理事会声明「歯科医療機関の機能分化が進む2018年改定/患者の受ける医療にも格差が広がる」/機関紙2018年3月1日号(№577)3面掲載

理事会声明「歯科医療機関の機能分化が進む2018年改定/患者の受ける医療にも格差が広がる」/機関紙2018年3月1日号(№577)3面掲載

厚生労働省は3月5日、「診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について」等関連通知を発表した。その内容は、地域包括ケアシステムへの対応が中心となり、日常的な診療行為への評価は、組み替えや変更などが目立ち、引き上げも僅かな点数に止まった。長年、不採算と言われてきた処置や補綴などは改善には程遠い改定となった。

協会は改定に向け現場からの要望をまとめ、数次にわたり厚労省に要請を行ってきた。その結果、日常診療で診療内容の情報共有が進むよう診療情報連携共有料が新設されたことなど、現場の声が反映された項目も複数見られる。また、小児や高齢者に対する口腔機能管理が新設されたこと、歯科衛生実地指導料の対象患者の拡大など今後の診療の広がりが期待される。

一方で、歯科医療機関の機能分化、格差拡大が進行した。

在宅療養支援歯科診療所(歯援診)やかかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所(か強診)の施設基準が強化され、機能分化が図られた。

施設基準には訪問診療や紹介の実績が盛り込まれ、外来診療中心の医療機関ではとても届出を行うことはできない。成果・ノルマを課すようなやり方は問題である。

また、施設基準の届出を行うためには、機材や人員確保が必要となる。元々小規模な歯科にとって、新たな投資は重荷だ。昨年発表された医療経済実態調査にも表れているように、多くの歯科医療機関の経営は厳しい。体力の有る無しで患者に提供できる医療内容に差があってはいけない。医療機関間の格差は、通院している患者の格差にも通じる。

今次改定では、新たに初・再診料に院内感染防止対策が包括され、施設基準が設けられた。

通常の施設基準は、届出を行えばプラスの評価がされ点数が加算される。しかし今回、届出を行わない場合は、初・再診料が減算となる施設基準が導入された。施設基準を懲罰的に使うことには反対である。

また、設定された点数はコストに対してまったく足りていない。必要な金額よりもはるかに低い金額で導入し、実施責任のみ医療機関に押しつけるやり方は問題である。医療保険制度で行われる感染防止対策は、保険財源で必要なコストを賄うべきであり、改めて別立てによる評価を求めたい。

さらに、歯科の地域包括ケアシステムへの組み込みが進んだ。地域包括ケアシステムは、概ね30分以内に必要なサービスが提供される日常生活圏域(具体的には中学校区)を一単位として想定されている。今後、地域に増加する高齢者を支えるうえでも、地域包括ケアシステムへの歯科医療機関の参画は必要だ。

しかし、ハードルが上げられた歯援診やか強診が中心となるため、多くの医療機関ではシステムに参画することが困難となっている。

歯援診の強化とともに、歯科訪問診療料等が変わった。訪問歯科衛生指導料の算定単位を「単一建物」にしたことで、月末を迎えるまでは患者への請求金額が定まらないこととなった。「単一建物」で1名のみ診る予定だったが、月末に複数名になった場合など、患者に説明していた金額が変わる。現場が混乱するだけである。

また、20分未満の算定が不可となることで、訪問診療を支えていた歯科衛生士の雇用を支えきれなくなることも心配である。

歯科訪問診療に関する点数は1988年の導入以来、考え方や点数が何度も変わり今日に至っている。さらに、高齢者が増加する中で安定して歯科訪問診療を推進する方針であるならば、改定の度に算定方法や考え方が変わらないようにすべきだ。

今年、政府はさらなる患者負担増を行おうとしており、患者が必要な歯科医療を受けられなくなることが懸念される。経済的な理由で医療機関に行けない患者があってはならない。歯科医院の経営改善と患者負担増を止めることは、歯科においての喫緊の課題である。 協会は、患者が安心して歯科医院に通えるように、引き続き歯科医療費の総枠拡大とともに、患者負担増反対に向けた運動を推進していく。

2018年3月8日

東京歯科保険医協会

第22回理事会