談話「診療報酬のオンライン請求義務化撤回を求める」

厚生労働省は322日、社会保障審議会(医療保険部会)において、光ディスクなどで診療報酬を請求する医療機関に対して、原則20249月末までにオンライン請求に移行することを事実上義務付けるロードマップを提案した。また紙レセプトにより請求する医療機関に対しては、2024年度以降の新規適用を認めず、既存の紙レセプト請求医療機関にはあらためて要件を満たしているかの再届出を求めるとしている。医療機関の置かれている実態を顧みず、レセプト請求に対する新たな義務を法律ではなく、2023年度中に請求省令のみを改正し、強引に推し進めようとしている。

2023年2月末現在、歯科においては、全体の約6割にあたる約4万件の歯科医療機関が光ディスク請求を選択している。義務化となれば、現在光ディスクを選択している歯科医療機関への影響は大きい。医科でも約2割にあたる約1,8000件の医療機関に影響が及ぶ。厚生労働省が行ったアンケートでも、オンライン請求について「開始する予定がない」と回答した医療機関が47%あり、移行に要する期間も「わからない」と回答した医療機関が56%もある。この状況を前提にオンライン請求への移行を強引に進めれば、地域医療を支えている医師・歯科医師を閉院・廃院へと追い込むことになりかねず、かかりつけ医師・歯科医師を失うことは国民にとって不利益を被ることになる。

政府はこの間、医療DXの実現に向けて、オンライン資格確認システムの原則義務化など医療機関に煩雑な対応と維持費などの費用を押し付けている。また医療機関がオンライン化に消極的な理由の一つに、セキュリティ面の課題がある。医療情報はプライバシー性が高く、センシティブな患者の個人情報であるため、他の情報以上に安全性が求められる。患者の機微情報を守る観点からも、国の責任で医療機関が安心してオンライン化できるセキュリティの構築を先に行うべきだ。また、政府の方針どおり、いち早くオンライン請求を始めた医療機関からは、返戻に関わる操作が分かりづらく、国が用意したサポートセンターに問い合わせをしても電話がつながらず、対応の不備が露呈した。このように、医療機関に対応ばかりを急がせ、肝心の医療行為に支障を招く恐れがある。患者・国民への不利益、セキュリティ面、医療機関へのサポート面からも、診療報酬のオンライン請求義務化撤回を求める。

2023年425

東京歯科保険医協会

政策委員長

松島良次