【教えて!会長!! Vol.75】2024年度診療報酬改定

2024年度診療報酬改定の進捗状況を教えてください。

本年8月30日に開催された第553回中央社会保険医療協議会総会(以下、中医協)において、本年月から行われてきた2024年度(令和6年度)診療報酬改定の論点や議論などが整理されました。
これらで整理された内容により、2024年度改定に向けた具体的な議論がさらに進み、具体的な改定内容が決まっていきます。
なお、厚生労働省のホームページに資料が掲載されていますので、検索していただければ詳細を確認できます。
多くの項目が取り上げられていますが、本稿では、いくつかの項目をピックアップして改定内容について推測してみます。中医協の資料には、各項目での「現状と課題」のあとに「論点」「主な意見」が記載されています。以下に、例としてかかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所(以下、か強診)、口腔機能管理料、歯科衛生実地指導料(以下、実地指)についての記載を示します。
【歯科医療提供体制】   
1.現状と課題/か強診について
・ライフステージに応じた継続的な口腔の管理や医療安全の取組、連携に係る取組に積極的に取り組む歯科医療機関として、平成28年度診療報酬改定においてか強診を新設し、以降施設基準の見直しなどが行われており、施設基準の届出医療機関数は年々増加している。
・か強診の施設基準には歯科疾患の重症化予防や歯科訪問診療に関する実績要件などが必須とされており、小児の歯科治療に関する要件は設定されていない。
《論点》
・かかりつけ歯科医に求められる機能や病院における歯科医療など、歯科医療機関の機能・役割に応じた評価について、どのように考えるか。
《主な意見》
・ライフコースに応じた歯科疾患の重症化予防や地域包括ケアシステムにおける連携などが重要であり、か強診にはこれらの役割が求められている。一方で患者にとっては、か強診とそれ以外の歯科診療所の違いが分かりにくいという指摘もあり、か強診がどのような役割を担うべきか考える必
要がある。

・歯科医療機関の機能分化や連携を適切にすすめ、地域の状況に応じた歯科医療提供体制を構築すためにも、在宅歯科医療、医療安全や院内感染対策など関連する施設基準を整理・検討すべき。
◆私の推測
厚労省側は政策として、か強診の届出医療機関数を増やしたいのか、抑制したいのかなどの方向性が不明である。
厚労省が示す論点からは、小児の歯科治療の実績について追加されるなど施設基準の変更が行われる可能性があり、歯科医師側からみるとか強診の施設基準は厳しくなる可能性がある。

2.現状と課題/口腔機能管理について     
・小児および高齢者に対する口腔機能管理については、2022年度(令和4年度)診療報酬改定において対象患者の見直しを行ったが、算定状況は低調である。
《論点》
・口腔疾患の重症化予防や年齢に応じた口腔機能管理をさらに推進するため、診療報酬のあり方について、どのように考えるか。
《主な意見》
・口腔機能の管理については、口腔機能管理の中で行われる口腔機能獲得や口腔機能向上のための訓練に対する評価について検討すべき。          
◆私の推測
厚労省側は小児および高齢者に対する口腔機能管理について、算定数を増やすための方策を提示するものと考えられる。
また、以前からの課題とされていたが、診断して病名をつけた後、口腔機能に対する訓練の評価が新設されるかについて注目される。

3.現状と課題/実地指について
・歯科衛生士による実地指導を評価した実地指は、平成8 年に新設されて以降、平成22年の障がい者に対する実地指導の評価新設を除き、大きな見直しは行われていない。
《主な意見》
・歯科衛生士による実地指は重症化予防の観点から非常に重要である。近年は、ブラッシング方法の指導等だけでなく口腔機能や生活習慣などの観点からも歯科保健指導が行われており、実態に応じた評価を検討すべき。
◆私の推測
歯科衛生士の雇用などに関して様々な問題が生じていることに対して実地指を変更するが、影響率が高くなるので実地指の点数を単純に増点することは困難な状況であり、時間要件、あるいは内容によって応じた点数配分が設定されるといった見直しが行われると推測される。

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協会は、今後も2024年度診療報酬改定について検討し、よりよい改定が行われるよう行政側に要望していきますので、ご協力のほど、よろしくお願い申し上げます。

東京歯科保険医協会
会長 坪田有史

(東京歯科保険医新聞2023年10月号8面掲載)