きき酒 いい酒 いい酒肴No.27『シングルモルトと牡蠣』(機関紙2017年月11日1日号/No.572号)

きき酒 いい酒 いい酒肴No.27『シングルモルトと牡蠣』(機関紙2017年月11日1日号/No.572号)

少しずつ寒さが増して、牡蠣が美味しい季節になってきました。

牡蠣には何を合わせますか?と聞かれて、日本酒好きの方は「熱燗」と答えるかもしれませんし、ワイン好きな方は「シャブリ」と答えるかも知れません。意外かも知れませんが、生牡蠣にスコッチウイスキーがとても相性が良いのです。

今年の夏に、スコットランドのウイスキー蒸留所を回ってきました。日本の淡路島と同じくらいの面積、人口四千名弱のアイラ島が一番の目的で、現在は八つの蒸溜所があります。

その中でも最も古いボウモア蒸溜所は、1779年の開設から200年以上も伝統的な製法を守りながら、アイラモルトの女王と言われる「ボウモア」をつくっています。

「ボウモア」はゲール語で、「大きな岩礁」の意味があります。

◆ボウモアの貴重なNo.1

Vaults(第1貯蔵庫/ヴォルトとは地下貯蔵庫)を見せてもらいましたが、そこは海に面していて、波打ち際の岩盤を削り取ったうえに作られています。庫内の床は海面下に位置し、半地下のようなつくりです。特殊な設計で、原酒樽熟成に理想的な環境をおよそ240年以上保っているそうです。ほのかに漂う潮の香、最適な湿潤。これらの条件が原酒の熟成を進ませ、香味要素の役割を担っていることが想像できました。まさに、海のシングルモルトです。

アイラモルトの女王と言われるだけあって、エリザベス女王との縁も深いのです。

1980年、ボウモア蒸溜所に女王エリザベス世が初訪問され、女王の前で新酒が樽詰めされました。その後、2002年の女王戴冠50周年のお祝いに「BOWMORE THE QUEEN’S CASK」ボトル648本が誕生しました。645本は王室へ献上され、残り3本のうち1本は蒸溜所へ、1本はモリソン・ボウモア社の研究室へ、もう1本はチャリティーを目的としたオークションにかけられたのだそうです。

宿泊したホテルのレストランで、素敵な楽しみ方を教えてもらいました。目の前にある美しい海で採れたばかりの生牡蠣に、ボウモアをかけていただきます。潮の香がするシングルモルトと、新鮮な生牡蠣の風味。どちらが主張するでもなく、寄り添うような絶妙なバランスです。

帰国後、他の様々なウイスキーでも試してみました。生牡蠣が難しいときには、牡蠣のウイスキー蒸でも良いと思います。できれば、海の香りがするアイラモルトが一番良く合うようです。都内のオイスターバーでも、生牡蠣にボウモアを添えて出してくれるところも多いようです。

◆日本にも海の近くの蒸留所が

日本でも、海の近くの蒸留所として昨年、北海道の厚岸に厚岸蒸留所ができました。厚岸といえば、素晴らしい牡蠣と乳製品があるところ。今、熟成中のウイスキーが目を覚ます何年か後、スコットランドのアイラ島のように、厚岸の生牡蠣に厚岸のウイスキーをかけて楽しみたいものです。