財政審分科会が診療報酬・介護報酬の引き下げを提案/診療報酬2.5%以上のマイナス案

財政審分科会が診療報酬・介護報酬の引き下げを提案/診療報酬2.5%以上のマイナス案

10月25日、財務省の財政制度等審議会財政制度分科会は、2018年度政府予算編成に関して提案をまとめ、その中で2018年度診療報酬改定について、医療費の伸びを「高齢化等」の範囲内に抑えるとともに、診療報酬改定1回当たり2%台半ば、つまり2.5%以上のマイナス改定が必要との考えをまとめた。すでに、厚生労働省などと調整に入っている。

本年6月9日に閣議決定された政府の基本方針である「骨太の方針2017」では、歯科医療に関し、「口腔の健康は全身の健康にもつながることから、生涯を通じた歯科健診の充実、入院患者や要介護者に対する口腔機能管理の推進など歯科保健医療の充実に取り組む」と明記しており、今回の財政審分科会提案との関係がどうなるのかも注視する必要がある。

具体的な提案内容は、2018年度予算編成では歳出の約1/3を占める医療や介護に関する社会保障費の伸びを抑制するため、2018年度診療報酬改定では、「2%台半ば」に当たる1兆円以上引き下げるよう求めている。民間企業の賃金、物価水準がほぼ横ばいで推移する中で、診療報酬引き上げが続いており、引き下げが必要だとしている。

薬価については、新薬は高価格設定されているため、これが医療費増加につながっていると指摘し、「薬の効き目などを見て価格を決める新たな仕組み」を策定するよう求めている。

さらに、75歳以上の高齢者の追加負担も打ち出しており、75歳以上の医療費窓口負担を現行の原則1割から段階的に2割に引き上げるよう求めている。

介護分野では、介護報酬の引き下げを提案している。介護報酬は、今年度、職員の処遇改善のため臨時改定を行い、約1%を上乗せしている。財務省は、これを引き合いに出し「来年度の改定ではこの上乗せを考慮に入れ…訪問介護サービスの費用は抑えたい」とし、マイナス改定を提案しているもの。

◆協会は政策委員長談話を発表

協会では、今回の財政審分科会の提案に対し、その撤回を求める松島良治政策委員長名による「談話」を発表した。談話は以下の通り。

【 談 話 】

「引き下げありき」の財務省提案は撤回せよ

財務省は10月25日、財政制度等審議会財政制度分科会で、次期診療報酬改定の引き下げを提案した。今後、高齢者がさらに増加し、医療の重要性が一層求められているにもかかわらず、「引き下げありき」の財務省に対し提案を取り下げるとともに、必要な財源を確保するよう求めるものである。

財務省は、過去10年間の雇用者報酬の伸びが年平均0.2%であるのに対し、国民医療費が2.5%だとして「診療報酬改定1回当たり2%半ば以上のマイナス改定が必要」だとした。

しかし2002年以降の診療報酬ネット改定率は、累計マイナス10%である。現場では経費節減や設備投資の先送りで何とか乗り切ってきたのが実態だ。

また、そもそも診療報酬は医療機関の収入だけでなく、社会保障制度を通じ国が国民に提供する医療の質と内容を規定するものだ。経済の問題を優先した安易な削減はそもそも行うべきではない。また診療報酬には、人件費や様々な経費に加え、将来にわたって医療を継続するのに必要な費用も含まれている。このため現場を無視した削減は、将来にわたる医療崩壊の危険をも生じさせることになる。

来年は医療・介護の同時改定であり、増加する高齢者を地域でどのように支えるかの対応が大きなテーマになっている。口腔疾患と全身疾患の関係にも関心が高まり十分な手当が必要だ。「マイナス改定」では必要な医療の提供が出来ないのは明らかだ。

厳しい財源の中、次期診療報酬改定を少しでも良い内容にしようと中医協では論議が進んでいる真最中であり、こういった中での財務省の「マイナス改定」提案は、関係者の努力に水を差すものである。

東京歯科保険医協会は、国民に保険で良い歯科医療を提供するために、次期診療報酬改定での大幅な引き上げを改めて要求する。

2017年11月1日

東京歯科保険医協会

政策委員長 松島良次