きき酒 いい酒 いい酒肴 ⑳「初夏にぴったりなチーズと白ワイン~クロタン・ド・シャヴィニョルとサンセール」

きき酒 いい酒 いい酒肴 ⑳

「初夏にぴったりなチーズと白ワイン~クロタン・ド・シャヴィニョルとサンセール」


◆シェーブル
山羊のミルクで作られたチーズの総称をシェーブルといいます。年中店頭で見かけますが、伝統的なシェーブルの旬は初夏だといわれています。
母親の山羊たちが若く青々とした草を食べるのに関係します。青い草やハーブをたくさん食べた母親山羊が出すミルクは、一年で一番フレッシュな味わいだからです。干し草を食べている季節とは違います。
その中でも人気があるのがクロタン・ド・シャヴィニョル(「シャヴィニョル村のクロタンチーズ」という意味)というチーズです。これを焼いて野菜の上にのせるサラダがフランスのヌーベルキュイジーヌをうたうレストランで人気です。すっきりとした酸味の中に、ミルクの甘みが感じられ、冷やした白ワインにぴったりです。

◆シャヴィニョル村そしてロワール川
シャヴィニョル村は、フランスのロワール川中流地域の銘醸ワイン「サンセール」の生産地域にある村です。ロワール川は、フランスの中心部から大西洋に流れていて、川沿いに多くの名城が残されていることでも有名です。
フランスの庭と呼ばれているこの地域では、バリエーション豊かなワインが作られています。ソーヴィニョンブランという白ブドウを主に使っているのですが、独特な酸味、果実味を感じられ、上品な柑橘系の味わいがあります。
ロワール川沿いは、石灰岩質から粘土質まで、さまざまな土壌がモザイク状に入り組んでいるため、畑によってかなり味わいが違ってきます。
ピノ・ノワールという黒ブドウも作られ、赤ワインも生産されています。

◆奥深いクロタン・ド・シャヴィニョル
クロタン・ド・シャヴィニョルの若いうちはサンセールの白、熟成したらサンセールのロゼ、赤を合わせるのがおすすめです。
若いフレ(フレッシュ)、ドゥミ・セック(十二日間熟成)、クードレ(十八日間熟成。全体が粉っぽい)、ブルーテ(二十一日間熟成。所々青かび)、ブルー・ムワルー(五週間熟成)、ブルーセック(六~八週間熟成)、ブルートレ・セック(二カ月以上熟成。乾燥している)、ルパセ(壷に入れて熟成)と、熟成度合によって味わいが変わる奥深いチーズです。

◆取り合わせと良い熟成
その中でも、若いフレとサンセールの白の取り合わせは、この季節にぴったりです。また、辛口ワインとのマリアージュ(「結婚」や「とりあわせ」の意味)もいいですが、ロワール地方の甘口ワインとも合います。
シュナン・ブラン種という白ブドウから作られる果実味ふくよかな甘口のワインと一緒だとデザート感覚で楽しめます。
フランスではチーズの熟成士という職業があり、その中でも優れた技を持つ方には「M・O・F(MEILLEUR OUVRIER DE FRANCE)」=「フランス最優秀職人」の称号を与えられます。良い熟成は、食べ物だけではなく、私たち人間にも大切ですね。

(協会理事/早坂美都)