Special Serial No.2 社会保険診療報酬支払基金の概要と審査に係る取組み 審査支払に関する業務の概要

今回は、審査支払に関する業務の概要について紹介させていただきます。
「審査支払業務のフロー」(図1)に示す通り、まず氏名や番号誤りなど単純な事務的ミスについてはASP (Application Service Provider)によるチェック、そして電子点数表によるチェック(コンピュータチェック)などを経て、受付を行います。

「審査支払業務のフロー」(図1)


次に、審査は、まず、調剤レセプトとの照合チェック(突合点検)、複数月のレセプトとの照合チェック(縦覧点検)、AI (Artificial Intelligence:人工知能)によるレセプト振分が行われます。その後、厚生労働省が定めた算定ルールや支払基金独自の点検条件などのチェック項目(チェックマスタ・点検条件)に基づき、「電子付せん」としてマーキング(コンピュータチェック)を行います。なお、コンピュータチェックは審査委員の歯科医学的な確認が必要な項目のマーキングであり、個別の症例毎に歯科医学的な判断がなされ、機械的に処理されることはありません。
審査委員による審査は、コンピュータ画面上で行われますが、事務職員のサポートを受けながら、チェックがついた項目について査定の必要性の是非を判断していきます。審査委員による画面審査完了後、審査委員会での合議による決定が行われ、審査結果の連絡後、歯科医療機関への支払が行われます。

AIを活用し、過去の審査結果に基づき振分

ところで、AIは「審査」そのものをしているわけではなく、過去の審査結果に基づき、歯科医師による審査を必要とするレセプトか否かの「振分」を行っています。なお、AIには、受付レセプトを過去レセプトと突き合わせてグループ分けし、グループ毎に過去レセプトにおける審査結果をもとに査定・返戻率を算出して振り分ける「minhash」(図2)、過去レセプトの情報と審査結果とを木構造を用いて査定となる条件分岐(決定木分析)を学習し、決定木における誤りを修正しながら複数の決定木を作成(再学習)し査定可能性を算出して振り分ける「xgboost」(図3)の2種類を用いています。

「minhashによる判定のしくみ」(図2)

「xgboostによる判定のしくみ」(図3)

 

次回は、審査結果の都道府県間の不合理な差異解消に向けての取組みについて紹介させていただきます。

※上記図1~3いずれも社会保険診療報酬支払基金「月刊基金(2021年9月号)」掲載図を基に作成(執筆者ご提供)

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山本光昭 / 社会保険診療報酬支払基金 理事

やまもと・みつあき 1984年3月、神戸大学医学部医学科卒業後、厚生省に入省。横浜市衛生局での公衆衛生実務を経て、広島県福祉保健部健康対策課長、厚生省健康政策局指導課課長補佐、同省国立病院部運営企画課課長補佐、茨城県保健福祉部長、厚生労働省東京検疫所長、内閣府参事官(ライフサイエンス担当)、独立行政法人国立病院機構本部医療部長、独立行政法人福祉医療機構審議役、厚生労働省近畿厚生局長などを歴任し、2015年7月、厚生労働省退職。兵庫県健康福祉部医監、同県健康福祉部長、東京都中央区保健所長を経て、2021年4月より現職。