社保・学術部長談話「歯科医療提供体制を維持するため、診療報酬本体の抜本的引き上げを」

社保・学術部長談話「歯科医療提供体制を維持するため、診療報酬本体の抜本的引き上げを」

社保・学術部長談話「歯科医療提供体制を維持するため、診療報酬本体の抜本的引き上げを」

3月5日、2026年度診療報酬改定の告示・通知が示された。今回の診療報酬改定は、医科歯科連携の推進や入院患者に対する口腔管理の評価など、口腔管理の重要性がより明確に位置づけられ、歯科医療が全身の健康の維持や生活の質の向上に寄与するという観点も示された。

具体的には、SPTP重防が歯周病継続支援治療として統合され、小児口腔機能管理料および口腔機能管理料の引き上げや検査の算定に必要な施設基準が撤廃されるなど口腔機能管理の充実が図られた。歯科衛生士による口腔機能実地指導料が独立したことも評価できる内容である。さらに適用条件が難解であったCAD/CAM冠およびCAD/CAMインレーの要件廃止、TeCの臼歯部までの拡大、麻酔薬剤料の算定対象の拡大、画像診断の診断料・撮影料の定義の変更、チタンブリッジの新設による歯科用金属アレルギー患者への対象拡大などが行われた。協会が改善を要望していた不合理な項目が是正され、臨床現場において使いやすさを意識した改定であることが理解できる。しかし、変更点は多岐にわたるため、全体を理解するには一定の時間を要する内容である。

一方、歯科疾患管理料は初診時の減算こそ廃止されたが、点数自体が引き下げられたため、長期の管理ではマイナスが積み重なる。新製有床義歯管理料も算定単位が変更され、歯科口腔リハビリテーション1との併算定が可能になったものの、こちらも点数が下がり、長期管理では同様にマイナスが生じる。SPTおよびP重防については、20歯未満の場合に減算となる。長期的に口腔管理を行う評価がマイナスとなったことは問題である。

今次改定では、歯科診療報酬の財源の大部分が物価・賃上げ対応に振り分けられた。改定率の半分以上を占める賃上げ対応は、歯科外来・在宅ベースアップ評価料の対象者を広げ、大幅な点数配分と継続して賃上げしている医療機関へのさらなる増点措置が取られた。賃上げ対策を行う医療機関を評価することは理解できるが、ベースアップ評価料は、医療行為の評価とは関係なく、使途が賃上げ対応に限定されていることが一番の問題点であり、基本診療料をはじめとした歯科診療報酬本体の点数を引き上げ、歯科医院経営を改善することが先決である。

物価高騰への対応として歯科外来物価対応料が新設されたが、初診時3点、再診時等1点にとどまり、物価高騰への対応には不十分と言わざるを得ない。

また、歯科技工士の確保および処遇改善を目的として歯科技工所ベースアップ支援料が新設されたが、1装置につきわずか15点であり、歯科技工士の確保および処遇改善の目的を果たせるとは考えにくい。歯科技工士不足は長年にわたり指摘されてきた構造的問題もあり、歯科技工士の養成、労働環境の改善、適正な技工評価など、総合的な対策が必要である。

現在、歯科医院の経営環境は、医療材料費、光熱費、人件費などの急激な高騰により極めて厳しい状況に置かれ、オンライン資格確認の設備や機器の改修なども今後の負担となる。今次改定では、一定の物価対応措置が講じられたものの、歯科分野への配分は極めて限定的であり、歯科医療機関が直面するコスト増加を十分に補填する水準とは言えない。

歯科医療費は医療費全体の中でも低い水準にとどまっており、歯科医療提供体制の維持のためには診療報酬本体のさらなる引き上げが不可欠である。保険でより良い歯科医療を国民に提供できるよう、協会は引き続き、診療報酬改定による算定要件の緩和、不合理是正を求めていくとともに、医療界の一致した要求である歯科診療報酬10%以上の引き上げを求めていく。

2026年4月10日

東京歯科保険医協会

社保・学術部長 本橋 昌宏