The Postman Always Rings Twice ~ 郵便配達は二度ベルを鳴らす ~

The Postman Always Rings Twice ~ 郵便配達は二度ベルを鳴らす ~

1981年米国/ボブ・ラフェルソン監督

 

「わたしはあなたのものよ」

「もしふたりきりなら」

「善悪なんか関係ない」

「死刑になるぞ」

 この映画はいつの時代でも、どこの国でも、世の中を騒がせるいわゆる「夫殺し」の話です。フランス、イタリア、アメリカで4度もリメイクされています。時代と国を越えて、社会の現実を背景してリアルに描かれるので、人々を惹きつけて止みません。

 男は美しい女房に惹かれて、ギリシャ人の経営する安食堂で、働き始めます。

 男は社会の底辺に生き、裏社会に通じている虚無的、厭世的な流れ者です。魔性の気配のおびた多情な、若い女房は夫の留守中に、すぐに男と関係を持ち、2人は夫を殺害する計画を練ります。

「殴った瞬間に、電気が消えたわ」

「救急車を」

「警官に見られた」

 1度目のバスタブで溺死偽装を装う殺害は失敗してしまいます。

「彼、子供が欲しいって」

「あなた以外の子を作るなんてできない」

 その半年後、2人は自動車転落事故を偽装し、ギリシャ人の殺害に成功します。しかし、新しい生活をはじめた二人の間には始終気まずい空気が流れ、男は別の女のところへ出入りするようになります。

「よせよ、なぜ俺が彼を」

「いい女だ、殺しくらいやるだろ」

 警察はギリシャ人が殺害されたとして、2人を指名手配します。男は女が密告したのではと疑ったが、女の妊娠を知り、急速に2人の仲は元に戻ります。

 正式に結婚しようと、婚姻届けを出した直後、本当の交通事故に遭遇し、女だけが死んでしまいます。悲劇が待ち受けていました。

◆4回のリメイク

   この映画は、これまで4回作られています。ここで紹介したのは1981年ジャック・ニコルソンとジェシカ・ラング主演の作品ですが、1939年にフランスでは「LE DERNIER TOURNANT~最後の曲がり角から」というタイトルでつくられました。

 次に、1942年に舞台を北イタリアのロンバルディア平原を流れるポー川のほとりの食堂に移して、監督ルキノ・ヴィスコンティが「Ossessione~妄執~」として作っています。

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 そして1946年にアメリカを舞台にして、ジョン・ガーフィールドとラナ・ターナー主演でも作られました。そして、それから35五年たった1981年にジャック・ニコルソン主演の映画が作られました。

どの映画も時代を越えて素晴らしいでき上がりです。わたしは回想的手法をもちいたヴィスコンティ監督のものがフィルム・ノワール的で大好きです。

                               (竹田正史/協会理事)