きき酒 いい酒 いい酒肴⑯ 重陽の節句「菊酒」

きき酒 いい酒 いい酒肴⑯ 重陽の節句「菊酒」

まだまだ暑い日が続きますが、暦の上では、そろそろ秋の行事がはじまるころです。
旧暦の9月9日は、五節句のひとつ「重陽の節句」です。菊を用いて不老長寿を願うことから別名「菊の節句」といいます。
五節句とは、江戸時代に定められた5つの式日(現代でいう祝日)をいい、1月7日の人日の節句(七草粥)、3月3日の上巳の節句(桃の節句/雛祭り)、5月5日の端午の節句、7月7日の七夕の節句、9月9日の重陽の節句をさします。

早坂先生9月号写真

◆重陽の節句には長寿繁栄を願う
古来より、奇数は縁起の良い陽数、偶数は縁起の悪い陰数と考え、その奇数が連なる日をお祝いしたのが五節句の始まりで、お祝いとともに厄祓いもしていました。中でも一番大きな陽数(九)が重なる9月9日を、陽が重なると書いて「重陽の節句」と定め、不老長寿や繁栄を願う行事をしてきました。
主なものとして菊酒、菊湯、菊枕、菊合わせなどがあります。
菊酒は、本来は菊をお酒に漬け込んで作りますが、お酒に菊の花びらを浮かべてみるだけでも、風流な気分が味わえます。
菊湯は、湯船に菊を浮かべます。冬至の柚子湯のような感じです。
菊枕は、本来菊を詰めた枕で眠り、菊の香りで邪気を祓うのですが、菊の花びらを枕元においてもいいと思います。
菊合わせとは、菊を持ち寄って優劣を競います。菊まつりや菊人形展のことです。
 
◆食用菊には時節柄抗菌作用も
重陽の節句の食べものの代表が食用菊です。「もってのほか」の名前の由来は、「天皇の菊の御紋を食べるとはもってのほか」「もってのほか(想像以上に)美味しい」と言われています。
おひたし、お吸い物、サラダなどに使われ、お刺身の盛り付けの黄色い菊は、優れた抗菌作用で食中毒防止の役割もあります。また、江戸時代から重陽の節句に栗ごはんを食べる習わしがあり、「栗の節句」とも呼ばれています。
診療に追われる日々を送られているかと思いますが、忙しいときほど、古くからの日本の美しいならわしを楽しむのもよろしいかと思います。
(早坂美都/広報・ホーム  ページ部員/世田谷区)