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年末年始休診案内ポスターのご案内
年末年始休診案内ポスターのご案内
年末年始の休診日にご使用いただける『休診日案内』をご用意いたしました。
ご入用の方は、お好みのデザインをダウンロードのうえご使用ください。
郵送をご希望の方は、お電話でお申し込みください(03-3205-2999)。
以下よりPDFをプリントアウトもできます。
卓上型は組み立ててお使いください。 ※※※※※※※※※※※※※1
▶こちらをクリック 年末年始休診日のお知らせポスター 達磨と富士(A4サイズ)
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▶こちらをクリック 年末年始休診案内 卓上型
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東京歯科保険医新聞2024年(令和6年)11月1日
東京歯科保険医新聞2024年(令和6年)11月1日
こちらをクリック▶「東京歯科保険医新聞」2024年(令和6年)11月1日
【新聞11月号】
【1面】
1.衆院選2024 躍進の野党/保険証〝併用・残すべき〟
2.問い合わせ増える「薬剤長期収載品の選定療養」
3.「残そうよ健康保険証」改めて署名にご協力を 〝保険証発行終了は中止を〟国会議員から指摘相次ぐ
4.探針
5.ニュースビュー
【2面】
6.薬剤長期収載品の選定療養/処方箋の記載方法は?
7.生活保護の指導計画 2024年度は8件を実施予定/協会の開示請求により判明
8.保団連が第39回医療研究フォーラムを開催 協会会員が「介護施設の口腔衛生管理」で発表/山本鐵雄副会長と橋本健一理事も演題発表
9.全国調査・2024年度診療報酬改定 「歯科会員アンケート」ご協力のお願い
10.10月号訂正
【3面】
11.教えて!会長!! Vol.88「マイナ保険証トラブル調査結果について」
12.「会員の意識と実態調査」ご協力に感謝!!
13.会員寄稿「声」/随筆「DXの光と影」②完 小林顕(板橋区)
【4面】
14.連載「マイナ保険証の〝失態〟を追う~このまま見過すことはできません~」/第8回誰も検証せずに突き進む「保険証廃止」(荻原博子さん/経済ジャーナリスト)
15.オン資猶予でも資格確認限定型を導入可/マイナ保険証機能のスマホ搭載、見切り発車感否めず
16.共済部だより
【5面】
17.解説/健康保険証の発行終了後はどうなるのか?②/トラブルの類型と実際の対応方法
18.オン資猶予届出“不受理” 保険医辞退検討も/まずは協会にご相談を
【6面】
19.研究会・行事ご案内
【7面】
20.経営・税務相談Q&A No.422/最近目立つ相談内容より 求人トラブル、定額減税、賃上げ促進税制
21.理事会だより
22.10月会員無料相談のご案内
23.10月協会活動日誌
【8面】
24.退き際の思考 歯科医師をやめる(松井裕子さん・後編)「私たちの年代が役に立つとしたら…今なお歯科医療に熱意」
25.神田川界隈「自分を考察する随想録」(理事・相馬 基逸/品川区)
26.「今年の漢字 2024」「2025年新年号巻頭写真」募集中
【連載】退き際の思考/私たちの年代が役に立つとしたら…今なお歯科医療に熱意(松井裕子さん【後編】)
私たちの年代が役に立つとしたら…今なお歯科医療に熱意(松井裕子さん【後編】)
私たちの年代が役に立つとしたら…今なお歯科医療に熱意
松井裕子さん―後編
前編はこちら

松井裕子(まつい・ゆうこ)さん/1951年東京都生まれ。1976年東京医科歯科大学歯学部卒業。補綴学教室で1年間の副手・医員を経て、1981年同大大学院修了後同医局に助手として勤務。1990年4月より宮内庁病院へ出向。2017年3月、定年。非常勤歯科医師として同病院勤務。2024年、退職。
歯科医師としての“引退”に着目した本企画。すでに歯科医療の第一線を退いた先生らにお話を伺い、引退を決意した理由や医院承継、閉院の苦労などを深堀りする。
今回は、宮内庁病院で勤務医として34年にわたる歯科医師キャリアを過ごした松井裕子先生(73歳)の後編。今後も何らかの形で歯科医療に携わり続けたいという松井先生にお話を伺った。(前編から読む)
―退職してもなお歯科医師を続けたいとのことですが、勤務形態や時間など具体的にどのような形をイメージしていますか。
模索中ですが、退職直前は週1回勤務のリズムできたので週に1~2回、あるいはもっとフレキシブルな働き方ができればと思います。先進技術は専門の先生に任せ、診断と治療の方針についての相談に応じ、歯周組織や義歯のメインテナンスを中心に関われたらと考えています。体力次第の部分もあるし、歯科医師としての収入はあまり期待できないでしょうが、これまで50年弱培ってきた歯科治療のスキルを無理のない自分のペースで還元していければと思います。
―歯科医療への熱意を持ち続けているのですね。
そうですね。今や歯科で扱う範囲も拡がり、それぞれの歯科医師が何らかの特徴を打ち出さないといけない時代になってきているかもしれません。一方で、医科のように専門分化が進んだ末に総合診療の必要性が浮上してきている時代変化もあります。もし私たちの年代が役に立つとしたら、総合的な対応ができる点にあると考えています。それをどのような形で実現できるか、同じような意志を持っている方たちと協力して明確にしていければと思うこともあります。
―「今なおスキルを活かしたい」、その原動力はどこから。
学生時代から歯科医療の世界で生きてきて、折角今まで培ってきたスキルを無駄にせず、人のために役立てたいと感じています。以前、中学生時代の友人に頼まれて口腔状態を診た時の経験がとても印象に残っています。咀嚼も十分にできないほど悪い状態だったので、すぐに治療を開始すると、口腔状態がみるみるうちに改善し、顔色も良くなり若々しく元気になりました。人の役に立っていることが実感でき、そうした姿を見られるのは歯科医師冥利に尽きます。
診療続ける同世代の先生へ
―プライベートはどのような過ごし方を?
大学時代から硬式テニスを続けていて、年に一度しかラケットを握れない期間もかなりありましたが、今は週に1度、夕方2時間ほどプレーしています。定年近くなってから新しいことに挑戦したいと思ってゴルフを習い始め、月に1~2回、東京近県のコースを仲間たちとラウンドしています。外出しない日は、幅広い分野の本を読んだり、手抜きをしてきた家の修繕などもしたりしながら過ごしていますね。
―ところで、松井先生が協会に入会したきっかけは。
病院勤務になってからは、常勤の歯科医師が1名だけだったので、歯科の情報が入ってきませんでした。そこで開業している同級生に相談すると、「保険医協会が良いから入りなさい。セミナーをしっかりやってくれるし、役立つ情報も届けてくれるから」と勧められました。入会後は学術研究会などに参加しましたが、内容が勉強になるし面白く、受講するのが楽しみでした。接遇講習会も良い内容だと思ったので受講して、電話対応や患者さんへの話し方などを学び、病院に戻って看護師たちにアドバイスすることもできました。また、機関紙の紙面を切り抜いて事務方に渡して情報共有していましたね。保険医年金など、歯科医療以外の面でもとても助けられました。
―最後に、同年代で診療に従事し続けている先生方にメッセージを。
頭が下がるばかりです。同年代の友人たちは閉院を検討したり、引退してしまったりするケースが増えています。自ら閉院を決めるのは非常に決断力を必要としますが、診療を続ける判断もまた重いものです。材料や治療法も進化を続けている中、たゆまぬ精進が必要とされる歯科医師という気の張る仕事を続けておられることに敬意を払います。この年代になると思いもかけない不調が出てくることもあるかと思います。体調管理をしっかりとしながら歯科医療に携わっていただけることを願っています。
―本日はありがとうございました。(完)
#インタビュー #連載 #退き際の思考
「残そうよ健康保険証」改めて署名にご協力を/ ❝保険証発行終了は中止を❞ 国会議員から指摘相次ぐ
「残そうよ健康保険証」改めて署名にご協力を/ ❝保険証発行終了は中止を❞ 国会議員から指摘相次ぐ
医療、介護、福祉予算の増額を求める「いのちまもる総行動」が9月26日、千代田区日比谷公園の日比谷野外音楽堂で開催された。参加者は約2,400名を数えたほか、日本歯科医師会と日本医師会からも応援のメッセージが寄せられた。
集会には、立憲民主党の杉尾秀哉参議院議員、日本共産党の小池晃参議院議員、れいわ新選組の天畠大輔参議院議員らも参加。各議員とも、12月2日(月)の健康保険証の発行終了は中止すべきと発言した。
◆署名は来年1月末までに通常国会提出へ
10月1日から開かれた臨時国会の会期はわずか9日間しかなく、健康保険証の問題も含め、論戦は深まらなかった。その情勢から、協会は10月に関係各機関に要請書を送付するとともに、10月上旬に「月刊保団連」に同封し、会員に送付した「現行の健康保険証を残してください」請願署名の受付期間を、2025年1月まで延長することを決めた。
現場の声を行政に届けることこそ、協会の役割である。来年1月の通常国会に向け、会員の先生方には、引き続き署名にご協力をいただき、同1月31日までに協会へ送付いただくようお願いしたい。
なお、署名用紙や返信用封筒の追加、回収箱、PRポスターなどの注文は協会運動本部(電話03-3205-2999)へご連絡いただきたい。
オン資猶予でも資格確認限定型を導入可/マイナ保険証機能のスマホ搭載、見切り発車感否めず
オン資猶予でも資格確認限定型を導入可/マイナ保険証機能のスマホ搭載、見切り発車感否めず
9月30日の社会保障審議会医療保険部会(部長:田辺国昭/東京大学大学院法学政治学研究科教授)で、オンライン資格確認システム(以下、オン資)の猶予届出書を提出した医療機関への対応およびマイナ保険証のスマホ搭載が提起された。
◆オン資猶予中でも限定型が導入可能に
電子レセプト請求医療機関では、オン資導入が義務化されているが、光回線未整備などの事情がある場合は猶予されている。今回は、紙レセプト請求医療機関が導入できる資格確認限定型のオン資の対象を拡大し、①光回線が未整備(類型2)、②改築工事中や臨時施設の医療機関(類型4)、③特に困難な事情がある(類型6)―との猶予届出書を提出した医療機関も導入を可能にする(図参照)。11月より医療機関等向け総合ポータルサイトで利用申請を開始し、補助金(4.1万円を上限に3/4補助)も来年1月15日締切で受け付けている。
注目のマイナ保険証のスマホへの搭載については、来年春に、スマホを読み取る「汎用カードリーダー」を顔認証付きカードリーダーに接続して運用する実証事業を行う。実証後に各医療機関で導入する。
ただ、導入に関する補助金は提起されなかった。検討会メンバーの大杉和司氏(日本歯科医師会常任理事)は、度重なるオン資の改修費用などが発生しており、汎用カードリーダーは無償配布すべきと意見を述べた。オン資には、資格確認限定型および訪問診療時を対象とする居宅同意取得型などもあるが、それらには一切触れていない。スマホ搭載の対象が拡大し、その都度改修費用がかかれば現場がついていけなくなる。少なくとも厚生労働省は、適切なシステム開発計画と十分な支援を提案すべきである。
解説/健康保険証の発行終了後はどうなるのか?②/トラブルの類型と実際の対応方法
解説/健康保険証の発行終了後はどうなるのか?②/トラブルの類型と実際の対応方法
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健康保険証の発行終了まで、約1カ月となった。本号では、10月号から引き続き協会に寄せられるマイナ保険証やオンライン資格確認システム(以下、オン資)のトラブルへの相談内容を踏まえ、その類型と対応方法を解説する(図1)。
本解説は10月中旬時点の資料を基にしており、今後変更となる可能性がある。その際は、機関紙や協会ホームページ、デンタルブック・メールニュースなどでお知らせする。
*「解説①」は「協会ニュース」本年10月7日投稿分をご覧ください。
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◆マイナ保険証が読取不可の場合
全国保険医団体連合会(以下、保団連)が公表した「2024年5月以降のマイナ保険証トラブル調査」によると、70.1%の医療機関が何らかのトラブルを経験している(教えて!会長!!No.88参照)。マイナ保険証の読取時に起きるトラブルは図1・トラブル①である。相談の中には、「職員のマイナ保険証は読み取れるのに、患者のマイナ保険証は読み取れない」というものがある。
この場合は、マイナ保険証およびスマホなどでマイナポータルの資格情報の画面を確認する、または健康保険証で資格確認を行う。なお、通知で明記されていないが、マイナ保険証および「資格情報のお知らせ」の確認でも対応可能と思われる。
また、図1・トラブル②のように、それらで解決できずカードリーダーの故障、または通信障害が原因の場合は、オンライン資格確認等コールセンター(☎ 0800―080―4583/営業時間:月〜金曜8時〜18時、土曜8時〜16時)に電話して「システム障害時モード」を使用可能にしてもらい、氏名等を用いて確認を行う。
ただ、「コールセンターは繋がりにくい時もあり、モードの使用開始まで時間もかかるため、利用しにくい」との声が協会に寄せられている。
◆顔や暗証番号で認証不可の場合
図1・トラブル③のように、「顔認証できず、暗証番号もわからないため、認証ができない」という場合もある。その際は、医療機関側で「目視確認モード」を立ち上げ、マイナンバーカードの写真を用いて本人確認を行う。
ただ、患者操作が主である顔認証や暗証番号認証に比べて、業務負担が大きい。
また、マイナンバーカードは、通常のカードおよび暗証番号認証が使用できない顔認証マイナンバーカードに加え、歯科で利用されることに疑問は残るが、今年12月2日からは1歳未満に発行される顔写真のないカードの3種類になる。新しいカードは顔写真がないため、顔認証および目視確認モードが使えない点に注意が必要である。
◆「無効」等が表示される場合
図1・トラブル④のように、「無効」等が表示される場合がある。その際はマイナポータルでも資格情報を確認できないため、健康保険証で確認する。
なお、過去の受診歴等から資格情報に変更がないことを口頭で確認できた場合、その保険者等番号および被保険者等記号・番号でレセプトを請求できる。また、有効な健康保険証はあるが「資格(無効)」と表示された場合は、表示された過去の資格情報で請求できる(正しい保険者へ自動振替)。いずれの場合もレセプトの摘要欄に「旧資格情報」である旨を記載する。
しかし、図1・トラブル⑤のように「患者が健康保険証を破棄した」等の理由で対応できない場合もある。その際は、システム障害時モードで対応できない場合も同様だが、「被保険者資格申立書」を患者に記載してもらい、該当する1〜3割のいずれかの一部負担金を受領する。ただ、「記載内容は正しいのか、遅滞なく診療報酬が支払われるかという不安がぬぐえない」と消極的な医療機関が少なくない。
なお、5年ごとに更新が必要なマイナ保険証の電子証明書について、更新を忘れても有効期限終了後3カ月間は利用できる。3カ月を経過すると利用できなくなり、「資格確認書」が発行される。
また、資格が有効でも「有効期間終了」欄が空欄で表示される場合があるが、これはオン資の仕様であり、有効期間終了日を確認する必要はない。
◆「●」が表示された場合
図1・トラブル⑥の「●が出る」は、氏名・住所等に旧字等があると起きる。そのままでもレセプトは請求できるが、カルテや処方箋等の作成時は「●」のままでは作成できず、確認が必要となる。その際、患者の同意を得て、マイナンバーカード表面の氏名等の確認、確認を目的とした一時的なカードの受取ならびに表面のコピーおよびコピーの保管は可能である。ただ、カードの受取は紛失等の恐れがあるため、「●」を問診票等から確認する場合もあるようである。
◆「マイナ保険証あり」の患者が資格確認書を持つには
マイナ保険証ありの患者が登録解除した場合、または患者が保険者に要配慮者等に当たるとの申請をした場合などは、資格確認書を入手できる(図2)。
ただ、厚生労働省は要配慮者について、一律の基準を設けておらず、保険者により判断が異なる可能性がある。確実に入手したい場合は、マイナ保険証の登録解除をした方がよいと考えられる。
◆健康保険証を残した方が混乱は少ない
オン資は、健康保険証と比べてトラブルおよび対応方法が複雑である。トラブルが起きていない医療機関もあるが、利用率の低さ(9月時で13.87%)に起因している側面はある。前号で解説した通り、マイナ保険証の有無で「資格情報のお知らせ」や「資格確認書」が送られてくるが、それなら一律に健康保険証を送った方が現場の混乱は少ないのではないか。
協会は、今後も健康保険証の存続を求める要求を行っていく。
【教えて! 会長!! Vol.88】 マイナ保険証トラブル調査結果について
【教えて! 会長!! Vol.88】 マイナ保険証トラブル調査結果について
Q 12月2日まであと1カ月ですね。
A 周知の通り、12月2日から健康保険証の新規発行が終了します。協会は医療DXに反対していませんが、拙速に進められ1カ月弱に迫ったマイナ保険証への完全移行へのスタートは、患者・国民と医療機関にとって「時期尚早」と考え、当会は現行の保険証との併用を訴えています。
他方で、12月2日からのご自身の医院での対策などを考える上で、全国や東京都の歯科医療機関の現状を知っておくことが必要です。そこで、当会会員を含めた全国保険医団体連合会(以下、保団連)の調査結果をピックアップして紹介します。
Q どんな調査でしょうか。
A 政府は今年4月に「マイナ保険証の登録データを住民基本台帳データと照合し、必要な確認が完了したことから、新規加入者のデータのチェックシステムを5月7日から稼働する」と説明しました。そして、5月から7月にかけてマイナ保険証の利用促進を進めました。そこで、本当に患者・国民や医療機関が安心してマイナ保険証を利用できる状況になったのか、その現状を知るため、当会も参加して、保団連が全国規模で5月以降のマイナ保険証トラブル調査を実施しました。調査は8月から9月にかけて行い、39都道府県(43保険医協会・医会)の1万2,735医療機関から回答を得ました(歯科診療所2,574、医科診療所8,529、病院754、無回答・その他878)。そのうち、当会の回答数は208でした。
「今年5月以降のマイナ保険証、オンライン資格確認のトラブル・不具合」について示します。「トラブル・不具合があった」との回答は、当会67.3%、全体で70.1%と大きな差はなく約7割でした。なお、前回の調査(2023年10月1日以降のマイナ保険証トラブル調査では59.8%にあたる5,188医療機関)よりも約10%増加していました。この結果、マイナ保険証の利用に多くの問題があり、トラブルが増加していることが分かりました。表に「トラブルの類型/『あった』と回答した医療機関」を示します。当会、全国ともに、トラブル内容の上位3位は、「●が出る」「カードリーダーの接続不良・認証エラー」「資格確認が無効」でした。最も多い「●が出る」とは、「髙(はしごだか)」や「濱」など、氏名に常用漢字以外が含まれる場合に起こるエラーです。再診の方なら対応できますが、初診の方で「●」が出た場合、氏名が不明で別の対応が必要となります。
先生方の医院ではいかがでしょうか。今までまったく問題が生じていない医院もあるでしょう。しかし、東京都、さらに全国の医療機関で生じている問題を把握しておくことで、現在、さらに12月2日以降のマイナ保険証に対する心構えができると思います。
Q 「保険証が12月2日に廃止されること」についての設問の結果は。
A 図に結果を示します。右側が当会のみ、左側が全体の結果です。保険証の廃止を「延期すべき」「保険証は残すべき」、「延期」と「残す」の両方にチェックした回答を合わせると、当会で88.0%、全国で88.1%と、ほぼ同数であり、9割近くが12月2日からの健康保険証の新規発行が終了することに否定的といえます。
本稿の執筆時には、まだ衆議院選挙の結果は出ていませんが、選挙前に得た当会独自の調査「衆院選2024政党アンケート」の中で、健康保険証存続についての各党の意見に明確な違いがありました。12月2日は過ぎてしまいますが、年明けに召集される通常国会で、マイナ保険証関連の議論が活発に行われることに期待します。そのために当会では現在、請願署名「現行の健康保険証を残してください」を行っています。署名は1月の通常国会に提出しますので、ご協力のほどよろしくお願い申し上げます。
東京歯科保険医協会
会長 坪田 有史
(「東京歯科保険医新聞」2024年10月号掲載)
生活保護の指導計画 2024年度は8件を実施予定/協会の開示請求により判明
生活保護の指導計画 2024年度は8件を実施予定/協会の開示請求により判明
協会が東京都に行った開示請求により、生活保護法による個別指導は、今年度は8件実施する計画であることが分かった。4月、5月、9月、2025年3月を除き、毎月1件ずつ実施される予定である。
対象となる医療機関には、指導日の1カ月前に指導通知、1週間前に患者通知(10名程度が指定される)が郵送される。また、健康保険法の個別指導と同様に、カルテ、歯科技工指示書や納品伝票、X線フィルムなどに加え、対象患者の医療要否意見書および医療券が持参物とされている。
◆昨年度個別指導は3件
昨年度の生活保護法による個別指導は3件実施され、歯周治療や歯内療法などの処置、歯科訪問診療料、歯冠修復および欠損補綴の算定などについて指導が行われた。
算定要件を満たさない場合や請求誤りがあった場合は、自主返還を求められる。また、昨年度は診療報酬の過誤調整額として、79万円を超える返還金があったことも分かった。
健康保険法の個別指導と同様に生活保護法の指導でも、保険診療のルールやカルテへの記載は重要となる。
◆11月の新規開業医講習会にご参加を
請求が不安な先生や再度確認したい先生は、11月10日開催の新規開業医講習会に、ぜひ参加されたい。
坪田会長ら 当選議員を表敬訪問 歯科医療への理解求める/健康保険証 発行終了「できる状況にない」
坪田会長ら 当選議員を表敬訪問 歯科医療への理解求める/健康保険証 発行終了「できる状況にない」
11月13日に坪田有史会長、早坂美都副会長が、10月27日に投開票が行われた衆議院議員選挙で当選した東京選出の議員10名と歯科医師の議員2名を表敬訪問した。面会に応じた各議員は「ご期待にそえるようまい進したい」と抱負を語った(左の写真は、今回当選を果たした国民民主党の円より子衆議院議員への要請時のひとコマ)。
◆健康保険証の発行終了問題国会での議論を求める
坪田会長は、まず祝辞を贈るとともに、歯科の現状を説明。保団連(全国保険医団体連合会)の調査において、70.1%がオンライン資格確認のトラブルがあったと回答した結果を紹介した。協会には、「『資格情報のお知らせ』『目視確認モード』とは何か」などの相談が多く寄せられていることや、マイナ保険証が使えない、または顔認証や暗証番号認証ができないトラブルへの対応方法が周知されていない問題も指摘。そのうえで、「12月2日に健康保険証の発行を終了できる状況ではない。立憲民主党は発行終了を延期する法案を衆議院に提出したが、国会で十分議論されることを期待する」と訴えた。
◆歯科問題で交流深める
歯科医師の佐原若子議員(比例・東北)、長谷川嘉一議員(比例・北関東)とは、歯科医療の問題で意見交換。直前まで院長として診療していた佐原議員は「口腔は全身の健康と関連があるが、歯科の点数は低い。医療機器の導入や文書を作成しないと算定できない縛りも多い」と実体験を交え、歯科の低診療報酬の問題などを指摘した。
長谷川議員は「以前は海外技工物の問題が取り沙汰された。歯科技工の現状が気になる」と語った。坪田会長は、協会が歯科技工所アンケートを実施し、保団連の呼びかけで全国調査も行われたことを踏まえ、「厚生労働省は補綴物の点数を引き上げるなどしたが、歯科技工所の状況は依然として厳しい」と伝え、議員も認識を深めた。
◆健康保険証の存続署名1月末までにご返送を
11月28日から12月21日まで臨時国会があり、来年1月からは通常国会が開催される。「現行の健康保険証を残してください」請願署名は各国会で提出予定であり、来年1月31日までに協会へ送付いただきたい。
また、歯科医療の充実を求める署名も今後実施を予定している。協会は引き続き現場の声を国会議員や行政に伝えていく。
保団連が第39回医療研究フォーラムを開催/協会会員が 「介護施設の口腔衛生管理」で発表/山本鐵雄副会長と橋本健一理事も演題発表
保団連が第39回医療研究フォーラムを開催/協会会員が「介護施設の口腔衛生管理」で発表/山本鐵雄副会長と橋本健一理事も演題発表
9月22・23日、愛媛県松山市内のANAクラウンプラザホテル松山で、第39回保団連医療研究フォーラムが開催され、全国から歯科医師・医師・スタッフ・一般市民ら300名超が参加した。
22日は、オープニング企画として、俳人の神野紗希氏による「病と生きる 子規と俳句の『生きる力』」と題した講演、募集俳句入選作の発表、さらに保団連の鵜飼伸理事から、全国共同調査「オンライン資格確認導入、オンライン請求義務化に伴う医療機関への影響調査」の結果報告、朝日新聞編集委員の原真人氏による記念講演「日本の衰退と未来」などが行われた。
翌23日の分科会では、当協会から3名がそれぞれ演題を発表した。第1分科会在宅医療・介護では、会員の尾崎哲也氏(写真左)が「介護職員とともにすすめる介護施設の口腔衛生管理強化」をテーマに、第3分科会歯科診療の研究と工夫では副会長の山本鐵雄氏(写真中央)が「歯科技工所アンケートの結果と取り組み」を、理事の橋本健一氏(写真右)が「学校歯科治療調査の結果と取組み」を、それぞれ発表した。
問い合わせ増える「薬剤長期収載品の選定療養」/方箋の記載方法は?
問い合わせ増える「薬剤長期収載品の選定療養」/方箋の記載方法は?
10月1日より、先発医薬品(後発品のある長期収載品)を患者の希望で処方した場合に、先発医薬品と後発医薬品の価格差の4分の1相当の料金を「特別の料金(選定療養)」として患者から別途受領する制度(下記図参照)が導入された。 協会には問い合わせが多数寄せられているため、前号の概要に続き、処方箋様式の記載方法と下記の疑義解釈を解説する。
協会としては、製薬会社による「限定出荷」「供給停止」などの出荷制限により、医薬品不足が続いている中、先発医薬品を患者が希望した場合に患者から特別の料金を徴収することは、混合診療解禁に等しく、問題のある取り扱いであると考えている。
1.選定療養の対象となる医薬品
対象医薬品リストは、厚生労働省のホームページ「後発医薬品のある先発医薬品(長期収載品)の選定療養について」から検索できる。長期収載品のすべてが選定療養となるわけではなく、医療上の必要がある場合や後発医薬品の在庫状況等を踏まえ後発医薬品を提供することが難しい場合は、選定療養の対象にはならない。
【対象となる歯科の医薬品の例】
ボルタレン錠25㎎、ロキソニン細粒10%、ロルカム錠2㎎、ロルカム錠4㎎、ジスロマック錠250㎎、クラビット錠500㎎など。
2.特別の料金と患者負担
先発医薬品と後発医薬品の価格差の4分の1相当の料金を「特別の料金(選定療養)」として、患者から別途受領する。「特別の料金」は課税対象であるため、消費税相当分を加えて受領する。長期収載品を選定療養の対象とする場合の後発医薬品の価格との比較について、厚労省はリストを作成している。リストに示されている額はあくまでイメージであり、実際に窓口で負担する額とは異なる。
3.処方箋の記載方法
(1)選定療養の対象とならない場合(院内処方・院外処方)
医療上の必要があると認められる場合、および後発医薬品の在庫状況等を踏まえ、後発医薬品を提供することが困難で選定療養の対象とならない場合は、下記「(別表1)」のレセプト表示文言より理由に該当するコードを選ぶことで、レセプトの摘要欄に表示させる。
(2)処方箋の記載方法
①選定療養の対象とならない場合
処方箋の「変更不可(医療上必要)」欄に「✓」または「×」と記載し、「保険医署名」欄に署名または記名、押印する(記載例参照)。
記載がない場合、薬局での患者聴き取りにより患者が「患者希望」と回答すると、選定療養の対象となる可能性がある。
②選定療養の対象となる場合
処方箋の「患者希望」欄に医薬品ごとに「✓」または「×」と記載する。
4.長期収載品の処方等の取扱いに関する疑義解釈(一部抜粋・一部改編)
【後発医薬品を提供することが困難な場合について】
問1「当該保険医療機関または保険薬局において、後発医薬品の在庫状況等を踏まえ、後発医薬品を提供することが困難な場合」について、出荷停止、出荷調整等の安定供給に支障が生じている品目かどうかで判断するのではなく、あくまで、現に、当該保険医療機関または保険薬局において、後発医薬品を提供することが困難かどうかで判断するということでよいか。
答 そのとおり。
【公費負担医療について】
問2 医療保険に加入している患者であって、かつ国の公費負担医療制度により一部負担金が助成等されている患者、子ども医療費助成等のいわゆる地方単独の公費負担医療の対象となっている患者が長期収載品を希望した場合について、長期収載品の選定療養の対象としているか。
答 国の公費負担医療制度の対象となっている患者やこども医療費助成等のいわゆる地方単独の公費負担医療が対象となっている患者が長期収載品を希望した場合についても、他の患者と同様に、長期収載品の選定療養の対象となる。
なお、医療上必要があると認められる場合に該当する場合は、従来どおりの保険給付として差し支えない。
問3 生活保護受給者である患者が長期収載品を希望した場合は、どのように取り扱うことになるのか。
答 生活保護受給者については、 長期入院選定療養以外の選定療養は医療扶助の支給対象とはならないとしている。このため、生活保護受給者である患者が、医療上必要があると認められないにもかかわらず、単にその嗜好から長期収載品の処方等または調剤を希望する場合は、当該長期収載品は医療扶助の支給対象とはならないため、生活保護法に基づき、後発医薬品処方等または調剤を行うこととなる。
なお、長期収載品の処方等を行うことに医療上必要があると認められる場合は、当該長期収載品は医療扶助の支給対象となる。
衆院選2024 /躍進の野党/保険証“併用・残すべき”
衆院選2024/躍進の野党/保険証“併用・残すべき”
◆歯科医師2氏が当選
10月27日、第50回衆議院議員総選挙の投開票が行われ、自民・公明が計215議席となり、過半数(233議席)を割り込んだ。一方で立民など、「紙の保険証を残す」とした野党が議席数を大幅に伸ばし、躍進。フジテレビの報道によれば立民代表の野田佳彦氏は、優先すべき政策として「紙の保険証も使えるようにすること」を挙げた。12月2日以降の健康保険証存続へ、大きく流れが変わる可能性が出てきた。今後、改めて署名活動の重要性が高まっている。
なお、衆院選の結果、長谷川嘉一氏(立民/再選)、佐原若子氏(れいわ/初当選)の歯科医師2名が当選した。
◆協会は改めて健康保険証の存続を求める請願署名に取り組みます
協会は、10月上旬に主要各政党に対して健康保険証の発行終了に関するアンケートを実施。10月11日よりホームページ上で公開した。健康保険証の今後の取り扱いについて、自民は「資格確認書の活用も図りながら、国民の皆様が安心して保険診療を受けることができるよう取り組む」と従来通りの回答とし、これまでの主張にとどまった。マイナ保険証と健康保険証の併用を選び、衆院選では50議席増となった立民は、「一定の条件が整うまで現在の健康保険証を存続させるべき」としている。
新内閣・政府には、健康保険証廃止の問題に真正面から向き合い国民の不安を払拭し、納得と共感を得られる丁寧な対応をするよう求め、以降の国会で与野党による活発な議論が行われることを望む。また、国会への提出に向け、協会は改めて健康保険証の存続を求める請願署名に取り組む。
↓各党の回答はコチラ(クリックするとPDFをご覧になれます)
衆院選2024政党アンケート結果
◆「保険証の存続を」要請書提出
また、協会は石破茂内閣組閣に伴い、10月4日付で、石破総理大臣、福岡資麿厚生労働大臣、平将明デジタル大臣宛てに要請書を提出した。要請書は、総理就任前の石破氏のコメントに反し、福岡・平両大臣から保険証の新規発行終了の方針を堅持する旨の発言があったことを受け、提出したもの。全国保険医団体連合会の調査で、全国の7割強の医療機関でトラブルが発生していることや、会員から寄せられた現場の窮状を訴え、石破総理らに12月2日以降も健康保険証の発行を存続するよう求めた。
協会は、今後も会員の声を政府や行政に届けていく。
【荻原博子さん連載】マイナ保険証の〝失態〟を追う~このまま見過すことはできません~ 第7回 驚愕する日本の医療の“デジタル化” !!
驚愕する日本の医療の“デジタル化”
日本の医療には“デジタル化”が必要と言われています。
私も含めて、これに異議を唱える人はいないと思いますが、問題は「どんな“デジタル化”で、どれだけ世の中が便利になるか」ということです。
厚生労働省は、新型コロナ対応でさまざまなデジタルシステムを立ち上げました。感染症情報としては「ハーシス(HER―SYS)」「ネシッド(NESID)」「ココア(COCOA)」があります。ワクチン情報では「ブイシス(V―SYS)」、ワクチン摂取記録システムでは「VRS」。医療情報では「ジーミス(G―MIS)」「イーミス(EMIS)」。
ところが、役に立たないものが多かった。中でも新型コロナウイルス接触確認アプリの「ココア」は、ダウンロード数約4,000万件なのに、致命的な不具合が発生していたにもかかわらず4カ月も放置されていたというお粗末さ。税金をドブに捨てて終わりました。
◆なぜ「FFHS」でなく「ハーシス」だったのか
「ココア」よりもひどかったのは、医師が患者情報を入力する「ハーシス」。入力項目が120~130もあり、入力だけで1人あたり30分もかかります。コロナ診察でヘトヘトになった医師が、診察後にこれを入力すると明け方近くになってしまい、「ハーシス地獄」と呼ばれました。
ところが、もっと驚いたのは、実は厚生労働省は10年もの歳月を費やしてコロナ前から「症例情報迅速集積システム(FFHS)」という、「ハーシス」同様のシステムを既に研究・開発していました。しかも「ハーシス」だと30分かかる入力が、「FFHS」ならわずか1分。
「FFHS」を開発した北見工業大の奥村貴史教授は、「自治体が使いやすいよう意見交換を重ねて設計していたのに、政府は過去の教訓を生かさず、ハーシスを導入した」と言っています。「ハーシス」開発の陣頭指揮をとった当時の橋本岳厚生労働副大臣も、「FFHSに必要な機能が備わっていると担当から説明を受けていれば、採用していたかもしれない」とのこと。
しかも、「ハーシス」では膨大なデータが集められたのに、それがどう活用されたのかもわからない。一方、「FFHS」は北海道が導入し、クラスター(感染者集団)が発生した地域への医師派遣などに役立てていて、道の感染症対策担当者は「ハーシスではなく、最初からFFHSが使われていれば、保健所や自治体の負担は少なくて済んだだろう」と話しています。
何のためにデータを集め、集めたデータをどう活用するのかという利用者の視点が抜け落ちた“デジタル化”など、百害あって一利なし。
◆東京の歯科医院に北海道から通う患者はほぼゼロ
同じようなことを、いま政府が進めている医療DXにも感じます。
マイナポータルで見られる医療情報は、ほとんどがレセプト情報。検査をしたことはわかっても、検査の結果はわからない。しかも、1〜3カ月前の古い情報なので、これを見て診療されるのは怖いことです。
そもそも、歯科診療所にやってくる患者さんは近隣の人。東京の歯科診療所に、北海道や九州から歯の治療に通うというケースはほとんど考えられない。それよりも、全国的なネットワークにすることで、脆弱な接続箇所から悪質なコンピュータウイルスが入り込むことのほうが怖い。そうなったら、前回書きましたが、病院は治療もできずにお手上げです。
日本政府は“デジタル”を使いこなす能力が低く、2023年の「世界デジタル競争ランキング」では32位。韓国が6位、台湾が9位、香港が10位、中国も19位なので、メンツにかけても何とか一発逆転したいのでしょう。
ただ、それが「医療DX」で、しかも多くの企業もこれに接続するというのは、あまりにも危険と言わざるを得ません。
失敗続きの日本の“デジタル化”に、私たちはどこまで付き合わされるのでしょうか。
「東京歯科保険医新聞」2024年10月1日号7面掲載
経済ジャーナリスト 荻原 博子
プロフィール:おぎわら・ひろこ/経済ジャーナリスト。家計に根ざした視点で経済を語る。バブル崩壊直後からデフレの長期化を予想し、現金に徹した資産防衛、家計運営を提唱し続けている。新聞・経済誌などに連載。新聞、雑誌等の連載やテレビのコメンテーターとしても活躍中。近書に「マイナ保険証の罠」(文春新書)、「マイナンバーカードの大問題」(宝島社新書)など。
東京歯科保険医新聞2024年(令和6年)10月1日
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【お詫びと訂正】
本紙10月号(第655号)にて以下の誤りがありました。お詫びとともに訂正させていただきます。
※ホームページ上で公開している紙面は、訂正済みのものです。
2面「厚労省に要請 診療報酬の改善を求める」の記事およびキャプション
(誤)歯科医療官⇒(正)歯科医療管理官
6面「薬剤長期収載品の選定療養」の記事内【対象となる歯科の医薬品の例】
(誤)セフゾン細粒小児用10%⇒(正)削除
【新聞10月号】
【1面】
1.都保健医療局・福祉局に要望/東京都歯科保健推進計画など4項目
2.パブコメでも保険証発行終了に反対/マイナ保険証利用率は12.43%
3.オン資訴訟結審判決は11月28日/「我々の訴え真摯に検討」弁護団明かす
4.探針
5.ニュースビュー
【2面】
6.厚労省に要請/診療報酬の改善を求める
7.東京都議会会派に要請/都要請4項目に理解
8.10月からの変更に注意/医療DX推進体制整備加算
9.マイナ保険証を巡り東京弁護士会が市民集会開く/原則一本化の問題を整理
10.オンライン請求の返戻など/10月から〝紙媒体は廃止〟
11.都が3定議会で決定へ/医療機関等への物価高騰支援金/歯科医療機関15万円、歯科技工所7.5万円
【3面】
12.解説・健康保険証の発行終了後はどうなるのか?会員の相談から見た変更点の勘所と課題
【4面】
13.経営・税務相談Q&ANo.421
14.SASのOA治療のための講習会開催/医科とのこまめな連携などのポイントも説明
15.歯科衛生士へのアンケート協力のお願い
16.10月会員無料相談のご案内
【5面】
17.研究会・行事ご案内
【6面】
18.教えて!会長!!Vol.87「10月から始まる先発医薬品の負担増」
19.薬剤長期収載品の選定療養
20.理事会だより/2024年度第9回理事会
21.9月協会活動日誌
【7面】
22.連載「マイナ保険証の〝失態〟を追う~このまま見過すことはできません~」/第7回「驚愕する日本の医療の“デジタル化”!!(荻原博子さん/経済ジャーナリスト)
23.神田川界隈「米国徴兵制の現状と世界情勢―我が国、歯科医師そして協会の真の役割」(監事・藤野健正/渋谷区)
24.共済部だより/休業保障・保険医年金PR
【8面】
25.指導対策の〝要〞は/適切な保険請求とカルテ記載/社保研究会に110人が参加
26.11月2日開催!イイ歯デー/保険でより良い歯科医療のために街頭宣伝にご協力を
27.メディア懇談会/「小規模医院は手が回らない」ベア評価料届出が議題に
28.会員の意識と実態調査ご案内
【9・10面】
29.共済制度折込:秋の共済キャンペーン
メディア懇談会/「小規模医院には手が回らない」 ベア評価料届出が議題に
メディア懇談会/「小規模医院には手が回らない」 ベア評価料届出が議題に
協会は9月13日、第3回メディア懇談会(通算103回)を開催し、メディア2社3名が参加。馬場安彦副会長が説明し、早坂美都副会長が進行を務め、施行から3カ月が経過した診療報酬改定のほか、マイナ保険証問題や署名の取り組み、協会が行った来年度東京都予算に関する要請などについて懇談した。
今次改定で新設されたベースアップ評価料について、7月1日現在の都内の歯科診療所の届出率が12%台に留まっている(※歯外在ベⅠ)ことが話題に上がった。9月に入り、厚生労働省から届出方法の簡素化が公表されたが、馬場氏は「都内にある小規模な歯科医院では届出に手が回らないのではないかと推測する」と、依然として複雑さが残る届出について説明し、「協会としては基本診療料や技術料を引き上げてほしいと思っている」と続けた。参加者からは、ベースアップ評価料に関する医療機関のスタッフの声などが紹介された。
また、オンライン資格確認システム義務化の問題に関連して、〝オン資義務化撤回訴訟〞に触れた馬場氏は「個人の力で国を動かすことが難しい中、協会として取り組むことは良い機会である。一開業医の気持ちを代弁してくれるものだ」とし、参加者に積極的な取材を呼びかけた。
東京都議会会派に要請/都要請4 項目に理解
東京都議会会派に要請/都要請4 項目に理解
協会は、東京都の2025年度予算をテーマに、都議会のミライ会議、日本共産党都議団に対し、要請を行った。
協会からは、東京都への次年度予算要請4項目について説明した。また都民ファーストの会には、書面による要望書を提出した。
協会から要望した「指導」については、「生活保護の個別指導が始まった時期はいつ頃なのか。また、どのような問題が懸念されるのか、具体的に訴えていった方がよい」(日本共産党)、歯科衛生士の復職支援については「募集をかけても雇用ができない実情は、他業種でも起こっている。具体的にどのような支援が必要なのか、いろいろとアイデアを寄せてほしい」(ミライ会議)などの回答を得た。

【教えて!会長!! Vol.87】10月から始まる先発医薬品の負担増
【教えて!会長!! Vol.87】10月から始まる先発医薬品の負担増
Q 10月から行われる先発医薬品の選定療養化とは、どのようなものですか?
A 10月1日から、後発医薬品(ジェネリック医薬品)がある薬で、先発医薬品(長期収載品)の処方を希望された場合、通常の窓口負担(1〜3割)に加えて、特別な料金を徴収します。より具体的には、先発医薬品と後発医薬品の価格差の4分の1相当の料金を指し、課税対象となるため10%の消費税分を徴収します。このことは先発医薬品の選定療養化といえます。これは、保険診療と保険外診療の混合を例外的に認めている「保険外併用療養費」という制度です。歯科では金属床総義歯、前歯部の金属歯冠修復に使用する金合金などで、患者さんから徴収する特別な料金の内容を厚生局に報告する必要があります。なお、本件の先発医薬品の選定療養は報告の必要はありません。
先発医薬品が医療上必要と判断した場合(別途に記表に示した4項目)は、選定療養の対象外とすることができます。
Q「院外処方」と「院内処方」で説明してください。
A「院外処方」として10月1日から処方箋様式が変更されます。「医療上の必要性」により後発医薬品への変更を不可とする場合、「変更不可(医療上必要)」欄で該当医薬品にチェックします。また、「医療上の必要性」がなく、患者さんの希望により先発医薬品を処方する場合は「患者希望」欄で該当医薬品にチェックします。なお、「変更不可(医療上必要)」欄と「患者希望」欄のいずれもチェックしなければ、薬局で患者さんが先発医薬品か後発医薬品かを選択し、先発医薬品を希望された場合は、選定療養の対象となり、前述の特別な料金が徴収されます。
「院内処方」の医療機関も先発医薬品の選定療養の対象ですが、厚生労働省からの事務連絡(7月12日付)で、院内で後発医薬品を採用していない場合は、「後発医薬品を提供することが困難な場合」の特別な事情に該当するため、選定療養の対象にはならず、従来の保険給付になるとしています。ただしこの場合は、その理由をレセプトに記載する必要があります。
なお、院内での注射は選定療養の対象ですが、「院内処方」と同じく院内で後発医薬品を採用していなければ、対象にならないと解釈できます。
国は、高齢者の窓口負担割合の引き上げや、高所得者の年金の削減などを行い、社会保障費の抑制を進めています。その一つに今回の先発医薬品における患者負担増があります。現状、後発医薬品において、先発品より効果が低いとの報告や、添加物アレルギーの発現が認められたなどの報道があり、患者さんが不安に感じることは理解できます。行政には後発医薬品の効果や安全性を示していただきたいところです。
東京歯科保険医協会
会長 坪田有史
(東京歯科保険医新聞2024年10月号掲載)
薬剤長期収載品の選定療養
薬剤長期収載品の選定療養
後発医薬品のある先発医薬品(長期収載品)の選定療養について]10月1日から先発医薬品(長期収載品)の選定療養化が開始されます。 長期収載品の対象医薬品は1095品目、歯科で使用頻度の高い医薬品も含まれます。
ただし、長期収載品のすべてが選定療養となるわけではなく、条件に当てはまる場合は選定療養の対象にはなりません。
処方箋様式は10月から変更ですが、従来の様式を修正して使用することも可能です。
【医療機関・薬局の方向けのチラシ】(厚生労働省)
1.対象となる要件と患者負担
選定療養の対象になる場合
①医師・歯科医師が医療上必要があると認めた場合(院外処方の場合は処方箋の「変更不可(医療上必要)」欄に「✓」または「×」を記載した場合)
②後発医薬品の在庫状況等を踏まえ、医療機関や保険薬局で後発医薬品が提供することが困難な場合、のいずれかに該当しない場合
対象になる場合、先発医薬品と後発医薬品の価格差の4分の1相当の料金を特別な料金(選定療養)として患者から別途受領します。「特別の料金」は課税対象であるため、消費税分を加えて受領してください。
2.対象となる医薬品
以下①または②が対象です。
対象医薬品リストは厚労省HP「後発医薬品のある先発医薬品(長期収載品)の選定療養について」からご確認できます。
①後発医薬品が初めて薬価基準に収載された日の属する月の翌月の初日から起算して5年を経過している医薬品で後発医薬品置き換え率が1%以上のもの
②後発医薬品の置き換え率が50%以上であるもの
【対象となる歯科の医薬品の例】
・ボルタレン錠25㎎、ロキソニン細粒10%、ジスロマック錠250㎎など。
長期収載品を選定療養の対象とする場合の後発医薬品の価格との比較について厚労省でリストを作成しています。ご参照ください。
※示されている額はあくまでイメージであり、実際に窓口で負担する額とは異なることにご注意ください。
後発医薬品との価格比較リスト[487KB]
3.レセプト記載
(1)選定療養の対象とならない場合のレセプト・処方箋記載
①院内処方の場合のレセプト記載
医療上の必要があると認められる場合、および後発医薬品の在庫状況等を踏まえ、後発医薬品を提供することが困難で選定療養の対象とならない場合は、別表1の理由より選択して、レセプトの「摘要」欄に記載します。
コード | レセプト表示文言 |
820101320 | 長期収載品と後発医薬品で薬事上承認された効能・効果に差異があるため |
820101321 | 患者が後発医薬品を使用した際、副作用や、他の医薬品との飲み合わせによる相互作用、長期収載品との間で治療効果に差異があったため |
820101322 | 学会が作成しているガイドラインにおいて、長期収載品を使用している患者について後発医薬品へ切り替えないことが推奨されているため |
820101323 | 剤形上の違いにより、長期収載品を処方等の必要があるため |
820101324 | 後発医薬品の在庫状況等を踏まえ後発医薬品を提供することが困難なため |
②院外処方の場合の処方箋記載
処方箋の「変更不可(医療上必要)」欄に「✓」または「×」と記載し、「保険医署名」欄に署名または記名、押印します。
記載がない場合、薬局での聴き取りにより「患者希望」が確認できた場合、選定療養の対象となる可能性があります。
(2)選定療養の対象となる場合のレセプト・処方箋記載
①院内処方の場合のレセプト記載
当該医薬品の後に「(選)」と記載し、所定単位につき、選定療養に係る額を除いた薬価を用いて算出した点数を記載します。
【記載例】
ジスロマック錠250㎎(選)3錠 43×3
②院外処方の場合の処方箋記載
処方箋の「患者希望」欄に医薬品ごとに「✓」または「×」と記載する。
4.疑義解釈より抜粋
(問)医療上の必要があると認められるのは、どのような場合が想定されるのか。
(答)保険医療機関の医師又は歯科医師(以下、医師等)において、次のように判断する場合が想定される。
① 長期収載品と後発医薬品で薬事上承認された効能・効果に差異がある場合
(※)であって、当該患者の疾病に対する治療において長期収載品を処方等する医療上の必要があると医師等が判断する場合。
(※)効能・効果の差異に関する情報が掲載されているサイトの一例
PMDAの添付文書検索サイト
日本ジェネリック製薬協会が公開する「効能効果、用法用量等に違いのある後発医薬品リスト」
② 当該患者が後発医薬品を使用した際に、副作用や、他の医薬品との飲み合わせによる相互作用、先発医薬品との間で治療効果に差異があったと医師等が判断する場合であって、安全性の観点等から長期収載品の処方等をする医療上の必要があると判断する場合。
③ 学会が作成しているガイドラインにおいて、長期収載品を使用している患者について後発医薬品へ切り替えないことが推奨されており、それを踏まえ、医師等が長期収載品を処方等する医療上の必要があると判断する場合
④ 後発医薬品の剤形では飲みにくい、吸湿性により一包化ができないなど、剤形上の違いにより、長期収載品を処方等をする医療上の必要があると判断する場合。ただし、単に剤形の好みによって長期収載品を選択することは含まれない。
(問)院内採用品に後発医薬品がない場合は、「後発医薬品を提供することが困難な場合」に該当すると考えて保険給付してよいか。
(答)患者が後発医薬品を選択することができないため、従来通りの保険給付として差し支えない。
(問) 医療保険に加入している患者であって、かつ、国の公費負担医療制度により一部負担金が助成等されている患者が長期収載品を希望した場合について、長期収載品の選定療養の対象としているか。
(答)長期収載品の選定療養の制度趣旨は、医療上必要があると認められる場合等は、従来通りの保険給付としつつ、それ以外の場合に患者が長期収載品を希望する場合は、選定療養の対象とすることとしたものであることから、今般、対象外の者は設けておらず、国の公費負担医療制度の対象となっている患者が長期収載品を希望した場合についても、他の患者と同様に、長期収載品の選定療養の対象となる。なお、医療上必要があると認められる場合に該当する場合は、従来通りの保険給付として差し支えない
(問)生活保護を受給している患者が、単にその好みから長期収載品を希望した場合は、特別の料金を徴収することになりますか。
(答)生活保護受給者である患者には、単にその嗜好から長期収載品を希望した場合であっても、後発医薬品を処方等又は調剤することとなります。そのため、特別の料金を徴収するケースは生じません。
<そのほかの疑義解釈>
長期収載品の処方等又は調剤の取扱いに関する疑義解釈資料の送付について
(その1)
(その2)
(その3)
(その3)の一部訂正について
5.院内掲示について
「後発医薬品のある先発医薬品の処方等又は調剤に係る費用徴収その他必要な事項を当該保険医療機関及び当該保険薬局内の見やすい場所に掲示しなければならないものとする」とされています。掲示する内容については、厚労省HPのポスターを参考してください。
東京歯科保険医新聞2024年(令和6年)9月1日
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【新聞9月号】
【1面】
1.新規発行終了まであと3カ月 改めて問う「本当に健康保険証を廃止してよいのか?」
2.<会員拡大月間>会員無料システムや 新規開業医講習会を充実(福島崇組織部長)
3.大切なお知らせ 電話受付時間 変更について
4.探針
5.ニュースビュー
【2面】
6.第53回保団連夏季セミナー開催/差し迫る健康保険証廃止に非難の声
補綴外しへの警戒感も
7.健康保険証廃止でどうなる?資格確認書って?
8.複雑な診療報酬改定めぐり懇談/2024年度会員地区懇談会 多摩・城南・城東 3地区で開催
9.診療報酬改定施行後 初開催/126名が参加/施設基準のための講習会
【3面】
10.インタビュー 東京新聞・長久保宏美さん/マイナ保険証問題担当記者が語る“今後の懸念”「いま医療現場が取るべきアクション」はひとつ
【4面】
11.経営・税務相談Q&A No.420「エックス線装置を買い替えたらやってくる?!保健所の『立入検査』とは?」
12.東京都(歯科)の施設基準届け出状況― 2024年7月1日現在―「歯外在ベⅠ」12.57%〝低調〟な届出状況
13.9月会員無料相談のご案内
【5面】
14.研究会・行事ご案内
15.デンタルブックのご案内
16.会員優待のご案内
【6面】
17.自院のトラブル経て保険証署名に協力 同世代の先生へ「一歩踏み出して」/ドクターチェリー歯科室・吉牟田友惟院長
18.引き続きご協力ください/現行の健康保険証を残してください請願署名<私のひとこと>
【7面】
19.健康保険証廃止問題(1面からつづく)/資格確認方法が複数に本当に利便性が上がるのか?
20.会員の意識と実態調査ご案内
【8面】
21.教えて!会長!! Vol.86「保険証を残そう!署名にご協力を!!」
22.「よい歯」東京連絡会が記念講演開催/スウェーデン式予防歯科のノウハウを熱く語る
23.「情報セキュリティ10大脅威2024」解説③最終的には「人」の問題 重要なのは情報リテラシー
24.理事会だより/2024年度第8回理事会
25.8月協会活動日誌
【9面】
26.症例研究「歯科矯正相談料と小児の口腔機能管理」
【10面】
27.退き際の思考 歯科医師をやめる(松井裕子さん・前編)「最善の治療を目指し」勤務医として34年 退職後も歯科と関わる人生を模索中
28.共済部だより/共済募集キャンペーン
【11面】
29.2024年9月 歯科用貴金属の随時改定情報
30.神田川界隈「気まぐれな エアータービン」(理事・半田 紀穂子/台東区)
31.会員寄稿「声」 随筆「DXの光と影」小林顕(板橋区)
32.通信員便りNo.145
【12面】
33.連載「マイナ保険証の〝失態〟を追う~このまま見過すことはできません~」/第5回「マイナ保険証」で歯科医院も閉院ラッシュ?!(荻原博子さん/経済ジャーナリスト)
34.いのちまもる9・26総行動 ご案内
35.原水爆禁止2024年世界大会in広島
【13・14面】
36.共済制度折込:秋の共済キャンペーン
【教えて!会長!! Vol.86】保険証を残そう! /署名にご協力を!!
保険証を残そう! /署名にご協力を!!
Q 12月2日まであと3カ月ですね。
A 本年12月2日から健康保険証の新規発行が終了となります。患者さんの中には、現在お持ちの健康保険証が12月2日から使えなくなると勘違いされている方もいらっしゃるなど、既に混乱が起きていることが多数報告されています。なお、発行済みの健康保険証は最長1年間有効となる経過措置があります。現在の公的医療保険は、居住地や勤務先が変わった場合、自治体や健康保険組合などが新規の健康保険証を発行しています。しかし、12月2日以降は、加入する保険者が変更された時点で経過措置は終了してしまいます。一方、75歳になって後期高齢者医療制度の対象になった場合も同じです。現在、後期高齢者医療制度に該当されている方は、継続される25年7月頃に経過措置が終了します。したがって、1年間の猶予がない方が必ず出てきます。これも、混乱を引き起こす原因の一つとなっています。
他方、健康保険証の新規発行が終了すると、マイナンバーカードを持っていない人、持っていても健康保険証とひも付けしていない人、介護が必要な高齢者や子どもなど、カード取得が難しい方が保険診療が受けられるように、保険者が保険証の代わりに「資格確認書」を無料で発行します。この「資格確認書」が発行されるタイミングは各自治体などに任されていますが、いまのところ不明です。地域によって差が出ることが想定されますから、この件も混乱に繋がりかねません。
これらの患者さん側の混乱に直接対応する可能性が高いのは、現場の医療機関です。既に、患者さんがマイナ保険証で受診された場合、別人の情報がひも付けられていたり、読み取りが不具合となったりするトラブルの報告が協会に届いています。
国は、マイナカードには顔認証システムがあって、他人がなりすますことを防止できると言っています。しかし、暗証番号を入力すれば顔認証をしなくても資格確認ができてしまいます。したがって、なりすまし防止には無効ですからマイナ保険証のメリットにはなりません。
さらに、12月2日以降に窓口で患者さんの保険者番号を確認する方法が、現行の健康保険証を提示する、カードリーダーでマイナ保険証を読み取る、「資格確認書」を提示する、という3つのパターンに加え、さらに6種類あり、合計9種類になります。受付の際、これらの方法を把握しておかなければユニットに通して保険診療を開始できませんし、対応が滞れば現在のようなスムーズな診療ができなくなる可能性も否定できません。そもそも、12月2日以降は、現在より受付窓口の業務負担が増えることが想定されます。
Q 政府が強硬な姿勢で、現行の保険証を廃止してマイナ保険証を推進する方向なのはどうしてですか。
A マイナ保険証の利用率を上げるため、国や行政側は多額の予算をつぎ込むなど、躍起になっている姿勢を感じます。ご存じの通り、マイナカード取得・マイナ保険証利用を強要するマイナ保険証利用促進キャンペーンが行われています。頼んでもいないのに先生方に「総合ポータルサイト」からマイナ保険証の利用率などが勝手に送られてくることをどう思われているでしょうか。
この健康保険証の廃止の動きの裏には、さまざまなビジネスや多くの利権が繋がっていることが囁かれています。医療DXにメリットがないとは断言できませんし、推測で記すことは止めておきます。しかし、個人情報を利活用すると言われても、個人としては「気味が悪い」の一言に尽きます。
また、今次診療報酬改定でマイナ保険証の利用促進を主目的として「医療情報取得加算」「医療DX推進体制整備加算」などが新設され、技術料などに使うべき診療報酬の財源が少なくなりました。マイナ保険証の推進のために改定財源を使われたことは、歯科医療が軽視されたと言えます。
協会は、歯科保険医の経営を守ることを目的の一つに挙げています。したがって、反対意見だけを声高に訴えるだけでなく、状況に応じて、また個々の先生方の事情を踏まえながら、対応しています。しかし、健康保険証の廃止だけは日常の歯科医業を妨げる原因になる可能性が少なからずあります。したがって、引き続き「健康保険証の存続を求める」請願署名と、今後実施予定の「オン資トラブル調査(第4弾)」へのご協力をお願いします。
なお、協会は、将来に向けて「医療のデジタル化」に反対しているわけではありません。とにかく現行の健康保険証で困っていないのですから、患者・国民の皆さんと医療機関のために現行の健康保険証が使えるように残してほしい、そのことを強く訴えているのです。
東京歯科保険医協会
会長 坪田有史
(東京歯科保険医新聞2024年9月号掲載)
自院のトラブル経て保険証存続署名に協力「一歩踏み出して」/吉牟田友惟院長(ドクターチェリー歯科室)
自院のトラブル経て保険証存続署名に協力「一歩踏み出して」/吉牟田友惟院長(ドクターチェリー歯科室)
<マイナ保険証問題・若手のホンネ>
自院のトラブル経て保険証存続署名に協力 同世代の先生へ「一歩踏み出して」
吉牟田 友惟 院長(ドクターチェリー歯科室)
オンライン資格確認システムの導入や運用上のトラブル、そして健康保険証の新規発行停止―。幼少期からインターネットに触れ、デジタルやITといった言葉に囲まれながら育った世代は、“医療DX”とも言われる一連の動きの中で起こる問題をどのように見ているのか。マイナ保険証への受付対応を目の当たりにし、健康保険証の存続を求める署名に協力したというドクターチェリー歯科室の吉牟田友惟院長(中野区/35歳)にお話を伺った。
「保険証は必要?」SNSで独自アンケート
―カードリーダーの導入義務化、健康保険証(以下、保険証)の新規発行停止など一連の動きをどう見ていますか。
住民票発行などマイナンバ―カ―ドのメリットも感じているので、最終的に保険証や医療証などが1枚になるのは良いことだと思います。ただ、資格確認については、今はそんな状況にありません。カ―ドリ―ダ―導入の際も、設置の手続きにとても時間がかかりました。私たちの世代でこの状況なので、年配の先生からは「対応できないから辞めるしかない」という声が聞こえてきます。マイナ保険証の利用は当院も30人に1人程で、現段階で一本化されていくことが良いとは感じません。
―窓口での対応に変化は。
マイナ保険証でエラ―表示が出たため、改めて保険証で資格確認をしたことがあります。患者さんは不自然に感じ、スタッフもイレギュラ―対応だったため保険証を返しそびれ、後日、患者さんへの返却対応が必要になりました。また、マイナ保険証が「期限切れ」の方もいました。「機械のエラ―もあるんです」と説明しましたが、時にはムッとされる場合もあると思います。結局、保険証をお持ちではなかったので、一旦10割負担してもらい、返金の対応をしました。そういう時のために2枚とも持っておいてほしいと感じています。
―マイナ保険証での資格確認をやってみていかがですか。
保険証は受け取って、確認して終わりです。一方で、マイナ保険証はカードリーダーに置いて操作を伴うので、今のところマイナ保険証の方が確認に時間がかかるんです。その間、スタッフは目を離すわけにはいかず、受付作業が効率的ではありません。予約時間前に余裕を持ってくる患者さんは少ないので、資格確認に時間を取られると、その後のアポイントにも影響が出てしまいます。
―周囲や同世代の先生の反応は。
この取材の前に、X(旧Twitter)でアンケ―トを取ってみたんです。1,400人ほどのフォロワ―には歯科業界の関係者も多いです。約150人が回答し、「紙の保険証もあった方がいい」が72%、「マイナ保険証に問題なし」が28%でした。訪問診療をしている方は、カ―ドリ―ダ―を持っていくのが大変なので保険証がいいそうです。返戻やトラブルが減っている先生でもサブとして紙の保険証を持ってくるようアナウンスしているようです。中には「全然問題ない」という先生もいます。ただ、利用率がそこまで高くなかったりするので、何とも言えない部分があります。高齢の患者さんが多い先生は、健康保険証がいいという意見が多かったです。
紙の保険証やっぱりあった方が
— Dr.cherry🍒(ゆいてんてー) (@dr_che88rry) August 11, 2024
いいなぁって思ったエピソード
またはマイナ保険証での
トラブルとかあったら
教えてください🙋♀️
(質問箱使ってもらっても🙆♀️)
ついでにアンケートもしてみるね
「私よりスタッフが…」受付対応目の当たりにし署名

昭和レトロな装いが印象的な医院。こだわりが詰まった受付カウンターについて、「世界観的にカ―ドリ―ダ―は置きたくなかった」と吉牟田先生らしい一言も。
―そうした中で初めて協会の署名にご協力いただきました。
協会から保険証の存続を求める請願署名の用紙が届いたので、スタッフに相談しました。そうしたら全員一致で「保険証があった方がいいです」と。それで私を含め署名しました。
―若い世代の中には、署名を敬遠される先生もいらっしゃると思います。
その感覚は、私にもあるかもしれないです。選挙関連の署名をお願いされることがあり、正直、よく理解できない部分もあります。だけど、今回は保険証の廃止についてのものだったので、署名用紙に書かれている内容をしっかり読みました。実感としてマイナ保険証を提示する人が少ないし、エラ―表示は出るし―。私より受付スタッフがこの問題を肌で感じることが多いと思うので、署名に協力しました。マイナ保険証で問題ないという先生の中には、スタッフの苦労を把握しきれていない方もいるのではないかと思います。
―先生はSNSを積極的に活用されていますが、協会がこの問題を広報していく中でどんなことが必要だと思いますか。
意外と年配の先生も使っているので、歯科業界の方に向けてはXが良いと思います。あるメ―カ―がイメ―ジキャラクタ―の“ダサさ”でフォロワ―を増やしましたが、綺麗なものを映し出すだけではだめかもしれません。「頑張れ、頑張れ」とユ―ザ―の共感を呼ぶような投稿が、受け入れられることも多いようです。私も医院での悩みや、患者さんのあるあるなどを発信しているうちに共感を集め、フォロワ―が増えていきました。
―最後に先生と同じ思いを抱えている方にメッセージを。
カードリーダーの導入義務化など、これらで違和感を覚えるのは、“やらされてる感”だと思います。それに対し、意見をお持ちの先生も多いと感じていて、ぜひ自ら一歩踏み出して行動してほしいと思います。ただ、なかなかそういう機会がない部分もあるので、保険医協会が発信することで、そうした先生も意見が出しやすくなるのではないでしょうか。
―本日はありがとうございました。
【連載】退き際の思考/「最善の治療を目指し」勤務医として34年 退職後も歯科と関わる人生を模索中(松井裕子さん【前編】)
「最善の治療を目指し」勤務医として34年 退職後も歯科と関わる人生を模索中(松井裕子さん【前編】)
【連載】退き際の思考/「最善の治療を目指し」勤務医として34年 退職後も歯科と関わる人生を模索中
松井裕子さん―前編

松井裕子(まつい・ゆうこ)さん/1951年東京都生まれ。1976年東京医科歯科大学歯学部卒業。補綴学教室で1年間の副手・医員を経て、1981年同大大学院修了後同医局に助手として勤務。1990年4月より宮内庁病院へ出向。2017年3月、定年。非常勤歯科医師として同病院勤務。2024年、退職。
歯科医師としての“引退”に着目した本企画。すでに歯科医療の第一線を退いた先生にお話を伺い、引退を決意した理由や、 医院承継、閉院の苦労などを深堀りする。
今回は、大学助教を経て東京・千代田区、皇居の東御苑に所在する宮内庁病院で34年にわたる歯科医師キャリアを過ごした松井裕子先生(72歳)にインタビューした。退職後も「歯科に携わり続けたい」と語る松井先生の想いを2回に分け、紹介する。
―まずは歯科医師になったきっかけから教えてください。
高校時代に進路を決める時に、先祖代々歯科医師の家系でこの世界に馴染みがあったこと、歯科医療は社会的に貢献できること、女性も手に職をつけておくべきだと考えていたこと、手芸や縫い物など手仕事が好きだったことなどから、歯科医療の道に進むことにしました。卒後も研修が必要と感じ、以前から教育分野にも興味があり、教育・研究・診療を3本柱とする大学なら学生教育に関わることもできると思い大学の医局に残りましたが、最終的には、30代後半から勤務医としての歯科医師人生を歩むことになりました。
―ご実家は歴史ある歯科の家系と伺いました。
先祖は、日本で最古の歯科医師とも言われる松井源水で、両祖父は開業医、両親・兄とも歯科医師、父は18代目にあたり、歯科大学の教授をしていました。手元にある資料には、先祖が浅草公園で独楽回しをしている時に、徳川将軍が見に来たという記述もあります。祖父は私が小さい頃に亡くなったので直接話を聞いたことはありませんが、「祖父の代までは浅草で歯の薬を売ったり、曲独楽をしながら患者さんを集めていた」という話を父から耳にすることもありました。その後、浅草一帯は関東大震災や戦災で焼失し、浅草から動かざるを得なくなり、先代の歯科医院は閉院したのではないかと思っています。
「素晴らしいこと」病院勤務を回顧
―それでは、宮内庁病院で勤務することになった経緯は。
大学助手(現在の助教)として9年程勤務する中で、いわゆる“ガラスの天井”にぶつかることも多く、限界を感じていた頃に、出向の打診をいただき、縁あって宮内庁病院で勤務することになりました。年齢的にも体力的にハードな仕事はできないと感じていた時期でもあり、公務員としてなら時間的に周囲に迷惑をかけずに勤務できると感じたことも決め手となりました。
―宮内庁病院について教えてください。
保険請求や窓口負担などは一般的な歯科医院と何ら変わりありませんが、患者さんは基本的に宮内庁や皇宮警察の職員が中心です。着任時は常勤歯科医師1名、非常勤歯科医師2名、コ・メディカルは常勤看護師2名、非常勤歯科技工士1名という構成でした。歯科衛生士がおらず、細かなことはほとんど1人でやることとなり大変でしたので、事務方に何年も粘り強く必要性を説き、10年以上経ってようやく非常勤の歯科衛生士を採用してもらえることになりました。着任からしばらくの間は消耗品の購入予算も少なく、予算内に収めるために看護師と毎月「ダイエット、ダイエット」と言いながら、請求物品を絞り込んでいました。また、看護師は毎年1人ずつ交代するので、物品名を一から覚えてもらわなければならない上、歯科衛生士に比べると歯科診療に関われる内容が限られるので、TBIを自らして患者さんに驚かれたりしました。
―病院勤務を振り返ってみていかがですか。
病院は国の機関なので、経営面の心配はありません。予算に縛られるため、機器の導入の難しさなどはありますが、一人ひとり丁寧に時間をかけて、可能な限り最善の治療を目指しながらできたのは素晴らしいことだと思っています。また、仕事以外に宮内庁ならではの貴重な経験もできました。一方でやり残したことは、多々あります。私が医長だった頃は、自費診療の料金体系を作ることを何回も申請しましたが動いてもらえず、補綴診療に苦労しました。現在の医長の下で体系は整ってきたのですが、もっと早く実現できていたらと、残念に思っています。また、常勤の歯科衛生士を採用してもらえなかったのもやり残したことの1つです。他省庁の常勤歯科衛生士が出向していた期間があり、その時は仕事もはかどり、やはり歯科衛生士の存在は有難く大きいと思いました。
退職後も患者の「役に立ちたい」
―そこから退職までの経緯を教えてください。
65歳の定年まで勤務した後、新医長を支えるために、週3日の非常勤勤務に就きました。それまで担当していた患者さんの治療を完結させるため、徐々に日数を減らしながらソフトランディングをしようと思っていたのです。今年度あたりから週に2日、1~2年後には週に1日くらい勤務すれば大きな補綴なども完了する見通しでしたが、病院の方針もあり、今年3月いっぱいで勇退することになりました。本来であれば、最後まで責任を持って治療を完成させたかったのですが、それを叶えることはできなくて残念です。患者さんにその旨を伝え、他の先生を紹介するなど対応も大変でした。
―退職してもなお歯科医師を続けたい、どんな思いからでしょうか。
大学を24歳で卒業してから半世紀近く歯科医師としての研鑽を積み、仕事中心の生活を送ってきました。一人前の歯科医師になるために、たくさんの方たちのご指導を受け、多額の税金も注いでもらったことを考えて、恥ずかしくない仕事をしてご恩をお返ししたいという気持ちで頑張ってきました。その間に培った知恵や技術を活かしたいと思うのは、自然なことかなと感じています。また、途中で手を離さなければならなかった患者さんたちから、「次の場所が決まったらぜひ治療をお願いしたい」というお言葉もいただいたので、ありがたく思うとともに役に立ちたいという気持ちは残っています。(つづく)
後編では、歯科医師としての今後の見通しなどを伺う。
#インタビュー #連載 #退き際の思考
【IT相談室】「情報セキュリティ10大脅威2024」解説 ③
最終的には「人」の問題/重要なのは情報リテラシー
今回は独立行政法人「情報処理推進機構」(以下、IPA)が発表している「情報セキュリティ10大脅威2024」の解説の最終回です。
◆「人」を間違えさせることが目的
前回にも解説しましたが、「組織」の脅威は用語が難解です。
ゼロデイ攻撃って何?
サプライチェーンの弱点ってどこ?
などと感じる方も多いかと思います。しかし、内容を見ると、脅かしたり、正常なビジネスを装ったりして言葉巧みに間違った情報を信じさせて、私たちに間違った操作をさせる手口とわかります。第3位の内部不正、つまり故意による被害も含め、人が正しい行動を取っていれば被害は防げます。問題は、正しい行動をするのが難しいことです。
脅威は日々進歩するのに対し、情報セキュリティ対策の具体的な取り組みについては、目新しいものはありません。これをやれば大丈夫です、という対策はないのです。
◆情報リテラシーを高め続ける
歯科医院の方々、特に経営者・院長先生にお願いしたいのは、ご自身の情報リテラシーを高めること、高め続けることです。わからないからとスタッフに丸投げしたり、迷惑メールは削除すればいいんだよね、などと対策をパターン化してはいけません。
折しも、KADOKAWAグループのニコニコ動画が大きな被害を受けて話題になりました。このようなニュースに興味を持ち、特に原因と今後の対策について理解しようと努めることが、皆さまの情報セキュリティを高める大きな手助けとなるでしょう。
なお、次回は少し趣きを変えて「電動歯ブラシが乗っ取られたら」という記事をご紹介します。
クレセル株式会社
(東京歯科保険医新聞2024年9月号8面掲載)
【インタビュー】長久保宏美氏(東京新聞編集局デジタル編集部編集委員)「いま医療現場が取るべきアクション」はひとつ
【インタビュー】長久保宏美氏(東京新聞編集局デジタル編集部編集委員)
【荻原博子さん連載】マイナ保険証の〝失態〟を追う~このまま見過すことはできません~ 第6回 医療機関がハッカーに狙われている!
第6回 医療機関がハッカーに狙われている!
今、世界中の医療機関がハッカーに狙われています。
イギリスでは6月に、国民保健サービス(NHS/National Health Service)がランサムウェア攻撃を受け、患者データが乗っ取られただけでなく、血液検査に必要なシステムが利用できなくなり、契約している医療機関や一般開業医の予約や手術ができなくなって大混乱。NHSは税金で運営されている医療サービスで、重篤な救急患者に対する救急医療の提供は、NHSでのみ行われています。
米国では2月に大手ヘルスケア企業のユナイテッドヘルス・グループ子会社のチェンジ・ヘルスケアがランサムウェア攻撃を受け、全米の薬局で障害が発生。米国民の3分の1の個人情報が流出したのではないかと言われ、同社は、犯人に2,200万ドル(約35億円)の身代金を支払ったと言われています。
5月には、米国の大手医療法人アセンションがサイバー攻撃を受けてシステム障害が発生。アセンションは、米国19州で140の病院と40の老人介護施設を運営している非営利法人で、コンピュータをダウンさせて紙の書類をバックアップ手段として使って、なんとか診療を継続しているとのことです。
◆日本でも多発する医療機関へのサイバー攻撃
身代金を狙ったサイバー攻撃は、日本各地でも起きています。
5月、地方独立行政法人岡山県精神科医療センターがランサムウェアの攻撃で、患者情報など最大4万人分が流出したと言われ、電子カルテが閲覧できなくなりました。
3月には、鹿児島の国分生協病院が攻撃を受け、「画像管理サーバー」に障害が発生。ファイルの一部が暗号化されアクセスできなくなり、ネットワークを停止し、システムの再構築をしました。
ここ数年の間に、東京、奈良、福島、徳島、大阪と、システムの脆弱な部分から侵入したウイルスが、次々と医療機関の機能を麻痺させています。
2022年に起きた大阪急性期・総合医療センターへのランサムウェア侵入は、無防備だった給食事業者からのウイルスの侵入が確認されています。
なぜ医療機関が狙われるのかと言えば、患者の命を人質にお金を出させやすいことと、医療機関の個人情報は犯人たちが使う「ダークサイト」などで高値で売れるから。しかも医療機関には、医療の専門家は多いですが、セキュリティーの専門家は思いのほか少ないことがほとんどでしょう。
◆1枚のカードに情報集約する危うさ
世界中にハッキングの嵐が吹き荒れる中で、日本政府は、巨大なネットワーク「医療DX」を展開しようとしています。そして、ネットとは無縁だった小規模な医療機関にもマイナ保険証導入を「義務化」しました。
しかも、そこに保険証だけでなくパスポートや運転免許証、各種証明書なども紐付けし、さらに民間企業にまでアクセスさせて情報を使わせます。
こうした状況に危うさを感じるのは、ひとり私だけでしょうか。
ネット上では、「IPアドレス」に片っ端からアクセスし、無防備なところを見つけて入り込んでウイルスに感染させ、感染したら、そのウイルスをさらによそに拡散させることが、日常茶飯的に起きています。
アクセスするところが多ければ多いほど、ウイルスに侵入される危険性は増える。しかも、政府が対策を万全にしてくれるというならまだしも、「義務化」させながら、個別の医療機関のセキュリティーまでは面倒を見てくれない。
そもそも、マイナンバーカードのような身分証明書代わりになるカードに、保険証をひも付けして、一本化しているなどという国は、先進7カ国の中では日本だけ。多くの国では、セキュリティーを考えて情報の分散化を進めています。
デジタル競争ランキング32位で「デジタル・ガラパゴス」と言われている日本は、まるでこうした世界の流れに逆行しているように見えます。
「東京歯科保険医新聞」2024年9月1日号12面掲載
経済ジャーナリスト 荻原 博子
プロフィール:おぎわら・ひろこ/経済ジャーナリスト。家計に根ざした視点で経済を語る。バブル崩壊直後からデフレの長期化を予想し、現金に徹した資産防衛、家計運営を提唱し続けている。新聞・経済誌などに連載。新聞、雑誌等の連載やテレビのコメンテーターとしても活躍中。近書に「マイナ保険証の罠」(文春新書)、「マイナンバーカードの大問題」(宝島社新書)など。
【重要なお知らせ】電話受付時間の変更について
【重要なお知らせ】
東京歯科保険医協会では、社会情勢の変化に応じた働き方の改善を進めています。
そのため、2024年9月1日から電話の受付時間を以下の通り、変更することになりました。
会員の皆様にはご迷惑をおかけいたしますが、ご理解のほどよろしくお願い申し上げます。
<<9月1日以降の電話受付時間>>
午前:10時00分~12時30分
午後:1時30分~5時00分
※お電話がつながるのは平日のみです。
保険証新規発行停止後に混乱生じる懸念
保険証新規発行停止後に混乱生じる懸念
マイナ保険証の利用率は、6月時点で9.90%に留まっていることが明らかになった。国は、医療機関向けの補助金を引き上げるなど利用率向上に躍起になっているが、前月の7.73%から2.17ポイントしか増加しておらず、利用率は依然、低いままである。
◆資格確認方法が2パターンに/混乱はこれから
今年12月2日で健康保険証の新規発行が停止となるが、すでに発行されている健康保険証は、記載された有効期限、または2025年12 月1日まで使用できる(表1参照)。
新規発行停止後は資格確認方法が2つに分かれる。マイナ保険証の登録をしていない患者の場合、現在の健康保険証の有効期限が終了した後は、保険者から送付される「資格確認書」を窓口で提示する。一方、マイナ保険証の登録をしている患者の場合は、現在の健康保険証の有効期限が終了した後は、①マイナ保険証を提示するか、②オンライン資格確認システムを導入していない医療機関に受診する場合は、マイナ保険証に加え、保険者から送付される資格情報が記載された「資格情報のお知らせ」もしくはスマートフォンでマイナポータルの資格情報画面を窓口で提示する(表2参照)。
後期高齢者の場合は25年7月頃、国保の患者の場合は25年9月頃に、現在の健康保険証の多くが有効期限切れとなり、有効期限がない社保の患者の場合も25年12月1日に期限が切れるため、これらの時期に、多くの患者の窓口での資格確認方法が変わるため、大きな混乱が生じることが懸念されている。
◆マイナ保険証登録済も
健康保険証利用する人多数マイナンバーカードの保有者数は今年4月末時点で全人口の73.7%、うちマイナ保険証の登録をしているのは78.5%のため、全人口当たりのマイナ保険証の所有者は57.9%となるが、利用率はたった9.9%である。つまり、マイナ保険証の登録をしている患者の多くが、マイナ保険証を使わずに健康保険証を窓口に提示している。本人が気づかないうちに健康保険証が使えなくなり、受診時にマイナ保険証を忘れ、資格確認ができないということが頻発しかねないのが現状だ。
◆健康保険証を残すことこそ肝要
これまで資格確認は健康保険証でも滞りなく行われてきた。健康保険証を存続し、患者の自主的な判断に委ね、マイナ保険証との併用を認めるべきである。なお、マイナ保険証を登録した患者であっても、今年10月から利用登録を解除すれば「資格確認書」の発行を受けることが可能になる。
国は、このような選択肢があることを患者に広く周知するべきである。
東京歯科保険医新聞2024年(令和6年)8月1日
東京歯科保険医新聞2024年(令和6年)8月1日
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【新聞8月号】
【1面】
1.〝虫歯〟の有無 目立つ「二極化」/学校歯科治療調査懇談会を開催養護教諭8名と意見交換
2.“大詰め”迎えたオン資義務化撤回訴訟/9月結審、11月判決の可能性
3.社会医療診療行為別統計/1件当たり1,279.5点
4.探針
5.ニュースビュー
【2面】
6.提出期限は8月31日まで医療機関等向け総合ポータルサイトで確認を/CD-R等の請求に係る猶予届出の提出を忘れずに
7.9月歯科用貴金属の随時改定/全種類引き上げ
8.「施設基準等の定例報告」7月報告から“8月報告”へ
9.オン資「資格確認限定型」
10.10月に実施 会員の意識と実態調査 ご協力のお願い
11.診療報酬改定情報「歯CAD、歯リハ3に係る疑義解釈示される」
【3面】
12.保団連 武見厚労相に保険証存続求め要請書
13.社会医療診療行為別統計 歯冠修復および欠損補綴減少傾向
14.マイナ保険証利用率9.90%/保険証新規発行停止後に混乱生じる懸念
15.小池都知事3選/さらなる東京都の医療充実を望む
16.【お詫びと訂正】
【4面】
17.経営・税務相談Q&A No.419「夏季休暇~年次有給休暇の計画的付与~」
18.歯科衛生士への医療安全および感染対策アンケート協力のお願い
19.「夏季休診案内」のご紹介
20.デンタルブック会員優待ご案内
21.8月会員無料相談のご案内
【5面】
22.研究会・行事ご案内
【6面】
23.退き際の思考 歯科医師をやめる/(張 紀美さん・後編)「やめることも前進の1つ」土台作りセカンドキャリアへ 医院最後の日まで地域に愛され—
24.共済部だより/共済募集キャンペーン
【7面】
25.”恒例”東京保険医美術展―最後の開催惜しむ声も
26.新規開業医講習会 今後の診療に役立つ知識向上に活用を
27.夏空写真投稿/「天まで届け」(吉田真理氏/武蔵野市)
28.会員寄稿「声」/学童時に体験した日米戦争(埜口五十雄/江戸川区)
【8面】
29.教えて!会長!! Vol.85「4月改定→6月施行後2カ月 新たな診療報酬の現状」
30.保険証の存続を求め社会保障の充実を求める決議を承認 保団連第1回代議員会を開催
31.「情報セキュリティ10大脅威2024」解説②まず「脅威」の内容を理解しましょう
32.通信員便りNo.144
【9面】
33.症例研究「初期の根面う蝕の管理と診療情報等連携共有料1」
【10面】
34.連載「マイナ保険証の〝失態〟を追う~このまま見過すことはできません~」/第5回「マイナ保険証」で歯科医院も閉院ラッシュ?!(荻原博子さん/経済ジャーナリスト)
35.理事会だより/2024年度第6回・第7回理事会
36.7月協会活動日誌
【11面】
37.神田川界隈「掌蹠膿疱症および掌蹠膿疱症性骨関節炎~患者のQOL向上に求められる医科歯科医療連携~」(理事・高山史年/豊島区)
38.暑中お見舞い名刺広告
【12面】
39.連載「オンライン資格確認義務不存在確認等請求訴訟」提訴からの進捗と展望④完/(佐藤一樹氏)第4回「東京地裁103号大法廷:裁判進捗と展望/ベア評価料やマイナ問題など議論」
40.今次改定施行後初のメディア懇談会/ベア評価料やマイナ問題など議論「閉院の後ろには患者さんがいる」
“大詰め”迎えた「オン資義務化撤回訴訟」
“大詰め”迎えた「オン資義務化撤回訴訟」
“大詰め”迎えた「オン資義務化撤回訴訟」/9月結審、 11月判決の可能性
オンライン資格確認を療養担当規則で原則義務化するのは違憲だ―として、全国の医師・歯科医師ら1,415人が、国にオンライン資格確認の義務が無効であることの確認などを求めた訴訟.
その第7回口頭弁論が7月9日、東京地方裁判所(岡田幸人裁判長/103号法廷)で開かれ、当協会理事の橋本健一氏を含む原告団17名が参加し、約60人が傍聴した。
◆国側が反論
今回は原告側の準備書面に対し、被告(国)側から「反論させていただきます」と発言があり、被告の意向が確認された。岡田裁判長は被告の準備書面の内容次第で、「可能性としては次回終結(結審)することもあり得る」と明言した。
その後の記者会見兼原告説明会では、原告側の今回の準備書面の詳細が説明された。結審に向け、焦点を①オンライン資格確認に関する事項を委任する健康保険法の規定はないこと、②改正後療養担当規則が健康保険法の委任の範囲を逸脱すること、③オンライン資格確認の義務化が原告の憲法上の権利を侵害すること―の3点に絞り、主張を展開しているという。
国側は前回の準備書面で「オンライン請求を原則義務化しているため、同様にオンライン資格確認システムに対応できる体制整備を義務付けたことで事業者の事業そのものを規制するものには当たらない」という主旨の主張をしていた。しかし、療養担当規則施行によるオンライン資格確認の義務化は2023年4月1日から、一方でオンライン請求に対応する義務は24年4月1日から施行。原告側はこの点について、前後関係の誤りがあることなどを指摘した。
弁護団の喜田村洋一弁護士は「次回、結審することはほぼ間違いない」とし、「終結から2カ月以内の判決が常識となっているので、11 月の下旬に一応の判決が出るだろう」との見通しを説明した。続けて、二関辰郎弁護士は、法廷を「埋め尽くすことができれば裁判所に対してアピールになる」と、傍聴に足を運んでほしいと呼びかけた。
◆次回口頭弁論9月19日に
なお、次回、第8回口頭弁論は9月19日㈭午前11時から東京地裁大法廷(103号)で行われる。