【~先生の一歩につなぐ~ 私の歯科訪問診療】第4回(地域医療部担当理事・高山史年)

 「歯科訪問診療をはじめようと思っているが、具体的なイメージがつかめない」「歯科訪問診療をしている先生はどのように行っているのだろう?」―。
 先生方は、歯科訪問診療でお悩みではないでしょうか?地域医療部担当役員や部員、会員の先生が印象に残った訪問診療の経験や患者とのエピソードをコラムにして紹介します。他の先生がどのように訪問診療をしているのか。実際の訪問診療のイメージをつかみ日々の診療に活かしていただければ幸いです。
 今回は、地域医療部担当の高山史年理事です。社会貢献の側面から歯科訪問診療をどう捉えるべきか―

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【第4回】地域医療部担当理事/高山史年

 81歳の患者さんの歯科訪問診療の体験をお話しします。その患者さんは誤嚥性肺炎により入退院を繰り返している方で、担当のケアマネジャーから紹介される直前に、退院時に胃ろうを増設されていました。
 初めて訪問した際は口腔機能の改善が必要な状態でしたが、治療計画を立て頸部聴診や舌圧計なども使い診療し、さらに歯科衛生士による口腔衛生管理と粘膜マッサージの実施を続けると、口腔機能や口腔衛生状態も改善していきました。
 繰り返し訪問し、これを重ねることで、患者さんはプリンやゼリーなど嚥下しやすいものを摂取できるようになり、数カ月後には好物のスルメイカも噛めるようになりました。さらにその結果、誤嚥性肺炎を起こすこともなくなり、「好きな食べ物を食べることができる」と患者さんは大変喜んでいました。
 この患者さんとの治療の経験をきっかけに、歯科訪問診療の重要性をスタッフと再認識することができました。超高齢社会における医療・介護の中で、歯科訪問診療の需要が増加しています。特に、誤嚥性肺炎を予防するための歯科治療が求められているのです。
 我々が歯科訪問診療に取り組むことは、専門性を活かした社会への貢献として大きな意味を持ちます。歯科訪問診療を通じて、高齢者の生活の質の向上に寄与することは、歯科医師にとって非常に重要な使命だと思います。
 在宅医療が重視されている今、社会貢献の意味も含め、ぜひ先生方も歯科訪問診療を始めてみてください。歯科訪問診療でなければ体験できない経験が待っていると思います。

「東京歯科保険医新聞」2023年12月1日号(第645号)8面掲載