2016年4月25日付「疑義解釈資料の送付について(その2)は下記よりダウンロードしてください
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「文藝春秋」が「口腔リハビリテーションの効果」で特集記事
現在、書店やコンビニエンスストアなどで販売されている月刊「文藝春秋」5月号の中で、「最新医療に乗り遅れるな」が大特集として取り上げている。その中で、「口腔リハビリで生命力が蘇る」と題してジャーナリストの塩田芳享氏の記事が掲載されており、話題を呼んでいる。
口腔リハビリや口腔ケアに関し、米山正義氏(静岡県)、辻友里氏(熊本県)、光銭裕二氏(北海道)、宇土仁恵氏(宮崎県)、角町正勝氏(長崎県)らの臨床現場報告事例などを踏まえて、口腔リハビリを紹介し、「口から食べられる喜びから奇跡の回復が起きた」と強調している。
2014年の「文藝春秋」8月号では、医療ジャーナリストの油井香代子氏による「“噛みトレ”で寝たきりはなくせる」を特集で取り上げた経緯がある。
なお、口腔リハビリテーションについては、東京都内では2014年10月、小金井市に開設された日本歯科大学口腔リハビリテーション多摩クリニック(院長:菊谷武日本歯科大教授)などが積極的に取り組んでいる。
歯科に関する在宅医療専門の第4回新点数説明会に630名が参加
協会は本日4月21日、今月1日から施行された改正診療報酬をめぐり、特に在宅医療とその点数に関する内容専門の「第4回新点数説明会」を開催しました。
講習会は加藤開理事の司会で進められ、地域医療部担当の矢野正明副会長があいさつに立ち、続いた実際の歯科における在宅医療、訪問診療、介護保険制度との関連などを踏まえた解説を地域医療部長の馬場安彦理事が行った。
また、今後の地域医療全体に大きな影響を与える地域包括ケアシステムの概要、および歯科との関連がどうなるのかについて、地域医療部の橋本健一理事が解説を加えた。
さらに、歯科訪問診療では25年のキャリアを持ち、自らもケアマネージャーの資格を持っている地域医療部の森元主税理事が症例を取り上げ、解説を加えた。
各紙による講演、解説の後には参加者との間で質疑応答も盛んに行われ、今次改定に占める在宅医療の重要さを改めて認識する一幕もあった。
◆第5回新点数説明会は26日に開催
なお、協会では今次改定に関する最終開催となる「第5回新点数説明会」は、4月26日(火)午後6時30分から、なかのZERO大ホールで開催する。今月1日の改定診療報酬施行後に行われた通知の内容などを盛り込んだ内容となるため、ぜひ、ご参加いただきたい。詳細は、本ホームページの「研究会・行事のご案内」、あるいは「協会カレンダー」の該当日時、名称をクリックしていただきたい。
そのほか、改正診療報酬に関するもっと詳しい説明、解説を行う「地区懇談会」は4月23日(土)午後6時30分から立川で。5月7日(土)午後6時30分から大井町でそれぞれ開催される。参加できるのは、会場周辺の会員ご本人となっているため、本HPで内容をご確認のうえ、お申し込み、ご参加願いたい。
2016年度歯科診療報酬巡りか強診や歯援診・外来環などに議論が集中/第6回メディア懇談会を開催
協会は4月8日、第6回メディア懇談会を開催しました(今回は2008年3月の第1回以来通算56回目)。2016年度診療報酬改定後の開催ということもあり、出席したメディアとの間で、今次改定とそのポイント、厚生労働省の意図は何か、このような改定内容や数値になった経緯や背景などについて、盛んに意見交換、議論が行われた。
協会からは、話題説明全般を松島良次会長、司会を広報・ホームページ部長の坪田有史副会長が務めた。話題は、①今次改定に対する3月10日付「理事会声明」、②今次診療報酬改定のポイントと協会の対応状況、③歯科医師国家試験合格発表と歯科医師数―などとしました。
◆か強診への関心強く議論白熱
まず、松島会長が今次改定への「理事会声明」の内容と趣旨、および今次改定の重要項目についての協会の評価を説明。参加メディアから意見や感想を求めると、「か強診を届出できる歯科診療所は全体の1割程度しかなく、患者の視点や希望は無関係でそれが本当のかかりつけと言えるか」「かかりつけという言葉が混同され使われている。厚労省は現場の意見を1万人や2万人規模で聞き取るべきだ」「協会は、1割しか該当しないか強診を反対するのか否か」「か強診の基準に、一見あいまいな部分があるから今の段階でとるほうが良いのではないか」「か強診には歯科衛生雇用などの人件費、新規購入すべき医療機器があり、お金がかかる。資金に余裕のあるなしで診療所に二極化が生じる」「設備や人員のための費用を担保にすべきではなく治療内容に関することを担保にすべきでは」「か強診が実際に進むと、他の診療所も特色を出すなどの努力が必要となる」「歯科医師か歯科衛生士のどちらかの複数配置を求めているが、常勤とは明記していない。これは、地域包括ケアシステムの確立という目的が背後にあるための配慮ではないのか」などの質問や意見、指摘が相次ぎ、議論が白熱。メディア側でも関心が非常に高いことをうかがわせた。
◆文書外しの背景は
次に、松島会長が歯科疾患管理料の文書提供要件緩和について協会の方針を説明すると、メディアから「文書提供外しには官邸サイド、つまり政治的な圧力があったためといわれている。関係三者間で利害関係が一致したのもしれない」「患者本人の健康管理に配慮するだけでなく、患者への説明責任の確認にも関係してくるため、患者トラブル防止のためにも、必要に応じて必ず文書を出す必要はある」「文書を書かないでいると、厚労省はそこを逆手にとって十点よりさらに低い点数に下げてくる可能性が大きい」などの意見が続いた。
歯科関連検討会を相次ぎ開催/厚生労働省
本年3月、厚生労働省の歯科関連の各種検討機関が活発な動きを呈した。
年度末ということもあり、たとえば「歯科診療情報の標準化に関する検討会」ではワーキング・グループレベルではあるものの、歯科医療の専門性について初めて議論し、今後の行方が注目されるほか、「歯科医国家試験制度改善検討会」では報告書を取りまとめ発表している。
ここでは、最近の歯科関連検討会などの進捗状況をかいつまんで紹介したい。
◆歯科医師国試験改善検討会が報告書/多数回受験者の問題は結論避け別途検討へ
医道審議会歯科医師分科会の中に設置されていた「歯科医国家試験制度改善検討会」(部会長:田上順次・東京医科歯科大学副学長、部会長代理:矢谷博文・大阪大学歯学部大学院教授)が3月29日、厚労省内で開催され、これまでの議論を集約する形で報告書をとりまとめ、発表した。その中では、現行の歯科医師国家試験をめぐり、①出題内容:出題基準、出題内容、②出願方法等:出題数・出題構成、出題形式、③合格基準:必修問題、一般問題と臨床実習問題、禁忌選択肢数、必要最低点、④公募問題―などに触れている。
特に注意が必要なのは、①の「出題基準」と③の「合格基準」。
このうち、まず出題基準をみると、「将来を見据え、社会情勢の変化に合わせて、“高齢化等による疾病構造の変化に伴う歯科診療の変化に関する内容」が重要であると指摘し、さらに「地域包括ケアシステムの推進や多職種連携等に関する内容」における歯科が占める重要性に言及。口腔機能の維持向上や摂食機能障害への歯科診療、さらに、医療安全やショック時の対応、職業倫理などに関する内容充実を図ることが必要と訴えている。次に、出題内容については、「歯科医師臨床研修において、指導歯科医の下で、診療に従事するのに必要な知識及び技術を問う水準とすべき」と指摘している。
さらに合格基準に関しては、①必修問題の得点、②一般問題及び臨床実地問題の出題領域に応じた領域別の得点、③禁忌選択肢数及び必要最低点―の各視点から言及している。一般問題と臨床実地問題に関しては、問題難易度による合格状況の変動を防ぎ、一定の地域や技能を持つ受験者が基準を満たせるよう「平均点と標準偏差値を用いた相対基準で評価を行っている」としている。
一方、禁忌選択肢数に関しては、「禁忌肢を含む問題は出題を行わない」とした上で、安心・安全な歯科医療を提供する上で必要な知識は、今後も内容充実を図り出題を継続する考え方を示している。
他方、多数回受験者への対応については、一定数の多数回受験者の存在を重くみて、これは「緊急性を要する課題である」との認識を示したうえで、引き続き厚生労働科学研究などを活用して別途、検討することとし、早急な結論を控え、課題として先送りとした。
◆歯科診療情報の標準化に関する検討会がワーキンググループを開催
次に、「歯科診療情報の標準化に関する検討会」(座長:住友雅人日本歯科医学会会長)が3月23日に同省内で開催され、「歯科診療情報の標準化に関するデータセット(案)」について議論・検討を加えている。2015年度モデル事業の報告では、新潟県歯科医師会におけるモデル事業が報告され、厚労省、新潟県歯科医師会事務局の瀬賀吉機氏と厚労省関係者の説明、報告が行われた。
その中で厚労省からは、これまでの実証事業の経緯と展望、これまで行ってきたモデル事業を説明。さらに、2016年度モデル事業として、①標準データセットに基づくレセコンプログラムの標準仕様書の策定、②ベンダー各社に標準仕様書を周知し、それをもとにレセコン用プログラムの開発推奨を図る、③レセプトデータの保存方法検討―などを実施し、データの利活用についても全国的に展開したいことを説明した。
論点整理も行っており、①レセコンに搭載するデータセット、②データの保存方法、③レセプトデータ以外のデータ保存、④複数の医療機関を受診する患者の扱い、⑤自由診療の扱いを提示―などを提起。引き続き今後も議論を重ねていくこととした。
一方、瀬賀氏も新潟県歯のモデル事業の進捗状況を説明し、①歯科情報の保存、②診療所以外のメリット、デメリットを明示するなどした。
◆歯科医療の専門性ワーキンググループを開催
また、3月24日には歯科医師の資質向上等に関する検討会内の「歯科医療の専門性ワーキンググループ」(座長:西原達次・九州歯科大学学長)が同省内で開催され、歯科医療の専門性をめぐり議論・検討を行った。
事務局からは、「医師における総合診療医に相当する歯科医師」についての資料をもとに、説明が加えられ、議論を行った。
その中では、歯科医師のイメージに関して、①地域包括ケアの中で活躍できる、②ハイリスク型患者に対応できる、③医療安全、倫理、感染対策を徹底している、④かかりつけ歯科医―など、さまざまになっていることが指摘された。
今後は、歯科は医科とは違う要素が含まれていることを踏まえたうえで、専門性や臨床研修などを議論する必要性が認識された。
かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所(か強診)のための講習会~外来環・歯援診・医療安全も含めて~
2016年度改定では、地域包括ケアシステムに対応した歯科医院の評価として「かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所」が導入され、施設基準が新たに設けられました。
今回はこの施設基準に定められた研修を1日で受講できます。 また、外来環・歯援診・医療安全にも対応しており、これからの歯科医療に必要な情報をお届けします。
さらに!今回は特別に、AEDやパルスオキシメーターなど施設基準に必要な機材の展示を行い、会場限定の特別価格でのご案内もします。
この機会にぜひご参加ください。
日程 2016年5月15日(日) 10:00~16:00 満席
2016年5月28日(土) 14:00~19:30
※両日とも同じ内容の講習会です
講師 坂下 英明 氏 明海大学歯学部病態診断治療学講座口腔顎顔面外科学第2分野教授
繁田 雅弘 氏 首都大学東京大学院人間健康科学研究科教授
森元 主税 氏 東京歯科保険医協会理事
内容 偶発症に対する緊急時の対応、医療事故、感染症対策、高齢者の心身の特性、高齢者の口腔機能の管理、在り方(管理計画の立案を含む)
会場 エムワイ貸会議室 高田馬場(東京歯科保険医協会 隣接ビル)
交通 JR・東京メトロ東西線・西武新宿線 高田馬場駅 下車徒歩5分
参加費 8,000円(か強診・外来環・歯援診・医療安全の修了証込)
定員 200名
対象 会員のみ
要予約 TEL03-3205-2999(担当:経営管理部・地域医療部)
※遅れて参加された場合や途中で退席された場合は、修了証の発行はできません。
〇かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所とは
地域包括ケアシステムにおける地域完結型医療を推進していく、う蝕又は歯周疾患の重症化予防に係る管理、摂食機能障害及び歯科疾患に対する包括的で継続的な管理の評価です。
○エナメル質初期う蝕管理加算(260点)…エナメル質初期う蝕に罹患している患者を管理・指導した場合
○歯周病安定期治療(Ⅱ)(歯数により380点~830点)…P治療後、病状安定した患者に歯周組織の状態維持のための継続的な治療を行う場合
○在宅患者訪問口腔リハビリテーション指導管理料(+100点)…在宅等で療養している患者の摂食機能障害及び歯科疾患に対する管理をした場合
などの算定が可能です。
*すでに外来環・歯援診両方の届出をされている医療機関については、修了証の有効期限は問われません。(すでに受講した講習会で要件を満たす場合は再度の受講は必要ありません)
*外来環、又は歯援診のいずれかのみの届出をされている場合、またはどちらも届出されていない場合は、修了証の有効期間が3年となります。
〇歯科外来診療環境体制加算(外来環)とは
患者にとってより安全で安心できる歯科外来診療の環境の整備を図る取組に対しての評価です。
○外来診療の初・再診料への加算が可能です(初診時+25点、再診時+5点)。
〇在宅療養支援歯科診療所(歯援診)とは
在宅等における療養を歯科医療面から支えることの評価です。
○歯科訪問診療補助加算(1人+110点、2人以上+45点)・・・DHが同行訪問し、補助を行った場合
○歯科疾患在宅療養管理料(240点)・・・口腔機能の評価を行い、管理計画書を作成した場合
などの算定が可能です。
〇医療安全に関する職員研修とは
2007年の医療法改正により、「医療安全管理研修」と「院内感染対策研修」に職員ひとりひとりが年最低2回出席することが義務付けられています。今講習会は「医療安全管理」「感染対策」両方に当てはまります。
-2016年度診療報酬改定・歯科-
4月より算定ができる軟質材料(床裏装用)や略称、
保険請求できるファイバーポストを
「会員向け情報」の「診療報酬改定対策」の「2016年度」にアップしました。
軟質材料・略称・ファイバーポストはコチラ(※ログインにはパスワードが必要です)
-2016年度診療報酬改定・歯科-
3月31日に発出された疑義解釈・訂正通知のうち、歯科に係る主なものを
「会員向け情報」の「診療報酬改定対策」の「2016年度」にアップしました
疑義解釈・訂正通知はコチラ (※ログインにはパスワードが必要です)
春の共済募集キャンペーンが始まりました!!
(2016年4月1日~2016年5月25日まで)
「グループ生命保険」「保険医休業保障共済保険」「保険医年金」は、歯科医師の生活を守るためにつくられた共済制度です。
共済制度は多くの先生からの支持をいただいています。
共済制度について詳しい資料が必要な方は協会・共済部(Tel:03-3205-2999)までお気軽にお問い合せください。
「春の共済募集キャンペーン」対象の共済制度
グループ生命保険
(年金払特約・こども特約付団体定期保険)
死亡・高度障害の保障をお手頃な掛金で得られます。
・剰余金が生じた場合は配当金として還元*
(*)2014年度は年間保険料約8.7ヵ月分(約73%)。
・無理のない負担で大きな保障
・スケールメリットを活かしたお手頃な掛金
・1年更新なので毎年保障の見直しが可能
・生命保険会社4社による安定運営
保険医休業保障共済保険
傷病で休業の際に、治療に専念できる手厚い給付を受けられます。
・入院はもちろん自宅療養も代診をおいても保障
・給付期間は最大730日(2年間)
・1口で休業、入院、死亡・高度障害など6種類の給付金
・掛金は加入時のまま、満期まで上がらない
・所得に関係なく給付(本制度は所得補償保険ではありません)
保険医年金(拠出型企業年金保険)
老後準備を着実に積み立てられ、急な出費に対応もできます。
・予定利率1.259%
・決算実績によっては配当を上乗せ*
(*)2014年度は配当があり、予定利率と合わせて1.603%。
・積立総額1兆1千億円を超える日本有数の私的年金
・制度創立以来、現在に至るまで減額したことがない
・生命保険会社6社による安定運営
各制度の詳細な内容はパンフレット等をご覧ください。
その他の共済制度
第2休業保障制度(団体所得補償保険)
手頃な掛金で業務に従事できない間の所得を補償。
勤務医はもちろん、家族(専従者)・スタッフも加入できます。
・入院・自宅療養を問いません
・国内・外、業務中・外を問わず保障
・団体割引が適用され個人でご契約するよりも割安
・無事故ときは年間保険料の20%還元
・70歳以上の方も加入可
詳細な内容はパンフレット等をご覧ください。
その他、歯科医師賠償責任保険(医療事故等の保険)、火災保険(火災、医療機器の保険)等については、株式会社アサカワ保険事務所(Tel:03-3490-1751)までお気軽にお問合せください。
労働条件の変更と昼休みの電話当番/機関紙2016年4月1日号(№553号)より
質問① 患者が減ってしまって経営が苦しい。週三日勤務を週一日勤務に変更する提案をしたいのだが、残りの契約期間内のパートの労働時間を減らしても、問題はないか。
回答① 労働契約法第九条より、本人の同意がないと変更はできません。もし、同意が得られない場合は、その変更がないと経営の危機に直面するということであっても、休業手当として給与の六割を保証しなければいけません。今回のケースは、一時的な休業でなく、労働条件の変更という観点から考えると、勤務日数・勤務時間を減らすといった、一度定めた労働条件を変更するためには、従業員の同意が必要になります。特に、賃金の減少を伴う変更を一方的に行うことは、合理性がないと認められません。そのため、契約期間終了後に改めて契約内容を提示して、双方合意の上で契約することが望ましいと思います。また、従業員を解雇して人員を減らすことは、客観的、合理的理由があり、社会通念上妥当と判断されない限りは認められません。従業員の労務トラブルは近年増えてきているため、労働条件通知書の見直しなど、事前に対策を打ちましょう。
質問② 当診療所では昼休み中に歯科衛生士や助手、受付に電話当番をお願いしている。先日、他の診療所の先生から、「昼休み中の電話当番は違法」だという話を聞いた。万が一のために対策は、どうすればいいか。
回答② 昼休みという名目で休憩時間内に電話当番を依頼しているということであれば、労働基準法違反にあたります。休憩時間は自由に利用させなければいけないとされており、実際に労働には従事していないが、いつ使用者から働くように命ぜられるか不明確な時間や、外来患者のいない場合でも受付時間中として電話や来患があれば直ちに対応できるように待機させている時間は、休憩時間に該当しないと労働基準法に定められています。八時間以上の労働時間には少なくとも一時間、六時間を超える労働時間には少なくとも四十五分以上の休憩時間を与える必要があります。しかし、休憩時間は労働時間の途中に与えれば良いもので、一斉に与える必要はありません。どうしても昼休みに電話が多いとのことでしたら、三十分毎に休憩時間をずらして与えるなど、検討されてはいかがでしょうか。ただ、休憩時間をずらしたり、三十分毎に分断したりすることで、従業員が不利益を被るのであれば、それは労働条件の不利益変更にあたりますので、従業員の同意がなければ変更することができません。昨今では「昼休みは一切電話を取らないで留守電に切り替える」といった診療所もあります。従業員の方々とご相談の上、先生の歯科診療所に合った休憩時間制度を確立していくのが良いでしょう。
第2・3回新点数説明会を開催
協会は本日3月27日(日)、東京・千代田区有楽町の「よみうりホール」で第2・3回新点数説明会を開催しました。参加した会員の方々は1000名を超えました。新点数説明会を日曜日に開催したのは今回が初めて。また、お子さんがいらっしゃる会員の参加に配慮して、こちらも協会初の試みとして託児サービスも行いました。
午前中は10時から、午後は1時30分から開演し、プログラムは同一。挨拶は松島良次会長が行い、改定のポイントについては本橋昌宏理事が説明。症例解説は濵﨑啓吾理事が行いました。
なお、託児サービスの状況ですが、事前に連絡をいただいた会員のお子さんをおあずかりしました。午前に10名、午後は3名のご利用があり、大変好評でした。
第1回新点数説明会に1300名が参加
本日3月23日、協会は文京シビック大ホールで第1回新点数説明会を開催。会員及びスタッフの方々約1300名が参加しました。冒頭では松島良次会長が地域包括ケアシステム構築に向けた今期改定の重要事項について説明を行い、続いて加藤開理事による改定内容の要点解説、坪田有史副会長による症例解説が行われました。また、解説が一通り済んだ後には、フロアから出された質問に丁寧に答える質疑応答も行われ、20問近い質問に加藤理事、坪田副会長、そして本橋昌宏理事が回答、説明を加えました。
次回新点数説明会は3月27日(日)午前10時から、および午後1時30分から、同日に2回開催いたします。
歯科医国家試験制度改善検討会が今年度第2回会合を開催
―出題基準と合格基準などをめぐり報告案を作成
厚生労働省の「歯科医師国家試験制度改善検討会」(部会長:田上順次東京医科歯科大学副学長)の平成27年度第2回会合が3月18日に開催された。同部会は昨年10月に設置され、検討を重ねていたもので、今回は、その報告案が了承された。報告案の柱は歯科医師国家試験に関する内容としては、①出題内容:出題基準、出題内容、②出願方法等:出題数・出題構成、出題形式、③合格基準:必修問題、一般問題と臨床実習問題、禁忌選択肢数、必要最低点、④公募問題―などとなっているほか、多数回数受験者に関することやOSCEなどについても付記されている。
第109回歯科医師国家試験合格発表
―合格者は1973名のうち新卒者は1436名
厚生労働省は3月18日、第109回歯科医師国家試験の合格発表を行った。厚生労働省2階講堂でも合格発表が行われ、例年通り、この会場に来て自身の合格を確認し、記念撮影を行う学生の姿が散見された。
今回の歯科医師国試は、本年1月30、31日の2日間にわたり実施されている。109回歯科医師国試は、出願者数3706人(うち新卒者2536人)、受験者数3103人(同1969人)で、合格者数1973人(同1436人)、合格率63.6%(同72.9%)となっている。
今回の国試合格者を大学別全体合格率(新卒合格率)で上位5校をみると、①東京歯科大学93.3%(94.5%)、②東京医科歯科大学歯学部91.0%(94.5%)、③九州大学歯学部82.3%(83.7%)、④北海道大学歯学部82.1%(88.9%)、⑤徳島大学歯学部78.7%(96.8%)―などとなっている。
なお、同日、厚生労働省内では平成27年度第2回目の開催となる医道審議会の「歯科医師国家試験制度改善検討部会」を開催しており、近く「報告書(案)」がまとまる予定となっている。
理事会声明
「評価できるが、安心・安全な歯科医療提供には総額拡大が不可欠」
今次診療報酬改定は、団塊の世代が後期高齢者を迎える2025年に向けて地域包括ケアシステムを構築するため、医科に加え歯科・薬局の「かかりつけ機能」を新たに評価した。
歯科においては、「かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所」の施設基準を設け、「地域完結型歯科医療」として子供からお年寄りまで生涯にわたる長期管理を担う役割を規定した。う蝕に対してはエナメル質初期う蝕フッ化物歯面塗布、歯周病に対しては対象の拡大と歯周病安定期治療(Ⅱ)、在宅の患者には在宅患者訪問口腔リハビリテーション指導管理料が新設された。しかし、多くの点数が包括化されたため、見かけ上高点数となった。施設基準は11項目と厳しい内容であるため、届出を行える歯科医療機関は限られたものとなり、十分に機能するかが危ぶまれる。
また、この歯科診療所の機能分化の狙いが進めば、初・再診の問題と患者の囲い込みとしてのヨーロッパ型の登録制導入が危惧される。
改定率は、本体が+0.49%、薬価及び材料価格が-1.33%のなか、歯科は+0.61%とされた。改定率に対し「口腔疾患の重症化予防・口腔機能低下への対応、生活の質に配慮した歯科医療の充実」の項において、日常臨床で行われる基本技術が多くの項目で少ないながらも点数が引き上げられたことや、少なくない項目で臨床の実態に適応した運用に見直しがされたことなどは評価できる。また、関係学会から提出される医療技術評価提案書による保険収載や再評価が進んだことは今後への足掛かりとして重要である。しかし、歯科疾患管理料の文書提供を切り離した10点は影響率0.6%であり、引き上げ幅と同等である。必要に応じた文書提供は、患者の現状認識・治療への理解・行動変容に有用であり財源調整の道具とすべきではない。
訪問歯科診療においては、外来診療以上に機能分化が図られた。歯科訪問診療料3は大幅に引き下げられ、訪問専門の診療所も解禁された。代わりに在宅で行われる歯科訪問診療料1は算定用件が緩和され、外来診療を中心に行いそれに加え訪問診療を行うスタイルの診療所にはインセンティブが働くと思われる。しかし、訪問診療を行う医療機関に「歯科訪問診療を行った患者数の割合」が95%未満であるかの届出を義務付けたのは誠に遺憾である。この施策が現場に混乱をきたし、在宅患者に必要な医療が提供されない事態を招かないようにしなければならない。
2015年改定の消費税引き上げ分を除く+0.12%に比べ+0.61%とされたことは大きいが、この引き上げは、1歯科医療機関あたり月2万円ほどの増加にすぎない。中医協調査で今年度は前回に比べ所得が増えたこととなっているが、その実態は人件費・設備投資・技工料を削減した結果であり、歯科医療が危機的な状態であることには変わりはない。協会は引き続き総額拡大を求める運動を推進してゆくものである。
2016年3月10日
東京歯科保険医協会 第22回理事会
政策委員長談話「2016年度改定の目指す方向は」
2月10日、中医協は厚生労働大臣に次期診療報酬改定の内容を「答申」した。歯科の改定率は引き上げられたものの、0.61%とわずかであり、歯科保険診療の充実に繋がるかは疑問である。
改定の特徴の1つ目は、医療機関の機能分化である。長期管理機能を持つ診療所の評価として「かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所」(以下、「かかりつけ強化型」)を新設し、算定できる点数に差をつけるなど差別化を図った。特に在宅医療では、在宅医療専門、一般の診療所、歯援診、かかりつけ強化型の順で評価を上げ、医療機関の機能分化を強く推進した。在宅医療専門の場合、訪問診療料を外来の初再診料と同程度に設定され、施設基準の複雑さと併せて届出の要件は高い。在宅のみを行う医療機関は、一般の診療所の補完的な位置づけとした。
特徴の2つ目は、地域包括ケアシステムの構築のために、患者の一生涯をかかりつけとして長期管理するための点数の新設と要件緩和が行われた。エナメル質初期う蝕、在宅患者訪問口腔リハビリテーション指導管理料の新設、およびSPTの要件緩和である。また、「かかりつけ強化型」で算定できるSPT(Ⅱ)などの点数に高い点数を貼り付けた。
しかし前提として、「かかりつけ強化型」の施設基準には、訪問診療や複数体制など多くの要件があり、届出を行うにはハードルが高い。また、「かかりつけ強化型」で算定できる点数には多くの点数が包括されており、「かかりつけ強化型」を選択せずに包括されている項目を別に算定してもその差は大きいとはいえない。
特徴の3つ目は、歯管の算定要件から文書提供が外れ、文書提供した場合は10点の加算をする取り扱いに変わったことである。これまで協会は、管理と文書を分けて評価すべき、と繰り返し行政側に要望してきたがそれが反映されたといえる。しかし、歯管の点数が十点引き下げられたこと、文書提供の評価がわずか十点であることは誠に遺憾である。他方、文書提供しない場合のカルテ記載の内容の強化が見込まれる。通知を待って慎重な対応が必要だろう。
特徴の4つ目は、臨床に即した改定が行われた点である。学会ルートである医療技術評価提案書からP混検の点数引き上げや根面う蝕に対する充填の取り扱いなどが改められ、舌圧検査などの新たな技術も保険導入された。協会は、舌圧検査など必要な検査の保険導入や、現場で問題となっていたTeCの算定時期を実態に即して装着時に請求できるようにするなどの不合理の是正を要望し、今改定で反映された。まだ解決すべき課題は多く残されているが、この点については評価をしたい。
今改定だけではなく、今後も歯科の諸問題の解決が進むことを望むとともに、運動に対する会員の協力をいただきたい。
2016年2月24日
東京歯科保険医協会
政策委員長 中川勝洋
歯科診療報酬改定2016①/歯科診療報酬改定で厚生労働省が第1回目の通知
厚生労働省は、本日3月4日付で2016年度診療報酬改定に関する諸事項について「通知」した。そのうち、歯科に関する部分は以下の通り。ボリュームがあるため、ここでは全文を紹介できないため、厚労省の配信を直接ご覧いただきたい。
◆歯科通知
http://www.mhlw.go.jp/file.jsp?id=335813&name=file/06-Seisakujouhou-12400000-Hokenkyoku/0000114869.pdf
◆歯科様式
http://www.mhlw.go.jp/file.jsp?id=335814&name=file/06-Seisakujouhou-12400000-Hokenkyoku/0000114870.pdf
◆在宅専門
http://www.mhlw.go.jp/file.jsp?id=335818&name=file/06-Seisakujouhou-12400000-Hokenkyoku/0000114874.pdf
「歯科医師になってよかった」/GReeeeNのリーダーHIDEが震災時の経験と思いを述懐
昨日、3月11日(木)、TBSテレビの報道番組『NEWS23』で、GReeeeNのリーダーを務めるHIDEが2011年3月11日の東日本大震災における自身の経験について、インタビューに応じた模様が報道された。GReeeeNはメンバー4人が全員歯科医師(奥羽大学歯学部卒)のボーカルグループで、奥羽大学歯学部卒業。メンバーは、HIDE、navi、92、SOHの4名で、グループ結成は福島県内で行われている。
メンバーは、これまでも業としての歯科医師の診療と音楽活動を展開するため、基本的に顔を伏せ、マスコミ取材はほとんど受けない姿勢を貫いてきたが、あの震災に関して自らの経験があり、“歯科医師”として関わった思い、そして被災地の本当の復興を願う思いから、今回のインタビューに応じたものと察せられる。
◆インタビューの概要
昨晩の報道では、震災以後、福島第一原発の20キロ圏内から放射線被ばくした遺体の身元確認の「検死」が行われていたが、HIDEも福島県相馬市内の遺体安置所で身元確認の検視にあたる歯科医師の1人として、その中に加わっていた。自身も被爆の危険性を承知した上での作業であったが、その時の心情は、「1人でも家族のもとに帰したいという思い」だったという。
番組は、初めてHIDEが当時の思いを告白し、語る形で紹介され、「・・・いつもなら、頭の中で音楽のメロディを探すのですが、思いつかなかった。自分の中で、音楽を失ったというか・・・」と自問自答に陥っていたことを話し、体験したさまざまな体験を語り、当時のことを振り返りつつ「ご遺族の方にお会いできて、お手伝いができたことで、歯科医師になってよかったと本当に思えた」と述懐した。
そして、番組の膳場貴子キャスターが当時の歯科医師が現地で作成した遺体検案書を紹介するとともに、アンカーの岸井成格氏が、歯科医師の職務の重要性を説明した。
◆3.11とGReeeeNの楽曲創作
なお、震災後の5月6日に、GReeeeNは震災復興プロジェクトを開始し、楽曲「GReeeeN boys」を期間限定無料配信しているほか、日本歯科医師会の楽曲創作依頼を受け「♪ユメノート」を創り昨年4月1日から配信し、現在も日歯のホームページのバナーをクリックするとメロディーを聞くことができる。ぜひ、ご視聴されたい。
※協会ホームページ「コンテンツライダー」と本文の写真は、TBS「NEWS23」のホームページより。
平成28年度扶養控除等(異動)申告書の変更点/機関紙2016年3月1日号(№552号)より
質問① 昨年10月からマイナンバー(以下、「個人番号」)が交付されたが、従業員に提出してもらう『給与所得者の扶養控除等(異動)申告書 』については、どのような変更点があるのか。
回答① 『給与所得者の扶養控除等(異動)申告書』については、マイナンバー制度の導入に伴い、新たに被保険者の「個人番号」欄が追加されました。従業員から個人番号が提出された際には必ず本人確認として番号確認・身元確認を行う必要があります。申告書には、給与支払者・給与所得者・扶養親族の個人番号をそれぞれ記入する欄があります。平成27年度の確定申告や年末調整等、税務上の管理では使用しないので、実務上は28年分の年末調整までに取得すれば問題はありません。また、28年度からの変更点として、非居住者(国外居住親族)である親族については扶養控除などの適用を受ける場合、「親族関係書類」の提示または提出を受けることとなりました。年末調整においては、「生計を一にする事実」の欄に送金額を記載し、「送金関係書類」の提示または提出を受ける必要があります。
質問② 従業員の扶養親族の個人番号における本人確認はどのように実施すればよいのか。
回答② 従業員の扶養親族の個人番号を取得する時は、その扶養親族の個人番号の提供が誰に義務づけられているかによって異なります。健康保険の扶養親族の届出や所得税の扶養親族の届出は、従業員が「個人番号関係事務実施者」として、その扶養親族の本人確認を行うことになります。そのため、歯科診療所側では扶養親族の本人確認を行う必要はありません。
質問③ 従業員が個人番号の提出を拒否した場合、どのように対応をとればいいのか。
回答③ 従業員は個人番号の提出について、法律上は義務とされていますが、記載しなかった場合の罰則はなく、歯科診療所側には、個人番号の提出について法律上の強制力はありません。そのため「提出を促したが、拒否された」旨の記録を残しておいてください(国税庁ホームページQ1-18)。その際、書類の提出先の機関の指示に従う必要がありますが、内閣官房が設置しているマイナンバーコールセンター(TEL 0120―95―0178)では「個人番号の記載がなくとも受理する。不利益はない」と回答しています。
なお、従業員から個人番号が提出された場合は、①本人確認(番号確認と身元確認)、②安全管理措置、③委託先の必要かつ適切な監督―の3点を行う必要があります。もし、これを怠ったまま漏えい事故が起こってしまうと、監督機関である「特定個人情報保護委員会」からの指導や勧告を受けることになりかねませんので充分、ご注意下さい。
「2016年度改定の目指す方向は」
2月10日、中医協は厚生労働大臣に次期診療報酬改定の内容を答申した。歯科の改定率は引き上げられたものの、0.61%とわずかであり歯科保険診療の充実に繋がるかは疑問である。
改定の特徴の1つ目は、医療機関の機能分化である。長期管理機能を持つ診療所の評価として「かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所」(以下、「かかりつけ強化型」)を新設し、算定できる点数に差をつけるなど差別化を図った。特に在宅医療では、在宅医療専門、一般の診療所、歯援診、かかりつけ強化型の順で評価を上げ、医療機関の機能分化を強く推進した。在宅医療専門の場合、訪問診療料を外来の初再診料と同程度に設定され、施設基準の複雑さと併せて届出の要件は高い。在宅のみを行う医療機関は、一般の診療所の補完的な位置づけとした。
特徴の2つ目は、地域包括ケアシステムの構築のために、患者の一生涯をかかりつけとして長期管理するための点数の新設と要件緩和が行われた。エナメル質初期う蝕、在宅患者訪問口腔リハビリテーション指導管理料の新設、およびSPTの要件緩和である。また、「かかりつけ強化型」で算定できるSPT(Ⅱ)などの点数に高い点数を貼り付けた。
しかし前提として、「かかりつけ強化型」の施設基準には、訪問診療や複数体制など多くの要件があり、届出を行うにはハードルが高い。また、「かかりつけ強化型」で算定できる点数には多くの点数が包括されており、「かかりつけ強化型」を選択せずに包括されている項目を別に算定してもその差は大きいとはいえない。
特徴の3つ目は、歯管の算定要件から文書提供が外れ、文書提供した場合は10点の加算をする取り扱いに変わったことである。これまで協会は、管理と文書を分けて評価すべきと繰り返し行政側に要望してきたが、それが反映されたといえる。しかし、歯管の点数が10点引き下げられたこと、文書提供の評価がわずか10点であることは誠に遺憾である。他方、文書提供しない場合のカルテ記載の内容の強化が見込まれる。通知を待って慎重な対応が必要だろう。
特徴の4つ目は、臨床に即した改定が行われた点である。学会ルートである医療技術評価提案書からP混検の点数引き上げや根面う蝕に対する充填の取り扱いなどが改められ、舌圧検査などの新たな技術も保険導入された。協会は、舌圧検査など必要な検査の保険導入や、現場で問題となっていたTeCの算定時期を実態に即して装着時に請求できるようするなどの不合理の是正を要望し、今改定で反映された。まだ解決すべき課題は多く残されているが、この点については評価をしたい。
今改定だけではなく、今後も歯科の諸問題の解決が進むことを望むとともに、運動に対する会員の協力を頂きたい。
東京歯科保険医協会
政策委員長 中川勝洋
2016年2月24日
症例研究(機関紙2016年2月号)を「会員向け情報」の「症例研究」にアップしました。
政策委員長談話「 2016年度改定の目指す方向は」
2月10日、中医協は厚生労働大臣に次期診療報酬改定の内容を「答申」した。歯科の改定率は引き上げられたものの、0.61%とわずかであり、歯科保険診療の充実に繋がるかは疑問である。
改定の特徴の1つ目は、医療機関の機能分化である。長期管理機能を持つ診療所の評価として「かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所」(以下、「かかりつけ強化型」)を新設し、算定できる点数に差をつけるなど差別化を図った。特に在宅医療では、在宅医療専門、一般の診療所、歯援診、かかりつけ強化型の順で評価を上げ、医療機関の機能分化を強く推進した。在宅医療専門の場合、訪問診療料を外来の初再診料と同程度に設定され、施設基準の複雑さと併せて届出の要件は高い。在宅のみを行う医療機関は、一般の診療所の補完的な位置づけとした。
特徴の2つ目は、地域包括ケアシステムの構築のために、患者の一生涯をかかりつけとして長期管理するための点数の新設と要件緩和が行われた。エナメル質初期う蝕、在宅患者訪問口腔リハビリテーション指導管理料の新設、およびSPTの要件緩和である。また、「かかりつけ強化型」で算定できるSPT(Ⅱ)などの点数に高い点数を貼り付けた。
しかし前提として、「かかりつけ強化型」の施設基準には、訪問診療や複数体制など多くの要件があり、届出を行うにはハードルが高い。また、「かかりつけ強化型」で算定できる点数には多くの点数が包括されており、「かかりつけ強化型」を選択せずに包括されている項目を別に算定してもその差は大きいとはいえない。
特徴の3つ目は、歯管の算定要件から文書提供が外れ、文書提供した場合は10点の加算をする取り扱いに変わったことである。これまで協会は、管理と文書を分けて評価すべき、と繰り返し行政側に要望してきたがそれが反映されたといえる。しかし、歯管の点数が10点引き下げられたこと、文書提供の評価がわずか10点であることは誠に遺憾である。他方、文書提供しない場合のカルテ記載の内容の強化が見込まれる。通知を待って慎重な対応が必要だろう。
特徴の4つ目は、臨床に即した改定が行われた点である。学会ルートである医療技術評価提案書からP混検の点数引き上げや根面う蝕に対する充填の取り扱いなどが改められ、舌圧検査などの新たな技術も保険導入された。協会は、舌圧検査など必要な検査の保険導入や、現場で問題となっていたTeCの算定時期を実態に即して装着時に請求できるようにするなどの不合理の是正を要望し、今改定で反映された。まだ解決すべき課題は多く残されているが、この点については評価をしたい。
今改定だけではなく、今後も歯科の諸問題の解決が進むことを望むとともに、運動に対する会員の協力をいただきたい。
2016年2月24日
東京歯科保険医協会
政策委員長 中川勝洋
映画紹介№26「Inch’Allah ~ クロエの祈り ~ 」
【2012年カナダ・フランス製作/アナイス・バルボー=ラヴァレット監督】
「何してるの!」
「お腹の赤ん坊が武装して いるかもよ」
「この子は最強の兵士になるわ」
舞台はイスラエル、ヨルダン川西岸の紛争が絶えない地域。カナダ人の女性産婦人科医クロエは赤十字のボランティアとして、イスラエル側で暮らしながら分離壁の出入り口、イスラエル軍の検問所を行き来して、パレスチナ側の産婦人科診療所で働いています。
同じアパートに暮らす検問所配属のユダヤ女性兵士とは友達。一方では、パレスチナ人妊婦患者とは診療を通して家族ぐるみの付き合いをしています。
紛争地域での女医の最初の軽い気持ちは、やがて対立するユダヤ人とパレスチナ人の間に立たされます。映画は出口の見えないパレスチナ紛争の厳しい現実を描くドラマ作品となっています。
大勢の人々で賑わう大通り、広場のレストラン、居酒屋、小鳥屋、カフェ街などイスラエル側の一見、平穏で豊かな街の描写から始まります。
分離壁の出入り口である検問所では自動小銃を持ったイスラエル兵が身分証明書チェックをしています。
「よし。通ってよし」
兵士は待合室、診察室、薬品棚、検査室など、診療所を抜き打ちに調べにやって来ます。
高さ八メートルものコンクリートの巨大な分離壁。ゴミでごった返す難民キャンプ。
「ユダヤ人入植地で銃声」
イスラエルがニュース速報を流します。
「入植地で武装した3人が 発砲」
「入植者2人が重傷」
これを聞いてパレスチナ人は小躍りして歓びの声をあげています。
イスラエル軍のトラックの音。検問所は騒然とし、検問は強化され、パレスチナ人の男たちは学校に集合せよと命令が出されます。トラックの走行を邪魔する子どもはひき殺ろされてしまいました。
そんな中、妊婦に陣痛がきて、今にも生まれそうになるが、出血がひどく、病院への搬送が必要になります。
「お願いだ、通してくれ」
「病院へ運ばないと」
「後ろに下がりなさい」
「下がらないと発砲するぞ」
「下がれ! これは戦争なんだ」
死産。
母親は出産後、自爆テロに身を投げてしまいます。
「どうした?白人女」
「診療所では医者だけど」
「ここでは無力だなあ」
1993年9月、アメリカのクリントン大統領が間に入り、イスラエルのラビン首相とPLOのアラファト議長の間で、パレスチナ暫定自治協定がなされ、「ガザ地区、ヨルダン川西岸地区からイスラエル軍は撤退」としたにもかかわらず、この地域でのユダヤ人の人口は増え続けているそうです。
2014年にもユダヤ人少年3人の遺体が発見され、その後、16歳のパレスチナ人少年が殺害され、互いに相手が殺害したと、悲しみと怒り、そして報復の連鎖が起きています。
映画は、「話し合い、違いを理解して、歩み寄る」ことの大切さをあらためて教えてくれます。いち早く和平案が合意され、悲しい紛争がなくなるよう祈るばかりです。
カナダとフランスの合作映画。2012年に第37回トロント国際映画祭で上映され、日本では劇場で未公開、WOWOで放送されました。
(協会理事/竹田正史)
映画紹介№25「刑務所の中」
【2002年日本制作 / 崔洋一 監督】
「銃砲刀剣類不法所持取締違反で懲役3年」
映画は北海道、日高の刑務所を舞台に受刑者の機械的な生活を淡々と映し出します。受刑者の更生物語でも脱走物語でもありません。〝シャバ〟から見ると、どうでもいいような断片的な人間模様や刑務所ならではの風変わりな規則や暮らしを紹介します。
映画は朝の配食準備に忙しい調理室から始まります。6時30分起床、バケツ、ほうきと雑巾で部屋、トイレの隅々まで掃除。
「303室点検!」
看守に向かって直立不動で整列。大きな声で、
「イチッ、ニッ、サンッ、シッ!」
「5名異常なし」
5人の受刑者は銃砲刀剣類不法所持、火薬類取締法違反、麻薬取締法違反、殺人罪、連続コンビニ強盗事件、学校荒らし強盗…の罪で服役している者たちです。
7時40分に朝の配食。
「米7分、麦3分のどんぶり飯」
「タマネギと切りふの味噌汁」
「マグロのフレーク」
「金時豆の煮豆」
返事は常に「ハイッ!」と応え、部屋を出たら隊列を組み、
「イチッ、ニッ、サンッ、シッ!」と、腰に手を当て小走りで移動します。作業場は工場、看守は「先生」と呼ばれ、一段と高い所から受刑者に目を光らせています。
少しでも違う行動を取る時には「願います!」と大声で手を挙げて看守の指示を仰がねばなりません。
「願います!」
「何だ?」
「用便 、願います」
「朝、済ませて来なかったのか?」
ティシュ箱づくりの作業は午後4時30分で終わります。午後4時45分に夕方の点検があり、4時50分には夕配食があります。
「春雨スープ?」
「ほら牛だよ、牛だよ!」
風変わりな規律はあるが暴力は一切なく、テレビも見られる、雑誌も読める。合宿所のような健康な生活です。
「コラッ!お前何やっているんだ!」
「そんなことをしてもいいと思っているのか!」
雑誌のクロスワードに答を記入した些細なことでも、懲罰房(独房)に連行されてしまいます。
「医務」と呼ばれる健康診査は週2回。医務官が体調不良を申し出た者を一列に並ばせ、立ったまま、検温、診察を行います。
「薬指と小指の間にできものができました!」
体温、患部を診て、即座に処置の診断を下します。
刑務所では、毎日の作業は定時に終わるし、免業日と呼ばれる土日の休みもあります。3度の食事は欠かすことなく出てきます。受刑者の楽しみは、四肢の不自由なお年寄りと同じように提供される食事。そのメニューに一喜一憂します。
「正月に羊かんが出るってほんとうかい?」
「出るよ」
「去年は甘酒とマグロの刺身が出た」
「大晦日の夕食はおせちだ」
この映画には映画「ショウシャンクの空」のように脱走をもくろむ受刑者と暴力的な看守。緊張感や重い空気は全くありません。人間模様を違った視点から考えさせられる作品です。
主人公演じる山崎努をはじめ、松重豊、香川照之、椎名桔平、大杉連など、豪華な役者ぞろいのコミカルな映画で、映画の好きな人は絶対に満足するでしょう。
(協会理事/竹田正史)
映画紹介№24「世界が食べられなくなる日」
【2012年仏製作 / ジャン=ポール・ジョー監督】
「二十世紀に世界を激変させた技術が2つあります」
「核エネルギーと遺伝子組み換え技術です」
映画は遺伝子組み換え食物と放射能の迫りくる脅威に警鐘を鳴らします。
米国の多国籍企業モンサント社のGM(genetica-lly modified)飼料と農薬ランドアップを長期給餌したラットの実験と福島第1原発事故後の周辺農家の取材を中心に「GM作物刈り取り隊」や「狙われる途上国セネガル」の有機農業活動を交えて伝える衝撃的なドキュメンタリーです。
映画はフランス・カーン大学のセラリーニ教授の動物実験室から始まります。
モンサント社はたった3ヶ月の実験結果からGM作物は安全であると発表。セラリーニ教授はラットの寿命2年間の追跡調査を行ったところ
「4、5ヶ月頃から喉元に 初期の腫瘍が発生した」
「オスには腎腫瘍が多く」
「メスには乳腺繊維種、角 化性棘細胞腫が多い」
「15ケ月目に、五、六セ ンチの腫瘍に肥大化した」
など、GM作物はラットに巨大な腫瘍を発症させ、安全性はおろか、きわめて危険なものである事実が明らかになりました。
現状では、GM作物は飼料や加工食品にも使われ、誰もがGM摂取を避けられません。また、荷役、輸送する港湾労働者やトラックの運転手は、GM作物に付着する農薬ガスを吸って、健康を害されています。
一方、フランスには原発が16施設あり、炉の数56機が稼働する世界第2位の原発保有国ですが、深刻な原発事故を何度も経験しています。
1980年、サンローランデゾー原発で冷却装置が故障、チェエルノブイリ原発事故の2年前の1984年にはビュジェイ原発で冷却水の沸騰事故、1999年にはブライエ原発でもロワール川氾濫で施設が浸水し2号機、4号機の外部電力喪失事故がありました。
そして日本では2011年3月、福島原発1号機が地震、津波で浸水、爆発、メルトダウンとなり、事故前の年間1ミリシーベルトが事故後は20ミリシーベルトにも上昇しました。
2人の子を持ち、現在もう1人を身ごもる母親は、「政府は嘘ばかり言って子どもを守ろうとしない」「放射線汚染したものやGM野菜など食べたくない」
第1号機周辺の農家では
「牛は全部処分した」
「原発がなかったらこんなことにはならなかった」
「地震だけなら我慢もできるが、放射能はどうしようもない」
「今までもっと原発に反対 しなければいけなかった」
監督は人間は自ら作った「ウラン」や「遺伝子組み換え」というモンスターを安易に捉え安易に扱ってきた。そんな魔物を怒らせたら、それを止めることができない。遺伝子組み換え作物も原発の放射線被爆も未来の子どもたちに深刻な問題を残すと、語気を強めます。
この映画は「宇宙戦争」の原作を著したH・G・ウェルズの「神々の糧」(映画「巨大な生物の島」の原作)を思い出させます。世界が食べられなくなる日が本当にやって来るかもしれません。
◆この映画を2015年11月7日午後6時30分より、渋谷区文化総合センター大和田にて無料自主上映します。ぜひ、ご参加ください。 (協会理事 竹田正史)