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東京歯科保険医新聞2026年(令和8年)1月1日号

東京歯科保険医新聞2026年(令和8年)1月1日号

こちらをクリック▶東京歯科保険医新聞2026年(令和8年)01月01日号No.670

【1面】
  1.会長年頭所感
  2.巻頭写真「冬のモルゲンロート」
  3.探針

【2面】
  4.2026年度診療報酬改定3.09% 診療報酬本体引き上げへ
  5.厚労省要請を実施/診療現場の不合理是正求める
  6.東京の損益差額は全国最低/厚労省の調査で明らかに
  7.政策委員長談話「地域医療を守るため、プラス改定の実感を得られる改定内容を求める」

【3面】
  8.第4回施設基準のための講習会を開催
  9.第1回地域医療研究会/リハビリ・栄養・口腔の連携重視を強調 患者のADLとQOL向上につなげる
10.地域医療部長談話「生活を脅かす介護保険利用者の負担割合引き上げに反対する」
11.1月の申請手続きをお忘れなく/医療機関等物価高騰緊急対策支援金(2025年4月~12月分)歯科は11.7万円
12.オン資義務化撤回訴訟/「患者の診療情報守れない」改めて訴え


【4面】
13.経営・税務相談Q&A/No.436「カルテやその他の書類などの保存期間と電子カルテとは?」
14.OTC類似薬問題で世論づくりの重要性を強調/よい歯連絡会が定期総会・記念講演
15.3年ぶりに改訂版完成 冊子「医院経営と雇用管理」
16.会員無料相談

【5面】
17.研究会・行事ご案内
18.Pick up!会員だけが購入できるオススメ書籍「歯科 カルテ記載を中心とした指導対策テキスト」/カルテ記載の不安解消

【6・7面】
19.新春対談「“声をひろう”2人の女性リーダーが見据える組織作り」(早坂美都/東京歯科保険医協会会長✕ダイアナ・コー/法政大学総長)


【8面】
20.遊歩道 第1回/2026年度改定に向け厚生労働省へ要請
21.理事会だより
22.協会活動日誌
23.共済部だより

【9面】
24.謹賀新年名刺広告
25.通信員だよりNo.156
26.デンタルブックPR

【10面】
27.臨床研究「臨床的視点と算定要件の整理~CAD/CAM冠/インレー・PEEK冠・エンドクラウン~」

【11面】
28.連載/協会探訪その⑤「会員に寄り添い協会組織をより強固に―組織部―
29.神田川界隈「大事な先生方の“声”~厚労省要請などで訴えていきます」(理事・池川裕子/葛飾区)
30.IT相談室/再考歯科医院の情報発信④-ホームページの未来像-
31.お詫びと訂正

【12面】
32.オン資トラブル終息せず/全国の実施調査で明らかに
33.会員寄稿「声」 “街に聞く”歯科医院を目指す 建築×食の視点から(須永健一)
34.2026年度診療報酬改定 新点数説明会ご案内
35.新春会員投稿「私の一枚」

第1回地域医療研究会/リハビリ・栄養・口腔の連携重視を強調 患者のADLとQOL向上につなげる

第1回地域医療研究会/リハビリ・栄養・口腔の連携重視を強調 患者のADLとQOL向上につなげる

若林秀隆氏

協会は2025年11月27日、協会会議室(WEB併用)で第1回地域医療研究会を開催した。「リハビリテーション・栄養・口腔連携の重要性」をテーマに、若林秀隆氏(東京女子医科大学病院リハビリテーション科教授・診療部長)を講師に迎え、65名が参加した。
講演の冒頭では、入院継続か在宅療養へ切り替えるかの判断には、栄養状態や嚥下、口腔状態を総合的に見る必要があり、リハビリと栄養の管理に歯科が介入することが重要であると自身の症例を交えて紹介した。
その後、低栄養の原因にアプローチすることの重要性が示され、リハビリ・栄養・口腔の三位一体の連携に基づく介入で、栄養不良による筋力低下や嚥下機能低下を防ぎ、患者のADLおよびQOLを引き上げることができるとした。診断方法としては、低栄養の診断基準である「GLIM基準※」が紹介され、「栄養スクリーニング」である「MUST」を使い、BMI、体重減少、急性疾患の有無、栄養摂取などを点数化して評価する方法も紹介した。
また、栄養管理への介入には、患者本人のベスト体重を共有し、話し合いながらゴールを設定することが大切であるとした。
誤嚥性肺炎の栄養管理では、不適切な安静臥床、禁食などの栄養管理、医原性疾患や薬剤の副作用がもたらす「医原性サルコペニア」の予防が重要であるとし、適切な評価のもとで、在宅の多職種にわたるチームが整っている場合には、早期の退院を目指すことが必要であると述べた。
◆これからの栄養は「感謝・親切・応援」が大事
最後に「これからのリハ栄養3・0」として、心理面については傾聴、共感の重要性を説き、そして時間が許す限りそばにいることで、患者のウェルビーイングが高まるとした。また、医療者のウェルビーイングも重要であり、「感謝・親切・応援」は実行した側もされた側もプラスになるエビデンスがあり、積極的な取り組みを呼びかけた。
◆デンタルブックで配信中
本研究会は現在、デンタルブックでオンデマンド配信中である。保険診療における栄養やリハビリとの連携を視野に入れた歯科治療が求められており、次年度の診療報酬改定への議論でも栄養サポートチーム等連携指導料や情報通信機器を用いたミールラウンドなどの有効性に焦点が当たっている。歯科医師が栄養の視点を持つことで患者の生活を支えることができる。ぜひ、ご視聴いただきたい。

※GLIM基準:世界の主要な臨床栄養学会が協力することにより「Global Leadership Initiative on Malnutrition (GLIM)」として提唱した新しい成人の低栄養診断基準のこと。

第4回 施設基準のための講習会を開催

第4回 施設基準のための講習会を開催

協会は20251214日、ワイム貸会議室高田馬場で「第4回施設基準のための講習会」を開催。講師は繁田雅弘氏(東京慈恵会医科大学名誉教授)、坂下英明氏(明海大学名誉教授)、馬場安彦氏(協会副会長)、森元主税氏(協会理事)の4名が務めた。

本講習会は、歯科点数表の初診料注1(歯初診)、歯科外来診療医療安全対策加算1(外安全1)、歯科外来診療感染対策加算2(外感染2)、在宅療養支援歯科診療所12(歯援診12)、口腔管理体制強化加算(口管強)の研修要件に対応した内容となっている。「歯初診・外安全1・外感染2対応コース」には12名、「歯初診・外安全1・外感染2、口管強・歯援診対応コース」には40名がそれぞれ参加した。

東京都における歯科診療所の施設基準の届出状況は、外安全144.38%、口管強は17.90%(2025111日時点)となっている。

参加した会員のアンケートからは「講習会には参加したが、研修要件以外にも算定実績の要件があり、どのように算定したらいいか分からない」などの声も寄せられており、施設基準の要件が複雑なため、届け出が進んでいない。診療報酬改定を間近に控え、施設基準の分かりづらさに困っているという声は以前から協会に寄せられている。

協会は、今後も診療報酬改定の内容を会員に分かりやすく伝えるとともに、不合理な改定内容については引き続き是正を求めていく。

オン資義務化撤回訴訟/「患者の診療情報守れない」改めて訴え

オン資義務化撤回訴訟/「患者の診療情報守れない」改めて訴え

オンライン資格確認を療養担当規則で原則義務化するのは違憲だとして、全国の医師・歯科医師が国を訴えた裁判の控訴審が始まり、第1回口頭弁論が20251126日、東京高等裁判所で行われた。控訴審にあたり、医師・歯科医師12,222人が原告となっている。控訴審では、原告団の佐藤一樹氏(東京保険医協会理事)が意見陳述を行い、一審判決が原告の主張に向き合っていないことを批判し、現状の日本における医療情報セキュリティレベルでは、患者の診療情報を守ることができないと訴えた。

その後に行われた記者・原告説明会では、弁護団が控訴理由書などを解説。一審判決では、オン資義務化の反対意見は、全国保険医団体連合会、保険医協会・医会の「特定の団体内の意見」に限られるとした。しかし、保団連は全国の医師・歯科医師の会員約107000人が加入しており、「特定の団体」と位置付けて無視できる規模ではなく、このような取り扱いは許されないことなどと説明した。

また、一橋大学大学院の只野雅人教授(憲法)、名古屋大学大学院の稲葉一将教授(行政法)による意見書も提出したことが報告された。それら意見書を踏まえて原告側は、行政機関が「法律の文言上、無理のある判断を行い、(中略)多くの保険医療機関の反対を押し切って、新たに義務を課す制度を、(法律より下位の)規則によって無理やり導入しようとしている」と主張した。

弁護団長の喜田村洋一弁護士は、専門家2名の意見書を提出できたことへの有効性を強調した上で、「国民主権のもとに法律に基づいた規則でならなければならないという考えに立った判決が下されるものと信じています」と期待を込めた。

2回口頭弁論は、2026225日(水)午前1130分から東京地裁にて行われる。

【IT相談室】再考 歯科医院の情報発信④―ホームページの近未来―

【IT相談室】再考 歯科医院の情報発信④―ホームページの近未来―

現在の検索サイトでは、例えば「歯科医院+地名」で検索した場合に、マップ表示とともに上位いくつかの数医院が表示されるローカルパック、PCでは右側に縦長に表示されるナレッジパネル、求人など特定の条件とともに検索した場合、それに応じたリストを表示するリッチリザルトなど、多くの一覧表示・要約表示があり、さらにAI検索が加わりました。

◆情報源としてのホームページ
検索サイトに表示される情報の元は、ホームページにあります。ユーザーが検索サイトに留まることで、ホームページへのアクセス数は下がりますが、集患に対する影響力は変わりません。検索者が必要な情報にダイレクトにアクセスできるように、さらにはホームページにアクセスしなくても済むように進化している時代のポイントは、シンプルさとナチュラルさだと考えています。情報源としてのホームページには、ユーザーが求める情報を集約しながら蓄積していく必要があるでしょう。
このほか、ホームページの「構造化」という手法が重要ですが、これは完全に制作者サイドの情報になるため、詳細は省きます。

◆シンプルにナチュラルに
現在の検索エンジンは、AI技術の進歩もあって進化しており、意図的・作為的なコンテンツ、特徴のないコンテンツは評価されないと、Google社から繰り返しアナウンスされています。
「予防から治療、審美・矯正・インプラントまで、なんでもできます…」というホームページになっていませんか。また、「保険も自費も急患もスムーズに受け入れます…」と表現してはいませんか。
過去にはコンテンツの多さ、長さが検索順位に影響すると考えられた時期がありました。また、制作側が医院の実態をリサーチせずにテンプレート的な提案を繰り返した結果、総花的なホームページが多数存在しています。しかし、歯科医院の過半を占める個人経営の医院のトップの方々は、自院の強みをシンプルに表現するコンテンツを作成すべきです。
次回からは、TikTokやYouTubeなどのSNSについて再考していきます。

東京の損益差額は全国最低/厚労省の調査で明らかに

東京の損益差額は全国最低/厚労省の調査で明らかに

25回医療経済実態調査の結果が20251126日、中央社会保険医療協議会(中医協)に報告された。結果からは、厳しい歯科診療所の経営状況が明らかになった。

歯科医療機関の7割を占める個人立歯科診療所の全国の状況を見ると、医業収益が対前年度比で1.9%上昇(前々年度5,121万円、前年度5,2185,000円)した一方、医業・介護費用が2.4%上昇(前々年度3,5958,000円、前年度36824000円)した。収益では労災や自費の収入が減り、保険診療が増加を示している。費用面では給与費が4.5%、委託技工料が6.5%と、それぞれ上昇し、経営を圧迫。その結果、損益差額は0.8%の伸び(前々年度15493000円、前年度15322000円)に留まった。

◆厳しい環境下にある東京の歯科医療機関

他方、東京23区の歯科医療機関では保険診療収益が1.5%上昇(前々年度47622000円、前年度48343000円)、自費収入が10.4%上昇(前々年度19341000円、前年度21357000円)したが、費用面では医業・介護費用は前年並みとなり、損益差額は43.5%上昇(前々年度520万円、前年度7463000円)した。損益差額が上昇したといっても、全ての地域(1級~7級)で最も低く、一番多い地域(5級地域17476000円)のわずか42.7%に留まった。費用面では給与費が1.8%(前々年度33458000円、前年度32869000万円)、委託技工料が9.6%低下(前々年度6378000円、前年度5764000円)、減価償却費が5.6%(前々年度3762000円、前年度3452000円)それぞれ減少した。東京では、物価高騰の中で、人件費などの経費を削減して何とか経営を維持している状況が見て取れる。

診療報酬は全体として6回連続で実質マイナス改定が続く中、設備投資が必要な施設基準が次々に導入されてきた。しかし、現場では新たな設備を導入する資金がないため、届出そのものが難しい状況だ。24年度改定では、人件費に対応したベースアップ評価料が導入されたが仕組みが複雑な上、次期改定以降も存続する保証がないため算定しづらく、算定率は伸びていない。安定した収入増が見込めないため、特に都内においては人件費を引き上げることができず、結局、人材の流出にも歯止めがかからなかった。さらに、それに追い打ちをかけるように、テナントの更新時の家賃値上げや、再開発による立ち退きを迫られる場面も散見される。オンライン資格確認も、ランニングコストは全て医療機関の負担となり経営を圧迫している。こうした状況が如実に表れた結果となった。現在でも閉院・廃業に追い込まれる歯科医療機関増加には、歯止めがかからなくなっている。

その解消のために、26年度診療報酬改定では、疲弊した歯科医療機関の経営を立て直すための大幅なプラス改定が求められる。

厚労省要請を実施/診療現場の不合理是正求める

厚労省要請を実施/診療現場の不合理是正求める

協会は2025年12月4日、26年度診療報酬改定に向け、厚生労働省保険局医療課に対し、歯科診療の現場で生じている診療報酬の運用、保険請求上の課題改善に関する要請を行った。協会からは加藤開、坪田有史、本橋昌宏の各副会長、川本弘、濱﨑啓吾、松島良次の各理事が参加し、厚労省保険局医療課課長補佐の田上真理子氏と直接意見交換を行った。
口腔機能管理における口腔機能低下症の評価項目と検査などについては、口腔機能管理料の算定要件が厳しく、検査機器の使用が必須要件であるため、算定が一向に進まない実態を指摘。また、口腔機能指導加算については、現行の歯科衛生実地指導料の加算から本体化し、時間要件を外すことを要望した。

要望書を手渡す加藤開副会長(写真右)と厚労省の田上真理子課長補佐

そのほか、SPTとP重防の運用改善、TecとCAD/CAM冠修復の適応拡大、不採算材料の調査と評価是正、歯科衛生実地指導料の対象病名の追加と歯科技工士連携加算の算定要件緩和、抗血栓療法患者の局所止血処置の評価など、多岐にわたる要望を伝えた。
協会は今後も会員の声を基に、診療報酬をはじめ必要な制度改善を関係機関に求めていく。

連載/協会探訪 その⑤ 「会員に寄り添い 協会組織をより強固に」<共済部>/東京歯科保険医協会会長 早坂 美都

連載/協会探訪 その⑤ 「会員に寄り添い 協会組織をより強固に」<共済部>/東京歯科保険医協会会長 早坂 美都

この新聞を手に取っている先生の中には「東京歯科保険医協会というのは、どんな組織だろう?」と思っている方もいらっしゃるでしょう。

今号では、会員の先生方の入退会を管理し、会員を増やすための入会勧奨などとともに、協会組織をより強固なものにするために活動している組織部を紹介します。

組織部ではさまざまな活動を行っていますが、その中から「新規開業医講習会」と「会員地区懇談会」についてご説明します。

新規開業医講習会の様子

◆約40年の歴史ある新規開業医講習会

新規開業医講習会は、1987年に初めて開催して以来、これまでに延べ4,000人以上の先生が参加した協会を代表する講習会の一つです。新規に開業する先生のために、保険医として知っておきたい保険のルールなどを、詳しくかつ丁寧に解説しています。最近では、直近1年以内に新規開業した方やこれから開業予定の方のほか、遡及開業により新規個別指導を受ける方や保険診療の流れやルール、カルテ記載などを改めて確認したいという方など、幅広い方々が参加しています。

組織部は、社保・学術部と協力してこの講習会の運営を行っています。次回は118日に開催しますので、ぜひ参加をご検討ください。

◆アットホームな雰囲気で情報交換もできる会員地区懇談会

会員地区懇談会では、指導や返戻・減点、歯科訪問診療、各種の補助金、医療連携などさまざまなテーマを題材に、協会役員と会員の先生方で懇談をしています。毎回、概ね2030人程度の参加者で、主に都内の城南地区、城東地区、多摩地区に分けて開催しています。私も以前、城南地区(品川を中心とした地域)の懇談会に参加したことがありますが、少人数でアットホームな勉強会といった雰囲気の中で、役員と会員の先生が和気あいあいと話していました。また、会員同士の情報交換の場ともなっており、大きな会場で講義を聴くのとは違う、あたたかい時間を過ごすことができます。これも、協会ならではの取り組みといえるでしょう。

毎日診療をしていると、悩みごとなどが出てくることもあることでしょう。都心で開催する研究会は会場が遠いのでなかなか参加しにくい、自分の診療所の周りにはどのような先生がいて、どのような診療をしているのかな…と、感じたことはありませんか。会員地区懇談会はそういった先生方の交流の場にもなっています。

また、コロナ禍前には「女性歯科医師交流会」も開催していました。おいしい食事を楽しみながら、仕事や趣味の話など、とても充実した時間を持つことができ、私もその時に知り合った先生方とは、長らく交流が続いています。

◆入会ご希望の方は電話かWEBBで

協会への入会動機は、新規開業や遡及開業に伴うもの、個別指導や医院経営の相談のため、共済制度利用のためなど、会員の先生によりさまざまです。協会ではニーズに合わせた会員サポートを充実させており、これらのサポートはご入会いただければ、その日からご利用いただけます。

入会ご希望の場合には電話(03-3205-2999)やWEBからお問い合わせいただければ、事務局からご連絡差し上げます。しっかりと対面で協会のことを聞きたい先生には、事務局員の訪問による説明・手続きも行っています。

保険医協会は、保険医の経営・生活と権利を守り、国民医療の向上を目的にする任意団体です。歯科保険医の要求実現と国民医療向上を目指しています。実現のためには一人でも多くの会員の力が必要です。

組織部では、未入会の先生のご入会を心よりお待ちしています。ご子息やお知り合いで、まだご入会いただいていらっしゃらない方がおられましたら、ぜひご紹介ください。

【新春対談】“声をひろう”2人の女性リーダーが見据える組織作り(法政大学 ダイアナ・コー総長×東京歯科保険医協会 早坂美都会長)

【新春対談】“声をひろう”2人の女性リーダーが見据える組織作り(法政大学 ダイアナ・コー総長×東京歯科保険医協会 早坂美都会長)

 日本で初めての女性総理が就任した2025年。時を同じくして2人の女性リーダーが一足先にその任に就いた。1人は創立142年の伝統を誇り、優れた人材を輩出し続ける法政大学のダイアナ・コー総長。もう1人は設立約半世紀の歴史で初の女性会長となった当協会の早坂美都会長。
 十数年来の関係がある2人は昨年、就任初年度の慌ただしさの中、それぞれの組織の進化、発展に向け奔走した。そして、就任2年目となる2026年、2人はその視線の先に何を見据えるのか。今回はコー総長、早坂会長による新春特別対談の模様をお届けする。

■互いに尊敬し合う間柄

―2人の出会い

早坂:16年前、知り合いのつながりで初めてコー先生にお会いした時に、「笑顔が明るい素敵な方」というのが第一印象でした。

コー:共通の知人から「信頼できる方」と聞かされて、早坂先生にお会いしました。それ以来、歯科医師と学者という関係以上の学び合う関係が築けていると思います。

早坂:2025年3月頃に、総長になったことを聞き、とても驚きました。私自身もその時期は、会長に立候補すべきかどうか思いを巡らせていた時期でした。総長就任の知らせとコー先生が「風景が変わりますよ」と言ってくれたことが、私の背中を後押ししてくれました。

コー:それは嬉しいですね。私自身も早坂先生のように働く女性の頑張っている姿に共感しています。学部長やグローバル教育センター長としてグローバル化やDEI*の推進に取り組んできましたが、それが与える影響には組織的な限界を感じていました。大学全体でこれらの取り組みを進めたいとの思いから、総長より指名を受けて常務理事・副学長をお引き受けしましたが、その後もなお、大学全体を動かす力の限界を実感し、これまで大学から受けてきたご恩に報いたいという思いも重なり、総長として取り組みを発展させたいと考え立候補を決意しましたが、立候補する前は、重圧から3週間ほど寝られない日々が続きました。その中では、本学で初の女性総長だった田中優子先生にも相談しました。私は大変な部分にばかり目を向けていましたが、繋がりが増えたり、学びが多くなったり、得るものもたくさんあることがよく分かり、大きな一歩を踏み出す決意をしました。
*=Diversity(多様性)、Equity(公平性)、Inclusion(包括性)の頭文字を取ったもの。

■キャリアで直面した壁

―これまでのキャリアの苦労

コー:日本の大学組織で女性、しかも外国出身という立場でリーダーシップを取っていくことは簡単ではありません。常務理事になった際にも男性中心の組織でどのように物事を進めていくかが全く分かりませんでした。また、私にとって日本語は第三言語なので、自由に使えない部分もあり、当初は総長としてやっていけるかどうか不安を感じていました。実際に何か発言しても、理解してもらえていないか無視されていると感じる場面もありましたし、制度や文化の壁に直面して、会議が終わった後に涙が出てくることがありました。ただ、ある時、本学の卒業生から「法政大学を通じて社会を良くしてください」と言われ、これが大きな気付きとなり、今でもモチベーションになっています。

早坂:トップに立つ“孤独感”はよく分かりますね。また、私も女性として妊娠、出産、育児と、キャリアを歩む上では苦しい場面もあり、悔しい思いをすることも多々ありました。それでも「必ず時代は変わる。新しい命を宿した人間が悲しい思いをしないでキャリアをつなぐことができる時代が必ず来る」という思いが原動力となり、ここまで歩んできました。

コー:早坂先生の経験は、今の若い世代の女性たちにも必ず伝わりますし、共感されるものだと思います。早坂先生のような方がいることで、今、多くの女性歯科医師が働きやすくなる社会に少しずつ変化していることでしょう。日本のジェンダーギャップ指数は世界的に見ても低い数値です。この問題は、私の専門領域でもあるので、本来であれば系統的に考えて政策を提言していくのですが、なかなか改善が見込まれない現状ですので、とにかくできることからやっていかなければと感じています。それは、女性教員が24%に留まる本学でも同じことが言えます。さまざまな課題を解決するには、教職員の力を合わせてチームとして対応しなければなりませんが、根本的には現状に対する危機感を共有し、教職員一人ひとりが当事者として関わっていただくことが重要だと考えています。また、組織の中の部局間の壁を越えて連携していくことも鍵だと考えます。

早坂:ジェンダーギャップについて、より具体的にどのような課題から解消していけば良いのでしょうか。

コー:まずは、どの分野でも管理職をはじめとする女性の人数を増やすことが重要でしょう。男性中心の社会では、「働く人のモデル」がどうしても、家事や子育てをしない、仕事中心の男性像になってしまいます。そこでは女性に限らず、現代の若い男性までもが、「働く人のモデル」に合わせることができず、組織に居続けることができないのです。生き方の多様性を追求していくことが大切だと思います。

■多様性と「声を聞く」文化

―組織のトップとして

早坂:会長として意識しているのは、会員の“生の声”を拾うことです。声なき声、サイレントマジョリティの意見をどのように汲み取るのかも大切なことです。あらゆる課題について、1つの答えでまとめないことが大切だと考えています。

コー:大学でも同じような課題があります。教職員や学生のニーズは多様で、時には相反する意見もあります。一人ひとりの声を丁寧に拾い、決して置き去りにしない文化を作ることが、結果的には組織の強さにつながると実感しています。

■制度改革は「できるところから」

―“一人ひとりの声を大切にする”組織づくりで大事なこと

コー:最初から完璧を目指すのではなく、まずはできるところから積み上げることが大切だと考えています。制度だけ作っても、人の意識が変わらなければ機能することはありません。だから「制度」と「人」を同時にアップデートしていくことが重要です。これはどのような組織にも共通することではないでしょうか。

早坂:歯科医院は特に小規模な組織が多いので、従業員が1人休むとたちまち業務が回らなくなるという状況は珍しくありません。それでも産休、育休などを取得できる環境を整えて、周囲もそれを支えなければいけません。

コー:結局は「周囲が支える文化」を創り出せるかどうかが重要だと思います。“女性だから”“男性だから”ではなく、誰かの人生の重要なタイミングを支え合える職場。それを作るには、小さな改善の積み重ねが不可欠です。

■若き女性研究者・歯科医師を目指す人へ

コー:自分に制限をかけずに、挑戦し続けることを大切にしてほしいと思います。すぐに成果が出なくても、そのプロセスは必ず自分の糧になります。恐れず一歩を踏み出せば、必ず新しい世界が見えてきます。

早坂:今は歯科大学で女子学生が半数を超える時代です。“女性だから”という理由で遠慮したり諦めたりする必要はありません。皆さんの力で歯科医療界の未来を作ってほしいと思います。私たちの世代は、そのための環境作りを進めていく責任があります。

―2026年の目標を

コー:本学がグローバルに開かれて、「多様性・包摂性・公平性」を実践する大学として、さらに社会から認められるようにしたいと思っています。その姿勢が社会にも良い影響を与えられればと願っています。

早坂:今、歯科医療の世界は転換期にあります。女性の割合が増え、価値観も働き方も多様化しています。誰もが公平に、そして誇りを持って働ける歯科医療界にしたい。そのために協会としてできることを一つずつ実行していく、そんな1年にしたいと思っています。

■おわりに―
 対談から見えてきた、2人の女性リーダーが語る“人”を中心に据えた組織作り。現場の声を汲み取り、相互に支え合うことができる組織風土をどのように育てることができるか。2026年、教育と歯科医療の両分野で、2人がどのような変革をもたらすのか、大きな期待が寄せられている。

▼紙面で見る(「東京歯科保険医新聞」2026年1月号6-7面)

▼過去のインタビューを見る

Profile

Diana Khor(ダイアナ・コー)/1983年香港大学社会学科卒業、1985年同大学院社会学研究科修士課程修了、1987年スタンフォード大学大学院社会学研究科修士課程修了、1994年同大学院社会学研究科博士課程修了。1999年より法政大学第一教養部専任講師に着任し、2005年に法学部教授。副学長・常務理事を歴任し、2025年3月より法政大学総長に就任。

【2026・年頭所感】歯科の重要性が深く認識されている今こそ(会長/早坂美都)

【2026・年頭所感】歯科の重要性が深く認識されている今こそ(会長/早坂美都)

明けましておめでとうございます。

会員の先生方におかれましては、2026年の新春を新たな気持ちでお迎えのこととお慶び申し上げます。また、日頃より東京歯科保険医協会の活動に対してご理解、ご協力を賜り、心より御礼申し上げます。

 保険で安心して、きちんとした診療ができるようにしよう

1973年4月に協会が設立されて以来、長く受け継がれてきた言葉です。以後、協会は歯科医療を通して都民、そして国民の皆さまの歯と口腔の健康のため、さらに何よりもその担い手であります歯科保険医の先生方の生活を守るために活動して参りました。

歯科医療は、人生の最期の日まで「自分の口でおいしく食べることができるようにすること」を目指しています。そのことは、年齢を重ねても健康で過ごせること、すなわち「健康長寿社会の実現」に貢献することでもあります。最近では、「口腔内の環境が全身疾患に大きく影響すること」が広く知られ、歯科の重要性に対する理解が深まりつつあります。歯科医療を正しく理解していただける時代に差しかかっていると言えるのではないでしょうか。

しかしながら、その歯科医療界にも数年来続く物価高騰、人手不足の波が押し寄せ、歯科医院経営に大きな影を落としており、このままでは国民の口腔内を守り続けることができません。

こうした状況を受け、昨年は「基本診療料を中心に、診療報酬の期中改定や、国の責任による国の補助金等での緊急財政措置を早急に行うこと」「2026年度診療報酬改定で、基本診療料を中心に少なくとも10%以上の大幅な引き上げを行うこと」「患者窓口負担を軽減すること」などを掲げ、会員の先生方の貴重な声が記された請願署名、要請署名を厚生労働委員会の国会議員一人ひとりに手渡しました。保険診療は国会での審議、承認が必要な国の予算、つまり国政に直結していますので、国会議員の歯科への理解を深めるため、また、今年施行となる診療報酬の改善につなげるためにも地道な活動が大切です。2026年度診療報酬改定にあたっては、今回も協会は『新点数説明会』を45月にかけて計3回開催いたします。新たな診療報酬を理解すべく、ぜひ、会場に足をお運びください。

また、健康保険証廃止によるトラブルが後を絶ちません。さらに、少子高齢化が急速に進み、医療技術の進展に伴う医療コストの急増なども重なり、1961年から60年以上続く国民皆保険制度を揺るがしかねない事態が続いています。国民皆保険制度は、国民の誰もがいつでも、全国どこでも公的保険によって一定の負担でカバーされた医療を受けることができるという、諸外国に類を見ない素晴らしいものです。質が保たれた医療を安心して受けられる環境維持のためにも、この制度を守らなければいけません。

協会は、患者、国民が安心して医療を受けられるよう、そして歯科医療機関が混乱なく患者を受け入れられるように、まずは資格確認書の全員交付を求めて、東京都知事と都内51自治体の首長に要望書を持参・送付しました。私も保団連関東ブロックの会長・理事長と共に新宿駅前で街頭宣伝を行い、多くの方々から署名をいただきました。今後も都民の方々に向けて、歯科治療と健康の重要性を理解していただくために幅広く活動していきます。

「食べることは生きること」です。協会は、6,043名(202512月時点)の会員の先生方に支えられながら、都民、そして国民の皆さまがより一層安心して歯科医療を受けることができるよう、さらなる努力を続けて参ります。今後ともご理解とご協力、ご鞭撻のほど、よろしくお願い申し上げます。

東京歯科保険医協会会長 早坂 美都(2026年 年頭所感)

新春寄稿「私の一枚」

新春寄稿「私の一枚」

「東京歯科保険医新聞」2026年1月号に掲載した会員からの写真投稿を以下の通り、ご紹介させていただきます。ご応募いただき、誠にありがとうございました。

厳冬のモルゲンロート(早坂 美都 先生/世田谷区)

昨年の年始、マイナス15度ほどの時に撮影した八ヶ岳のモルゲンロートです。初日の出が山肌に映えるシーンを捉えた1枚。「モルゲンロート」とは、早朝に昇り始めた太陽の光に照らされて山肌が赤く染まる現象を指す登山用語です。語源はドイツ語で、「モルゲン(Morgen)」は「朝」、「ロート(rot)」は「赤い」という意味になります。

水平線から昇る日の出(坪田 有史 先生/文京区)

五島列島の小値賀島を4時50分に出航して福江島までの移動で乗船した太古定期フェリーからみた日の出。

 

ハワイ島 マウナケア山頂から(伊藤 愛子 先生/世田谷区)

夏休みに標高4,205mの山頂までレンタカーで登って撮影。一番左がすばる望遠鏡。

 

中央アルプスの雪解け(吉田 真理 先生/武蔵野市)

機窓から撮った中央アルプスです。まもなく雪が解け動植物が生命を謳歌するようになります。

 

そうふ岩(下田 祐里江 先生/大田区)

東京から約600km南に位置するアホウドリの生息地の鳥島の先にある、高さ100mの突岩。

魔女の瞳(川本 弘 先生/足立区)


場所は福島県の五色沼。一切経山から見下ろした絵です。通称”魔女の瞳”と呼ばれています。