政策委員会

第4回歯科医療提供体制等に関する検討会

 厚生労働省は107日、第4回 歯科医療提供体制等に関する検討会(座長:須田英明(東京医科歯科大学医歯学総合研究科名誉教授)をオンラインにより開催した。各地域におけるサービスの過不足について、統計調査やアンケート結果等によって評価を行ったうえで不足しているサービスの充実を図れるか、また、かかりつけ歯科医の充実度等についてどのような指標で可視化が図れるかについて、第3回検討会の意見を踏まえ議論した。

 「歯科医療機関の機能分化と連携」と「かかりつけ歯科医の機能」

  前検討会は、構成員から「地域で必要な歯科の診療内容を吟味し、それに対応できる診診連携、病診連携の状況を見る必要がある」「『連携』について、具体的に『いつ』『誰が』『何を』等を検討することが重要。客観的に評価可能な指標や基準があるとよい」「地域によって、今後どのような歯科医療が必要となるかを評価する指標が必要」などの意見が上がっていた。

 今回は、前回の議論等を踏まえ、①各地域におけるサービスの過不足について、統計調査やアンケート結果等によって評価を行ったうえで、当該評価結果に基づき、不足しているサービスの充実を図るべきであると考えるが、病診連携、診診連携、医科歯科連携等に係るニーズに対する過不足等について、どのような指標で見える化を図ることができるか、②かかりつけ歯科医の充実度等について、どのような指標で見える化を図ることができるか―などについて、検討が加えられた。

 地域における障害者(障害児)への歯科医療提供体制

  また、地域における障がい者(障がい児)への歯科医療提供体制も論議し、①通院や受療が困難な地域の障がい児・者等への歯科保健医療サービス、②各地域におけるサービスの過不足について、統計調査やアンケート結果等の評価に基づき、各地域で不足しているサービスの充実を図るべきだが、地域の障がい児・者等への歯科保健医療の充足状況の把握が進まない理由としては何か、③地域の障がい児・者等への歯科保健医療の充実度等は、どのような指標で見える化できるか―などが論点とされ、構成員に意見が求められた。

第1回歯科技工士の業務のあり方等に関する検討会

 厚生労働省は9月30日、歯科技工士の業務のあり方等に関する検討会を創設しその初会合をオンライン開催し、「『歯科技工士の業務のあり方等に関する検討会』開催要綱」「歯科技工士の業務のあり方等に関する検討について」「歯科技工におけるリモートワークについて」について議論が行われた。座長には、昭和大学客員教授の赤川安正氏が選出された。

 この検討会は、近年、歯科技工技術の高度化やデジタル化、就業歯科技工士数の減少など、歯科技工士を取り巻く状況の変化を踏まえ、デジタル技術を活用した歯科技工や、チェアサイドでの歯科技工など、歯科技工士の業務の在り方や必要な教育等に関して具体的な検討を行うために設置したされたもの。

 第1回検討会では、歯科技工業の多様な業務モデルに関する研究結果や業務内容の見直しに向けた調査研究、また歯科技工に関する検討会の議論などを振り返り、2021年6月18日に閣議決定した規制改革実施計画の「デジタル化の進展等に対応するための歯科技工業務の見直し」に対応するため、2021年度中に歯科技工士の業務形態について、①歯科技工におけるリモートワークのあり方、②歯科技工所間の連携のあり方―について検討することになっており、今回の議論では、「歯科技工におけるリモートワークを行う場所、リモートワークを行う者についてどう考えるか」「歯科技工においてリモートワークが想定される業務として、どのような業務が考えられるか」「歯科技工におけるデジタルデータの情報管理や、歯科技工所と歯科医療機関とのデジタルデータの授受方法についてどう考えるか」などを取り上げた。2022年度中に①歯科技工士の業務について(チェアサイドにおける業務についても含む)、②業務の検討に応じた教育内容等について―を検討する。

 構成員は以下の通り。(敬称略)

【構成員】赤川安正(昭和大学客員教授)、扇照幾(OAK Dental Studio)、大島克郎(全国歯科技工士教育協議会会長)小畑真(弁護士法人小畑法律事務所代表弁護士)、尾松素樹(公益社団法人日本歯科医師会)、陸誠(株式会社コアデンタルラボ横浜代表取締役社長)、杉岡範明(公益社団法人日本歯科技工士会会長)、馬場一美(公益社団法人日本補綴歯科学会理事長)古畑公治((株)デントライン インターナショナル)、三代知史(公益社団法人日本歯科医師会)、柳澤智仁(東京都多摩立川保健所 歯科保健担当課長)

【専門委員】野﨑一徳(大阪大学歯学部附属病院医療情報室室長)、松井哲也((株)ハーテック・デンタルサービス)、山下茂子((株)Dental Digital Operation

東京都からのマスク配布のご案内

東京都は、中華人民共和国日本国大使館からサージカルマスクの寄贈を受けました。

配布は地区歯科医師会を通じて行われますが、具体的な配布方法は地区により違い、準備が出来次第実施することとしています。

すでに配布が始まっている地区もありますが、これから配布が始まる地区もあります。

受領を希望される方は、開業地の地区歯科医師会にお問い合わせください。

地区によりましては、ホームページなどで配布方法を公表している場合もありますので、あわせてご確認ください。

そのほか詳細な内容につきましては下記の「東京都福祉保健局」のバナーまたは「新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止に係る歯科診療所へのサージカルマスク配布について」のご案内をクリックしてアクセスしてください。※地区歯科医師会へのご連絡は同ページの「地区歯科医師会問合せ一覧」をご参照ください。

会員の意識と実態調査 集計結果のまとめが出来ました!

2019年7月上旬から8月末にかけ、会員に対して「会員の意識と実態調査」を実施しました。この調査は、東京歯科保険医協会の会員の意識と、歯科医院の経営や働き方などを把握し、協会活動に活かすため、5年に1度行っているものです。

今回の調査では、1,002名の方からご回答を頂き(回収率17.40%)、アンケート集計の結果をまとめることができました。ご協力頂いた先生方、ありがとうございました。

アンケート集計の結果を公表しておりますので、ぜひご覧いただき、様々な場でご活用ください。

また、今回の調査結果について、日本歯科新聞1/21号で取り上げて頂きました!合わせてご覧ください。

 

クリックすると、別ウィンドウで集計結果が開きます

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子どもの口腔崩壊や歯科衛生士への取り組みを 「都民ファーストの会ヒアリング」で訴え

子どもの口腔崩壊や歯科衛生士への取り組みを

 

協会は8月2日、東京都議会議事堂で行われた「都民ファーストの会ヒアリング」に参加。東京都に対する2019年度予算要望への理解を求めるべく、呉橋美紀副会長、高山史年・中川勝洋・橋本健一各理事が出席した。

協会は東京都に対して次年度予算要望を毎年行っており、今年は8月末に実施する。協会が昨年10月の実施した「学校歯科治療調査」から、口腔崩壊の子どもが都内でも確認されていること、受診率には窓口負担が影響している可能性が高いことなどが明らかになっているため、状況の把握や医療費助成制度の拡充を求める要望は重要だと説明した。また、保育所を拡充するなどして、歯科衛生士を含め子育てする女性が働きやすい環境づくりの拡充を強く訴えた。

質疑では、もり愛(大田区)、滝田やすひこ(八王子市)、木下ふみこ(板橋区)各都議から、シニア世代への対応や歯科衛生士の就業に関する質問が寄せられるなど、活発な意見交換が行われ、課題への理解が深まる場となった。

政策委員長談話「歯科の役割が発揮できず、細かすぎて混乱を生む改定」/機関紙2018年3月1日号(№576)1面掲載

 

政策委員長談話「歯科の役割が発揮できず、細かすぎて混乱を生む改定」

◆コストを考慮しない院内感染防止対策の評価

 次期改定では、院内感染防止対策の施設基準を新設するが、初・再診料や歯科訪問診療料などの基本診療料を算定するために、施設基準の届出を必要としたのは問題である。包括して評価するのではなく、別項目を作り評価すべきだ。

 2007年7月18日、中医協診療報酬基本問題小委員会での「平成18年度医療安全に関するコスト調査業務」では、外来患者1人1回あたりの院内感染防止対策に必要なコストは、有床診療所並みの268.16円とされている。今回の引き上げはそれには遠く及ばない額であり、さらなる引き上げを要求する。

◆継続管理できない患者を生むか強診・歯援診見直し

 地域包括ケアシステムの構築のため診療情報連携共有料が新設された。これにより、患者の服薬状況などの情報提供を医科に依頼しやすくなった。医科歯科連携を推進する観点から、協会が繰返し厚労省へ要望した内容の反映であり、評価したい。

 しかし、か強診や歯援診は、施設基準に、訪問診療、SPTおよびエナメル質初期う蝕の管理などの算定実績や多職種連携に係る会議への参加などの地域連携に関する実績が追加され、要件が一段と厳しくなった。届出をできるところとできないところの差がはっきりし、選別が図られた。 

 2年の経過措置があるとはいえ、改定前のか強診や歯援診の歯科医療機関が全て新しい要件を満たせるかは不透明である。特に、新しいか強診の施設基準を届出できない場合は、SPT(Ⅱ)で診ていた患者の継続管理ができなくなり、国に対策を求める。

◆口腔機能管理加算のハードルが高く患者に提供できない

 また、口腔機能の評価として老化などにより口腔機能が低下した患者に対する口腔機能管理加算が新設された。疾病構造の変化に対応した評価ではある。しかし、答申で示された算定要件は、学会の診断基準より厳しく舌圧検査、咬合圧検査、咀嚼能力検査などを行うことが必須条件とされている。高価器材の購入を施設基準や算定要件にする手法には違和感を覚える。学会の基準を超えた過度なハードルを課し、患者に提供できない問題を生むことには反対である。

◆医療費削減をやめ役割が発揮できる改定を

 全身麻酔下で手術を行う場合は口腔管理がスタンダードになりつつあるなど、歯科が果たすべき役割が大きくなっている。改定では医科歯科連携が評価された。

 しかし、医療費削減政策で歯科の改定率はわずか0.69%に留まっており、その結果新しい項目ができても算定要件には高いハードルが課せられ、多くの医療機関では取り組めなくなるなど歯科の役割が発揮しづらい改定内容になっている。また、点数表も細かく複雑になり、混乱を生じかねない。

 本談話は、必要な患者に歯科医療を提供する視点から、適切な改定を求めるものである。

2018年3月1日

東京歯科保険医協会

 政策委員長 松島良次

 

政策委員長談話「+0.69%では、充分な感染予防対策や歯科医療を提供できない 」/機関紙2018年1月1日号(№574)2面掲載

 

政策委員長談話「+0.69%では、充分な感染予防対策や歯科医療を提供できない」

◆0.69%では経営改善は進まない

12月18日、次期診療報酬の改定率がネットでマイナス1.19%と発表された。内訳は、本体がプラス0.55%、薬価および材料価格がマイナス1.74%であり、歯科は本体がプラス0.69%であった。0.69%の引き上げとは、例えばその全てを再診料に充てたとしても、再診料を概ね6点引き上げるだけのわずかな額でしかない。

先に発表された医療経済実態調査では、医業収益が減る中で経費を削減して損益差額を捻出していることが明らかになっている。設備投資を控え、まさに身を削る努力をして経営を継続しているのが実態だ。しかも、収益差額の最頻値は1993年度には125.7万円であったものが、2016年度では51.9万円にまで落ち込んでしまっている。0.69%では厳しい歯科医療機関の経営を改善するには、低すぎる改定率である。中医協で議論されている改定内容を実りあるものにするためにも、大きな引き上げを求めたい。

◆不十分な感染予防の評価

協会は、各歯科診療所でスタンダードプリコーションが進むよう運動をし、診療報酬においては院内感染予防対策の費用として別建ての評価を厚生労働省に要望してきた。しかし、中医協で示された改定案は協会が求めていた内容にはほど遠い。また、基本診療料に院内感染予防対策の費用を含めて評価する方法は、基本診療料で院内感染予防対策の評価をしていることとなり、容認できない。前述したが、国民の理解を得るためにも、院内感染予防対策の費用は、基本診療料から切り離し、別建ての評価を行うべきである。

さらに、次期改定で新設される院内感染予防対策は、点数自体が外来環よりも低い。歯科では滅菌が必要な機材が多く、2007年7月18日中医協の「平成18年度医療安全に関するコスト調査業務」では、コストは268.16円とされている。それには遠く及ばない点数だ。

また、届出を行えば点数を上げ、行わない場合は初・再診料を引き下げることは、財源を投入せず点数の付け替えで対応する手法であり、反対である。国は、必要なコストを評価し、保険診療における院内感染予防対策の推進を図るべきである。

◆歯科医療の役割

発揮できる改定率を

歯科医療が全身の健康に関与していることは、すでに周知の事実である。今や入院患者の早期退院は、歯科的なサポート無しには考えられない。地域包括ケアシステムでの歯科の役割は大きく、必要な患者に十分な医療を提供するためにはそれにふさわしいプラス改定が必要である。

しかし、このまま社会保障費の削減が続けば、必要な医療提供体制を維持・構築することが困難になる。この様な僅かなプラス改定は、到底納得がいくものではない。

歯科医療機関の現状や歯科医療の重要性などの視点に立ち、必要な感染予防対策や歯科医療が提供できるよう十分なプラス改定を求めるものである。

2018年1月1日 

東京歯科保険医協会政策委員長

松島良次

 

 

政策委員長談話「『引き下げありき』の財務省提案は撤回せよ」/機関紙2017年11月1日号(№572)2面掲載

政策委員長談話「『引き下げありき』の財務省提案は撤回せよ」

財務省は10月25日、財政制度等審議会財政制度分科会で、次期診療報酬改定の引き下げを提案した。今後、高齢者がさらに増加し、医療の重要性が一層求められているにもかかわらず、「引き下げありき」の財務省に対し提案を取り下げるとともに、必要な財源を確保するよう求めるものである。

財務省は、過去10年間の雇用者報酬の伸びが年平均0.2%であるのに対し、国民医療費が2.5%だとして「診療報酬改定1回当たり2%半ば以上のマイナス改定が必要」だとした。

しかし2002年以降の診療報酬ネット改定率は、累計マイナス10%である。現場では経費節減や設備投資の先送りで何とか乗り切ってきたのが実態だ。

また、そもそも診療報酬は医療機関の収入だけでなく、社会保障制度を通じ国が国民に提供する医療の質と内容を規定するものだ。経済の問題を優先した安易な削減はそもそも行うべきではない。また診療報酬には、人件費や様々な経費に加え、将来にわたって医療を継続するのに必要な費用も含まれている。このため現場を無視した削減は、将来にわたる医療崩壊の危険をも生じさせることになる。

来年は医療・介護の同時改定であり、増加する高齢者を地域でどのように支えるかの対応が大きなテーマになっている。口腔疾患と全身疾患の関係にも関心が高まり十分な手当が必要だ。「マイナス改定」では必要な医療の提供が出来ないのは明らかだ。

厳しい財源の中、次期診療報酬改定を少しでも良い内容にしようと中医協では論議が進んでいる真最中であり、こういった中での財務省の「マイナス改定」提案は、関係者の努力に水を差すものである。

東京歯科保険医協会は、国民に保険で良い歯科医療を提供するために、次期診療報酬改定での大幅な引き上げを改めて要求する。

2017年10月27日

東京歯科保険医協会

政策委員長 松島良次

朝日新聞の「指導・監査」めぐる報道に対し「申し入れ書」を提出/指導と監査を混同

朝日新聞の「指導・監査」めぐる報道に対し「申し入れ書」を提出/指導と監査を混同

5月11日(日)朝日新聞1面に「診療報酬 不正請求の疑い/厚労省、半数の調査放棄/対象、8000医療機関」との大見出しの記事が掲載され、さらに2面にはその関連記事として「厚生局 動かぬ監視役/診療報酬 不正請求情報 2年放置/被害拡大招く」との記事が掲載された。この記事掲載について協会では5月19日付で、政策委員会の中川勝洋委員長名による下記内容の「申し入れ書」を朝日新聞社報道局、担当記者あてに提出するとともに、関連メディアに対してもこれを届け、協会としての見解を提示した。

2014519

朝日新聞社 報道局 御中

特別報道部担当記者各位

申し入れ書

511日付朝日新聞に「厚労省、半数の調査放置」の報道がされた。

記事が取り上げている「調査」は、健康保険法73条にある「厚生労働大臣の指導」のことと思われる。同法で保険医に対し指導を受ける義務を課しているものの、それは「保険診療の取扱い、診療報酬の請求等に関する事項について周知徹底させることを主眼」に行われているものであり、決して「不正請求がないか調査する」ことを目的としたものではない。

また、厚生局からの開示情報を受けた「診療報酬を不適切な請求をした疑いのある」とする選定数8000件の内訳は不明だが、その中には、集団的個別指導の対象である、いわゆる「高点数医療機関」が多く含まれている可能性がある。2011年の東京の個別指導件数内訳(実施理由ごとに分類)では「高点数」が50%を占めている。現在、この内訳は「不開示」となっており2012年度は不明であるが、おそらくその内訳は変わらないと思われる。

そもそも集団的個別指導とは前年度の1件当たりの保険点数が平均の1.2倍を超える保険医療機関を行政が一方的に高点数医療機関と位置付け行うもので、翌年度も平均の1.2倍を下回らない場合、個別指導の対象とするものである。診療行為は患者ごとに個別的に行われるものであり、1件当たりの平均保険点数が高いからと言って不正や不当があるとは言えない。患者ごとに受診頻度、年齢、治療内容によって変動するのが当然である。

こうしたことを踏まえると、「診療報酬を不適切に請求した疑いのある医療機関の半数を調査せず見逃していた」との表現には悪意があり、読者に大きな誤解を与えるものとなった。

また記事には「立ち合い」について、「『身内』の医師が介在すれば調査が甘くなる」「有資格者である指導医療官がいれば立会人はいらない」とした。個別指導は大変センシティブな問題であり、行政サイドだけの密室状態では威圧的な雰囲気での運営になる。過去には指導時に恫喝を受けた保険医が自ら命を落とす事例も出ている。立会人は指導の公共性・正当性を担保させる方法の1つである。行政指導である個別指導を警察の取り調べと同一視することは大きな誤りである。正確な調査による報道を行うことを申し入れるものである。

                                               東京歯科保険医協会

政策委員長 中川勝洋

歯科医療の課題 ― と題し日本対がん協会の垣添会長が定期の口腔ケアを提唱

歯科医療の課題 ― と題し日本対がん協会の垣添会長が定期の口腔ケアを提唱

日本対がん協会の垣添忠生会長の主張ともいえる「歯科医療の課題/定期の口腔ケア全世代で/“かむ力”維持し健康長寿」が読売新聞の『地球を読む』に掲載され、歯科医療界はもとより広く医療関係者、介護施設関係者などから注目を集めている。

垣 添先生の指摘は、柔らかい食品やお菓子が好まれるようになって、噛む回数自体が減ってしまったためあごの発達が遅れたり、歯並びが乱れるなどを来している ほか、よく噛んで食べないと満腹感が得られず食べ過ぎにつながり、ひいては肥満や成人病を来す。噛むことから遠ざかれば遠ざかるほど認知症の危険も高ま る。そのような事態から脱するには、よく噛むこと、さらによく噛むためには口の中、つまり口腔の健康維持が不可欠であり、その成果は医療費の節約にもつな がる、というのがおおよその趣旨だ。

垣添先生は国立がんセンターの総長を務めた経歴を持ち、現在も同センターの名誉総長でもある。がん治療 の第一線で尽力された方が、噛むことの大切さ、口腔ケアの大切さを指摘しているこの主張は、本年1月19日の読売新聞朝刊の12面にわたって掲載されたも のだが、垣添先生ご本人の了解と読売新聞社の許可を取ってここにPDFでダウンロード可能な形としましたので、会員の先生ご自身はもとより、患者さんとそ のご家族などにもお配りいただければ幸いです。

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垣添先生550pix

歯科診療報酬改定を懇切丁寧に説明/第1回新点数説明会を開催し1260名が参加

歯科診療報酬改定を懇切丁寧に説明/第1回新点数説明会を開催し1260名が参加

 協会は3月25日、文京シビック大ホールで第1回新点数説明会を開催し、1260名が参加した。

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「消費税と損税の問題を指摘」

冒 頭、まず挨拶に立った松島良次会長は、「歯科は0.99%の改定で大きな改定と報道されている向きもあるが、0.87%は消費税対応分であり、実質はわず かプラス0.12%しかない」と解説。「仕入れなどの損税が年間1診療所当たり約81万と試算され、今回の消費税対応分では約16万円しか補填されず、 65万円分が損税となる」と述べ、解決のためにゼロ税率を求めていきたいとし、署名や運動への協力を訴えた。

「算定要件には一部改善が」

次 に、濱克弥副会長が個々の項目を解説。歯管の文書提供の要件変更は運動の成果としながらも、今後、文書提供の重要性が高まるとし、文書提供の徹底を促し た。うがい薬単体処方の取扱いについては、治療目的であれば問題ないとした。外科では歯の移植手術などの取り扱いに改善があるが、義歯修理の要件にカルテ 記載が追加され注意が必要と語った。先進医療から導入されたCAD/CAM冠については、算定要件を解説した上で、「現状では未だ不明な点が多い」とし、 慎重な対応を会員に求めた。

訪問診療では、訪問診療2の引き下げや訪問診療3の143点の新設で、施設の訪問診療は大きな引き下げと解説。 その一方で、2025年の超高齢社会に向けた医科歯科連携の評価がされたとし、周術期では周術期口腔管理を実施した場合に医科の診療情報提供料Ⅰや手術料 に加算が新設され、医科歯科連携が推進されることに期待したいと語った。

3.25新点数:前方300pixCIMG9953

「今改定は飴と鞭。義歯管理は介護保険に移行の可能性も」

ま た、中川勝洋政策委員長が改定の問題点を解説。「改定の特徴はアメとムチであり、訪問診療では、在宅は病院から在宅への移行を進めるため評価したが、施設 は紹介ビジネスなどを受け点数を大きく引き下げた」と解説。歯管では「患者の希望で文書提供不要となっても、文書提供しない場合のカルテ記載は従来通り必 要」とし、文書提供の取り扱いは自院の実情を踏まえて判断すべきとした。義歯管理がリハビリの位置付けになったことには「医科ではリハビリは介護保険に移 行されている。義歯管理が介護保険に移行されないか注視が必要」と指摘した。一方で「処置や手術は2006年度改定で大きな制限がかけられたが、大部分に 改善がみられる」とし、会員や協会の運動の成果であるとした。

「幅広い改定内容を症例で解説」

最後に、坪田有史理事が改定事例を解説し、新設されたCAD/CAM冠や小児保隙装置、歯科口腔リハビリテーションなどの算定用件について事例を元に解説した。

☆なお、新点数説明会では、このほか電子請求猶予終了への説明会や、レセプトコンピュータ・救急薬品・AED、CAD/CAM装置などの展示会も開かれ、多くの参加者が説明に耳を傾けた。

談話/都議選にあたって

談話/都議選にあたって

6月に東京都議会議員選挙(14日公示、23日投票)が実施される。今回の都議選は大きな争点はないと言われているが、長引くデフレ経済のもと、勤労者の所得は13年連続減少を続け、国保の滞納世帯は全世帯の23%を占めるなど、都民の生活は大変厳しいものとなっている。そうした中で必要な歯科医療も受けることができない状況が広がっている。

また「石原都政下では老人福祉手当や老人医療費の助成の廃止などを行い、それを引き継いだ猪瀬都政もそれを継承している。都の決算では老人福祉費の比率が全国でも下位に落ち込むなど高齢者の医療・福祉予算が削減されてきている。東京都内は現在、全国の中でも高齢化率が高く、しかも独居高齢者が多いのが特徴であり、今後の高齢化への対応が特段に求められている。都議選を機に在宅歯科診療への支援や歯科口腔保健法の具体化、18歳までの医療費助成制度の創設など積極的な施策提案が期待される。

都議選は、参院選直前に行われる選挙で、安倍首相も「准国政選挙」と位置付けるほど重要な選挙である。選挙結果は国政に大きな影響を与える。こうした都民と歯科開業医の要求の実現を進める機会ともなり、社会保障制度の充実を進める候補者を選択することを呼びかけたい。

 

2013年5月24日

東京歯科保険医協会政策委員長

南條芳久

【談話】 国民皆保険の形骸化をまねくTPP交渉参加表明に抗議する                      

【談話】                              

国民皆保険の形骸化をまねく

TPP交渉参加表明に抗議する

 3月15日、安倍晋三首相は環太平洋連携協定(TPP)交渉への参加を正式表明した。

 私たち歯科医師は、国民皆保険制度および日本の主権を守る立場から、TPP交渉参加表明に厳重に抗議し、ただちにその撤回を求めるものである。

第4回理事会2013年250ピクセルCIMG6013

 TPP交渉参加にあたっては、農業・食糧の問題ばかりではなく、医療においても①薬価決定過程への製薬企業の参加と新薬の特許保護の強化、②混合診療の全面解禁、③営利企業の病院経営への参入などを通じて、「いつでも、どこでも、だれでも」安心して医療を受けられるという素晴らしい国民皆保険制度が崩壊する危険がある。

TPP交渉への参加には先行11ヶ国の同意が必要である。そのカギを握るのは米国だが、米国は自動車・保険・知的財産権問題で日本に大幅な譲歩を求めている。すでに牛肉では米国の意に沿うように輸入基準を緩和し、自動車も米国に全面譲歩した。これが拡大したら国民生活と医療には甚大な影響を及ぼすことになる。

米国の医療は、日本のような公的医療保険が無く民間保険が基本であり、様々な保険商品が販売されている。保険会社はそのノウハウを蓄積しており日本でのシェア拡大を狙っている。いわゆる混合診療が禁止されている今でも、ガン保険のシェア第1位は米国の保険会社であり、その混合診療が全面解禁されれば、民間保険の市場規模は飛躍的に拡大しアメリカの保険会社が強みを発揮することは間違いない。そして、政府が厳しい財政を理由に新しい医療技術や医薬品を容易に保険収載せず、良い治療や薬は民間保険に頼らざるを得ない状況を創るとすれば、保険会社の収益は拡大する。民間保険に入らないと患者が望む良い治療が受けられないということになれば、国民皆保険は形骸化する。お金がなければ満足な医療が受けられない日本にして誰が喜ぶのか。

医薬品は米国企業が多くの特許を持っており、「販売好調な新薬の公定価格を下げていく日本の仕組みについても見直しを迫ってくる」(毎日)とするなら、薬剤の価格が上昇し、国民は医療も受けられず薬も買えない事態となる恐れがある。

TPP交渉参加は日本の将来に禍根を残すことになりかねない。私たちは、安倍首相と日本政府に対しただちにTPP交渉参加表明を撤回するよう強く求めるものである。

2013年4月17日

東京歯科保険医協会

会長 松島良次