監査前に保険医が自殺したことに関する理事会決議

監査を前に M先生が自殺


九月十七日、東京の歯科開業医が自殺をした。指導らしき指導も行われないまま、個別指導から監査に至る過程での自殺であった。東京歯科保険医協会理事会 は、会員のM先生の死に対し哀悼の意を表すと共に、以後このような痛ましい事件が再び起き な い よう、厚生労働省・社会保険事務局に対し、指導・監査の抜本的改善を求めるものである。


自殺は何故起こったのか


最初の指導でM先生は「何故あそこまで人権を無視したことを言われなければいけないのか」「まさに恫喝で終始しました」と、一年以上もこのことを訴え続けていた。

また、指導中断の明確な理由の説明もなく、今後どうなるのか何の連絡もない時間が九ヶ月間も続いた。社会保険事務局の都合だけで時間を引き延ばしていたこ とはないか。放置されていたM先生の心の内を考えたことがあるのか。監査通知を手にした後に自殺をおこなっていること を 見 れば、指導・監査が自殺に関係していることは明らかである。

社会保険事務局の対応如何では最悪の事態は避けられたはずである。


さらなる犠牲者を出さないために


今回の事件は健康保険法で定められて い る 指導・監査を行う中で起きている。しかし、東京での個別指導は、根拠のはっきりしない「中断」が横行し、指導前の患者実調を行うなど、指導大綱を逸脱しているのが実態である。東京で行われている指導を見直すべきである。

新聞報道を見た会員からは、「自分も個別指導を受けた。犯罪者のような取扱いを受けた。察するにあまりある」等の声が寄せられている。指導の場での人権を 無視した発言、理由のはっきりしない長期の中断が日常的に行われているのではないか。制度を実施する中で自殺者が出た以上、社会保険事務局は問題点を明ら かにすべきである。 東京歯科保険医協会は会員の命と権利を守るため断固たたかうものである。以上決議する

二〇〇七年十月十一日
二〇〇七年度  第七回理事会



 

抗議文


二〇〇七年十月四日
東京歯科保険医協会
会長 中川勝洋 東京社会保険事務局



事務局長 石井信芳殿
保険部長 藤巻正幸殿
保険医療課長 関口博殿

歯科保険医であるM(原文は実名表記)先生が監査直前九月十七日に自殺した。
一年にわたる長期間の指導を受けたうえ、監査直前に本会会員のM先生は心身ともぼろぼろになり、あげくの果て自殺にいたった。二〇〇六年四月と二〇〇七年一月、三月に個別指導を受け、九月二十日に監査の予定であった。

最初の個別指導では「こんなことをして、おまえ全てを失うぞ!」「今からでもおまえの診療所に行って調べてやってもいいぞ、受付や助手から直接聞いてもい いんだぞ!」など「恫喝で終始」した。その後も指導時の技官の態度について「なぜあそこまで人権を無視したことを言われなければいけないのか」と涙ながら に訴えていた。

一回目の指導中断から再開まで九ヶ月もかかり「今まで経験したことのない苦しい時を」過ごし精神的に追いつめられていた。苦しみ抜いたうえでの自殺である。

不正な請求は許されるものではないが、監査まがいの行き過ぎた個別指導や、行政手続き法など法律から逸脱した個別指導が行われていなかっただろうか。

一九九三年に富山県で保険医が新規個別指導後に自殺をした。厚生省も技官も反省をしたはずであった。にもかかわらず再びこのような事件が起きた。富山の事件が教訓として全く生かされてない。

個別指導は「保険診療の取扱い、診療報酬の請求に関する事項について周知徹底させることを主眼とし、懇切丁寧に行う」と指導大綱に定めているにもかかわらず、最初から監査を前提にした指導や人権を無視した指導がまかり通っている。何のための指導か。 東京歯科保険医協会はM先生を死に追いやった厚生労働省及び東京社会保険事務局、担当指導医療官に対し厳重に抗議する。



一、指導監査によりM先生を死に追いやったことに対し謝罪せよ

二、問題が解決するまで指導・監査の実施を中止せよ

三、指導監査はそのあり方も含め抜本的に改善せよ

四、 指導医療官、医療事務指導官が行きすぎた 指導監査を行わないよう第三者による実効性のある監視体制をとれ

五、今回の事件に関与した技官の名前を公表し罷免せよ