歯科医院への受診抑制にもつながる高齢者負担増めぐり議員要請
2月23日、協会は「高齢者の負担増反対」「保険でよい歯科医療を実現するためにも医療費の拡大を!」との要請を国会議員に行った。橋本健一理事と山本道枝顧問が参加した。
この日の要請は、自民党の石井みどり参議院議員、民進党の牧山ひろえ参議院議員、共産党の倉林明子、田村智子、宮本徹の各衆議院議員と小池晃参議院議員に対して行った。
役員からは、「負担増により高齢者が歯科医院に来られなくなる」「安心して受診してもらうには3割の自己負担はあまりにも高い」「寝たきりになると食べることは最後の楽しみ。きちんと治療を行いたい」と訴えた。
倉林議員は「お金の心配をして医療を受けられない人がいる。何とかしないといけない」と語り、また、宮本議員は「昨年、歯科の受診抑制の質問を行ったことがある。負担引き上げは大問題」と歯科への関心の高さを示唆する話を伺った。
協会ニュース
医団連が国会内集会「誰もが安心の医療を」を開催
医団連が国会内集会「誰もが安心の医療を」を開催
2月23日、医療団体連絡会議(医団連)がスローガンに「誰もが安心の医療を」を掲げる国会内集会が、参院議員会館講堂で開催された。サブテーマを「今こそ、ストップ!患者負担増 診療報酬・介護報酬の大幅引き上げ」とし、全国から約150名が参加。国会議員も10名が参加したほか、マスコミの取材に3社が訪れた。
議員の挨拶の中では、民進党の大島九州男参議院議員が「患者の立場がない。医療のあり方が問われるべき」と指摘し、この集会の趣旨に賛同する意思を伝えた。また、共産党の堀内照文衆議院議員は「ギリギリの生活をしているのに、さらに患者負担が増えるのでは、本当に生活ができなくなる」と強調。続いて民進党の升田世喜男衆議院議員が「身近な問題として実感していることばかり。医療・介護は生活に大きな影響を与える。ここが確保できなくて未来は語れない。真剣な議論が必要」と訴えた。
集会での議論を総括する形で、保団連の住江憲勇会長が挨拶し、司法・行政・立法の三権分立が崩壊し、周囲から意見のないまま総理の意向で物事が進み、マスコミも内容を選択して報道するという状況の危険性を指摘し、「議論が深まらず進展しない非常に危険な社会になっている」と訴えた。
クイズチラシ当選者にダイソン届ける!!
クイズチラシ当選者にダイソン届ける!!
クイズチラシ「クイズで考える私たちの医療」の1等「ダイソンファンヒーター」3本のうち1本が、当協会の会員診療所から応募した患者さんが見事に当選しました。応募総数約4万件の中からの当選。
そこで、本日2月15日午後、協会から直接診療所で待つ患者さんにファンヒーターをお届けした。「まさか当たるとは…」と喜びの声をいただきました。
次回クイズチラシキャンペーンの際は、患者さん、先生、スタッフの方…。ぜひとも皆さんでご応募ください。

歯科医療点描⑱完 1人の歯科医師では限界の時代/グループ開業制の可能性について
1人の歯科医師では限界の時代/グループ開業制の可能性について
毎月のこのシリーズも今回が最後になりました。最終回らしく、私が常に考えていることで、先生方にとっては抵抗感がありそうな話題に触れたいと思います。
それは個人開業制、自由開業制です。日本では医師や歯科医師は誰でも自由に診療所を開設できます。先生方にとってはそれが日本の長所でしょうが、患者側からいえば問題があります。
それは、「一人の医師、歯科医師の診療には限界がある」ということです。私が医療記事を書き始めたのは一九六八年ですが、この間の医療技術の発展、進歩は想像以上です。自分の専門とする病気の新しい治療法を会得し、実践するのは何とかできそうです。しかし、隣接診療科が新型装置で自分の専門の病気の治療を始めたとしたらどうでしょうか。自分の治療では改善しないが、新治療では改善するタイプの患者がいるかも知れません。
そのうえ、今は診療科を越えた連携が大切です。高齢社会ではいくつもの病気をもった患者が増えてきています。複数の病気治療には最適な順序があるかも知れません。さらに、栄養や看護、リハビリの効果も期待できます。医科歯科連携の重要性からいえば、すべての病院は歯科を併設すべきです。多数の専門家が必要なアドバイスや治療を加えてこそ、質を高めた医療になり、患者にとっても最大の効果をあげることができます。日本を代表する国立がん研究センター中央病院でさえ、他の病気の専門家が少なく、重度の重複患者を受け入れられなくなっています。
そう考えると、医療は病院が原則です。大学病院で十五年も心臓手術だけをやっていて、父親の病気で内科、老人科の診療所を継いだ友人もいました。一人の医師が自由に、しかもほとんどやっていない診療科まで開けるのは、まさに質を無視した制度です。
腕自慢医師による白内障手術の診療所や透析診療所も疑問です。他の病気の専門家がいませんし、1つの技術に特化することに利益優先の傾向を感じるからです。
厚生労働省は日本医師会や歯科医師会、薬剤師会などに弱く、根本的な医療改革をしてきませんでした。しかし、医療の質が重要だと国民が理解していけば、将来は変わる可能性があると思います。
個人でなく、歯科なら3人、医科なら5人とか7人とかのグループ開業制はどうでしょうか。予防・管理、義歯、インプラントの得意な歯科医が揃えばより質の高い治療ができそうです。多数の医師、歯科医師がいれば夜間診療も可能です。家族薬局では毎夜遅くまで営業するのは困難ですが、グループ開業であれば可能です。
いかがでしょうか。
医療ジャーナリスト 田辺功
「東京歯科保険医新聞」2017年2月1日号6面掲載
【略歴】たなべ・いさお/1944年生まれ。68年東京大学工学部航空学科卒。同年朝日新聞社入社。2008年、朝日新聞社を退社後、医療ジャーナリストとして活躍中。著書に「かしこい患者力―よい病院と医者選び11の心得」(西村書店)、「医療の周辺その周辺」(ライフ企画)「心の病は脳の傷―うつ病・統合失調症・認知症が治る」(西村書店)、「続 お医者さんも知らない治療法教えます―こんな病気も治る!」(西村書店)ほか多数。
歯科医療をめぐる発言多数/保団連第2回代議員会
歯科医療をめぐる発言多数/保団連第2回代議員会
1月29日、都市センターホールで保団連第2回代議員会が開催された。出席した代議員は113名。当協会からは、代議員として呉橋美紀副会長、加藤開・馬場安彦各理事、事務局が参加。また、保団連役員を務める中川勝洋理事も参加した。
議事は、①会務報告案、②役員の辞任と補充選任、③2017年度予算案―などで、すべて承認され成立した。そのほか決議案、特別決議案が提出され、賛成多数で採択された。
口頭発言と文書発言は、①医療運動全般、②政策・歯科技工対策、③診療報酬改善、審査、指導・監査、病院・有床診、地域医療、④災害対策、原発、平和、共済、庶務、組織―の各議題に分けて行われ、合わせて120本が取り上げられ、討議や質疑が行われた。当協会からは、口頭発言1本、文書発言3本を提出している。内容は、かかりつけ歯科医療強化型歯科診療所に関する件、歯科技工問題、訪問診療、映画「いしゃ先生」上映会の普及についてとなっている。
集中コース:有病患者に対する歯科診療上のリスクマネジメント
第4回学術研究会(1日集中コース)
『有病患者に対する歯科診療上のリスクマネジメント』
がん治療中の患者や糖尿病・高血圧症・心臓病など全身疾患を持つ患者の歯科治療を行う機会は少なくありません。全身疾患とその特徴、注意点を把握するなど患者のリスクを適切に判断し安全な治療を行うことが必要です。
協会では、増加する有病者への歯科治療をテーマに石川先生、岡本先生の両講師による1日コースを開催します。周術期口腔管理や医管の対象疾患などを中心にご講演頂きます。ぜひこの機会にご参加下さい
★「医療安全管理」および「周術期の口腔機能管理」の研修を受講した修了書を発行致します
◆日 時:2017年3月5日(日)午前10時~16時
◆講 師:石川 好美氏 (神奈川県・藤沢市民病院歯科口腔外科 診療科主任部長)
岡本 喜之氏 (神奈川県・横浜市立大学附属病院 顎顔面口腔機能制御学講座 助教)
◆会 場:エムワイ貸会議室 高田馬場9F(新宿区高田馬場1-29-9 TDビル)
◆交 通:JR山手線、東京メトロ東西線、西武新宿線「高田馬場」駅から徒歩3分
◆対象者:会員、会員と同伴のスタッフ
◆参加費:1名につき4,000円(お弁当代を含みます)
◆定 員:150名
要予約:電話03-3205-2999(担当:社保・学術部)
※2016年度日歯生涯研修に登録予定です。
★各講師の抄録は以下の通りです。
<石川 好美氏>
テーマ:全身疾患を有する歯科患者のDental Risk Management
超高齢化社会では、複数の合併症を持つ有病歯科患者が増加していることから、歯科医師は日常臨床において患者を全身的視点から治療に当たらなければならない。現在の医療水準に照らして全身管理法の習得は歯科医師にとって必要不可欠なものとなっている。全身的疾患(循環器疾患を中心に)を有する歯科患者に対して、治療上のあらゆるリスク(偶発症、合併症の発症)を未然に防ぐための管理法( Dental Risk Management)について解説する。
テーマ:術期口腔機能管理の活用
平成24年度から開始したがん患者等に対する医科歯科連携での周術期口腔機能管理は、医療の質向上と患者中心の医療の展開において大変重要な歯科診療の一部となってきている。しかしながら連携歯科医院においては実施率が低く未だ浸透していないのが現状である。周術期口腔機能管理についての理解を深めることで、自院の患者ががん治療を受けたり全身麻酔手術を受けたりする際に適切に対応できるよう解説する。
<岡本 喜之氏>
高齢社会となり、われわれ歯科医師は健康な患者だけでなく、全身疾患を有する患者を診察する機会が多くなった。安全でかつストレスのない治療を行うためには、それぞれの疾患を理解し、それに対応した治療計画が望ましい。本研究会では歯科治療総合医療管理に指定されている疾患の特徴と歯科治療における注意点について検討する。
歯科をはじめ最近の医療めぐる諸情勢を議論/今年度第4回メディア懇談会を開催/通算で60回迎える
歯科をはじめ最近の医療めぐる諸情勢を議論/今年度第4回メディア懇談会を開催/通算で60回迎える
協会は本日1月13日、第4回メディア懇談会を開催した。同懇談会は、2008年3月に第1回を開催以来、今回で60回目を迎えた。メディア側参加者は5社・5名で、司会は協会の坪田有史広報部長で、今回は年初ということもあり松島良次会長が参加した。
今回の話題は、2017年の「会長年頭所感」、昨年12月に発表した「政策委員長談話」、およびこの1カ月間の医療・歯科医療をめぐる諸情勢に対する協会の議論、検討、対応状況とした。
特に情勢の関連では、最近の中医協での議論の状況や、経済財政諮問会議での社会保障制度や医療に関する課題が俎上に乗っていること年の議論の方向などについて意見が交わされた。また、政府や関連学会で「高齢者」の年齢定義を65歳ではなく70歳あるいは75歳に変更を示唆する見解が出ていることなども話題となり、「少子高齢化と人口減少問題とも相まって、社会保障では年金制度から影響を受けるのではないか」「医療保険制度も影響を受ける問題だ」などの意見があった。
歯科医療点描⑰ いろいろ感じました医科歯科連携研究会/歯科医師は医師の依頼で初めて…
いろいろ感じました医科歯科連携研究会/歯科医師は医師の依頼で初めて…
先月初め、四ツ谷駅前の会場で開かれた「医科歯科連携研究会2016」に参加、というか見学させてもらいました。11月のメディア懇談会で副会長の山本鐡雄先生から案内があり、テーマの「睡眠時無呼吸症候群」 (無呼吸症)には関心があったからです。
かなり昔、新聞記事としてCPAP(シーパップ=持続陽圧呼吸)療法を紹介したことがあります。ところが今は、歯科医が製作するマウスピースで十分対応できるという話です。正直なところ、口腔内装置 (OA)治療は知りませんでした。
連携研究会は東京歯科保険医協会と、東京保険医協会と千葉県保険医協会の三つの保険医協会主催でした。山本先生から協会の取り組みを軸に連携治療の総説的な紹介があった後、虎の門病院睡眠センター長の成井浩司氏が専門医の立場から、古畑いびき睡眠呼吸障害研究所長の古畑升氏が歯科医の立場から、無呼吸症の原因や症状、連携の具体的な方法、問題点などの詳しい解説がありました。
へえーと思ったのは、欧米人の無呼吸症は肥満が多いのが、アジア人、日本人は骨格からなりやすく、面長で平ら顔、小さなあごの人が要注意との人種差でした。身近かで無呼吸症の何人かを思い浮かべて、なるほどと納得しました。
◆OAの有効率は80%
成井先生、古畑先生ともOAの効果がCPAPと大きく変わらないとのデータを出されたのにもびっくりでした。虎の門病院のOAの有効率は80%でした。
もっと驚いたのは、OAには把握できないほど多くの種類があることです。素人ですから写真だけでは違いがよくわかりませんでしたが、効果の違いはあるのでしょうか。
◆一番驚いたのは…
そして一番驚いたのは、医師と歯科医の差でした。患者の様子、いびきが大きい、といった話から意外と簡単に無呼吸症が疑えるのですが、歯科医は診断や治療ができない。
病気の診断はあくまで医師の仕事で、歯科医は医師の依頼で初めてOAを作ることができるとの決まりです。歯科医は作ったOAがうまく機能するかどうかも医師に依頼して検査してもらう。自分で簡易検査をしても保険で請求できない、ということでした。
OA製作後の検査は歯科医がするほうが患者は助かります。問題があればすぐ直せますし、わざわざ医師を受診するのも面倒です。医師主導だと、OAをよく知らない医師、知っていても自分でやれるCPAPしか患者に説明しない医師もいそうです。待たされ一方の歯科医に同情します。
ところで、インターネットで無呼吸症を調べると、睡眠中に挿入する鼻チューブの情報が出てきました。おそらくは有効性のデータがまだなく、治療法の選択肢には入っていないのでしょう。しかし、素人にはOAよりさらに簡便で、魅力的に見えます。
どんどん進歩する技術を習得したり、理解するのも本当に大変と実感しました。
医療ジャーナリスト 田辺功
「東京歯科保険医新聞」2017年1月1日号5面掲載
【略歴】たなべ・いさお/1944年生まれ。68年東京大学工学部航空学科卒。同年朝日新聞社入社。2008年、朝日新聞社を退社後、医療ジャーナリストとして活躍中。著書に「かしこい患者力―よい病院と医者選び11の心得」(西村書店)、「医療の周辺その周辺」(ライフ企画)「心の病は脳の傷―うつ病・統合失調症・認知症が治る」(西村書店)、「続 お医者さんも知らない治療法教えます―こんな病気も治る!」(西村書店)ほか多数。
会長年頭所感 「保険でよい医療は可能か?」
会長年頭所感
「保険でよい医療は可能か?」
謹賀新年
 昨年は、トランプ氏とドゥテルテ氏の二人の暴言王が注目を浴びました。
 二人とも口が悪いのに、なぜ多くの人から支持をされたのでしょうか。
 私が思うには、理想ばかり語る人間を信じられなくなってしまったからではないでしょうか。しかし、すべての人を満足させられる人物も神でない限り不可能でしょう。多くの人は、幸福の袋は大きく、不満の袋は小さいものです。つまり、皆が少しの幸福を得るためには、大きな不満に耐える必要があります。日本の国民皆保険制度も、世界ではトップクラスだとWHOは認めていますが、身近で運用している私たちは多くの問題点を知っています。その課題をクリアするためには、利害関係にある者同士が、我意を通すだけでなく共助の姿勢で臨む必要があります。つまり、保険医と患者と行政の三者が、多くの妥協点を抱えながらも、少しの福を得る方法を見つけ出すことが必要なのかもしれません。
 私も、若い頃は理不尽な保険制度に見切りをつけて、自由診療だけで歯科医業を生業にしたいと考えた時期がありました。そのためには、誰よりも高いスキルを身につけなければ、患者さんに納得してもらえないと考えました。しかし、口腔という狭い範囲でも、エンド、ペリオ、抜歯、クラウンブリッジ、デンチャーなど覚えることがたくさんあり、そこには得手不得手が起こってしまいます。そもそも、自費だけで生計を立てるという発想は、限られた高所得者だけを相手にする差別的な医療の考え方だと思うようになりました。より多くの患者さんの口腔管理を行うためには、治療ではなく予防医学を発展させなければなりません。予防が保険に導入され、それだけで生計が立てられるほうが、患者も歯科医も幸せだし、医療費も増えすぎず行政も納得できるはずです。ただ、疾病保険に予防を入れるのは難しく、もし入ったとしても、低い評価でしかないと考えていました。しかし、昨年の改定で導入された「か強診」は、施設基準の問題はあるものの、各ライフステージにおいて重症化予防を行うという方向性は好感がもてるし、評価も悪くないと思います。
  「予防は歯科衛生士の仕事だ」と指摘される先生もおられますが、疾病予防管理は歯科医の1番の業務だと思います。それにより、「抜いて、削って、被せる」という歯科医の3大悪イメージは払拭でき、内科医が薬で高血圧のコントロールをするのと同じように、スキルの差を減らし、より多くの患者に高い効果を生み出すことができます。歯科医師へのバッシングは減り、地位向上にも繋がります。
 これは、まさしく「保険で良い医療」そのものだと思いませんか?
 ただ、病気がなくなっていくと、歯科医師不要論が巻き起こるかもしれませんので、歯科医の需給問題が大事になってきます。2030年頃までは、在宅診療の需要も多く、外来との両立が求められてくることでしょう。在宅での診療は容易ではありませんが、患者のニーズに応えていくことこそが、医療人の使命ではないでしょうか。
 こんな綺麗ごとを二人の暴言王が提案するとしたら、どんな発表となるでしょうか?
  「全国民はかかりつけ歯科医をひとり選び、その医院に毎月の保険料を支払う代わりに最後まで口腔管理を委ねられる権利を取得できる。治療にかかる費用はすべて毎月の保険料で賄う」こんな考え方が、かかりつけ歯科医機能の根底にあるかもしれないということに、注意しながら先を見据えて検討しなければなりません。

2017年1月1日
東京歯科保険医協会会長
松島良次
OSAの医療連携研究会を開催しました
3協会共催*医科歯科連携研究会2016
12月4日、四ツ谷・主婦会館プラザエフにて、東京の医科・歯科、千葉の3協会による8回目の医科歯科連携研究会を開催した。今年は「睡眠時無呼吸症の治療における医療連携の実際」をテーマに、医師、歯科医師、コメディカル、コデンタルなど90名が参加、当会からは43名が参加した。
プレ講演 医科診療所との連携を報告
講演に先立つプレ講演では、川島正人氏(山崎歯科口腔ケアクリニック)が医科診療所との透析患者に対する口腔ケアの取り組みを報告し、医療連携による疾患の改善効果への期待感を表明した。
過去5年の協会取組みを報告
本講演では、当会で行っているOSA医療連携の取組みを山本鐵雄氏(当会副会長)が報告し、過去5年間の実績や連携の課題を説明した。
OSA治療 医療連携の重要性を訴える
医師の立場から成井浩司氏(虎の門病院 睡眠呼吸器科部長)が、睡眠時無呼吸症の要因、睡眠中や日中の症状、合併する疾患と頻度などに触れ、睡眠検査や治療の提案・導入における病院内や連携医療機関との取組みを紹介した。治療ではCPAP療法の効果とともにOA治療の有効性にも触れ、歯科が果たす役割が重要とした。
続いて、歯科医師の立場から古畑升氏(古畑歯科医院、古畑いびき睡眠呼吸障害研究所)は、医療連携の問題点として、OA作製依頼先の情報が少ない点や治療の効果判定検査を受けない患者がいることを上げ、何よりもその検査が歯科で保険算定できないことなどを指摘した。また、OSA診療における第一発見者に歯科医師や歯科衛生士がなりうることから、睡眠障害に関する知識やPSGなど検査データの理解力を高める必要があり、患者の症状変化を把握し、装置を的確に調整して治療効果を最大限高めるよう、常に知識を高め、経験を深める必要があると参加者に訴えた。
協会主催のOSA講習会を開催
1月・2月にOSA治療の連携講習会を開催する。医科歯科医療連携における情報共有のコツなどを古畑氏や山本氏を含めた講師陣が解説する。ぜひご参加されたい。詳細は、機関紙をご覧ください(予約制となりますのでお申込みは協会まで)。
2017年3月23日 第1回地域医療研究会開催!
第1回地域医療研究会開催します!
かかりつけ歯科医が実施する高齢者への食事支援~診療室を核にした在宅支援と摂食機能の着眼点~
東京歯科保険医協会の講習会では初!東京都の後援をいただきました!
高齢者が増加する現代、高齢者医療は、歯科訪問診療だけでなく、外来でも避けて通れない中心の課題となってきます!今回は日本大学の植田耕一郎氏をお招きし、診療室から始まる高齢者医療について講演をいただきます。患者に寄り添うためには、診療所全体での取組みやスタッフの方々の力が欠かせません。「かかりつけ歯科医院」となるべく、みなさまお誘いあわせのうえご参加下さい。
~抄録~
「かかりつけ歯科医」「訪問診療」「在宅支援」「摂食嚥下リハビリテーション」「介護予防」は、超高齢社会となった日本の歯科医療においては、今後もキーワードとして、ますます重要視されていくことと思います。
ここで改めて認識していきたことは、地域住民に貢献する歯科医である以上、「訪問診療」「摂食機能療法」から始まるのではなく、あくまでも「診療所」が診療の主体であるということです。かかりつけ歯科医としての自己認識が育まれる場所はやはり診療所であり、その延長線上に、要介護高齢者歯科治療、摂食嚥下リハビリテーション、および口腔ケアに遭遇することになります。在宅支援は訪問診療を始めたときからではなく、診療所に通院しているときから始まっているのだということ、それがかかりつけ歯科医の真骨頂でもあろうかと思います。
そこで今回は、以下について検討いたします。
1.“かかりつけ歯科医”の在宅支援の考え方と手法
2.診療室から始まる摂食嚥下リハビリテーション(摂食機能療法)
3. 21世紀の超高齢社会に向けての健康感
かかりつけ歯科医の責務を全うするために、実践的な話し合いの場となれば幸いです。
日 時:3月23日(木)午後18時45分~20時45分
講 師 :植田 耕一郎氏
会 場 :東京ウィメンズプラザ(渋谷区神宮前5-53-67)
交 通 :
・JR・東急東横線・京王井の頭線・東京メトロ副都心線 渋谷駅 宮益坂口から徒歩12分
・東京メトロ銀座線・半蔵門線・千代田線 表参道駅 B2出口から徒歩7分
・都バス(渋88系統) 渋谷駅から2つ目(4分)青山学院前バス停から徒歩2分
定 員 :150名
参加費:
・会員無料、同伴者1名につき1,000円、
・非会員8,000円
対 象: 歯科医師、歯科医院のスタッフ
要予約 :03-3205-2999(担当:地域医療部)
※2016年度日歯生涯研修の登録を予定しています。
政策委員長談話 「 あるべき地域包括ケアシステムを踏まえた評価を求める」
政策委員長談話
「 あるべき地域包括ケアシステムを踏まえた評価を求める」
2016年、「かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所」(以下、「か強診」)は、地域包括ケアシステムに歯科を位置付けるものとして新設された。新設されて以降、「か強診」と地域包括ケアシステムとの関連についてはさまざまな意見があるが、「か強診」の評価は地域包括ケアシステムそのものの評価とは別に考える必要がある。
 現在、国が進めている地域包括ケアシステムは、社会保障費の削減を前提としたものであり、決して手放しで賛成できるものではない。しかし、現実には制度が運営されており、医療、介護、福祉が有機的な繋がりを持ち、地域住民に対するサービスの提供が始まっている。この現状において、歯科の診療報酬上による評価で地域包括ケアシステムと具体的に密接な関連がある項目は「か強診」のみである。もし、「か強診」を否定するならば、地域包括ケアシステム自体への歯科の参画すらも否定することとなりかねない。背景にある少子高齢化、超高齢社会、人口減などの問題を抱える我が国の将来に加え,疾病構造の変化が速いスピードで進んでいる歯科の将来を考慮に入れるべきである。したがって、これらの現実を考えれば地域包括ケアシステムの根本的な問題点については改善を求めつつ、「か強診」を現場に合わせて改善することが、現実的な対応と考える。
 第1に、改善をすべき問題として、患者側の視点が欠如していることである。例えば、算定開始時期の問題がある。継続管理を行うには、かかりつけとして通院したいという患者の希望があることが前提である。他方、患者にその判断をする時間を与えるためにも「か強診」の点数の算定開始には一定期間の通院が担保されるべきである。
 また、高点数である以上、患者が納得して治療を受けることや、歯科医師側として患者に適切な継続管理を行う意思を示すためにも、患者の同意書や署名も必要だろう。
 第2に、施設基準も改善が必要だ。AEDと口腔外バキュームは「外来環」で評価されるべきであり、「か強診」の施設基準からは外すべきである。同時に「外来環」の評価を高めることも必要となる。また、「か強診」の施設基準とすべきは「医管」にある施設基準の内容ではないかと考える。なお、他職種から照会があった場合に、治療経過などの情報提供を適切に行える体制も必要である。
 これらの改善を行うと同時に必要なのは、訪問診療を行っていないが小児や高齢者などに対して「かかりつけの歯科医」として継続管理を行い、地域医療に寄与している医療機関に対する評価である。このような医療機関の不断の努力が地域医療の裾野を広げていることを厚労省は理解し、評価すべきだ。
 すべての歯科診療所が対象ではないが、「か強診」には前述したさまざまな問題点がある。しかし、今後の歯科全体のあり方や方向性にも関わる点も見逃せない。例えば、「か強診」が重症化および再発予防を主体としていること、継続管理において包括点数を採用していることなどである。これらは歯科の疾病構造の変化に対応するとともに、定期・継続管理時の通院に見通しをつけることになる。
 協会は、現行「か強診」の改善を求めるとともに、地域医療に貢献しているすべての「かかりつけの歯科医」が評価されるよう、診療報酬の改善を求めていくものである。

2016年12月8日
 東京歯科保険医協会政策委員長
坪田有史
歯科医療点描⑯ どう考えても非合理ふしぎな消費税/医療費が非課税となった背景
どう考えても非合理ふしぎな消費税/医療費が非課税となった背景
外から見ると、医療界には理屈に合わない非合理的なことがまかり通っています。米国式医療の沖縄県立中部病院で腹部手術のガーゼ交換の話を聞きました。
患者の回復を遅らせるとわかり、すでに米国では30年も前にやめたのに、日本の病院ではまだやっているというのです。似たような話を集めて1999年秋、連載「ふしぎの国の医療」を始めたところ、十数回の予定が62回にも延び、1冊の本になってしまいました。日本では昔、偉い先生が決めたことを下の先生はなかなか変えることができないのです。
非合理の代表「消費税」もこの連載で取り上げました。89年の3%から始まり、97年の5% 、2014年の8% と上昇中です。消費税は一定のルールで、買う人が払う税金です。医療を買うのは患者ですが、国は患者の支払いを増やさないためとの名目で医療費を非課税にしました。今でもそうですが、なぜか医療費を決める時の窓口は日本医師会なのです。 実は、当時の医師会の担当理事は消費税の仕組みを全く知らずにこれを了承。
その結果、医療機関が薬や器具、材料などを買う時に上乗せされる消費税は病院や診療所が負担することになり、診療所では年100万円単位、病院では1千万円から数億円単位の減収になり、増税のたびに増えます。
財務当局は常に医療費の切り下げを要求しますが、医師会は応じず、いつも最後は政治決断でした。そのしっぺ返しの意図もあったようで、当時の大蔵省は予想される負担増を医師会に伝えず「医療費を非課税にした」と思われます。診療所よりも負担が大きい病院は大蔵省からも医師会からも特に説明を受けていませんでした。
消費税は国内売買なので輸出品は非課税です。しかし、輸出企業が負担した消費税は国税庁が払い戻しする「戻し税」の制度ができています。医療機関とはえらい違いです。
さて、その後の対応です。厚生労働省は診療報酬の改定のたびに、一部の報酬に色を付けて消費税分を補填したと称する政策をとってきました。私はそれで医療界が妥協したのに驚きました。薬品などの購入額は医療機関で違い、払う消費税額も違います。建築費にも消費税がかかりますが、病棟を新改築した病院とそうでない病院では大変な差です。公平で損得なしなら払った税額を個々に払い戻すしか解決法はないはずです。
税務当局はおそらく戻し税に絶対反対でしょう。医療機関は数が多すぎ、事務量が増え、チェックも困難です。大きい声ではいいにくいですが、それをいいことに、買っていない器具、していない工事の領収書などを揃えて消費税を水増しし、不正請求するような医療機関が考えられます。
結局は医療費にも消費税をかけ、チェックを厳しくするしかないかも知れません。
医療ジャーナリスト 田辺功
「東京歯科保険医新聞」2016年12月1日号6面掲載
【略歴】たなべ・いさお/1944年生まれ。68年東京大学工学部航空学科卒。同年朝日新聞社入社。2008年、朝日新聞社を退社後、医療ジャーナリストとして活躍中。著書に「かしこい患者力―よい病院と医者選び11の心得」(西村書店)、「医療の周辺その周辺」(ライフ企画)「心の病は脳の傷―うつ病・統合失調症・認知症が治る」(西村書店)、「続 お医者さんも知らない治療法教えます―こんな病気も治る!」(西村書店)ほか多数。
政策委員長談話「 あるべき地域包括ケアシステムを踏まえた評価を求める」
政策委員長談話「 あるべき地域包括ケアシステムを踏まえた評価を求める」
2016年、「かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所」(以下、「か強診」)は、地域包括ケアシステムに歯科を位置付けるものとして新設された。新設されて以降、「か強診」と地域包括ケアシステムとの関連についてはさまざまな意見があるが、「か強診」の評価は地域包括ケアシステムそのものの評価とは別に考える必要がある。
現在、国が進めている地域包括ケアシステムは、社会保障費の削減を前提としたものであり、決して手放しで賛成できるものではない。しかし、現実には制度が運営されており、医療、介護、福祉が有機的な繋がりを持ち、地域住民に対するサービスの提供が始まっている。この現状において、歯科の診療報酬上による評価で地域包括ケアシステムと具体的に密接な関連がある項目は「か強診」のみである。もし、「か強診」を否定するならば、地域包括ケアシステム自体への歯科の参画すらも否定することとなりかねない。背景にある少子高齢化、超高齢社会、人口減などの問題を抱える我が国の将来に加え,疾病構造の変化が速いスピードで進んでいる歯科の将来を考慮に入れるべきである。したがって、これらの現実を考えれば地域包括ケアシステムの根本的な問題点については改善を求めつつ、「か強診」を現場に合わせて改善することが、現実的な対応と考える。
第1に、改善をすべき問題として、患者側の視点が欠如していることである。例えば、算定開始時期の問題がある。継続管理を行うには、かかりつけとして通院したいという患者の希望があることが前提である。他方、患者にその判断をする時間を与えるためにも「か強診」の点数の算定開始には一定期間の通院が担保されるべきである。
また、高点数である以上、患者が納得して治療を受けることや、歯科医師側として患者に適切な継続管理を行う意思を示すためにも、患者の同意書や署名も必要だろう。
第2に、施設基準も改善が必要だ。AEDと口腔外バキュームは「外来環」で評価されるべきであり、「か強診」の施設基準からは外すべきである。同時に「外来環」の評価を高めることも必要となる。また、「か強診」の施設基準とすべきは「医管」にある施設基準の内容ではないかと考える。なお、他職種から照会があった場合に、治療経過などの情報提供を適切に行える体制も必要である。
これらの改善を行うと同時に必要なのは、訪問診療を行っていないが小児や高齢者などに対して「かかりつけの歯科医」として継続管理を行い、地域医療に寄与している医療機関に対する評価である。このような医療機関の不断の努力が地域医療の裾野を広げていることを厚労省は理解し、評価すべきだ。
すべての歯科診療所が対象ではないが、「か強診」には前述したさまざまな問題点がある。しかし、今後の歯科全体のあり方や方向性にも関わる点も見逃せない。例えば、「か強診」が重症化および再発予防を主体としていること、継続管理において包括点数を採用していることなどである。これらは歯科の疾病構造の変化に対応するとともに、定期・継続管理時の通院に見通しをつけることになる。
協会は、現行「か強診」の改善を求めるとともに、地域医療に貢献しているすべての「かかりつけの歯科医」が評価されるよう、診療報酬の改善を求めていくものである。
2016年12月8日
東京歯科保険医協会
政策委員長 坪田有史
症例研究(2016年10月号)をアップしました
症例研究(機関紙2016年10月号)を「会員向け情報」の「症例研究」にアップしました。
保団連が概算医療費と薬剤費の推移動向を分析
保団連が概算医療費と薬剤費の推移動向を分析
保団連(全国保険医団体連合会)は11月14日、2000~2015年度における概算医療費と薬剤費の推移の動向を分析した結果を発表した。
それによると、2015年度の概算医療費は41.5兆円で、対前年度比1.5兆円増と過去最大の伸びをとなっている。また、2000~2015年度まででは12兆円も増加したことになる。
さらに、その15年間の医療費の増加要因を厚生労働省が公表している概算医療費データベース(メディアス)の制度別医療機関種類別医療費と社会飲料行為別調査に基づいて分析している。
それによると、15年間で12兆円増加した概算医療費の内訳を施設別でみると、病院が5.3兆円、調剤薬局5.1兆円増加し、伸びの大半を占める。診療所の伸びは1.3兆円であり、歯科の伸びは0.3兆円にすぎない。入院医療費は7.8兆円増加している。調剤薬局の増加要因は主に薬剤費の増加にある。
入院外医療費をレセプト1件当たりでみると、対2000年度比で診療所は-13.2%、歯科は-16.8%と大幅に減少している。その一方で、レセプト1件当たりの薬剤料は年々増加を続け、2015年度は+59.1%と非常に高い伸びを示している。
11月13日(日) イイハデー
歯科医療点描⑮ 歯磨きは歯科の二大疾患を左右/どんな歯ブラシがいいのか知りたい…
歯磨きは歯科の二大疾患を左右/どんな歯ブラシがいいのか知りたい…
◆必ず爪楊枝を…
この歳になって、実は歯磨きに苦労しています。10年くらい前から毎日、朝食と夕食後に電動歯ブラシで磨いています。胃の全摘手術を受けた後ですが、いつからか、歯磨きの後、必ず爪楊枝を使うようになりました。
というのは、歯を磨いても隙間に入った食べ物のカスが取りきれないからです。家内が「デンタルフロスを使ったらいい」というので、付き合い上、時々は使うのですが、若い頃にあまり使ったことのない道具はなかなか親しめない感じです。爪楊枝では結構、大きなカスが取れます。
◆どんな歯ブラシを使えばいいのか
一番知りたいと思うのは、よい歯磨きの仕方、具体的にいえば、どんな歯ブラシがいいのか、ということです。
新聞や雑誌の記事にいろんな歯ブラシが出ています。電動歯ブラシのほかに、従来の手磨きの歯ブラシもあります。
電動歯ブラシに限っても、たくさんのメーカーからいろんな製品が出ているようです。歯ブラシの形が長方形、四角、丸い、あるいは特殊な形のもの、往復運動のほか、回転しながら磨くものもあります。
◆電動歯ブラシのランキングまで
私が使っているのは普通の電動歯ブラシですが、高速の水流でプラークを除去し、細菌を壊す音波歯ブラシ、もっと細菌の破壊力が強いという超音波歯ブラシなどの高級品も登場しているそうです。さらにびっくりしたのは、「電動歯ブラシ売れ筋ランキング」といったサイトがあり、1位から80位まで紹介されていたことです。値段も大きな違いです。
電動も手磨きも効果に大差はない、とのネット記事がいくつか目につきました。そうなると、職人手作りの微細加工製品、日本の発明というローラー型回転式など、手磨き歯ブラシの広告にも目を引かれました。
◆消費者はどうやって商品を選ぶのか
改めて、消費者はどうやって製品を選んでいるのか興味がわきます。歯科医の先生の多くは治療専門で、予防や管理が得意でないはずですが、適切にアドバイスできるのでしょうか。頼まれて親しいメーカーさんの製品を勧めるのか、歯科衛生士さんに応対させるのでしょうか。
◆いや、やっぱり…
歯磨きは歯科の二大疾患を左右します。それなのに、歯科の学会や団体は専門家として歯ブラシを評価せず、メーカーの広告や消費者の好みに任せていればいいのでしょうか。
いや、やっぱり今より患者が減ったら…という話でしょうか。
医療ジャーナリスト 田辺功
「東京歯科保険医新聞」2016年11月1日号6面掲載
【略歴】たなべ・いさお/1944年生まれ。68年東京大学工学部航空学科卒。同年朝日新聞社入社。2008年、朝日新聞社を退社後、医療ジャーナリストとして活躍中。著書に「かしこい患者力―よい病院と医者選び11の心得」(西村書店)、「医療の周辺その周辺」(ライフ企画)「心の病は脳の傷―うつ病・統合失調症・認知症が治る」(西村書店)、「続 お医者さんも知らない治療法教えます―こんな病気も治る!」(西村書店)ほか多数。
歯科医療問題に関し「か強診」など巡り意見交換
歯科医療問題に関し「か強診」など巡り意見交換
協会は11月11日、第3回(通算59回)メディア懇談会を開催。メディア側参加者は5社・5名。話題内容は、①今期改定後の当協会の懸案検討状況、②10月、11月の国会行動状況、③秋の活動状況、④医科歯科連携研究会2016“睡眠時無呼吸症の治療における医療連携の実際”、⑤11月4日の毎日新聞1面報道―などについて。
特に、か強診に関しては、協会側から「小児から高齢者までの生涯にわたる長期管理を担う役割を規定しているが、多くの点数が包括化され、見かけ上は高点数となった。施設基準11項目と厳しい内容であるため、届出できる歯科医療機関は限られ、十分機能するか危ぶまれる」と話題を投げかけ、参加者に発言を求めた。
第9回歯と健康フォーラム開催しました!~「いしゃ先生」特別無料上映会~
2016年11月6日(日)11時~13時40分、15時~17時30分の2部制で、第9回歯と健康フォーラムを開催し、合計453名が参加しました。今回は募集直後にすぐ満席となり、急遽2回の上映を決めた企画。
まずは本フォーラム実行委員長濱克弥協会副会長が、歯ブラシのぬいぐるみを手に登壇。場を和ませながら、映画の舞台になった山形県の厳しい自然背景や医療をとりまく時代背景の、を簡単な紹介と、「いしゃ先生」のモデルとなった志田周子氏も生涯願っていた、「国民皆保険」の重要性について話しました。
続いて上映に先立ち、トークショーを開催。司会は協会の篠原亨太郎理事。出演者は、原作者のあべ美佳氏と協会の森元主税理事。原作を執筆したきっかけや映画の製作・撮影秘話などから、医療職種、特に女性医師の苦労や努力を紹介しながら、いつでもどこでも同一料金で同質の医療が受けられることのありがたさ、国民皆保険の素晴らしさ、最後まで口から食べることの重要性などについてフリートークを行い、終始和やかな雰囲気で進みました。その中で、あべ氏からは「私も今回の映画製作がご縁で、たくさんの医師、歯科医師のお話を聞く機会があった。志田周子さんは医者、医者は神様なんだから何でも完璧にできて、命を救って当たり前と思われていた。今もそういう風潮があると思う。患者も医師に感謝して、医療の知識を勉強し、医師と一緒に治療に当たるという姿勢は現代、ますます必要になっているのではないかと感じている」と述べました。森元氏からは「健康を保つためには、食べることが重要である。かつては歯が痛くても、今治水や塗り薬でしのいでいた。今はいくらでも治療法がある。健康で長生きするために、口腔の健康にも気を使ってほしい」と呼びかけました。
映画上映では、笑いに包まれる場面や、涙を抑える姿も見られ、エンドロールでも席を立つ方は少なく、最後まで余韻に浸る方が大半を占めました。
上映後には、俳優でプロデューサーの岡雅史氏、女優の仙頭美和子氏がサプライズ登壇。お二人はこの映画に出演されている俳優さんということで、スクリーンで見た俳優さんが実際に目の前に現れ、客席からは、拍手喝さいでした。出演場面の紹介や撮影の感想などを話し、合わせて、映画パンフレットと小説の紹介を行いました。
閉会後のロビーではあべ美佳氏によるサイン会も設け、希望者1人1人とお話ししながらサインをして頂き、長蛇の列となりました。
最後に、協会の松島良次会長から、社会保障改革などにより格差が広がりつつあることに触れ、医療従事者も患者さんも共に歩んでいこうと訴え、閉会の挨拶としました。
第3回学術研究会を開催 原因不明の歯痛をどう診断する!?
第3回学術研究会を開催
11月2日に第3回学術研究会「原因不明の歯痛・顔面痛をどう診断するか~非歯原性歯痛:レントゲンで異常がないのになぜ歯に痛みを訴えるのか?~」が開催された。講師は井川 雅子氏(静岡市立清水病院口腔外科 口腔顔面痛外来)に講演していただいた。
非歯原性歯痛の分類から痛みの評価方法、診断のポイントなどに触れ、筋筋膜性歯痛、群発頭痛、心臓性歯痛、神経傷害性歯痛、上顎同性歯痛、特発性歯痛などの症例を解説しました。
誤診による無意味な抜歯や抜髄を防ぎ、これによって生じる患者とのトラブルを未然に回避するためにもこれらの疾患と鑑別法を知っていることが必要であり、参加者からは改めて痛みについて考える事が出来たなどの感想が寄せられ、大変好評であった。
第2回学術研究会を開催 SPTについて掘り下げる
9月29日に第2回学術研究会「ペリオのお悩み解消術―SPTを中心に」が開催された。講師は内山 茂氏(東京医科歯科大学臨床教授)に講演していただいた。継続した患者支援が歯周治療の成功のカギであることを説明され、そのためには、文献を読み解くこと、使用する器具の選択が重要であること、治療の効率化を図る必要があることなどについて、具体的に伝授していただいた。歯科衛生士をはじめとする300人近い多くの参加者があり、日常の診療に即、実践できる充実した内容であった。
当日は、講師が選定した歯科用薬剤等のパンフットやサンプルなどが参加者に配布され、ぜひ試用したいとの感想も寄せられた。
第1回学術研究会を開催 成功する義歯設計の3原則を解説
  7月20日(水)、文京シビック小ホールにて第1回学術研究会が開催された。テーマは「パーシャルデンチャ―設計の基本的な考え方」、講師は大久保力廣氏(鶴見大学歯学部有床義歯補綴講座教授)。大久保氏は長期経過のある成功している義歯の設計を参考にする意義を説明し、成功する義歯設計の原則を解説した。その原則は①義歯破損の防止(壊れない)②予防歯学的配慮(残存歯周組織の保護)③義歯の動揺の最小化(動かない義歯)の3つ。それを実現するには印象前の診査(サベイヤー使用)、ガイドプレーン形成(曲面形成)の術前の処置から始まり、義歯製作時のメタルフレームの構造(金属構造義歯)、下顎前歯においてはシンギュラムレスト(舌側にコンポジットレジンを付与)の応用、など多岐な手技を披露して頂いた。原則に配慮した保険内の臨床例も提示していただき明日からの臨床に直結できる内容であった。
「いしゃ先生」原作者 あべ美佳さんと打ち合わせを行いました!
第9回 歯と健康フォーラム 「いしゃ先生」特別無料上映会
11月6日(日)に開催が迫った、「いしゃ先生」の特別無料上映会!
トークショーについて、原作者のあべ美佳さん、プロデューサーの岡雅史さんと打ち合わせを行いました。
とても楽しくお話しをしていただき、和気あいあいとした雰囲気の中、いしゃ先生に込めた想いや、撮影時のエピソードなどお聞きしました!
どうやら出演者のみなさん、方言には苦労されたようですよ。
当日のトークショーでお話し頂けるので、お楽しみに♪
すでにお申込みいただいている方には、参加証をお送りしています。まだお手元に届かないなどございましたら、協会までご連絡ください(03-3205-2999 担当:藤田)。
これから始める!歯科訪問診療講習会開催しました!
生涯にわたる「かかりつけ歯科医」を目指して
2016年10月19日(水)19時より、エムワイ貸会議室高田馬場にて、これから始める!歯科訪問診療講習会を開催した。歯科訪問診療の需要の高まりに応じ、前年から大幅に規模を拡大し開催したところ、会員やスタッフ143名が参加した。
講演では、初めに馬場安彦地域医療部長から、歯科訪問診療のニーズの掴み方として、歯科訪問診療が求められる背景や、外来から歯科訪問診療へつなげるためのヒント、歯科訪問診療を行うときの心構えなどを説明した。歯科訪問診療ニーズを掴むためには、歯科訪問診療を始めたことを周知するとともに、通院困難になった外来患者のアフターフォローが大切と述べた。
次いで、間野忍地域医療部員から歯科訪問診療にかかわる保険請求について、医療保険と介護保険のポイントを解説した。歯科訪問診療の保険請求は複雑そうに感じるが、基本的な流れは難しくないと述べ、居宅1名を診療したケースを中心に、丁寧な説明を行った。
最後に矢野正明副会長から歯科訪問診療のイメージ作りとして、歯科訪問診療の現場の様子や必要な機材、緊急時の対応、多職種との連携などについて、具体的な症例を紹介しながら、動画や画像を用いて説明した。口から食べることにこだわり、生涯にわたって患者を診ていくことを目指し、ぜひ最初の一歩を踏み出してほしいと呼びかけた。
アンケートでは「ヒントが得られたので、歯科訪問診療を行ってみようと思う」「ハードルが高いと思っていたが、講義を聞いたらそうでもなかったので安心した」「具体的事例が知れて、少し不安が解消できた」などの感想が寄せられた。
歯科医療の充実も訴える/10.20国民集会に3300名以上が参加/政府に要求しなければ社会保障は必ず後退する
歯科医療の充実も訴える/10.20国民集会に3300名以上が参加
「政府に要求しなければ社会保障は必ず後退する」
本日20日、千代田区の日比谷公園野音で「憲法・いのち・社会保障まもる 10.20国民集会」が開催され、主催者発表で3300名以上が参加した。協会からは森元主税理事と山本道枝顧問、事務局が参加した。冒頭では、最近の医療・歯科医療情勢、TPPが抱える医療問題、衆議院解散説などがレポートされた。

次に、『下流老人―1億総老後崩壊の衝撃』(朝日新書、2015年刊)の著者である藤田孝典氏がゲストとして報告に立ち、社会保障に関する国民集会などの運動や活動の必要性を強調した上で、「政府への要求がなくなると、社会保障はどんどん後退する」と訴え、こうした集会などで訴え、要求を出し、さらに医療・福祉・介護の現場の声と現実を可視化して見せつけることが有効な手段であると示唆。さらに「私たちの行動が次の世代をつくる。次の世代はそれを背負い、引き継いでいける」と結んだ(なお、藤田氏は、集会後のパレードにも参加し、参加者とともにシュプレヒコールをあげ、一興を添えた/写真左の男性)。続いて保団連の武村義人副会長は「みんなの声を1つにすれば要求は通る。世論をつくり、患者の声を聞いて、医療をよくしていこう」と訴えた。
集会アピール採択後、野音横の厚生労働省に向かって「いのちまもる」「憲法まもる」のプラカードを掲げシュプレヒコールをあげた。
◆参加者からの声
一方、会場内に集まった方々から意見を伺ってみた。その中では、「社保審の医療部会・医療保険部会・介護保険部会の各部会が頻繁に開催されているが、本当にきちんと議論されているのか疑問を感じる。慎重な論議を進めてほしい」「地方の地域格差を解消する必要がある。求人を出しても人材が集まらず働く環境がきつくなってしまう。退職者が出ても新たな人材が採用できない負のスパイラルに陥ってしまっている」「介護はニーズがあるため成長産業に組み込まれているというが、実態として理解されておらず、そうはなっていない。地方の事情を経験的にも理解していない」など、地方の現状を伺うことができた。
◆パレードの進化形現る/車上で髪を荒げるアフロ男Dr.X
集会アピール採択後、銀座までパレードを行った。サウンドカーに誘導さるパレードの人並。サウンドカー上のアフロ男のDr.X氏は髪を掻きみだし、ミキシングで唸るミュージックは主催者も圧倒される威力を発揮。保団連理事の1名も「こういう手法のパレードは初めて。

あまりの迫力に、ついていけないくらいだ」と焦りを隠せない。パレードの進化系は、今後も次々に登場しそうだ。次回はぜひ、会員の方々も実際に見聞していただきたいところだ。
第31回保団連医療研究フォーラム開催
第31回保団連医療研究フォーラム開催
10月9、10日、国立京都国際会館(京都)において、第31回保団連医療研究フォーラムが開催され、全国から医師・歯科医師・スタッフ・一般市民など併せて651名が参加した。当協会からは13名が参加した。また、最終日には、「第31回保団連医療研究フォーラム・京都アピール(案)“-「開業医医療」の復権を求めて―”が京都府保険医協会理事長の垣田さち子氏から提案され、大きな拍手で採択された。
「第31回保団連医療研究フォーラム・京都アピール-「開業医医療」の復権を求めて―」の全文ダウンロードはここをクリック
9日は、保団連の住江憲勇会長と次回主務地を代表して愛知県保険医協会の萩野高敏理事より挨拶が行われた。
その後、「どうなる?日本の医療の姿―これからの医療提供体制、新専門医制度がつくる医師制度」をテーマとしたシンポジウムが開催された。
はじめに2016年5月~6月に全国の会員から10%無作為抽出ご協力いただいた医科の「開業医の臨床推論技術と「保険医」意識の形成過程とその実態に関する意識・実態調査」と歯科の「地域医療における歯科医師の意識とその実態について」の結果報告がされた。医科の調査では、回答医療機関の相当数が、夜間時間外診療への積極的な対応や校医や産業医、介護認定など地域活動を積極的に行っているが、その尽力や労苦が十分には理解や評価がされていないと感じている実態が明らかになった。また、総合診療専門医や新専門医制度については消極的な意向が強かったと報告された。歯科の調査では、歯科衛生士は2割の診療所で雇用できていない実態や7割以上の回答者が現在の診療に不安を感じていることが報告された。また、経営状況は「順調」と「苦しい」の2極化の傾向にあることが示された。在宅医療については、「行っている」と「行っていない」がほぼ半数に分かれており、行っていない理由としては、「依頼がない」が35%「請求が面倒」が25%である。介護保険事業所との連携は約8割が行っていないことが明らかとなった。やりたい歯科医療をできていないと感じている回答者が約半数、今後の医療制度の変化に対応していけるか不安に感じているが約6割と将来への不安を抱えていることが示され、口腔保健条例の制定、口腔衛生事業の充実、窓口負担の廃止・減額などの取り組みが必要とまとめた。
次いで、司会に千葉大学教授の近藤克則氏を据えシンポジウムが開催された。まず、保団連政策担当副会長の三浦清春氏から「新
専門医制度を含めた一連の医療改革を、保団連(政策部)はどう見ているか」の題で、新専門医制度の経緯や社会保障・税一体改革、医師需給問題、開業医医療(地域医療)の復権の提起を行った。次に日本プライマリ・ケア連合学会副理事長・専門医制度推進委員会委員長の草場鉄周氏から、「総合診療専門医に関するいくつかの論点」の題で、北海道医療センターで実践されている総合診療と教育を紹介しながら、専門医の在り方、総合診療専門医の在り方などについて述べた。その後、日本医師会常任理事・日本専門医機構理事の羽鳥裕氏から、「どうなる?日本の医療の姿―これからの医療提供体制、新専門医制度がつくる医療制度」の題で、日本専門医機構成立までの歴史的経緯や議論の状況、社会保障審議会の状況などを報告し、かかりつけ医と総合診療専門医について述べた。最後に、厚生労働省医政局地域医療計画課医師確保等地域医療対策室長の伯野春彦氏から「これからの医療提供体制について」の題で、高齢化の状況を踏まえたうえで、地域医療構想や医療計画、在宅医療の推進について報告された。
その後の討論では、専門医の在り方や医師、診療科の偏在、医師の需給問題や離島やへき地の医師確保などについて意見交換が行われた。まとめとして、三浦氏は現場の声を発信することが重要であり、全体を見通しての医療改革が大切とした。草場氏は総合診療専門医は新しい学問ではなく、これまで行ってきた医療である。また、制度としてはこれから医師を目指す人達のものであることを押さえるべきとした。羽鳥氏は、地方の人口減や病院医師の減少の中で、総合診療専門医は力を発揮できるとした。伯野氏は今後の日本の状況を考えると今までと同じでは乗り切れない。在宅医療ニーズはまだ伸びる。今後も力を貸してほしいと述べ、終了した。
10日の午前は分科会が開催され、東京歯科保険医協会からは5名5演題の発表があった。
第4分科会B高齢者では小林顕氏が「症例から考える要介護高齢者に対する歯科医療の役割」の題で、実症例を紹介しながら要介護高齢者に対する歯科医療の役割の考察を述べた。
第5分科会子どもの医療と健康問題では山本鐵雄副会長が「顎顔面領域の外傷におけるカスタム・スポーツマウスガードの有為性について」の題で、学校災害の歯牙傷害見舞金給付状況の調査から口腔領域のスポーツ外傷を抽出し、5年間の推移の分析を示し、カスタムメイド・スポーツマウスガードの装着の有為性を示した。
第9分科会では今西祐介氏が「それでも抜かないわけがある2016」の題で定期予防、歯牙再建、コンフォートブリッジ等を用いて抜歯をしない方法を紹介。予防への診療報酬の評価も同時に訴えかけた。
第10分科会B医療技術、医学・医療運動史、医療制度問題・医療運動では松永周俊氏が「歯科12%金銀パラジウム合金の価格変動推移について」の題で、金パラの臨床使用例を紹介するとともに、金属の価格変動とどのように診療報酬上の評価に反映されてきたかの分析報告、今後の展望の考察を述べた。
ポスターセッションでは戸澤昭彦氏が「インターネットによる『他職種連携策に』」の題で他職種、特にケアマネジャーとの連携を中心としたポータルサイトを紹介し、今後の地域医療活動での他職種連携と地域包括ケアシステムへの関わりを呼びかけた。分科会の最後にはそれぞれの分科会ごとに集団討論が行われ、テーマごとに内容を深めた。
写真は左から、小林顕先生、山本鐵雄副会長、今西祐介氏、松永周俊氏、戸澤昭彦氏(分科会順)
午後からは、ティーチインが行われ、はじめに住江会長から「日本の医師・保険医の運動の歴史と課題」の題でこれまでの保険医
運動について述べ、協会・医会、保団連に属することで、患者・地域住民の生命、健康、くらしを阻害する医療・福祉、地域、国の諸問題に対し、機敏に対応し向き合っていくことが大切とした。また、保団連は要求する立場から、連帯し、地域を変え、自治体を変え、中央政府にも迫り要求を政治に反映させていくことが求められているとまとめた。
次いで保団連の宇佐美宏歯科代表から「歯科の保険医運動=保険で良い歯科医療運動」の題で、歯科の保険医運動の歴史と今後の厚労省の医療政策に対する運動について述べた。歯科は保険医運動の歴史の中で、国民皆保険制度の中での歯科の位置づけを確立するための運動を中心としてきたと述べ、これからは医科も同じような運動を展開する必要があると述べた。また、今後の運動として、患者の受療権への侵害に直結する医療政策に対し、「保険でよい医療」を目指して広汎な大運動を展開すべき時であるとまとめた。
また、各分科会から分科会の発表と議論のまとめの報告を行い、フロア討議を行った。フロアからは前日に続き、専門医制度や総合診療専門医についての質問や運動の展開について意見が出された。
最後に第31回保団連医療研究フォーラム・京都アピール(案)-「開業医医療」の復権を求めて―が京都部保険医協会理事長垣田さち子氏から提案され、大きな拍手で採択された。2日間にわたる医療研は終了した。
歯科医療点描⑭ かかりつけ医、かかりつけ歯科医、そして「か強診」のこと/アンケートでも「か強診」への根強い不信は明らか
かかりつけ医、かかりつけ歯科医、そして「か強診」のこと/アンケートでも「か強診」への根強い不信は明らか
◆待合室ポスターが語ること
「かかりつけ医をお持ちですか?」との赤い太字の見出しが目につきました。九月初めの日本医師会ニュース添付「健康ぷらざ」です。診療所の待合室に掲示するポスターのようなものです。
「かかりつけ医」とはどんな医師でしょうか。それには「何でも相談でき、必要な時には専門医や専門の医療機関に紹介してくれる身近で頼りになる医師」とありました。
◆頼りがいある医師になることは大変
高齢社会になり、患者はがん、循環器、認知症など診療科の異なるいくつもの病気を抱えています。患者の身近にいて、多くの病気の最新知識を持ち、相談できる医師がいれば患者は本当に助かります。
とはいえ、医療の範囲は非常に広いので、頼りがいのある医師になるのは大変なことです。 このポスターでは、日本医師会がそのための研修をしていることを紹介しています。また、こうした医師が一定の条件を満たせば、国は診療報酬で優遇しようとしています。
◆かかりつけ歯科医そして「か強診」
その歯科版が、治療も予防もできる「かかりつけ歯科医」で、その拠点となる診療所が「か強診」というわけです。
「か強診」をテーマにした7月号の本コラムでは触れませんでしたが、「か強診」は歯科医師、歯科衛生士が各1名以上か、複数の歯科医師がいることも条件になっています。歯科医師のほとんどは義歯などの治療専門家ですから、予防のプロの歯科衛生士がいたほうが患者に役立つのは確かでしょう。それだけではかかりつけ歯科医が増えすぎると考えたのか、業者への返礼か、口腔外バキュームやAEDの設置を加えたことが、厚生労働省の挙動を怪しげに見せています。
◆会員アンケートから
先日、協会から9月8日現在、約5200名の会員のうち返信のあった476名の会員アンケートの内容をうかがいました。
それによると、「か強診」には203名(43%) が「反対」で、「やむを得ない」192名(40%)、「賛成」は45名(9%)でした。
また、「届出しない」107名、「できない」170名を合わせると277名(59%)で、「届出した」36名(8%)、「未定」156名(12%)。
今後の対応については、「施設基準の改善」234名(49%)、「廃止」145名(30%)に対し、「このままでよい」は51名(11%)にとどまりました。
1割にも満たない回答率の段階で、会員の意向とまでいっていいのかどうかはありますが、「か強診」への根強い不信は明らかです。
医療ジャーナリスト 田辺功
「東京歯科保険医新聞」2016年10月1日号6面掲載
【略歴】たなべ・いさお/1944年生まれ。68年東京大学工学部航空学科卒。同年朝日新聞社入社。2008年、朝日新聞社を退社後、医療ジャーナリストとして活躍中。著書に「かしこい患者力―よい病院と医者選び11の心得」(西村書店)、「医療の周辺その周辺」(ライフ企画)「心の病は脳の傷―うつ病・統合失調症・認知症が治る」(西村書店)、「続 お医者さんも知らない治療法教えます―こんな病気も治る!」(西村書店)ほか多数。
10月金パラ改定・点数早見表をアップ
「会員向け情報」の「診療報酬改定対策」の「2016年度」に
10月金パラ改定・点数早見表をアップしました。
なお、会員には東京歯科保険医新聞10月号に、
同封して送付しております。
早見表のダウンロードはコチラ
午後の部(15:00~)開催決定! 「いしゃ先生」無料上映会
第9回歯と健康フォーラム
たくさんのお申込みありがとうございます!
ご要望にお応えし、午後の部(15:00~)を開催します。
11月6日(日)11:00~新宿明治安田生命ホールにて開催します、第9回歯と健康フォーラム「いしゃ先生」特別無料上映会はたくさんのお申込みをいただき、満席となりました。
そこで、午後の部も開催することが決定しました!
午後の部は同日、同会場で15:00~17:30です。ぜひ早めにお申込みください!
今回の歯と健康フォーラムは、平山あや氏主演の「いしゃ先生」の映画上映を中心に開催します。この映画は、2015年11月から全国各地の劇場等で上映されており、東京都ではヒューマントラストシネマ有楽町で上映されました。今回は特別に無料でご参加・ご鑑賞頂けます。
さらに、ミニトークショーを同時開催!原作者のあべ美佳氏をお呼びし、映画に込めた想い、国民皆保険や医療の在り方や撮影の裏話などについてお話を伺いたいと思います。
どなたでもご参加頂けますので、皆さまお誘いあわせの上お越しください!たくさんのご参加お待ちしています。
なお、チラシ・ポスターをご希望の方は協会までご連絡下さい。
<日時>11月6日(日)午前の部 11:00~13:40 (開場10:30)
午後の部 15:00~17:30 (開場14:30)
<会場>新宿明治安田生命ホール
東京都新宿区西新宿1-9-1 新宿明治安田生命ビルB1F
<交通>
- JR新宿駅 西口改札都庁方面へ2分
 - 丸の内線 新宿駅 新宿西口方面へ4分
 - 都営大江戸線 新宿駅 新宿西口方面へ5分
 - 京王新線 (都営新宿線) 新宿駅 京王新線口 新宿西口方面へ5分
 - 京王線 新宿駅 京王百貨店口 安田口 4分
 - 小田急線 新宿駅 西口地上改札 4分
 - 都営大江戸線 都庁前駅 A2 11分
 - 丸ノ内線 西新宿駅 13分
 - 西武新宿駅 JR新宿駅方面へ 12分
 - 都営大江戸線 新宿西口駅 JR新宿方面改札 B18 8分
 
新宿駅西口地下道に出てロータリーを左側にまっすぐ進むと100メートルほどで明治安田生命新宿ビルB2Fの入口があります。入口左側の階段を上がり、B1Fが新宿明治安田生命ホールのエントランスになります。駐車場・エレベーター・エスカレーターは有りません。
<申込み>
どなたでも無料で参加できます。予約制とさせて頂いておりますので、お名前・ご住所・お電話番号・参加人数・イベントを知ったきっかけを明記の上、HP特設ページ・FAX・メールでお申込み下さい。お電話でも受付しております。10月中旬に参加証をお送りします。
FAX:03-3209-9918
メール:hatokenko@doc-net.or.jp
TEL:03-3205-2999
歯科医療費は3348億円で最多/健保連の歯科医療費動向調査で明らかに
歯科医療費は3348億円で最多
―健保連の歯科医療費動向調査で明らかに
健康保険組合連合会はこのほど、傘下1124組合の2014年度歯科医療費の動向に関する調査分析結果を公表した。
調査では1124組合の2014年度のレセプトデータ(医科レセプト:1億4543万8440件、歯科レセプト:2913万8009件)をもとに、医療費3要素および1人当たり医療費等から、歯科医療費の動向について概観したもの。
それによると、調剤を除外した医科・歯科医療費合計は2兆6015億円となっており、疾病大分類に基づく「歯及び歯の支持組織の障害」は3348億円で全体の12.9%を占めて最も多く、以下、医科に属す呼吸器系疾患3138億円、悪性新生物3069億円、循環器系疾患2298億円などが続く状況となっている。1人当たり医療費でみても「歯及び歯の支持組織の障害」が最も高く1万2779円となっている。
次に、「歯及び歯の支持組織の障害」の総額3348億円の内訳をみると、最も高いのは「歯肉炎及び歯周疾患」の2613億円で全体の78.0%を占め、次いで「う蝕」が459億円で13.7%を占めている。本人・家族別に医療費割合をみると、「歯肉炎及び歯周疾患」は「本人」が82.1%、「家族」が72.6%と本人のほうが高く、「う蝕」は「本人」9.7%、「家族」19.0%と家族のほうが高い。
歯科医療費を年齢階層別にみると、最も高いのが40~44歳の383億円で、次に45~49歳の356億円、50~54歳の332億円が続く。また、歯科疾患別1人当たり医療費は、歯肉炎及び歯周疾患9972円、う蝕1752円、その他の歯及び歯の支持組織の障害1054円の順に高くなっている。
歯科医療点描⑬ だれのための専門医制度なのか/「医科を見習って」などという愚は避けて…
だれのための専門医制度なのか/「医科を見習って」などという愚は避けて…
お医者さん対象の会で私がいつも強調するのは「だれのために医療をするのか」です。もちろん、患者さんのためです。しかし、現実にはそうなっていないのではないかと感じることが少なくありません。
たとえば、いま日本専門医機構で議論中の新専門医制度です。現在の専門医は学会まかせでレベルもまちまち。機構が統一して認定し、質を高める新制度は、予定が1年延びて2018年4月からになりました。日本医師会などの反対の声に配慮したようです。
医学部を卒業し、国家試験に合格した医師は2年間の初期臨床研修が義務づけられています。機構の新制度では、その後の後期研修から専門医をめざします。
3年間で内科、外科、救急科、総合診療科など19領域の1つの基本専門医になれます。養成するのは大学病院と地域の協力病院群です。「心臓血管外科」など、より専門的な領域の専門医にはさらなる研修が必要です。
日本医師会はこれでは研修医が大学病院に集中し、地方病院の医師不足が進むと指摘しました。機構の学会代表の大半は大学教授で、医局制度復活の狙いを感じます。
専門医とは何でしょうか。機構は「十分な知識・経験を持ち標準的な医療を提供できる医師」としています。外科であれば、内臓全般にわたって標準的な手術ができる総合外科医、です。したがって、現在の臓器別専門医よりも広く学ぶ必要があり、多くの医師がいる大学病院が中心になります。
一方、国民・患者が考える専門医とは何でしょうか。私は、卓抜した技術を持つ「神の手」だと思います。普通の外科医では無理な難しい手術も成功させる医師です。
機構の2段階目の専門医は「がん」「消化器外科」など29領域ですが、やはり広すぎます。「膵臓がん」「心臓バイパス手術」など病気や手術名のほうが適切だと思います。
専門医の分類にも首を傾げます。基本は外科、整形外科、脳神経外科、形成外科だけで、心臓血管外科、消化器外科などは2段階目です。その結果、脳神経外科専門医は3年間でなれるのに心臓血管外科はさらに何年かかかります。なぜ違いがあるのか、外からは不思議なことです。また、現在の専門医の多くは2段階目になり、その分、取得が遅くなるのも気がかりです。
機構の示す専門医は、専門医の負担を増やすうえ、国民・患者のためにもなっていない気がします。
歯科でも専門医制度が検討されているようですが、「医科を見習って」などという愚は避けてもらいたいものです。
医療ジャーナリスト 田辺功
「東京歯科保険医新聞」2016年9月1日号5面掲載
【略歴】たなべ・いさお/1944年生まれ。68年東京大学工学部航空学科卒。同年朝日新聞社入社。2008年、朝日新聞社を退社後、医療ジャーナリストとして活躍中。著書に「かしこい患者力―よい病院と医者選び11の心得」(西村書店)、「医療の周辺その周辺」(ライフ企画)「心の病は脳の傷―うつ病・統合失調症・認知症が治る」(西村書店)、「続 お医者さんも知らない治療法教えます―こんな病気も治る!」(西村書店)ほか多数。
























