広報・ホームページ部

【教えて!会長!! Vol.62】現在、当協会が取り組んでいる活動

—東京歯科保険医協会が行っている主な活動を教えてください。

坪田有史会長:当協会は会員のため、そして患者・国民のために「保険で安心してきちんとした診療をできるようにしよう」をキャッチフレーズにして日常活動を行っています。特に、電話やメールなどで当協会宛に届いた会員のご意見や疑問に対して、先生方に代わって厚生労働省、東京都、国会議員、都議会議員など多方面に回答を求めたり、要請などを行ったりしています。現在の主な活動を抜粋して、以下に紹介します。

①オンライン資格確認システム義務化の撤回に向けて
 現在、会員から最も多くご連絡をいただいているオンライン資格確認システムについてです。現在の状況、自由意志でなく「原則義務化」であること、ならびに示されているスケジュールでは対応できない医療機関が少なくないことへの懸念、さらに運用上、さまざまな混乱が想定されることなどを本紙の多くのスペースを使って、詳細にご提示しました。政府が進めるマイナンバーカードの普及促進のため、診療報酬のオンライン請求とともに医療機関に多くの対応を強いるこの「原則義務化」には多くの疑問があります。なお、本件について、全国で新たな署名の募集を開始します(3面参照)。署名内容にご賛同いただければ、ぜひご協力のほど、お願い申し上げます。

②新型コロナ感染症第7波への対応
 多くの感染者を出している第7波において、多数の問い合わせが当協会に寄せられています。医療機関において歯科医師やスタッフに感染者が出た、あるいは濃厚接触者になった、感染している疑いのある患者への対応など、感染の拡大により、さまざまな相談が見受けられます。特に濃厚接触者の定義、さらに医療従事者の濃厚接触者の特例など、時間経過とともに変更されるルールに混乱しているのが現状です。本紙7面に詳細を、なお、労務対応についてまとめましたので参考にしてください。

③75歳以上の負担割合2割化反対
 当協会が反対してきましたが、来月から多くの75歳以上の患者の負担割合が1割から2割になります(2面参照)。なお、各方面からの意見によって、配慮措置が設けられましたが、複雑な点があり、医療機関での混乱、受診抑制によるQOLの低下、口腔内環境の悪化などが懸念されます。さらなる対策を講じるように要望していきます。

④東京都への要望
 東京都の2023年度予算の審議に合わせて、都議会の各会派、都の行政側に多くの要望を行っています。例えば、「コロナ禍における医療提供体制の確保について」「歯科衛生士の復職支援や就学支援について」「在宅歯科医療の推進について」「子ども医療費助成制度における一部負担金の地域格差の是正」「個別指導への要望」などです。

⑤一会員の声を届ける
 「歯科衛生士、歯科技工士の人材確保について」「金パラの代替材料の保険適用について」「CAD/CAM冠・インレーの適用拡大について」「財務省の予算調査で国保の高額医療費制度の廃止について」「物価・光熱費高騰による医療機関の影響への対策」などについて、検討中、あるいは今後検討予定です。
 現在、行政等が進めている、あるいは今後予定されていることには、残念ながら理解しにくいことや、理解に苦しむ案件があります。確かに政策などの方針を変更させることが困難なことは、重々承知しています。素直に迎合した方が楽かもしれません。
 しかし、おかしいと思うこと、疑問を感じたことを、初めから諦めるのではなく、歯科の将来のため、患者・国民のため、黙っておらずに意見として、私は声に出したいです。声を出さなければ届くことはなく、伝わることもありません。
 冒頭で申し上げましたが、会員の先生方は、ご意見や疑問のどんなことでも当協会にお寄せください。約6,000名の歯科医師の団体として声をあげます。私も当協会の一会員です。会員の先生方と思いを共有して、今後も活動していきますので、ご理解、ご協力のほど、よろしくお願い申し上げます。


東京歯科保険医協会
会長 坪田有史

(東京歯科保険医新聞2022年9月号8面掲載)

WEBサイトによる診療所PRのポイント①

WEBに係る歯科関連の法令やトラブル対応などについて、
歯科専門にサイト制作、運用、コンサルディングを手掛ける専門家が解説する本連載。
今回は医院情報サイトについて―。

 2022年現在、WEBサイト(医院が運営するサイト)を活用している歯科医院の数は、かなり多いのではないでしょうか。しかし、WEBサイトはどのような効果が出れば「成功」で、一方どのような状況であれば「改善」の必要があるのか、わかりづらいのが現実です。そこで、情報発信の手段としての歯科医院のWEBサイトについて考えていきたいと思います。
 まず、サイトの目的を明確にするところからはじめる必要がありますが、目的は「大勢の新患が希望の治療を受けるために来院する」と思われる方が大半であることは間違いありません。残念ながら、この“大勢”という言葉をもっと具体的に意識できなければ、サイトからの新規患者の来院はそれほど望めないでしょう。
 現在運営されているサイトの成果指標として「1カ月の新規患者数の20%以上がWEBサイトからになっているか」を確認してみてください。20%を下回る場合、サイト上の課題、歯科医院の認知がそもそもないことの問題(開院直後など)、ネット上に競合が多すぎるなどの原因があります。20~40%くらいは正常、もしくは健全な数字ですので、今後は新たなコンテンツを追加するなどの対策を検討してみてください。
 そして、40%以上は「危険な状態」と言えるでしょう。サイトがたくさんの患者を集めている状態が「危険?」と思われる方が多いと思います。仮に80%がサイトからの患者とします。「サイトのサーバーが障害でダウンした」「検索サイトからペナルティを受けてサイトの来訪者が0になった」などのトラブルに見舞われると、患者の8割を失うことになります。すぐに復旧できるものであれば良いですが、4週間も続けば経営に関わる非常事態です。
 インターネットという現実に存在しない世界に、患者の大半を依存することの危険性を経営視点で振り返る必要があります。次回からは、インターネットマーケティングをそのまま歯科医院サイトに持ち込む時の注意点などを考えます。
(※数値等データは自社の分析に基づく)

クレセル株式会社

(東京歯科保険医新聞2022年9月号4面掲載)

長期維持管理政策の歴史 vol.3

「か初診」の登場とその後

前回は、2000年診療報酬改定で登場した「か初診」(かかりつけ歯科医初診料)の算定要件等と、その後、橋本龍太郎元首相への献金問題を経て2006年度改定で「か初診」廃止
に至るまでの経緯を紹介した。
ところで、「か初診」導入時の2000年から2002年に向けては、膨張する医療費をどうするのかが政権のテーマとなり、混合診療が取り上げられた時期でもあった。歯科では、従来から補綴の金属床総義歯と歯冠修復物に関しては特別な料金(自費)と認められていた。歯周病に関してP特養が医療保険の特定療養費(保険)に適合するかどうかが厚労省医療保健福祉協議会作業委員会で検討され、「継続的な治療管理は保険診療特定療養費の活用」との報告がなされ、中医協の診療報酬基本問題委員会でも「再発抑制に必要なセルフケアを継続して行く上での指導管理の評価」が議論の中心となり、この流れの中で「か初診」廃止後はこの保険者主導の長期管理路線が以降改定ごとに少しずつ取り入れられて来ていると言える。

月に1回 基本治療あり 基本治療なし
1~9歯 310点 210点
10~19歯 450点 270点
20歯以上 620点 360点


2002年4月、日本歯周病学会は「治癒と病状安定」の考えの流れを示すフローチャートを発表し、2002年4月の診療報酬改定では、メインテナンスに係わる総合評価として「歯周疾患継続治療診断料100点」が新設され、1~3カ月間隔で再診時に歯周組織検査・歯周基本治療・指導管理を行った場合に歯周疾患継続総合診療料として表1を算定する取り扱いとなった。
2005年は、小泉純一郎首相による衆議院の電撃解散によって小泉劇場の幕が切って落とされた。基本政策は当時の英国のサッチャー政権と同じ小さな政府であり、構造改革路線の延長として「財政再建」を打ち出した。その中の一つが「医療制度改革」であり、これを受けて厚労省は2005年10月19日、「医療制度構造改革試案」を発表、2025年に向けての医療費の伸びの削減方向を示した。その中で短期的な方向として、①公的保険給付の内容・範囲の見直し、②診
療報酬改定―の2点を挙げた。政府は2005年12月1日、「医療制度改革大綱」を決定。すでに廃止の憶測が流れていた「か初診」は、2006年4月の診療報酬改定で廃止された。しかし、長期維持管理路線=「か初診路線」が強化される方向は変わらなかった。
マスコミは、「医療は高コスト」と表現するが、当事者の我々からすれば、日本の医療は低報酬・低コストであり、先進諸国と比較してもGDP比最低である。良質な医療を低コストで提供しているのが日本であると、WHOも認めていた。
2008年4月改定の中で政府は、「質の高い医療を効率的に提供すための視点」と180度転換、「歯科医療の充実について」との記述が加えられた。その主たるものは2007年11月の日本歯科医学会の「歯周病の診断と治療に関する指針」の発表に基づくもので、分かり易いフローチャートも発表された。その内容は表2のように、管理料の大行列となった。

 

中川勝洋
東京歯科保険医協会 第3代会長、協会顧問

なかがわ・かつひろ:1967年東京歯科大学歯学部卒業、1967年桜田歯科診療所開設、1981年東京歯科保険医協会理事、昭和大学医学部医学博士授与。1993年協会副会長、2003年協会会長、2011年協会会長を辞し理事に。2022年理事を勇退し協会顧問に就任。

東京歯科保険医新聞2022年(令和4年)8月1日

東京歯科保険医新聞2022年(令和4年)8月1日

こちらをクリック▶東京歯科保険医新聞2022年(令和4年)8月1日 第629号

1面】

   1.社会医療診療行為別統計/20年間で構成割合 大きく変化
   2.「開業歯科会員アンケート」へのご協力のお願い
   3.ワクチン4回目接種拡大/医療・介護従事者
   4.ニュースビュー
   5.「探針」

2面】

   6.医療機関 個別指導日程が明らかに
   7.生活保護指定医療機関 個別指導7件実施へ
   8.新規開業医講習会 持参物・指摘事項・算定要件…40人が受講
   9.知識と技術を高める/研究会・行事のご案内QRコード
   10.夏季休診のご案内ポスター
   11.電子書籍「デンタルブック」ご案内

3面】

   12.歯系議員2氏は再選果たす/自民63、立憲17、維新12
   13.夏のあとがき~参院選後の今こそ、思いを巡らす~/会員投稿・菊地三四郎氏
   14.接遇講習会 2年ぶりの対面開催/患者に選ばれるため診療所全体の底上げを

【4面】

   15.経営・税務相談Q&A No.395 年次有給休暇 夏季休暇にあてられる?
   16.研究会・行事のご案内①
   17.Facebookお知らせ
   18.法律相談、経営&税務相談

【5面】

   19.研究会・行事のご案内②

【6面】

   20.能楽師・野村太一郎氏インタビュー「亡き父から最期の言葉 伝統継承を目指す若き才能」

【7面】

   21.暑中お見舞い名刺広告

【8面】

   22.協会史を振り返り現在・未来を見つめる Vol.2/「か初診」の登場とその後・中川勝洋氏
   23.教えて!会長!!Vol.61

【9面】

   24.症例研究/混合歯列期の患者に対するP重防

【10面】

   25.連載/私の目に映る歯科医療界⑰(東洋経済新報社・大西富士男氏)マイナ保険証使うシステム強制は大問題 国の義務化議論に欠くユーザー国民視点
   26.理事会だより
   27.協会活動日誌/2022年7月
   28.診療報酬改定 関連書籍「歯科疾患管理計画書」ご案内

11面】

   29.会員投稿「声」本日休診~小説「ツユクサ」を読み~石渡利幸先生
   30.IT相談室/Googleの口コミを気にしなくていい理由/氏(クレセル株式会社)
   31.保団連夏季セミナー
   32.新理事就任のお知らせ/池川裕子氏(葛飾区)
   33.会員優待サービスのお知らせ
   34.共済部だより

12面】

   35.第2回メディア懇談会/歯科医療総枠拡大に向け「国民の信頼を獲得するしかない」
   36.神田川界隈/医療費の総枠拡大はなぜできない?(加藤開副会長/豊島区)
   37.通信員便り No.124
   38.ひまわりのそばに(上)「戦後77年を迎え―」/黒田政俊氏
   39.新聞に投稿してみませんか?/投稿案内

13・14面】

   40.開業歯科会員アンケート

私の目に映る歯科医療界⑰ マイナ保険証使うシステム強制は大問題/国の義務化論議に欠くユーザー国民視点

マイナ保険証使うシステム強制は大問題/国の義務化論議に欠くユーザー国民視点

病院や診療所などで健康保険証の機能を持つマイナンバーカード(マイナ保険証)が使えるオンライン資格確認システム。

厚生労働省が、625日の社会保障審議会医療保険部会で突如、来年度からの導入義務化方針を打ち出し、がぜん騒がしくなった。

Ⅰ.日医反発「来年度義務化は乱暴」

この厚労省の動きに対して、歯科医師の諸団体や日本医師会など医療機関側は猛反対だ。システム導入には、導入費用だけではなく、実際にはランニングコストもかかる。政府の補助金があるといっても、それだけで充分とは言えない。

マイナ保険証を使うことで、特定健診や複数の病院をまたぐ過去からの治療データを活用できるため、医療の質的向上につながるという大義名分はあるにしても、「来年度から義務化するというのは、あまりにも乱暴だ」とする医療機関サイドの懸念は、もっともである。

Ⅱ.政府の対応はまさに「朝令暮改」

また、政府の方針が首尾一貫していないことも問題を紛糾させている。

医療機関サイドの費用負担懸念を和らげようと、今春の2022年度診療報酬改定で導入したばかりのシステム導入・運用に伴う診療報酬加算の見直し(廃止?)を打ち出している。まさに、朝令暮改だ。加算は利用患者の自己負担アップを伴う。従来の保険証を使うよりも高い料金になるという報道が出たとたん、国民からの反発を恐れてか、その取り下げを考えたようだが、もし国が本当にそのシステム導入が利用者の医療の質向上につながるメリットがあると確信するなら、これを貫くべきだろうが、現実的には腰砕けになっている。

これは、「費用対効果を利用者に納得させるだけのエビデンスや覚悟を、国が持ち合わせていないのではないか」と疑わせしむ事例だろう。もちろん、厚生労働省を含む国にも言い分はあるだろう。ただ、システム運用を開始した医療機関が、未だ全医療機関の2割程度に留まっており、この普及遅れの現状への焦りが、今回の厚労省の性急な義務化方針打ち出しに繋がっていることは間違いない。

それでも、記者よりもむしろ普通の一国民、医療機関利用者の一人の目線から、今回の国が進める性急なシステム義務化への疑問は拭い去れない。

Ⅲ.マイナ保険証は1割未満最優先は国民を納得させること

オンライン資格確認システムは、国民のマイナ保険証利用といわばセットになるものだ。つまり、仮に医療機関がシステム導入しても、国民がマイナ保険証を選択して使用しないと、国や医療機関が大枚を投じて導入した高価なシステムが無駄になってしまう。

厚労省は、先述の社保審医療保険部会で、2024年度中に従来の保険証の原則廃止方針をも提案した。医療機関へのシステム義務化を強行し、若干の時差をもって国民にも事実上「マイナ保険証」を使用せざるを得ない状況に追い込み、マイナ保険証への全面切り替えを図る構えのようだ。

ただ、マイナ保険証か現行保険証のどちらを選ぶかは、あくまでも国民の判断に委ねられるべきものだ。マイナ保険証使用を強制し、国民に選択権を与えないという高度な判断を、審議会や厚労省など役所に与えること自体が適切なのかどうか。

法制度全般からの配慮を考慮すれば、国民を代表する選良が議論する国会で審議すべきではないのか。これらのことは、大いに問題となろう。

また、マイナ保険証利用による「システム導入が利用者の医療の質向上につながるメリットがある」という、一般的な制度導入目的を前述したが、マイナ保険証導入に伴う費用対効果を具体的な数値を伴って国民が知ったうえで、選択・判断すべき事柄のはずだ。

そもそも論からいえば、国民の大多数は現行保険証で不便を感じてはいないはずだ。何よりもマイナンバーカード普及率が未だ5割未満、さらに健康保険証と紐づけたマイナ保険証交付率は全国民の1割未満という事実がその証左だ。

Ⅳ.必要なのは原点回帰国民視点の真剣議論は不可欠

マイナ保険証の交付を受けに行く場合も、①マイナンバーカードを導入する、②このカードに保険証機能を持たせる(紐づけする)―という2段階の手続きをする必要がある。特に②の紐づけ作業については、スマートフォンのアプリをうまく使いこなせない高齢者には厄介だ。自治体窓口などに多数の手続き拠点を設け、アプリを使えない高齢者などの手続きを助ける手段も用意するとしても、肝心の医療の最大ユーザーである高齢者には、結構障害がありそうだ。

国はマイナ保険証の普及拡大に躍起だ。キャッシュレス決済などで利用できる一人当たり最大2万円相当のマイナポイントがもらえるキャンペーンをこの6月末から本格化。そのための予算枠は、1.8兆円の大盤振る舞い。その目玉としてマイナ保険証の登録推進があるわけだ。

国は義務化を急ぐ前に原点に立ち戻るべきだ。マイナ保険証を利用したシステム導入のメリットを、可能な限り実例や費用対効果などで提示して、国民が納得し、自発的にマイナ保険証を選択するように努力すべきだろう。

システム導入が国益、国民の医療の質向上に役立つと考えるのなら、医療機関や保険者、識者、自治体、政治家なども巻き込んで、広く国民向けの公聴会を開くほどの覚悟で進めていく筋の政策だ。

ぜひ、医療機関側も自らの視点だけにとどまらず、この新たなシステムの最終ユーザー、つまり国民の目線に沿った真摯な論戦・運動を展開してほしい。

東洋経済新報社 編集局 報道部 記者 大西富士男

「東京歯科保険医新聞」202281日号10面掲載

Google の 口コミを気にしなくていい理由

WEBに係る歯科関連の法令やトラブル対応などについて、
歯科専門にサイト制作、運用、コンサルディングを手掛ける専門家が解説する本連載。
今回は医院情報サイトについて―。

 「Googleにネガティブな口コミを書かれた」とのご相談が減ることなく寄せられます。
口コミに対する対応策は、以前の本連載でお伝えしましたが、今回はそもそも「Googleの口コミは気にしなくていい」理由を解説します。
 歯科に限らず医療機関の口コミは、概ねネガティブなことを書かれるケースが多い傾向にあります。それは医療サービスを「望み通りに処置してくれて当たり前」という、日本人ならではの先入観があり、“現実との対比”によって発生する不満足が原因です。
経験則ですが、書き込みを行う理由は、①本当に問題と思われる出来事があった、②漠然とした不満足の矛先が抽象的なネガティブ書き込みになっている、③クレームを書きたいだけ―という3つが代表的です。
 ①に対しては、口コミサイト上の返信機能を使うことで、他者が読んだ時に歯科医療機関側の誠意を示すことができ、「本当は過剰表現ではないか」という気持ちにさせることができます。
 ③については、書き込みをしている人のアイコンをタップ(クリック)すると、その人がどのような口コミを書いているか見ることができるので、確認してみてください。様々なところでクレームの書き込みを行い、それを楽しんでいる方です。
 したがって、現在悩みの種になっているのは②と③の書き込みについてです。歯科以外の病院や医療サービスサイトを見ると、概ねほぼ②と③の書き込みか、感謝のポジティブな書き込みしかないことに気がつきます。閲覧者は、「感謝」か、①~③の書き込みくらいにしかGoogleの口コミが使用されないことを肌感覚で知っているので、「歯科医院の選択材料」にGoogleの口コミを重視している方は少ないと言えるでしょう。
 これが過剰にGoogleのネガティブな口コミを気にしなくてよい理由です。ただし、明確な誹謗中傷や具体的過ぎる内容については、法的な対応を検討されることをおススメします。

クレセル株式会社

(東京歯科保険医新聞2022年8月号11面掲載)

長期維持管理政策の歴史 vol.2

「か初診」の登場とその後

2000年(平成12年)の診療報酬改定で、歯科初診料186点とは別に「かかりつけ歯科医初診料」、いわゆる「か初診」が270点で導入され医科初診料と同じになったが、再診料は40点で医科とは異なった。初・再診料の医科歯科格差解消は歯科の長年の要望であったが、か初診以外は従来のままで据え置かれた。その算定要件は、以下の3項目であった。
そして、この要件の中で「同意と文書提供」という縛りを付け、再び「か初診」を算定できるのは、治療終了後3カ月目からとし、また、説明手段のスタディモデル(50点)と口腔内写真(50点)は包括化され算定できない。「か初診」は医科と同じになったが、指導管理を主とする医科との格差はむしろ拡大したと言え、1口腔1初診の歯科の概念が強化された。医科でも00年度診療報酬改定に際して「かかりつけ医機能」について検討され、指導料に対する継続管理加算が導入された。
1日平均16名~20名の患者数の歯科では加算点数はなく、270点だけの算定であり、医科と比べて厳しい「かかりつけ機能」の要件となっており、歯科の中での「かかりつけ機能」の定義付けがされていない中、最初に270点ありきであった。

02年(平成14年)の改定は、初のマイナス改定となった。初診料は186点から180点へ引き下げられたが、「か初診」は270点のまま据え置かれた。また、歯周病に「治癒と病状安定」の概念が取り入れられ、2回目の歯周病検査で病状安定と判断されたら継続治療診断(基本検査・精密検査)を行い100点を算定、①継続治療計画を作成し、②1~3カ月間隔で検査・基本治療・指導という「継続管理」を行う。算定点数は左記表の通りだ。
05年は憂鬱な年となった。橋本龍太郎元首相への1億円献金がワイロとの疑いで日本歯科医師会・日本歯科医師連盟元会長の臼田貞夫氏をはじめ5名の逮捕者を出し、「か初診」と「1億円献金」が連日のように新聞・テレビに取り上げられることとなり、結果、中医協に歯科側委員は出席せず、保険者側の「保険者機能を推進する会」の活動が活発化した。06年(平成18年)の改定で「か初診」は廃止となり、保険者主導のかかりつけ歯科医路線へと姿をかえた。
02年以降、協会は「かかりつけ歯科医」は歯科医師が決めることではなく患者さんが選択することだとして、「か初診」の廃止運動を行ってきた。協会アンケートでは会員の92%は算定していなかった。しかし、患者さんへの情報提供は必要であるので「お口の治療計画書」を協会独自に作成し、従前から会員に提供してきたが、9月の保団連理事会では、いくつかの協会から廃止運動と矛盾しているとの発言がなされた。保団連歯科理事会議ではそのような発言はなされいなかったので、9月に保団連に意見書を提出し、訂正を求めた。

中川勝洋
東京歯科保険医協会 第3代会長、協会顧問

なかがわ・かつひろ:1967年東京歯科大学歯学部卒業、1967年桜田歯科診療所開設、1981年東京歯科保険医協会理事、昭和大学医学部医学博士授与。1993年協会副会長、2003年協会会長、2011年協会会長を辞し理事に。2022年理事を勇退し協会顧問に就任。

【教えて!会長!! Vol.61】CAD/CAMインレー

—4月の診療報酬改定でCAD/CAMインレーが保険収載されました。

坪田有史会長:新しい技術が保険収載された場合、今まで多くの技術で医療技術評価提案書を提出した学会や関連学会から診療指針(ガイドライン)が示されてきました。現時点でCAD/CAMインレーに関しては学会からの診療指針が示されていません。4月の改定以降、本会にCAD/CAMインレーに関して会員から多数の質問や問い合わせがあります。そこで今回、臨床的な視点でCAD/CAMインレーについて解説します。

—診療報酬上の算定について教えてください。

坪田:CAD/CAMインレーを保険で行うにはCAD/CAM冠と同じく、施設基準の届出が必要ですが、既に4月の改定前からCAD/CAM冠の届出を行っている医療機関は再度の届出は不要です。院内掲示物の名称を、「CAD/CAM冠」から「CAD/CAM冠及びCAD/CAMインレー」に変更してください。
「表1」に22年7月現在のCAD/CAMインレーとメタルインレーの比較を示します。なお、12%金銀パラジウム合金(以下、「金パラ」)の材料料の点数は、10月1日に予定されている随時改定により変更される可能性があります。
CAD/CAMインレーの適用は、小臼歯と第一大臼歯の複雑窩洞に限られます。なお、上下左右すべての第二大臼歯が残存し左右の咬合支持があり、過度な咬合圧が加わらない場合に第一大臼歯に適用できます。歯科用金属アレルギー患者はすべての臼歯部に適用できますが、大臼歯については医科と連携の上、診療情報提供に基づく場合に限られます。

—窩洞形成の注意点を教えてください。

坪田:図にCAD/CAMインレーの窩洞形成について示します。表内の形成量には注意が必要です。「表2」に窩洞形成の注意点を示します。
間接法で作業模型からの製作のみが認められているため、精確な印象採得を行い、製作されてきたCAD/CAMインレーの装着は、必ず接着性レジンセメントを使用し、装着前処理として接着面にアルミナ・サンドブラスト処理およびシラン処理(内面処理加算1:45点)を行うことが推奨されます。

会長 坪田有史

(東京歯科保険医新聞2022年8月号8面掲載)

 

東京歯科保険医新聞2022年(令和4年)7月1日

東京歯科保険医新聞2022年(令和4年)7月1日

こちらをクリック▶東京歯科保険医新聞2022年(令和4年)7月1日 第628号

1面】

   1.第50回定期総会を開催/22年度活動計画ほか7議案を承認
   2.個別指導を計画/東京都
   3.東京23区、高校生等の医療費無償化へ/所得制限設けず 自己負担なし
   4.ニュースビュー
   5.「探針」

2面】

   6.記念講演 チタン・CAD/CAM冠の適用拡大を求める 金パラ代替テーマに
   7.決議/第50回定期総会
   8.東京歯科保険医協会 第50回定期総会 祝電・メッセージ等一覧

3面】

   9.会員寄稿“声”「参院選前に歯科医師の地位向上を考える」(菊地三四郎氏/渋谷区)
   10.声明 オンライン資格確認システムの導入“義務化”に反対する
   11.共済部だより

【4面】

   12.経営・税務相談Q&A No.394 水漏れ事故の対応は?備えは必要?
   13.IT相談室/登録した覚えがない医療情報サイトから請求が…どうする?/氏(クレセル株式会社)
   14.診療報酬改定 関連書籍/歯科疾患管理計画書のご案内
   15.法律相談、経営&税務相談

【5面】

   16.研究会・行事のご案内

【6面】

   17.Special Serial No.5 「新型コロナウイルス感染症は転換期を迎えている」山本光昭氏(社会保険診療報酬支払基金理事)
   18.教えて!会長!!Vol.60
   19.中川理事が今期で勇退

【7面】

   20.協会史を振り返り現在・未来を見つめる Vol.1/長期維持管理政策の歴史・中川勝洋氏
   21.(一社)日本接着歯学会 理事長に坪田氏

【8面】

   22.information≪研究会・行事≫
   23.歯科医院からも多数申請 事業復活支援金の特徴点/税理士・櫻木敦子氏
   24.電子書籍「デンタルブック」
   25.夏季休診案内ポスター&卓上型タイプ

【9面】

   26.症例研究/レジン前装チタン冠、総合医療管理加算

【10面】

   27.連載/私の目に映る歯科医療界⑯(東洋経済新報社・大西富士男氏)骨太方針に突如「国民皆歯科健診」入る
   28.理事会だより
   29.協会活動日誌2022年6月

11面】

   30.<国会要請>75歳以上窓口2割化中止を求める
   31.神田川界隈/四方山話(橋本健一理事/東村山市)
   32.第26回参議院選挙 投開票は7月10日に
   33.会員優待サービスご案内
   34.好評博す施設基準の講習会開催/歯初診・外来環・歯援診・か強診に対応
   35.院内感染防止対策講習会/「徹底した洗浄」が鍵 重要な3要素を解説

12面】

   36.通信員便り No.123
   37.「骨太方針2022」に国民皆歯科健診を明記
   38.金銀パラジウム合金等 引き上げに/銀合金、メタルコアおよび14Kも改定

【教えて!会長!! Vol.60】第50回定期総会を終えて

― 6月19日、中野サンプラザ(東京・中野)で第50回定期総会を開催されました。

坪田有史会長:まず、本会定期総会にご出席いただいた先生方、また委任状を提出していただいた先生方に御礼申し上げます。定期総会では、審議をお願いした議案に、複数のご質問をいただき、それぞれ回答させていただいた上で、全7議案すべてを承認していただき、感謝いたします。
定期総会の位置付けは、本会規約第5章、第14条に「総会は本会の最高議決機関であり、会長が招集する」と記されています。すなわち、総会は本会の中で最も高い位置付けとなります。今回、定期総会が「第50回」という節目の数字となりました。本会がスタートした1973年の会員数は180名と過去の資料に記録されています。その後、会員数が着々と増加し、2022年6月1日現在、5938名と本会スタートから半世紀で約33倍の会員数になっています。この場をお借りして、会員の先生方、会務を担当された先輩方、そして歴代の事務局の方々のご努力に心から感謝申し上げます。
なお2023年は、本会が50歳、すなわち50周年にあたります。本会50周年を迎えるにあたり、会員の先生方と共に祝う感謝の会を現在企画中です。その際は、多くの会員の先生方に参加いただきたいので、よろしくお願いいたします。

― 2022年度の活動計画を教えてください。

坪田:詳細は、総会に向けて郵送させていただいた「第50回定期総会議案書」をご参照いただきたいのですが、ここでは先生方と共有しておきたい具体的な活動計画をいくつか述べさせていただきます。

1 新型コロナウイルス感染症対策
 ・助成金、支援金の申請の補助、労務上の相談へ対応する。
 ・歯初診の研修である院内感染防止対策講習会を複数回、開催する。
2 歯科医療改善の取り組み
 ・今次診療報酬改定の内容を分析し、問題点や不合理な点の是正、改善を厚労省に求める。
 ・オンライン資格確認の導入、マイナンバーカードの保険証利用についてメリット、デメリット   
  を検討し、会員への周知に努める。
3 審査、指導の対策
 ・コロナ禍で一時中断されていた各個別指導が再開されており、会員からの相談に適宜対応す
  る。
 ・レセプト審査が公正・公平に行われるよう情報収集し、問題があれば改善を求める。
4 講習会・説明会などの開催
 ・コロナ禍により始まったオンライン、ハイブリッド形式などを活用し、充実した講習会などを
  開催する。
 ・コロナ禍で中止していた地区懇談会を7月に3地区で開催し、会員との懇談を行う。
5 共済制度の普及・充実
 ・安心して診療に従事できるよう、共済制度の充実、免責事項の改善などに努める。
6 医療改善を求める
 ・患者・国民のため、さらに「保険でよい歯科医療」が進むよう活動を行う。
 ・一部の75歳以上の患者への医療費窓口負担2割化阻止に向けた活動を行う。
 ・都立・公社病院独法化に対して反対する活動を行う。
7 「健康まつり」の開催
 ・コロナ禍で延期していた東京保険医協会と本会とが主催する「保険医協会 健康まつり2022」を
  10月23日(日)、12〜16時、東京都新宿区西新宿の新宿駅西口広場イベントコーナーで開催す
  る予定で準備を進めている。開催目的は、①医療団体として健康増進をアピールする、②医
  師・歯科医師の連携をアピールする、③医科歯科両保険医協会を広く認知してもらうようアピ
  ールする、④国民皆保険制度の重要性をアピールする―などである。

以上、2022年度も引き続き会員の先生方のご理解、ご協力のほど、よろしくお願い申し上げます。

             東京歯科保険医協会 会長 坪田 有史

(東京歯科保険医新聞2022年7月号6面掲載)

登録した覚えがない医院情報サイトから請求が…どうする?

WEBに係る歯科関連の法令やトラブル対応などについて、
歯科専門にサイト制作、運用、コンサルディングを手掛ける専門家が解説する本連載。
今回は医院情報サイトについて―。

 相談件数としては多くありませんが、「医院の基本情報を掲載するサイトからの請求」という身に覚えのない要求にお困りの方が過去にいました。多いのは、まず簡単な情報だけ掲載して、より詳しい情報を有料で掲載しないかという営業電話がかかってくる場合です。
 前提として、勝手に医院情報を掲載して掲載費用を請求することなどはビジネスとして論外で、取り合う必要はありません。事前合意のない請求は無効です。
 どちらかと言えば、最初に医院の基本情報を無料で掲載して、その後に「情報の更新をするなら有料契約が必要」「削除も有料」などと、掲載済みの情報を人質のように扱って、有料契約を迫ってくる場合がありますので注意が必要です。
 以前、そのような相談があった時にこちらから掲載サイトの業者と電話をした時には次のような主張でした。「公開されている医院の基本情報を当サイトに掲載することは、法的に問題ありません。ただ情報の更新や削除などに要する人件費は有料となります」。とんでもない主張だと思いましたが、「法的に」という言葉で泣き寝入りしてしまう方もいらっしゃるようです。以前、飲食情報サイト「食べログ」へ勝手に掲載されてしまい、店側が訴えた結果、敗訴した事例がありました。おそらく、このような事例を盾にしているものと考えられます。
 情報の削除、改訂については対応してもらえることが多いはずです。しかし、登録して自力で改変する、もしくは費用を要求されるなど「確信犯的に」情報を掲載している業者もいるので、その場合は、即座に弁護士を通じてやり取りをすることが望ましいです。

クレセル株式会社

(東京歯科保険医新聞2022年7月号4面掲載)

私の目に映る歯科医療界⑯ 骨太方針に突如「国民皆歯科健診」入る/現実的な費用負担や制度具体化など課題残る

骨太方針に突如「国民皆歯科健診」入る/現実的な費用負担や制度具体化など課題残る

去る5月29日㈰、

「国民皆歯科健診」検討開始へ 骨太方針

こう見出しを打って、産経新聞デジタル版が特ダネ記事を流した。

6月上旬にまとめる「経済財政運営と改革の基本方針」、いわゆる「骨太方針」で「全国民に毎年の〝国民歯科健診〟の導入検討を始めるのを明記する」というのがその肝となる内容だ。通常のペーパー版には翌530日㈪版に掲載されているので、そちらをご覧になった方も多いと思う。

我が国では1歳半、3歳時点の乳幼児や小・中・高時代を除けば、歯科健診は義務ではない。健康増進法で4070歳の国民は40歳、50歳、60歳、70歳と節目の10年ごとに1回、歯科健診を受ける機会を持つ。この法律で努力義務を課せられる自治体のうち約7割が住民に歯科健診を実施しているが、実際の受診率は1割未満と低い。

事業主に毎年の実施が義務づけられている歯科以外の健診と比べ、大きく遅れをとっている歯科健診を一気に全国民義務化へと方向転換するというのだから、驚きのニュースだったわけだ。

そして、67日に閣議決定された「骨太方針」には、実際に「生涯を通じた歯科健診(いわゆる国民皆歯科健診)の具体的な検討」という文言が入った。

Ⅰ.全国民に義務化は本当か?不明点多い骨太方針入り

ただ、記事に疑問もある。

第一に情報源だ。可能性が高いのは、政府・自民党に歯科健診拡大を働きかけてきた日本歯科医師会か自民党の関係者だろう。

すぐ目の前に参議院選挙が迫っている。歯科医師の票がほしい自民党と支援団体の双方に情報を流す動機がある。どちらのサイドにも、全国の歯科医師やその関係者に「運動の成果」をアピールできるからだ。

本質的な疑問は、産経記事がいう「全国民に義務付ける」という部分だ。事業主や自治体ではなく、直接、全国民に義務付けるのかどうか(産経記事は「全国民に毎年健診を義務付ける」と書いている)。

もしそうならば、歯科健診を受けない国民へのペナルティーはどうなるのか、毎年、全国民を対象に実施する際の侮りがたい費用負担をどうするのか、負担の主体は国・自治体・事業主のどこなのか、国民の直接負担もあるのか、全国民に毎年歯科健診を受けさせる手段として職場と自治体の両方を動員するのか、など様々な謎があるのだが、記事は「健保組合などが毎年行う健康診断の際に唾液を提出してもらう」などの例を挙げるのみだ。

具体的には、まだ煮詰まっていないのが本当なのだろうが、「全国民に義務付け」を字義通り受け取るべきか、疑問符が付く。

Ⅱ.財務省はかねて予防医療に懐疑的具体化時点で反対に回る可能性も

財務省がこれを黙認する理由も謎だ。今年も例年通り骨太方針の前、525日に財政制度等審議会の財務大臣への答申があった。そこには①かかりつけ医の制度化、②給付費の伸びと経済成長率の整合性、③医療法人の事業報告書の電子開示、④リフィル処方箋―など、医療費を狙い撃ちにし、その削減を求める内容が入っている。これについては、日本医師会も特に大きな問題として注視している。

医療費(本体を含めた診療報酬)の削減に関しては、2022年度診療報酬改定で見せた強硬路線をさらに強力に進める方針を打ち出している。歯科医療界の将来にとっても、大きな意味を持つ内容になっている。

財務省は、予防医療には極めて懐疑的だ。かつて、厚生労働省が財務省の反対を押し切って進めた「生活習慣病の予防の徹底」など予防医療政策が、医療費適正化効果を出せずに終わったことを、わざわざ具体的数値を列挙しつつ今年の答申でも強調しているほどだ。

「国民皆歯科健診」推進の大義名分に挙げられるのは、歯周病予防など歯・口腔の健康維持が他の病気の発症を抑え、医療費全体の抑制につながるという理屈だ。

この歯科版の予防医療の効果には、財務省は否定的なはず。少なくとも国の財政出動となれば強く反対すると思われるが、骨太方針には「国民皆歯科健診」が入っている。なぜか。

大事な選挙前だから目をつむっているとすれば、選挙が終わり具体策を作り、予算付けの段階になれば、注文が付く可能性が強い。

Ⅲ.まずは歯の健康向上を訴え様々な課題克服を目指すべき

国民の間にも、「選挙目当て」「団体利権」など、懐疑的な見方があるのも確かだ。

それでも歯の健診の受診率が、わずか10%のままで良いはずがない。高校を出た後で、歯の健診でいち早く歯周病などの予防、早期発見・改善につなげる機会を増やすことは、国民の健康の観点のみならず、生活の質の維持・向上を図る観点からも望ましいことは確かだ。

歯の健康維持(健診効果)、およびそのほかの病気・医療費の削減との因果関係の検証・エビデンスの確率は、今後じっくり構築すれば良い。まず最優先すべきは、歯・口腔の健康向上に照準を絞り、費用対効果を考えた上で、国が関与しての歯科健診の制度的拡大を進めていくことだ。

歯科医療関連団体は、懐疑的な国民・財政当局に対して、健診拡大による歯の健康の維持・向上効果を粘り強く訴えていく活動を進めてほしい。

健診の本格的拡大のためには、歯科医師だけでなく不足する歯科衛生士などの人員増強も必要になるかもしれない。その待遇改善も併せて実施しなければ「国民皆歯科健診」は絵に描いた餅になる可能性もある。      

「国民皆歯科健診」の実現は、巷間、言われるほど簡単ではない。超えるべき課題は多く、関係者の努力と覚悟が必要になることだけは間違いない。

東洋経済新報社 編集局 報道部 記者 大西富士男

「東京歯科保険医新聞」202271日号10面掲載

長期維持管理政策の歴史 vol.1

はじめに

2003年6月の第31回定期総会において、大多和彦二会長の辞任に伴い、私が会長に指名された時から26年が経ちました。その私が2011年に会長を退いて以降も協会理事、保団連理事と会務を務めてまいりましたが、2022年6月19日の第50回定期総会をもって会務から退くことといたしました。協会の活動に参加してから42年にわたり、これまで会員の皆様よりのご協力をいただきありがとうございました。今後は協会顧問として、協会の諸活動を見守らせていただきます。(中川勝洋)

 

―今後の論議を注視国民皆歯科健診

6月7日に「骨太の方針2022」が発表され、「歯科専門職による口腔健康管理の充実」「医療機関連携の推進」「オーラルフレイル対策」等が示され、その中に「国民皆歯科健診の具体的な検討」が盛り込まれたことが明らかになりました。これを行うことで、医療費全体の削減に寄与できるとしています。率直なところ、「遂に、長期維持管理政策がここまで来たか」、との思いがします。
まだ詳細は分かりませんが、歯科健診が義務化されると、ドイツのように歯科健診を受けない国民へのペナルティーが導入されるかもしれません。今後の論議を見守りたいと思います。


―改定変遷の振り返り 「か初診」から「か強診」へ

1990年から2020年まで、「歯界展望」(医歯薬出版株式会社刊)誌上に診療報酬改定ごとに書かせていただいた「診療報酬改定の特徴と評価」を読み返して厚生労働省の歯科医療、歯科保健政策の変遷を振り返ってみました。
1996年(平成8年)3月末、それまでのPⅠ型・PⅡ型などの歯周病治療から現在の歯周病治療の体系である「歯周病の診断と治療のガイドライン」に再編されました。基本検査と精密検査に基づく治療の流れが示され、初診月には算定できなかった指導料も65点で導入されました。同時に歯冠修復物に対する補綴物維持管理料、いわゆる「補管」が2年間の縛り付きで導入されています。
日本歯科医師会は改定財源を確保するためだとし、「責任と保証」という言葉遣いでの説明は回避。しかし、2年以内の破損等での再製作に係わる費用が算定できないことは、診療側が責任を取り、維持管理料という名前の保証料で再製作を引き受けるということです。歯冠修復物の再製作での請求が多いことへの対応ではありますが、クラウン150点、ブリッジ 5歯以上500点、6歯以上670点のためか、保団連の一部は反発したものの大きな運動にはならず、結果は歯冠修復物の請求が減少し、保証料を下回りました。


―英独海外視察の原点

この制度もドイツで充填、補綴物の保証というペナルティーとともに導入されており、後日、協会による2006年のイギリス・ドイツへの歯科医療視察団派遣の原点となりました。

 

 

中川勝洋
東京歯科保険医協会 第3代会長、協会顧問

なかがわ・かつひろ:1967年東京歯科大学歯学部卒業、1967年桜田歯科診療所開設、1981年東京歯科保険医協会理事、昭和大学医学部医学博士授与。1993年協会副会長、2003年協会会長、2011年協会会長を辞し理事に。2022年理事を勇退し協会顧問に就任。

東京23区、高校生等の医療費無償化へ/所得制限設けず 自己負担なし

 東京23区長でつくる特別区長会は6月21日に緊急記者会見を行い、現在中学生までを対象としている子どもの医療費無償化について、2023年度から高校生に拡大することを明らかにし、所得制限や自己負担は設けず無償化すると発表した。

 東京都は2022年1月、子どもの医療費助成の対象を中学生から高校生までに拡大するすることを発表。高校生の医療費を巡っては、所得制限を設け、小中高生における通院1回につき上限200円を自己負担とした上で、残りを助成する方針を表明していた。
 その後、東京都は2023年度から2025年度までの3年間は都の財源で経費を全額負担し、2026年度以降の負担割合は今後の協議とすることを特別区に提案。特別区長会は今回、2023年度から事業を実施するため、2026年(令和8年)度以降の財源等については東京都との協議を継続することとし、東京都の提案をいったん了承した。なお、東京都は所得制限を設け、200円の自己負担を求める方式を主張している。
 特別区長会は、特別区として所得制限や自己負担を設けない完全無償化で事業を実施するため、東京都の補助金でまかなえない財源は、23区が自主財源で負担する方針。東京23区の負担分は13億円以上と見込む。

オンライン資格確認システムの導入〝義務化〟に反対する

   
 マイナンバーカードを利用したオンライン資格確認システムの運用を開始した医科・歯科医療機関及び保険薬局数は2022年5月22日時点で4万4284機関、参加率は19・3%となっている。そのうち、全国の歯科医療機関数は9263機関、同13・1%、東京の歯科医療機関数は903機関、同8・4%にとどまっている。協会には実際に導入している歯科医療機関からオンライン資格確認システムの利用者は月1~2人の利用者しかいないという声も寄せられている。
 導入した医療機関には毎月のランニングコストの負担や受付の患者対応などの負担がかかる。そのため、診療報酬改定で、電子的保健医療情報活用加算が新設された。
 しかし、政府は患者負担が増えることが報道されると、同加算の廃止を早々と打ち出した。加算が廃止されればオンライン資格確認システムのランニングコストなどは完全に医療機関側が負担することとなる。また、診療報酬の諮問機関である中医協を飛び越えて、政府が方針を打ち出すのはいかがなものだろうか。
 また、患者負担があるため、オンライン資格確認システムの利用者が少ないという声もあるが、そもそもマイナンバーカードの全国普及率は5月1日時点で44・0%であり、東京では47・8%である。健康保険証利用登録が済んでいるのは全人口でわずか7%未満に過ぎない。いったい、マイナンバーカードを健康保険証として持ち歩く国民がどの程度いるだろうか。
 現行システムでは、資格確認以外の薬剤情報や特定健診記録などの医療情報へアクセスするためにはマイナポータルでの登録が必要である。マイナポータルの利用規約にはすべてのトラブルについて「自己責任」での解決をすることが定められており、全ての責任を利用者に押し付ける内容となっている。医療機関にあるオンライン資格確認システムのカードリーダーはその場で健康保険証とマイナンバーカードの紐づけができるため、医療機関で紐づけを行えば、医療機関側がマイナポータルの利用規約への同意を促してしまうことになる。また、一旦紐づけが完了してしまえば取り消すことはできないため、取り消しを希望する患者さんとの間で新たなトラブルともなりかねない。
 さらに、昨今の半導体不足の影響で、オンライン資格確認システムに使用する機器なども不足しており、導入まで半年以上待たされているという医療機関も存在する。半導体の世界的需要の高まりやウクライナ情勢の影響で、物資供給が不安定な中で優先的に導入を進めていくべきものなのかは甚だ疑問である。
 オンライン資格確認システムの最大のメリットは健康保険の資格確認がその場でできることとされてきたが、2021年10月より支払い側で資格喪失後のレセプトの振替などの作業を行っており、返戻は減りつつあるため歯科での導入のメリットは少ない。導入を義務化すれば、必要のない新たな負担を強いられるなどのデメリットが大きくなる。
 コロナ禍で経済的に打撃を受けている医療機関に対し、マイナンバーカードの普及率の低さを解消するため、オンライン資格確認システムの導入を〝義務化〟し、負担を強いることが今求められていることなのか。マイナンバーカードの普及については、政府が正しく運用するのであれば、新型コロナウイルスに係る給付金などに活用をすることができることなどから、推進をしていく必要性もあると思われるが、現状ではさまざまな点で不安が払しょくできない。そもそも医療をマイナンバーカード普及の出しに使うことについて、国民に理解を得られているとは到底考えられない。
 以上よりオンライン資格確認システムの導入〝義務化〟に反対する。

2022年6月9日
東京歯科保険医協会
第5回理事会

記念講演、坪田有史会長が登壇/第50回定期総会

チタン・CAD/CAM冠の適用拡大求める

 定期総会後半の「記念講演」では、協会の坪田有史会長が壇上に上がった。テーマは「臨床の視点で金パラの代替を考える」。昨今の診療報酬改定や基本診療料の点数の変遷、金パラの代替材料についての現状、そして近未来について持論を展開した。司会は阿部菜穂理事が務めた。
 
2022年度診療報酬改定について

 坪田会長は、まず2022年度診療報酬改定について触れ、基本認識、基本的視点として、口腔疾患の重症化予防、口腔機能低下への対応の充実、QOLに配慮した歯科医療の推進を挙げ、それらを通じて、国民の健康寿命の延伸とQOLの改善に寄与することと説明した。
 診療報酬改定率については、全体としてプラス0・43%(財源:300億円)、歯科では、プラス0・29%の87億円と紹介。坪田会長が歯科医師となった1989年には国民医療費における歯科医療費の割合は10%であったが、20年後の2019年では6・8%に減ってしまったとし、国民医療費における歯科医療費の割合が10%で維持できていれば、約1兆円も少ない現状であると指摘した。

基本診療料の変遷を前に

 2022年度改定で、歯科の初診料は261点から264点、再診料は53点から56点へと、各3点ずつアップした。医科の初診料と再診料は、歯科の初診料より24点、再診料は17点高く、会員からは「医科と同じ点数にすべき」との声があがっている。歯科は初診料を1点上げるのに8億円、再診料を1点上げるのに32億円、初診料・再診料を各1点ずつ上げるのに40億円が必要とし、2022年度改定で初診料・再診料を各3点ずつ上げたので、120億円の財源の確保が必要と説明した。その上で、歯科の財源の不足分は、P基処の廃止により充当されたと説明した。P基処の廃止により、110億7000万円の削減となるため、初診料・再診料の点数が上がったメリットを享受できていないと感じる歯科医師が多いと指摘した。
 さらに、過去10年間における初診料・再診料の変遷において、点数は引き上げられているものの、消費税率の引き上げに伴う対応分が含まれているため、実質的な基本診療料の評価には繋がっていないことを指摘し、歯科において国民の健康寿命の延伸やQOLの改善だけでなく、歯科に係る諸問題を改善するために歯科医療費の総枠拡大の必要性を強く訴えた。

金パラの代替材料

 保団連が実施した金パラモニター調査のデータを引用し、金パラ告示価格と実勢価格が乖離している状況や、パラジウム、金の先物チャート図をもとに、世界情勢の影響を受けやすく、投資家の投機対象となる材料を保険の材料としていることを問題視。また、歯科用貴金属の価格変動が歯科医療機関に与える影響を緩和するため、年4回公定価格の改定を行うなど、対応が行われたが、金パラ告示価格と実勢価格が乖離している状況は改善されないとし、抜本的な対応を国に求めていくと強調した。
 さらに、金パラによる歯冠修復の問題点として、審美障害や金属アレルギーが挙げられるが、接着の技術改善により、接着ブリッジやCAD/CAM冠などのメタルフリーの歯冠修復物の適用が拡大していると説明した。金パラの代替材料として、メタル系ではチタン、コバルトクロム合金、合成樹脂としては、コンポジットレジン(HJC、CRインレー)、ハイブリッドレジンブロック(CAD/CAM冠、CAD/CAMインレーなど)、PEEK、無機材料としては、セラミック(ジルコニア)をピックアップした。
 ただし、フルジルコニアクラウンの保険収載は財源が大幅に増加しなければ厳しいという見解を示した。今後は、国としても脱メタル化を推し進めているため、メタルフリーの歯冠修復における保険適用の拡大がさらに進むとの見解を示した。
 そのほか、各材料の臨床における特徴や問題点を実際の臨床データを用いながら解説。保険適用となったチタンの改善案としては、①CAD/CAM冠用のチタンブロックを用いて、CAD/CAM技術での製作を行う、②ブリッジへの適用拡大―の2点を挙げた。このうち、②のブリッジへの適用拡大については、保団連を通じて働きかけていくとした。
 そして、CAD/CAM冠の適用の問題として、第二大臼歯のすべてが残存していなければ第一大臼歯には適用不可となっているが、その条件におけるデータやエビデンスがあまりにも少ないと指摘した。一律的にルールに縛られているため、患者に保険で適切な治療を行うことが難しい状況にあることから、歯科医師の裁量を認めさせる必要があると強調した。

歯科医療費総枠拡大

 坪田会長は改めて金パラの代替材料として、チタンやCAD/CAM冠の適用拡大の必要性を強調し、患者への適切な治療のためには、歯科医師の裁量権の拡大が不可欠とし、歯科業界を取り巻く諸問題の抜本的な解決策として、歯科医療費の総枠拡大の必要性を訴えた。
 そして、歯科医療費の総枠拡大が果たせなければ、歯科医師が望む保険適用の拡大や、増点は望めないとし、国会議員や厚生労働省への働きかけを強めていくと強調した。
 歯科医師が日々できることは、高点数を理由とする個別指導を恐れた萎縮診療に陥るのではなく、患者、国民の健康維持、健康寿命の延伸のため、エビデンスに基づいた正しい保険請求を行うことであり、それが歯科医療費の総枠拡大に繋がると訴え、結びとした。
  講演後の質疑応答では、オーラルスキャナーを用いたCAD/CAMインレーの保険収載の可能性など、フロアーからの質問に、坪田会長が回答した。

第50回定期総会を開催/22年度活動計画ほか7議案を承認

当会第5代会長 坪田有史

定期総会

 協会は6月19日、中野サンプラザで第50回定期総会を開催した。会場には一般会員と役員合わせて50名が出席。委任状は994名で、両者を合わせると1044名の出席となり、総会成立要件である会員数の10%を超え、総会は成立した。昨年と一昨年は総会のみの開催であったが、新型コロナウイルス感染拡大が緩和したこともあり、今回は記念講演を3年ぶりに実施し、協会の坪田有史会長が講師を務めた。

 前年度の目標を振り返る

 総会は、山本鐵雄副会長の開会の言葉で幕を開け、冒頭、坪田会長が挨拶に立ち、まずコロナ禍にも関わらず総会に参加いただいた会員に対し謝意を表明。さらに、2021年度の総会で掲げた3つの目標を振り返り、1つ目の会員数増加については「6月19日時点で5949名が会員となり、6000名という大台が見えてきた。引き続き会員拡大に注力したい」と強調。2つ目の協会のデジタル化、特にペーパーレス化推進については「まだ紙媒体もあるが、徐々に進んでいる」と説明。3つ目の事務局のスキルアップに関しては「各個人が自己研鑽しており、一定のスキルアップができた」と報告した。
 その後、早坂美都理事が関係団体や議員からの祝電を披露したほか、多数のメッセージが寄せられていることを紹介。議事に入る前には、議長に橋村威慶氏(文京区)、副議長に池川裕子氏(葛飾区)が選出され、議事が進められた。

 第1~7号議案が賛成多数で承認

 続いて、議案7本の審議に入ったが、加藤開副会長が第1号議案「2021年度活動報告の承認を求める件」、半田紀穂子理事が第2号議案「2021年度決算報告の承認を求める件」、西田紘一監事が「会計監査報告」を提案し、いずれも賛成多数で承認された。
 次に、坪田会長が第3号議案「役員の件(顧問の承認)」、川戸二三江副会長が第4号議案「2022年度活動計画案の件」、半田理事が第5号議案「2022年度予算案の件」、坪田会長が第6号議案「選挙管理委員承認の件」、最後に川本弘理事より第7号議案として「決議採択の件」がそれぞれ提案され、いずれも賛成多数で承認された。

 質疑応答 丁寧に回答

 議案の質疑応答では、会場から「オンライン資格確認は医療DX化の基本とされ、電子カルテの標準化なども進めるとされているが、現状では電子カルテをまともに活用できるシステムはなく、対応するのはかなり厳しい。協会はどのように考えているか」「診療報酬改定では、歯科医療の改善が依然として実現されていないように思う。歯保連で実施したタイムスタディ調査の結果をもとに、さらに行政に改善を求めるなど、もっと歯科医師の技術料が評価されるような仕組みにしてほしい」「オンライン資格確認の義務化は行政の暴走であるように感じる。行政に改善を求めてほしい」などの質問や要望があり、担当役員が丁寧に回答した。
 最後に松島良次副会長が挨拶を行い、閉会した。

第50回定期総会における質疑

(質問:会員S先生)

コロナ禍の中で世の中は物価の上昇、また診療報酬の改定はゼロ改定であり歯科医院の経営環境は一層厳しくなっている。そんな中、協会の役員を務めている手当のベースアップは更なる協会活動のためにも必要だと思うが、ベースアップする予定はあるのか。

(回答:坪田有史会長)

歯科医師のおける環境のことはおっしゃるとおりであり、そのような提言をしていただき感謝申し上げます。しかしながら、他団体などと比較しても決して手当は安いわけではなく、私自身の感覚では妥当な金額と考えています。あくまでも金額については個人的な感覚など、異なる点もあり、歯科業界がさらに苦しくなっていくこともあるかと思うので、今後そのようなご意見を踏まえ、検討していく必要があると思います。ご意見ありがとうございました。

 

(質問:会員M先生)

歯科業界は引き続き厳しいと思うが、協会の会費の値上げがされる可能性はあるのか。

(回答:坪田有史会長)

他の保険医協会の会費と比較して東京歯科は最も低い水準にあるものの、総会の中で報告した通り健全な財政を維持しています。そういった中で会費を値上げする理由はないので現時点では値上げする必要はないと考えています。

 

(質問:会員S先生)

歯科医療の改善について。今回の改定の中で、新技術や新病名、新しい検査なども盛り込まれました。しかし、開業してから30年になりますが、改善されているという実感がわきません。それは技術の部分が評価されず、低い点数のままで改善されていないことが原因であると思う。その評価方法についてはタイムスタディなどが挙げられ、歯保連でタイムスタディについての考え方が示されたが考慮されているとは思えない。その結果、人数を多くさばくことによって点数を多く稼ぐしかなくなる。協会ではタイムスタディの活用など考えているのか。考えていなければぜひ検討していただきたい。

(回答:坪田有史会長)

改定はやはり財源という大きな問題があり、増点するのは厳しいのだと思う。タイムスタディの報告を厚労省はあまり参考にしていないように感じます。そうなるとそれをもとに点数の増点を要請するのは厳しい。しかし、先生方の臨床が満足いくように協会として改善を求めていく必要はあると考えている。

 (質問:会員S先生)

わかりました。歯科はブラック企業のようなものだと行政に強く訴えてほしい。

 

(質問:会員M先生)

オンライン資格確認の問題で、マイナンバーカードの義務化など報じられており、行政の暴走を感じる。協会としてはどのように捉えているか。

(回答:坪田有史会長)

協会として義務化には強く反対をしている。義務化というと一律でそれを強制させることになるので、それを容認するのは厳しいと思う。義務化には反対だが、将来的に必要とされ、取り入れていく必要はあるように感じている。そのバランスを踏まえて協会として活動していく必要があると思う。

 

(質問:会員N先生)

協会には休業保障で非常にお世話になり感謝している。先ほどのM先生の質問にオンライン資格確認があった。その歯科のDX化の中で電子カルテ化というものも挙げられているが、歯科で電子カルテとして機能しているものがあるかは疑問である。もし本当に電子カルテ化というものを目指すのであれば、保険診療の仕組み自体を大幅に見直す必要もあるのではないか。協会としての考えを伺いたい。

(回答:坪田有史会長)

オンライン資格確認はマイナンバーカードから患者の情報を得るということになるが、その際はオンライン請求が要件になっています。しかし、それはオンライン請求のみでカルテの内容を見るということではありません。それもゆくゆくは対応の必要があるかもしれませんし、将来的には国はそれを一定進めたいのだと思います。先生のご質問は電子カルテについてですが、まともに機能しているものがあるかどうかはわからないですが、単に電子レセプトにのみ対応している先生方が多いと思います。医科は電子カルテに対応しているという体裁になっているが、実態としては100%出来てはいないのではないでしょうか。今後は実態を見て、電子カルテについての必要性などを考えなければならないでしょう。協会としては、まず電子カルテの現状について改めて調査した上で会員に周知していく必要があると思います。

(回答:馬場安彦副会長)

協会はレセコンメーカーと懇談会を実施しています。電子カルテに求められていることをレセコンメーカーの中で対応できている、できていない、費用面などの話題も大事です。先生からのご質問など、具体的な話がメーカーから回答できるかもしれません。ぜひレセコンメーカーと懇談会に向けてご意見をお寄せいただきたい。

新型コロナウイルス感染症は 転換期を迎えている Special Serial No.5/完

次の新たな感染症に対峙する医療・公衆衛生体制の充実を

2020年1月、国内で初めて新型コロナの感染事例が確認された頃には、「封じ込め」を目指す「戦略」が取られ、感染者の隔離のみならず濃厚接触者にも厳重な措置をとるなどの「戦術」が開始されたが、その時点においてはそれなりの妥当性があった。しかしながら、本連載で既述したように、現在においては、「封じ込め」が不可能であること、ワクチンや診断・治療法が確立し、致死率が着実かつ大幅に減少してきていることから、「戦略」を見直し、「戦術」を改めるときに至っている。

わが国において一刻も早くとるべき戦略

これまでの感染者の全数届出・隔離、濃厚接触者の行動制限という「封じ込め」を目指す戦略から、「重症化・死亡者数の最小化」とともに「恐怖の病原体というイメージの払拭」を目指す戦略へ転換する段階に現在到達している。
重症化や死亡のリスクは、高齢者や高度肥満者、コントロールが良くできていない糖尿病等の基礎疾患を合併している患者という知見が明らかとなっている。小児や若年者は、無症状か軽症者が大多数であり、感染すること自体を問題視するよりも、重症化リスクが高く死に至る人をいかに守るかに保健医療資源を充てていくべきである。
また、「防災」ではなく「減災」というコンセプトがあるように、感染リスクゼロを目指すような感染拡大の「防止戦略」から、感染機会や重症化リスクの「軽減戦略」への発想転換も考慮されるべきではないか。

重症化・死亡者数の最小化に向けて

広くまん延し、封じ込めができないということから、今となっては濃厚接触者の行動制限の意義は低く、即刻止めるべきである。その上で、感染者の重症化予防のための的確な診断、適時適切な治療へのアクセスの確保が重要であり、保健所を絡ませず、診療所等の外来機能による早期発見・早期治療、医療機関連携による患者紹介、転院、救急搬送といった通常の医療システムに戻すことが急務である。そのためにも、新型コロナの全数届出は不要とし、定点医療機関におけるサーベイランス対象感染症といった運用に切り替え、風邪やインフルエンザのごとく、一般の診療所や中小病院における受け入れがなされるようにすることが重要である。また、流行時には、高齢者施設や病院等における会話時のマスク着用など感染リスクの軽減も必要であろう。
なお、重症化予防の事前策としての、高齢者、高度肥満や基礎疾患等を有する者に対する重症化予防の「個人防衛」としての定期的なワクチン追加接種の勧奨も必須である。

もはや「恐怖の感染症」ではない

元々「恐怖の病原体」というものは、社会から隔離・排除すべきという意識と根強い「偏見・差別」意識と連動する。これは、ハンセン病やHIV感染症での経験そのものであり、治療法等の確立によって「恐怖の病原体」「不治の病」では無くなり、その疾病イメージが変わり、偏見・差別問題は改善するという歴史が繰り返されている。
一方、高齢者などでは続発する細菌性肺炎等で死に至ることが多々ある風邪症候群や季節性インフルエンザなどは、仮に罹患しても、偏見・差別を受けることはほぼ無く、それは「恐怖の病原体」というイメージが作られていないからである。このため、新型コロナウイルス感染症に対する疾病イメージを変えて、感染のリスクはすべての人にあり、感染自体を恐れるべきでないという政策を進め、偏見・差別、風評被害を無くしていくことが求められている。

最後に

幸い、4回目のワクチン接種は高齢者および基礎疾患を有する者を対象にしたり、屋外での非会話時のマスク着用は不要としたりなど、私が提言してきた戦略・戦術が徐々に政府でも取り上げられつつある。
新型コロナウイルス感染症問題の収束に期待するとともに、今回の教訓を踏まえた次の新たな危機的な感染症の発生に向けた医療・公衆衛生体制の更なる充実も期待して、本連載を終えたい。


山本光昭(やまもと・みつあき)
前 東京都中央区保健所長 / 現 社会保険診療報酬支払基金 理事

1984年3月、神戸大学医学部医学科卒業後、厚生省に入省。横浜市衛生局での公衆衛生実務を経て、広島県福祉保健部健康対策課長、厚生省健康政策局指導課課長補佐、同省国立病院部運営企画課課長補佐、茨城県保健福祉部長、厚生労働省東京検疫所長、内閣府参事官(ライフサイエンス担当)、独立行政法人国立病院機構本部医療部長、独立行政法人福祉医療機構審議役、厚生労働省近畿厚生局長などを歴任し、2015年7月、厚生労働省退職。兵庫県健康福祉部医監、同県健康福祉部長、東京都中央区保健所長を経て、2021年4月より現職。

第50回定期総会 記念講演/チタン・CAD/CAM冠の適用拡大求める

定期総会後半の「記念講演」では、協会の坪田有史会長が壇上に上がった。テーマは「臨床の視点で金パラの代替を考える」。昨今の診療報酬改定や基本診療料の点数の変遷、金パラの代替材料についての現状、そして近未来について持論を展開した。司会は阿部菜穂理事が務めた。

―2022年度診療報酬
改定について
坪田会長は、まず2022年度診療報酬改定について触れ、基本認識、基本的視点として、口腔疾患の重症化予防、口腔機能低下への対応の充実、QOLに配慮した歯科医療の推進を挙げ、それらを通じて、国民の健康寿命の延伸とQOLの改善に寄与することと説明した。
診療報酬改定率については、全体としてプラス0・43%(財源:300億円)、歯科では、プラス0・29%の87億円と紹介。坪田会長が歯科医師となった1989年には国民医療費における歯科医療費の割合は10%であったが、20年後の2019年では6・8%に減ってしまったとし、国民医療費における歯科医療費の割合が10%で維持できていれば、約1兆円も少ない現状であると指摘した。

―基本診療料の変遷を前に
2022年度改定で、歯科の初診料は261点から264点、再診料は53点から56点へと、各3点ずつアップした。医科の初診料と再診料は、歯科の初診料より24点、再診料は17点高く、会員からは「医科と同じ点数にすべき」との声があがっている。歯科は初診料を1点上げるのに8億円、再診料を1点上げるのに32億円、初診料・再診料を各1点ずつ上げるのに40億円が必要とし、2022年度改定で初診料・再診料を各3点ずつ上げたので、120億円の財源の確保が必要と説明した。その上で、歯科の財源の不足分は、P基処の廃止により充当されたと説明した。P基処の廃止により、110億7000万円の削減となるため、初診料・再診料の点数が上がったメリットを享受できていないと感じる歯科医師が多いと指摘した。
さらに、過去10年間における初診料・再診料の変遷において、点数は引き上げられているものの、消費税率の引き上げに伴う対応分が含まれているため、実質的な基本診療料の評価には繋がっていないことを指摘し、歯科において国民の健康寿命の延伸やQOLの改善だけでなく、歯科に係る諸問題を改善するために歯科医療費の総枠拡大の必要性を強く訴えた。

―金パラの代替材料
保団連が実施した金パラモニター調査のデータを引用し、金パラ告示価格と実勢価格が乖離している状況や、パラジウム、金の先物チャート図をもとに、世界情勢の影響を受けやすく、投資家の投機対象となる材料を保険の材料としていることを問題視。また、歯科用貴金属の価格変動が歯科医療機関に与える影響を緩和するため、年4回公定価格の改定を行うなど、対応が行われたが、金パラ告示価格と実勢価格が乖離している状況は改善されないとし、抜本的な対応を国に求めていくと強調した。
さらに、金パラによる歯冠修復の問題点として、審美障害や金属アレルギーが挙げられるが、接着の技術改善により、接着ブリッジやCAD/CAM冠などのメタルフリーの歯冠修復物の適用が拡大していると説明した。金パラの代替材料として、メタル系ではチタン、コバルトクロム合金、合成樹脂としては、コンポジットレジン(HJC、CRインレー)、ハイブリッドレジンブロック(CAD/CAM冠、CAD/CAMインレーなど)、PEEK、無機材料としては、セラミック(ジルコニア)をピックアップした。
ただし、フルジルコニアクラウンの保険収載は財源が大幅に増加しなければ厳しいという見解を示した。今後は、国としても脱メタル化を推し進めているため、メタルフリーの歯冠修復における保険適用の拡大がさらに進むとの見解を示した。
そのほか、各材料の臨床における特徴や問題点を実際の臨床データを用いながら解説。保険適用となったチタンの改善案としては、①CAD/CAM冠用のチタンブロックを用いて、CAD/CAM技術での製作を行う、②ブリッジへの適用拡大―の2点を挙げた。このうち、②のブリッジへの適用拡大については、保団連を通じて働きかけていくとした。
そして、CAD/CAM冠の適用の問題として、第二大臼歯のすべてが残存していなければ第一大臼歯には適用不可となっているが、その条件におけるデータやエビデンスがあまりにも少ないと指摘した。一律的にルールに縛られているため、患者に保険で適切な治療を行うことが難しい状況にあることから、歯科医師の裁量を認めさせる必要があると強調した。

―歯科医療費総枠拡大
坪田会長は改めて金パラの代替材料として、チタンやCAD/CAM冠の適用拡大の必要性を強調し、患者への適切な治療のためには、歯科医師の裁量権の拡大が不可欠とし、歯科業界を取り巻く諸問題の抜本的な解決策として、歯科医療費の総枠拡大の必要性を訴えた。
そして、歯科医療費の総枠拡大が果たせなければ、歯科医師が望む保険適用の拡大や、増点は望めないとし、国会議員や厚生労働省への働きかけを強めていくと強調した。
歯科医師が日々できることは、高点数を理由とする個別指導を恐れた萎縮診療に陥るのではなく、患者、国民の健康維持、健康寿命の延伸のため、エビデンスに基づいた正しい保険請求を行うことであり、それが歯科医療費の総枠拡大に繋がると訴え、結びとした。
講演後の質疑応答では、オーラルスキャナーを用いたCAD/CAMインレーの保険収載の可能性など、フロアーからの質問に、坪田会長が回答した。

【決議】東京歯科保険医協会 第50回定期総会(2022年6月19日)

 厚生労働省に行った歯科用金銀パラジウム合金の材料費が診療報酬の告示価格を上回る問題に関する改善要求から、今次診療報酬改定において、変動幅に係らず3ヶ月毎に告示価格を改定する仕組みが新設された。しかし、ウクライナ侵攻などから歯科用金銀パラジウム合金の市場流通価格は日々高騰を続けており、問題は一向に解決していない。医療機関の経営は更に厳しさを増しており、歯科医療に従事する人材を維持・確保できなくなる恐れがあるなど、医療提供体制の崩壊が懸念される。

 長期化する新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、医療用物資の高騰や患者の受診抑制が慢性化している。今次診療報酬改定で初診料および再診料が僅か各々3点しか引き上げられておらず、そもそもコロナ禍以前より院内感染防止対策に係る評価は十分とは言えず、国は速やかに院内感染防止対策の適切な評価を行うべきである。

 なお、感染拡大を受け、厚生労働省は今年度も高点数による個別指導を実施しないこととした。これは、協会が廃止を求めてきた成果の1つであり、必要性が乏しいことを厚生労働省は認めたと言える。萎縮診療にもつながる当該指導は、速やかに廃止すべきである。

 国は、一定の収入がある75歳以上の国民の負担割合を、今年10月から1割から2割に引き上げる。健康寿命の延伸や在宅医療の医療提供が喫緊の課題となる中で、その患者の負担割合を引き上げる動きには反対である。

 「経済財政運営と改革の基本方針2022」の原案において、国民皆歯科健診の検討が盛り込まれた。疾病の早期発見および健康寿命の延伸に繋がると期待され、実現に向けてできる限り協力したい。なお、実施の際には患者が負担を気にせず健診が受けられるよう、適切な制度設計が検討されるべきである。

 2月24日に開始されたロシア軍のウクライナ侵攻は、国連憲章および国際法を踏みにじる行為であり、いかなる理由であっても許されるものではない。国民の命と健康を守る団体、そして唯一の被爆国として、人の命を奪う戦争や核兵器使用で世界の諸国を威嚇するいかなる行動にも断固として反対する。

 また、政府が推し進めている今後増加する高齢者のために一人当たりの社会保障費を削減する動きや、患者への安心安全な医療の実現を妨げる動きに断固反対し、国民の生活と歯科医療のより一層の充実に向けた運動を国民とともに力を合わせ、推進するために、以下の要求を国民、政府及び歯科保険診療に携わる全ての方に表明する。

 

 

一.国は、現行の社会保障を後退させず、世界の国々が模範とする日本の社会保障制度を更に充実させること。

一.国は、これ以上の患者負担増計画は中止し、医療保険や介護保険の自己負担率を引き下げること、または公費助成を充実させることにより、国民負担を軽減すること。

一.国は、患者が負担を気にせずにかかりつけの医療機関で健診が受けられるよう、国民皆歯科健診の適切な制度設計を行うこと。

一.国は、院内感染防止対策の評価を更に引き上げるなど診療報酬の諸問題を改善すること。

一.国は、歯科用金銀パラジウム合金の材料費が診療報酬の告示価格を上回ることのないよう、さらなる制度改善を行うこと。

一.国は、高点数の保険医療機関を対象とした指導を廃止すること。

一.私たち歯科医師は、平和を妨げるすべての動きに反対する。

2022年6月19日

東京歯科保険医協会 第50回定期総会

東京歯科保険医新聞2022年(令和4年)6月1日

東京歯科保険医新聞2022年(令和4年)6月1日

こちらをクリック▶東京歯科保険医新聞2022年(令和4年)6月1日 第627号

1面】

     1.診療報酬/オンライン資格確認 原則義務化
     2.第50回定期総会のご案内
     3.定期総会議案書
     4.ニュースビュー
     5.「探針」

2面】

     6.会員寄稿“声”「今後不可欠な『訪問歯科』 現場の視点で見る改定」(葛飾区・池川裕子氏)
     7.会員寄稿“声”「歯科はなぜ疲弊しているのだろうか?」(文京区・太田順子氏)
     8.歯科訪問診療/初電・再電の摘要欄記載不要に
     9.遡及による新規個別指導 4月から対象変更

3面】

     10.経営・税務相談Q&A No.393 賞与・退職金~導入で気を付けることは?~
     11.IT相談室/インターネットに関するプロバイダの選び方/(クレセル株式会社)
     12.診療報酬改定 関連書籍/歯科疾患管理計画書のご案内
     13.法律相談、経営&税務相談

【4面】

     14.インタビュー「歯科医師、歯科技工士、歯科衛生士 三位一体で活動する場が必要」日本歯科審美学会・大槻昌幸さん

【5面】

     15.研究会・行事のご案内

【8面】

     17.Special Serial No.4 「新型コロナウイルス感染症は転換期を迎えている」山本光昭氏(社会保険診療報酬支払基金理事)
     18.教えて!会長!!Vol.59

【9面】

     19.症例研究/2022年度診療報酬改定 初期の根面う蝕のF局および咬調

【10面】

     20.連載/私の目に映る歯科医療界⑮(東洋経済新報社・大西富士男氏)他人事ではない!英国の歯科保険難民発生
     21.理事会だより
     22.協会活動日誌2022年5月

11面】

     23.金パラ原価割れ解消へ 国会議員に要請/金パラ問題 理解示す
     24.視点/若者の投票率向上へ 政治理解深める教育を
     25.夏季休診案内ポスター
     26.第2休業保障制度(団体所得補償保険)募集キャンペーンのご案内
     27.第33回全国保険医写真展ご案内

12面】

     28.7月金パラ引き上げ/1g3413円→3715円に
     29.第1回メディア懇談会「患者側の意識は?」金パラ価格変動について議論
     30.神田川界隈/今年度改定のご評価は?(西田紘一監事/八王子市)
     31.通信員便り No.122
     32.電子書籍「デンタルブック」ご案内
     33.会員優待サービスご案内

13・14面】

     34.第2休業保証制度(団体所得補償保険)募集キャンペーン

【教えて!会長!! Vol.59】日本歯科技工士会 2021歯科技工士実態調査報告書

― 日本歯科技工士会が歯科技工士実態調査報告書を公表したと聞きました。

坪田有史会長:本年4月に公益社団法人日本歯科技工士会(杉岡範明会長/以下、「日技」)は、「2021歯科技工士実態調査報告書」(以下、「2021報告書」)を公表しました。この調査は、日技が3年ごとに調査を実施しています。
既に会員の先生方は認識されていると思いますが、以前から本邦の歯科技工士周辺には様々な問題があり、「技工士問題」として取り上げられています。歯科技工士の長時間労働、低賃金、そして離職や歯科技工士養成校の廃校、定員割れなどによる就業歯科技工士数の減少など、将来、歯科医療全体に影響を及ぼす可能性が高いと言えます。
そのため、本会は歯科技工士問題検討委員会を発足し、歯科技工士側の実態を知る目的で、2020年9月に都内23区の歯科技工所(1126件)に対して、アンケート調査を行い、その内容を2021年1月に公表しました(※)。
そして、今回公表された「2021報告書」を含め、歯科医療の一翼を担っていただいている歯科技工士の方々の調査時点の実態調査により、歯科技工を委託する側の歯科医師がその内容を知り、理解する必要があると考えています。なお、「2021報告書」は日技のホームページから閲覧できます。2022年度診療報酬改定では、金パラの代替材料として、新たにCAD/CAMインレー、チタン前装冠が保険収載され、委託する技工物の種類が増えました。「2021報告書」は、これらの技術が保険収載される以前の調査ですが、多くの興味深い結果が示されています。本会としては、会員の先生方に、そして本稿を読んでいただいた全国の歯科関係者に、将来の歯科医療を考えるため、「2021報告書」の内容を確認していただきたいです。

※=参照:歯科技工所アンケート 報告書が完成しました!

― 歯科技工問題への行政側の対応は?

坪田:厚生労働省は、「歯科技工士の養成・確保に関する検討会」の報告書を2020年3月に公表し、その後、「歯科技工士の業務のあり方等に関する検討会」の第1回目を2021年9月に開催し、本年2月に中間報告を公表しています。その内容をみると、「歯科技工のリモートワーク」と「歯科技工士間の連携」が検討されています。これらが、現在の「歯科技工問題」や「2021報告書」での歯科技工士側からの改善要求に必ずしも合致しているとは私には思えません。歯科技工士側を守っているとは言えない医療保険制度の仕組みや、委託する側の歯科医師側の問題など、多くの課題があることを承知の上ですが、結局「歯科医療費の総枠拡大」がなければ、これらの現実的な諸問題の解決に繋がらないと考えます。これからも本会は、歯科医療の将来のため「歯科技工問題」を考え、行動します。ご理解のほど、よろしくお願い申し上げます。

             東京歯科保険医協会 会長 坪田 有史
(東京歯科保険医新聞2022年6月号8面掲載)

インターネットに関するプロバイダの選び方

WEBに係る歯科関連の法令やトラブル対応などについて、
歯科専門にサイト制作、運用、コンサルディングを手掛ける専門家が解説する本連載。
今回はインターネット回線について―。

 診療所にインターネット回線を引いている先生は多いと思いますが、「その回線のプロバイダがどこかご存知ですか?」という質問に答えられる方は少ないのではないでしょうか。開業時に業者に一括でお願いをして、それっきりというパターンがほとんどかもしれません。
 ネット回線が高速道路だとしたら、プロバイダは高速の料金所だと考えてみてください。高速道路というインフラを使用するために、世界中のコンピュータを繋ぐ環境整備や付属サービスを一括して行い、利用者から料金を徴収します。厳密には、ネット回線とプロバイダは別業者ですのでインターネットを開通させるには2つの業者と契約することになります。現在では契約を煩雑にしないために、ネット回線業者とプロバイダの請求書が一本化されていることもあります(NTTなど同列会社がどちらも行っている場合など)。
 大切なのは、回線業者とプロバイダは別々に選べるということです。建物によって回線工事が可能な業者が少ない可能性もありますが、プロバイダは個別に選ぶことができるのです。回線業者を変えずにプロバイダだけの変更も可能です。スマートフォンは同じものでも、ドコモ、ソフトバンク、auなどのキャリアを変えられるのと感覚的には近いのではないでしょうか。
 では、プロバイダをどのように選ぶか。ポイントは「回線の安定性」「料金」「速度」の3点です。メールアドレスなどの付加サービスが差別化になることもありますが、インターネットの快適性は以上3点で決まります。回線が不安定でよく切れたり、速度が遅かったりするとストレスが溜まりますし、同様の快適性であれば料金で選んでも良いと思います。
 プロバイダがどういうものかを理解していれば、選定の優先順位はおのずと決まってきます。今契約しているプロバイダをぜひ点検してみてください。

クレセル株式会社

(東京歯科保険医新聞2022年6月号3面掲載)

私の目に映る歯科医療界⑮ 他人事ではない!英国の歯科保険難民発生/日本の歯科診療でも公的保険本質論議を

他人事ではない!英国の歯科保険難民発生/日本の歯科診療でも公的保険本質論議を

今回は、まず、最近気になった海外記事を2つ紹介したい。一つ目は、歯科医療専門「デンタルトリビューン」のインターナショナル版の4月13日付オンライン記事である。

Ⅰ.米国で長期進行する歯科医師の個人診療所離れ

冒頭で、米国で歯科診療所を所有・経営する歯科医師の割合が、2005年の847%から21年には73%に下落していることが取り上げられている。16年間のトレンドは今後とも不可逆だと専門家はみている。ここには複数要因が関係している。

◆増える女性歯科医師の診療所経営DSO

まず、診療所経営比率が男性に比べ、元々低い女性歯科医師が増えている。現在、米国の全歯科医師のうち34・5%を占めている女性歯科医師の割合は、2040年には、ほぼ半分にまで増加する見通しだ。

人口の年齢層の中で、診療所経営比率の高いベビーブーマー世代が引退期を迎え、逆に若手世代の歯科医師が大量流入する。

元々、若手の診療所の所有・経営比率は低いうえ、上の世代に比べ単独の診療所経営志向が低いという、この世代の特徴もある。これが先述した傾向にさらに拍車をかけそうだ。

個人所有の歯科診療所に様々な経営サービスなどを提供するDSO(歯科医支援機関)が成長していることも、単独経営の歯科診療所比率を下げる要因になっている。学校を卒業したばかりの歯科医師でDSO参加計画がある人の割合は、15年の12%から20年には30%に上昇している。このことは、単独経営診療所比率をさらに落とすことにつながるはずだ。

Ⅱ.英国では歯科医師が公的保険から大量 Escape

二つ目は、英ガーディアン紙の51日付け記事。

「イングランドに〝歯科医師砂漠〟が出現」の見出し通り、内容も衝撃的だった。

「治療を受けるまで長時間待たされる」として、評判はいま一つのNHS(National Health Service/国民保健サービス)により、国民皆保険を享受できるはずの英国で、こと歯科医療サービスで、この制度破綻の予兆にもなりかねない由々しき事態が生じている様を記事は詳述している。

20年の951人に続き、21年には約2000人の歯科医師が公的保険医を辞めた。歯科医師1人で平均約2000人の患者を抱えているため、公的な歯科医療サービスを利用できず困っている国民が、昨年だけで400万人も生まれたと、記事はいう。

残った歯科医師も、公的保険の上限を使い切った後は患者に自費診療料金を請求する。患者も、公的保険の歯科医師にいくら電話しても無駄なので、結局、自費診療をする羽目になっている。

その結果出現したのが、周囲に公的保険の歯科医師が一人もいなくなってしまった「歯科医師砂漠」。そこでは、公的サービスを提供する人口10万人当たりの歯科医師数が、最小地域ではなんと32人になっているのである。

こうした地域の住民の中には、遠出して公的な歯科医療機関を受診する人まで出現している。問題の本質は、政府の歯科医療費支出の少なさ、抑制からくる公的医療保険の歯科医療サービスの低価格に対し、歯科医師から反乱が起きているということだろう。

国民皆保険を謳いながら、英国ではそこに風穴が開きつつある。もちろん記事中でも識者が指摘するように、最もしわ寄せを受けるのは子どもや体の不自由な人、介護施設で生活する人をはじめとする、いわゆる社会的弱者に他ならない。

Ⅲ.金パラ問題も公的保険の本質巡る観点で論議を

◆米国で注目され始めたDSOへの参加

女性医師の比率上昇や個人経営の小規模診療所への競争圧力の増加は、日本も米国と同じ。米国の個人立歯科診療所では、診療所長を務める歯科医師が経営強化・維持のため、その所有や経営から離れる動きが生まれ、米国特有の動きとしてDSOへの個人立歯科診療所の参加が加速している現状がある。

大方が個人立診療所経営の道を志向してきた日本の歯科医師は、米国と同様の問題に直面した場合、どう解決の道を見出そうとするのだろうか。ここは、歯科医療関連団体を含めて真剣に考えるべきだろう。

英国の例も対岸の火事とはしていられないはずだ。問題の根にある英国政府の医療財政抑制政策は、程度の差こそあれ日本も同じだ。歯科診療価格を抑制し過ぎれば、相対的に高い料金を請求できる自費診療へ歯科医師が逃げ出す形で、国民皆保険制度の実質空洞化を招きかねない。

空洞化が起きれば歯科診療への公的支出は減るかもしれない。だが、これが国民的に望ましいかは英国の例を見るまでもなく、大いに疑問だ。

高い自費診療を受ける経済的な余裕のある人でも歯科診療への出費はさらに増えるうえ、自費診療が受けられない社会的弱者との格差問題は、さらなる国民的分断を促すことになる。

既に東京歯科保険医協会は、歯科医療費の総枠拡大、歯科診療報酬引き上げ、75歳以上の窓口負担引き上げ撤回に加え、本年3月には金銀パラジウム合金の原価割れへの公的資金投入などによる解消を決議している。金パラへの公的資金投入については内部でも様々な議論があったようだが、問題提起の意義は大きい。

本年5月、政府が緊急避難的に金パラ合金の価格アップを決めたのは、地道な改善を求めてきた貴協会を含め、関係者には歓迎すべきことだが、そもそも異常な金パラ価格上昇を患者サイドに負わせることや、価格改定制度の根本的な欠陥が、歯科医師などへの逆ザヤ(損失)負担を強いていることについて、公的医療保険の本質やその維持の観点から適切か否かを国民的に議論する必要がある。

その際の論点の一つとして、政府は歯科医師が患者さんに対し、逆ザヤ分だけ不当に安い公的保険サービスを提供させている形になっているため、英国同様に、行き過ぎれば公的保険空洞化の発生リスクが内包されていることを忘れないでほしい。

 

東洋経済新報社 編集局 報道部 記者 大西富士男

「東京歯科保険医新聞」202261日号10面掲載

理事会声明 オンライン資格確認システムの導入“義務化”に反対する

 マイナンバーカードを利用したオンライン資格確認システムの運用を開始した医科・歯科医療機関及び保険薬局数は2022年5月22日時点で44,284機関、参加率は19.3%となっている。そのうち、全国の歯科医療機関数は9,263機関、同13.1%、東京の歯科医療機関数は903機関、同8.4%にとどまっている。協会には実際に導入している歯科医療機関からオンライン資格確認システムの利用者は月1~2人の利用者しかいないという声も寄せられている。

 導入した医療機関には毎月のランニングコストの負担や受付の患者対応などの負担がかかる。そのため、診療報酬改定で、電子的保健医療情報活用加算が新設された。

 しかし、政府は患者負担が増えることが報道されると、同加算の廃止を早々と打ち出した。加算が廃止されればオンライン資格確認システムのランニングコストなどは完全に医療機関側が負担することとなる。また、診療報酬の諮問機関である中医協を飛び越えて、政府が方針を打ち出すのはいかがなものだろうか。

 また、患者負担があるため、オンライン資格確認システムの利用者が少ないという声もあるが、そもそもマイナンバーカードの全国普及率は5月1日時点で44.0%であり、東京では47.8%である。健康保険証利用登録が済んでいるのは全人口でわずか7%未満に過ぎない。いったい、マイナンバーカードを健康保険証として持ち歩く国民がどの程度いるだろうか。

 現行システムでは、資格確認以外の薬剤情報や特定健診記録などの医療情報へアクセスするためにはマイナポータルでの登録が必要である。マイナポータルの利用規約にはすべてのトラブルについて「自己責任」での解決をすることが定められており、全ての責任を利用者に押し付ける内容となっている。医療機関にあるオンライン資格確認システムのカードリーダーはその場で健康保険証とマイナンバーカードの紐づけができるため、医療機関で紐づけを行えば、医療機関側がマイナポータルの利用規約への同意を促してしまうことになる。また、一旦紐づけが完了してしまえば取り消すことはできないため、取り消しを希望する患者さんとの間で新たなトラブルともなりかねない。

 さらに、昨今の半導体不足の影響で、オンライン資格確認システムに使用する機器なども不足しており、導入まで半年以上待たされているという医療機関も存在する。半導体の世界的需要の高まりやウクライナ情勢の影響で、物資供給が不安定な中で優先的に導入を進めていくべきものなのかは甚だ疑問である。

 オンライン資格確認システムの最大のメリットは健康保険の資格確認がその場でできることとされてきたが、2021年10月より支払い側で資格喪失後のレセプトの振替などの作業を行っており、返戻は減りつつあるため歯科での導入のメリットは少ない。導入を義務化すれば、必要のない新たな負担を強いられるなどのデメリットが大きくなる。

 コロナ禍で経済的に打撃を受けている医療機関に対し、マイナンバーカードの普及率の低さを解消するため、オンライン資格確認システムの導入を“義務化”し、負担を強いることが今求められていることなのか。マイナンバーカードの普及については、政府が正しく運用するのであれば、新型コロナウイルスに係る給付金などに活用をすることができることなどから、推進をしていく必要性もあると思われるが、現状ではさまざまな点で不安が払しょくできない。そもそも医療をマイナンバーカード普及の出しに使うことについて、国民に理解を得られているとは到底考えられない。

以上よりオンライン資格確認システムの導入“義務化”に反対する。

2022年6月9日

東京歯科保険医協会 第5回理事会

新型コロナウイルス感染症は 転換期を迎えている Special Serial No.4

「2類か」「5類か」ではなく、本質的な議論を

新型コロナウイルス感染症の感染症法上のカテゴリーを2類相当から5類相当へ変更すべきという議論があるが、そもそも、既に同感染症は2類相当という運用はなされていない。
本来2類であれば、感染症指定医療機関へ入院勧告するが、一般病院に入院させるし、ホテルや自宅療養すらしている。
現状の新型コロナ対応が2類相当の運用ではない以上、5類相当の運用にすべきというのは議論の本質ではなく、言葉だけが一人歩きしている状態であり、私が考える5つの論点を紹介したい。

① 隔離が必要か

今となっては、新型コロナで隔離する必要はない。実際、膨大な数の感染者がいることから、隔離は不可能な状態に陥っているが、家のなかで閉じこもっていなくても、外で唾液を飛び散らかせるような行為を行わなければ感染は広がらない。保健所の実施した多くの疫学調査の結果からも、会話時のマスクが徹底されている場合、感染の拡大は起きていないことが圧倒的である。

② 全数届出が必要か

 初期の頃は感染経路等の検証のためにも全数届出が必要であったが、新型コロナに関しては結核などと異なり感染拡大防止対策としての貢献度が低く、医療・公衆衛生の限られた人的・物的資源を有効に使うには、今となっては全数届出を止めるべきである。医療機関及び保健所における全数把握するための労力の多大さに比べ、得られる便益が低すぎる。また、全数届出であるが故に、万一クラスターが待合室や病棟等で起きれば、「バッシング」を受けることを恐れ、受け入れに消極的な医療機関すらあるはずである。一般的に、感染者数の多い感染症は全数届出でなく、定点医療機関からの届出により、地域別の流行状況の把握や変異等に関するモニタリングを行ない、情報提供している。この情報提供により、流行時にはワクチンの追加接種や会話時のマスク着用などの行動を地域住民に促すことが効果的であろう。

③ 保健所による直接の健康管理が妥当か

まず、最も厳しいエボラ出血熱等の1類感染症であっても、一義的に、感染症指定医療機関という医療機関の管理下において治療がなされる。そもそも、画像検査や血液検査、投薬が出来ない保健所が管理するより、医療機関が直接管理するほうが病状にあった迅速な処置や投薬が可能だ。特に、「自宅療養」という名目の「自宅放置」のもと、実際に死者が出たことは最悪の悲劇であり、保健所の健康管理下におかない方が良い。患者の希望により早期に適切な診断・治療が可能な、わが国の抜群のアクセスの通常の医療システムに戻さなければならない。わが国が優れているのは、CTも含む画像診断装置の普及をはじめとする地域医療の質の高さと、機能に応じた医療機関同士の役割分担と連携にあるからである。

④ ワクチン接種をどう考えるか

ワクチンには感染予防と重症化予防という、大きく分けて2つの効果がある。感染予防に期待が集まっているが、今回のコロナワクチンは重症化予防を目的に実施すべきものと私は考えている。新型コロナは封じ込めが不可能な病原体なので、「社会防衛」的に全員が接種することによる封じ込め効果は期待できない。そのためにも、個人の「接種しない」という判断は、得られる利益と副反応のバランスを勘案して許容されるべきで、接種しない者に対する差別は決してあってはならない。なお、高齢者をはじめ重症化リスクが高い人は重症化を防ぎ自らの命を守るためにワクチンを「個人防衛」として接種すべきで、当面の間、追加接種を継続的に実施していくべきであろう。

⑤ 医療費の公費負担をどう考えるか

5類相当になると通常の保険診療で3割自己負担となるから反対という考えもあるようだが、これは本質的な問題ではない。難病の医療費助成制度と同様に、例えば、まだ十分には解明されていない「後遺症」のデータを収集し治療研究を推進するという理屈であれば、当面の間、引き続き公費で助成していくこともありえるからである。
次回は、わが国における今後のあるべき戦略・戦術について、解説する。

山本光昭(やまもと・みつあき)
前 東京都中央区保健所長 / 現 社会保険診療報酬支払基金 理事

1984年3月、神戸大学医学部医学科卒業後、厚生省に入省。横浜市衛生局での公衆衛生実務を経て、広島県福祉保健部健康対策課長、厚生省健康政策局指導課課長補佐、同省国立病院部運営企画課課長補佐、茨城県保健福祉部長、厚生労働省東京検疫所長、内閣府参事官(ライフサイエンス担当)、独立行政法人国立病院機構本部医療部長、独立行政法人福祉医療機構審議役、厚生労働省近畿厚生局長などを歴任し、2015年7月、厚生労働省退職。兵庫県健康福祉部医監、同県健康福祉部長、東京都中央区保健所長を経て、2021年4月より現職。

東京歯科保険医協会 第50回定期総会 開催のご案内

東京歯科保険医協会第50回定期総会を下記の通り開催致します。

日時

2022年6月19()午後2時30分~6時00

定期総会 午後2時30分~4時15

記念講演 午後4時30分~6時00

「臨床の視点で金パラの代替について考える」

講師 坪田有史(東京歯科保険医協会会長)

 【抄録】

金銀パラジウム合金(以下、「金パラ」)の価格は、コロナショックによる素材価格の上昇、そして2022年に入ってウクライナショックにより、さらに上昇した。

2022年度診療報酬改定で歯科用貴金属価格の随時改定の仕組みが変更され、さらに急遽5月に改定が行われたが、素材価格が様々な因子によって上下動するため、根本的な解決とはならない。これらの問題から厚生労働省は、金パラの代替材料の保険適用を積極的に進めてきた。

 2014年度診療報酬改定では、小臼歯限定でCAD/CAM冠が保険収載され、その6年後の2020年には条件付きで上下顎第一大臼歯、そして前歯部までCAD/CAM冠に適用拡大され、またチタン冠が保険収載された。そして今回の2022年度改定では、CAD/CAMインレーが保険収載された。これらの「脱金パラ」の流れは、今後もさらに進むであろう。

今回、臨床例を交えて金パラの代替について考察する。

会場

中野サンプラザ 13階コスモルーム (住所:東京都中野区中野4-1-1

交通 中野駅北口より徒歩5分

 

総会議事

第1号議案  2021年度活動報告の承認を求める件

第2号議案 2021年度決算報告の承認を求める件付・会計監査報告

第3号議案 役員の件(顧問の承認)  

第4号議案 2022年度活動計画案の件

第5号議案 2022年度予算案の件

第6号議案 選挙管理委員承認の件

第7号議案 決議採択の件    

 

新型コロナウイルス感染症の感染防止に関わるお知らせ

以下に該当する方のご参加はご遠慮ください。

37.5℃以上の発熱がある方。

・体調のすぐれない方(味覚、嗅覚などの異常を含む)。

・新型コロナウイルス感染症「陽性」と診断されている方、または同感染症「陽性者」と診断された方と濃厚接触された方。

※昨年同様、感染症防止対策を十分に行います。

※ご出席の際は、マスク着用などご自身および周囲への配慮をお願い致します。

※定期総会後の懇親会は、新型コロナウイルス感染症の影響により昨年同様に開催を中止とさせていただきます。

※今後の感染拡大状況によって、定期総会の開催・運営に関して大きな変化が生じる場合は、当会ホームページもしくはデンタルブック等でお知らせ致します。

【この夏ご利用ください】夏季休診案内のご案内(2024年版)

 

▲卓上型 夏季休診案内

診療所などで使える夏季休診案内をご用意しました。壁に貼って使えるポスタータイプと受付に置いて卓上タイプがございます。

以下のPDFをダウンロード、プリントアウトの上、診療所の夏季休診にあわせてご利用ください。

また、郵送をご希望の方(会員限定)は、フォームからお申し込みください。

 

 夏季休診案内ポスター① →ダウンロードはここをクリック

 

夏季休診案内ポスター② →ダウンロードはここをクリック

 

夏季休診案内(卓上型) →ダウンロードはここをクリック