長期維持管理政策の歴史

長期維持管理政策の歴史 vol.6/完

「長期継続管理」と「か強診」

1.歯管と初・再診料の変更

 歯管の初診月の引き下げとバーターで初診料の引き上げを実施。以前から支払側が問題としている初診時に歯管を算定し、3カ月以内に来院がない患者の割合が50%以上である歯科診療所が25%もあることに対し、「実際に継続管理を行った場合に算定すべき」との主張があった。これへの返答として、初診月の歯管は100点から80点とし、再診月は100点のままとするとともに初診から2カ月以内の算定開始の縛りをなくし、初診から2カ月以上経ってから最初の歯管を算定しても良い扱いとした。また、初診から6カ月を超える継続的な管理には、か強診の場合120点、か強診以外の場合100点の長期管理加算を認めるとした。初診料251点→261点、再診料51点→53点への引き上げに関して支払側は前回18年改定で十分ではないかとの意見であったが、歯科は中医協の調査でも明らかなコストを評価すべきとの主張を展開していた。2019年後半からの欧米での「コロナ禍」の急拡大、日本での感染者の拡大もあり、感染防止対策として受け入れたと思われる。

2.20年度改定での重点は長期継続管理による重症化予防

 「2020年度診療報酬改定では、①かかりつけ機能の評価を進める口腔機能低下への対応の充実、②口腔疾患の重症化予防、③生活の質に配慮した歯科医療の推進―に取り組むとされた。具体的には継続管理対象者の拡大の狙いでSPTの対象とならない歯周病患者へ歯周病重症化予防治療(P重防)が導入され、3カ月に1回算定できるとした。

【対象者】 対象者は、①2回目以降の歯周病検査を終えていること、②ポケットは4㎜未満である多くの部分は正常だが、部分的に限局した炎症またはBOPを認める「病状改善」した状態に対して、スケーリング・歯清・P基処等を行う―となる。G病名も対象だがP混検の患者は対象外である。目的はSPTの「症状安定」とP重防の「病状改善」とでほとんど全ての歯周病患者をカバーする形で重症化予防を進めるとともに初診料の繰り返しを抑制することが目的と思われる。

3. 世代別の口腔機能管理の再編

口腔機能管理・小児口腔機能管理は歯管の加算から独立した管理料と緩和された。また「特疾管」「歯在管」「周Ⅲ」の点数も引き上げ、管理への誘導を図った。

4. CAD/CAM冠の適応を上顎6番まで拡大

18年に下顎6番に導入されたCAD/CAM冠を上顎6番まで拡大しメタルフリーの一助としたが、1810月以降歯科を悩ましているのは12%金パラの逆ザヤ問題である。19年10月に1グラム1,675(税込)に改定した時点でも販売価格との逆ザヤは460円に達していた。この状態は今なお続いており、最大1グラム当たり1,000円に達する時もあった。協会・日本歯科医師会の粘り強い運動もあり素材の変動率による改定を1月・4月・7月・10月と、年4回行うこととなり、価格の参照時期も3カ月前から2カ月前の素材価格と短縮されたが、純パラジウムは価格の変動が激しく、円の上下もあり12%金パラの流通価格および素材価格とはかなり乖離した動きで高止まりのままである。22年度改定ではチタン冠やCAD/CAMインレーが導入された。硬さや強度に問題があるものの、対応策の一つとしてアピールする狙いが伺える。

5.22年は「コロナ禍」のなかでの改定となった

初・再診料を前回に続けて増点をしたが、P基処10点の廃止とセットでいつものやり方、スクラップアンドビルドである。2022年のテーマは地域包括ケアの推進であり、在宅歯科医療の改定が行われた。具体的には、以下の2点の通り。

  • 歯援診2の要件を引き下げるとともに、20分未満の診療の減算を一人だけの場合は70100から80100と減算幅を縮小し、訪問診療の増加を意図した。
  • 訪問口腔リハの内容変更。摂食機能障害に加えて20年改定で導入した「口腔機能低下症」の対象を65歳以上から50歳以上へと拡大。在宅への訪問診療を増やすための施策を次々と出してくるが、訪問専門ではない一般診療所では外来診療の合間にしか対応できない現状では拡大は難しい。

6.「か強診」の変更

SPT(Ⅰ)とSPT(Ⅱ)の統合が行われ、SPTとなり、か強診の届出の有無によって点数に差がつけられた。か強診の届出をしていない医療機関は、SPTの算定は3カ月に1回、歯周外科を実施した場合は月1回算定できる。か強診を届け出ている医療機関は毎月算定することができる。

【最後に…】

過去30年にわたる診療報酬改定の流れを雑誌「歯界展望」への拙稿から振り返ってみました。疾病治療から予防管理への流れの中で、行政の姿勢・方向に対し、開業医としての意見を届ける協会活動の大切さを改めて感じています。

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中川勝洋
東京歯科保険医協会 第3代会長、協会顧問

なかがわ・かつひろ:1967年東京歯科大学歯学部卒業、1967年桜田歯科診療所開設、1981年東京歯科保険医協会理事、昭和大学医学部医学博士授与。1993年協会副会長、2003年協会会長、2011年協会会長を辞し理事に。2022年理事を勇退し協会顧問に就任。

 

長期維持管理政策の歴史 vol.5

口腔機能管理と「か強診」

 2018年4月は6年に1度の医療・介護の同時改定であり、地域包括ケアシステムの構築を目指た内容で、歯科においても、

①かかりつけ歯科医の機能の評価

②周術期等の口腔機能管理の推進

③質の高い在宅医療の確保

などを行うとともに、安心・安全な歯科医療の充実として、

㋑院内感染防止対策の推進

㋺ライフステージに対応した口腔機能管理の推進

㋩全身的な疾患を有する患者に対する歯科医療の充実

が取り上げられた。

 また、「院内感染防止対策の推進」としては初・再診料の見直しが行われた。これは14年、および17年に口腔内で使用する機器(タービン等)について、患者ごとの交換に関する記事が新聞掲載されたことに対する厚労省の対応で院内感染防止対策を推進するとして初診料に対する施設基準の新設と併せて、10月1日以降に初・再診料の見直しを行った。初診料3点、再診料3点の引き上げだが、歯科外来診療環境体制加算(外来環)を算定している歯科医療機関は1点の引き上げで世間向けのポーズである。

 20年度改定でも感染防御への対応として初・再診料ともに引き上げられ初診料は261点、再診料は53点となったが中医協の論議での1回あたり268円のコストには見合ってはいない。「かかりつけ
歯科医機能の推進」として各種医科との連携関係の管理料が見直され、管理がより強く打ち出された。また、かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所(か強診)の施設基準見直しが行われた。
初期齲蝕およびSPTの管理実績の追加、研修内容の見直しおよび地域連携の参加実績の要件を追加した。

①フッ化物歯面塗布処置又はエナメル質初期齲蝕管理加算あわせて10回以上

②SPT(Ⅰ)またはSPT(Ⅱ)があわせて30回以上

③訪問診療1または訪問診療2が5回以上

④情Ⅰ又は診療情報連携共有料の算定が5回以上

⑤地域連携に関する会議への参加実績

など、大変細かな条件が追加され、施設基準の届出を行う歯科医療機関には高いハードルとなり、既届出医療機関も20年3月
31日までに新しい要件を満たすことができなければ返上というルールで選別を図った。

質の高い在宅医療の確保
 20分要件を厳格化し、20分に満たない場合の70/100算定を取り入れる一方、一人のみの訪問の評価は引き上げるとともに歯科訪問診療移行加算を新設。また、歯科衛生士同行の評価としての歯科訪問診療補助加算(訪補助)も歯援診に限っていたものを歯科訪問診療を行う医療機関へと拡大し、かかりつけ歯科医として在宅診療にも積極的に取り組むよう誘導した。
 また、「歯援診」を1と2に分化するとともに「歯在管」および「訪問口腔リハ」を見直して在宅に関しては「歯援診」届出医療機関を「か強診」届出よりも重視している様子が見て取れる。
歯科衛生士が訪問する場合の患者が住む建物の概念を同一建物から単一建物へ変更、「同一日」ではなく「同一月」に何人を診療したかによって算定する方式に変更され、かかりつけ歯科医の訪問には手厚いが訪問専門の保険医療機関には厳しい内容となった。

 ライフステージに対応した口腔機能管理の推進15歳未満の子どもの口腔機能発達不全、および65歳以上の高齢者の口腔機能の低下に対して「口腔機能発達不全症」「口腔機能低下症」の新しい病名を導入し、歯管に対する加算100点を新設した。低下症の診断基準の検査項目として新たに「咀嚼能力検査」「咬合圧検査」「舌圧検査」を導入した。「咀嚼能力検査」「咬合圧検査」は有床義歯咀嚼機能検査1・2にも利用されエビデンスに基づく算定を強化した。


メタルフリー修復の拡大
 先進国で臼歯部にメタル歯冠修復をする国は少なく、以前からメタルフリーが求められていたが、下顎第一大臼歯に限りCAD/CAM冠が導入された。条件は厳しく上下左右の第二大臼歯が全て残存し、左右の咬合支持がある患者とされた。20年にはパラジウム合金の逆ザヤ問題もあり上顎第一大臼歯にも拡大されたが脆弱性の問題がある。
20年改定に向けて歯科では「長期継続管理による重症化予防」がメインで「歯管」の見直しとともに、初・再診料の引き上げを行った。支払側は前回で十分ではとの意見であったが診療側はコストを重視して欲しいと要求、10 点・2点の増点とされたが、この時点では「コロナ禍」は認識され
ておらず20年4月を迎えた。

 

中川勝洋
東京歯科保険医協会 第3代会長、協会顧問

なかがわ・かつひろ:1967年東京歯科大学歯学部卒業、1967年桜田歯科診療所開設、1981年東京歯科保険医協会理事、昭和大学医学部医学博士授与。1993年協会副会長、2003年協会会長、2011年協会会長を辞し理事に。2022年理事を勇退し協会顧問に就任。

 

長期維持管理政策の歴史 vol.4

民主党政権下における医療費底上げと配分見直し政策の登場

 2009年の衆議院選挙で民主党が勝利し、政権交代が起きた。そして、社会保障審議会医療部会の審議の中で、医療費の底上げと配分の見直しが提起され、歯科も充実すべき分野として位置付けられた。
 同時期の英国では、保守党のサッチャー政権とそれに続くメジャー政権により、国営医療制度NHS(National Health Service)が疲弊。政権を奪還した労働党のブレア政権およびそれに続くブラウン政権が医療費全体の底上げを目指すことなどで、なんとかNHSの蘇生を図ろうと取り組んでいた頃である。
―10年度改定の特徴
 10年4月の歯科診療報酬改定の主な項目を見ると、下記のようになる。
【基本診療料】
・初診料 182点→218点
・再診料 40点→42点
【歯科疾患管理料 月1回】
 歯科疾患管理料は、1回目130点、2回目以降110点であったのが、110点に統一された。
 初診料は36点引き上げられたが、その中身は歯管の中から基本的医療行為の分20点、スタディモデルの包括化等で16点を絞り出す枠内操作である。
 次に、義歯管理料にも見直しの手が入り、左記のようになった。見た目には分かり易くみえるが実質減算で、有床義歯調整管理料30点を新設し、月2回まで算定可能とし、辻褄を合わせた。
【義歯管理料の見直し】 ・義管A 100点×装着
 1カ月以内月2回→装着 月150点
・義管B(70点 2・3カ月目)
・義管C(60点 4カ月~1年)
【歯周疾患に関して】
 歯周基本治療の再治療の場合の評価を30/100→50/100へと引き上げたが、これも枠内操作で長期の治療対象患者でなければ減算となる。その一方で、歯周病安定期治療は150点を300点へと引き上げ、同時に3カ月毎の期間制限、および経過年数での漸減制を廃止し、毎月1回の算定と長期管理へのシフトを促す改定とした。
 10年度改定における歯科の改定率は10年ぶりに医科を上回ったが、歯科の医療費は95年以降2兆5000億円台で横ばい状態であった。その原因の一つは、前装鋳造冠以降、新しい技術・項目の導入がないこと。 また、補管は長期維持管理を評価しているとはいえず、か初診に代表される初診料へのこだわりや、枠内操作での見せかけだけの増点といえる。
 中医協の医療安全に関するコスト調査の結果を見ても、初診時のコストよりも再診時のコストがかかる歯科は、ホスピタルフィーとしての再診料の大幅な引き上げを目指すべきではないか。
 なお、これより2年後の12年度改定では、長期維持管理路線がらみの目立つ改定はなかった。
―14年度改定の特徴
 続く14年度改定においては、まず、歯周病安定期治療に対し、点数引き上げが行われた(一律300点の点数であったのを、歯数に応じた評価に変更した)。具体的には、
・1歯~9歯 300点→200点
・10歯~19歯 300点→250点
・20歯以上   300点→350点 となった。
 これは、16年度改定において、「かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所」、いわゆる「か強診」の導入という大きな変更につなげられ、継続的な管理に対する高い評価のスタートとなった。
 また、管理項目はう蝕・歯周病・在宅をセットしたものとなった。
・う蝕に関してはエナメル質初期う蝕フッ化物塗布処置を行う。
・歯周病に関しては歯周病安定期治療を行う。
・在宅患者に対しては在宅患者訪問口腔リハビリテーションを行う。
 ただし、「外来環」と「歯援診」の施設基準要件を満たした届出が必要なため、参加へのハードルは高いといえる。

 

中川勝洋
東京歯科保険医協会 第3代会長、協会顧問

なかがわ・かつひろ:1967年東京歯科大学歯学部卒業、1967年桜田歯科診療所開設、1981年東京歯科保険医協会理事、昭和大学医学部医学博士授与。1993年協会副会長、2003年協会会長、2011年協会会長を辞し理事に。2022年理事を勇退し協会顧問に就任。

長期維持管理政策の歴史 vol.3

「か初診」の登場とその後

前回は、2000年診療報酬改定で登場した「か初診」(かかりつけ歯科医初診料)の算定要件等と、その後、橋本龍太郎元首相への献金問題を経て2006年度改定で「か初診」廃止
に至るまでの経緯を紹介した。
ところで、「か初診」導入時の2000年から2002年に向けては、膨張する医療費をどうするのかが政権のテーマとなり、混合診療が取り上げられた時期でもあった。歯科では、従来から補綴の金属床総義歯と歯冠修復物に関しては特別な料金(自費)と認められていた。歯周病に関してP特養が医療保険の特定療養費(保険)に適合するかどうかが厚労省医療保健福祉協議会作業委員会で検討され、「継続的な治療管理は保険診療特定療養費の活用」との報告がなされ、中医協の診療報酬基本問題委員会でも「再発抑制に必要なセルフケアを継続して行く上での指導管理の評価」が議論の中心となり、この流れの中で「か初診」廃止後はこの保険者主導の長期管理路線が以降改定ごとに少しずつ取り入れられて来ていると言える。

月に1回 基本治療あり 基本治療なし
1~9歯 310点 210点
10~19歯 450点 270点
20歯以上 620点 360点


2002年4月、日本歯周病学会は「治癒と病状安定」の考えの流れを示すフローチャートを発表し、2002年4月の診療報酬改定では、メインテナンスに係わる総合評価として「歯周疾患継続治療診断料100点」が新設され、1~3カ月間隔で再診時に歯周組織検査・歯周基本治療・指導管理を行った場合に歯周疾患継続総合診療料として表1を算定する取り扱いとなった。
2005年は、小泉純一郎首相による衆議院の電撃解散によって小泉劇場の幕が切って落とされた。基本政策は当時の英国のサッチャー政権と同じ小さな政府であり、構造改革路線の延長として「財政再建」を打ち出した。その中の一つが「医療制度改革」であり、これを受けて厚労省は2005年10月19日、「医療制度構造改革試案」を発表、2025年に向けての医療費の伸びの削減方向を示した。その中で短期的な方向として、①公的保険給付の内容・範囲の見直し、②診
療報酬改定―の2点を挙げた。政府は2005年12月1日、「医療制度改革大綱」を決定。すでに廃止の憶測が流れていた「か初診」は、2006年4月の診療報酬改定で廃止された。しかし、長期維持管理路線=「か初診路線」が強化される方向は変わらなかった。
マスコミは、「医療は高コスト」と表現するが、当事者の我々からすれば、日本の医療は低報酬・低コストであり、先進諸国と比較してもGDP比最低である。良質な医療を低コストで提供しているのが日本であると、WHOも認めていた。
2008年4月改定の中で政府は、「質の高い医療を効率的に提供すための視点」と180度転換、「歯科医療の充実について」との記述が加えられた。その主たるものは2007年11月の日本歯科医学会の「歯周病の診断と治療に関する指針」の発表に基づくもので、分かり易いフローチャートも発表された。その内容は表2のように、管理料の大行列となった。

 

中川勝洋
東京歯科保険医協会 第3代会長、協会顧問

なかがわ・かつひろ:1967年東京歯科大学歯学部卒業、1967年桜田歯科診療所開設、1981年東京歯科保険医協会理事、昭和大学医学部医学博士授与。1993年協会副会長、2003年協会会長、2011年協会会長を辞し理事に。2022年理事を勇退し協会顧問に就任。

長期維持管理政策の歴史 vol.2

「か初診」の登場とその後

2000年(平成12年)の診療報酬改定で、歯科初診料186点とは別に「かかりつけ歯科医初診料」、いわゆる「か初診」が270点で導入され医科初診料と同じになったが、再診料は40点で医科とは異なった。初・再診料の医科歯科格差解消は歯科の長年の要望であったが、か初診以外は従来のままで据え置かれた。その算定要件は、以下の3項目であった。
そして、この要件の中で「同意と文書提供」という縛りを付け、再び「か初診」を算定できるのは、治療終了後3カ月目からとし、また、説明手段のスタディモデル(50点)と口腔内写真(50点)は包括化され算定できない。「か初診」は医科と同じになったが、指導管理を主とする医科との格差はむしろ拡大したと言え、1口腔1初診の歯科の概念が強化された。医科でも00年度診療報酬改定に際して「かかりつけ医機能」について検討され、指導料に対する継続管理加算が導入された。
1日平均16名~20名の患者数の歯科では加算点数はなく、270点だけの算定であり、医科と比べて厳しい「かかりつけ機能」の要件となっており、歯科の中での「かかりつけ機能」の定義付けがされていない中、最初に270点ありきであった。

02年(平成14年)の改定は、初のマイナス改定となった。初診料は186点から180点へ引き下げられたが、「か初診」は270点のまま据え置かれた。また、歯周病に「治癒と病状安定」の概念が取り入れられ、2回目の歯周病検査で病状安定と判断されたら継続治療診断(基本検査・精密検査)を行い100点を算定、①継続治療計画を作成し、②1~3カ月間隔で検査・基本治療・指導という「継続管理」を行う。算定点数は左記表の通りだ。
05年は憂鬱な年となった。橋本龍太郎元首相への1億円献金がワイロとの疑いで日本歯科医師会・日本歯科医師連盟元会長の臼田貞夫氏をはじめ5名の逮捕者を出し、「か初診」と「1億円献金」が連日のように新聞・テレビに取り上げられることとなり、結果、中医協に歯科側委員は出席せず、保険者側の「保険者機能を推進する会」の活動が活発化した。06年(平成18年)の改定で「か初診」は廃止となり、保険者主導のかかりつけ歯科医路線へと姿をかえた。
02年以降、協会は「かかりつけ歯科医」は歯科医師が決めることではなく患者さんが選択することだとして、「か初診」の廃止運動を行ってきた。協会アンケートでは会員の92%は算定していなかった。しかし、患者さんへの情報提供は必要であるので「お口の治療計画書」を協会独自に作成し、従前から会員に提供してきたが、9月の保団連理事会では、いくつかの協会から廃止運動と矛盾しているとの発言がなされた。保団連歯科理事会議ではそのような発言はなされいなかったので、9月に保団連に意見書を提出し、訂正を求めた。

中川勝洋
東京歯科保険医協会 第3代会長、協会顧問

なかがわ・かつひろ:1967年東京歯科大学歯学部卒業、1967年桜田歯科診療所開設、1981年東京歯科保険医協会理事、昭和大学医学部医学博士授与。1993年協会副会長、2003年協会会長、2011年協会会長を辞し理事に。2022年理事を勇退し協会顧問に就任。

長期維持管理政策の歴史 vol.1

はじめに

2003年6月の第31回定期総会において、大多和彦二会長の辞任に伴い、私が会長に指名された時から26年が経ちました。その私が2011年に会長を退いて以降も協会理事、保団連理事と会務を務めてまいりましたが、2022年6月19日の第50回定期総会をもって会務から退くことといたしました。協会の活動に参加してから42年にわたり、これまで会員の皆様よりのご協力をいただきありがとうございました。今後は協会顧問として、協会の諸活動を見守らせていただきます。(中川勝洋)

 

―今後の論議を注視国民皆歯科健診

6月7日に「骨太の方針2022」が発表され、「歯科専門職による口腔健康管理の充実」「医療機関連携の推進」「オーラルフレイル対策」等が示され、その中に「国民皆歯科健診の具体的な検討」が盛り込まれたことが明らかになりました。これを行うことで、医療費全体の削減に寄与できるとしています。率直なところ、「遂に、長期維持管理政策がここまで来たか」、との思いがします。
まだ詳細は分かりませんが、歯科健診が義務化されると、ドイツのように歯科健診を受けない国民へのペナルティーが導入されるかもしれません。今後の論議を見守りたいと思います。


―改定変遷の振り返り 「か初診」から「か強診」へ

1990年から2020年まで、「歯界展望」(医歯薬出版株式会社刊)誌上に診療報酬改定ごとに書かせていただいた「診療報酬改定の特徴と評価」を読み返して厚生労働省の歯科医療、歯科保健政策の変遷を振り返ってみました。
1996年(平成8年)3月末、それまでのPⅠ型・PⅡ型などの歯周病治療から現在の歯周病治療の体系である「歯周病の診断と治療のガイドライン」に再編されました。基本検査と精密検査に基づく治療の流れが示され、初診月には算定できなかった指導料も65点で導入されました。同時に歯冠修復物に対する補綴物維持管理料、いわゆる「補管」が2年間の縛り付きで導入されています。
日本歯科医師会は改定財源を確保するためだとし、「責任と保証」という言葉遣いでの説明は回避。しかし、2年以内の破損等での再製作に係わる費用が算定できないことは、診療側が責任を取り、維持管理料という名前の保証料で再製作を引き受けるということです。歯冠修復物の再製作での請求が多いことへの対応ではありますが、クラウン150点、ブリッジ 5歯以上500点、6歯以上670点のためか、保団連の一部は反発したものの大きな運動にはならず、結果は歯冠修復物の請求が減少し、保証料を下回りました。


―英独海外視察の原点

この制度もドイツで充填、補綴物の保証というペナルティーとともに導入されており、後日、協会による2006年のイギリス・ドイツへの歯科医療視察団派遣の原点となりました。

 

 

中川勝洋
東京歯科保険医協会 第3代会長、協会顧問

なかがわ・かつひろ:1967年東京歯科大学歯学部卒業、1967年桜田歯科診療所開設、1981年東京歯科保険医協会理事、昭和大学医学部医学博士授与。1993年協会副会長、2003年協会会長、2011年協会会長を辞し理事に。2022年理事を勇退し協会顧問に就任。