2022.04.01 (6)田口円裕氏(前厚生労働省医政局歯科保健課長)
#厚生労働省 #診療報酬 #予防歯科 #地域医療 #医科歯科連携 #東京歯科大学
今次改定では、かかりつけ歯科医機能、訪問診療及び医科歯科連携の拡充が行われ、わずかだが基礎的技術料が引き上げられた。しかし、歯科の改定率は+0.29%と近年まれにみる低い改定率となっており、初・再診料を引き上げるために日常診療の点数が犠牲になるなど、点数の付け替えが行われた。
「一物二価」との批判のあった歯周病安定期治療の(Ⅰ) と(Ⅱ)が統合されたが、これまで歯周病安定期の治療に真摯に取り組んできた歯科医院の努力を置き去りにした改定の手法には納得がいかない。
長期化する新型コロナウイルス感染症により、治療の中断あるいは受診を手控える状況が頻繁に起きている。その結果、徐々に患者が減少し、医院経営をあきらめざるを得ない会員も出ている。
今次改定は、感染対策によりコストがかかる歯科医院経営からみて、不十分と言わざるを得ない改定である。
金銀パラジウム合金(以下、金パラ)の原価割れの解消を求めて、協会は改善を求める署名を厚生労働省に提出した。今次改定では乖離幅に係らず3か月ごとに歯科用貴金属価格が改定されるほか、その元となる素材価格の参照時期のタイムラグが改定の3ヶ月前から2ヶ月前までに短縮される。タイムラグの短縮により市場価格との乖離は多少改善されるが、会員が求めていたのは原価割れが生じない仕組みである。
今次改定で償還価格が1g当たり3,149円に引き上げられるが、ロシアによるウクライナ侵攻などによって特にパラジウムが高騰し、医療機関での金パラの購入額はこれを超えて赤字のままである。改定があっても赤字が解消されない異常事態だ。
厚生労働省は、今次改定の附帯意見の中に、随時改定の見直し後の影響を検討することを盛り込まなかった。消極的である。まずは、7月の随時改定を待つことなく、早急な対応を図る必要がある。
金パラの高騰で患者負担も増えるため、国が責任をもって金パラの配給を行うなどの対策を講ずるべきである。今次改定でレジン前装チタン冠が導入されたが、製作は鋳造に限られているため、鋳造欠陥が発生しやすい。粗悪な補綴物を提供できないため歯科技工士を悩ませている。また、チタンによるブリッジは保険適用外であり、レアメタルを含む金パラを使用することは、心も懐にも痛みを感じる。
CAD/CAMインレーの導入も金パラの代替としての評価はするものの、金パラに比べ耐久性が劣る。再製作となればその分医療費が増えることや患者の信頼を損なうことに繋がる。
医科歯科連携では、総合医療管理加算の施設基準の廃止及び対象疾病にHIVを追加、ならびに医科が歯科に訪問診療を依頼する際の診療情報提供料(Ⅰ)の加算の対象拡大などが行われた。しかしながら、総合医療管理加算の対象疾病の追加は1疾病のみ、さらに周術期等口腔機能管理料に関する推進策がないなど、改善は小幅である。
訪問診療では、在宅療養支援歯科診療所2の施設基準の要件が引き下げられたが、訪問診療に取り組む医療機関を推進する策は示されていない。
今次改定で歯科改定率が0.29%と低値であったが、重要項目に十分な評価がされなかった。歯科が国民に果たす役割を発揮させるためには、相応の財源を確保した上で、評価の充実を行う必要がある。
本声明は、歯科の低い改定率で不十分な評価がされていない問題を指摘し、根本的な問題である歯科医療費の総枠拡大を求めるものである。
2022年3月10日
第22回理事会
2022年度歯科診療報酬の歯科改定率は、僅か0.29%の引き上げに留まった。改定財源の確保のため、歯周基本治療処置、SPTⅡなどの点数の廃止ならびに点数の付け替えが行われた。今次改定では、院内感染防止対策をさらに推進するための初・再診料及び抜髄などの基礎的技術料の引き上げなど、個々では改善が図られているが、全体でみればとてもプラスを実感できる内容ではない。
また、金銀パラジウム合金(金パラ)の原価割れの解消を目指し、歯科用貴金属価格の随時改定の仕組みが変更されるが、市場価格と保険償還価格の差額が発生するという根本的な問題は全く解消されていない。この不十分な対策をあざ笑うかのように、ロシアのウクライナ侵攻を起因としたパラジウムの著しい高騰を受け、既に多くの医療機関で原価割れに陥っている。適切な医療を提供するために公的資金を導入してでも価格の安定を図るべきである。
一方、患者の受診状況は、コロナ禍も加わり、経済的な理由による治療の中断あるいは受診を手控える状況が多数起こっている。こうした状況の中、政府は今年10月から「75歳以上の医療費窓口負担2割化」を実施しようとしている。
私たちは、診療報酬の引き上げとともに、患者負担増の中止及び患者窓口負担の軽減を求め、以下の事項を要望する。
記
一、歯科医療費の総枠拡大を行い、安心安全な医療を提供できるよう診療報酬を改善すること
① 歯科保険医の診療対価としての基礎的技術料を更に引き上げること
② 診療報酬の複雑すぎるルールを是正すること
一、金銀パラジウム合金の原価割れを公的資金導入により解消すること
一、「75歳以上の窓口負担2割化」の方針を撤回し、患者窓口負担を軽減すること
2022年3月 東京歯科保険医協会 新点数説明会
参加者一同
口腔細菌定量検査において参考にするとされている「口腔バイオフィルム感染症に対する口腔細菌定量検査に関する基本的な考え方(令和4年3月日本歯科医学会)」は、学会のホームページに掲載されています。下記にアドレスをご案内しますので、下記よりご覧ください。
【講習会名】
第1回 歯初診、外来環、か強診、歯援診のための講習会
【日 時】
5月29日(日)
▼13時~18時30分(予定)『歯初診、外来環、か強診、歯援診』
▼16時~18時30分(予定)『歯初診、外来環』
【場 所】
・TAP高田馬場 https://t-ap.jp/room/access.html
➡13時~18時30分(予定)『歯初診、外来環、か強診、歯援診』
➡16時~18時30分(予定)『歯初診、外来環』
【対象者】
会員(東京歯科保険医協会の会員に限ります)
※代理の方の出席は認められません。
※未入会の先生はご入会が必要になります。
【定 員】
90名(定員になり次第、締め切らせて頂きます。)
※感染拡大防止の観点から定員を縮小しての開催となります。
【講 師】
・繁田雅弘 氏(東京慈恵会医科大学精神医学講座 教授)
・坂下英明 氏(明海大学名誉教授/朝日大学客員教授/我孫子聖仁会病院口腔外科センター長)
・馬場安彦 氏(東京歯科保険医協会 副会長)
・森元主税 氏(東京歯科保険医協会 理事)
【内 容】
在宅医療・介護等、歯科疾患の重症化予防に資する継続管理(口腔機能の管理を含む)、高齢者の心身の特性(認知症を含む)、院内感染防止、緊急時対応、医療事故、偶発症等
※施設基準の届出に必要な研修要件を網羅できます。
【予約方法】※以下のURLからお申込みください。
https://forms.gle/vczEJC6sqCXSgVPv7
【問い合わせ先】
☎03-3205-2999(経営管理部・地域医療部)
【留意事項】
※参加票(受講票)の発行はございません。当日は、筆記用具・会員証(お持ちの方)をお持ちください。
※遅刻・途中退室の場合は、修了証の発行はできません。
※修了証の発行は、会員ご本人に限らせていただきます。
関東信越厚生局東京事務所から、都内の保険医療機関に対して、集団指導の動画配信の通知が送られています。
リンク先を下記の通りご案内しますので、ご確認ください。
〇【動画】令和4年度診療報酬改定の概要(歯科)(厚生労働省ホームページへのリンク)
【その他】
令和4年度診療報酬改定説明資料等について(全体)(厚生労働省ホームページへのリンク)
合格率は全体で61.6%
新卒のみは1,542名で77.1%占める
厚生労働省は3月16日、第115回歯科医師国家試験の合格者を発表した。試験そのものは本年1月29~30日の2日間にわたり、東京都他7会場で実施されている。
◆合格者は2000名を割る
今回の歯科医師国試は、全体では出願者数3,667名(うち、新卒者は2,413名)、受験者数3,198名(同1,999名)、合格者数1,969名(同1,542名)となっており、合格率は全体で61.6%、新卒のみで見ると77.1%となっており、合格者数は2018年の第111回国試から2021年の第114回国試まで、4年続けて2000名を上回っていたが、ここに来て2022年の第115回国試は2000名を割る結果となった。また、全体の合格率は前回の64.6%よりも3.0ポイント低くなっている。
なお、今回の合格発表は、前回に引き続き、新型コロナウイルス感染症対策のため、厚労省2階大講堂での名簿閲覧は中止された。
◆女性の合格者
一方、合格者数を男女別に見ると、第115回国試は合格者1969人のうち女性合格者は904名で全合格者の45.9%を占めている。女性の占める率のみを遡ってみると、114回:42.0%、113回:42.3%、112回:42.5%、111回:43.0%となっており、第115回は過去5年間で最も高い比率で増加傾向を示している。
◆今回の国試の合格基準
なお、厚労省が明らかにしている今回の第115回国試の合格基準は以下の通りである。
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第 115 回歯科医師国家試験の合格基準は、一般問題(必修問題を含む)を1問1点、臨床実地問題を1問3点とし、
① 領域A(総 論) 59点以上/ 99点
② 領域B(各論Ⅰ~Ⅱ) 106点以上/162点
③ 領域C(各論Ⅲ~Ⅴ) 131点以上/209点
④ 必 修 問 題 64点以上/ 80点
但し、必修問題の一部を採点から除外された受験者にあっては、必修問題の得点について総点数の80%以上とする。

※第115回歯科医師国家試験合格者発表に関する厚労省ホームページは以下を参照。
― 4月の診療報酬改定でCAD/CAMインレーが保険収載されますが。
坪田有史会長:本紙2・3面(※)に、2022年度診療報酬改定の主なポイントを掲載しました。その内容は、本稿の執筆時点と同じく、2月9日の中医協総会で「答申」が佐藤英道厚生労働副大臣に提出された段階のものです。なお、3月24日開催予定の第1回新点数説明会の前に本会会員に送付させていただく「2022年改定の要点と解説」を全国の協会・医会の担当者・事務局員とともに、現在、鋭意作成中です。今次改定の新規項目や変更点を分かりやすく解説し、会員の先生方の理解が深まる内容となるよう議論し、編集を進めております。今しばらくお待ちください。
なお、今次改定で新たに保険収載されるCAD/CAMインレーについて、すでに協会や私にも多くの質問が寄せられており、注目されている項目といえます。臼歯部1歯につき技術料は750点ですが3月上旬に保険医療材料、すなわちCAD/CAMインレー用に使用できるレジンブロックの材料料が通知されるため、現時点では合計点数は示すことができません。また、拘束力はありませんが、大臣告示(1988年5月)による歯科技工士の製作技術料7割、歯科医師の製作管理料3割からみると、歯科技工士への委託製作技工料は5250円となり、歯科医師側は2250円になります。歯科技工士に委託しないで歯科医師自身がレジンインレーを製作すれば、レジンインレーの複雑な点数が、改定後も材料料が同じと仮定すると、今次改定で220点(2200円)と同等になります。厚労省の担当者は、そこまで考えて技術料を決めているのでしょうか。
現在、特定保険医療材料の機能区分として、CAD/CAM冠用材料は小臼歯部、大臼歯部および前歯部により、ⅠからⅣまでに区分されていますが、CAD/CAMインレー用材料がどの区分のレジンブロックを使用できることになるかは、まだ分かりません。一方、すでに市販され、保険治療で使用されているCAD/CAM冠用のレジンブロックの複数製品の添付文書を調べると、多くの製品で使用用途に「インレーの歯冠修復物」の記載があります。すべての市販の製品は調べられませんでしたが、保険医療材料の多くの製品がすでに「インレーの歯冠修復物」として薬機法の承認を得ていると推測されます。
※参照=東京歯科保険医新聞3月号
― 関連する点数を。
坪田:3月の通知を待たなければいけませんが、歯冠形成は修形120点、あるいはKP「単純なもの」60点、「複雑なもの」86点、印象採得料は、連合印象で64点、咬合採得料は18点、装着材料料と現行のメタルインレーやレジンインレーと同じと考えられます。装着時の装着材料料は、歯科用合着・接着材料Ⅰ(接着性レジンセメント)になるので17点、装着料45点に加え、装着前に接着面に対して内面処理(アルミナ・サンドブラスト処理とシランカップリング処理)を行った場合、内面処理加算1.45点が算定できます。余談になりますが、この内面処理加算1は、今次改定でCAD/CAD冠、高強度硬質レジンブリッジ、そしてCAD/CADインレーのみで認められることになりますが、レジンインレー、硬質レジンジャケット冠の装着時にも通常行っている処理なのに、これらの修復物には算定が認められていない点には疑問があります。認めないのならば、その理由を明確に示すべきです。
― 窩洞形成での形成量はどうなりますか。
坪田:特定非営利活動法人日本歯科保存学会が医療技術評価提案書(保険未収載技術用)で「CAD/CADインレー修復」を作成し、昨年6月に日本歯科医学会から厚労省に提出されました。したがって、通称「学会ルート」による保険収載となります。その提案書には、「従来通りの間接法による2日法および口腔内スキャナーでの光学印象採得で行う1日法も可能である」と記載されています。すなわち、「CAD/CADインレー」と併せ、口腔内スキャナーによる光学印象採得の保険収載も希望した文章になっています。
ご質問の窩洞形成での形成量は「レジンインレーと同様にインレー歯冠形成を行い…」と記載されているのみです。レジンインレーに使用する材料よりも既存のCAD/CAD冠用レジンブロックの機械的強度は高いので、レジンインレーよりも形成量が少なくて済むことはあっても、増えることはないでしょう。なお懸念される歯髄症状に対しては、その対策として有効な象牙質レジンコーティングが、歯冠形成の生PZのみでの算定で、修形やKPでは算定できず、窩洞形成後に象牙質レジンコーティングを行っても無償サービスとなることは問題です。
歯学教育の教科書である「保存修復学21 第3版」(永末書店)のコンポジットレジンインレー修復の章には、「メタルインレー修復窩洞よりも深めに形成し、小窩部で1.5mm、インレー体に平均2mmの厚みを持たせる。特に、Ⅱ級窩洞ではイスムス部で破折しやすいので、十分な厚みを与える」と記載されています。なお今まで保険に新しい技術が収載された際は、日本歯科医学会から臨床指針が発表されています。したがって、4月の改定時前後にCAD/CADインレーの臨床指針が示されると思われますので、参考にしてください。
東京歯科保険医協会 会長 坪田 有史
(東京歯科保険医新聞2022年3月号8面掲載)
2021年10月20日よりマイナンバーカードの保険証利用の本格運用が始まりました。
患者さんから「マイナンバーカードしか持ってきていないのだが、これだけで受診ができると聞いた」と言われ、対応をどうしたらいいかなどといった相談が寄せられています。オンライン資格確認システムを導入していない場合はマイナンバーカードの保険証利用はできません。
また、従来通り健康保険証のみでの保険診療は今後も可能です。オンライン資格確認システムの導入は義務ではありませんので、導入していない場合は「導入していないため使えません」と伝えていただいて問題ありません。
オンライン資格確認システムについては、初期費用の補助は出ますが、ランニングコストは歯科医療機関が負担することになります。ほかにマイナンバーカードの保険証への紐づけなどを患者さんに説明する手間や場所の確保なども発生する上に、メリットがあまりないため、協会では「導入はよく検討し、慎重にしてほしい」を呼びかけています。
以下は患者さんに向けた「これまで通り健康保険証を持参してください」という内容の院内掲示ポスターです。ぜひご活用ください。
WEBに係る歯科関連の法令やトラブル対応などについて、
歯科専門にサイト制作、運用、コンサルディングを手掛ける専門家が解説する本連載。
今回は「ネット上の口コミについて」の3回目―。
Googleの口コミに書かれた悪評に、どう抗うかが今回のポイントです。
一番良い方法は「気にしないこと」です。悪い口コミが多い歯科医院で盛況なところはいくらでもあります。口コミを見ないで医院を選ぶ方がとても多く、匿名の口コミを信用しないネットリテラシーを持った人も増えてきました。したがって、医院経営に一番メリットの多い対応方法は「気にしないこと」です。
しかしながら、悪評口コミは医院運営者の精神を蝕みます。そこで、簡単にできる対応方法を解説いたします。Googleの口コミは「Googleマイビジネス」という店舗情報の管理画面から「返信」が可能です。悪評は情緒的で誇大表現をしている場合が多く、院内でそのようなことが行われていない旨を理路整然と説明し、その口コミを「ただのクレーマー」にすることができます。
返信の最後には「誤解があるようでしたら一度医院へお越しください。納得いくまでご説明させていただきます」と書けば、その後のリアクションはなくなるどころか、その返信を見た第三者は診療所の真摯な姿勢を評価するのではないでしょうか。
事実として、返信をこまめに誠実に書いている医院の口コミは概ね良い評価ばかりになっていきます。これは悪評対策でもあり、良い評価を集める表裏一体の方法と言えます。Googleの口コミは、慌てず気にせず、もし評価が気になるようであれば返信機能の活用がおすすめです。
クレセル株式会社
(東京歯科保険医新聞2022年3月号11面掲載)
過去に類なき異例事態が医療界で勃発/次期2024年度診療報酬改定も新事態に備えを
◆界初認知症薬が大混迷米国でも保険適用がピンチに
最近、気になるニュースが2つある。一つは、アルツハイマー病(AD)治療薬「アデュヘルム」を巡る動きだ。ADの根本原因に働きかけ、症状の進行を遅らせると謳う薬剤としては、米国食品医薬品局(Food and Drug Administration/略称「FDA」)から世界初の承認をもらった。昨年6月のことだ。
アデュヘルムは、「ブロックバスター(大型薬)間違いなし」との華々しい船出であったが、その後の混迷ぶりがすさまじい。
まず、欧州や日本では承認が否決、保留された。さらに米国でも、AD患者の大半を占める高齢者向け連邦政府保険の当局が、今年1月に保険適用に厳しい条件を付ける案を出した。臨床試験(治験)参加の患者に限るというものだ。
4月に予定される最終決定もこの通りになれば、年間320万円の高額薬(これでも当価格から異例の半額値下げの結果だが)のため、まず売れないことになる。「事実上、この薬は死んだ」という声さえ市場では出ている。
米国の連邦政府内で、薬の承認当局と保険償還を決める役所で判断が真逆の方向になる異例の事態が生じているわけだ。
この混乱の原因は、承認申請に使ったこの薬の臨床試験(治験)での有効性データが不確かだったことにあるのだが、その背後には、①膨大な患者とその家族の窮状を救うこと、②薬事承認・保険償還での科学的エビデンスの確保、③保険財政への巨大インパクトとの折り合いをどうするのか―など、極めて現代的かつ社会的課題が存在している。
◆保険適用除外も検討課題?製薬団体トップが異例の発言
「おやっ」と思ったのはもう一つ。今年1月の日本製薬工業協会(製薬協)の岡田安史会長の「公的保険給付範囲の見直しに関する国民的議論が必要」との発言だ。医薬品の保険償還対象を狭めることも検討に値する、というものだ。
1個社ではなく、製薬団体のトップが、自らの権益縮小につながりかねないことに踏み込むのは、これまでは一種の〝タブー〟だった。超異例発言である。
その背後には、少子高齢化が山場を迎え、構造的に膨らむ日本の医療保険財政問題がある。診療報酬改定で、医科・歯科・薬局に比べさらにきつい寒風にさらされるのが製薬業界の定位置だ。すでに、薬価改定の毎年実施も始まっており、最近は、後発薬や特許切れ先発薬(長期収載品)の引き下げはある程度甘受しても、利益柱の特許新薬の薬価だけは死守しようという姿勢が製薬業界トップには見え隠れしていた。
しかし、ここからさらに踏み込んで来たため、追い込まれている業界事情をさらに強く感じさせる出来事となった形だ。
中医協の2022年度診療報酬改定の答申の付帯意見にも「保険給付範囲の在り方等への議論」の検討が盛り込まれた。製薬団体のトップの発言も背景にして、次回の2024年度改定に向け本格論議に発展するとの声も出始めている。
◆財務省が垣間見せる診療報酬改定の基礎資料変更
この2つの例を持ち出したのはほかでもない、医療界、それも先進国に共通して現在進行している事情、すなわち、高齢化に伴う公的医療財政の膨張という難題を背景に、過去の延長戦にとどまらない事態が生じている、ということを知ってほしかったからだ。これは歯科医療界においても(医科も薬局もだが)他人事でない。
2022年度診療報酬(本体)は昨年末に決着した。その結果も厳しかったが、その結果以上に、さらに将来の厳しさを感じさせたのが、決定に至るまでの過程だ。
公的医療財政膨張阻止に向け、財務省は「本体報酬のマイナス改定」に猛攻勢をかけて来た。
個人的に気になったのは、「医療経済実態調査」(以下、「実調」)に財務省が矛先を向けて来たことだ。実調は2年に1回、厚生労働省がこの診療報酬改定に合わせて全国の病院と一般診療所、歯科診療所、保険調剤を行っている保険薬局についてサンプル調査を実施。その集計結果に基づいてまとめるもので、現時点では医療機関の経営状況を示す唯一の総合的なデータだ。
厚生労働省や医療機関は、診療報酬本体の引き上げ要求にあたり、この実調データを使っている。
今回、この実調について財務省は、①サンプル調査数の乏しさ、②サンプル先が入れ替わることによる経年的把握の困難さ、③サンプルのバイアス・統計的な有意性―など、様々な問題点を指摘し、診療報酬改定に向けた基礎資料としての適格性に疑問を提起している。データとして痛いところを突いているとともに、過去に類のない異例の事態だ。
財務省資料が挙げる一例では、実調の診療所のサンプル数は診療所全体の20分の1、有効回答率56.2%を掛け合わせると診療所全体の2.8%のデータしか捕捉していない。歯科診療所も同様に全数の1.1%の捕捉率だ(ともに平成29年調査)。医療機関全体の状況を正確に示しているとはいえず、実態と乖離がある、というのが財務省の主張だ。
代わりに財務省が推すのが「医療法人事業報告書等」というデータだ。医療法人全数を対象に、毎年届け出義務のあるデータを基にまとめた資料だ。これなら確かにサンプルバイアスはなし、経年比較もでき、診療報酬改定などの病院等経営への影響も、より正確に捕捉しうる。厚労省はこのデータの届け出や公開(閲覧)でのデジタル化を進めている。財務省はこのデジタル化を間に合わせた上で、医療法人事業報告書等を次期2024年度診療報酬改定の基礎資料にしようという狙いを垣間見せている。
歯科医療界はこれにどう対処するのか。どう診療報酬改定にこれが影響するかの見通しを持っているのか。今から考えておく必要があるのではないだろうか。
東洋経済新報社編集局報道部記者 大西富士男
「東京歯科保険医新聞」2022年3月1日号10面掲載
この度、東京都が「子ども医療費助成制度」の対象を所得制限付きで中学3年生から高校3年生までに拡大すると発表した。協会はこれまで保険で安心してきちんとした診療を受けられるようにという目的と、急速に超高齢社会が進む日本において、将来を担う子ども達を健全に成長させることは社会が果たすべき責任であるという理由から10年以上にわたり東京都へ子ども医療費助成制度の拡大を要望し続けてきた。この度我々の想いがついに実った。
全国保険医団体連合会が2020年に全国的に実施した「学校健診後治療調査」でも、健診後に「要受診」と判断された生徒の未受診率が全診療科で特に高校生において顕著に表れた。大半の市区町村が、15歳の年度末までを医療費助成の対象としており、対象外である高校生において、受診抑制が生じていることがこの結果からうかがえる。
この対象年齢の拡大は、「高校生の未受診率」の減少や「高校生になると一部負担金が3割になることから、中学生のうちに治療を終わらせるように案内を出しているという」現場の意見の解消にも繋がり、大いに評価できるものである。
そのような前進がある一方で、多摩地区の多くの市・町では、子どもの一部負担金が1回の外来受診について200円を負担しなければならない問題は、いまだに解決されていない。
2017年に当協会が実施した「学校歯科治療調査」では、学校歯科健診で「要受診」と診断された後の歯科医院の受診率は、一部負担金の有無により、大きな差が表れている。また、一部負担金が課せられている地域の養護教諭からは、「要受診」と学校で診断されても、「一部負担金があることで受診勧奨をしにくい」等の声も多く挙がっていた。
協会は、居住地によって子どもが必要な医療を受けられないような医療費助成制度ではなく、すべての子どもたちがいつでも安心して必要な医療を受けられるよう、今後も一部負担金の廃止を求めていく。
2022年3月10日
東京歯科保険医協会
地域医療部長 横山靖弘
現在、協会が取り組んでいる「75歳以上の医療費窓口負担2割化」中止を求める署名について、本日3月8日あたりから、署名・ポスターが会員の先生方のお手元に届きはじめました。署名の詳細は下記をご覧ください。
「75歳以上の医療費窓口負担2割化」中止を求める署名
政府は昨年6月、年収200万円以上である75歳以上の患者の窓口負担を1割から2割に引き上げる法律を成立させました。これにより、今年10月から条件に該当する75歳以上の患者の負担額が2倍となり、受診抑制による疾病の重症化や医療機関の経営への影響が懸念されます。
そこで協会では、全国の保険医協会の医師・歯科医師とともに、「75歳以上の医療費窓口負担2割化」中止を求める署名に取り組むことにしました。ぜひご協力をお願いいたします。
協会は、今後も会員の先生方の経営・生活と権利を守り、国民の歯科医療と健康の充実向上のために尽力していきます。引き続き、ご支援、ご協力のほどよろしくお願いいたします。
署名のご注文は下記の「お問い合わせ」より、以下①~④の項目を入力のうえ、送信ください。
①氏名、②送付先住所、③連絡先、④署名の必要部数

当たり前と思っていた「日常」を「昨日の世界」に変えてしまった新型コロナウイルス感染症(COVID―19)は、私たちの「明日」と「未来」をも奪うのであろうか・・・。岐路に立たされている「現在」において、このウイルスの特性や感染力、各種の検査、日本の感染状況、そして出口戦略などの様々な側面について、医師で保健所長として豊富な経験と知見を持ち、現在は社会保険診療報酬支払基金理事を務める山本光昭氏にご寄稿いただく。
新型コロナの日本国内での初感染事例は2020年1月に確認された中国からの観光客を乗せたバスの運転手で、同年2月には国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがあるとして感染症法の指定感染症とされた。中国の武漢で発生した当時、感染者の約5%が亡くなると言われ、空気感染もあるのではと感染経路も必ずしも明らかではなく、致死率の高い恐怖の感染症と考えられたためである。
上記の表は、公表データより各時点における累計者数を確認し、ある期間の新規死亡者数を同期間の新規感染者数で割るということで、筆者が独自に算出してみた東京都における致死率の推移である。個々の症例の転帰から算出したものではないが、2020年4月に東京都で初めての緊急事態宣言が出された期間の致死率は約6・5%とほぼ武漢なみとなっているが、その後の緊急事態宣言以降は、新規感染者数に対する新規死亡者数の割合(致死率)は激減し、オミクロン株の流行が始まった2022年1月以降では、約0・06%である。
このように致死率が下がってきた要因は、検査体制の拡充により陽性者の把握がかなり実数に近づいてきたことと、ワクチンの開発とともに治療法が確立し重症化や死亡者を減らすことが可能となってきたためと考えられる。
この2年近くの保健所における疫学調査により、感染の主たる経路も、会話などで唾液が飛び散り、それを吸い込むことによる感染が圧倒的に多いことがわかり、接触に関しては感染経路でありうるが、空気感染に至ってはかなり可能性が低い。また、診療や研究開発の知見の膨大な蓄積により、ワクチンや抗ウイルス薬の開発、重症化へのリスク評価法やステロイド薬の投与など重症化予防や治療法も確立してきた。
すなわち、致死率が高く、予防法も治療法もよくわからないという発生当初の状況からは大きく変わってきている。新型コロナウイルス感染症は、もはや「恐怖の感染症」ではなく、社会経済活動を正常化しながら、「恐れることなかれ、ただし侮ることなかれ」という転換期を迎えているといえよう。
次回以降、日本をはじめ世界も含めて、新型コロナウイルス感染症の感染予防対策やPCR検査などに対する誤解、わが国における今後のあるべき戦略などについて、解説していく。
感染拡大抑制のための社会的介入 新規感染者数 新規死亡者数 致死率
第1回 緊急事態宣言期間
(2020年4月7日~5月25日) 3,941人 257人 約 6.5%
第2回 緊急事態宣言期間
(2021年1月8日~3月21日) 45,918人 962人 約 2.1%
第3回 緊急事態宣言期間
(2021年4月25日~6月20日) 33,903人 321人 約 0.9%
第4回 緊急事態宣言期間
(2021年7月12日~9月30日) 193,276人 664人 約 0.3%
今回 オミクロン株による感染拡大
(2022年1月1日~2月23日) 558,222人 352人 約 0.06%
1984年3月、神戸大学医学部医学科卒業後、厚生省に入省。横浜市衛生局での公衆衛生実務を経て、広島県福祉保健部健康対策課長、厚生省健康政策局指導課課長補佐、同省国立病院部運営企画課課長補佐、茨城県保健福祉部長、厚生労働省東京検疫所長、内閣府参事官(ライフサイエンス担当)、独立行政法人国立病院機構本部医療部長、独立行政法人福祉医療機構審議役、厚生労働省近畿厚生局長などを歴任し、2015年7月、厚生労働省退職。兵庫県健康福祉部医監、同県健康福祉部長、東京都中央区保健所長を経て、2021年4月より現職。
ロシアのプーチン大統領は、2月24日、ウクライナ各地へロシア軍を侵入させて攻撃を開始した。主権国家に対する武力による侵略は国連憲章、国際法を踏みにじる行為であり、いかなる理由であれ許されるものではない。
私たちは、罪もなき一般市民を殺傷し、いわれの無い理屈で一方的に戦争を仕掛けたプーチン大統領を断固非難する。ロシア軍は即刻、軍事行動を中止し、ウクライナから撤退すべきである。
私たちは、国民の命と健康を守る団体、唯一の被爆国として、人の命を奪う戦争や核兵器使用で世界の諸国を威嚇するいかなる行動にも断固として反対する。
2022 年 3 月 4 日
東京歯科保険医協会 理事会

新点数説明会の会員向け予約サイトで予約受付中!お申込みは上記URLをクリックしてください。
2022年度診療報酬改定では、「歯科点数表の初診料の注1に規定する施設基準」や「かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所」の施設基準の見直しなどが検討されています。また、CAD/CAMインレーなどの保険収載も予定されています。
協会では、適切な情報提供を行うべく説明会を開催します。今回は感染対策を目的に「動画配信」も行います。なお、会場席もご用意しています(完全予約制)。
日本教育会館・一ツ橋ホール(住所 千代田区一ツ橋2-6-2)
①ライブ配信:3,000名
②会場:350名(会員証1枚で1名に限ります。)
なかのZERO大ホール(住所 中野区中野2-9-7)
会場:600名(ライブ配信なし)
なかのZERO大ホール(住所 中野区中野2-9-7)
会場:600名(ライブ配信なし)
なかのZERO大ホール(住所 中野区中野2-9-7)
会場:600名(ライブ配信なし)
<会場地図>

第1回会場 日本教育会館・一ツ橋ホール

第2回~第4回会場 なかのZERO 大ホール
新点数説明会の会員向け予約サイトの受付を開始いたしました。
2022年度診療報酬改定では、「歯科点数表の初診料の注1に規定する施設基準」や「かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所」の施設基準の見直しなどが検討されています。また、CAD/CAMインレーなどの保険収載も予定されています。
協会では、適切な情報提供を行うべく説明会を開催します。今回は感染対策を目的に「動画配信」も行います。なお、会場席もご用意しています(完全予約制)。
日本教育会館・一ツ橋ホール(住所 千代田区一ツ橋2-6-2)
①ライブ配信:3,000名
②会場:350名(会員証1枚で1名に限ります。)
なかのZERO大ホール(住所 中野区中野2-9-7)
会場:600名(ライブ配信なし)
なかのZERO大ホール(住所 中野区中野2-9-7)
会場:600名(ライブ配信なし)
なかのZERO大ホール(住所 中野区中野2-9-7)
会場:600名(ライブ配信なし)
お申込みはこちらの「歯科診療報酬改定 2022年特設ページ」内にある申込フォームより行ってください。
政府は昨年6月、年収200万円以上である75歳以上の患者の窓口負担を1割から2割に引き上げる法律を成立させました。これにより、今年10月から条件に該当する75歳以上の患者の負担額が2倍となり、受診抑制による疾病の重症化や医療機関の経営への影響が懸念されます。
そこで協会では、全国の保険医協会の医師・歯科医師とともに、「75歳以上の医療費窓口負担2割化」中止を求める署名に取り組むことにしました。ぜひご協力をお願いいたします。
協会は、今後も会員の先生方の経営・生活と権利を守り、国民の歯科医療と健康の充実向上のために尽力していきます。引き続き、ご支援、ご協力のほどよろしくお願いいたします。
署名のご注文は下記の「お問い合わせ」より、以下①~④の項目を入力のうえ、送信ください。
①氏名、②送付先住所、③連絡先、④署名の必要部数

国内の金の価格が、過去最高値を更新している。田中貴金属工業は2月28日、金小売価格の指標となる1グラム当たりの販売価格(税込み)を前週末より20円値上げして7847円と決めた。
またパラジウムも高騰している。パラジウムは産出量の4割をロシアが占めており、1月には価格が2週間で2割超上がっている。
ロシアによるウクライナへの軍事侵攻に絡み、各国がロシアに対し措置を講じることと、それに対抗してロシアが核戦力をちらつかせていることが不安視され、金やパラジウムをはじめ、様々なコモディテー価格が高騰している。
文部科学省は、2021年度の大学医学部(医学科)入学者選抜における合格率を発表。女性が13.60%、男性が13.51%で、データが残る13年度以降で初めて女性の合格率が男性を上回った。調査対象は、医学部医学科を有する全国81校の国公私立大学。合格率が女性の方が高かったのは、北海道大学、名古屋大学、広島大学、長崎大学など42校で対象校の半数を超えた。
18年に女性の受験生に対する入試差別が発覚した後、文科省は20年12月に医学部の男女別合格率を毎年調査することを決定。19年度は男性12.11%、女性11.37%、20年度は男性12.56%、女性11.42%と推移していた。
間もなく迎える3月11日、東日本大震災からは11年の時が経とうとしている。依然として復興への道のりは長く、全国の避難者数は3・9万人(復興庁発表、1月28日現在)にのぼり、福島第一原子力発電所の廃炉作業、避難指示が解除された地域への住民の回帰など、課題は山積している。
昨年3月末、住民税課税世帯に対する医療費免除制度の期限を迎えた。非課税世帯についても同年12月までで制度が終了した。延長されていた国民健康保険や後期高齢者医療保険、協会けんぽ他の加入者のうち、原発事故により現に帰還困難区域に指定されている人などを対象とする免除措置についても、今年2月28日までとしている。
被災者の生活再建にあたり、経済的負担を軽減させること、十分な医療を受けられる環境を整えることは、決して疎かであってはならない。
中央社会保険医療協議会(中医協)総会は2月9日、2022年度診療報酬改定案について、厚生労働副大臣に答申を行った。改定案の中身を見て多くの保険医は、肩を落とした。
コロナ禍でリスクの高い場所だと敬遠され、赤字収支となった企業はたくさんあり歯科医院も例外ではない。多くの歯科医療機関の収入の中心は保険診療である。保険診療は算定ルールが定められているため、個人の努力では打開策や診療体制の充実も図れない。2年に1度の診療報酬改定だけが是正のチャンスであり、コロナの影響をはねのけるような改定を期待していた。
先般、厚労省に寄せられたパブリックコメント数では、歯科医師からの意見が49.4%と半数を占めた。これをみても保険医の診療報酬に対する不満の大きさが現れている。しかし、改定率がプラス0.29%に留まり前回(プラス0.59%)の約半分となっていることも影響しているが、改定内容に対する工夫が乏しすぎる。
新興感染症に対する対策の研修を行った歯科医療機関に対して初・再診料にプラス3点となったが、歯周基本治療処置10点が廃止になったためトータルでは実質減点となる。 また、かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所におけるSPT算定時の加算がプラス120点しかなく大幅なダウンとなる。これでは、施設基準を辞退する歯科医療機関が増える恐れもある。 口腔機能管理の対象範囲の拡大を行ったが、一番必要だと思われる対象年齢での算定率をみても、増える気配は全く感じられない。外来でのフレイル予防が進まなければ、施設や在宅での口腔機能低下は悪化の一途を辿るであろう。口腔機能管理料は、対象年齢の範囲を広げることで推進を図るのではなく、管理料を算定しやすくするべきではないだろうか。
そして、総合医療管理加算に至っては、HIV感染症の患者さんだけを対象患者に追加したが、もっと総合的医療管理が必要な患者はたくさんいる。総合医療管理加算の対象疾患を患者・国民のため、HIV感染症だけでなく広く認めるべきで、この項目が医科歯科連携の突破口のはずなのに周術期の口腔管理とともに算定率は伸び悩むであろう。 ただ、財源が少ない中、根管治療等の基礎的技術料に僅かながら加点して戴いたことは評価したい。
2025年には4人に1人が75歳以上となり、在宅医療のニーズが大幅に上昇するだろうと言われ、その備えとなる地域包括ケアの確立は急務だ。しかし、在宅訪問診療や医科歯科連携の推進も今次改定の内容では期待できない。中医協のメンバーや厚労省の担当者は、もっと現場に降りてきて保険医の苦悩を見てほしい。歯科診療現場の実態、臨床の場に立つ保険医の声に合致した診療報酬にするため、机上の空論ではなく実態に即したより一層の創意工夫を熱望する。
2022年2月25日
東京歯科保険医協会
政策委員長 松島良次
― 1月14日からパブリックコメントの募集があったそうですが。
坪田有史会長:2年ごとの診療報酬改定が実施される年に、中央社会保険医療協議会(以下、中医協)からパブリックコメントの募集(意見公募)が行われます。今回も1月14日付で中医協からの募集要項が厚生労働省のホームページに掲載され、電子メールで1月14日〜21日と約1週間の期間に提出するように示されました。これは中医協で2022年度診療報酬改定に向けて議論されてきた改定の基本方針や内容について、医療関係者や患者をはじめとしたすべての国民が、意見できる機会を与えられているのです。国民である我々が正式なルートで、中医協の議論の内容について、自分の意見を中医協や行政側に直接言えるのは、パブリックコメントの提出が唯一の機会といっていいでしょう。しかし、健全な民主主義を掲げる我が国にとっては当然のこととはいえ、周知方法、募集期間・方式など、すべての国民に低いハードルで広く意見を募集しているのかは、少々疑問があります。
協会は、1月14日の募集要項の発表を待って、同日の夜8時過ぎにデンタルブック・メールニュースで会員の先生方にパブリックコメントについての詳細な情報を配信し、意見の提出をお願いしました。メールには、「現場からの声をパブリックコメントとして提出してください。改定への意見をあげることができる最後のチャンスです。1件でも多く意見を出せば、反映される可能性は大いにあります。ぜひパブリックコメントをお出しください」と記載いたしました。
協会では、全国組織の保団連とともに会員の声を国会議員や行政側に伝えるため、署名活動を行っています。活動をご理解のうえ、毎回たくさんのご協力をいただき心から感謝しています。国民や歯科業界にとって、歯科医療の様々な問題に改善要求を行う署名活動も重要なツールです。一方、診療報酬改定時のパブリックコメント提出も非常に重要な位置付けと考えています。すでに提出していただいた会員の先生方に感謝申し上げるとともに、今回は提出できなかった先生方には、2年後の機会にぜひお願いしたいです。
― では会長が提出した内容について教えてください。
坪田:私は、全部で10本のパブリックコメントを提出しました。紙面の都合で、すべては紹介できませんが、参考までに下記にて、いくつか概要をお示しします。
・現在の院内感染防止対策の評価は全く十分ではないため、実際の院内感染防止対策のコストにか
かる調査を多施設で行った上で、その結果と相当な評価を基本診療料で評価されなければならな
い。裏付けのない評価には反対する。
・国民の健康ならびに将来の歯科において、歯周病安定期治療および歯周病重症化予防治療は重要
な項目であるため、歯科保険医療機関が取り組みやすく継続しやすい要件と評価にするととも
に、同一初診内の1回のみといった算定回数の制限を緩和するべきである。さらに、同項目の重
要性を広く国民に周知をする必要がある。
・歯周基本治療処置(P基処10点)の廃止により、歯周基本治療処置の所定点数を基本診療料に包
括するならば、従前の歯周基本治療処置の所定点数に相当する額を基本診療料に加えるべきであ
る。
・歯科用金銀パラジウム合金の随時改定は、中医協で示された論点に加え、実際には歯科医療機関
は市場価格で歯科用金銀パラジウム合金を購入している。したがって、素材価格を参考にした随
時改定を行うことは全く理解できず、市場価格を参考に改定を行うべきである。
東京歯科保険医協会 会長 坪田 有史
(東京歯科保険医新聞2022年2月号4面掲載)
WEBに係る歯科関連の法令やトラブル対応などについて、
歯科専門にサイト制作、運用、コンサルディングを手掛ける専門家が解説する本連載。
前回に引き続き、ネット上の口コミについて―。
前回お伝えした通り、ネット上の口コミを削除するためには次のようにいくつかの方法があります。
(1)Googleへ削除依頼を申請し、受理してもらう
→参照:ネガティブな口コミへの 対応策 No.1
(2)投稿者自身が削除する
(3)法律の専門家からGoogle、もしくは投稿者へ削除要請を行う
(2)については当然ですが、書き込んだ本人が削除すればその口コミは消えます。しかし、この仕組みを利用して、まず悪評を書き込み、数週間から半年程度の間に「おたくの悪評を削除します」と営業電話やメールを送ってくる悪徳業者が後を絶ちません。一度サービスを利用すると定期的に悪評を書き込み、その都度、料金が請求されることになります。
実際問題として、口コミを削除するには(1)(2)(3)のどれかしかありません。ネット上には、口コミを削除することを名目に2021年8月の段階で平均価格50万円以上の削除サービスが横行しています。しかし、歯科診療所に降りかかる大きなリスクを隠し、倫理的に問題がある方法で対策を行っている場合がほとんどです。
口コミを削除するために、まず(1)の削除依頼を行い、削除されない場合(3)の法律の専門サービスの利用という流れが一般的です。それでも削除できない場合は「悪評を逆手にとって、診療所の取り組みをPRする」という手法があるので、次回お話します。
クレセル株式会社
(東京歯科保険医新聞2022年2月号11面掲載)
Ⅰ.2025年問題直前の圧力増は必至2024年度改定対策は今から開始を
今回の改定は、真水のマイナス改定にはならなったものの、財務省は究極の目標に向け前進した。その一方で、医療機関側は一歩後退したといえる。
今回の結果は、日本医師会の横倉義武前会長時代における本体改定率の平均値0.42%を意識した「岸田文雄首相の高度な政治的落としどころ」という、うがった見方があるが、どうであろうか。
厚生労働省の理論武装力、中川俊男現会長下の日医や厚労族議員の政治力が物を言ったという声は聞かない。推測の域を越えるものではないが、自民党にとっては、今夏に控えている参議院選挙での医療機関側からの協力への期待が、今回の決着の背後にあるというのが、意外に真実なのかもしれない。
自民党が参議院選を乗り切れば、2025年秋の任期満了に伴う衆議院選挙まで選挙なしとなれば、2年後の2024年に予定される次期診療報酬改定がどうなるのか。おり悪く、団塊世代の後期高齢者入り完了が25年に控えており、さらに厳しい環境が待ち構えていることは確実である。
財務省の圧力が増すのも必至。果たして、本体真水を死守できるか。そのための準備を早める必要があることは、言うまでもない。
◆医療機関経営の窮状を国民に伝える活動を
しかし、医療機関経営の厳しさが国民に伝わっているとは言えない。まして、それが国民の生命・健康に直結する良質な医療サービス提供にどう影響するのかについては、肌感覚でさえ理解していないのが実際であろう。
であれば、これを知らしめる有効な活動を展開することが、今まで以上に大事になってくるはずだ。
Ⅱ.事務局案では素材高騰時でも公定価格は僅少な上昇どまりに
中医協で歯科医療界固有の重要懸案事項である歯科材料・金銀パラジウム合金(金パラ)、いわゆる「銀歯」の公定価格改定ルールを巡り、昨年12月22日の中央社会保険医療協議会(中医協)総会で、事務局(厚労省保険局医療課)から提案があった。
年4回の随時改定時について、①公定価格改定をするかどうかの基準となる価格変動幅、②改定の基になる平均素材価格をいつの時点までの数値を使うかの2点に絞り込んで、事務局が実際の公定価格に関する5パターンの試算数値を1月12日の中医協総会の際、各委員に示し、協議・検討が行われた。
このうち、まず、変動幅⑴では、Ⓐ現状の5%(4月、10月の随時改定Ⅰ)、15%(7月、1月の随時改定Ⅱ)、Ⓑ一律5%、Ⓒ一律0%(平均素材価格が動けばそれを年4回改定時に公定価格に反映させる)の3通りの考え方が提示された。
次に、反映させる価格時点⑵では、Ⓐ現状の3カ月前までの過去3カ月平均価格、Ⓑ2カ月前までの3カ月平均価格―の2通りの考え方が提示された。
2カ月前までの素材の3カ月平均価格を基に、変動幅0%で公定価格を年4回見直すことが中医協での大きな流れの方向のようだ。
ただ、下記グラフを見ていただきたいのだが、令和2(2020)年度からの2年間の例でいえば、歯科診療所がもらえる総額は、一番多くなる2カ月前までの価格を基に、一律0%基準で年4回公定価格算出パターンでも試算値で6万4245円。現状公定価格(の総額6万2649円の2.5%増に過ぎない。
Ⅲ.抜本改革に向け粘り強く公的議論継続を要求すべし
変えないよりはまし、一歩前進という見方もあるだろうが、パラジウムなどの価格急騰期の「逆ザヤ」に苦しんだ歯科医師の現場感覚からは、これでは問題が抜本的に解消するという実感は持てないのではないか。
今後、直近2年間と同じ貴金属の高騰が起き(起きない保証はない)、事務局提案に基づいた方向でルール改正が行われた場合(この可能性が高いようだ)、現状比2%台半ばの改善しか手にできないのである。
議論の出発点であった制度設計の抜本的再構築から議論は大きく逸れ、後退してきたのが実情だろう。年4回に限定されてきた随時改定の頻度は、結局、現状通りに戻ってしまった。公定価格に反映させる価格時期についても、直近3カ月前までから2カ月前までに1カ月だけ近づけただけだ。
それまでの3カ月間の素材平均価格と、その前3カ月間の平均価格の差額を公定価格の変動幅にする現状の方式を温存したままでは、急激な価格変動を迅速に公的価格に反映させることは不可能だ。抜本的な制度改革を放棄したのも同然だ。
1カ月前の素材の実勢価格を基に公定価格を毎月見直すのが、一番理想的な解決策だろう。それができないというのならば、厚労省はその理由を開示する義務がある。
歯科医師を代表する各団体は、抜本的な解決に向けて、今後も継続して議論する公的な場の設置を要求し続けるべきだろう。
東洋経済新報社編集局報道部記者 大西富士男
「東京歯科保険医新聞」2022年2月1日号10面掲載
2022年度診療報酬改定では、「歯科点数表の初診料の注1に規定する施設基準」や「かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所」の施設基準の見直しなどが検討されています。また、CAD/CAMインレーなどの保険収載も予定されています。協会では、適切な情報提供を行うべく説明会を開催します。今回は感染対策を目的に「動画配信」します。なお、会場席もご用意します(完全予約制)。
*ライブ配信を行います。なお、3月28日(月)頃から動画配信(オンデマンド配信)も行います。
*第1回と内容は同じであるため、動画配信(オンデマンド配信)は行いません。
*4月25日(月)頃から動画配信(オンデマンド配信)を行います。
*5月2日(月)頃から動画配信(オンデマンド配信)を行います。
ライブ配信・会場参加のWEB予約は、3月1日(火)頃に東京歯科保険医協会ホームページ内「歯科診療報酬 2022年改定特設ページ」でご案内いたします。