歯科界への私的回想録【NARRATIVE Vol.9】東京歯科保険医協会の歴史と存在性/取材活動と貴会設立50周年を重ねて思うこと

6月は、歯科界でも各団体の総会・代議員会の開催が目白押しに予定されています。まず、貴会が6月18日に開催する第51回定期総会をはじめ、日本歯科医師会(代議員会:6月15日16)、日本歯科技工士会(総会:6月17)、日本歯科衛生士会(代議員会:6月11)、東京都歯科医師会(代議員会:6月22)があげられます。

◆ホームページに見る貴会の歴史と活動方針

特に貴会は、50周年を迎えることもあり、その意義があります。貴会の歴史をホームページから紐解くと、以下の通りです。

「東京歯科保険医協会は1973年4月、『歯科保険医の経営・生活ならびに権利を守り、国民の歯科医療と健康の充実および向上をはかることを目的』に設立されました。開業歯科保険医の要求にもとづく自主的な団体という性格を明確にし今日まで様々な活動を行ってきました。その結果、発足時の会員数は180名でしたが、2023年3月31日現在で約5980名となっています」。

続いて、全国保険医団体連合会(保団連)についてては、以下の通りです。

「全国の各都道府県には必ず保険医協会・保険医会があり、その連合体として全国保険医団体連合会(保団連)があります。保団連は1969年1月26日に『保険医の生活と権利を守り、保険医療の向上、医療保障の充実をはかる』ことを目的に結成され、2021年2月1日現在、全国では約10万7000名(医科6万5000名、歯科4万2000名)の医師・歯科医師が加入しています。東京歯科保険医協会も保団連の構成団体です」。

以上ですが、以前の総会で報告されましたが、会員数の増加には新たな意味がありそうです。そもそも貴会は、①医療の基本ベースである保険医・保険診療について行政に懇談・要請、②市民・患者視点の姿勢も持つ、③必要により意見・声明などを社会に提起―などを重視、実施し、その存在価値は大きいと思います。

私は、初代会長の小林昌平氏とは縁がありませんでしたが、記者として取材活動を始めたのが1990年からなので、2代目会長の大多和彦二氏とは、緊張して名刺交換をした記憶があります。以後、中川勝洋氏、松島良次氏、坪田有史氏の各会長とは意見交換を重ねながら勉強をさせていただいています。

◆顔となる機関紙の編集

さて、貴会の〝顔〟となる機関紙「東京歯科保険医新聞」は、独自の編集方針からして注目すべき存在です。私自身、取材活動に当たり、貴紙の「何が問題なのか」「何に注目しているのか」を参考にしています。保険診療をする開業医からすれば、日々その診療項目の理解、点数、解釈などの確認に努めているはずですので、貴会の行政に対する問題意識をも併せ、一目置いているのではないでしょうか。その理由は、臨機応変なるアンケート調査、行政からの資料を基にしたデータ作成など、説得力のある主張・論調があるからです。同時にそれは、保険医・患者の立場からの論点があることの証左でした。評価する時は評価、しかし問題がある時は厳しい指摘を適宜しています。

◆熱い議論に期待

50年の歴史を重ねてきましたが、ネット時代を迎えた現在、広報活動・新聞の在り方についても熱い議論が交わされていると思います。時代の趨勢を理解しながら、将来を見据えての活動をしているものと、私は理解しています。

4月に開催された日本デジタル歯科学会学術大会の中で、木本克彦神歯大教授は講演の最後に、「IT化やDXは着実に日常の歯科の臨床へ浸透してきており、その中心的な役割を果たしているのがCAD/CAMシステム」と指摘しました。その一方で、かつて、中医協会長を務めた土田武史氏の過去の認識ですが、「歯科は保険診療に対するシンパシーが薄い。混合診療の部分的容認・脱保険への接近を懸念」と、某専門紙に記していました(2007年6月)。これは、まさに〝保険診療の在り方・範囲〟など、現在でも喫緊かつ重要な問題となっております。だからこそ、「東京歯科保険医協会の活動にさらなる期待が寄せられることは間違いない」と、私は考えています。

 

◆奥村勝氏プロフィール

おくむら・まさる オクネット代表、歯科ジャーナリスト。明治大学政治経済学部卒業、東京歯科技工専門学校卒業。日本歯科新聞社記者・雑誌編集長を歴任・退社。さらに医学情報社創刊雑誌の編集長歴任。その後、独立しオクネットを設立。「歯科ニュース」「永田町ニュース」をネット配信。明治大学校友会代議員(兼墨田区地域支部長)、明大マスコミクラブ会員。