 

以下よりPDFをプリントアウトもできます。卓上型は組み立ててお使いください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

▶こちらをクリック 年末年始休診日のお知らせポスター(A4サイズ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

▶こちらをクリック 年末年始休診案内①(卓上型)

 

▶こちらをクリック 年末年始休診案内②(ハブラーシカ卓上型/ピンク)

▶こちらをクリック 年末年始休診案内③(ハブラーシカ卓上型/ブルー)

東京歯科保険医新聞2022年(令和4年)10月1日

こちらをクリック▶東京歯科保険医新聞2022年(令和4年)10月1日 第631号

【1面】

   1.オンライン資格確認システム/「義務化」は撤回を
   2.75歳以上の負担割合2割化「複雑すぎる」と困惑の声
   3.10月23日(日)!「保険医協会健康まつり2022」
   4.活用方法いろいろ/資料請求はこちら
   5.「探針」
   6.ニュースビュー

【2面】

   7.理事会声明/オンライン資格確認システム導入の義務化撤回を
   8.「オン資」加算点数の変更点/問診票の整理やHP等への掲載が必須に
   9.会員寄稿「声」“オン資”システム導入義務化の行く末/杉島康義氏
   10.延長/【ご協力ください】“オン資”の「義務化」撤回を求める署名・「義務化」に関する署名
   11.共済研究会 2つの側面からの保障が肝心「公的保障と控除を活用した節約術」
   12.電子書籍「デンタルブック」

【3面】

   13.75歳以上の窓口負担2割化/窓口対応の注意点
   14.東京都福祉保健局に要請/コロナ対応・都立病院独法化など8項目
   15.要請/東京都議会 各会・党 要請内容に理解を示す
   16.集団的個別指導が2ぶりに実施/指導になっても委縮診療の必要はない
   17.協会初/院内感染対策講習会 オンラインで開催/新興感染症への対応含め講習
   18.社保研究会/高点数による指導の心配は不要 適切な「請求」と「カルテ」重要

【4面】

   19.経営・税務相談Q&A No.397「税務調査 傾向と対策」
   20.IT相談室/“どうしても気になる”検索順位…SEO対策 Vol.1/自院のランク付けとどう向き合う?(クレセル株式会社)
   21.研究会・行事のご案内①
   22.会員優待のご案内

【5面】

   23.研究会・行事のご案内②

【6面】

   24.東洋経済新報社・大西富士男氏インタビュー「歯科は“ディスインフレーション”状態」

【7面】

   25.【Special Serial No.1】社会保険診療報酬支払基金の概要と審査に係る取組み/適正なレセプト請求に向けて 山本光昭氏(社会保険診療報酬支払基金 理事)
   26.保険医協会健康まつり2022

【8面】

   27.協会史を振り返り現在・未来を見つめる Vol.4/「民主党政権下における医療費底上げと配分見直し政策の登場」中川勝洋氏
   28.教えて!会長!!Vol.63
   29.東京歯科保険医協会Facebookご案内

【9面】

   30.症例研究/充填時の築造と高強度硬質レジンブリッジ

【10面】

   31.連載/歯科界への私的回想録①(オクネット・奥村勝氏)「1枚のハガキに募る感謝の思い」
   32.理事会だより
   33.法律相談、経営&税務相談のご案内
   34.協会活動日誌/2022年9月

【11面】

   35.CNNポルトガルから取材受ける/原水爆禁止2022年世界大会/「平和へのメッセージ 全世界へ」
   36.インボイス制度の正体【前編】制度の概要と影響
   37.通信員便り No.126
   38.共済部だより/10月25日までにお申し込みください!

【12面】

   39.第3回メディア懇談会/“オン資”は「患者メリット感じない」メディアから意見続々―
   40.神田川界隈/保険医協会のサポート体制を十分活用してますか!?(横山靖弘理事/港区)
   41.新春号特別企画のご案内
   42.金銀パラジウム合金等引き下げに/銀合金、メタルコアおよび14Kも改定

【13・14面】

   43.共済チラシ

“どうしても気になる”検索順位…SEO対策 Vol.1 自院のランク付けとどう向き合う?

WEBに係る歯科関連の法令やトラブル対応などについて、
歯科専門にサイト制作、運用、コンサルディングを手掛ける専門家が解説する本連載。
今回はSEO対策について―。

 9月13日にGoogleの検索結果の順位(例えば、地域名と歯医者などと検索した場合に表示される順番のこと)が大幅に入れ替わる可能性のある改修(アップデートと呼ばれる)が行われました。そこで今回は、「SEO」と呼ばれる「検索サイトの最適化」について考えてみます。
 営業電話等で「おたくのホームページは順位が低いので月額○○万で上位にしますよ」という内容を聞いたことがある方は多いのではないでしょうか。検索サイトの順位向上は、すでに20年以上も前から試行錯誤が繰り返され、専門業者を名乗る企業も雨後の筍のごとく乱立していました。
 近年では、SEO業者に支払う費用をGoogle広告に支払ってほしいという思いなのか、2012年7月頃から人為的に検索順位を操作することが困難になりました。結果としてSEOをサービス事業のメインにしていた業者は、「Googleマップの表示順位を上げます」(このサービスも現在は順位が上がらなくなってきています)となり、その後は「口コミの削除を行います」(簡単に消すことはできません)などと看板を差し替え、手を変え品を変えて勧誘電話をかけてくるようです。検索順位で競合する他院よりも下になると、「自分の診療所が下のランクになった」ように感じる方や、上位の診療所にはさぞたくさんの新患が来院しているのではと思われる方も多く、どうしても気になるようです。しかし、実際には、毎日変わる検索順位が診療所の格付けになることはありませんし、上位にランクインしても診療所には「通院できる距離」というビジネスの縛りがあるので、思ったほど順位が患者数に大きく影響することはありません。
 一番良いのは検索順位など気にすることなく、素敵な診療所づくりに注力することですが、相談内容のトップ3に必ずこのSEOが入ってきますので、次回はもう少し細かくSEOについて考察していきます。

株式会社クレセル

(東京歯科保険医新聞2022年10月号4面掲載)

Special Serial No.1 社会保険診療報酬支払基金の概要と審査に係る取組み 適正なレセプト請求に向けて


―はじめに

本連載では、社会保険診療報酬支払基金の概要とともに、特に、皆様とのご縁が深い審査支払業務に関し、適正なレセプト請求に向けての私見もあわせて紹介させていただきます。

―支払基金の位置づけ

戦前と戦後すぐの時期は、「歯科医師会」が歯科の審査支払業務を担ってきましたが、1947(昭和22)年に当時の歯科医師会は解散させられ、混乱が生じたため、1948(昭和23)年に新たに審査支払業務を担う「特殊法人」として支払基金が発足。その後、行政改革の一環の中で2003(平成15)年に「特別の法律に基づく民間法人」へと移行しています。
支払基金の特徴は、診療担当者代表、保険者代表、被保険者代表、公益代表から同数ずつの役員で構成されている「中立の第三者機関」という点です。一時、国民健康保険(国保)の審査支払業務を行っている各都道府県の「国民健康保険団体連合会(国保連)」およびその中央組織の「国民健康保険中央会(中央会)」と、支払基金を統合すべきという議論が起こりました。
しかしながら、国保連や中央会の役員構成は主として首長という「保険者」そのものであって、組織体としては「中立の第三者機関」という性格ではありません。また、審査支払業務以外の業務は両者で大きく異なり、現在では審査支払システムの共同開発や審査基準の統一など、審査支払業務を中心に連携を図っているところです。

―支払基金の業務の概要

表1に示すとおり、主な業務としては、①審査支払に関する業務、②保健医療情報の活用に関する業務、③保険者等との財政調整等に関する業務―の3つがあります。
支払基金発足以来、皆様とのご縁が深いのが、いわゆる「社保」のレセプトの審査支払業務で、近年ですと、新たに「オンライン資格確認等システム」の運用など歯科医療現場におけるDXの一翼を担うこととなり、顔認証付きカードリーダーの導入などでも皆様とのご縁が深くなってきています。

次回以降、審査支払に関する業務の概要、審査結果の都道府県間の不合理な差異解消に向けての取り組み、適正なレセプト請求に向けてご留意いただきたいこと、審査結果(査定)に対する疑問等への対応について、紹介させていただきます。

表1.社会保険診療報酬支払基金の主な業務

①審査支払に関する業務  主として被用者保険(いわゆる「社保」)における診療報酬の適正な審査と迅速な支払を行っています。審査においては、医学・歯科医学的な観点を踏まえ、保険診療(診療報酬点数表、療養 担当規則等)に適合するかどうかを確認しています。さらに、「紛争処理機関」として、医療機関や保険者から申し立てがあった場合には、再審査を行っています。
② 保健医療情報の活用に関する業務
オンライン資格確認等のシステムの運用、電子処方箋管理サービスの開発、健康スコアリングレポートの作成、データヘルスポータルサイトの運営、NDBの受託業務などを行っています。データヘルス改革の確立に貢献する役割を担っており、今後、医療におけるビッグデータ分析、医療DXの中核機関としての役割が期待されています。
③ 保険者等との財政調整等に関する業務 日本の公的医療保険は、健康保険、国民健康保険、後期高齢者医療等に分かれており、医療費が増嵩しやすい高齢者の割合が大きい保険者は財政が厳しくなる状況にあります。そのため、保険者間の財政調整が法律で定められ、法律に基づき、財政調整業務を行っています。また、特定健診等の決済代行、特定B型肝炎ウイルス感染者給付金等の支給などの業務も行っています。

山本光昭 / 社会保険診療報酬支払基金 理事

やまもと・みつあき 1984年3月、神戸大学医学部医学科卒業後、厚生省に入省。横浜市衛生局での公衆衛生実務を経て、広島県福祉保健部健康対策課長、厚生省健康政策局指導課課長補佐、同省国立病院部運営企画課課長補佐、茨城県保健福祉部長、厚生労働省東京検疫所長、内閣府参事官(ライフサイエンス担当)、独立行政法人国立病院機構本部医療部長、独立行政法人福祉医療機構審議役、厚生労働省近畿厚生局長などを歴任し、2015年7月、厚生労働省退職。兵庫県健康福祉部医監、同県健康福祉部長、東京都中央区保健所長を経て、2021年4月より現職。

歯科界への私的回想録 【NARRATIVE Vol.1】1枚のハガキに募る 感謝の思い/奥村 勝

専門紙記者から見えた先天性の歯科疾患

 私は1954年に口唇口蓋裂児として生を授かり、歯科界に身を置き現在に至っています。まさに歯科界にお世話になっている人間です。歯科専門紙記者として、齲蝕、歯周病、義歯、インプラントなどの関連学会ほか、日本歯科医師会代議員会、日本歯科医師連盟評議員会、日本学校歯科医会評議員会、日本歯科技工士会代議員会(当時)、厚生労働省の関係有識者会議、中医協などを取材してきました。当然ですが、日本口蓋裂学会の存在は承知していましたが、専門紙の読者は関心がありませんし、社内の編集会議でも話題になることはありませんでした。先天性の歯科疾患は、一部の専門の歯科医師が携わる特殊な分野で、一般的な歯科医師からは関心外に置かれていると痛感しました。

丹下一郎先生のこと

 母は16年1月に乳がんで亡くなりましたが、遺品を整理している中で、1枚のかなりの年月を経たと思われるハガキが目に留まりました。私の口唇口蓋裂を執刀した丹下一郎先生(当時/東京大学医学部形成外科、現在/順天堂大学名誉教授)からのものでした。その一文に「わたくしは今後とも、顔かたちの変形に悩む方々をお救いすることを一生の念願とし、あなた方の友として診療を続けて参りたいと思っています」とありました。先生の患者に対しての医療人としての率直な優しい思いが伝わりました。
 私自身、瘢痕がある顔貌でここまで年月を重ねて来ましたが、特別イヤな思いは、正直なところ“ゼロ”ではなかったですが、気持ちの中で苦悩した記憶はありません。

母の自責の念

 一方で、この瘢痕のことを母に質問することはしなかった、というより敢えて避けてきたのかもしれません。というのも、口唇口蓋裂児を生んだ母親は、「私が悪かった、妊娠中にもう少し注意していれば、本人に一生辛い思いをさせることはなかったのに」「できるなら、私が代わってあげたい。本当に申し訳ない」といった自責の念にとらわれた言葉を吐露していることを、日記から知っていました。そのことを思うと、問いただすようなことをしては、母に「やはり勝は、私を責めている」と思われはしないかと察し、自然に“事実を受け入れて普通に生活すればいい”と思ったのです。

最善を尽くしての治療

 こうした経緯の中で、少なくともハガキの文面から伝わる当時の外科学の技術を駆使し、最善を尽くして下さった丹下先生ほか関係者の方々に“感謝したい”という気持ちが募ってきました。昭和30年代当時と現在の外科手術レベルの相違はありますが、その当時において最善を尽くして対応していただいたことがすべてなのです。亡き母は慈恵医大(実父・内科医の母校)に献体した人間ですが、篤志献体の組織「白菊会」のある年の定例総会で、矯正歯科医の福原達郎先生(昭和大名誉教授)がその特別講演の中で、「『医療人は患者に対しての治療には最善を尽くし、患者の気持ちを鑑みる上では優し過ぎるということはない』と述べたようで、その言葉が強く印象に残っている」と生前、母は言っていました。
 一般的に口唇口蓋裂の治療には、口腔外科、矯正歯科、小児歯科、一般歯科、形成外科、耳鼻咽喉科、言語療法などが関わる分野ですが、各専門家が患者への思いを込めて最善を尽くしての治療があったことで、現在の自分があることを改めて痛感しています。振り返ると特に、今でいう「かかりつけ歯科医」であった故 清信弘雄先生を始めとする歯科医師・歯科関係者には本当にお世話になり、また今回、コラムを書かせていただくことになり、改めて歯科がもう少し社会から正当に評価されることを期待して、時には耳の痛い指摘などもあるかもしれませんが、ささやかな経験からの思いを綴っていきますので、何卒よろしくお願いいたします。

奥村 勝

(東京歯科保険医新聞2022年10月号10面掲載)

◆奥村勝氏プロフィール

おくむら・まさる オクネット代表、歯科ジャーナリスト。明治大学政治経済学部卒業、東京歯科技工専門学校卒業。日本歯科新聞社記者・雑誌編集長を歴任・退社。さらに医学情報社創刊雑誌の編集長歴任。その後、独立しオクネットを設立。「歯科ニュース」「永田町ニュース」をネット配信。明治大学校友会代議員(兼墨田区地域支部長)、明大マスコミクラブ会員。

【教えて!会長!! Vol.63】オンライン資格確認システム 原則義務化の撤回について

オンライン資格確認システムについて現状を教えてください。

政府は、2023年4月1日から保険医療機関などで「オンライン資格確認(電子資格確認)システム」(以下、「オン資」)の義務化を決め、医院に直接導入を促す電話がかかってくるなど、圧力ともとれる様々なアプローチが行われています。協会には現在、会員の先生方から「オン資」に関して数多くの問い合わせがきています。協会の「オン資」に対する考えは、9月号で経営管理部長談話(協会ホームページに掲載)、そして本紙2面の理事会声明に示しています。ぜひ、ご確認をお願いします。
すでに「オン資」の運用を開始している、または準備が完了、あるいは準備を進めている先生など、対応されている方が私の周りにいらっしゃいます。しかし、すでに対応されている先生方からもその運用に多くの疑問の声が寄せられています。他方、「オン資」の導入に迷われている先生が少なからずいらっしゃるのが現状です。
確認させていただきますが、現時点で協会は、あくまで「原則義務化」の撤回を訴えています。当然のことですが、将来の歯科医療のために医療の「ICT化」や「デジタル化」は避けることではなく、構築のため推進すべきと考えています。しかし、すべての保険医を対象とした今回の「原則義務化」には、素直に同意することはどうしてもできません。このことは8月26日から開始させていただいた「義務化に関するアンケート」「義務化撤回を求める署名」で多くの先生方が賛意を示されています。なお、このアンケート、署名の実施は、当初実施期間を9月末までとしていましたが、9月22日の2022年度第11回理事会において、会員の先生方のご意見を反映させるために、さらに実施期間を延長することが承認されました。まだご対応されていない先生は、WEB署名、あるいはFAXによる署名およびアンケートの回答をお願いします。結果は、随時保団連が収集したデータとあわせて関係各位(議員、厚労省、メディアなど)に伝えるデータとして活用させていただきます。

「原則義務化」に対してお困りの意見にはどのようなものが?

「対応が困難である」と協会に相談される先生の事情は様々です。例を挙げると「地域的に光回線が不通」「建物の構造上、導入費用(回線整備など)が高額になる」などの物理的問題、また「高齢で閉院予定がある」「小規模で対応するスタッフがいない」「患者数が少ない」などの個人的問題など、多種多様です。すなわち、「電子レセプト請求」を理由にして、一律に導入の義務化を押し付けられることはどうしても理解できません。

「オン資」の原則義務化撤回を求める理由をまとめてください。

「オン資」の原則義務化撤回を求める運動を全国規模で行っている保団連と協働しています。また、この案件の先に様々な問題があると考えています。以下に抜粋して示します。

・「オン資」の「原則義務化」を多くの医療機関に義務付ける必要性、合理性が理解できないため、導入は医療機関ごとの任意の判断に委ねるべきです。
・現状、患者側は保険証で受診することに問題がなく、マイナンバーカードで医療機関を受診したいと望んではいません。
・「23年4月までに義務化」と一方的に提示されたスケジュールは、個々の医療機関の状況を考慮していません。
・マイナンバーカードの院内での紛失・盗難、マイナンバーの漏洩などについてすべて医療機関側が責任を負わなければいけないことになっています。


国民に対してのマイナンバーカード取得義務化・普及のために医療機関を利用して、多くの負担を我々に強いる原則義務化は理解できません。今後も協会は、「オン資」導入の「義務化撤回」に向けて取り組んでいきます。
なお、導入に関して不安がある、疑問がある先生は、協会までお問い合わせください。また、先生方の意見を厚労省に伝えていきますので、ぜひご意見をお寄せください。


東京歯科保険医協会 会長 坪田 有史
(東京歯科保険医新聞2022年10月号8面掲載)

 

長期維持管理政策の歴史 vol.4

民主党政権下における医療費底上げと配分見直し政策の登場

 2009年の衆議院選挙で民主党が勝利し、政権交代が起きた。そして、社会保障審議会医療部会の審議の中で、医療費の底上げと配分の見直しが提起され、歯科も充実すべき分野として位置付けられた。
 同時期の英国では、保守党のサッチャー政権とそれに続くメジャー政権により、国営医療制度NHS(National Health Service)が疲弊。政権を奪還した労働党のブレア政権およびそれに続くブラウン政権が医療費全体の底上げを目指すことなどで、なんとかNHSの蘇生を図ろうと取り組んでいた頃である。
―10年度改定の特徴
 10年4月の歯科診療報酬改定の主な項目を見ると、下記のようになる。
【基本診療料】
・初診料 182点→218点
・再診料 40点→42点
【歯科疾患管理料 月1回】
 歯科疾患管理料は、1回目130点、2回目以降110点であったのが、110点に統一された。
 初診料は36点引き上げられたが、その中身は歯管の中から基本的医療行為の分20点、スタディモデルの包括化等で16点を絞り出す枠内操作である。
 次に、義歯管理料にも見直しの手が入り、左記のようになった。見た目には分かり易くみえるが実質減算で、有床義歯調整管理料30点を新設し、月2回まで算定可能とし、辻褄を合わせた。
【義歯管理料の見直し】 ・義管A 100点×装着
 1カ月以内月2回→装着 月150点
・義管B(70点 2・3カ月目)
・義管C(60点 4カ月~1年)
【歯周疾患に関して】
 歯周基本治療の再治療の場合の評価を30/100→50/100へと引き上げたが、これも枠内操作で長期の治療対象患者でなければ減算となる。その一方で、歯周病安定期治療は150点を300点へと引き上げ、同時に3カ月毎の期間制限、および経過年数での漸減制を廃止し、毎月1回の算定と長期管理へのシフトを促す改定とした。
 10年度改定における歯科の改定率は10年ぶりに医科を上回ったが、歯科の医療費は95年以降2兆5000億円台で横ばい状態であった。その原因の一つは、前装鋳造冠以降、新しい技術・項目の導入がないこと。 また、補管は長期維持管理を評価しているとはいえず、か初診に代表される初診料へのこだわりや、枠内操作での見せかけだけの増点といえる。
 中医協の医療安全に関するコスト調査の結果を見ても、初診時のコストよりも再診時のコストがかかる歯科は、ホスピタルフィーとしての再診料の大幅な引き上げを目指すべきではないか。
 なお、これより2年後の12年度改定では、長期維持管理路線がらみの目立つ改定はなかった。
―14年度改定の特徴
 続く14年度改定においては、まず、歯周病安定期治療に対し、点数引き上げが行われた(一律300点の点数であったのを、歯数に応じた評価に変更した)。具体的には、
・1歯~9歯 300点→200点
・10歯~19歯 300点→250点
・20歯以上   300点→350点 となった。
 これは、16年度改定において、「かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所」、いわゆる「か強診」の導入という大きな変更につなげられ、継続的な管理に対する高い評価のスタートとなった。
 また、管理項目はう蝕・歯周病・在宅をセットしたものとなった。
・う蝕に関してはエナメル質初期う蝕フッ化物塗布処置を行う。
・歯周病に関しては歯周病安定期治療を行う。
・在宅患者に対しては在宅患者訪問口腔リハビリテーションを行う。
 ただし、「外来環」と「歯援診」の施設基準要件を満たした届出が必要なため、参加へのハードルは高いといえる。

 

中川勝洋
東京歯科保険医協会 第3代会長、協会顧問

なかがわ・かつひろ:1967年東京歯科大学歯学部卒業、1967年桜田歯科診療所開設、1981年東京歯科保険医協会理事、昭和大学医学部医学博士授与。1993年協会副会長、2003年協会会長、2011年協会会長を辞し理事に。2022年理事を勇退し協会顧問に就任。

東京歯科保険医新聞2022年(令和4年)9月1日

こちらをクリック▶東京歯科保険医新聞2022年(令和4年)9月1日 第630号

1面】

   1.オンライン資格確認システム/義務化は撤回を 導入は僅か18%
   2.保険医協会健康まつり2022ご案内
   3.診療や生活をサポート/会員の不安や悩みを解決(組織部長 福島崇)
   4.「探針」
   5.ニュースビュー

2面】

   6.オンライン資格確認義務化で10月から加算も再編
   7.10月から75歳以上の負担割合2割化/物価高騰の中で強行
   8.10月 歯科用貴金属価格改定

3面】

   9.経営・税務相談Q&A No.396 オンライン資格確認システム
   10.オンライン資格確認システム“義務化は撤回を”経営管理部長談話を発表
   11.オンライン資格確認システム/署名・アンケートのお願い
   12.学校保健統計調査/う歯被患率は20年前に比べ約20%減少
   13.書籍「フツーの歯科医院でもムリなくできる スタートアップ!口腔機能低下症」

【4面】

   14.IT相談室/WEBサイトによる診療所PRのポイント①/氏(クレセル株式会社)
   15.研究会・行事のご案内①
   16.会員優待サービス
   17.法律相談、経営&税務相談
   18.電子書籍「デンタルブック」ご案内
   19.開業医会員アンケートの御礼

【5面】

   20.研究会・行事のご案内②

【6面】

   21.国際政治学者・中野晃一氏インタビュー「政府が守るべきは“国民の権利”」

【7面】

   22.【特集】新型コロナウイルス濃厚接触者対応フローチャート

【8面】

   23.協会史を振り返り現在・未来を見つめる Vol.3/「か初診」の登場とその後・中川勝洋氏
   24.教えて!会長!!Vol.62
   25.社会保障審議会/オンライン資格確認システムなど議題に

【9面】

   26.症例研究/充填時の築造と高強度硬質レジンブリッジ

【10面】

   27.連載/私の目に映る歯科医療界⑱(東洋経済新報社・大西富士男氏)国のインセンティブ拡大で一歩前進も
   28.理事会だより
   29.協会活動日誌/2022年8月

11面】

   30.3年ぶり会場開催/地区懇談会
   31.会員寄稿「声」国民皆歯科健診(吉田真理氏)
   32.明日からの臨床に活かせる/TBI&PMTC・デブライドメント講習開催
   33.投稿お待ちしています/会員投稿のお願い
   34.3年ぶり現地開催/原水爆禁止2022世界大会レポート
   35.共済部だより/秋の募集キャンペーンが始まりました!

12面】

   36.美術文化/第38回東京保険医美術展/歯科医師による逸品集う
   37.神田川界隈/利他主義(相馬基逸理事/品川区)
   38.東京歯科保険医協会Facebookのご案内
   39.ひまわりのそばに(下)「ロシアのウクライナ侵攻に考えるべき」/黒田政俊氏
   40.通信員便り No.125

13・14面】

   41.共済チラシ

【15・16面】

   42.組織チラシ

歯科医師による逸品集う/第38回東京保険医美術展

 7月25〜31日、東京・銀座のギャラリー暁で「第38回東京保険医美術展〜2022〜」が開催された。都内の医師を中心に27作品が展示され、協会からは早坂美都理事を含む、3名の先生が出品した。
 早坂理事は、ろうけつ染めの日傘2本をお披露目。淡い赤、青、黄の水玉が鮮やかに日傘を彩り、酷暑の夏に一瞬の涼を感じさせる作品や、花柄を散りばめ、幻想的な世界観が印象的な一品を飾った。
 会員の長尾広美先生は、「Eternal radiance」(和訳:永遠の輝き)というタイトルのもと、スワロフスキーを使った曼荼羅を。均整の取れた煌びやかな作品は、自然と足を止めてしまう存在感を放った。さらに、会員の渡辺吉明先生は3枚の写真を展示。両国駅に並ぶ雛人形、上野公園のハスのつぼみなど、季節感溢れる作品が並んだ。以下に作者の先生より寄せられたコメントを紹介する。

▽早坂美都
 昨年に続き、ろうけつ染めの作品2点を出展した。昨年は名古屋帯、今年は日傘を二つのデザインで染めた。
 溶かした蝋を筆などで布に塗って模様を描き、染料にて染色し、蝋を落として水洗いする。蝋を塗った部分は染め抜かれる。複数の染色のときは、この工程を繰り返す。蝋に、乾燥ひび割れを入れることによって、独特の亀裂模様を作り出すことも多い。
 ろうけつ染めは「バティック」とも言い、インドネシアやマレーシアの特産品になっている。ユネスコの無形文化遺産にも登録されているそうだ。日本では 正倉院宝物に見られるなど、 天平時代から見られる染色技法である。着物などの反物の染色によく見られ、京都の京友禅でも「ろうけつ友禅」がある。今回は水玉と草木のデザインを蝋で描いた。布地は麻で、持ち手は竹である。麻は風を通し、涼やかなので、猛暑をこの傘で乗り切りたい。

▽長尾広美
 曼荼羅作家活動を始めて10年弱、よく「曼荼羅とは何か」と聞かれます。いろいろ解釈はありますが、私はあまり小難しいことにこだわらず、アートの表現手段として捉えています。心赴くままに文様やクリスタルビーズを駆使して仕上げていく過程は、歯科医として外へと気持ちを向けている自分が唯一内へ向かうことができる時間だと感じています。

国のインセンティブ拡大で一歩前進も/疑問晴れぬオンライン資格確認システム義務化の進め方【連載】私の目に映る歯科医療界/最終回

 前号(第629号)で紹介したオンライン資格確認システムで動きがあった。8月に入り3日、10日と2回にわたり開催された中央社会保険医療協議会(以下、「中医協」)の総会で、厚生労働省は2つの修正を打ち出した。

 

加算新制度「朝令暮改」に潜む問題点

 修正の第1は、システム導入の補助金の大幅な拡充だ。診療所なら4分の3補助から42万9千円を上限に、実費補助とする内容だ。その狙いは、来年4月からの医療機関でのシステム運用義務化方針にも関わらず、全医療機関における運用段階に至った割合が現状26%、診療所で18%程度にとどまる普及の後れを取り戻すことにある。
 第2は、診療報酬での加算制度の変更で、これは大問題だ。本年4月に導入したばかりの当該システム運用の医療機関への加算を廃止し、10月から制度を刷新するというものだ。当該システムを運用する医療機関で、いわゆる「マイナ保険証」を使った場合の加算を見ると、現行では初診で70円(患者の自己負担は最大3割で21円)だったのが20円(同6円)になる。その一方で、当該システムを運用する医療機関で従来の保険証を使った場合の初診加算は、現在の30円(患者自己負担最大9円)から40円(同12円)になる。
 マイナ保険証を使った患者の自己負担額が、使わない患者に比べて、今は12円高いのが、逆転して6円安くなる。マスコミ報道を契機に、国民の中から「マイナ保険証にしたのに料金が高くなるのはおかしい」という声が上がった。これを聞いて慌てたのが、今回の「朝令暮改」の真相だろう。この変更による金額は小さいが、本来は医療機関が提供する医療サービスへの対価(公定価格)であるべき診療報酬(今回は加算)のはずが、実際には別の算定基準が紛れ込み、役所の恣意性も含め、あいまいに決められているのではないか、と国民に疑念を抱かせかねないものだ。
 半年で当該システムによる医療サービスの質が変わるわけはないが、マイナ保険証を使う場合の加算を70円から20円へ下げ、使わない場合は30円から40円に引き上げるのはなぜか。
 当該システムを運用する医療機関でマイナ保険証を使えば、特定健診や複数病院にまたがる薬剤情報を病院などが利用でき、併用忌避薬の回避など患者もより良い医療サービスを享受できる。患者の自己負担分も含めた医療サービス向上の対価としての値段を上げるというのが加算の根拠ならば、そのサービスを享受できない従来の保険証を使う場合に比べ、高くすることがむしろ当然。現状の加算の在り方もこの理屈に立つはずだ。

サービス対価でなく加算額の本質は制度普及分担金

 国民からの疑問には、そう答えて従来方針を堅持すればよいはずだが、厚労省は批判を受けて腰砕けになった。国にも「加算=サービス対価」とはいえない別の加算根拠があるからに他ならない。当該システム普及(国のデジタル化の大きな柱でもある)という国策普及のインセンティブとしての加算であろう。厚労省もこの点は折に触れて語っているから、間違いはないはずだ。
 インセンティブとしての加算であるとすれば、国の“迷走”にも納得がいく。進まないシステム普及のためにマイナ保険証使用での加算は下げ、マイナ保険証不使用の料金は上げて逆転させる。マイナ保険証不使用の場合に加算(料金)を引き上げるのは、国策に従わない国民に対する一種の「ペナルティ」と言えるのかもしれない。
 従来の保険証を使う場合は、マイナ保険証利用者より医療サービスの質は下なのだから、加算は低くて良いはず(あるいは、今とサービスは変わらないはずだから、加算はゼロでいいはず)という青臭い「診療報酬(加算)=サービス対価論」は、ここでは成立しない。これが暗黙の国の理屈なのだろうが、これで国民が納得するかは別物。8月の中医協でも支払い側委員は「加算の対価としての患者メリットがはっきりしない」点などで、10月の制度変更に疑問を呈した。まさしく正論である。
 結果的には、こうした疑問への対応として「患者・国民の声を良く聴き…(中略)…医療の質の向上の状況について調査・検証を行うとともに、課題が把握された場合には速やかに対応を検討する」ことなどの付帯意見を付けることで、中医協では了承を取り付けた格好だ。
 日本医師会は、来春の原則義務化に賛成した。5月の中医協では拙速な義務化に強く反対していたが、会長交代もあってか、国との協調路線に修正した感がある。このことは、国としてのシステム義務化に向け、大きなステップを超えたことになろう。

筆者:東洋経済新報社 編集局報道部記者 大西 富士男

(東京歯科保険医新聞2022年9月号10面掲載)

【教えて!会長!! Vol.62】現在、当協会が取り組んでいる活動

—東京歯科保険医協会が行っている主な活動を教えてください。

坪田有史会長:当協会は会員のため、そして患者・国民のために「保険で安心してきちんとした診療をできるようにしよう」をキャッチフレーズにして日常活動を行っています。特に、電話やメールなどで当協会宛に届いた会員のご意見や疑問に対して、先生方に代わって厚生労働省、東京都、国会議員、都議会議員など多方面に回答を求めたり、要請などを行ったりしています。現在の主な活動を抜粋して、以下に紹介します。

①オンライン資格確認システム義務化の撤回に向けて
 現在、会員から最も多くご連絡をいただいているオンライン資格確認システムについてです。現在の状況、自由意志でなく「原則義務化」であること、ならびに示されているスケジュールでは対応できない医療機関が少なくないことへの懸念、さらに運用上、さまざまな混乱が想定されることなどを本紙の多くのスペースを使って、詳細にご提示しました。政府が進めるマイナンバーカードの普及促進のため、診療報酬のオンライン請求とともに医療機関に多くの対応を強いるこの「原則義務化」には多くの疑問があります。なお、本件について、全国で新たな署名の募集を開始します(3面参照)。署名内容にご賛同いただければ、ぜひご協力のほど、お願い申し上げます。

②新型コロナ感染症第7波への対応
 多くの感染者を出している第7波において、多数の問い合わせが当協会に寄せられています。医療機関において歯科医師やスタッフに感染者が出た、あるいは濃厚接触者になった、感染している疑いのある患者への対応など、感染の拡大により、さまざまな相談が見受けられます。特に濃厚接触者の定義、さらに医療従事者の濃厚接触者の特例など、時間経過とともに変更されるルールに混乱しているのが現状です。本紙7面に詳細を、なお、労務対応についてまとめましたので参考にしてください。

③75歳以上の負担割合2割化反対
 当協会が反対してきましたが、来月から多くの75歳以上の患者の負担割合が1割から2割になります(2面参照)。なお、各方面からの意見によって、配慮措置が設けられましたが、複雑な点があり、医療機関での混乱、受診抑制によるQOLの低下、口腔内環境の悪化などが懸念されます。さらなる対策を講じるように要望していきます。

④東京都への要望
 東京都の2023年度予算の審議に合わせて、都議会の各会派、都の行政側に多くの要望を行っています。例えば、「コロナ禍における医療提供体制の確保について」「歯科衛生士の復職支援や就学支援について」「在宅歯科医療の推進について」「子ども医療費助成制度における一部負担金の地域格差の是正」「個別指導への要望」などです。

⑤一会員の声を届ける
 「歯科衛生士、歯科技工士の人材確保について」「金パラの代替材料の保険適用について」「CAD/CAM冠・インレーの適用拡大について」「財務省の予算調査で国保の高額医療費制度の廃止について」「物価・光熱費高騰による医療機関の影響への対策」などについて、検討中、あるいは今後検討予定です。
 現在、行政等が進めている、あるいは今後予定されていることには、残念ながら理解しにくいことや、理解に苦しむ案件があります。確かに政策などの方針を変更させることが困難なことは、重々承知しています。素直に迎合した方が楽かもしれません。
 しかし、おかしいと思うこと、疑問を感じたことを、初めから諦めるのではなく、歯科の将来のため、患者・国民のため、黙っておらずに意見として、私は声に出したいです。声を出さなければ届くことはなく、伝わることもありません。
 冒頭で申し上げましたが、会員の先生方は、ご意見や疑問のどんなことでも当協会にお寄せください。約6,000名の歯科医師の団体として声をあげます。私も当協会の一会員です。会員の先生方と思いを共有して、今後も活動していきますので、ご理解、ご協力のほど、よろしくお願い申し上げます。


東京歯科保険医協会
会長 坪田有史

(東京歯科保険医新聞2022年9月号8面掲載)

WEBサイトによる診療所PRのポイント①

WEBに係る歯科関連の法令やトラブル対応などについて、
歯科専門にサイト制作、運用、コンサルディングを手掛ける専門家が解説する本連載。
今回は医院情報サイトについて―。

 2022年現在、WEBサイト(医院が運営するサイト)を活用している歯科医院の数は、かなり多いのではないでしょうか。しかし、WEBサイトはどのような効果が出れば「成功」で、一方どのような状況であれば「改善」の必要があるのか、わかりづらいのが現実です。そこで、情報発信の手段としての歯科医院のWEBサイトについて考えていきたいと思います。
 まず、サイトの目的を明確にするところからはじめる必要がありますが、目的は「大勢の新患が希望の治療を受けるために来院する」と思われる方が大半であることは間違いありません。残念ながら、この“大勢”という言葉をもっと具体的に意識できなければ、サイトからの新規患者の来院はそれほど望めないでしょう。
 現在運営されているサイトの成果指標として「1カ月の新規患者数の20%以上がWEBサイトからになっているか」を確認してみてください。20%を下回る場合、サイト上の課題、歯科医院の認知がそもそもないことの問題(開院直後など)、ネット上に競合が多すぎるなどの原因があります。20~40%くらいは正常、もしくは健全な数字ですので、今後は新たなコンテンツを追加するなどの対策を検討してみてください。
 そして、40%以上は「危険な状態」と言えるでしょう。サイトがたくさんの患者を集めている状態が「危険?」と思われる方が多いと思います。仮に80%がサイトからの患者とします。「サイトのサーバーが障害でダウンした」「検索サイトからペナルティを受けてサイトの来訪者が0になった」などのトラブルに見舞われると、患者の8割を失うことになります。すぐに復旧できるものであれば良いですが、4週間も続けば経営に関わる非常事態です。
 インターネットという現実に存在しない世界に、患者の大半を依存することの危険性を経営視点で振り返る必要があります。次回からは、インターネットマーケティングをそのまま歯科医院サイトに持ち込む時の注意点などを考えます。
(※数値等データは自社の分析に基づく)

クレセル株式会社

(東京歯科保険医新聞2022年9月号4面掲載)

長期維持管理政策の歴史 vol.3

「か初診」の登場とその後

前回は、2000年診療報酬改定で登場した「か初診」(かかりつけ歯科医初診料)の算定要件等と、その後、橋本龍太郎元首相への献金問題を経て2006年度改定で「か初診」廃止
に至るまでの経緯を紹介した。
ところで、「か初診」導入時の2000年から2002年に向けては、膨張する医療費をどうするのかが政権のテーマとなり、混合診療が取り上げられた時期でもあった。歯科では、従来から補綴の金属床総義歯と歯冠修復物に関しては特別な料金(自費)と認められていた。歯周病に関してP特養が医療保険の特定療養費(保険)に適合するかどうかが厚労省医療保健福祉協議会作業委員会で検討され、「継続的な治療管理は保険診療特定療養費の活用」との報告がなされ、中医協の診療報酬基本問題委員会でも「再発抑制に必要なセルフケアを継続して行く上での指導管理の評価」が議論の中心となり、この流れの中で「か初診」廃止後はこの保険者主導の長期管理路線が以降改定ごとに少しずつ取り入れられて来ていると言える。

月に1回 基本治療あり 基本治療なし
1~9歯 310点 210点
10~19歯 450点 270点
20歯以上 620点 360点


2002年4月、日本歯周病学会は「治癒と病状安定」の考えの流れを示すフローチャートを発表し、2002年4月の診療報酬改定では、メインテナンスに係わる総合評価として「歯周疾患継続治療診断料100点」が新設され、1~3カ月間隔で再診時に歯周組織検査・歯周基本治療・指導管理を行った場合に歯周疾患継続総合診療料として表1を算定する取り扱いとなった。
2005年は、小泉純一郎首相による衆議院の電撃解散によって小泉劇場の幕が切って落とされた。基本政策は当時の英国のサッチャー政権と同じ小さな政府であり、構造改革路線の延長として「財政再建」を打ち出した。その中の一つが「医療制度改革」であり、これを受けて厚労省は2005年10月19日、「医療制度構造改革試案」を発表、2025年に向けての医療費の伸びの削減方向を示した。その中で短期的な方向として、①公的保険給付の内容・範囲の見直し、②診
療報酬改定―の2点を挙げた。政府は2005年12月1日、「医療制度改革大綱」を決定。すでに廃止の憶測が流れていた「か初診」は、2006年4月の診療報酬改定で廃止された。しかし、長期維持管理路線=「か初診路線」が強化される方向は変わらなかった。
マスコミは、「医療は高コスト」と表現するが、当事者の我々からすれば、日本の医療は低報酬・低コストであり、先進諸国と比較してもGDP比最低である。良質な医療を低コストで提供しているのが日本であると、WHOも認めていた。
2008年4月改定の中で政府は、「質の高い医療を効率的に提供すための視点」と180度転換、「歯科医療の充実について」との記述が加えられた。その主たるものは2007年11月の日本歯科医学会の「歯周病の診断と治療に関する指針」の発表に基づくもので、分かり易いフローチャートも発表された。その内容は表2のように、管理料の大行列となった。

 

中川勝洋
東京歯科保険医協会 第3代会長、協会顧問

なかがわ・かつひろ:1967年東京歯科大学歯学部卒業、1967年桜田歯科診療所開設、1981年東京歯科保険医協会理事、昭和大学医学部医学博士授与。1993年協会副会長、2003年協会会長、2011年協会会長を辞し理事に。2022年理事を勇退し協会顧問に就任。

東京歯科保険医新聞2022年(令和4年)8月1日

こちらをクリック▶東京歯科保険医新聞2022年(令和4年)8月1日 第629号

1面】

   1.社会医療診療行為別統計/20年間で構成割合 大きく変化
   2.「開業歯科会員アンケート」へのご協力のお願い
   3.ワクチン4回目接種拡大/医療・介護従事者
   4.ニュースビュー
   5.「探針」

2面】

   6.医療機関 個別指導日程が明らかに
   7.生活保護指定医療機関 個別指導7件実施へ
   8.新規開業医講習会 持参物・指摘事項・算定要件…40人が受講
   9.知識と技術を高める/研究会・行事のご案内QRコード
   10.夏季休診のご案内ポスター
   11.電子書籍「デンタルブック」ご案内

3面】

   12.歯系議員2氏は再選果たす/自民63、立憲17、維新12
   13.夏のあとがき~参院選後の今こそ、思いを巡らす~/会員投稿・菊地三四郎氏
   14.接遇講習会 2年ぶりの対面開催/患者に選ばれるため診療所全体の底上げを

【4面】

   15.経営・税務相談Q&A No.395 年次有給休暇 夏季休暇にあてられる?
   16.研究会・行事のご案内①
   17.Facebookお知らせ
   18.法律相談、経営&税務相談

【5面】

   19.研究会・行事のご案内②

【6面】

   20.能楽師・野村太一郎氏インタビュー「亡き父から最期の言葉 伝統継承を目指す若き才能」

【7面】

   21.暑中お見舞い名刺広告

【8面】

   22.協会史を振り返り現在・未来を見つめる Vol.2/「か初診」の登場とその後・中川勝洋氏
   23.教えて!会長!!Vol.61

【9面】

   24.症例研究/混合歯列期の患者に対するP重防

【10面】

   25.連載/私の目に映る歯科医療界⑰(東洋経済新報社・大西富士男氏)マイナ保険証使うシステム強制は大問題 国の義務化議論に欠くユーザー国民視点
   26.理事会だより
   27.協会活動日誌/2022年7月
   28.診療報酬改定 関連書籍「歯科疾患管理計画書」ご案内

11面】

   29.会員投稿「声」本日休診~小説「ツユクサ」を読み~石渡利幸先生
   30.IT相談室/Googleの口コミを気にしなくていい理由/氏(クレセル株式会社)
   31.保団連夏季セミナー
   32.新理事就任のお知らせ/池川裕子氏(葛飾区)
   33.会員優待サービスのお知らせ
   34.共済部だより

12面】

   35.第2回メディア懇談会/歯科医療総枠拡大に向け「国民の信頼を獲得するしかない」
   36.神田川界隈/医療費の総枠拡大はなぜできない?(加藤開副会長/豊島区)
   37.通信員便り No.124
   38.ひまわりのそばに(上)「戦後77年を迎え―」/黒田政俊氏
   39.新聞に投稿してみませんか?/投稿案内

13・14面】

   40.開業歯科会員アンケート

Google の 口コミを気にしなくていい理由

WEBに係る歯科関連の法令やトラブル対応などについて、
歯科専門にサイト制作、運用、コンサルディングを手掛ける専門家が解説する本連載。
今回は医院情報サイトについて―。

 「Googleにネガティブな口コミを書かれた」とのご相談が減ることなく寄せられます。
口コミに対する対応策は、以前の本連載でお伝えしましたが、今回はそもそも「Googleの口コミは気にしなくていい」理由を解説します。
 歯科に限らず医療機関の口コミは、概ねネガティブなことを書かれるケースが多い傾向にあります。それは医療サービスを「望み通りに処置してくれて当たり前」という、日本人ならではの先入観があり、“現実との対比”によって発生する不満足が原因です。
経験則ですが、書き込みを行う理由は、①本当に問題と思われる出来事があった、②漠然とした不満足の矛先が抽象的なネガティブ書き込みになっている、③クレームを書きたいだけ―という3つが代表的です。
 ①に対しては、口コミサイト上の返信機能を使うことで、他者が読んだ時に歯科医療機関側の誠意を示すことができ、「本当は過剰表現ではないか」という気持ちにさせることができます。
 ③については、書き込みをしている人のアイコンをタップ(クリック)すると、その人がどのような口コミを書いているか見ることができるので、確認してみてください。様々なところでクレームの書き込みを行い、それを楽しんでいる方です。
 したがって、現在悩みの種になっているのは②と③の書き込みについてです。歯科以外の病院や医療サービスサイトを見ると、概ねほぼ②と③の書き込みか、感謝のポジティブな書き込みしかないことに気がつきます。閲覧者は、「感謝」か、①~③の書き込みくらいにしかGoogleの口コミが使用されないことを肌感覚で知っているので、「歯科医院の選択材料」にGoogleの口コミを重視している方は少ないと言えるでしょう。
 これが過剰にGoogleのネガティブな口コミを気にしなくてよい理由です。ただし、明確な誹謗中傷や具体的過ぎる内容については、法的な対応を検討されることをおススメします。

クレセル株式会社

(東京歯科保険医新聞2022年8月号11面掲載)

長期維持管理政策の歴史 vol.2

「か初診」の登場とその後

2000年(平成12年)の診療報酬改定で、歯科初診料186点とは別に「かかりつけ歯科医初診料」、いわゆる「か初診」が270点で導入され医科初診料と同じになったが、再診料は40点で医科とは異なった。初・再診料の医科歯科格差解消は歯科の長年の要望であったが、か初診以外は従来のままで据え置かれた。その算定要件は、以下の3項目であった。
そして、この要件の中で「同意と文書提供」という縛りを付け、再び「か初診」を算定できるのは、治療終了後3カ月目からとし、また、説明手段のスタディモデル(50点)と口腔内写真(50点)は包括化され算定できない。「か初診」は医科と同じになったが、指導管理を主とする医科との格差はむしろ拡大したと言え、1口腔1初診の歯科の概念が強化された。医科でも00年度診療報酬改定に際して「かかりつけ医機能」について検討され、指導料に対する継続管理加算が導入された。
1日平均16名~20名の患者数の歯科では加算点数はなく、270点だけの算定であり、医科と比べて厳しい「かかりつけ機能」の要件となっており、歯科の中での「かかりつけ機能」の定義付けがされていない中、最初に270点ありきであった。

02年(平成14年)の改定は、初のマイナス改定となった。初診料は186点から180点へ引き下げられたが、「か初診」は270点のまま据え置かれた。また、歯周病に「治癒と病状安定」の概念が取り入れられ、2回目の歯周病検査で病状安定と判断されたら継続治療診断(基本検査・精密検査)を行い100点を算定、①継続治療計画を作成し、②1~3カ月間隔で検査・基本治療・指導という「継続管理」を行う。算定点数は左記表の通りだ。
05年は憂鬱な年となった。橋本龍太郎元首相への1億円献金がワイロとの疑いで日本歯科医師会・日本歯科医師連盟元会長の臼田貞夫氏をはじめ5名の逮捕者を出し、「か初診」と「1億円献金」が連日のように新聞・テレビに取り上げられることとなり、結果、中医協に歯科側委員は出席せず、保険者側の「保険者機能を推進する会」の活動が活発化した。06年(平成18年)の改定で「か初診」は廃止となり、保険者主導のかかりつけ歯科医路線へと姿をかえた。
02年以降、協会は「かかりつけ歯科医」は歯科医師が決めることではなく患者さんが選択することだとして、「か初診」の廃止運動を行ってきた。協会アンケートでは会員の92%は算定していなかった。しかし、患者さんへの情報提供は必要であるので「お口の治療計画書」を協会独自に作成し、従前から会員に提供してきたが、9月の保団連理事会では、いくつかの協会から廃止運動と矛盾しているとの発言がなされた。保団連歯科理事会議ではそのような発言はなされいなかったので、9月に保団連に意見書を提出し、訂正を求めた。

中川勝洋
東京歯科保険医協会 第3代会長、協会顧問

なかがわ・かつひろ:1967年東京歯科大学歯学部卒業、1967年桜田歯科診療所開設、1981年東京歯科保険医協会理事、昭和大学医学部医学博士授与。1993年協会副会長、2003年協会会長、2011年協会会長を辞し理事に。2022年理事を勇退し協会顧問に就任。

【教えて!会長!! Vol.61】CAD/CAMインレー

—4月の診療報酬改定でCAD/CAMインレーが保険収載されました。

坪田有史会長:新しい技術が保険収載された場合、今まで多くの技術で医療技術評価提案書を提出した学会や関連学会から診療指針(ガイドライン)が示されてきました。現時点でCAD/CAMインレーに関しては学会からの診療指針が示されていません。4月の改定以降、本会にCAD/CAMインレーに関して会員から多数の質問や問い合わせがあります。そこで今回、臨床的な視点でCAD/CAMインレーについて解説します。

—診療報酬上の算定について教えてください。

坪田:CAD/CAMインレーを保険で行うにはCAD/CAM冠と同じく、施設基準の届出が必要ですが、既に4月の改定前からCAD/CAM冠の届出を行っている医療機関は再度の届出は不要です。院内掲示物の名称を、「CAD/CAM冠」から「CAD/CAM冠及びCAD/CAMインレー」に変更してください。
「表1」に22年7月現在のCAD/CAMインレーとメタルインレーの比較を示します。なお、12%金銀パラジウム合金(以下、「金パラ」)の材料料の点数は、10月1日に予定されている随時改定により変更される可能性があります。
CAD/CAMインレーの適用は、小臼歯と第一大臼歯の複雑窩洞に限られます。なお、上下左右すべての第二大臼歯が残存し左右の咬合支持があり、過度な咬合圧が加わらない場合に第一大臼歯に適用できます。歯科用金属アレルギー患者はすべての臼歯部に適用できますが、大臼歯については医科と連携の上、診療情報提供に基づく場合に限られます。

—窩洞形成の注意点を教えてください。

坪田:図にCAD/CAMインレーの窩洞形成について示します。表内の形成量には注意が必要です。「表2」に窩洞形成の注意点を示します。
間接法で作業模型からの製作のみが認められているため、精確な印象採得を行い、製作されてきたCAD/CAMインレーの装着は、必ず接着性レジンセメントを使用し、装着前処理として接着面にアルミナ・サンドブラスト処理およびシラン処理(内面処理加算1:45点)を行うことが推奨されます。

会長 坪田有史

(東京歯科保険医新聞2022年8月号8面掲載)

 

東京歯科保険医新聞2022年(令和4年)7月1日

こちらをクリック▶東京歯科保険医新聞2022年(令和4年)7月1日 第628号

1面】

   1.第50回定期総会を開催/22年度活動計画ほか7議案を承認
   2.個別指導を計画/東京都
   3.東京23区、高校生等の医療費無償化へ/所得制限設けず 自己負担なし
   4.ニュースビュー
   5.「探針」

2面】

   6.記念講演 チタン・CAD/CAM冠の適用拡大を求める 金パラ代替テーマに
   7.決議/第50回定期総会
   8.東京歯科保険医協会 第50回定期総会 祝電・メッセージ等一覧

3面】

   9.会員寄稿“声”「参院選前に歯科医師の地位向上を考える」(菊地三四郎氏/渋谷区)
   10.声明 オンライン資格確認システムの導入“義務化”に反対する
   11.共済部だより

【4面】

   12.経営・税務相談Q&A No.394 水漏れ事故の対応は?備えは必要?
   13.IT相談室/登録した覚えがない医療情報サイトから請求が…どうする?/氏(クレセル株式会社)
   14.診療報酬改定 関連書籍/歯科疾患管理計画書のご案内
   15.法律相談、経営&税務相談

【5面】

   16.研究会・行事のご案内

【6面】

   17.Special Serial No.5 「新型コロナウイルス感染症は転換期を迎えている」山本光昭氏(社会保険診療報酬支払基金理事)
   18.教えて!会長!!Vol.60
   19.中川理事が今期で勇退

【7面】

   20.協会史を振り返り現在・未来を見つめる Vol.1/長期維持管理政策の歴史・中川勝洋氏
   21.(一社)日本接着歯学会 理事長に坪田氏

【8面】

   22.information≪研究会・行事≫
   23.歯科医院からも多数申請 事業復活支援金の特徴点/税理士・櫻木敦子氏
   24.電子書籍「デンタルブック」
   25.夏季休診案内ポスター&卓上型タイプ

【9面】

   26.症例研究/レジン前装チタン冠、総合医療管理加算

【10面】

   27.連載/私の目に映る歯科医療界⑯(東洋経済新報社・大西富士男氏)骨太方針に突如「国民皆歯科健診」入る
   28.理事会だより
   29.協会活動日誌2022年6月

11面】

   30.<国会要請>75歳以上窓口2割化中止を求める
   31.神田川界隈/四方山話(橋本健一理事/東村山市)
   32.第26回参議院選挙 投開票は7月10日に
   33.会員優待サービスご案内
   34.好評博す施設基準の講習会開催/歯初診・外来環・歯援診・か強診に対応
   35.院内感染防止対策講習会/「徹底した洗浄」が鍵 重要な3要素を解説

12面】

   36.通信員便り No.123
   37.「骨太方針2022」に国民皆歯科健診を明記
   38.金銀パラジウム合金等 引き上げに/銀合金、メタルコアおよび14Kも改定

【教えて!会長!! Vol.60】第50回定期総会を終えて

― 6月19日、中野サンプラザ(東京・中野)で第50回定期総会を開催されました。

坪田有史会長:まず、本会定期総会にご出席いただいた先生方、また委任状を提出していただいた先生方に御礼申し上げます。定期総会では、審議をお願いした議案に、複数のご質問をいただき、それぞれ回答させていただいた上で、全7議案すべてを承認していただき、感謝いたします。
定期総会の位置付けは、本会規約第5章、第14条に「総会は本会の最高議決機関であり、会長が招集する」と記されています。すなわち、総会は本会の中で最も高い位置付けとなります。今回、定期総会が「第50回」という節目の数字となりました。本会がスタートした1973年の会員数は180名と過去の資料に記録されています。その後、会員数が着々と増加し、2022年6月1日現在、5938名と本会スタートから半世紀で約33倍の会員数になっています。この場をお借りして、会員の先生方、会務を担当された先輩方、そして歴代の事務局の方々のご努力に心から感謝申し上げます。
なお2023年は、本会が50歳、すなわち50周年にあたります。本会50周年を迎えるにあたり、会員の先生方と共に祝う感謝の会を現在企画中です。その際は、多くの会員の先生方に参加いただきたいので、よろしくお願いいたします。

― 2022年度の活動計画を教えてください。

坪田:詳細は、総会に向けて郵送させていただいた「第50回定期総会議案書」をご参照いただきたいのですが、ここでは先生方と共有しておきたい具体的な活動計画をいくつか述べさせていただきます。

1 新型コロナウイルス感染症対策
 ・助成金、支援金の申請の補助、労務上の相談へ対応する。
 ・歯初診の研修である院内感染防止対策講習会を複数回、開催する。
2 歯科医療改善の取り組み
 ・今次診療報酬改定の内容を分析し、問題点や不合理な点の是正、改善を厚労省に求める。
 ・オンライン資格確認の導入、マイナンバーカードの保険証利用についてメリット、デメリット   
  を検討し、会員への周知に努める。
3 審査、指導の対策
 ・コロナ禍で一時中断されていた各個別指導が再開されており、会員からの相談に適宜対応す
  る。
 ・レセプト審査が公正・公平に行われるよう情報収集し、問題があれば改善を求める。
4 講習会・説明会などの開催
 ・コロナ禍により始まったオンライン、ハイブリッド形式などを活用し、充実した講習会などを
  開催する。
 ・コロナ禍で中止していた地区懇談会を7月に3地区で開催し、会員との懇談を行う。
5 共済制度の普及・充実
 ・安心して診療に従事できるよう、共済制度の充実、免責事項の改善などに努める。
6 医療改善を求める
 ・患者・国民のため、さらに「保険でよい歯科医療」が進むよう活動を行う。
 ・一部の75歳以上の患者への医療費窓口負担2割化阻止に向けた活動を行う。
 ・都立・公社病院独法化に対して反対する活動を行う。
7 「健康まつり」の開催
 ・コロナ禍で延期していた東京保険医協会と本会とが主催する「保険医協会 健康まつり2022」を
  10月23日(日)、12〜16時、東京都新宿区西新宿の新宿駅西口広場イベントコーナーで開催す
  る予定で準備を進めている。開催目的は、①医療団体として健康増進をアピールする、②医
  師・歯科医師の連携をアピールする、③医科歯科両保険医協会を広く認知してもらうようアピ
  ールする、④国民皆保険制度の重要性をアピールする―などである。

以上、2022年度も引き続き会員の先生方のご理解、ご協力のほど、よろしくお願い申し上げます。

             東京歯科保険医協会 会長 坪田 有史

(東京歯科保険医新聞2022年7月号6面掲載)

登録した覚えがない医院情報サイトから請求が…どうする?

WEBに係る歯科関連の法令やトラブル対応などについて、
歯科専門にサイト制作、運用、コンサルディングを手掛ける専門家が解説する本連載。
今回は医院情報サイトについて―。

 相談件数としては多くありませんが、「医院の基本情報を掲載するサイトからの請求」という身に覚えのない要求にお困りの方が過去にいました。多いのは、まず簡単な情報だけ掲載して、より詳しい情報を有料で掲載しないかという営業電話がかかってくる場合です。
 前提として、勝手に医院情報を掲載して掲載費用を請求することなどはビジネスとして論外で、取り合う必要はありません。事前合意のない請求は無効です。
 どちらかと言えば、最初に医院の基本情報を無料で掲載して、その後に「情報の更新をするなら有料契約が必要」「削除も有料」などと、掲載済みの情報を人質のように扱って、有料契約を迫ってくる場合がありますので注意が必要です。
 以前、そのような相談があった時にこちらから掲載サイトの業者と電話をした時には次のような主張でした。「公開されている医院の基本情報を当サイトに掲載することは、法的に問題ありません。ただ情報の更新や削除などに要する人件費は有料となります」。とんでもない主張だと思いましたが、「法的に」という言葉で泣き寝入りしてしまう方もいらっしゃるようです。以前、飲食情報サイト「食べログ」へ勝手に掲載されてしまい、店側が訴えた結果、敗訴した事例がありました。おそらく、このような事例を盾にしているものと考えられます。
 情報の削除、改訂については対応してもらえることが多いはずです。しかし、登録して自力で改変する、もしくは費用を要求されるなど「確信犯的に」情報を掲載している業者もいるので、その場合は、即座に弁護士を通じてやり取りをすることが望ましいです。

クレセル株式会社

(東京歯科保険医新聞2022年7月号4面掲載)

長期維持管理政策の歴史 vol.1

はじめに

2003年6月の第31回定期総会において、大多和彦二会長の辞任に伴い、私が会長に指名された時から26年が経ちました。その私が2011年に会長を退いて以降も協会理事、保団連理事と会務を務めてまいりましたが、2022年6月19日の第50回定期総会をもって会務から退くことといたしました。協会の活動に参加してから42年にわたり、これまで会員の皆様よりのご協力をいただきありがとうございました。今後は協会顧問として、協会の諸活動を見守らせていただきます。(中川勝洋)

 

―今後の論議を注視国民皆歯科健診

6月7日に「骨太の方針2022」が発表され、「歯科専門職による口腔健康管理の充実」「医療機関連携の推進」「オーラルフレイル対策」等が示され、その中に「国民皆歯科健診の具体的な検討」が盛り込まれたことが明らかになりました。これを行うことで、医療費全体の削減に寄与できるとしています。率直なところ、「遂に、長期維持管理政策がここまで来たか」、との思いがします。
まだ詳細は分かりませんが、歯科健診が義務化されると、ドイツのように歯科健診を受けない国民へのペナルティーが導入されるかもしれません。今後の論議を見守りたいと思います。


―改定変遷の振り返り 「か初診」から「か強診」へ

1990年から2020年まで、「歯界展望」(医歯薬出版株式会社刊)誌上に診療報酬改定ごとに書かせていただいた「診療報酬改定の特徴と評価」を読み返して厚生労働省の歯科医療、歯科保健政策の変遷を振り返ってみました。
1996年(平成8年)3月末、それまでのPⅠ型・PⅡ型などの歯周病治療から現在の歯周病治療の体系である「歯周病の診断と治療のガイドライン」に再編されました。基本検査と精密検査に基づく治療の流れが示され、初診月には算定できなかった指導料も65点で導入されました。同時に歯冠修復物に対する補綴物維持管理料、いわゆる「補管」が2年間の縛り付きで導入されています。
日本歯科医師会は改定財源を確保するためだとし、「責任と保証」という言葉遣いでの説明は回避。しかし、2年以内の破損等での再製作に係わる費用が算定できないことは、診療側が責任を取り、維持管理料という名前の保証料で再製作を引き受けるということです。歯冠修復物の再製作での請求が多いことへの対応ではありますが、クラウン150点、ブリッジ 5歯以上500点、6歯以上670点のためか、保団連の一部は反発したものの大きな運動にはならず、結果は歯冠修復物の請求が減少し、保証料を下回りました。


―英独海外視察の原点

この制度もドイツで充填、補綴物の保証というペナルティーとともに導入されており、後日、協会による2006年のイギリス・ドイツへの歯科医療視察団派遣の原点となりました。

 

 

中川勝洋
東京歯科保険医協会 第3代会長、協会顧問

なかがわ・かつひろ:1967年東京歯科大学歯学部卒業、1967年桜田歯科診療所開設、1981年東京歯科保険医協会理事、昭和大学医学部医学博士授与。1993年協会副会長、2003年協会会長、2011年協会会長を辞し理事に。2022年理事を勇退し協会顧問に就任。

東京23区、高校生等の医療費無償化へ/所得制限設けず 自己負担なし

 東京23区長でつくる特別区長会は6月21日に緊急記者会見を行い、現在中学生までを対象としている子どもの医療費無償化について、2023年度から高校生に拡大することを明らかにし、所得制限や自己負担は設けず無償化すると発表した。

 東京都は2022年1月、子どもの医療費助成の対象を中学生から高校生までに拡大するすることを発表。高校生の医療費を巡っては、所得制限を設け、小中高生における通院1回につき上限200円を自己負担とした上で、残りを助成する方針を表明していた。
 その後、東京都は2023年度から2025年度までの3年間は都の財源で経費を全額負担し、2026年度以降の負担割合は今後の協議とすることを特別区に提案。特別区長会は今回、2023年度から事業を実施するため、2026年(令和8年)度以降の財源等については東京都との協議を継続することとし、東京都の提案をいったん了承した。なお、東京都は所得制限を設け、200円の自己負担を求める方式を主張している。
 特別区長会は、特別区として所得制限や自己負担を設けない完全無償化で事業を実施するため、東京都の補助金でまかなえない財源は、23区が自主財源で負担する方針。東京23区の負担分は13億円以上と見込む。

オンライン資格確認システムの導入〝義務化〟に反対する

   
 マイナンバーカードを利用したオンライン資格確認システムの運用を開始した医科・歯科医療機関及び保険薬局数は2022年5月22日時点で4万4284機関、参加率は19・3%となっている。そのうち、全国の歯科医療機関数は9263機関、同13・1%、東京の歯科医療機関数は903機関、同8・4%にとどまっている。協会には実際に導入している歯科医療機関からオンライン資格確認システムの利用者は月1~2人の利用者しかいないという声も寄せられている。
 導入した医療機関には毎月のランニングコストの負担や受付の患者対応などの負担がかかる。そのため、診療報酬改定で、電子的保健医療情報活用加算が新設された。
 しかし、政府は患者負担が増えることが報道されると、同加算の廃止を早々と打ち出した。加算が廃止されればオンライン資格確認システムのランニングコストなどは完全に医療機関側が負担することとなる。また、診療報酬の諮問機関である中医協を飛び越えて、政府が方針を打ち出すのはいかがなものだろうか。
 また、患者負担があるため、オンライン資格確認システムの利用者が少ないという声もあるが、そもそもマイナンバーカードの全国普及率は5月1日時点で44・0%であり、東京では47・8%である。健康保険証利用登録が済んでいるのは全人口でわずか7%未満に過ぎない。いったい、マイナンバーカードを健康保険証として持ち歩く国民がどの程度いるだろうか。
 現行システムでは、資格確認以外の薬剤情報や特定健診記録などの医療情報へアクセスするためにはマイナポータルでの登録が必要である。マイナポータルの利用規約にはすべてのトラブルについて「自己責任」での解決をすることが定められており、全ての責任を利用者に押し付ける内容となっている。医療機関にあるオンライン資格確認システムのカードリーダーはその場で健康保険証とマイナンバーカードの紐づけができるため、医療機関で紐づけを行えば、医療機関側がマイナポータルの利用規約への同意を促してしまうことになる。また、一旦紐づけが完了してしまえば取り消すことはできないため、取り消しを希望する患者さんとの間で新たなトラブルともなりかねない。
 さらに、昨今の半導体不足の影響で、オンライン資格確認システムに使用する機器なども不足しており、導入まで半年以上待たされているという医療機関も存在する。半導体の世界的需要の高まりやウクライナ情勢の影響で、物資供給が不安定な中で優先的に導入を進めていくべきものなのかは甚だ疑問である。
 オンライン資格確認システムの最大のメリットは健康保険の資格確認がその場でできることとされてきたが、2021年10月より支払い側で資格喪失後のレセプトの振替などの作業を行っており、返戻は減りつつあるため歯科での導入のメリットは少ない。導入を義務化すれば、必要のない新たな負担を強いられるなどのデメリットが大きくなる。
 コロナ禍で経済的に打撃を受けている医療機関に対し、マイナンバーカードの普及率の低さを解消するため、オンライン資格確認システムの導入を〝義務化〟し、負担を強いることが今求められていることなのか。マイナンバーカードの普及については、政府が正しく運用するのであれば、新型コロナウイルスに係る給付金などに活用をすることができることなどから、推進をしていく必要性もあると思われるが、現状ではさまざまな点で不安が払しょくできない。そもそも医療をマイナンバーカード普及の出しに使うことについて、国民に理解を得られているとは到底考えられない。
 以上よりオンライン資格確認システムの導入〝義務化〟に反対する。

2022年6月9日
東京歯科保険医協会
第5回理事会

記念講演、坪田有史会長が登壇/第50回定期総会

チタン・CAD/CAM冠の適用拡大求める

 定期総会後半の「記念講演」では、協会の坪田有史会長が壇上に上がった。テーマは「臨床の視点で金パラの代替を考える」。昨今の診療報酬改定や基本診療料の点数の変遷、金パラの代替材料についての現状、そして近未来について持論を展開した。司会は阿部菜穂理事が務めた。
 
2022年度診療報酬改定について

 坪田会長は、まず2022年度診療報酬改定について触れ、基本認識、基本的視点として、口腔疾患の重症化予防、口腔機能低下への対応の充実、QOLに配慮した歯科医療の推進を挙げ、それらを通じて、国民の健康寿命の延伸とQOLの改善に寄与することと説明した。
 診療報酬改定率については、全体としてプラス0・43%(財源:300億円)、歯科では、プラス0・29%の87億円と紹介。坪田会長が歯科医師となった1989年には国民医療費における歯科医療費の割合は10%であったが、20年後の2019年では6・8%に減ってしまったとし、国民医療費における歯科医療費の割合が10%で維持できていれば、約1兆円も少ない現状であると指摘した。

基本診療料の変遷を前に

 2022年度改定で、歯科の初診料は261点から264点、再診料は53点から56点へと、各3点ずつアップした。医科の初診料と再診料は、歯科の初診料より24点、再診料は17点高く、会員からは「医科と同じ点数にすべき」との声があがっている。歯科は初診料を1点上げるのに8億円、再診料を1点上げるのに32億円、初診料・再診料を各1点ずつ上げるのに40億円が必要とし、2022年度改定で初診料・再診料を各3点ずつ上げたので、120億円の財源の確保が必要と説明した。その上で、歯科の財源の不足分は、P基処の廃止により充当されたと説明した。P基処の廃止により、110億7000万円の削減となるため、初診料・再診料の点数が上がったメリットを享受できていないと感じる歯科医師が多いと指摘した。
 さらに、過去10年間における初診料・再診料の変遷において、点数は引き上げられているものの、消費税率の引き上げに伴う対応分が含まれているため、実質的な基本診療料の評価には繋がっていないことを指摘し、歯科において国民の健康寿命の延伸やQOLの改善だけでなく、歯科に係る諸問題を改善するために歯科医療費の総枠拡大の必要性を強く訴えた。

金パラの代替材料

 保団連が実施した金パラモニター調査のデータを引用し、金パラ告示価格と実勢価格が乖離している状況や、パラジウム、金の先物チャート図をもとに、世界情勢の影響を受けやすく、投資家の投機対象となる材料を保険の材料としていることを問題視。また、歯科用貴金属の価格変動が歯科医療機関に与える影響を緩和するため、年4回公定価格の改定を行うなど、対応が行われたが、金パラ告示価格と実勢価格が乖離している状況は改善されないとし、抜本的な対応を国に求めていくと強調した。
 さらに、金パラによる歯冠修復の問題点として、審美障害や金属アレルギーが挙げられるが、接着の技術改善により、接着ブリッジやCAD/CAM冠などのメタルフリーの歯冠修復物の適用が拡大していると説明した。金パラの代替材料として、メタル系ではチタン、コバルトクロム合金、合成樹脂としては、コンポジットレジン(HJC、CRインレー)、ハイブリッドレジンブロック(CAD/CAM冠、CAD/CAMインレーなど)、PEEK、無機材料としては、セラミック(ジルコニア)をピックアップした。
 ただし、フルジルコニアクラウンの保険収載は財源が大幅に増加しなければ厳しいという見解を示した。今後は、国としても脱メタル化を推し進めているため、メタルフリーの歯冠修復における保険適用の拡大がさらに進むとの見解を示した。
 そのほか、各材料の臨床における特徴や問題点を実際の臨床データを用いながら解説。保険適用となったチタンの改善案としては、①CAD/CAM冠用のチタンブロックを用いて、CAD/CAM技術での製作を行う、②ブリッジへの適用拡大―の2点を挙げた。このうち、②のブリッジへの適用拡大については、保団連を通じて働きかけていくとした。
 そして、CAD/CAM冠の適用の問題として、第二大臼歯のすべてが残存していなければ第一大臼歯には適用不可となっているが、その条件におけるデータやエビデンスがあまりにも少ないと指摘した。一律的にルールに縛られているため、患者に保険で適切な治療を行うことが難しい状況にあることから、歯科医師の裁量を認めさせる必要があると強調した。

歯科医療費総枠拡大

 坪田会長は改めて金パラの代替材料として、チタンやCAD/CAM冠の適用拡大の必要性を強調し、患者への適切な治療のためには、歯科医師の裁量権の拡大が不可欠とし、歯科業界を取り巻く諸問題の抜本的な解決策として、歯科医療費の総枠拡大の必要性を訴えた。
 そして、歯科医療費の総枠拡大が果たせなければ、歯科医師が望む保険適用の拡大や、増点は望めないとし、国会議員や厚生労働省への働きかけを強めていくと強調した。
 歯科医師が日々できることは、高点数を理由とする個別指導を恐れた萎縮診療に陥るのではなく、患者、国民の健康維持、健康寿命の延伸のため、エビデンスに基づいた正しい保険請求を行うことであり、それが歯科医療費の総枠拡大に繋がると訴え、結びとした。
  講演後の質疑応答では、オーラルスキャナーを用いたCAD/CAMインレーの保険収載の可能性など、フロアーからの質問に、坪田会長が回答した。

第50回定期総会を開催/22年度活動計画ほか7議案を承認

当会第5代会長 坪田有史

定期総会

 協会は6月19日、中野サンプラザで第50回定期総会を開催した。会場には一般会員と役員合わせて50名が出席。委任状は994名で、両者を合わせると1044名の出席となり、総会成立要件である会員数の10%を超え、総会は成立した。昨年と一昨年は総会のみの開催であったが、新型コロナウイルス感染拡大が緩和したこともあり、今回は記念講演を3年ぶりに実施し、協会の坪田有史会長が講師を務めた。

 前年度の目標を振り返る

 総会は、山本鐵雄副会長の開会の言葉で幕を開け、冒頭、坪田会長が挨拶に立ち、まずコロナ禍にも関わらず総会に参加いただいた会員に対し謝意を表明。さらに、2021年度の総会で掲げた3つの目標を振り返り、1つ目の会員数増加については「6月19日時点で5949名が会員となり、6000名という大台が見えてきた。引き続き会員拡大に注力したい」と強調。2つ目の協会のデジタル化、特にペーパーレス化推進については「まだ紙媒体もあるが、徐々に進んでいる」と説明。3つ目の事務局のスキルアップに関しては「各個人が自己研鑽しており、一定のスキルアップができた」と報告した。
 その後、早坂美都理事が関係団体や議員からの祝電を披露したほか、多数のメッセージが寄せられていることを紹介。議事に入る前には、議長に橋村威慶氏(文京区)、副議長に池川裕子氏(葛飾区)が選出され、議事が進められた。

 第1~7号議案が賛成多数で承認

 続いて、議案7本の審議に入ったが、加藤開副会長が第1号議案「2021年度活動報告の承認を求める件」、半田紀穂子理事が第2号議案「2021年度決算報告の承認を求める件」、西田紘一監事が「会計監査報告」を提案し、いずれも賛成多数で承認された。
 次に、坪田会長が第3号議案「役員の件(顧問の承認)」、川戸二三江副会長が第4号議案「2022年度活動計画案の件」、半田理事が第5号議案「2022年度予算案の件」、坪田会長が第6号議案「選挙管理委員承認の件」、最後に川本弘理事より第7号議案として「決議採択の件」がそれぞれ提案され、いずれも賛成多数で承認された。

 質疑応答 丁寧に回答

 議案の質疑応答では、会場から「オンライン資格確認は医療DX化の基本とされ、電子カルテの標準化なども進めるとされているが、現状では電子カルテをまともに活用できるシステムはなく、対応するのはかなり厳しい。協会はどのように考えているか」「診療報酬改定では、歯科医療の改善が依然として実現されていないように思う。歯保連で実施したタイムスタディ調査の結果をもとに、さらに行政に改善を求めるなど、もっと歯科医師の技術料が評価されるような仕組みにしてほしい」「オンライン資格確認の義務化は行政の暴走であるように感じる。行政に改善を求めてほしい」などの質問や要望があり、担当役員が丁寧に回答した。
 最後に松島良次副会長が挨拶を行い、閉会した。

第50回定期総会における質疑

(質問:会員S先生)

コロナ禍の中で世の中は物価の上昇、また診療報酬の改定はゼロ改定であり歯科医院の経営環境は一層厳しくなっている。そんな中、協会の役員を務めている手当のベースアップは更なる協会活動のためにも必要だと思うが、ベースアップする予定はあるのか。

(回答:坪田有史会長)

歯科医師のおける環境のことはおっしゃるとおりであり、そのような提言をしていただき感謝申し上げます。しかしながら、他団体などと比較しても決して手当は安いわけではなく、私自身の感覚では妥当な金額と考えています。あくまでも金額については個人的な感覚など、異なる点もあり、歯科業界がさらに苦しくなっていくこともあるかと思うので、今後そのようなご意見を踏まえ、検討していく必要があると思います。ご意見ありがとうございました。

 

(質問:会員M先生)

歯科業界は引き続き厳しいと思うが、協会の会費の値上げがされる可能性はあるのか。

(回答:坪田有史会長)

他の保険医協会の会費と比較して東京歯科は最も低い水準にあるものの、総会の中で報告した通り健全な財政を維持しています。そういった中で会費を値上げする理由はないので現時点では値上げする必要はないと考えています。

 

(質問:会員S先生)

歯科医療の改善について。今回の改定の中で、新技術や新病名、新しい検査なども盛り込まれました。しかし、開業してから30年になりますが、改善されているという実感がわきません。それは技術の部分が評価されず、低い点数のままで改善されていないことが原因であると思う。その評価方法についてはタイムスタディなどが挙げられ、歯保連でタイムスタディについての考え方が示されたが考慮されているとは思えない。その結果、人数を多くさばくことによって点数を多く稼ぐしかなくなる。協会ではタイムスタディの活用など考えているのか。考えていなければぜひ検討していただきたい。

(回答:坪田有史会長)

改定はやはり財源という大きな問題があり、増点するのは厳しいのだと思う。タイムスタディの報告を厚労省はあまり参考にしていないように感じます。そうなるとそれをもとに点数の増点を要請するのは厳しい。しかし、先生方の臨床が満足いくように協会として改善を求めていく必要はあると考えている。

 (質問:会員S先生)

わかりました。歯科はブラック企業のようなものだと行政に強く訴えてほしい。

 

(質問:会員M先生)

オンライン資格確認の問題で、マイナンバーカードの義務化など報じられており、行政の暴走を感じる。協会としてはどのように捉えているか。

(回答:坪田有史会長)

協会として義務化には強く反対をしている。義務化というと一律でそれを強制させることになるので、それを容認するのは厳しいと思う。義務化には反対だが、将来的に必要とされ、取り入れていく必要はあるように感じている。そのバランスを踏まえて協会として活動していく必要があると思う。

 

(質問:会員N先生)

協会には休業保障で非常にお世話になり感謝している。先ほどのM先生の質問にオンライン資格確認があった。その歯科のDX化の中で電子カルテ化というものも挙げられているが、歯科で電子カルテとして機能しているものがあるかは疑問である。もし本当に電子カルテ化というものを目指すのであれば、保険診療の仕組み自体を大幅に見直す必要もあるのではないか。協会としての考えを伺いたい。

(回答:坪田有史会長)

オンライン資格確認はマイナンバーカードから患者の情報を得るということになるが、その際はオンライン請求が要件になっています。しかし、それはオンライン請求のみでカルテの内容を見るということではありません。それもゆくゆくは対応の必要があるかもしれませんし、将来的には国はそれを一定進めたいのだと思います。先生のご質問は電子カルテについてですが、まともに機能しているものがあるかどうかはわからないですが、単に電子レセプトにのみ対応している先生方が多いと思います。医科は電子カルテに対応しているという体裁になっているが、実態としては100%出来てはいないのではないでしょうか。今後は実態を見て、電子カルテについての必要性などを考えなければならないでしょう。協会としては、まず電子カルテの現状について改めて調査した上で会員に周知していく必要があると思います。

(回答:馬場安彦副会長)

協会はレセコンメーカーと懇談会を実施しています。電子カルテに求められていることをレセコンメーカーの中で対応できている、できていない、費用面などの話題も大事です。先生からのご質問など、具体的な話がメーカーから回答できるかもしれません。ぜひレセコンメーカーと懇談会に向けてご意見をお寄せいただきたい。

新型コロナウイルス感染症は 転換期を迎えている Special Serial No.5/完

次の新たな感染症に対峙する医療・公衆衛生体制の充実を

2020年1月、国内で初めて新型コロナの感染事例が確認された頃には、「封じ込め」を目指す「戦略」が取られ、感染者の隔離のみならず濃厚接触者にも厳重な措置をとるなどの「戦術」が開始されたが、その時点においてはそれなりの妥当性があった。しかしながら、本連載で既述したように、現在においては、「封じ込め」が不可能であること、ワクチンや診断・治療法が確立し、致死率が着実かつ大幅に減少してきていることから、「戦略」を見直し、「戦術」を改めるときに至っている。

わが国において一刻も早くとるべき戦略

これまでの感染者の全数届出・隔離、濃厚接触者の行動制限という「封じ込め」を目指す戦略から、「重症化・死亡者数の最小化」とともに「恐怖の病原体というイメージの払拭」を目指す戦略へ転換する段階に現在到達している。
重症化や死亡のリスクは、高齢者や高度肥満者、コントロールが良くできていない糖尿病等の基礎疾患を合併している患者という知見が明らかとなっている。小児や若年者は、無症状か軽症者が大多数であり、感染すること自体を問題視するよりも、重症化リスクが高く死に至る人をいかに守るかに保健医療資源を充てていくべきである。
また、「防災」ではなく「減災」というコンセプトがあるように、感染リスクゼロを目指すような感染拡大の「防止戦略」から、感染機会や重症化リスクの「軽減戦略」への発想転換も考慮されるべきではないか。

重症化・死亡者数の最小化に向けて

広くまん延し、封じ込めができないということから、今となっては濃厚接触者の行動制限の意義は低く、即刻止めるべきである。その上で、感染者の重症化予防のための的確な診断、適時適切な治療へのアクセスの確保が重要であり、保健所を絡ませず、診療所等の外来機能による早期発見・早期治療、医療機関連携による患者紹介、転院、救急搬送といった通常の医療システムに戻すことが急務である。そのためにも、新型コロナの全数届出は不要とし、定点医療機関におけるサーベイランス対象感染症といった運用に切り替え、風邪やインフルエンザのごとく、一般の診療所や中小病院における受け入れがなされるようにすることが重要である。また、流行時には、高齢者施設や病院等における会話時のマスク着用など感染リスクの軽減も必要であろう。
なお、重症化予防の事前策としての、高齢者、高度肥満や基礎疾患等を有する者に対する重症化予防の「個人防衛」としての定期的なワクチン追加接種の勧奨も必須である。

もはや「恐怖の感染症」ではない

元々「恐怖の病原体」というものは、社会から隔離・排除すべきという意識と根強い「偏見・差別」意識と連動する。これは、ハンセン病やHIV感染症での経験そのものであり、治療法等の確立によって「恐怖の病原体」「不治の病」では無くなり、その疾病イメージが変わり、偏見・差別問題は改善するという歴史が繰り返されている。
一方、高齢者などでは続発する細菌性肺炎等で死に至ることが多々ある風邪症候群や季節性インフルエンザなどは、仮に罹患しても、偏見・差別を受けることはほぼ無く、それは「恐怖の病原体」というイメージが作られていないからである。このため、新型コロナウイルス感染症に対する疾病イメージを変えて、感染のリスクはすべての人にあり、感染自体を恐れるべきでないという政策を進め、偏見・差別、風評被害を無くしていくことが求められている。

最後に

幸い、4回目のワクチン接種は高齢者および基礎疾患を有する者を対象にしたり、屋外での非会話時のマスク着用は不要としたりなど、私が提言してきた戦略・戦術が徐々に政府でも取り上げられつつある。
新型コロナウイルス感染症問題の収束に期待するとともに、今回の教訓を踏まえた次の新たな危機的な感染症の発生に向けた医療・公衆衛生体制の更なる充実も期待して、本連載を終えたい。


山本光昭(やまもと・みつあき)
前 東京都中央区保健所長 / 現 社会保険診療報酬支払基金 理事

1984年3月、神戸大学医学部医学科卒業後、厚生省に入省。横浜市衛生局での公衆衛生実務を経て、広島県福祉保健部健康対策課長、厚生省健康政策局指導課課長補佐、同省国立病院部運営企画課課長補佐、茨城県保健福祉部長、厚生労働省東京検疫所長、内閣府参事官(ライフサイエンス担当)、独立行政法人国立病院機構本部医療部長、独立行政法人福祉医療機構審議役、厚生労働省近畿厚生局長などを歴任し、2015年7月、厚生労働省退職。兵庫県健康福祉部医監、同県健康福祉部長、東京都中央区保健所長を経て、2021年4月より現職。

第50回定期総会 記念講演/チタン・CAD/CAM冠の適用拡大求める

定期総会後半の「記念講演」では、協会の坪田有史会長が壇上に上がった。テーマは「臨床の視点で金パラの代替を考える」。昨今の診療報酬改定や基本診療料の点数の変遷、金パラの代替材料についての現状、そして近未来について持論を展開した。司会は阿部菜穂理事が務めた。

―2022年度診療報酬
改定について
坪田会長は、まず2022年度診療報酬改定について触れ、基本認識、基本的視点として、口腔疾患の重症化予防、口腔機能低下への対応の充実、QOLに配慮した歯科医療の推進を挙げ、それらを通じて、国民の健康寿命の延伸とQOLの改善に寄与することと説明した。
診療報酬改定率については、全体としてプラス0・43%(財源:300億円)、歯科では、プラス0・29%の87億円と紹介。坪田会長が歯科医師となった1989年には国民医療費における歯科医療費の割合は10%であったが、20年後の2019年では6・8%に減ってしまったとし、国民医療費における歯科医療費の割合が10%で維持できていれば、約1兆円も少ない現状であると指摘した。

―基本診療料の変遷を前に
2022年度改定で、歯科の初診料は261点から264点、再診料は53点から56点へと、各3点ずつアップした。医科の初診料と再診料は、歯科の初診料より24点、再診料は17点高く、会員からは「医科と同じ点数にすべき」との声があがっている。歯科は初診料を1点上げるのに8億円、再診料を1点上げるのに32億円、初診料・再診料を各1点ずつ上げるのに40億円が必要とし、2022年度改定で初診料・再診料を各3点ずつ上げたので、120億円の財源の確保が必要と説明した。その上で、歯科の財源の不足分は、P基処の廃止により充当されたと説明した。P基処の廃止により、110億7000万円の削減となるため、初診料・再診料の点数が上がったメリットを享受できていないと感じる歯科医師が多いと指摘した。
さらに、過去10年間における初診料・再診料の変遷において、点数は引き上げられているものの、消費税率の引き上げに伴う対応分が含まれているため、実質的な基本診療料の評価には繋がっていないことを指摘し、歯科において国民の健康寿命の延伸やQOLの改善だけでなく、歯科に係る諸問題を改善するために歯科医療費の総枠拡大の必要性を強く訴えた。

―金パラの代替材料
保団連が実施した金パラモニター調査のデータを引用し、金パラ告示価格と実勢価格が乖離している状況や、パラジウム、金の先物チャート図をもとに、世界情勢の影響を受けやすく、投資家の投機対象となる材料を保険の材料としていることを問題視。また、歯科用貴金属の価格変動が歯科医療機関に与える影響を緩和するため、年4回公定価格の改定を行うなど、対応が行われたが、金パラ告示価格と実勢価格が乖離している状況は改善されないとし、抜本的な対応を国に求めていくと強調した。
さらに、金パラによる歯冠修復の問題点として、審美障害や金属アレルギーが挙げられるが、接着の技術改善により、接着ブリッジやCAD/CAM冠などのメタルフリーの歯冠修復物の適用が拡大していると説明した。金パラの代替材料として、メタル系ではチタン、コバルトクロム合金、合成樹脂としては、コンポジットレジン(HJC、CRインレー)、ハイブリッドレジンブロック(CAD/CAM冠、CAD/CAMインレーなど)、PEEK、無機材料としては、セラミック(ジルコニア)をピックアップした。
ただし、フルジルコニアクラウンの保険収載は財源が大幅に増加しなければ厳しいという見解を示した。今後は、国としても脱メタル化を推し進めているため、メタルフリーの歯冠修復における保険適用の拡大がさらに進むとの見解を示した。
そのほか、各材料の臨床における特徴や問題点を実際の臨床データを用いながら解説。保険適用となったチタンの改善案としては、①CAD/CAM冠用のチタンブロックを用いて、CAD/CAM技術での製作を行う、②ブリッジへの適用拡大―の2点を挙げた。このうち、②のブリッジへの適用拡大については、保団連を通じて働きかけていくとした。
そして、CAD/CAM冠の適用の問題として、第二大臼歯のすべてが残存していなければ第一大臼歯には適用不可となっているが、その条件におけるデータやエビデンスがあまりにも少ないと指摘した。一律的にルールに縛られているため、患者に保険で適切な治療を行うことが難しい状況にあることから、歯科医師の裁量を認めさせる必要があると強調した。

―歯科医療費総枠拡大
坪田会長は改めて金パラの代替材料として、チタンやCAD/CAM冠の適用拡大の必要性を強調し、患者への適切な治療のためには、歯科医師の裁量権の拡大が不可欠とし、歯科業界を取り巻く諸問題の抜本的な解決策として、歯科医療費の総枠拡大の必要性を訴えた。
そして、歯科医療費の総枠拡大が果たせなければ、歯科医師が望む保険適用の拡大や、増点は望めないとし、国会議員や厚生労働省への働きかけを強めていくと強調した。
歯科医師が日々できることは、高点数を理由とする個別指導を恐れた萎縮診療に陥るのではなく、患者、国民の健康維持、健康寿命の延伸のため、エビデンスに基づいた正しい保険請求を行うことであり、それが歯科医療費の総枠拡大に繋がると訴え、結びとした。
講演後の質疑応答では、オーラルスキャナーを用いたCAD/CAMインレーの保険収載の可能性など、フロアーからの質問に、坪田会長が回答した。