歯科医療を経済から見てみるNo.1 「家計調査」から歯科医療を見てみると…

歯科医療を経済から見てみる」というタイトルで、5回の連載でお話を進めていく予定です。いろいろな、経済資料や経済学的観点から、歯科医療を考えていきます。今回は、「家計調査」から見てみました。

ところで、「家計調査」をご存じですか?

総務省統計局のホームページから引用すると、「家計調査は、一定の統計上の抽出方法に基づき選定された全国約9000世帯の方々を対象として、家計の収入・支出、貯蓄・負債などを毎月調査しています。家計調査の結果は、我が国の景気動向の把握、生活保護基準の検討、消費者物価指数の品目選定及びウエイト作成などの基礎資料として利用されている」になります。

したがって、国民医療費や医療経済実態調査は、どちらかというと診療側から見ていきますが、この調査は、家計から支払われた金額で示されいます。

今回は、2019年から2022年までの4年間の年間収入五分位階級別1世帯当たり支出金額を12に示しました。ⅠからⅤは、世帯の年間収入による区分で、ⅠからⅤに向かって収入が増加していきます。縦軸は、支払額を円単位で示しています。そのため、医療機関での診療行為に対する支払額を示しますので、国民医療費とは異なり、自費診療分も入りますが、保険診療では一部負担金額になります。歯磨剤や歯ブラシ購入費は、別途項目がありますので入りません。

さて、歯科診療代の年度ごとの平均額は、2019年は18812円、20年は18294円、21年は21441円で、22年は22000円でした。19年から20年で低下し、その後、緩やかに22年に向けて増加しています。

診療報酬改定の年である20年は、通常、家計からの支出も増加が想定されましたが、実際に、減少したことは、新型コロナウイルス感染症の影響を受けたと考えられます。

しかし、特に、見ていただきたいのは、1です。年間収入により歯科診療代に差がみられ、年間収入の区分がⅠからに向けて、歯科診療代が増加している点です。いずれの年もこの傾向を示しており、これは、歯科診療代の特徴です。弾力的な支出項目と言われていますが、世界の先進国では同様な傾向がありますが、保険制度でのカバー範囲が最も多い日本でも、このような差があることは今後も検討していく必要がありましょう。

一方、医科診療代の年度ごとの平均額は、19 年は4374円、20年は4850 円、21年は42344 円で、22年は43727円で、歯科とほぼ同様の傾向を示しています。しかし、年間収入により医科診療代に差がほとんどみられません(2)。

このような、特徴をご存じであったでしょうか。今回は示しませんでしたが、「家計調査」は、地域格差も見ることができるなど、いろいろな分析ができることでも知られています。

 

「東京歯科保険医新聞」202391日号(No.6423面掲載

 


尾﨑哲則( おざき・てつのり)1983年日本大学歯学部卒業。1987年同大学大学院歯学研究科修了。1998年日本大学歯学部助教授。2002年日本大学歯学部医療人間科学分野教授、日本大学歯学部附属歯科衛生専門学校校長、日本歯科医療管理学会常任理事。2008年日本歯科医療管理学会副会長、2019年日本歯科医療管理学会理事長。ほかに、日本公衆衛生学会理事、日本産業衛生学会生涯教育委員会委員長、社会歯科学会副理事長などを歴任。