理事会声明

2012年度診療報酬改定に対する「理事会声明」

東京歯科保険医協会 第22回理事会

 

今改定は2025年を見据えた医療・介護の同時改定であり、改定率は医科1.55%、歯科1.7%、調剤0.46%で、全体では0.004%となった。前回に続きプラス改定となったが、東京の歯科医療機関は依然厳しい状況にあり、今後も継続的な引き上げが必要である。


改定内容は周術期の口腔管理の導入や在宅歯科医療の推進などのほか、改定財源の多くを歯科固有の技術料に充てたこと、告示や通知が整理され過剰なカルテ記載が削除されたこと、病院歯科の評価が進んだことなど現場の意見が反映された改定であった。


協会では今改定に向け、署名や集会などとともに「21世紀にふさわしい歯科改革提言」や「医療と介護における歯科に関する提言」を発行し、国会議員等に 歯科医療改善の政策的な働きかけを行ってきた。わずかでも主張してきたことが改定に反映されたということは、協会の取り組みやその方向性が正しかったこと を示しており、改めて評価をしたい。以下に主な特徴を示す。

 

(1) 基礎的技術料や医療技術提案からの新規導入・再評価が進み、処置や補綴など日常診療で行う項目の点数が広範囲に引き上げられたことは今改定の 特徴である。われわれの運動の成果であり評価したい。しかし、引き上げられた点数でさえなお不充分な評価であり、今後も継続的な引き上げを求める。また、 評価療養から保険導入に至る期間の短縮も検討課題である。
(2) 歯科訪問診療料の見直しと在宅療養支援歯科診療所(歯援診)への誘導が行われた。歯科訪問診療料は「常時寝たきりの状態」の表現が変更され、 歯援診では歯科衛生士の診療補助が新たに評価されたが、東京の歯科医院は約半数が歯科衛生士を雇用できておらず、歯援診の届け出はできない。歯科衛生士が 雇用できるだけの診療報酬の評価は急務である。
(3) がん患者等の周術期の口腔管理が新たに保険導入された。周術期における口腔機能管理の重要性を診療報酬上に位置づけたことには意義がある。し かし、医科医療機関からの文書での依頼が算定要件とされ、同様の仕組みが歯周病安定期治療(SPT)にも盛り込まれた。文書による情報提供を算定要件にす ることが、医科歯科連携推進の足かせとなることが危惧される。特にSPTでは柔軟な方法による連携を認めるべきである。
(4) 歯科疾患管理料の算定要件が変更され、初診時の主訴への対応が可能となり、文書提供の間隔の緩和がはかられた。また写真診断料の減算定の要件 も変更となり、こういった一連の緩和策によりSPTは活用しやすくなった。しかし、SPTに移行できる病態は限られているため、算定にあたっては検査結果 に基づき慎重に行う必要がある。

 

今や「最小限の侵襲」は世界の常識である。しかし、日本の保険診療での評価は依然として切削や補綴が中心となっている。これに対し協会では「歯を残し維 持・機能させる技術や、歯や身体に侵襲の少ない技術を重視した診療報酬体系」の必要性を提言した。また、高齢化の進展に伴い口腔機能の維持・回復・管理の 必要性が高まってくる。このようなことから、今後の診療報酬改定では歯を積極的に残す治療や口腔ケアや口腔管理を評価する診療報酬体系を確立するよう改め て要求するものである。

歯科受診に大きな影響を与える「受診時定額負担」の導入に断固反対する理事会声明

2011年度第8回理事会

7月1日政府・与党は「社会保障・税一体改革成案」を閣議報告し、14日には細川律夫厚労大臣が「社会保障・税一体改革成案における改革項目の着実な推進について」を発表した。細川大臣は成案に対し「着実にその遂行を図る」と並々ならぬ決意である。

成案に盛り込まれている「受診時定額負担」は外来受診の度毎に、原則3割の窓口負担に一律に100円の定額を上乗せし、高額療養費の見直しの財源を捻出 することを目的としている。重症者の負担軽減の財源を軽症者が負担するとんでもない仕組みである。今でも高い窓口負担により多くの人が受診を手控えてい る。今以上の負担増は、さらなる受診抑制を引き起こし重症化をもたらすことは明らかである。

また、2002年の健保法改定時に、保険給付は「将来にわたり100分の70を維持する」としており、受診時定額負担は事実上これを反故にするものだ。一旦この制度が導入されれば、100円が200円、500円と増えていき、際限のない負担増につながりかねない。

保険診療を通じて国民の歯科医療に責任を持つ東京歯科保険医協会は、断じて容認することは出来ない。誰もが安心して医療を受けられるよう、窓口負担をゼロにすることを強く求めるものである。

厚労省は高裁判決を真摯に受け止め上告しないよう求める

東京歯科保険医協会
第五回理事会

5月31日に結審した溝部訴訟控訴審は、取消処分は、社会通念上著しく妥当性を欠くことは明らかであり、裁量権の範囲を逸脱したものとして違法となり、取 消を免れない」とした一審判決を支持するとの判決が言い渡された。これは国の裁量権が無制限ではないことを判断したものであり画期的判決であると高く評価 する。


個別指導、監査は健康保険法に規定されているが、運用については、法律ではない指導大綱や監査要綱で規定され、指導は任意であるとの行政手続き法の規定の外に置かれていた。

そのため、保険医の精神的圧迫は想像を絶するものがあり、東京をはじめ指導、監査を苦に全国で自殺者が続出し、社会的にも問題視されている。保険医協会 などのこれまでの取り組みにより録音や弁護士帯同がやっと認められるようになったが、依然として行政の裁量権の前に保険医の権利は無きに等しかった。当判 決は、その暗部に正面から光を当てたものである。

厚生労働省はこの判決を真摯に受け止め、最高裁に上告しないように求めるものである。

材料価格高騰の実態に追いつかない金パラ改定に抗議する

東京歯科保険医協会
2010年度第21回理事会

中央社会医療協議会は1月21日の総会で歯科用鋳造金銀パラジウム合金(金12%以上JIS適合品)の公示価格を現在の1グラム802円から76円増の 878円に引き上げることを決めた。これは半年に一度行われる随時改定によるもので、材料価格の変動幅が±5%を超えたために行われるものである。

しかし現在、市場価格は1グラム900円台後半から1000円台で推移しており、改定後の価格であっても医療機関が市場価格と公示価格の差額を負担しな ければならず、大幅な赤字=逆ざやとなってしまう。こうした材料価格の逆ざやを医療機関に押しつける改定方法は改めるべきであり早急な改善を求める。

前回の随時改定時には、基準となる期間終了間際に材料費が値下がりしたため、改定が小幅となり価格改定後もなお逆ざやが続いた。さらに今回も逆ざやが解 消されないため、実質的な逆ざやは1年以上続くこととなる。逆ざやであることを承知の受け入れなければならないと言うことは、経済上も精神上も耐え難いも のである。

医療機関が不要な財政負担をしなくても済むよう、早急に改定ルールを見直すよう要求する。

保険医療機関にさらなる税負担を強いる消費税増税法案採決に反対する理事会声明

公約を破り採決をする前に、国民に信を問え


 民主党、自民党、公明党は消費税増税案を含む「社会保障・税一体改革」関連7法案の修正協議を始めた。増税案は復興に苦しむ被災地も含めた全ての国民に 負担を強いるばかりか、現状でも厳しい保険医療機関の経営にさらなる大打撃を与えるものであり、東京歯科保険医協会は断固反対する。
 歯科医院が仕入れや賃料、設備投資などで負担している消費税は、最終消費者である患者さんに負担をお願いすることが出来ず、医療機関が身銭を切って負担 し、損税となっているのが現状である。このような損税は税率5%でも1医院あたり年間52万円(協会試算)にもなっており、医院経営に重くのしかかってい る。このような現状に対し中医協でも論議されているが国会では、小宮山厚労大臣が「(医療機関に払う)診療報酬で措置している」と厚労省の従来の見解どお りの答弁を繰り返している。
 10%になった後もさらなる引き上げが予定されていることや、福祉目的税化は法案には盛り込まれていないこと、厳しい経済状況の中では中小企業は消費税の転嫁が出来ないことなど、政府がこれまで言ってきたことの矛盾がこの間の国会審議で次々と明らかになってきた。
 しかし、野田首相は、中央公聴会の開催を決定し、法案の修正協議に入った。成立の目安としていた審議時間100時間まで後わずかのところにまで来ており、会期中での採決強行を目指している。
 大手新聞社が行った世論調査でも国民の7割が法案採決に反対の意思を示す等、政府・与党への批判が強まっている。社会保障改革といういちばん大事な公約を反古にし、採決するならその前に信を問うべきである。
 欧州危機に伴う超円高、金融不安による日本経済への影響が心配されており、東日本大震災と福島第1原発事故の復興対策もこれからが大事な時である。やる べきことをやらずに消費税増税の話などありえない。消費税先食いとなる今国会での法案採決には断固反対を表明するものである。

理事会声明

今改定は新政権による初の改定であり、10年ぶりのネットプラス改定となった。しかし、歯科の厳しい状況を改善するどころか大多数の歯科医院では2.09%にはとても届きそうもない内容であり、歯科の状況をさらに悪化させかねない問題点の多い改定内容である。

第1に、長期維持管理路線の復活・強化が行われている点である。財源の約7割を使い初診料を大幅に引き上げた。同時に歯周病安定期治療(SPT)へも前 回に比べ大幅な点数を配分した。技官会議でもSPTを「推進」し誘導を行っている。一方歯周治療は枠内操作による点数の付け替えに終わっており、再SRP やSPTで長期に管理しなければマイナスになってしまう。SPTは引き上げられたが、依然として歯周基本治療が包括されており納得ゆく点数ではない。低点 数による長期維持管理路線の復活・強化には反対である。

また、枠内操作では歯科医療は充実されない。総枠を広げて医療技術を評価するべきで、改定ごとの枠内の点数いじりでは現場が混乱するだけである。

第2にスタディモデル、歯管の内容の一部など包括が一層進んだことも問題である。技術料は個別に評価すべきである。協会は文書提供の評価も含め包括は即 刻改善するよう求めるものである。また、文書提供については文書量は減ってはおらず、逆に厳しさが増している。きちんと文書を提供できるよう、文書提供の 評価を求める。

第3に時間要件の強化が上げられる。訪問診療では、医科では廃止となった時間要件が歯科では一層厳しくなった。訪問一人目から時間による制限が新たに設 けられ、訪問診療を実施している医療機関ではこれまでの対応を変更せざるを得ず混乱をしている。時間要件は医科と同様に即刻廃止すべきである。

第4に新規技術導入が進まなかった点が指摘できる。08年改定では6技術が新たに保険適用となったが、今改定は医療技術評価分科会の検討結果からわずか1技術のみの導入となっている。学会等の要望に応え、新規技術の導入を積極的に進めるべきである。

第5に訪問歯科衛生指導料の引き上げや、術後専門的口腔衛生処置の新設など歯科衛生士の評価が進んだ点も大きな特徴である。術後専門的口腔衛生処置は手 術の項目に歯科衛生士が位置づけられたこととともに、医療の中での口腔ケアの位置づけが高まったことを評価したい。わずか20点であるが歯科科技工加算に より歯科技工士がはじめて点数表に位置づけられた意味も大きい。

以上のように、今改定はプラス改定の影に低点数による長期維持管理路線の復活・強化、包括化の推進などが進められた。まるでかつての「かかりつけ歯科医 初診料」の亡霊を見る思いである。患者が減少しつつある東京では今改定ではプラス改定とはならない、むしろマイナスとなる可能性が高い。包括した項目を元 に戻し、基礎的技術料を引き上げ、時間要件をなくすなど早急な再改定を強く要求する。

診療報酬改定率発表に関する理事会声明

2010年度の診療報酬改定率が発表になった。歯科+2.09%、医科入院+3.01%、医科診療所+0.31%と医科歯科横並びが解消された。10年ぶ りのプラス改定であり、小泉構造改革が行ってきた社会保障費抑制策を止め、新しい方向に転換したという点で新政権の政策を評価したい。

しかし、歯科の改定率は2.09%である。東京の一診療所あたりの平均点数はおよそ25万点であり、改定による収入増は月5千点にしかならない。これで東京の歯科医療崩壊に歯止めがかかるとは思えない。

歯科医療は1人で行えるものでは無いが、今、多くの歯科医はスタッフ雇用に苦しんでいる。10年間続いた医療費抑制のため、スタッフの雇用を含めた経費 の削減で何とか耐えてきたが、その削減も限界を超え結果的にワーキングプアの歯科医師が増大してきている。必要なスタッフを確保し、ワーキングプアを解消 するためには、大幅な改定が必要である。

今回の改定では民主党が言う医療再生の第一歩としては不充分である。このままでは歯科医療の質の低下が危ぶまれる。現場に基づいた改定内容を実施するとともに、医療再生のためのロードマップの設定を要求するものである。

理事会がレセプトオンライン請求義務化撤回で声明

2011年4月より歯科医院からのレセプト請求もオンラインに義務化されようとしている。


国は歯科医師の請求権、職業の自由にかかわる問題を法改定もせず、一片の省令で奪おうとしている。東京歯科保険医協会はオンライン請求一律義務化を撤回することを要求する。


協会のアンケート調査では、一律義務化反対は八割を超えており、義務化を機に閉院をすると答える方が出ている。歯科医院はほとんどが小規模な事業所であ る。義務化が実施されれば新規購入で約300万円かかるといわれる諸費用はすべて医療機関の負担となる。そうした負担増により今でも厳しい歯科医院経営は さらに圧迫され、廃業を余儀なくされる開業医が続出することが危惧される。


さらに「住基ネット」でさえ個人情報の漏洩に関わる訴訟が起こされているが、情報量が住基ネットの数十倍、数百倍であるオンライン請求で患者さんの医療情報が漏洩されれば、その影響は計り知れないものとなる。
政府はオンライン請求で集めたデータの他、特定健診のデータなどを盛り込んだ、「ナショナルデーターベース」を構築しようとしている。「請求方法」にすぎないオンライン化を「医療データの活用方法」にすり替え、いっそうの医療費抑制を狙っている。

1500人の医師、歯科医師が一月、オンライン請求義務化に従う義務が存在しないことを確認する訴訟を起こした。協会はレセプトオンライン請求義務化に 対し訴訟支援や国会議員への要請などを行ってきた。自民党の中にも義務化の実施時期見直しの動きが報道されるなど世論や運動による一定の変化が見られる。 引き続き、義務化撤回への運動を強める決意である。

診療報酬改定に対する見解

「改善」された診療報酬改定で患者や歯科医が救えるか

廃止された歯科疾患総合指導料

「歯科疾患総合指導料」が廃止された。「廃止」された意味は大きいものがある。

協会は「かかりつけ歯科医初診料」-「歯科疾患総合指導料」の「か初診」路線の廃止を一貫して主張してきた。

施設基準、口腔内写真等での説明、計画書の初診日の作成等、かかりつけ歯科医初診料からの矛盾が「改善」され、歯科疾患管理料とされた。

新たな歯科疾患管理料には「継続的な管理」が引き続き残されたが、これまでの「指導料」とは性格を大きく異にして導入された。全ての疾患、全ての年齢、在宅診療まで対象としている「管理料」である。これまでの歯科点数表になかったものが設定された。「指導料」から「管理料」を歯科医療機関ははじめて経験する。これからどうなるのかは経緯を待ちたい。

経営は改善されない-衛生士・技工士がいなくなる

改定率は本体0.38(歯科は0.42)%である。実質は材料費・薬価の1.2%引き下げがあり全体では0.82%引き下げである。

この改定率を前提に答申がうちだされたため、「歯科医療崩壊」に近い実態の改善にはほど遠い。前回の予想外のマイナス改定が回復できるかも疑問である。

マイナス改定が続くと、東京から歯科衛生士、歯科技工士がいなくなってしまう。雇用できない最大の理由は低報酬とコスト高である。東京の現状は歯科衛生士が雇用されている医療機関は半分である。歯科衛生士の雇用を前提にされている項目は、最初から算定できないことになる。技工士問題もさらに重大である。有床義歯が引き上げられたとはいえ、少数歯だけである。

初・再診料がわずか2点ずつ引き上げられた。そのためにラバー加算、歯肉息肉除去術の包括が行われた。医学的根拠が全くない手法である。

ラバーの比重が大きい小児歯科への影響は大きい。「改善」をするために「犠牲」をしいるは本末転倒である。

説明のつかない包括をやめ、必要な改定率、財源を確保し合理的な説明のつく改定を行うべきである。


本当に「改善」なのか


今回の改定は、前回の改定で「改悪」された項目-「文書提供」、カルテ・レセプト「記載」、「齲蝕処置」、2回目「歯周基本治療」等の「改善」が行われた。前回改定には明らかに「報復」の意味がふくまれていた。理不尽な項目が元にもどされたといえる。

「文書提供」は、歯科疾患管理料に包括されて対象指導料が減少したり、歯科疾患管理料で対応することとされたのであって、提供そのものの義務づけは残されている。義務づけるのであれば、文書作成料を評価すべきである。

文書提供は「緩和」されたので、逆にこれまで以上に指導時の対応が強化されることが考えられる。


「指針」は第2の「通知」


「歯周組織検査」「歯周基本治療」「歯科訪問診療」「有床義歯の管理」等はそれぞれの「指針」を「参考にすること」の通知になっている。保険診療を規制するものであり、いわば第2の「通知」である。本来の「通知」以外に、保険診療を規制するものは出すべきではない。あくまで、「指針」は診療の参考とすべきものである。

「指針」と保険診療のつじつまのあわない項目、「歯周病安定期治療」「歯周疾患処置」は「参考」とはなっていない。活用できる項目だけを「参考」とするやり方は問題である。


「整理」された「先進医療」


先進医療の整理が行われ、歯周組織再生誘導法(GTR)、接着ブリッジ、齲蝕歯無痛的窩洞形成が導入された。

次回改定ではエムドゲイン、インプラントの保険導入が予想される。

導入にあたっては点数設定の根拠、コストとの整合性を求めたい。技術を導入しても材料が保険に収載されないようなことがあってはならない。


「改定」対策とともに重要なこと


4月から後期高齢者医療制度が実施されることになる。10月の社会保険庁解体にともない社会保険事務局が廃止、関東信越厚生局に個別指導等は移管される。また、政府管掌健康保険(政管健保険)は新しい組織の「全国健康保険協会」に業務が引き継がれる。レセプトのオンライン化の準備も行われている。

歯科診療報酬の対応にはこれらの動きにも注意を払う必要がある。いわゆる「ローカルルール」や、各県との関係にも影響がでる可能性が高い。一部の指導医療官の動きにも注意をはらいたい。

診療報酬改定にからんだこのような「改革」への対策を行いながら、東京歯科保険医協会理事会は歯科診療報酬の改善運動をこれまで以上に推進する。

 

監査前に保険医が自殺したことに関する理事会決議

監査を前に M先生が自殺


九月十七日、東京の歯科開業医が自殺をした。指導らしき指導も行われないまま、個別指導から監査に至る過程での自殺であった。東京歯科保険医協会理事会 は、会員のM先生の死に対し哀悼の意を表すと共に、以後このような痛ましい事件が再び起き な い よう、厚生労働省・社会保険事務局に対し、指導・監査の抜本的改善を求めるものである。


自殺は何故起こったのか


最初の指導でM先生は「何故あそこまで人権を無視したことを言われなければいけないのか」「まさに恫喝で終始しました」と、一年以上もこのことを訴え続けていた。

また、指導中断の明確な理由の説明もなく、今後どうなるのか何の連絡もない時間が九ヶ月間も続いた。社会保険事務局の都合だけで時間を引き延ばしていたこ とはないか。放置されていたM先生の心の内を考えたことがあるのか。監査通知を手にした後に自殺をおこなっていること を 見 れば、指導・監査が自殺に関係していることは明らかである。

社会保険事務局の対応如何では最悪の事態は避けられたはずである。


さらなる犠牲者を出さないために


今回の事件は健康保険法で定められて い る 指導・監査を行う中で起きている。しかし、東京での個別指導は、根拠のはっきりしない「中断」が横行し、指導前の患者実調を行うなど、指導大綱を逸脱しているのが実態である。東京で行われている指導を見直すべきである。

新聞報道を見た会員からは、「自分も個別指導を受けた。犯罪者のような取扱いを受けた。察するにあまりある」等の声が寄せられている。指導の場での人権を 無視した発言、理由のはっきりしない長期の中断が日常的に行われているのではないか。制度を実施する中で自殺者が出た以上、社会保険事務局は問題点を明ら かにすべきである。 東京歯科保険医協会は会員の命と権利を守るため断固たたかうものである。以上決議する

二〇〇七年十月十一日
二〇〇七年度  第七回理事会



 

抗議文


二〇〇七年十月四日
東京歯科保険医協会
会長 中川勝洋 東京社会保険事務局



事務局長 石井信芳殿
保険部長 藤巻正幸殿
保険医療課長 関口博殿

歯科保険医であるM(原文は実名表記)先生が監査直前九月十七日に自殺した。
一年にわたる長期間の指導を受けたうえ、監査直前に本会会員のM先生は心身ともぼろぼろになり、あげくの果て自殺にいたった。二〇〇六年四月と二〇〇七年一月、三月に個別指導を受け、九月二十日に監査の予定であった。

最初の個別指導では「こんなことをして、おまえ全てを失うぞ!」「今からでもおまえの診療所に行って調べてやってもいいぞ、受付や助手から直接聞いてもい いんだぞ!」など「恫喝で終始」した。その後も指導時の技官の態度について「なぜあそこまで人権を無視したことを言われなければいけないのか」と涙ながら に訴えていた。

一回目の指導中断から再開まで九ヶ月もかかり「今まで経験したことのない苦しい時を」過ごし精神的に追いつめられていた。苦しみ抜いたうえでの自殺である。

不正な請求は許されるものではないが、監査まがいの行き過ぎた個別指導や、行政手続き法など法律から逸脱した個別指導が行われていなかっただろうか。

一九九三年に富山県で保険医が新規個別指導後に自殺をした。厚生省も技官も反省をしたはずであった。にもかかわらず再びこのような事件が起きた。富山の事件が教訓として全く生かされてない。

個別指導は「保険診療の取扱い、診療報酬の請求に関する事項について周知徹底させることを主眼とし、懇切丁寧に行う」と指導大綱に定めているにもかかわらず、最初から監査を前提にした指導や人権を無視した指導がまかり通っている。何のための指導か。 東京歯科保険医協会はM先生を死に追いやった厚生労働省及び東京社会保険事務局、担当指導医療官に対し厳重に抗議する。



一、指導監査によりM先生を死に追いやったことに対し謝罪せよ

二、問題が解決するまで指導・監査の実施を中止せよ

三、指導監査はそのあり方も含め抜本的に改善せよ

四、 指導医療官、医療事務指導官が行きすぎた 指導監査を行わないよう第三者による実効性のある監視体制をとれ

五、今回の事件に関与した技官の名前を公表し罷免せよ