談話 大多数の保険医はがっかりしている

中央社会保険医療協議会(中医協)総会は2月9日、2022年度診療報酬改定案について、厚生労働副大臣に答申を行った。改定案の中身を見て多くの保険医は、肩を落とした。

コロナ禍でリスクの高い場所だと敬遠され、赤字収支となった企業はたくさんあり歯科医院も例外ではない。多くの歯科医療機関の収入の中心は保険診療である。保険診療は算定ルールが定められているため、個人の努力では打開策や診療体制の充実も図れない。2年に1度の診療報酬改定だけが是正のチャンスであり、コロナの影響をはねのけるような改定を期待していた。

先般、厚労省に寄せられたパブリックコメント数では、歯科医師からの意見が49.4%と半数を占めた。これをみても保険医の診療報酬に対する不満の大きさが現れている。しかし、改定率がプラス0.29%に留まり前回(プラス0.59%)の約半分となっていることも影響しているが、改定内容に対する工夫が乏しすぎる。

新興感染症に対する対策の研修を行った歯科医療機関に対して初・再診料にプラス3点となったが、歯周基本治療処置10点が廃止になったためトータルでは実質減点となる。 また、かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所におけるSPT算定時の加算がプラス120点しかなく大幅なダウンとなる。これでは、施設基準を辞退する歯科医療機関が増える恐れもある。 口腔機能管理の対象範囲の拡大を行ったが、一番必要だと思われる対象年齢での算定率をみても、増える気配は全く感じられない。外来でのフレイル予防が進まなければ、施設や在宅での口腔機能低下は悪化の一途を辿るであろう。口腔機能管理料は、対象年齢の範囲を広げることで推進を図るのではなく、管理料を算定しやすくするべきではないだろうか。

そして、総合医療管理加算に至っては、HIV感染症の患者さんだけを対象患者に追加したが、もっと総合的医療管理が必要な患者はたくさんいる。総合医療管理加算の対象疾患を患者・国民のため、HIV感染症だけでなく広く認めるべきで、この項目が医科歯科連携の突破口のはずなのに周術期の口腔管理とともに算定率は伸び悩むであろう。 ただ、財源が少ない中、根管治療等の基礎的技術料に僅かながら加点して戴いたことは評価したい。

2025年には4人に1人が75歳以上となり、在宅医療のニーズが大幅に上昇するだろうと言われ、その備えとなる地域包括ケアの確立は急務だ。しかし、在宅訪問診療や医科歯科連携の推進も今次改定の内容では期待できない。中医協のメンバーや厚労省の担当者は、もっと現場に降りてきて保険医の苦悩を見てほしい。歯科診療現場の実態、臨床の場に立つ保険医の声に合致した診療報酬にするため、机上の空論ではなく実態に即したより一層の創意工夫を熱望する。

2022年225

東京歯科保険医協会

政策委員長 松島良次