【教えて!会長!! Vol.64】医療情報を確認できる仕組みの拡大

直近のマイナンバーカード関係の状況を教えてください。

 協会は、医療の将来を考え、医療のICT化やデジタル化を進めること自体には反対していません。一方、政府が推し進めているマイナンバーカードの問題点を以前から指摘してきました。そして、現在はオンライン資格確認システム(以下、オン資)導入の″原則義務化〟の撤回を訴えてきました。本紙9月号から今号まで会員の先生方からの疑問、困惑、不満などを紹介し、9月8日に理事会声明「オンライン資格確認システム導入の義務化撤回を」を発出して、国会議員、厚生労働省、メディアなどに発信してきました。
 政府・行政は、2023年4月という期限を決め、オン資の導入を様々な方策で医療機関に迫っています。しかし、8月10日の中医協総会において、「オンライン資格確認の原則義務化に対する答申(答申書付帯意見)」で、実際に予定していた普及率を下回っているためか、「令和4年末頃の導入の状況について点検を行い、地域医療に支障を生じるなど、やむを得ない場合の必要な対応について、その期限を含め、検討を行うこと」と示しています。
 正確にはどの時点の導入の状況(普及率)を調査するかは不明ですが、年末までのどこかのタイミングでの普及率によって、期限などその後の方針を変更するなどの決定がされる予定です。したがって、普及率の数字が重要であることをぜひ認識してください。

 9月14日には日本医師会の長島公之常任理事が、「医療機関側として対応できない事態を根拠に経過措置の対象や期間を求めることになる」と発言され、医師会会員からの様々な声に医師会が応える姿勢をみせたと理解できます。
 また、10月13日には、河野太郎デジタル大臣が現行の健康保険証を2年後の2024年秋に廃止してマイナンバーカードを代わりに使う「マイナ保険証」に切り替えると発表しました。この件についての協会の意見は、政策委員長談話を参考にしてください。
河野大臣の発表後、多くの反対意見が出たためか、同24日の衆議院予算委員会で岸田文雄首相は、「カードを持たない人については、資格証明書でない制度を用意する」と発言され、混乱と迷走していると感じています。
 以上、本稿執筆時までのトピックスをできる限り客観的に記したつもりです。

 

先日、患者さんから「過去の診療情報を調べました」と言われましたが、どういうことですか?

 9月5日の厚生労働省・社会保障審議会医療保険部会で示された「全国で医療情報を確認できる仕組みの拡大」でその理由が分かります。そこには薬剤情報に係る「医療機関名」および「薬局名」に加え、9月11日以降、患者側がマイナポータルで閲覧可能な項目が増えたことが示されています(表参照)。


 

 

 

 

 

 

 すなわち、患者自身が医療機関を受診し、医療機関から毎月請求される電子レセプトから抽出した情報の中の項目(診療情報)が対象となり、閲覧可能な項目が拡充されています。この診療情報について、メリットとして「マイナポータルにアクセスすることで、患者が医療機関で受けた診療行為などの情報をいつでも閲覧可能」と示されています。したがって、すでに表に示した診療情報をオープンな状態で患者サイドが直接見て確認することができます。
 患者・国民からみれば、確かに多くのメリットがあることは理解できます。しかし、デメリットとして医師・歯科医師と患者との間での理解や認識の違いによる問題が起こり、互いの信頼関係が損なわれる可能性が危惧され、今後、大小様々な問題まで生じないか一抹の不安を感じるのは私だけでしょうか。
 引き続き、協会では会員の先生方からのご相談、ご意見、ご要望に可能な限りお応えしますので、直接協会までお寄せください。


東京歯科保険医協会 会長 坪田 有史
(東京歯科保険医新聞2022年11月号8面掲載)