診療報酬改定に対する見解

「改善」された診療報酬改定で患者や歯科医が救えるか

廃止された歯科疾患総合指導料

「歯科疾患総合指導料」が廃止された。「廃止」された意味は大きいものがある。

協会は「かかりつけ歯科医初診料」-「歯科疾患総合指導料」の「か初診」路線の廃止を一貫して主張してきた。

施設基準、口腔内写真等での説明、計画書の初診日の作成等、かかりつけ歯科医初診料からの矛盾が「改善」され、歯科疾患管理料とされた。

新たな歯科疾患管理料には「継続的な管理」が引き続き残されたが、これまでの「指導料」とは性格を大きく異にして導入された。全ての疾患、全ての年齢、在宅診療まで対象としている「管理料」である。これまでの歯科点数表になかったものが設定された。「指導料」から「管理料」を歯科医療機関ははじめて経験する。これからどうなるのかは経緯を待ちたい。

経営は改善されない-衛生士・技工士がいなくなる

改定率は本体0.38(歯科は0.42)%である。実質は材料費・薬価の1.2%引き下げがあり全体では0.82%引き下げである。

この改定率を前提に答申がうちだされたため、「歯科医療崩壊」に近い実態の改善にはほど遠い。前回の予想外のマイナス改定が回復できるかも疑問である。

マイナス改定が続くと、東京から歯科衛生士、歯科技工士がいなくなってしまう。雇用できない最大の理由は低報酬とコスト高である。東京の現状は歯科衛生士が雇用されている医療機関は半分である。歯科衛生士の雇用を前提にされている項目は、最初から算定できないことになる。技工士問題もさらに重大である。有床義歯が引き上げられたとはいえ、少数歯だけである。

初・再診料がわずか2点ずつ引き上げられた。そのためにラバー加算、歯肉息肉除去術の包括が行われた。医学的根拠が全くない手法である。

ラバーの比重が大きい小児歯科への影響は大きい。「改善」をするために「犠牲」をしいるは本末転倒である。

説明のつかない包括をやめ、必要な改定率、財源を確保し合理的な説明のつく改定を行うべきである。


本当に「改善」なのか


今回の改定は、前回の改定で「改悪」された項目-「文書提供」、カルテ・レセプト「記載」、「齲蝕処置」、2回目「歯周基本治療」等の「改善」が行われた。前回改定には明らかに「報復」の意味がふくまれていた。理不尽な項目が元にもどされたといえる。

「文書提供」は、歯科疾患管理料に包括されて対象指導料が減少したり、歯科疾患管理料で対応することとされたのであって、提供そのものの義務づけは残されている。義務づけるのであれば、文書作成料を評価すべきである。

文書提供は「緩和」されたので、逆にこれまで以上に指導時の対応が強化されることが考えられる。


「指針」は第2の「通知」


「歯周組織検査」「歯周基本治療」「歯科訪問診療」「有床義歯の管理」等はそれぞれの「指針」を「参考にすること」の通知になっている。保険診療を規制するものであり、いわば第2の「通知」である。本来の「通知」以外に、保険診療を規制するものは出すべきではない。あくまで、「指針」は診療の参考とすべきものである。

「指針」と保険診療のつじつまのあわない項目、「歯周病安定期治療」「歯周疾患処置」は「参考」とはなっていない。活用できる項目だけを「参考」とするやり方は問題である。


「整理」された「先進医療」


先進医療の整理が行われ、歯周組織再生誘導法(GTR)、接着ブリッジ、齲蝕歯無痛的窩洞形成が導入された。

次回改定ではエムドゲイン、インプラントの保険導入が予想される。

導入にあたっては点数設定の根拠、コストとの整合性を求めたい。技術を導入しても材料が保険に収載されないようなことがあってはならない。


「改定」対策とともに重要なこと


4月から後期高齢者医療制度が実施されることになる。10月の社会保険庁解体にともない社会保険事務局が廃止、関東信越厚生局に個別指導等は移管される。また、政府管掌健康保険(政管健保険)は新しい組織の「全国健康保険協会」に業務が引き継がれる。レセプトのオンライン化の準備も行われている。

歯科診療報酬の対応にはこれらの動きにも注意を払う必要がある。いわゆる「ローカルルール」や、各県との関係にも影響がでる可能性が高い。一部の指導医療官の動きにも注意をはらいたい。

診療報酬改定にからんだこのような「改革」への対策を行いながら、東京歯科保険医協会理事会は歯科診療報酬の改善運動をこれまで以上に推進する。