「保険で安心してきちんとした診療ができるようにしよう」

2018年診療報酬改定対策 グループ生命保険 加入者特典 デンタルブック 新型コロナウイルス感染症関連情報 慰労金、感染拡大防止等支援金の申請方法

映画紹介№34「手紙は覚えている/ Remember」 【2015年カナダ・ドイツ製作/アトム・エゴヤン監督】

2017年 6月 1日 : コミュニケーション広場, 映画紹介

映画紹介№34「手紙は覚えている/ Remember」 【2015年カナダ・ドイツ製作/アトム・エゴヤン監督】

「覚えているか?君が決行すると言ったことを」
「君が覚えていられるように、ここに書き出しておいた」
 認知症の高齢者が物忘れを補うために、物の名前などメモしておくことは日常、よく行われます。
 この映画は、誰かが「あなたはこの名前でこんな生い立ちだ」と誘導すれば、認知症の高齢者などはその人物になりきってしまうという乱暴な仮説をもとに展開するサスペンス作品です。
 主人公セヴは老人ホームに入居する90歳の高齢者。急に認知症が進行し、目を覚ますと眠る前のできごとをすっかり忘れ、ただオロオロしている老人です。
 同じ入居者の老人マックスから一通の手紙を受け取ります。手紙には、君も私もナチス親衛隊員に家族を殺されたアウシュビッツの収容所の生存者だ。敗戦間近に親衛隊員の収容所ブロックの責任者がユダヤ人になりすまし、戦後、アメリカへ移住し、ルディー・コランダーという名に変えて生きている。今、その名に該当する男は四人いるが、本名はオットー・ヴァリッシュだ。自分は脳梗塞で車椅子生活なので、体を動かせる君に、この男を探して復讐して欲しい…。と記されています。
 この1通の手紙とまだらな記憶だけを頼りに、まるで徘徊するように、よぼよぼのセヴ老人は、この男の暗殺の旅に出かけます。

口径22ミリのデリンジャーを購入し、移動…


 手紙には、クリーブランドに行き、翌朝は迎えに来た車に乗り、銃砲店で老人でも扱える軽い口径22ミリの拳銃を手に入れ、ホテルに泊まれと書いてありました。
 1人目の男も2人目の男も人違いで、3人目の男はすでに他界し、これも人違いでした。
 そして4人目の男。その男は、ソルトレークの湖の近くに住んでいました。
 男を待つ間、セブが居間にあったグランドピアノで得意の「ワグナー」を弾いていると
「ユダヤ人ならワーグナーは好まんだろう」と男が現れます。セブはその声に覚えがありました。
「いつか、君が来ると思っていた」
「私はナチの親衛隊員で、アウシュビッツのブロック責任者、クニベルト・シュトルムだ」
「違う、あんたはオットー・ヴァリッシュだ」
「何を言ってるんだ。君がオットー・ヴァリッシュじゃないか」
「 ともにアウシュビッツのブロック責任者だった」
「腕を見てみろ。君の番号は98814だ」
「私は98813だ」
「戦後、逃亡するために互いに彫ったんだ」
「忘れたのか。 君はセブと名前を変えたんだよ」
 すべてを悟り、絶望したセブは男を撃ち、そして自分の頭に銃口を向け、引き金を引きます。
 老人ホームに入居したセブが、実は、正真正銘のオットー・ヴァリッシュだとマックスは気付いていました。
 認知症がひどくなり、記憶が曖昧になってきたセブに偽の記憶の手紙を渡し、二人をまとめて、葬ろうと謀ったのです。
 スクリーンには、サウンド・オブ・ミュージックのトラップ大佐を演じたクリストファー・プラマーをはじめ、超ベテラン俳優が顔を揃えます。最近、これほど面白い認知症サスペンス映画はみたことがありません。
(協会理事/竹田正史)

詳しく読む

映画紹介№33「Ex Machina/エクス・マキナ」 【2015年英国製作/アレックス・ガーランド監督・作品】

2017年 4月 3日 : コミュニケーション広場, 映画紹介

映画紹介№33「Ex Machina/エクス・マキナ」 【2015年英国製作/アレックス・ガーランド監督・作品】

 「私は不良品として破棄さ
  れるの?」
 「あなと一緒にいたいわ」
2016年、グーグルのAI「Alpha GO」がプロ棋士に圧勝。人間がAIに負け、スマホが進化し、技術への不安や恐れが私たちの心や生活に深く潜むようになってきました。
映画は人工知能や検索エンジンによるビッグデータを利用し、人間を超えた人工知能AIとそれを作り出す天才プログラマーの葛藤を、今を舞台にして描くサスペンス作品です。
13歳の時にブルーブックのプログラムを書き、グーグルやアップルのような検索エンジンの会社を創業した天才プログラマーは山岳地帯の中の研究施設に引きこもり、人間を超える知能と感覚と体を合わせ持つAIロボット「エヴァ」を秘密裏に完成させていました。
人工知能が人間と同等以上であると判定されるには誰かにチューリングテストをやってもらう必要があります。「ロボットだと分っていても、人間として感じてしまうかどうかを見極めたい…」というのが天才プログラマーの願望でした。
映画は、その任務を負う若い男性が研究所に1週間、泊まり込むところから始まります。
AIロボット「エヴァ」は機械と分かるように手足は配線や構造が丸見えのスケルトンに作られています。
若者はエヴァの美しさと人間らしいしぐさ、振る舞い、知性に驚き、その不気味さに次第に惹かれていくようになります。
「ここでエヴァを作った」
「AIが人の表情読み取り真似できるようにした」
「私は地球上の携帯電話をすべてハッキングし」
 「数限りない声と表情のサンプルを集めた」
 「これが彼女の脳だ」
 プログラマーはいくつもの試作品を指さしながら、
 「脳は電子回路を使わないでジェル状になっている」
 「記憶を有効に貯蔵し、思考を形成できる」
 「流動性ハードウェアだ」
 「人間の思考形態は検索エンジンそのものだ」
「ソフト ウェアはブルーブックだ」
エヴァは「あなたも私と一緒にいたい?」と若者を誘惑してきます。
「僕に恋するように設定をしたのですか?」
 「恋するように、設定してある」
 「彼女は君が最初の男だ」
 「なぜエヴァを作った?」
 「人工頭脳の到来は避けられない」
 「エヴァの誕生は進化だ」
 「いつかAIは人間を原始人のように見なすだろう」
 「やがて人間が絶滅する時が来るかもしれない」
エヴァは想像力や性的誘惑を使い、若者の恋心を利用し従順さを装い、自分を作ったプログラマーを殺害し、全身を人工皮膚で覆い、施設を脱出し、人間として街の雑踏の中に消えていきます。
人間と機械の境界線が曖昧になり、この映画を観た後は、知らぬ間に街に人間の姿を装った元AIが紛れ込んでいるかもしれないと思うようになりました。
タイトルの「エクス・マキナ」の「エクス」は元カレの「元」。「元マシン」という意味だそうです。第88回アカデミー賞で、視覚効果賞を獲得しました。
(協会理事/竹田正史)

本年6月に日本で初めて開催される「AI・人工知能EXPO」。日本ばかりでなく世界の最新の製品、技術が一堂に会す。

詳しく読む

映画紹介№32「ルーム~ROOM~」 【2015年カナダ・アイルランド製作/レニー・エイブラハムソン監督・作品】

2017年 2月 2日 : コミュニケーション広場, 映画紹介

映画紹介№32「ルーム~ROOM~」

 「ママは17歳の時に学校の帰りに誘拐され」

「7年間、監禁されている」

映画はオーストリアのフリッツル監禁事件を基に描いた小説「部屋」を原作としたヒューマンドラマです。事件は、実の娘が18歳から24年間、父親に地下室に監禁され、肉体的、性的な暴力を受け、7人の子どもを出産。2008年に救出されたというものです。

「ぼく5歳になったよ。もう大きいよ」

映画は、監禁されている部屋で子ども産み、その子どもが五歳の誕生日を迎えたところから始まります。部屋にはトイレ、浴室、調理台、ベッド、クローゼットなど最低限の設備だけが用意されています。

「部屋の外は宇宙空間。TVの惑星と天国があるの」

「外に出ると死んでしまう」

子どもには母親だけがこの世界の住人だと教えてきましたが、もうごまかせない年齢になってきました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

外の世界を知らず、小さな暗い部屋で母親とTVの映像しか知りません。

「ドアの前で待つだけじゃ何も起こらない」

不思議の国のアリスの言葉に触発されて、逃げ出すことを決意します。

「あいつをだますの」

「モンテクリスト伯の脱出を真似するわ」

「死んだふりをするの」

「あいつは捨てる場所を探すわ。その前にトラックから転がって逃げ出す」

「そして最初に見た人に助けて!と叫ぶ」

そして脱出後、母子の世界は一変し、両親の離婚などの現実の変化に困惑し、新たな苦悩と再出発の日々が始まりました。

光に弱い目、弱い肌、雑菌免疫力低下のために、サングラス、日焼け止め、マスクを着用します。初めてのパンケーキ、初めての階段の昇り降りのリハも始まります。しかし、脱出して10日経っても、父親は犯人の産ませた子どもをまともに見ようとしません。押しかけるマスコミ、生活費のことなど想定していなかった問題が噴出してきます。

「ハッピーなはずなのに」

「ママは私の頭の中を知らない」

「ママが他人にはいつも優しくっていうから、あいつの犬を見に行ったのよ」

「どんな目で私を見る の?」

と、老いた母親を責めてしまいます。

マスコミは「子どもが大きくなった時、父親についてどう説明しますか」と質問してきます。

「部屋に帰ろうよ」

子どもが監禁されていた部屋を見たいといいます。

「これがあの部屋なの?」

「さようならイスさン、テーブルさん、ベッドさん」

「ママもお別れしてよ」

切ない心の高まりが流れる音楽でさらに高まります。

監禁ものの映画には、犯人の性格描写を克明に描いた映画「コレクター」などがありますが、この映画は脱出後の被害者の母子の苦悩、葛藤を描き、リハビリ、社会復帰を中心に人間の尊さを暖かく見つめます。

幸運を祈るお守りに、ママの抜けた歯を子どもが大事にしているのも面白いです。子どもの愛くるしい名演技に涙してしまいます。この作品で、主演女優のブリー・ラーソンは、アカデミー主演女優賞をとりました。

(協会理事/竹田正史)

詳しく読む

映画紹介№31「アリスのままで~Still Alice 」 【2014年米国/リチャード・クラッツァー監督・作品】

2016年 12月 5日 : 映画紹介

映画紹介№31「アリスのままで~Still Alice  」 【2014年米国/リチャード・クラッツァー監督・作品】

「細胞が死んで」
「何もかも消えていくのを」
「今も感じるわ」
映画は治すことはおろか、進行さえ止めることができず、急速に記憶が壊れていく遺伝性若年性アルツハイマーの患者が、喪失と向き合う恐ろしい日々をリアルに描いたヒューマン・ドラマで、認知症の教科書のような映画です。
50歳の患者アリスは、コロンビア大学の聡明な言語学教授。夫も医学部の教授で、医大に通う息子と法科を卒業した長女と気がかりな末娘の3人の子どもに恵まれています。
「名前と住所をいうので繰り返してください」
「ジョンブラック、ワシン トン通り2丁目」
「今日は何日? ここはど こ? 水のスペルは?」

精神科医に立て続けにいくつか質問を受けた後、最初の質問に戻ると、答えられません。 短期記憶障害、MRI、PET検査の結果から、遺伝性若年性アルツハイマーと診断されます。
「アミロイド値が高く、子どもにも遺伝しますよ」
病態は急速に進み、人との約束も忘れ、見知ったキャンパスでも道に迷ってしまいます。
病態が進んだ時、自分が自分でいられるには自殺するしかないと、きつい睡眠薬ロヒプノール錠を手に入れ、自分に向けたビデオレター・ファイルを作成します。
「長女の名前は?」
「住んでる場所は?」
「誕生日は?」
この質問に1つでも答えられなくなったら、バタフライと名付けたフォルダーを開いてと呼びかけます。
病状は加速し、トイレは見つからず失禁、1カ月前を昨日と勘違い、意識は明瞭な日が少なく、曇ったまま、子ども時代に戻ったような毎日が訪れ、長女の名前も忘れてしまいます。アリスのすべての記憶がなくなる日は、刻一刻と近づいてきました。
ある日、わけもなくパソコンに触っていると、自殺を指示するビデオ・レターをクリックしてしまいます。
「はい、アリス、私よ」
「大事な話があるの」
「質問に答えられなくな っ たのね」
「あなたの人生は悲劇じゃ ないわ」
「輝かしいキャリア」
「恵まれた結婚」
「素晴らしい三人の子ども に恵まれたわ」
「1人だと確認して寝室 に行って!」
「寝室にはランプの乗っ た棚があるわ」
「1番上の引き出しの奥 に錠剤の入ったビンがあ るの」
「ビンには、水で全部飲 めと書いてあるわ」
「たくさん入っているけ ど、必ず全部飲んで」
「そしたら横になって寝 るの」
自分が自分でいられるため、過去の自分が語りかけるように実行を促します。
コップに水を入れ、錠剤が手のひらに移った時、誰かが入ってくる物音に驚き、錠剤は床にこぼれ落ちてしまいます。
「私がママの面倒みるわ」と、アリスが1番気にかけていた末の娘が帰ってきました。
人間ってなあに?記憶だけが人間?…。次から次に難解な問いを投げかけてくる恐ろしい映画です。
ジュリアン・ムーアの力のあふれる演技は第87回アカデミー賞で主演女優賞を獲得しました。監督自身もALS筋萎縮性側索硬化症を持病とし、2015年3月に亡くなり、彼の遺作となった映画だそうです。
 (協会理事/竹田正史)

詳しく読む

映画紹介№30「いしゃ先生 」 【2015年日本作品/永江次郎監督・作品】

2016年 9月 28日 : 映画紹介

映画紹介№30「いしゃ先生 」

【2015年日本作品/永江次郎監督・作品】

「この村さ戻って 診療所やってくれないか」

「こんな見習いの身で 診療所の医者なんかできない」

映画は、東京女子医学専門学校を卒業し、無医村の故郷の医療に尽力した新米女医、志田周子(しだ・ちかこ)のものがたりです。

舞台は戦前戦後の日本の動乱期から混乱期。山形・左沢(あてらざわ)から峠を越したところにある山間のへき地、大井沢村(現・西川町)です。冬には雪が3メートルも積もり、周りから閉ざされてしまう山形屈指の豪雪地域です。

当時は車も電話もなく、手紙が唯一の通信手段。急な連絡は、電報という時代でした。村人が医療を受けるには、患者をそりに乗せ、数十キロもの峠を越え、左沢の病院に運ばねばなりませんでした。

_P0A3294

 

 

 

 

 

 

 

 

 

映画は昭和10年、父から「スグカエレ」の電報を受け取って、美しい紅葉の故郷、大井沢村に周子が帰って来るところから始まります。

小学校からは「♪ウサギ追いし/かの山~」の唱歌が聞こえ、教室の後ろの壁には、この映画の主題でもある「希望」や「道」と書かれた子どもたちの習字が何枚も貼り付けられています。

無医村の大井沢村に医師を置きたいと願う父は、代わりの者を見つけるまで3年間、村の医者をしてほしいと周子に頼みます。

周子は26歳で医者になったばかりで、未熟な自分に診療所の医師が務まるはずがないと不安だったが、父を思い、無謀な頼みに「三年間だけなら…」と、屈してしまいます。

しかし開業したにもかかわらず、診療所には当日も、次の日も、また次の日も村人はやってきません。

「あれが噂の女医者だっちゃ」

「いっちょ前でない医者に誰が命預けられるか」

「お金いっぱい請求されるとな」

悪い噂が飛び散り、村人と打ち解けることができない日々の中、死ぬかもしれない病人がいると聞いて訪問するものの、

「帰ってけろ」

「カネないからな」

門前払いを喰ってしまいます。あるいは、

「肺結核の疑いがあります」

「心配ねえ ただの風邪だ二、三日寝てれば治る」

そんな折、心臓発作を起こした第1号の患者が駆け込んで来ました。

「助けてけろ」

「ヨシさん!聞こえますか?」

蘇生させようと何度も何度も胸に拳を叩きつけますが、ちっとも反応がありません。

「ダメか」と諦めかけたその時、ヨシさんは息を吹き返しました。

それもつかの間、今度は

「これは盲腸炎です」

「すぐに左沢の病院へ」

その夜、雪の中、10人の男たちが箱そりで峠を越える途中で、患者は手遅れで死んでしまいました。

その後も、産婦人科の知識不足、自分の母の命さえ救えなかったことも加わり、なかなか村民にはその技量、思いを認めてもらえませんでした。

3年経って、村人の医療への偏見や拒絶、両親の死と降りかかる試練を乗り越え、恋人とも決別し、この地に生涯とどまる決断をします。

「私の夢は、誰でも医者にかかれる日がくることです」

「命だけは平等だと思うからです」

昭和36年4月1日、国民皆保険が制定されました。志田周子は翌37年1月、それを見届けるかのように天国へ旅立ちました。凛とした主演の平山あやが美しい。

                              (協会理事/竹田正史)

詳しく読む

映画紹介№29「 あ ん 」 【2015年日・独・仏合作/河瀨直美監督作品】

2016年 8月 30日 : 映画紹介

映画紹介№29「 あ ん 」

【2015年日・独・仏合作/河瀨直美監督作品】

「このアルバイト募集」

「本当に年齢不問なの?」

映画は、13歳のころ軽いハンセン病を患い、そのまま60年も療養所に強制収容されてきた老女が、76歳にして初めて外の世界に挑み、働く、生きる、自由とはどんなこと?と、人間の大事な重い課題に触れる感動のドラマです。

療養所から出ることを夢見ている76歳の徳江さん、刑務所から自由になったものの借金の返済に追われているどら焼き屋の店長さん、母親ひとり親家庭の15歳の少女。籠から逃げたい黄色いカナリヤ。そして花満開の桜、葉桜、紅葉と移り変わる美しい季節が、この物語を紐解くキーとなります。垣根の外に出られないと、わかった時の苦しそうな眼差し。それが3人に共通する眼差しです。

%e5%85%a8%e7%94%9f%e5%9c%9220160814_164614

 

 

 

 

 

 

 

 

 

映画は店長がマンションの屋上から、この映画の舞台となる桜の花が満開の早朝の街並みを、タバコを片手に見渡しているところから始まります。

葉桜に変わった頃のある日、アルバイト募集の張り紙を見て店先に老婆が現れます。

「おいくつですか?」

「満で76歳」

「その歳では、無理だと思うんで…」

店長はやんわりと断わってしまいます。しかし、夕方に、また老婆が現れます。

「さっきもらったどら焼き食べてみたの」

「皮はまあまあだと思うのよ。ただ、あんがね…」

「あん 作ったことあるんですか?」

「ずっと作ってきたの」

こうしてハンセン病の後遺症で指が曲がって不自由な手の徳江がどら焼き屋で働くことになります。

徳江の作るあんは大評判。店の前に行列ができるほどになります。しかし、いいことはそう長くは続かず

「徳江さん ハンセン病じゃないかって」

「どこに住んでいるの?」

「人に知られたら、この店終わりよ」

案の定、徳江がハンセン病を患っていたことが近所に知れ渡り、客足は一気に遠のいてしまいます。

「こちらに非がないつもりで生きていても」

「世間の無理解に潰されてしまうことがあります」

ハンセン病は非結核性抗酸菌の一種で、らい菌が皮膚のマクロファージ内や抹消神経細胞内寄生によって引き起こされる感染症です。感染経路は経鼻、経気道。感染力は非常に弱く、2007年の統計によると、日本では年間0か1人で皆無に近い状況です。

1996年にらい予防法は廃止されましたが、断種、堕胎という人権蹂躙、入所時には持ち物を奪われ、名前さえも奪われたそうです。

ハンセン病の歴史は古く、紀元前後の時代を背景にした映画「ベンハー」では「死の谷」にたむろする患者、宮崎駿の「もののけ姫」松本清張の「砂の器」でも話題になりました。

現代のHIV感染症なども含めて、感染症医療は差別の温床になりかねず、取り組みや啓蒙には細心の注意が必要です。

映画はカンヌ映画祭をはじめ、多くの映画祭で賞を獲得しました。老女を演じるのは樹木希林。差別や偏見に抗うのはとても難しく、胸が苦しくなります。

「あっ、鳥だ!」

「鳥は自由でいいなあ」

「わたしも陽の当たる社会で生きたい」 

(協会理事/竹田正史)

詳しく読む