歯科界への私的回想【NARRATIVE Vol.4】 「たかが事務局、されど事務局」 組織を支える“事務局”の重要性を理解

新年、2023年がスタートしました。マスコミは一斉に業界・企業の「今年はコロナ禍の課題を踏まえながらも、新規スタートの年にしていきたい」との趣旨の新年挨拶文や名刺広告で紙面を埋め尽くしているはずです。

そこで、従来の新年挨拶は他紙に譲り、今回は特異な観点から話を進めます。新年の挨拶回りは恒例行事であり、歯科界では、日本歯科医師会(日歯)、日本歯科商工協会、日本歯学図書出版協会、さらに歯科学会の多くの担当部(事務局)が置かれている一般財団法人口腔保健協会もその一つです。

1月15(旧成人の日)以降、業界組織の新年会が開催され、「今年も新たな気持ちで、歯科界は一致団結して飛躍する年になるように頑張りましょう」などの挨拶で活動が始まるのですが、それは事務局のお世話になるということでした。

特に、日歯事務局(医療課・調査課・広報課)は重要視していましたし、同時に地元歯科医師会の行事、日本歯科医学会所属学会の学術大会、企業展示会などの取材でお世話になるのは、いつも地元歯科医師会事務局でした。

香川県歯科医師会主催の会合を取材した際、まず会長から事務局長を紹介されました。その中で、「本県歯は、事務局に全幅の信頼を置いて会務活動をしています。最終的な責任は会長・役員にあるのは当然ですが、事務局員は県歯の一部です」と発言していたことが記憶に残っています。

民間企業でも、確かに対外的に目立つ部署があります。以前、日本歯学図書出版協会の新年会で、某社長が「企画、編集、広報などは目立つ部署なのは事実。同時に地味ですが、総務、庶務、経理等なども組織を支えており、まさに組織は一つ。その点を新たに自覚してほしい」と理解を求めていました。

かつて、厚生労働省(旧厚生省)は、求める部署に直接伺うことができ、時間があれば歯科保健(旧歯科衛生)課長と意見交換・雑談することが可能でした。しかし0811月に起きた元・厚生事務次官の殺害事件以後は、警備員配置や来庁者のチェックが行われ自由な出入りができなくなりました(厚生省職員が同伴する場合は可能)。事前予約を取り、庁舎の受付でチェックを受け、許可されて入場できるようになりました。日歯でも以前は担当課に直接行き、雑談を交わすことができましたが、現在は担当者が受付に降りて要件を確認することが基本になっています。

以上のような様々な場面、経緯を事務局員は知っています。だからこそ「たかが事務局、されど事務局」であり、その重要性は変わらないと考えます。現実的には、会員とそのスタッフの把握、労働環境、対外的対応、理事会などの資料作成、予定外の対応など様々で、日々の労務・作業のボリュームは、想像以上のものと理解しています。

今年は、会場対面方式とオンライン方式の両者を兼ね備えたハイブリッド方式による会合が主流になるとの観測もありますが、コロナ感染管理においては事務局の責務も出てきます。

以前、某日歯役員に1日同行させていただきましたが、確かに激務でした。そして、そこで黙して淡々と事務作業しているのが事務局員。「これが重要であり、組織を支えているのだな」と理解した場面でした。組織ですから、会員数の相違があります。221130日現在、東京都歯科医師会(1種会員5865)から島根県歯科医師会(1種会員227)まで、約26倍の開きがあります。しかし、少数会員の組織でも、事務局は、懸命に諸作業に取り組み、運営しています。

また、私は自分の経験から日本医師会、日本薬剤師会、日本看護協会など、歯科に関連する団体の広報担当部とのパイプ構築は必須と判断し、事務局への挨拶は絶えず意識しています。事務局にも歴史がありますので、その評価は難しいですが、忘れてはならないのは、繰り返しとなりますが「たかが事務局、されど事務局」です。

新年の始動に際し、歯科医療関連の各団体に改めて期待しています。

◆奥村勝氏プロフィール

おくむら・まさる オクネット代表、歯科ジャーナリスト。明治大学政治経済学部卒業、東京歯科技工専門学校卒業。日本歯科新聞社記者・雑誌編集長を歴任・退社。さらに医学情報社創刊雑誌の編集長歴任。その後、独立しオクネットを設立。「歯科ニュース」「永田町ニュース」をネット配信。明治大学校友会代議員(兼墨田区地域支部長)、明大マスコミクラブ会員。