【教えて!会長!! Vol.77】 「PEEK」について

<東京歯科保険医新聞2023年12月号8面掲載>

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【教えて!会長!! Vol.53】PEEKによる大臼歯歯冠修復物

◆12月から保険適用となった「PEEK」とは。

11月22日の中医協でCAD/CAM冠材料(Ⅴ)として「松風ブロックPEEK」レジンブロックが保険医療材料として承認されました(本紙2面に関連記事)。「ポリエーテルエーテルケトン」の頭文字で「PEEK」と呼称されます。熱可塑性樹脂の中に機械的強度や耐熱性に優れたエンジニアリングプラスチックがあり、さらに優れた性能を有するものがスーパーエンジニアリングプラスチックと分類され、その中に「PEEK」は位置しています。この「PEEK」ですが、その優れた性能から金属の代替材料として医療機器、自動車部品などでも注目されています。すでに歯科領域では前装冠のコーピングやインプラント上部構造用フレームとして使用され、その生体安全性や口腔内環境に適した材料といわれています。その理由として、高い機械的強度、高靱性(割れにくく粘り強さを持つ)、耐摩耗性があり、吸水性が低い、耐熱性があり衝撃吸収能を有し、密度が金属材料やジルコニアと比較して小さいため、非常に軽いなどの特徴があるためです。

◆2年に1度の診療報酬改定前年の12月1日から保険適用となるのはなぜですか。

2年ごとの診療報酬改定ではない3・6912月に保険適用になることを「期中収載」と呼称しています。日本補綴歯科学会が2022年度診療報酬改定に向け、21年に保険未収載技術として「ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)による大臼歯歯冠修復物」の申請技術名で医療技術評価提案書を提出しています。22年度改定の時には「PEEK」のレジンブロックが保険医療材料ではないため、医療技術評価分科会では評価されませんでした。今回、保険医療材料等専門組織で「『松風ブロックPEEK』レジンブロック」が可と判定され、中医協において承認されました。なお、24年度改定に向けて日本補綴歯科学会が申請技術名「PEEKによる大臼歯歯冠修復物」で再度提出していますが、24年度改定の提案書が反映された訳ではありません。また、2223年の「骨太の方針」に「市場価格に左右されない歯科用材料の導入を推進する」と明記されました。これが、本適用に影響したと推測されます。今後、比較的早期に「PEEK」レジンブロックを販売している他メーカーの製品が保険適用されるでしょう。

◆臨床上のエビデンスについて。

広島大学で行われた2023ケースの大臼歯の6カ月の臨床追跡調査が報告されています。その結果は、臨床的に問題がなく、金属によるクラウンの代替材料として期待できるとされています。そのほかの臨床研究の報告は現時点では見つけられないため、2023ケースの半年の臨床応用の結果のみで、保険適用が承認されたこととなります。今後、患者さんに説明できる高いエビデンスとなる臨床研究が報告されることに期待します。

東京歯科保険協会
会長 坪田有史
(東京歯科保険医新聞2023年12月号8面掲載)