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<オン資訴訟判決後緊急インタビュー>提訴から2年、棄却も意気軒昂 判決がマイナ問題“再議論”のきっかけに(佐藤 一樹×早坂 美都)

<オン資訴訟判決後緊急インタビュー>提訴から2年、棄却も意気軒昂 判決がマイナ問題“再議論”のきっかけに(佐藤 一樹×早坂 美都)

― まずは提訴に至った経緯を教えてください。

骨太方針2022に、翌年4月からオン資義務化、保険証廃止の方針が明記され、電子カルテの標準化により行政と医療界、医学会、産業界が医療情報を利活用する旨が記載されたので注意していたところ、同年8月、厚労省と三師会合同のオンライン説明会で、保険局担当課長が、「療養担当規則が改正され、23年4月1日からオン資が義務化される。導入しない場合、保険医療機関の指定取消し事由になる」旨を発言したことで提訴を決意しました。

― 訴訟の中心を担った東京保険医協会は、当初、訴訟をどう受け止めていましたか。

最高裁判例を研究したところ、本件類似判例で原告が国(担当官庁も厚労省)に勝訴した「医薬品ネット販売権利確認訴訟」があり、訴状の段階からこの判例法理に沿って主張しました。この訴訟の最高裁調査官が偶然、今回の裁判長である岡田幸人判事でした。訴訟の進行も、原告の希望が通ったり、裁判長が被告である国に対して準備書面を書くにあたり、テーマを出したりしていたので、弁護団も原告団も原告有利と考えていました。

― 訴訟の争点は?

(1)健康保険法上、給付の「内容」は保険医療機関及び保険医療養担当規則(療担規則)に委任しているが、資格確認の「方法」については、条文に委任していると書かれていない。これは、法律(健康保険法)の委任がなければ、省令(療担規則)に罰則を設け、義務を課したり、国民の権利を制限する規定を設けることを禁じた国家行政組織法に違反するか否か。
(2)仮に健康保険法上、委任がされているとしてもオン資確認義務化は、委任の範囲を逸脱しているか否か。

最高裁“逆転勝訴”経験した喜田村弁護士

― 弁護団の弁護士はどのような方たちですか。

自由人権協会の主要メンバーで行政訴訟や人権関連訴訟のスペシャリスト。喜田村洋一弁護士と二関辰郎弁護士は、憲法訴訟・行政訴訟の歴史上に燦然と輝く「在外日本人選挙権剥奪違法確認等請求事件」(以下、在外日本人選挙権訴訟)の弁護団長と団員で、最高裁大法廷で逆転勝訴しました。喜田村弁護士は、日本の名誉毀損裁判の基準を創った実力者で、レペタ裁判、ロス疑惑事件、エイズ帝京大事件、ジャニーズ事件、松本人志事件などを担当した日本有数の弁護士です。

― 勝訴した場合、①医療機関、②患者さんにはどのようなメリットが。

①マイナ保険証のためのカードリーダを準備しなくてもよいし、マイナ保険証による資格確認を行わなくてもよいことになります。

②マイナ保険証の義務化で廃業を余儀なくされる医療機関が継続され、患者も安心して従来のかかりつけ医に通院できます。

― 改めて療担規則や、それを違反するとどうなるか教えてください。

療養担当規則は省令(厚生労働省令)なので法令です。各省大臣が担当する行政事務について,法律(健康保険法等)の特別の委任に基づいて定めるルールです。療養担当規則に違反した場合(主に診療報酬に関連した不正など)、最終的には、保険医療機関の取消しの可能性があります。通常は唐突に「取消」ということはありませんが、個別指導から監査を経て、「注意」「戒告」「取消」のどれかの評価を受けることになります。

― 膨大な原告の準備書面は、どのように作られたのでしょうか。

弁護団と原告(主に東京保険医協会理事と事務局や保団連事務局員等)で創設した「訴訟ワーキンググループ」のメーリングリストで、常時さまざまな情報交換をし、弁護団に書面案を作成していただき、医療側で実務関連のチェックをしました。毎月第2月曜日に、東京保険医協会で対面とウェブを併用して会議を開催し、決定しました。二関弁護士は、私の高校2年時のクラスメイトで、カフェで草案の素案を2人だけで練ったこともありました。

― 佐藤先生は医師として診療にあたりながら、原告団の事務局長も担っています。苦労する点も多いのではないでしょうか。

苦労もありますが、医療と法律のはざまで起こるさまざまな課題への対応 は、ライフワークなので積極的に取り組んでいます。日常的に、医療刑事事件、冤罪事件、医療民事事件の意見書を書いたり、法廷に立ったり、個別指導に立ち会って厚生局を監視したり、医療事故調査制度に関係する厚労省の担当者に面会したり、厚労族議員を訪問したり、一緒に医療安全学会の活動をしたりしていますので、この訴訟もその一部です。

― 提訴から判決まで約2年を費やしました。これほど長い期間を要する理由は何だと思われますか。

民事訴訟に輪をかけて行政訴訟の進行は遅いのが一般的で、審理期間は平均15カ月と言われています。今回は、原告が1,415人で、しかも医師と歯科医師、被告が国という大裁判なので、21カ月かかりましたが、それは想定内でした。

― 一審は残念ながら請求棄却となりました。判決を言い渡された時の様子や受け止めを。

弁護団も原告も勝勢と思っていましたので、シーンとした感じでした。岡田裁判長はこれまで、国に対して厳しい指導をして、裁判進行は原告の希望に添って行っていたので、期待していました。裏切られたというか、将来の出世を見越した公務員気質なのか…という残念な気持ちになりました。岡田裁判長は、安倍晋三国葬差止事件、神宮外苑再開発事業認可取消事件、性風俗関連特殊営業持続化給付金支払事件でも国を勝たせていました。

報道陣へ強く呼びかけ…その真意

― 判決後の会見で報道陣に対して“保険証廃止報道”を避けるよう強く呼びかける姿が印象的でしたが、その真意は?

12月2日の法令施行では、「被保険者証」が「資格確認書」に代わりますが、保険証は期限が来るまで使用できます。その後は、資格確認書が保険証の役割を果たしますので、マイナ保険証は不要です。法令では、「廃止」「停止」といった文言はないのに、「保険証廃止」と報道すると、焦ってマイナンバーの取得やマイナ保険証の登録が義務になったと勘違いして申請してしまう人が増えるかもしれません。それを阻止するためです。

― 判決後、周囲の反応はどうでしたか。

患者さんにも、周囲の医師や弁護士にも、当然、控訴するものだと思われていて、励まされています。判決前 に、テレビ局2社、通信社2社、新聞社4社、週刊誌1社からの個別取材を受けましたが、判決後にも改めて取材申し込みがありました。改めてマイナ保険証の問題点を論議するきっかけにもなっています。

― 控訴した際、原告の主張や書類等は一審から変更、修正が加えられるのでしょうか。

まだ主張は検討中ですが、おそらく変更はなく、新証拠や既存の証拠などから角度を変えた主張を追加して修正することになると思います。

― 控訴する際の原告団メンバーは、これまでと同じでしょうか。

一審原告団のうち、亡くなった方や、アンケートで控訴に参加しないと明確な姿勢を示した方を除いた1,366名です。

― 控訴後、勝訴した場合、国は上告することが予想されますが、どのような想定をされていますか。

事実審は二審までなので、上告審は専ら法律論になります。一般に上告が受理されるためには、上告提起(憲法違反または法律に定められた重大な訴訟手続の違反事由が存在する場合)、上告受理申立(最高裁判例違反や法令の解釈に関する違反)を行います。実質上、上告理由は、憲法違反か最高裁判例違反のみとされています。こればかりは、二審判決がでない限り予想は困難です。

― 控訴審に向けた意気込みを教えてください。

喜田村弁護士は、「『在外日本人選挙権訴訟』では、一審も二審も敗訴したのに、最後、大法廷で逆転勝訴した。一審の判決は、「国の主張をそのまま入れた『お手軽判決』と言うしかない。我々の主張がなぜ通らないのかについては、触れていない」とおっしゃっています。また、判決を法廷で聞いた原告44人は、その直後から控訴を決意していますので、意気軒昂です。

― 多くの保険医が訴訟を注目しています。そうした先生方にメッセージを。

一般に行政訴訟の原告勝訴率は一桁と言われています。以前も貴紙に「弁論終結段階で、弁護団も、原告勝勢とみている。しかし、裁判結果は『石が流れて木の葉が沈む』こともある」と書きましたが、現実となりました。これは、二審でも言えることですが、弁護団は法律論争では負けていないと考えています。
東京歯科保険医協会の会員の先生方におかれましては、応援のほど引き続きよろしくお願いいたします。

― 本日はありがとうございました。

※「東京歯科保険医新聞」2025年1月1日号(7面)掲載

【関連記事】
原告の訴え「棄却」/オン資訴訟控訴は今後検討
「オンライン資格確認義務不存在確認等請求訴訟」提訴からの進捗と展望

【2025・年頭所感】変化の一年経て協会のさらなる発展へ

2017年6月の総会で会長を拝命し、8回目の年頭所感として新年のご挨拶をさせていただきます。

一昨年の年頭所感で本会会員数5,951名、昨年は6,030名と6,000名を超え、順調に会員数が増加していることをご報告しました。さらに24年12月1日時点では6,036名の会員数となりました。東京都内の歯科保険医の任意団体として、既会員の先生方からのご紹介を含め、多くの先生が本会の会員になっていただいたことにこの場をお借りして心から御礼申し上げます。また、未入会の先生におかれましては、歯科医業を行ううえで本会入会によって多くのメリットがあると自負しております。ぜひ、ご入会のご検討をよろしくお願いいたします。
会員数は増加していますが、微増という状況です。その内容を見ると多数のご入会がありましたが、その反面、ご退会が多かったことが24年の特徴でした。ご退会された方々に聞き取りをした結果、「高齢」を理由とするものが最多でしたが、「オンライン資格確認システム」「マイナ保険証」「レセプトのオンライン請求」がその背景にあると推察されました。そのうち、すべての前提となる「オンライン資格確認システム」に関しては、義務化撤回を求める訴訟の判決が昨年11月28日に出されました。残念ながら判決の結果は「棄却」でしたが、判決文に多くの疑問が残り、12月12日に控訴の手続きが行われました。なお、「東京歯科保険医新聞」2025年1月1日号(3・7面)に関連記事を掲載していますので、ご一読いただければ幸いです。
昨年は2年ごとの診療報酬改定だけでなく、3年に一度の介護報酬改定、および障害福祉サービス等報酬改定が重なる6年に一度の〝トリプル改定〟でした。そして従来、診療報酬改定は4月1日施行でしたが、今次改定は4月1日に改定、施行は2カ月後の6月1日と、大きな変更がありました。改定は、 65歳以上の高齢者の割合が全人口の約35%に達すると推測されている「2040年問題」を背景に医療費の抑制が意識された改定といえるものです。さらに今般の物価高騰の対策として「賃上げ」、すなわちベースアップ評価料が診療報酬上に設定されたことが特徴といえます。
ベースアップ評価料を始め、新たな項目、算定要件、加算、施設基準や届出などが多数あり、複雑で理解が難しいものでした。会員からの保険請求関連の質問や疑問の電話による問い合わせは、一昨年、昨年と比較して2倍近い数と非常に多く、協会の電話は絶えず鳴り続ける状態でした。これらの対応は、本会の重要な会員サポートの一つですから全事務局員には、丁寧に行うようお願いしました。一方で人員不足、および労働環境整備のため会員に対しては断腸の思いでしたが、昨年9月1日より電話受付時間を、短縮させていただきました。この変更は、会員の先生方にご不便をおかけすることとなり、大変申し訳なく思っております。
そもそも今次改定について行政側は、改定から施行までに2カ月間の時間的な余裕が生じるため、医療機関サイドはさまざまな準備、内容の周知が進むことが期待できると説明していましたが、それに反した結果になったといえます。したがって、歯科保険医療機関の混乱、そして多大な影響が今だに続いている責任は行政側にあること、その対応を本会が少なからず担っていることに対し、遺憾である旨は厚生労働省側に既に伝えております。
政府は昨年12月2日に新たな保険証の発行を終了し、マイナンバーカードの普及のためマイナ保険証を取得させ利用させることに邁進しています。しかし、保険医療機関におけるトラブルは全く解消されていませんし、9種類もの資格確認方法があるため、受付業務が混乱しているとの報告も受けています。これらを受けて本会は、現時点で以下の要望を国会議員に要請しています。

・現行の健康保険証は存続をさせること。少なくとも、健康保険証の有効期限(最長25年12月1日)を延期させること
・患者および窓口業務の混乱解消のため、マイナ保険証ありの患者に紙の「資格情報のお知らせ」を、マイナ保険証なしの患者に「資格確認書」を送付する取り扱いを改め、マイナ保険証の有無にかかわらず「資格確認書」を送付すること

本会設立から51年、多くの会員、事務局員、関係各位に支えていただきました。これからも一層、会員が患者、国民に良質な歯科保険医療を提供するためのお手伝いを心がけ、さらなる発展を目指します。
なお、会長を拝命して以来長きにわたりご理解、ご協力を賜ったことに心から感謝申し上げます。今後も本会に倍旧のご支援をよろしくお願い申し上げます。

東京歯科保険医協会会長 坪田 有史(2025年 年頭所感)

協会事務局休務のお知らせ

協会事務局休務のお知らせ

年末年始につき、以下の期間、東京歯科保険医協会事務局を休務とさせていただきます。あらかじめ、ご了承ください。

2024年12月28日(土)~2025年1月5日(日)

なお、年内の最終業務は2024年12月27日(金)、新年の業務は2025年1月6日(月)から開始となります。

東京歯科保険医新聞2024年(令和6年)12月1日

東京歯科保険医新聞2024年(令和6年)12月1日/No.657

こちらをクリック▶「東京歯科保険医新聞」2024年(令和6年)12月1日

【新聞12月号】

【1面】
1.坪田会長ら 健康保険証発行終了「できる状況にない」/当選議員を表敬訪問 歯科医療への理解求める
2.原告の訴え「棄却」/オン資訴訟 控訴は今後検討
3.12月2日発行終了は問題/各方面から訴え「健康保険証は必要」
4.「探針」
5.ニュースビュー

【2面】
6.マイナ保険証トラブル/半数の医療機関で保険証廃止後 受付業務に懸念
7.12月から変更「医療情報取得加算」/マイナ保険証の有無にかかわらず1点に
8.歯科用貴金属改定情報(12月~)金パラは引き下げ

【3面】
9.歯科技工士 5年後に半数が「辞めている」「わからない」/歯科技工所アンケートで窮状明らかに
10.支援金▶15万円(歯科診療所)申請開始▶12月下旬頃/都・医療機関物価高騰支援金 概要公表
11.オン資《資格確認限定型》経過措置対象医療機関も申請開始
12.通知が届いてからでは手遅れ/新規個別指導から保険診療のルールまで網羅
13.マイナ保険証/ひも付け解除申請始まる
14.協会事務局休務のお知らせ

【4面】
15.連載「マイナ保険証の〝失態〟を追う~このまま見過すことはできません~」/第9回期待したい「資格確認書」の全員配布(荻原博子さん/経済ジャーナリスト)
16.オスプレイが民家と並ぶ日常/台湾有事で高まる沖縄県民の不安にふれる
17.IT相談室「数千本のスマート歯ブラシがネットを攻撃」…というニュースから学べること
18.通信員便りNo.146

【特集①~④】
19.保存版「健康保険証の発行終了。どう対応すればいい?」/新人スタッフでも安心!これからの窓口対応きほんのマニュアル

【5面】
20.教えて!会長!! Vol.89 速報!「2024年度診療報酬に係る歯科会員アンケート調査」について
21.これから始める歯科訪問診療講習会「不安が解消できた!」
22.理事会だより
23.11月協会活動日誌

【6面】
24.研究会・行事ご案内

【7面】
25.経営・税務相談Q&A No.423「年末調整~注意したい2024年の変更点~」
26.オーラルフレイルを見過ごさない/第1回学術研究会を開催
27.12月会員無料相談のご案内
28.共済部だより

【8面】
29.第4回メディア懇談会/歯科技工所の将来に危機感
30.神田川界隈「弱者のつぶやき…地域医療の崩壊か」(理事・呉橋 美紀/大田区)」
31.「イイ歯デー街頭宣伝」in新宿を開催/歯科治療の保険適用拡充を!!
32.会員の「2024今年の漢字」
33.会員の意識と実態調査/調査の回収数1,648件、回収率27.44%
34.年末年始休診ポスターのご案内

第4回メディア懇談会/歯科技工所の将来に危機感

第4回メディア懇談会/歯科技工所の将来に危機感

11月8日に行われた第4回メディア懇談会(通算104回)で、説明にあたった山本鐵雄副会長は「歯科技工の消滅を招く」と、歯科技工業界の厳しい状況を伝えた。

▼歯科技工所の収入改善が急務

この日は、協会が実施した歯科技工所アンケートの結果を公表。歯科技工士の就労環境に触れ、個人経営の歯科技工所の所得改善が急務で、その理由として所得が低いため「機器を導入することができず、新技術に対応できない」ことを挙げた。今後の歯科技工士の減少が、年間1,0002,000人ペースと予測されていることに対し、強い危機感を示した。なお、参加者からは地方のいわゆる〝1人ラボ〞を法人の歯科技工所が買収するケースが増えているという事例が紹介された。

そのほか、「会員の意識と実態調査」や、オンライン資格確認の義務化撤回訴訟の話題をもとに懇談した。

▼参加者もマイナ保険証「使いたくない」

他方、マイナ保険証トラブル調査第4弾については、医療機関で続くトラブルの実態を報告した。これに対し参加メディアからは、医療機関のトラブル対応への負担に理解を示した上で「(マイナ保険証を利用すると)例えば国民にとって『3兆円あるいは4兆円分のメリットが生じる』などそうしたことを具体的に示すことができない限り納得感がなく、マイナ保険証を使いたくない」と指摘した。

当日は、メディア45名が参加し、早坂美都副会長が司会を務めた。

【教えて! 会長!!  Vol.89】 速報! 「2024年度診療報酬に係る  歯科会員アンケート調査」について

【教えて! 会長!! Vol.89】 速報! 「2024年度診療報酬に係る  歯科会員アンケート調査」について

Q 先月行われた「歯科会員アンケート」について。

 今秋、各種のアンケート調査を短い期間で複数行い、お忙しい中、ご回答いただいた先生に御礼申し上げます。

ご質問の「歯科会員アンケート」ですが、こちらは保団連(全国保険医団体連合会)が行った全国調査で、当会会員に対しても、全国調査と同一の内容で回答をお願いしました。111日からの短期間でしたが、FAXならびにWEBフォームでご対応いただいた会員の先生方に感謝いたします。

なお、5年に一度、当会独自で行っている「会員の意識と実態調査」は、101日から回答をお願いし、返信率は過去最多となりました。ご協力いただいた先生方に重ねて御礼申し上げます。結果は現在集計中で、過去のデータとの比較、各項目の推移や統計解析などを行っています。近日中に報告ができると思いますので、少々お待ちください。

Q 「歯科会員アンケート」の結果について。

A 全国調査の結果は、現在、当会会員回答分を含め集計中ですが、1112日までのWEBフォームでの回答(回答数82)のうち、速報として参考になる項目を抜粋して報告させていただきます。

表1に施設基準の届出数、届出率を示します。9月の時点での東京都のデータでは、外安全152.4%、外感染163.4%、口管強が31.3%、光学印象が12.2%、ベースアップ評価料126.5%でしたから、今回の回答による届出率は、明らかにすべてが高い値でした。当会から会員に向けた情報発信が影響した可能性があり、この結果を評価したいと思います。

歯科医師、事務職員、院外歯科技工士を除く、医療スタッフの賃上げ対応として、新設されたベースアップ評価料の評価を表2に示します。「評価しない」との回答が半数の50.0%でした。

次に、「本来の診療報酬改定の意義が発揮できるよう、初・再診料の引き上げや医療行為の評価を中心とした再改定を求めますか」という設問の結果を表3に示します。92.7%が「再改定を求める」との回答でした。今次診療報酬改定での全体の評価についての回答(表4)は、「どちらかといえば悪かった」と「悪かった」を合わせると、68.3%が「評価していない」との回答でした。

これらはWEB回答のみで、母数が多いとはいえない段階ですが、総じて今次診療報酬改定に対して、評価していない会員が多いとの傾向がうかがえます。今後、集計が終わりましたら、全国ならびに当会会員に限った結果を本紙や当会のホームページで報告します。

東京都の中での当会会員、あるいは全国からみた当会会員、そして他協会会員の傾向などがわかるアンケートは、会員各位にとって有益な情報となります。また、これらのデータを持参して、国会議員、厚生労働省に意見や要望を行います。今後もさまざまなアンケートを実施する機会があります。その際は、何卒ご協力のほど、よろしくお願い申し上げます。

東京歯科保険医協会

会長 坪田 有史

(「東京歯科保険医新聞」202412月号掲載)

【IT相談室】 「数千本のスマート歯ブラシがネットを攻撃」…というニュースから学べること

【IT相談室】 「数千本のスマート歯ブラシがネットを攻撃」…というニュースから学べること

2024年4月にヨーロッパのニュースサイトに「数千本のスマート歯ブラシが乗っ取られ、DDoS攻撃をする」というニュースが掲載され、あちこちに転載され話題になりました。

◆内容を分析してみる

スマートフォンアプリと連動して通知を発信できるような高機能なスマート歯ブラシは、乗っ取られる危険性があります。現在ではインターネットにアクセスできる家電や事務機器は多数あり、そのような機器の乗っ取りは一つの脅威として認識されています。

ところで、DDoS攻撃というのは、ある特定のホームページなどに短時間に集中的にアクセスして閲覧不能にする攻撃で、ランサムウエアなどと比べると古典的と呼べる脅威です。

一つの発信元から大量のアクセスをすると簡単に対策を講じられてしまうので、数多くの端末(今回はスマート歯ブラシ)を乗っ取って一斉に攻撃します。

◆情報感度と冷静さの両立が必要

結局このニュースは、仮定だったはずの話が実際に起こった事件として記事になった誤報でした。後日、そのような乗っ取りの可能性自体もほとんどないことが判明。多くのセキュリティ専門家がこのニュースを拡散し、広まったものの、正体がわかってからは火消しに走りました。

このニュースは一種の笑い話で済みましたが、もし運悪く、もっと広く拡散していたら、歯科のイメージやスマート歯ブラシの普及に悪影響があったかもしれません。

情報感度と冷静さを両立することは難しいことですが、まずは経過を観察する余裕を持っていただければと思います。

※なお、次回はGoogleのステマ規制での摘発事例をご紹介します。

クレセル株式会社

(東京歯科保険医新聞202412月号4面掲載)

【荻原博子さん連載】マイナ保険証の〝失態〟を追う~このまま見過すことはできません~ 第9回 期待したい「資格確認書」の全員配布

第9回 期待したい「資格確認書」の全員配布

いよいよ、「健康保険証」の新規発行が終了する122日が近づいてきました。

新規発行が終了しても、有効期限内であれば最長1年は保険証が使えることを知らない人は多い。中には、「保険証の新規発行が終了するから、急いで『マイナ保険証』を作らなければ」と思っている人もいるようです。

そういう人には、「保険証の新規発行が終了しても、有効期限までは手持ちの保険証が使えるし、有効期限が来ても、その前に資格確認書という保険証代わりになるものが自動的に送られてくるので、大丈夫ですよ」と教えてあげると、マイナ保険証を持っていない患者さんも安心するのではないでしょうか。

以前、元厚生労働大臣で立憲民主党の長妻昭代表代行と話していた時、保険証も資格確認書も同じ内容を記載しているのだから、保険証の上に「資格確認書」というシールを貼ればいいんじゃないか」とおっしゃっておられました。

その時は「まさか」と思ったのですが、先日、手違いで流出した神奈川・川崎市の「資格確認書」を見ると、名前だけは違いますが、保険証とそっくり。たぶん、これを送られた人は、「新しい保険証が来た」としか思わないことでしょう。

川崎市の「被保険者証」

川崎市の「資格確認書」

◆ 自治体を襲う「マイナ保険証の2025年問題」

国は、マイナ保険証を持たない人には資格確認書を、マイナ保険証を持っている人には資格情報のお知らせを送ることにしています。ただ、マイナ保険証を持っているか否かは、機械的には判断できません。

例えば、マイナ保険証を返納した人は、マイナカードはないけれど登録解除をしていないケースが多い。なぜなら、多くの人が登録解除できるようになったのは1028日からなので、マイナカードは返納したけれど登録はそのままになっているケースが多いからです。

また、これからはマイナカードの電子証明書の有効期限切れという問題も発生してきます。保団連(全国保険医団体連合会)の調べでは、マイナカードの電子証明書の更新は25年度には、なんと23年度の約12倍、約3,000万人が、更新手続きのために自治体窓口に押し寄せる。

ただ、役所が開いている時間帯に働いている人たちなども多く、実際には更新しないまま無保険状態になる人もかなり出てくるでしょう。

◆「資格確認書」を全員に送れば 多くのトラブルを防げる

介護施設の中には、「マイナ保険証は預からない。資格確認書にしてもらっています」というところもあります。なぜなら、マイナカードだけでなく暗証番号も預からねばならず、人手不足の中では、とてもそんなコストをかけてカードの管理はできないから。介護業界では余裕がある事業者が少ないだけに、今後、そうした施設は増えていくでしょう。

いま、「マイナ保険証 使われない理由はコレ」というYou tube動画がバズっています。先日、これを作って自らも出演している大阪府守口市の北原医院・井上美佐医師にお話を聞きました。井上医師いわく「なんで、こんなに不便なんやろ。医療現場はトラブルだらけ」とおっしゃっておられました。

保険証さえ廃止しなければ、こうしたトラブルの多くは解決します。百歩譲って保険証が廃止されたとしても、すべての人に資格確認書を送ることで多くのトラブルを防ぐことができます。

立憲民主党の野田佳彦代表が、1027日の衆院選の開票特番「Live 選挙サンデー 超速報SP」(フジテレビ)で、「まずは紙の保険証を使えるようにする」と政策目標を挙げました。その実現を願うとともに、もしダメでも、せめて資格確認書をすべての人に送ってほしいものです。

【全文を読む】第9回 期待したい「資格確認書」の全員配布

経済ジャーナリスト 荻原 博子

プロフィール:おぎわら・ひろこ/経済ジャーナリスト。家計に根ざした視点で経済を語る。バブル崩壊直後からデフレの長期化を予想し、現金に徹した資産防衛、家計運営を提唱し続けている。新聞・経済誌などに連載。新聞、雑誌等の連載やテレビのコメンテーターとしても活躍中。近書に「マイナ保険証の罠」(文春新書)、「マイナンバーカードの大問題」(宝島社新書)など。

【荻原博子さん連載】マイナ保険証の〝失態〟を追う~このまま見過すことはできません~ 第8回 誰も検証せずに突き進む「保険証廃止」

第8回 誰も検証せずに突き進む「保険証廃止」

先日、元厚生労働大臣で厚労省(厚生労働省)に人脈もある、立憲民主党代表代行の長妻昭氏にお会いしました。一番驚いたのが、「週刊新潮」2024620日号が報じた「マイナ保険証」での死亡事例について。

岐阜県内で具合が悪くなって病院を受診した人が、「マイナ保険証」の読み取りができず、受診もできずに帰ったら、心筋梗塞でお亡くなりになってしまったという事例です。

これについて、当時の河野太郎デジタル大臣は、「厚生労働省に聞け」の一点張り。武見敬三前厚労大臣も「そういった事実は、私は確認しておりません」と会見で話していたので、本当に厚労省が確認したのかを長妻氏に聞きました。

「普通は、“マイナ保険証”で診療を受けられなかった人が死亡するというような報道があったら、いの一番に事実関係を確認し、もし誤報だったら記者会見を開いて、その場できっぱり否定すべきです。また、それが事実無根だったら、報道した週刊新潮にも毅然とした態度で抗議すべきですが、厚労省がこの件を調べた形跡がない。もし、命に関わるような事故が起きたら、徹底的に原因を解明しなくては、国民の信頼は得られないというのに、こんな無責任な状況で〝保険証〟を廃止するというのは間違っています」と、怒っておられました。

おっしゃる通り、調べもしないまま、何もなかったように進めて良い話ではないでしょう。

◆「保険証廃止」は過去に前例のない決定

さらにひどい話は、保険証の廃止は厚生労働省が医療状況を見ながら決めたのではなく、ある日突然、医療とは関係ない当時の河野デジタル大臣が、現場を見ずに独断で決めたことです。

長妻氏は、「そういう決め方は、過去に前例がない。それまで、厚労省では現場のデータを集め、それを学者や有識者からなる審議会で議論してきた。ところが、“保険証の廃止”は下から積み上げたデータはなく、審議会での議論もないまま、当時の厚労大臣さえも寝耳に水といった状況で決まってしまった。普通は、ありえないですよ。国民の命に関わる医療の重要案件を、審議会も通さずに管轄外のデジタル庁主導で独断で決めるなど言語道断」。

長妻氏が最も危惧しているのは、来年から“マイナ保険証”に電子カルテ情報がひも付けられること。

「“カルテ情報”は、まさに患者のプライバシーそのもの。これをひも付けるとなれば、患者の医療の個人情報が丸裸にされる恐れがある。しかも、こうした情報は高く売れるので、ハッカーなどに狙われやすい。今の日本政府が、海千山千のハッカー攻撃を100%防げるのか不安です」。

◆残念な首相の「手のひら返し」!!

「マイナ保険証」の病院窓口での利用率は、今年8月で12.43%。なんと8人中7人は「保険証」を使っている。

総裁選への出馬前、石破茂総理は「期限が来て納得しない人がいっぱいいれば、(現行の保険証との)併用も選択肢として当然だ」と話していました。当時の林芳正内閣官房長官も健康保険証の廃止期限を見直す意向を示し、「(関係者からの)不安の声を直接耳にした」と語っていました。

ところが、発足した内閣では、総裁選前の発言はなかったかのように、総理も官房長官も「廃止の方針に変更はない」と発言。福岡資麿厚労大臣や平将明デジタル大臣が「廃止の方針を堅持する」と言ったので、これに歩調を合わせたのでしょう。

実は、前述の長妻氏は、「石破総理が見直すと言うのだから、総理に忠実な平大臣が廃止を主張するのは難しいか」とおっしゃっていたのですが、結果は、“廃止派”に石破総理が押し切られたということ。

一体、誰のための政治かと言いたくなります。

経済ジャーナリスト 荻原 博子

プロフィール:おぎわら・ひろこ/経済ジャーナリスト。家計に根ざした視点で経済を語る。バブル崩壊直後からデフレの長期化を予想し、現金に徹した資産防衛、家計運営を提唱し続けている。新聞・経済誌などに連載。新聞、雑誌等の連載やテレビのコメンテーターとしても活躍中。近書に「マイナ保険証の罠」(文春新書)、「マイナンバーカードの大問題」(宝島社新書)など。

原告の訴え「棄却」/オン資訴訟控訴は今後検討

原告の訴え「棄却」/オン資訴訟控訴は今後検討

オンライン資格確認を療養担当規則で原則義務化するのは違憲だとし、全国の医師・歯科医師ら1,415人が国を訴えた裁判の判決が11月28日午後3時、東京地裁で言い渡された。岡田幸人裁判長は、原告の訴えを棄却した。

判決後、取材に応じた須田昭夫原告団長(東京保険医協会会長)は、控訴については今後、弁護団と検討するとした。詳報は本紙2025年1月号掲載予定。本訴訟は2023年2月22日に原告が第一次提訴。計8回の口頭弁論の末、今年9月19日に結審した。

なお、この日は当協会会長で原告団副団長の坪田有史氏、副会長の早坂美都氏、理事の橋本健一氏、会員の扇山隆氏も参加した。

年末年始休診案内ポスターのご案内

年末年始休診案内ポスターのご案内

東京歯科保険医新聞2024年(令和6年)11月1日

東京歯科保険医新聞2024年(令和6年)11月1日

こちらをクリック▶「東京歯科保険医新聞」2024年(令和6年)11月1日

【新聞11月号】

【1面】

1.衆院選2024 躍進の野党/保険証〝併用・残すべき〟
2.問い合わせ増える「薬剤長期収載品の選定療養」
3.「残そうよ健康保険証」改めて署名にご協力を 〝保険証発行終了は中止を〟国会議員から指摘相次ぐ
4.探針
5.ニュースビュー

【2面】

6.薬剤長期収載品の選定療養/処方箋の記載方法は?
7.生活保護の指導計画 2024年度は8件を実施予定/協会の開示請求により判明
8.保団連が第39回医療研究フォーラムを開催 協会会員が「介護施設の口腔衛生管理」で発表/山本鐵雄副会長と橋本健一理事も演題発表
9.全国調査・2024年度診療報酬改定 「歯科会員アンケート」ご協力のお願い
10.10月号訂正

【3面】

11.教えて!会長!! Vol.88「マイナ保険証トラブル調査結果について」
12.「会員の意識と実態調査」ご協力に感謝!!
13.会員寄稿「声」/随筆「DXの光と影」②完 小林顕(板橋区)

【4面】

14.連載「マイナ保険証の〝失態〟を追う~このまま見過すことはできません~」/第8回誰も検証せずに突き進む「保険証廃止」(荻原博子さん/経済ジャーナリスト)
15.オン資猶予でも資格確認限定型を導入可/マイナ保険証機能のスマホ搭載、見切り発車感否めず
16.共済部だより

【5面】

17.解説/健康保険証の発行終了後はどうなるのか?②/トラブルの類型と実際の対応方法
18.オン資猶予届出“不受理” 保険医辞退検討も/まずは協会にご相談を

【6面】

19.研究会・行事ご案内

【7面】

20.経営・税務相談Q&A No.422/最近目立つ相談内容より 求人トラブル、定額減税、賃上げ促進税制
21.理事会だより
22.10月会員無料相談のご案内
23.10月協会活動日誌

【8面】

24.退き際の思考 歯科医師をやめる(松井裕子さん・後編)「私たちの年代が役に立つとしたら…今なお歯科医療に熱意」
25.神田川界隈「自分を考察する随想録」(理事・相馬 基逸/品川区)
26.「今年の漢字 2024」「2025年新年号巻頭写真」募集中

【連載】退き際の思考/私たちの年代が役に立つとしたら…今なお歯科医療に熱意(松井裕子さん【後編】)

私たちの年代が役に立つとしたら…今なお歯科医療に熱意(松井裕子さん【後編】)

私たちの年代が役に立つとしたら…今なお歯科医療に熱意

松井裕子さん―後編
前編はこちら

松井裕子(まつい・ゆうこ)さん/1951年東京都生まれ。1976年東京医科歯科大学歯学部卒業。補綴学教室で1年間の副手・医員を経て、1981年同大大学院修了後同医局に助手として勤務。1990年4月より宮内庁病院へ出向。2017年3月、定年。非常勤歯科医師として同病院勤務。2024年、退職。

 歯科医師としての“引退”に着目した本企画。すでに歯科医療の第一線を退いた先生らにお話を伺い、引退を決意した理由や医院承継、閉院の苦労などを深堀りする。
 今回は、宮内庁病院で勤務医として34年にわたる歯科医師キャリアを過ごした松井裕子先生(73歳)の後編。今後も何らかの形で歯科医療に携わり続けたいという松井先生にお話を伺った。前編から読む

―退職してもなお歯科医師を続けたいとのことですが、勤務形態や時間など具体的にどのような形をイメージしていますか。

 模索中ですが、退職直前は週1回勤務のリズムできたので週に1~2回、あるいはもっとフレキシブルな働き方ができればと思います。先進技術は専門の先生に任せ、診断と治療の方針についての相談に応じ、歯周組織や義歯のメインテナンスを中心に関われたらと考えています。体力次第の部分もあるし、歯科医師としての収入はあまり期待できないでしょうが、これまで50年弱培ってきた歯科治療のスキルを無理のない自分のペースで還元していければと思います。

―歯科医療への熱意を持ち続けているのですね。

 そうですね。今や歯科で扱う範囲も拡がり、それぞれの歯科医師が何らかの特徴を打ち出さないといけない時代になってきているかもしれません。一方で、医科のように専門分化が進んだ末に総合診療の必要性が浮上してきている時代変化もあります。もし私たちの年代が役に立つとしたら、総合的な対応ができる点にあると考えています。それをどのような形で実現できるか、同じような意志を持っている方たちと協力して明確にしていければと思うこともあります。

―「今なおスキルを活かしたい」、その原動力はどこから。

 学生時代から歯科医療の世界で生きてきて、折角今まで培ってきたスキルを無駄にせず、人のために役立てたいと感じています。以前、中学生時代の友人に頼まれて口腔状態を診た時の経験がとても印象に残っています。咀嚼も十分にできないほど悪い状態だったので、すぐに治療を開始すると、口腔状態がみるみるうちに改善し、顔色も良くなり若々しく元気になりました。人の役に立っていることが実感でき、そうした姿を見られるのは歯科医師冥利に尽きます。

診療続ける同世代の先生へ

―プライベートはどのような過ごし方を?

 大学時代から硬式テニスを続けていて、年に一度しかラケットを握れない期間もかなりありましたが、今は週に1度、夕方2時間ほどプレーしています。定年近くなってから新しいことに挑戦したいと思ってゴルフを習い始め、月に1~2回、東京近県のコースを仲間たちとラウンドしています。外出しない日は、幅広い分野の本を読んだり、手抜きをしてきた家の修繕などもしたりしながら過ごしていますね。

―ところで、松井先生が協会に入会したきっかけは。

 病院勤務になってからは、常勤の歯科医師が1名だけだったので、歯科の情報が入ってきませんでした。そこで開業している同級生に相談すると、「保険医協会が良いから入りなさい。セミナーをしっかりやってくれるし、役立つ情報も届けてくれるから」と勧められました。入会後は学術研究会などに参加しましたが、内容が勉強になるし面白く、受講するのが楽しみでした。接遇講習会も良い内容だと思ったので受講して、電話対応や患者さんへの話し方などを学び、病院に戻って看護師たちにアドバイスすることもできました。また、機関紙の紙面を切り抜いて事務方に渡して情報共有していましたね。保険医年金など、歯科医療以外の面でもとても助けられました。

―最後に、同年代で診療に従事し続けている先生方にメッセージを。

 頭が下がるばかりです。同年代の友人たちは閉院を検討したり、引退してしまったりするケースが増えています。自ら閉院を決めるのは非常に決断力を必要としますが、診療を続ける判断もまた重いものです。材料や治療法も進化を続けている中、たゆまぬ精進が必要とされる歯科医師という気の張る仕事を続けておられることに敬意を払います。この年代になると思いもかけない不調が出てくることもあるかと思います。体調管理をしっかりとしながら歯科医療に携わっていただけることを願っています。

―本日はありがとうございました。(完)

過去の連載はこちら<退き際の思考 歯科医師をやめる>

#インタビュー #連載 #退き際の思考

「残そうよ健康保険証」改めて署名にご協力を/ ❝保険証発行終了は中止を❞ 国会議員から指摘相次ぐ

「残そうよ健康保険証」改めて署名にご協力を/ ❝保険証発行終了は中止を❞ 国会議員から指摘相次ぐ

医療、介護、福祉予算の増額を求める「いのちまもる総行動」が926日、千代田区日比谷公園の日比谷野外音楽堂で開催された。参加者は約2,400名を数えたほか、日本歯科医師会と日本医師会からも応援のメッセージが寄せられた。

集会には、立憲民主党の杉尾秀哉参議院議員、日本共産党の小池晃参議院議員、れいわ新選組の天畠大輔参議院議員らも参加。各議員とも、122日(月)の健康保険証の発行終了は中止すべきと発言した。

◆署名は来年1月末までに通常国会提出へ

10月1日から開かれた臨時国会の会期はわずか9日間しかなく、健康保険証の問題も含め、論戦は深まらなかった。その情勢から、協会は10月に関係各機関に要請書を送付するとともに、10月上旬に「月刊保団連」に同封し、会員に送付した「現行の健康保険証を残してください」請願署名の受付期間を、20251月まで延長することを決めた。

現場の声を行政に届けることこそ、協会の役割である。来年1月の通常国会に向け、会員の先生方には、引き続き署名にご協力をいただき、同131日までに協会へ送付いただくようお願いしたい。

なお、署名用紙や返信用封筒の追加、回収箱、PRポスターなどの注文は協会運動本部(電話03-3205-2999)へご連絡いただきたい。

 

オン資猶予でも資格確認限定型を導入可/マイナ保険証機能のスマホ搭載、見切り発車感否めず

オン資猶予でも資格確認限定型を導入可/マイナ保険証機能のスマホ搭載、見切り発車感否めず

9月30日の社会保障審議会医療保険部会(部長:田辺国昭/東京大学大学院法学政治学研究科教授)で、オンライン資格確認システム(以下、オン資)の猶予届出書を提出した医療機関への対応およびマイナ保険証のスマホ搭載が提起された。

◆オン資猶予中でも限定型が導入可能に

電子レセプト請求医療機関では、オン資導入が義務化されているが、光回線未整備などの事情がある場合は猶予されている。今回は、紙レセプト請求医療機関が導入できる資格確認限定型のオン資の対象を拡大し、①光回線が未整備(類型2)、②改築工事中や臨時施設の医療機関(類型4)、③特に困難な事情がある(類型6)―との猶予届出書を提出した医療機関も導入を可能にする(図参照)。11月より医療機関等向け総合ポータルサイトで利用申請を開始し、補助金(4.1万円を上限に34補助)も来年115日締切で受け付けている。

◆現場がついていけない無償配布求める意見も

注目のマイナ保険証のスマホへの搭載については、来年春に、スマホを読み取る「汎用カードリーダー」を顔認証付きカードリーダーに接続して運用する実証事業を行う。実証後に各医療機関で導入する。

ただ、導入に関する補助金は提起されなかった。検討会メンバーの大杉和司氏(日本歯科医師会常任理事)は、度重なるオン資の改修費用などが発生しており、汎用カードリーダーは無償配布すべきと意見を述べた。オン資には、資格確認限定型および訪問診療時を対象とする居宅同意取得型などもあるが、それらには一切触れていない。スマホ搭載の対象が拡大し、その都度改修費用がかかれば現場がついていけなくなる。少なくとも厚生労働省は、適切なシステム開発計画と十分な支援を提案すべきである。

解説/健康保険証の発行終了後はどうなるのか?②/トラブルの類型と実際の対応方法

解説/健康保険証の発行終了後はどうなるのか?②/トラブルの類型と実際の対応方法

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健康保険証の発行終了まで、約1カ月となった。本号では、10月号から引き続き協会に寄せられるマイナ保険証やオンライン資格確認システム(以下、オン資)のトラブルへの相談内容を踏まえ、その類型と対応方法を解説する(図1)。

本解説は10月中旬時点の資料を基にしており、今後変更となる可能性がある。その際は、機関紙や協会ホームページ、デンタルブック・メールニュースなどでお知らせする。

*「解説①」は「協会ニュース」本年10月7日投稿分をご覧ください。

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◆マイナ保険証が読取不可の場合

全国保険医団体連合会(以下、保団連)が公表した「20245月以降のマイナ保険証トラブル調査」によると、70.1%の医療機関が何らかのトラブルを経験している(教えて!会長!!No.88参照)。マイナ保険証の読取時に起きるトラブルは1・トラブル①である。相談の中には、「職員のマイナ保険証は読み取れるのに、患者のマイナ保険証は読み取れない」というものがある。

この場合は、マイナ保険証およびスマホなどでマイナポータルの資格情報の画面を確認する、または健康保険証で資格確認を行う。なお、通知で明記されていないが、マイナ保険証および「資格情報のお知らせ」の確認でも対応可能と思われる。

また、図1・トラブル②のように、それらで解決できずカードリーダーの故障、または通信障害が原因の場合は、オンライン資格確認等コールセンター( 0800―080―4583/営業時間:月〜金曜8時〜18時、土曜8時〜16時)に電話して「システム障害時モード」を使用可能にしてもらい、氏名等を用いて確認を行う。

ただ、「コールセンターは繋がりにくい時もあり、モードの使用開始まで時間もかかるため、利用しにくい」との声が協会に寄せられている。

◆顔や暗証番号で認証不可の場合

図1・トラブル③のように、「顔認証できず、暗証番号もわからないため、認証ができない」という場合もある。その際は、医療機関側で「目視確認モード」を立ち上げ、マイナンバーカードの写真を用いて本人確認を行う。

ただ、患者操作が主である顔認証や暗証番号認証に比べて、業務負担が大きい。

また、マイナンバーカードは、通常のカードおよび暗証番号認証が使用できない顔認証マイナンバーカードに加え、歯科で利用されることに疑問は残るが、今年122日からは1歳未満に発行される顔写真のないカードの3種類になる。新しいカードは顔写真がないため、顔認証および目視確認モードが使えない点に注意が必要である。

◆「無効」等が表示される場合

図1・トラブル④のように、「無効」等が表示される場合がある。その際はマイナポータルでも資格情報を確認できないため、健康保険証で確認する。

なお、過去の受診歴等から資格情報に変更がないことを口頭で確認できた場合、その保険者等番号および被保険者等記号・番号でレセプトを請求できる。また、有効な健康保険証はあるが「資格(無効)」と表示された場合は、表示された過去の資格情報で請求できる(正しい保険者へ自動振替)。いずれの場合もレセプトの摘要欄に「旧資格情報」である旨を記載する。

しかし、図1・トラブル⑤のように「患者が健康保険証を破棄した」等の理由で対応できない場合もある。その際は、システム障害時モードで対応できない場合も同様だが、「被保険者資格申立書」を患者に記載してもらい、該当する13割のいずれかの一部負担金を受領する。ただ、「記載内容は正しいのか、遅滞なく診療報酬が支払われるかという不安がぬぐえない」と消極的な医療機関が少なくない。

なお、5年ごとに更新が必要なマイナ保険証の電子証明書について、更新を忘れても有効期限終了後3カ月間は利用できる。3カ月を経過すると利用できなくなり、「資格確認書」が発行される。

また、資格が有効でも「有効期間終了」欄が空欄で表示される場合があるが、これはオン資の仕様であり、有効期間終了日を確認する必要はない。

◆「」が表示された場合

図1・トラブル⑥の「が出る」は、氏名・住所等に旧字等があると起きる。そのままでもレセプトは請求できるが、カルテや処方箋等の作成時は「」のままでは作成できず、確認が必要となる。その際、患者の同意を得て、マイナンバーカード表面の氏名等の確認、確認を目的とした一時的なカードの受取ならびに表面のコピーおよびコピーの保管は可能である。ただ、カードの受取は紛失等の恐れがあるため、「」を問診票等から確認する場合もあるようである。

◆「マイナ保険証あり」の患者が資格確認書を持つには

マイナ保険証ありの患者が登録解除した場合、または患者が保険者に要配慮者等に当たるとの申請をした場合などは、資格確認書を入手できる(図2)。

ただ、厚生労働省は要配慮者について、一律の基準を設けておらず、保険者により判断が異なる可能性がある。確実に入手したい場合は、マイナ保険証の登録解除をした方がよいと考えられる。

◆健康保険証を残した方が混乱は少ない

オン資は、健康保険証と比べてトラブルおよび対応方法が複雑である。トラブルが起きていない医療機関もあるが、利用率の低さ(9月時で13.87%)に起因している側面はある。前号で解説した通り、マイナ保険証の有無で「資格情報のお知らせ」や「資格確認書」が送られてくるが、それなら一律に健康保険証を送った方が現場の混乱は少ないのではないか。

協会は、今後も健康保険証の存続を求める要求を行っていく。

【教えて! 会長!!  Vol.88】 マイナ保険証トラブル調査結果について

【教えて! 会長!! Vol.88】 マイナ保険証トラブル調査結果について

Q 12月2日まであと1カ月ですね。

 周知の通り、122日から健康保険証の新規発行が終了します。協会は医療DXに反対していませんが、拙速に進められ1カ月弱に迫ったマイナ保険証への完全移行へのスタートは、患者・国民と医療機関にとって「時期尚早」と考え、当会は現行の保険証との併用を訴えています。

他方で、122日からのご自身の医院での対策などを考える上で、全国や東京都の歯科医療機関の現状を知っておくことが必要です。そこで、当会会員を含めた全国保険医団体連合会(以下、保団連)の調査結果をピックアップして紹介します。

Q どんな調査でしょうか。

 政府は今年4月に「マイナ保険証の登録データを住民基本台帳データと照合し、必要な確認が完了したことから、新規加入者のデータのチェックシステムを57日から稼働する」と説明しました。そして、5月から7月にかけてマイナ保険証の利用促進を進めました。そこで、本当に患者・国民や医療機関が安心してマイナ保険証を利用できる状況になったのか、その現状を知るため、当会も参加して、保団連が全国規模で5月以降のマイナ保険証トラブル調査を実施しました。調査は8月から9月にかけて行い、39都道府県(43保険医協会・医会)12,735医療機関から回答を得ました(歯科診療所2,574、医科診療所8,529、病院754、無回答・その他878)。そのうち、当会の回答数は208でした。

「今年5月以降のマイナ保険証、オンライン資格確認のトラブル・不具合」について示します。「トラブル・不具合があった」との回答は、当会67.3%、全体で70.1%と大きな差はなく約7割でした。なお、前回の調査(2023101日以降のマイナ保険証トラブル調査では59.8%にあたる5,188医療機関)よりも約10%増加していました。この結果、マイナ保険証の利用に多くの問題があり、トラブルが増加していることが分かりました。に「トラブルの類型/『あった』と回答した医療機関」を示します。当会、全国ともに、トラブル内容の上位3位は、「●が出る」「カードリーダーの接続不良・認証エラー」「資格確認が無効」でした。最も多い「●が出る」とは、「髙(はしごだか)」や「濱」など、氏名に常用漢字以外が含まれる場合に起こるエラーです。再診の方なら対応できますが、初診の方で「●」が出た場合、氏名が不明で別の対応が必要となります。

先生方の医院ではいかがでしょうか。今までまったく問題が生じていない医院もあるでしょう。しかし、東京都、さらに全国の医療機関で生じている問題を把握しておくことで、現在、さらに122日以降のマイナ保険証に対する心構えができると思います。

Q 「保険証が12月2日に廃止されること」についての設問の結果は。

 に結果を示します。右側が当会のみ、左側が全体の結果です。保険証の廃止を「延期すべき」「保険証は残すべき」、「延期」と「残す」の両方にチェックした回答を合わせると、当会で88.0%、全国で88.1%と、ほぼ同数であり、9割近くが122日からの健康保険証の新規発行が終了することに否定的といえます。

本稿の執筆時には、まだ衆議院選挙の結果は出ていませんが、選挙前に得た当会独自の調査「衆院選2024政党アンケート」の中で、健康保険証存続についての各党の意見に明確な違いがありました。122日は過ぎてしまいますが、年明けに召集される通常国会で、マイナ保険証関連の議論が活発に行われることに期待します。そのために当会では現在、請願署名「現行の健康保険証を残してください」を行っています。署名は1月の通常国会に提出しますので、ご協力のほどよろしくお願い申し上げます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

東京歯科保険医協会

会長 坪田 有史

(「東京歯科保険医新聞」202410月号掲載)

生活保護の指導計画 2024年度は8件を実施予定/協会の開示請求により判明

生活保護の指導計画 2024年度は8件を実施予定/協会の開示請求により判明

協会が東京都に行った開示請求により、生活保護法による個別指導は、今年度は8件実施する計画であることが分かった。4月、5月、9月、2025年3月を除き、毎月1件ずつ実施される予定である。
対象となる医療機関には、指導日の1カ月前に指導通知、1週間前に患者通知(10名程度が指定される)が郵送される。また、健康保険法の個別指導と同様に、カルテ、歯科技工指示書や納品伝票、X線フィルムなどに加え、対象患者の医療要否意見書および医療券が持参物とされている。

◆昨年度個別指導は3件
昨年度の生活保護法による個別指導は3件実施され、歯周治療や歯内療法などの処置、歯科訪問診療料、歯冠修復および欠損補綴の算定などについて指導が行われた。
算定要件を満たさない場合や請求誤りがあった場合は、自主返還を求められる。また、昨年度は診療報酬の過誤調整額として、79万円を超える返還金があったことも分かった。
健康保険法の個別指導と同様に生活保護法の指導でも、保険診療のルールやカルテへの記載は重要となる。
◆11月の新規開業医講習会にご参加を
請求が不安な先生や再度確認したい先生は、11月10日開催の新規開業医講習会に、ぜひ参加されたい。

今年11月10日に開催された新規開業医講習会会場の模様。今後の開催については、機関紙、F-nexホームページ、デンタルブックのメール・ニュースでお知らせする

 

 

 

坪田会長ら 当選議員を表敬訪問 歯科医療への理解求める/健康保険証 発行終了「できる状況にない」

坪田会長ら 当選議員を表敬訪問 歯科医療への理解求める/健康保険証 発行終了「できる状況にない」

11月13日に坪田有史会長、早坂美都副会長が、10月27日に投開票が行われた衆議院議員選挙で当選した東京選出の議員10名と歯科医師の議員2名を表敬訪問した。面会に応じた各議員は「ご期待にそえるようまい進したい」と抱負を語った(左の写真は、今回当選を果たした国民民主党の円より子衆議院議員への要請時のひとコマ)。

 

◆健康保険証の発行終了問題国会での議論を求める

坪田会長は、まず祝辞を贈るとともに、歯科の現状を説明。保団連(全国保険医団体連合会)の調査において、70.1%がオンライン資格確認のトラブルがあったと回答した結果を紹介した。協会には、「『資格情報のお知らせ』『目視確認モード』とは何か」などの相談が多く寄せられていることや、マイナ保険証が使えない、または顔認証や暗証番号認証ができないトラブルへの対応方法が周知されていない問題も指摘。そのうえで、「122日に健康保険証の発行を終了できる状況ではない。立憲民主党は発行終了を延期する法案を衆議院に提出したが、国会で十分議論されることを期待する」と訴えた。

◆歯科問題で交流深める

歯科医師の佐原若子議員(比例・東北)、長谷川嘉一議員(比例・北関東)とは、歯科医療の問題で意見交換。直前まで院長として診療していた佐原議員は「口腔は全身の健康と関連があるが、歯科の点数は低い。医療機器の導入や文書を作成しないと算定できない縛りも多い」と実体験を交え、歯科の低診療報酬の問題などを指摘した。

長谷川議員は「以前は海外技工物の問題が取り沙汰された。歯科技工の現状が気になる」と語った。坪田会長は、協会が歯科技工所アンケートを実施し、保団連の呼びかけで全国調査も行われたことを踏まえ、「厚生労働省は補綴物の点数を引き上げるなどしたが、歯科技工所の状況は依然として厳しい」と伝え、議員も認識を深めた。

◆健康保険証の存続署名1月末までにご返送を

11月28日から1221日まで臨時国会があり、来年1月からは通常国会が開催される。「現行の健康保険証を残してください」請願署名は各国会で提出予定であり、来年131日までに協会へ送付いただきたい。

また、歯科医療の充実を求める署名も今後実施を予定している。協会は引き続き現場の声を国会議員や行政に伝えていく。

保団連が第39回医療研究フォーラムを開催/協会会員が 「介護施設の口腔衛生管理」で発表/山本鐵雄副会長と橋本健一理事も演題発表

保団連が第39回医療研究フォーラムを開催/協会会員が「介護施設の口腔衛生管理」で発表/山本鐵雄副会長と橋本健一理事も演題発表

9月2223日、愛媛県松山市内のANAクラウンプラザホテル松山で、第39回保団連医療研究フォーラムが開催され、全国から歯科医師・医師・スタッフ・一般市民ら300名超が参加した。

22日は、オープニング企画として、俳人の神野紗希氏による「病と生きる 子規と俳句の『生きる力』」と題した講演、募集俳句入選作の発表、さらに保団連の鵜飼伸理事から、全国共同調査「オンライン資格確認導入、オンライン請求義務化に伴う医療機関への影響調査」の結果報告、朝日新聞編集委員の原真人氏による記念講演「日本の衰退と未来」などが行われた。

 

 

 

 

 

23日の分科会では、当協会から3名がそれぞれ演題を発表した。第1分科会在宅医療・介護では、会員の尾崎哲也氏(写真左)が「介護職員とともにすすめる介護施設の口腔衛生管理強化」をテーマに、第3分科会歯科診療の研究と工夫では副会長の山本鐵雄氏(写真中央)が「歯科技工所アンケートの結果と取り組み」を、理事の橋本健一氏(写真右)が「学校歯科治療調査の結果と取組み」を、それぞれ発表した。

 

問い合わせ増える「薬剤長期収載品の選定療養」/方箋の記載方法は?

問い合わせ増える「薬剤長期収載品の選定療養」/方箋の記載方法は?

10月1日より、先発医薬品(後発品のある長期収載品)を患者の希望で処方した場合に、先発医薬品と後発医薬品の価格差の4分の1相当の料金を「特別の料金(選定療養)」として患者から別途受領する制度(下記図参照)が導入された。 協会には問い合わせが多数寄せられているため、前号の概要に続き、処方箋様式の記載方法と下記の疑義解釈を解説する。
協会としては、製薬会社による「限定出荷」「供給停止」などの出荷制限により、医薬品不足が続いている中、先発医薬品を患者が希望した場合に患者から特別の料金を徴収することは、混合診療解禁に等しく、問題のある取り扱いであると考えている。

1.選定療養の対象となる医薬品
対象医薬品リストは、厚生労働省のホームページ「後発医薬品のある先発医薬品(長期収載品)の選定療養について」から検索できる。長期収載品のすべてが選定療養となるわけではなく、医療上の必要がある場合や後発医薬品の在庫状況等を踏まえ後発医薬品を提供することが難しい場合は、選定療養の対象にはならない。
【対象となる歯科の医薬品の例】
ボルタレン錠25㎎、ロキソニン細粒10%、ロルカム錠2㎎、ロルカム錠4㎎、ジスロマック錠250㎎、クラビット錠500㎎など。
2.特別の料金と患者負担
先発医薬品と後発医薬品の価格差の4分の1相当の料金を「特別の料金(選定療養)」として、患者から別途受領する。「特別の料金」は課税対象であるため、消費税相当分を加えて受領する。長期収載品を選定療養の対象とする場合の後発医薬品の価格との比較について、厚労省はリストを作成している。リストに示されている額はあくまでイメージであり、実際に窓口で負担する額とは異なる。
3.処方箋の記載方法
(1)選定療養の対象とならない場合(院内処方・院外処方)
医療上の必要があると認められる場合、および後発医薬品の在庫状況等を踏まえ、後発医薬品を提供することが困難で選定療養の対象とならない場合は、下記「(別表1)」のレセプト表示文言より理由に該当するコードを選ぶことで、レセプトの摘要欄に表示させる。

(別表1)

(2)処方箋の記載方法
①選定療養の対象とならない場合
処方箋の「変更不可(医療上必要)」欄に「✓」または「×」と記載し、「保険医署名」欄に署名または記名、押印する(記載例参照)。
記載がない場合、薬局での患者聴き取りにより患者が「患者希望」と回答すると、選定療養の対象となる可能性がある。
②選定療養の対象となる場合
処方箋の「患者希望」欄に医薬品ごとに「✓」または「×」と記載する。

記載例

4.長期収載品の処方等の取扱いに関する疑義解釈(一部抜粋・一部改編)
【後発医薬品を提供することが困難な場合について】
問1「当該保険医療機関または保険薬局において、後発医薬品の在庫状況等を踏まえ、後発医薬品を提供することが困難な場合」について、出荷停止、出荷調整等の安定供給に支障が生じている品目かどうかで判断するのではなく、あくまで、現に、当該保険医療機関または保険薬局において、後発医薬品を提供することが困難かどうかで判断するということでよいか。
 そのとおり。
【公費負担医療について】
問2 医療保険に加入している患者であって、かつ国の公費負担医療制度により一部負担金が助成等されている患者、子ども医療費助成等のいわゆる地方単独の公費負担医療の対象となっている患者が長期収載品を希望した場合について、長期収載品の選定療養の対象としているか。
 国の公費負担医療制度の対象となっている患者やこども医療費助成等のいわゆる地方単独の公費負担医療が対象となっている患者が長期収載品を希望した場合についても、他の患者と同様に、長期収載品の選定療養の対象となる。
なお、医療上必要があると認められる場合に該当する場合は、従来どおりの保険給付として差し支えない。
問3 生活保護受給者である患者が長期収載品を希望した場合は、どのように取り扱うことになるのか。
 生活保護受給者については、 長期入院選定療養以外の選定療養は医療扶助の支給対象とはならないとしている。このため、生活保護受給者である患者が、医療上必要があると認められないにもかかわらず、単にその嗜好から長期収載品の処方等または調剤を希望する場合は、当該長期収載品は医療扶助の支給対象とはならないため、生活保護法に基づき、後発医薬品処方等または調剤を行うこととなる。
なお、長期収載品の処方等を行うことに医療上必要があると認められる場合は、当該長期収載品は医療扶助の支給対象となる。

衆院選2024 /躍進の野党/保険証“併用・残すべき”

衆院選2024/躍進の野党/保険証“併用・残すべき”

◆歯科医師2氏が当選
10月27日、第50回衆議院議員総選挙の投開票が行われ、自民・公明が計215議席となり、過半数(233議席)を割り込んだ。一方で立民など、「紙の保険証を残す」とした野党が議席数を大幅に伸ばし、躍進。フジテレビの報道によれば立民代表の野田佳彦氏は、優先すべき政策として「紙の保険証も使えるようにすること」を挙げた。12月2日以降の健康保険証存続へ、大きく流れが変わる可能性が出てきた。今後、改めて署名活動の重要性が高まっている。
 なお、衆院選の結果、長谷川嘉一氏(立民/再選)、佐原若子氏(れいわ/初当選)の歯科医師2名が当選した。
◆協会は改めて健康保険証の存続を求める請願署名に取り組みます
協会は、10月上旬に主要各政党に対して健康保険証の発行終了に関するアンケートを実施。10月11日よりホームページ上で公開した。健康保険証の今後の取り扱いについて、自民は「資格確認書の活用も図りながら、国民の皆様が安心して保険診療を受けることができるよう取り組む」と従来通りの回答とし、これまでの主張にとどまった。マイナ保険証と健康保険証の併用を選び、衆院選では50議席増となった立民は、「一定の条件が整うまで現在の健康保険証を存続させるべき」としている。

新内閣・政府には、健康保険証廃止の問題に真正面から向き合い国民の不安を払拭し、納得と共感を得られる丁寧な対応をするよう求め、以降の国会で与野党による活発な議論が行われることを望む。また、国会への提出に向け、協会は改めて健康保険証の存続を求める請願署名に取り組む。

↓各党の回答はコチラ(クリックするとPDFをご覧になれます)
衆院選2024政党アンケート結果
◆「保険証の存続を」要請書提出
また、協会は石破茂内閣組閣に伴い、10月4日付で、石破総理大臣、福岡資麿厚生労働大臣、平将明デジタル大臣宛てに要請書を提出した。要請書は、総理就任前の石破氏のコメントに反し、福岡・平両大臣から保険証の新規発行終了の方針を堅持する旨の発言があったことを受け、提出したもの。全国保険医団体連合会の調査で、全国の7割強の医療機関でトラブルが発生していることや、会員から寄せられた現場の窮状を訴え、石破総理らに12月2日以降も健康保険証の発行を存続するよう求めた。
協会は、今後も会員の声を政府や行政に届けていく。

【荻原博子さん連載】マイナ保険証の〝失態〟を追う~このまま見過すことはできません~ 第7回 驚愕する日本の医療の“デジタル化” !!

驚愕する日本の医療の“デジタル化”

日本の医療には“デジタル化”が必要と言われています。

私も含めて、これに異議を唱える人はいないと思いますが、問題は「どんな“デジタル化”で、どれだけ世の中が便利になるか」ということです。

厚生労働省は、新型コロナ対応でさまざまなデジタルシステムを立ち上げました。感染症情報としては「ハーシス(HER―SYS)」「ネシッド(NESID)」「ココア(COCOA)」があります。ワクチン情報では「ブイシス(V―SYS)」、ワクチン摂取記録システムでは「VRS」。医療情報では「ジーミス(G―MIS)」「イーミス(EMIS)」。

ところが、役に立たないものが多かった。中でも新型コロナウイルス接触確認アプリの「ココア」は、ダウンロード数約4,000万件なのに、致命的な不具合が発生していたにもかかわらず4カ月も放置されていたというお粗末さ。税金をドブに捨てて終わりました。

◆なぜ「FFHS」でなく「ハーシス」だったのか

「ココア」よりもひどかったのは、医師が患者情報を入力する「ハーシス」。入力項目が120130もあり、入力だけで1人あたり30分もかかります。コロナ診察でヘトヘトになった医師が、診察後にこれを入力すると明け方近くになってしまい、「ハーシス地獄」と呼ばれました。

ところが、もっと驚いたのは、実は厚生労働省は10年もの歳月を費やしてコロナ前から「症例情報迅速集積システム(FFHS)」という、「ハーシス」同様のシステムを既に研究・開発していました。しかも「ハーシス」だと30分かかる入力が、「FFHS」ならわずか1分。

「FFHS」を開発した北見工業大の奥村貴史教授は、「自治体が使いやすいよう意見交換を重ねて設計していたのに、政府は過去の教訓を生かさず、ハーシスを導入した」と言っています。「ハーシス」開発の陣頭指揮をとった当時の橋本岳厚生労働副大臣も、「FFHSに必要な機能が備わっていると担当から説明を受けていれば、採用していたかもしれない」とのこと。

しかも、「ハーシス」では膨大なデータが集められたのに、それがどう活用されたのかもわからない。一方、「FFHS」は北海道が導入し、クラスター(感染者集団)が発生した地域への医師派遣などに役立てていて、道の感染症対策担当者は「ハーシスではなく、最初からFFHSが使われていれば、保健所や自治体の負担は少なくて済んだだろう」と話しています。

何のためにデータを集め、集めたデータをどう活用するのかという利用者の視点が抜け落ちた“デジタル化”など、百害あって一利なし。

◆東京の歯科医院に北海道から通う患者はほぼゼロ

同じようなことを、いま政府が進めている医療DXにも感じます。

マイナポータルで見られる医療情報は、ほとんどがレセプト情報。検査をしたことはわかっても、検査の結果はわからない。しかも、13カ月前の古い情報なので、これを見て診療されるのは怖いことです。

そもそも、歯科診療所にやってくる患者さんは近隣の人。東京の歯科診療所に、北海道や九州から歯の治療に通うというケースはほとんど考えられない。それよりも、全国的なネットワークにすることで、脆弱な接続箇所から悪質なコンピュータウイルスが入り込むことのほうが怖い。そうなったら、前回書きましたが、病院は治療もできずにお手上げです。

日本政府は“デジタル”を使いこなす能力が低く、2023年の「世界デジタル競争ランキング」では32位。韓国が6位、台湾が9位、香港が10位、中国も19位なので、メンツにかけても何とか一発逆転したいのでしょう。

ただ、それが「医療DX」で、しかも多くの企業もこれに接続するというのは、あまりにも危険と言わざるを得ません。

失敗続きの日本の“デジタル化”に、私たちはどこまで付き合わされるのでしょうか。

「東京歯科保険医新聞」2024年10月1日号7面掲載

【全文を読む】第7回驚愕する日本の医療の“デジタル化”

経済ジャーナリスト 荻原 博子

プロフィール:おぎわら・ひろこ/経済ジャーナリスト。家計に根ざした視点で経済を語る。バブル崩壊直後からデフレの長期化を予想し、現金に徹した資産防衛、家計運営を提唱し続けている。新聞・経済誌などに連載。新聞、雑誌等の連載やテレビのコメンテーターとしても活躍中。近書に「マイナ保険証の罠」(文春新書)、「マイナンバーカードの大問題」(宝島社新書)など。

東京歯科保険医新聞2024年(令和6年)10月1日

東京歯科保険医新聞2024年(令和6年)10月1日

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【お詫びと訂正】
本紙10月号(第655号)にて以下の誤りがありました。お詫びとともに訂正させていただきます。
※ホームページ上で公開している紙面は、訂正済みのものです。
2面「厚労省に要請 診療報酬の改善を求める」の記事およびキャプション
(誤)歯科医療官⇒(正)歯科医療管理官
6面「薬剤長期収載品の選定療養」の記事内【対象となる歯科の医薬品の例】
(誤)セフゾン細粒小児用10%⇒(正)削除

【新聞10月号】

 【1面】

1.都保健医療局・福祉局に要望/東京都歯科保健推進計画など4項目
2.パブコメでも保険証発行終了に反対/マイナ保険証利用率は12.43%
3.オン資訴訟結審判決は11月28日/「我々の訴え真摯に検討」弁護団明かす
4.探針
5.ニュースビュー

 2面】

6.厚労省に要請/診療報酬の改善を求める
7.東京都議会会派に要請/都要請4項目に理解
8.10月からの変更に注意/医療DX推進体制整備加算
9.マイナ保険証を巡り東京弁護士会が市民集会開く/原則一本化の問題を整理
10.オンライン請求の返戻など/10月から〝紙媒体は廃止〟
11.都が3定議会で決定へ/医療機関等への物価高騰支援金/歯科医療機関15万円、歯科技工所7.5万円

 3面】

12.解説・健康保険証の発行終了後はどうなるのか?会員の相談から見た変更点の勘所と課題

 4面】

13.経営・税務相談Q&ANo.421
14.SASのOA治療のための講習会開催/医科とのこまめな連携などのポイントも説明
15.歯科衛生士へのアンケート協力のお願い
16.10月会員無料相談のご案内

 5面】

17.研究会・行事ご案内

 6面】

18.教えて!会長!!Vol.87「10月から始まる先発医薬品の負担増」
19.薬剤長期収載品の選定療養
20.理事会だより/2024年度第9回理事会
21.9月協会活動日誌

 7面】

22.連載「マイナ保険証の〝失態〟を追う~このまま見過すことはできません~」/第7回「驚愕する日本の医療の“デジタル化”!!(荻原博子さん/経済ジャーナリスト)
23.神田川界隈「米国徴兵制の現状と世界情勢―我が国、歯科医師そして協会の真の役割」(監事・藤野健正/渋谷区)
24.共済部だより/休業保障・保険医年金PR

 8面】

25.指導対策の〝要〞は/適切な保険請求とカルテ記載/社保研究会に110人が参加
26.11月2日開催!イイ歯デー/保険でより良い歯科医療のために街頭宣伝にご協力を
27.メディア懇談会/「小規模医院は手が回らない」ベア評価料届出が議題に
28.会員の意識と実態調査ご案内

【9・10面】

29.共済制度折込:秋の共済キャンペーン

メディア懇談会/「小規模医院には手が回らない」 ベア評価料届出が議題に

メディア懇談会/「小規模医院には手が回らない」 ベア評価料届出が議題に

協会は913日、第3回メディア懇談会(通算103回)を開催し、メディア23名が参加。馬場安彦副会長が説明し、早坂美都副会長が進行を務め、施行から3カ月が経過した診療報酬改定のほか、マイナ保険証問題や署名の取り組み、協会が行った来年度東京都予算に関する要請などについて懇談した。

今次改定で新設されたベースアップ評価料について、71日現在の都内の歯科診療所の届出率が12%台に留まっている(※歯外在ベⅠ)ことが話題に上がった。9月に入り、厚生労働省から届出方法の簡素化が公表されたが、馬場氏は「都内にある小規模な歯科医院では届出に手が回らないのではないかと推測する」と、依然として複雑さが残る届出について説明し、「協会としては基本診療料や技術料を引き上げてほしいと思っている」と続けた。参加者からは、ベースアップ評価料に関する医療機関のスタッフの声などが紹介された。

また、オンライン資格確認システム義務化の問題に関連して、〝オン資義務化撤回訴訟〞に触れた馬場氏は「個人の力で国を動かすことが難しい中、協会として取り組むことは良い機会である。一開業医の気持ちを代弁してくれるものだ」とし、参加者に積極的な取材を呼びかけた。

東京都議会会派に要請/都要請4 項目に理解

東京都議会会派に要請/都要請4 項目に理解

協会は、東京都の2025年度予算をテーマに、都議会のミライ会議、日本共産党都議団に対し、要請を行った。

協会からは、東京都への次年度予算要請4項目について説明した。また都民ファーストの会には、書面による要望書を提出した。

協会から要望した「指導」については、「生活保護の個別指導が始まった時期はいつ頃なのか。また、どのような問題が懸念されるのか、具体的に訴えていった方がよい」(日本共産党)、歯科衛生士の復職支援については「募集をかけても雇用ができない実情は、他業種でも起こっている。具体的にどのような支援が必要なのか、いろいろとアイデアを寄せてほしい」(ミライ会議)などの回答を得た。

日本共産党/左から泉なおみ、藤田りょうこ各都議

ミライ会議/左から桐山ひとみ、もり愛、米川大二郎、田の上いくこ各都議

【教えて!会長!! Vol.87】10月から始まる先発医薬品の負担増

【教えて!会長!! Vol.87】10月から始まる先発医薬品の負担増

Q 10月から行われる先発医薬品の選定療養化とは、どのようなものですか?

 101日から、後発医薬品(ジェネリック医薬品)がある薬で、先発医薬品(長期収載品)の処方を希望された場合、通常の窓口負担(13割)に加えて、特別な料金を徴収します。より具体的には、先発医薬品と後発医薬品の価格差の4分の1相当の料金を指し、課税対象となるため10%の消費税分を徴収します。このことは先発医薬品の選定療養化といえます。これは、保険診療と保険外診療の混合を例外的に認めている「保険外併用療養費」という制度です。歯科では金属床総義歯、前歯部の金属歯冠修復に使用する金合金などで、患者さんから徴収する特別な料金の内容を厚生局に報告する必要があります。なお、本件の先発医薬品の選定療養は報告の必要はありません。

先発医薬品が医療上必要と判断した場合(別途に記表に示した4項目)は、選定療養の対象外とすることができます。

Q「院外処方」と「院内処方」で説明してください。

「院外処方」として101日から処方箋様式が変更されます。「医療上の必要性」により後発医薬品への変更を不可とする場合、「変更不可(医療上必要)」欄で該当医薬品にチェックします。また、「医療上の必要性」がなく、患者さんの希望により先発医薬品を処方する場合は「患者希望」欄で該当医薬品にチェックします。なお、「変更不可(医療上必要)」欄と「患者希望」欄のいずれもチェックしなければ、薬局で患者さんが先発医薬品か後発医薬品かを選択し、先発医薬品を希望された場合は、選定療養の対象となり、前述の特別な料金が徴収されます。

「院内処方」の医療機関も先発医薬品の選定療養の対象ですが、厚生労働省からの事務連絡(712日付)で、院内で後発医薬品を採用していない場合は、「後発医薬品を提供することが困難な場合」の特別な事情に該当するため、選定療養の対象にはならず、従来の保険給付になるとしています。ただしこの場合は、その理由をレセプトに記載する必要があります。

なお、院内での注射は選定療養の対象ですが、「院内処方」と同じく院内で後発医薬品を採用していなければ、対象にならないと解釈できます。

国は、高齢者の窓口負担割合の引き上げや、高所得者の年金の削減などを行い、社会保障費の抑制を進めています。その一つに今回の先発医薬品における患者負担増があります。現状、後発医薬品において、先発品より効果が低いとの報告や、添加物アレルギーの発現が認められたなどの報道があり、患者さんが不安に感じることは理解できます。行政には後発医薬品の効果や安全性を示していただきたいところです。

東京歯科保険医協会

会長 坪田有史

(東京歯科保険医新聞202410月号掲載)

薬剤長期収載品の選定療養

薬剤長期収載品の選定療養

後発医薬品のある先発医薬品(長期収載品)の選定療養について]10月1日から先発医薬品(長期収載品)の選定療養化が開始されます。 長期収載品の対象医薬品は1095品目、歯科で使用頻度の高い医薬品も含まれます。
ただし、長期収載品のすべてが選定療養となるわけではなく、条件に当てはまる場合は選定療養の対象にはなりません。
処方箋様式は10月から変更ですが、従来の様式を修正して使用することも可能です。
【医療機関・薬局の方向けのチラシ】(厚生労働省)

1.対象となる要件と患者負担
選定療養の対象になる場合
①医師・歯科医師が医療上必要があると認めた場合(院外処方の場合は処方箋の「変更不可(医療上必要)」欄に「✓」または「×」を記載した場合)
②後発医薬品の在庫状況等を踏まえ、医療機関や保険薬局で後発医薬品が提供することが困難な場合、のいずれかに該当しない場合
対象になる場合、先発医薬品と後発医薬品の価格差の4分の1相当の料金を特別な料金(選定療養)として患者から別途受領します。「特別の料金」は課税対象であるため、消費税分を加えて受領してください。

2.対象となる医薬品
以下①または②が対象です。
対象医薬品リストは厚労省HP「後発医薬品のある先発医薬品(長期収載品)の選定療養について」からご確認できます。
①後発医薬品が初めて薬価基準に収載された日の属する月の翌月の初日から起算して5年を経過している医薬品で後発医薬品置き換え率が1%以上のもの
②後発医薬品の置き換え率が50%以上であるもの
【対象となる歯科の医薬品の例】
・ボルタレン錠25㎎、ロキソニン細粒10%、ジスロマック錠250㎎など。

長期収載品を選定療養の対象とする場合の後発医薬品の価格との比較について厚労省でリストを作成しています。ご参照ください。
※示されている額はあくまでイメージであり、実際に窓口で負担する額とは異なることにご注意ください

後発医薬品との価格比較リスト[487KB]別ウィンドウで開く

3.レセプト記載
(1)選定療養の対象とならない場合のレセプト・処方箋記載
①院内処方の場合のレセプト記載
医療上の必要があると認められる場合、および後発医薬品の在庫状況等を踏まえ、後発医薬品を提供することが困難で選定療養の対象とならない場合は、別表1の理由より選択して、レセプトの「摘要」欄に記載します。

コード レセプト表示文言
820101320 長期収載品と後発医薬品で薬事上承認された効能・効果に差異があるため
820101321 患者が後発医薬品を使用した際、副作用や、他の医薬品との飲み合わせによる相互作用、長期収載品との間で治療効果に差異があったため
820101322 学会が作成しているガイドラインにおいて、長期収載品を使用している患者について後発医薬品へ切り替えないことが推奨されているため
820101323 剤形上の違いにより、長期収載品を処方等の必要があるため
820101324 後発医薬品の在庫状況等を踏まえ後発医薬品を提供することが困難なため

②院外処方の場合の処方箋記載
処方箋の「変更不可(医療上必要)」欄に「✓」または「×」と記載し、「保険医署名」欄に署名または記名、押印します。
記載がない場合、薬局での聴き取りにより「患者希望」が確認できた場合、選定療養の対象となる可能性があります。
(2)選定療養の対象となる場合のレセプト・処方箋記載
①院内処方の場合のレセプト記載
当該医薬品の後に「(選)」と記載し、所定単位につき、選定療養に係る額を除いた薬価を用いて算出した点数を記載します。
【記載例】
ジスロマック錠250㎎(選)3錠 43×3
②院外処方の場合の処方箋記載
処方箋の「患者希望」欄に医薬品ごとに「✓」または「×」と記載する。

4.疑義解釈より抜粋
(問)医療上の必要があると認められるのは、どのような場合が想定されるのか。
(答)保険医療機関の医師又は歯科医師(以下、医師等)において、次のように判断する場合が想定される。
① 長期収載品と後発医薬品で薬事上承認された効能・効果に差異がある場合
(※)であって、当該患者の疾病に対する治療において長期収載品を処方等する医療上の必要があると医師等が判断する場合。
(※)効能・効果の差異に関する情報が掲載されているサイトの一例
PMDAの添付文書検索サイト
日本ジェネリック製薬協会が公開する「効能効果、用法用量等に違いのある後発医薬品リスト」
② 当該患者が後発医薬品を使用した際に、副作用や、他の医薬品との飲み合わせによる相互作用、先発医薬品との間で治療効果に差異があったと医師等が判断する場合であって、安全性の観点等から長期収載品の処方等をする医療上の必要があると判断する場合。
③ 学会が作成しているガイドラインにおいて、長期収載品を使用している患者について後発医薬品へ切り替えないことが推奨されており、それを踏まえ、医師等が長期収載品を処方等する医療上の必要があると判断する場合
④ 後発医薬品の剤形では飲みにくい、吸湿性により一包化ができないなど、剤形上の違いにより、長期収載品を処方等をする医療上の必要があると判断する場合。ただし、単に剤形の好みによって長期収載品を選択することは含まれない。

(問)院内採用品に後発医薬品がない場合は、「後発医薬品を提供することが困難な場合」に該当すると考えて保険給付してよいか。
(答)患者が後発医薬品を選択することができないため、従来通りの保険給付として差し支えない。

(問) 医療保険に加入している患者であって、かつ、国の公費負担医療制度により一部負担金が助成等されている患者が長期収載品を希望した場合について、長期収載品の選定療養の対象としているか。
(答)長期収載品の選定療養の制度趣旨は、医療上必要があると認められる場合等は、従来通りの保険給付としつつ、それ以外の場合に患者が長期収載品を希望する場合は、選定療養の対象とすることとしたものであることから、今般、対象外の者は設けておらず、国の公費負担医療制度の対象となっている患者が長期収載品を希望した場合についても、他の患者と同様に、長期収載品の選定療養の対象となる。なお、医療上必要があると認められる場合に該当する場合は、従来通りの保険給付として差し支えない

(問)生活保護を受給している患者が、単にその好みから長期収載品を希望した場合は、特別の料金を徴収することになりますか。
(答)生活保護受給者である患者には、単にその嗜好から長期収載品を希望した場合であっても、後発医薬品を処方等又は調剤することとなります。そのため、特別の料金を徴収するケースは生じません。

<そのほかの疑義解釈>
長期収載品の処方等又は調剤の取扱いに関する疑義解釈資料の送付について
(その1) 
(その2)
(その3)
(その3)の一部訂正について

5.院内掲示について
「後発医薬品のある先発医薬品の処方等又は調剤に係る費用徴収その他必要な事項を当該保険医療機関及び当該保険薬局内の見やすい場所に掲示しなければならないものとする」とされています。掲示する内容については、厚労省HPのポスターを参考してください。

東京歯科保険医新聞2024年(令和6年)9月1日

東京歯科保険医新聞2024年(令和6年)9月1日

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【新聞9月号】

【1面】
1.新規発行終了まであと3カ月 改めて問う「本当に健康保険証を廃止してよいのか?」
2.<会員拡大月間>会員無料システムや 新規開業医講習会を充実(福島崇組織部長)
3.大切なお知らせ 電話受付時間 変更について
4.探針
5.ニュースビュー

【2面】
6.第53回保団連夏季セミナー開催/差し迫る健康保険証廃止に非難の声
補綴外しへの警戒感も
7.健康保険証廃止でどうなる?資格確認書って?
8.複雑な診療報酬改定めぐり懇談/2024年度会員地区懇談会 多摩・城南・城東 3地区で開催
9.診療報酬改定施行後 初開催/126名が参加/施設基準のための講習会

【3面】
10.インタビュー 東京新聞・長久保宏美さん/マイナ保険証問題担当記者が語る“今後の懸念”「いま医療現場が取るべきアクション」はひとつ

【4面】
11.経営・税務相談Q&A No.420「エックス線装置を買い替えたらやってくる?!保健所の『立入検査』とは?」
12.東京都(歯科)の施設基準届け出状況― 2024年7月1日現在―「歯外在ベⅠ」12.57%〝低調〟な届出状況
13.9月会員無料相談のご案内

【5面】
14.研究会・行事ご案内
15.デンタルブックのご案内
16.会員優待のご案内

【6面】
17.自院のトラブル経て保険証署名に協力 同世代の先生へ「一歩踏み出して」/ドクターチェリー歯科室・吉牟田友惟院長
18.引き続きご協力ください/現行の健康保険証を残してください請願署名<私のひとこと>

【7面】
19.健康保険証廃止問題(1面からつづく)/資格確認方法が複数に本当に利便性が上がるのか?
20.会員の意識と実態調査ご案内

【8面】
21.教えて!会長!! Vol.86「保険証を残そう!署名にご協力を!!」
22.「よい歯」東京連絡会が記念講演開催/スウェーデン式予防歯科のノウハウを熱く語る
23.「情報セキュリティ10大脅威2024」解説③最終的には「人」の問題 重要なのは情報リテラシー
24.理事会だより/2024年度第8回理事会
25.8月協会活動日誌

【9面】
26.症例研究「歯科矯正相談料と小児の口腔機能管理」

【10面】
27.退き際の思考 歯科医師をやめる(松井裕子さん・前編)「最善の治療を目指し」勤務医として34年 退職後も歯科と関わる人生を模索中
28.共済部だより/共済募集キャンペーン

【11面】
29.2024年9月 歯科用貴金属の随時改定情報
30.神田川界隈「気まぐれな エアータービン」(理事・半田 紀穂子/台東区)
31.会員寄稿「声」 随筆「DXの光と影」小林顕(板橋区)
32.通信員便りNo.145

【12面】
33.連載「マイナ保険証の〝失態〟を追う~このまま見過すことはできません~」/第5回「マイナ保険証」で歯科医院も閉院ラッシュ?!(荻原博子さん/経済ジャーナリスト)
34.いのちまもる9・26総行動 ご案内
35.原水爆禁止2024年世界大会in広島

【13・14面】
36.共済制度折込:秋の共済キャンペーン

【教えて!会長!! Vol.86】保険証を残そう! /署名にご協力を!!

保険証を残そう! /署名にご協力を!!

Q 12月2日まであと3カ月ですね。

 本年122日から健康保険証の新規発行が終了となります。患者さんの中には、現在お持ちの健康保険証が122日から使えなくなると勘違いされている方もいらっしゃるなど、既に混乱が起きていることが多数報告されています。なお、発行済みの健康保険証は最長1年間有効となる経過措置があります。現在の公的医療保険は、居住地や勤務先が変わった場合、自治体や健康保険組合などが新規の健康保険証を発行しています。しかし、122日以降は、加入する保険者が変更された時点で経過措置は終了してしまいます。一方、75歳になって後期高齢者医療制度の対象になった場合も同じです。現在、後期高齢者医療制度に該当されている方は、継続される257月頃に経過措置が終了します。したがって、1年間の猶予がない方が必ず出てきます。これも、混乱を引き起こす原因の一つとなっています。

他方、健康保険証の新規発行が終了すると、マイナンバーカードを持っていない人、持っていても健康保険証とひも付けしていない人、介護が必要な高齢者や子どもなど、カード取得が難しい方が保険診療が受けられるように、保険者が保険証の代わりに「資格確認書」を無料で発行します。この「資格確認書」が発行されるタイミングは各自治体などに任されていますが、いまのところ不明です。地域によって差が出ることが想定されますから、この件も混乱に繋がりかねません。

これらの患者さん側の混乱に直接対応する可能性が高いのは、現場の医療機関です。既に、患者さんがマイナ保険証で受診された場合、別人の情報がひも付けられていたり、読み取りが不具合となったりするトラブルの報告が協会に届いています。

国は、マイナカードには顔認証システムがあって、他人がなりすますことを防止できると言っています。しかし、暗証番号を入力すれば顔認証をしなくても資格確認ができてしまいます。したがって、なりすまし防止には無効ですからマイナ保険証のメリットにはなりません。

さらに、122日以降に窓口で患者さんの保険者番号を確認する方法が、現行の健康保険証を提示する、カードリーダーでマイナ保険証を読み取る、「資格確認書」を提示する、という3つのパターンに加え、さらに6種類あり、合計9種類になります。受付の際、これらの方法を把握しておかなければユニットに通して保険診療を開始できませんし、対応が滞れば現在のようなスムーズな診療ができなくなる可能性も否定できません。そもそも、122日以降は、現在より受付窓口の業務負担が増えることが想定されます。

Q 政府が強硬な姿勢で、現行の保険証を廃止してマイナ保険証を推進する方向なのはどうしてですか。

 マイナ保険証の利用率を上げるため、国や行政側は多額の予算をつぎ込むなど、躍起になっている姿勢を感じます。ご存じの通り、マイナカード取得・マイナ保険証利用を強要するマイナ保険証利用促進キャンペーンが行われています。頼んでもいないのに先生方に「総合ポータルサイト」からマイナ保険証の利用率などが勝手に送られてくることをどう思われているでしょうか。

この健康保険証の廃止の動きの裏には、さまざまなビジネスや多くの利権が繋がっていることが囁かれています。医療DXにメリットがないとは断言できませんし、推測で記すことは止めておきます。しかし、個人情報を利活用すると言われても、個人としては「気味が悪い」の一言に尽きます。

また、今次診療報酬改定でマイナ保険証の利用促進を主目的として「医療情報取得加算」「医療DX推進体制整備加算」などが新設され、技術料などに使うべき診療報酬の財源が少なくなりました。マイナ保険証の推進のために改定財源を使われたことは、歯科医療が軽視されたと言えます。

協会は、歯科保険医の経営を守ることを目的の一つに挙げています。したがって、反対意見だけを声高に訴えるだけでなく、状況に応じて、また個々の先生方の事情を踏まえながら、対応しています。しかし、健康保険証の廃止だけは日常の歯科医業を妨げる原因になる可能性が少なからずあります。したがって、引き続き「健康保険証の存続を求める」請願署名と、今後実施予定の「オン資トラブル調査(第4弾)」へのご協力をお願いします。

なお、協会は、将来に向けて「医療のデジタル化」に反対しているわけではありません。とにかく現行の健康保険証で困っていないのですから、患者・国民の皆さんと医療機関のために現行の健康保険証が使えるように残してほしい、そのことを強く訴えているのです。

東京歯科保険医協会

会長 坪田有史

(東京歯科保険医新聞2024年9月号掲載)