きき酒いい酒いい酒肴No.22『アイリッシュコーヒー/アイルランドが誇るアイリッシュウイスキーを入れたコーヒー』

きき酒いい酒いい酒肴No.22

『アイリッシュコーヒー/アイルランドが誇るアイリッシュウイスキーを入れたコーヒー』

11月になると、各地で紅葉の便りが聞かれるようになります。寒さが増してくるとき、診療がおわったあとに、いつものコーヒーにアイリッシュウイスキーを入れたアイリッシュコーヒーが身体に沁みます。

◆温めた器に白ザラメを入れ…
温めた器に白ザラメを入れ、アイリッシュウイスキーをいれ、熱いコーヒーを注ぎます。そのうえに生クリームを浮かべてできあがりです。
先日、秋深まるアイルランドでパブ巡りをしてきました。店によって、アイリッシュコーヒーの味が違いました。寒いとき、店に入ったら、まずアイリッシュコーヒー、そしてギネス、最後にアイリッシュウイスキーで仕上げ、というのが定番のコースでした。

◆ウイスキーとコーヒーの相性
ウイスキーとコーヒーは意外と合いますので、京都祇園にある「幾星」というお店では、コーヒーをチェイサーにウイスキーを出してくれるそうです。アルコールの刺激が和らぎ、舌触りがなめらかになります。

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◆「覚醒の酔い」を招くウイスキー
ウイスキーの酔いは、開放感や酩酊といった分類ではありません。サントリーの元ブレンダーで原酒生産部にいらした三鍋昌春さんに、お話を伺う機会がありました。酔っているのに思考力、想像力が研ぎ澄まされ、頭脳が活発に動き出すのを実感できる不思議な「覚醒の酔い」だそうです。華麗なシャトーで生まれるワインと違って、飲み手の知性を引き出し、自我に向かっていざなってくれるのです。ウイスキーを飲みながら原稿を書く作家が多いというのもうなずけます。
19世紀までは、ウイスキー界ではアイリッシュが中心でした。今では、スコッチ、ジャパニーズのほうが、人気があるようです。

◆アイリッシュウイスキーの醸す歴史
アイルランドの歴史はとてもつらいものが多いです。1845~51年にグレートファミン(大飢饉)が起こり、人口が800万人から650万人まで減り、アメリカや英国への移民によって、1911年には440万人に激減しました。苦難の歴史を耐え忍ぶ中で、アイルランドの人たちにとって、ウイスキーが心の支えになってきたのです。
現在、アイルランドは昔のケルト時代以来の繁栄を迎え、アイリッシュウィスキーの蒸溜所も次々と新設されています。
スコッチウイスキーに比べて、蒸溜回数が3回と多いためなのか、わりと単調に感じます。アイリッシュウイスキーのテイスティングのとき、「オイリー」という言葉がよく使用されます。口に含んだときの独特の滑らかな感触を表現しているようです。
秋が深まるこの季節、身体を温め、「覚醒の酔い」をもたらしてくれるアイリッシュウイスキーを使ったコーヒーはいかがでしょうか。
(協会理事/早坂美都)