協会ニュース

10月から75歳以上の負担割合2割化 物価高騰の中で強行

当協会も反対してきた75歳以上で一定の所得がある患者の負担割合が、10月より1割から2割に引き上げられる。配慮措置はあるものの、複雑な制度による窓口での混乱、受診抑制、そのことが原因での重症化が懸念される。

 

被保険者証は9月に発送

 
10月からの負担割合変更に伴い、今年は通常の7月に続いて9月にもすべての75歳以上の後期高齢者に対して新しい被保険者証が発行される(表1)。10月以降に診療をする際には、窓口で水色(東京都の場合)の被保険者証の提示を求めて確認する必要がある。

 

負担増加額が3,000円以下になるよう領収


窓口負担の増加額の上限を3,000円とする配慮措置が、2025年9月まで設けられている。この配慮措置は、同一医療機関での受診の場合は払い戻しではなく現物給付となっているため、医療機関で診療毎に計算し、1カ月当たりの負担増加額が3,000円を超えないように負担金を領収することになる。
今のところレセコンメーカー側で対応する予定となっているが、仕組みとして、負担増加額が3,000円以上になった場合は2割負担から1割負担+3,000円に変更となり、患者への説明など窓口業務が煩雑になることが懸念される(表2)。
複数の医療機関を受診している場合は、合算した1カ月当たりの負担増の上限を3,000円とする配慮措置もあるが、超えた分は最短で4カ月後に患者自身が事前登録した口座へ払い戻される。口座が登録されていない患者には、9月中旬に申請書が郵送される。後期高齢者である患者には、その手続きの負担も増えることになる。

 

「10月までに治療を終えてほしい」相談増加も?


例えば、後期高齢者である患者Aさんは、「値上がり前に治療できないでしょうか」と主治医に相談をしたとする。10月から負担割合が1割から2割になる可能性があり、家族と相談し、値上がり前に治療を終えたいと考えたようである。このような相談が医療機関で頻発することが危惧される。しかし、歯科治療は症状によって一定の期間が必要になることもあり、すべての治療を9月でまに終わらせることは難しいケースも少なくない。
岸田文雄首相は、物価・賃金・生活総合対策本部を立ち上げ、物価高騰に関する追加対策策定を指示する方針を示した。ただし、追加策はエネルギーと食料品に集中して講じるとしており、医療については触れていない。
10月から負担割合が2割になる対象は約370万人であり、75歳以上の患者の2割にも相当する。引き上げを中止する、あるいは窓口負担金について対策を講じるべきである。

理事会声明 オンライン資格確認システム導入の義務化撤回を

 中医協総会で、医療等におけるオンライン資格確認システム導入が、20234月から原則義務化される方針案が了承され、厚生労働大臣に答申された。

 この義務化は、療養担当規則において紙レセプト請求以外の医療機関にオンライン資格確認システムの体制整備を義務付けるとともに、診療報酬の変更、補助金の内容を見直して体制整備を強制する内容である。

 システム導入普及率の遅れを取り戻すべく政府・行政は、「電子的保健医療情報活用加算」から「医療情報・システム基盤整備体制充実加算」に10月から再編するなど、医療機関から提供する医療サービスへの対価であるべき診療報酬の在り方を歪めた。

 現在、全医療機関における運用段階に至った割合は現状26%、医科診療所では17.5%、歯科診療所では18.1%である。20233月末までに義務化となれば、その導入準備は困難を極める。

 オンライン資格確認システムを導入した医療機関からは、システムの不安定さや情報漏洩のリスク、院内ネットワークの障害、患者への窓口対応、医療機関での導入コスト、ランニングコストの問題も指摘されるなど、問題点は残されたままだ。

 ほかにも訪問診療や生活保護の患者さんへの対応もできておらず、システム改善が行われない状況では、導入を義務化すべきではないという意見が上がっている。

 政府・行政は場当たり的な施策によって医療機関、また国民に負担を強いるのではなく、コロナ禍で疲弊した医療機関等の立て直しに向けて施策すべきだ。医療機関と国民に疑念を抱かせたことに猛省を促したい。オンライン資格確認システム導入の義務化の撤回を求める。

2022年98

東京歯科保険医協会

10回理事会

長期維持管理政策の歴史 vol.3

「か初診」の登場とその後

前回は、2000年診療報酬改定で登場した「か初診」(かかりつけ歯科医初診料)の算定要件等と、その後、橋本龍太郎元首相への献金問題を経て2006年度改定で「か初診」廃止
に至るまでの経緯を紹介した。
ところで、「か初診」導入時の2000年から2002年に向けては、膨張する医療費をどうするのかが政権のテーマとなり、混合診療が取り上げられた時期でもあった。歯科では、従来から補綴の金属床総義歯と歯冠修復物に関しては特別な料金(自費)と認められていた。歯周病に関してP特養が医療保険の特定療養費(保険)に適合するかどうかが厚労省医療保健福祉協議会作業委員会で検討され、「継続的な治療管理は保険診療特定療養費の活用」との報告がなされ、中医協の診療報酬基本問題委員会でも「再発抑制に必要なセルフケアを継続して行く上での指導管理の評価」が議論の中心となり、この流れの中で「か初診」廃止後はこの保険者主導の長期管理路線が以降改定ごとに少しずつ取り入れられて来ていると言える。

月に1回 基本治療あり 基本治療なし
1~9歯 310点 210点
10~19歯 450点 270点
20歯以上 620点 360点


2002年4月、日本歯周病学会は「治癒と病状安定」の考えの流れを示すフローチャートを発表し、2002年4月の診療報酬改定では、メインテナンスに係わる総合評価として「歯周疾患継続治療診断料100点」が新設され、1~3カ月間隔で再診時に歯周組織検査・歯周基本治療・指導管理を行った場合に歯周疾患継続総合診療料として表1を算定する取り扱いとなった。
2005年は、小泉純一郎首相による衆議院の電撃解散によって小泉劇場の幕が切って落とされた。基本政策は当時の英国のサッチャー政権と同じ小さな政府であり、構造改革路線の延長として「財政再建」を打ち出した。その中の一つが「医療制度改革」であり、これを受けて厚労省は2005年10月19日、「医療制度構造改革試案」を発表、2025年に向けての医療費の伸びの削減方向を示した。その中で短期的な方向として、①公的保険給付の内容・範囲の見直し、②診
療報酬改定―の2点を挙げた。政府は2005年12月1日、「医療制度改革大綱」を決定。すでに廃止の憶測が流れていた「か初診」は、2006年4月の診療報酬改定で廃止された。しかし、長期維持管理路線=「か初診路線」が強化される方向は変わらなかった。
マスコミは、「医療は高コスト」と表現するが、当事者の我々からすれば、日本の医療は低報酬・低コストであり、先進諸国と比較してもGDP比最低である。良質な医療を低コストで提供しているのが日本であると、WHOも認めていた。
2008年4月改定の中で政府は、「質の高い医療を効率的に提供すための視点」と180度転換、「歯科医療の充実について」との記述が加えられた。その主たるものは2007年11月の日本歯科医学会の「歯周病の診断と治療に関する指針」の発表に基づくもので、分かり易いフローチャートも発表された。その内容は表2のように、管理料の大行列となった。

 

中川勝洋
東京歯科保険医協会 第3代会長、協会顧問

なかがわ・かつひろ:1967年東京歯科大学歯学部卒業、1967年桜田歯科診療所開設、1981年東京歯科保険医協会理事、昭和大学医学部医学博士授与。1993年協会副会長、2003年協会会長、2011年協会会長を辞し理事に。2022年理事を勇退し協会顧問に就任。

オンライン資格確認のシステム導入義務化の撤回等を求める 医師・歯科医師要請署名とアンケートへのご協力のお願い

政府の「骨太の方針2022」では、これまで医療機関において任意とされてきた「オンライン資格確認」のシステム導入について、「2023年4月より医療機関・薬局に原則義務付ける」としました。また、「2024年度中を目途に保険者による保険証発行の選択制の導入を目指す」とともに、「システム導入状況等を踏まえ、保険証の原則廃止を目指す」ともしています。誰もが使わざるを得ない保険証を廃止して、マイナンバーカードの取得を事実上義務化するものです。
 続く8月の中医協には、紙レセプト請求以外の医療機関等に義務付ける具体案が示され了承されました。医科診療所の97%、歯科診療所の91%が義務化対象となります。このままでは対応できない医療機関を閉院・廃業に追い込み、医療アクセスが阻害される危険性があります。
 マイナンバーカードは、申請・更新の煩わしさ、カード紛失による個人情報漏洩の危惧など様々な問題があります。マイナンバーカードを取得した人は、大切に保管している人がほとんどで、国民の多くは、マイナンバーカードを保険証として利用することを望んでいません。オンライン資格確認導入の原則義務化は明らかに行きすぎです。あくまでマイナンバーカードの取得は任意です。保険証廃止後も、加入者が申請すれば保険証を交付するとしていますが、わざわざ発行申請を行う負担を国民に課すことは納得できません。これまで同様、保険証は交付したうえで、マイナンバーカードの利用は任意とする方がはるかに簡便で合理的です。
 当会では歯科医師署名とアンケートを取り組みます。
 ぜひ下記リンク(Googleフォーム)より歯科医師署名とアンケートにご協力ください。

 

下記よりダウンロード、印刷いただき、FAX(03-3209-9918)で送信いただいても結構です。

会員署名 ダウンロー 会員アンケート ダウンロード

経営管理部長談話 「オンライン資格確認システムの導入は自由意思に任せるべき ―義務化は撤回を―」

 厚労省は2023年4月より「保険医療機関及び保険医療養担当規則」に、保険医療機関等での「電子資格確認」の実施を盛り込むことで、義務化を行うとした。しかし国民や保険医療機関は義務化に必要性を感じているであろうか。今回のオンライン資格確認システムの導入義務化は医療を利用してマイナンバーカード(以下マイナカード)普及を行う政策であることは明らかで、歯科医療に携わるものとして疑問を感じる。

 オンライン資格確認システムは、マイナカードに健康保険証機能を紐づけした「マイナ保険証」を読み取る機械=顔認証付きカードリーダー(以下カードリーダー)を保険医療機関等に設置し、本人確認を行う仕組みで、国は「医療DX」の基盤と位置付けている。

 マイナカードの普及はポイントを付与するなどして、普及促進を図っているが、「必要性が感じられない」「身分証明書は他にもある」「個人情報の漏えいが心配」「紛失や盗難が心配」(マイナンバー制度に関する世論調査 内閣府)などの理由で普及が進んでいない。そのため、だれもが利用する健康保険証の機能を追加し、医療機関にカードリーダーの設置を義務付けることで、導入促進を図ろうとしているのだろう。

 マイナ保険証の利用に関しても問題が多い。マイナ保険証は受診の度に提出が必要である。他にもマイナカードそのものに有効期限があり期限が切れれば使用ができない、更新の際には役所に行く必要があるなども指摘されている。

 カードリーダーの申し込み状況は、東京の歯科保険医療機関では47.7%(7/31現在)に留まっている。紙レセプトでの請求が認められている保険医療機関等は義務化の例外となったが、東京で67.6%の歯科医療機関が利用しているCD等による請求は義務化の対象となったままである。

 会員からは「保険証が有効であるか確認できる安心感がある」との声も聞くが、「カードリーダーやパソコンを置く場所が無い」「1日の来院患者が少ない当院では利用目的がよくわからない」「保険証だけで十分なのに、なぜわざわざマイナンバーを取り扱う必要があるのか、セキュリティ面の不安が増えるだけだ」など、必要性を疑問視する声が圧倒的だ。

 特に問題なのは、何も知らない高齢者などが端末にマイナカードを置いてしまい、知らないうちに保険証と紐付けられて2度と紐付けを解けないことだ。さらには、その作業に医療機関が協力してしまうことも大きな問題だ。また、通信障害や機械のエラーで利用ができなかった場合、このシステムを義務化した国は患者や医療機関に対して保障をするのだろうか。医療機関としてはマイナ保険証のみを持参した患者に対して、システムが使えない場合は10割負担で患者に受診してもらわざるを得なくなる。中医協の資料では導入することのメリットしか記されていないが、根本的にシステムが使えなくなるトラブルが起こった場合の対応など、まったく起こりえないような議論しかされていない。導入を義務化するのであれば、トラブルが起こった場合の対応について十分な議論が必要なのではないだろうか。

 厚労省ではオンライン資格確認システムの普及促進のため、カードリーダーを申し込んでいない医療機関等に電話をかけ、簡易書留での案内を始めた。案内を受け取った医療機関では不安になり、協会に問い合わせが多く寄せられている。

 私自身カードリーダーを導入し、実際にどのような問題があるか検証した。まず、設置の為の手続きやネット環境の整備が非常に複雑で大変であった。設置工事には半日を要しその間はカルテを見る事ができず保険診療ができなくなった。また狭い受付スペースへの設置のため場所が取られ不自由している。設置4ヶ月が経過した現在、マイナカードを使用した患者はたったの2名であった。乳幼児医療費助成制度(マル乳)等を利用の場合は、受給者証を原本で確認が必要なため、窓口業務は変わらない事にも気づいた。顔認証に使用するパソコンはWindowsに限定されており、更新の度に端末が使用不能になり、業者に連絡を取らざるを得ず、数時間利用できない等の問題が発生した。幸い現在は利用者が少なく大きなトラブルにはなっていないが、患者側の立場からすれば、使おうと思ったときに使えないことがあれば、義務化を指示した国ではなく医療機関に不信感を抱くだろう。このような問題点がある中での導入は院長の自由な判断に委ねられるべきであり、導入を決める際には実際にトラブルが起きた場合の対応をよく考える必要があるだろう。

 政府・厚労省には、現場の声に耳を傾け、現場が不安を抱かないよう丁寧に説明をするよう求める。「義務化になったら仕事を引退する」「保険医を辞める」と話している先生もいる。オンライン義務化のために辞めるのでは、地域医療へ与える影響も懸念される。現場にとってはそれほど重要な問題である。導入は自由意思に任せるべきで、強制的な「義務化」は撤回するよう強く求める。

2022年8月23日

経営管理部部長 相馬 基逸

東京歯科保険医新聞2022年(令和4年)8月1日

こちらをクリック▶東京歯科保険医新聞2022年(令和4年)8月1日 第629号

1面】

   1.社会医療診療行為別統計/20年間で構成割合 大きく変化
   2.「開業歯科会員アンケート」へのご協力のお願い
   3.ワクチン4回目接種拡大/医療・介護従事者
   4.ニュースビュー
   5.「探針」

2面】

   6.医療機関 個別指導日程が明らかに
   7.生活保護指定医療機関 個別指導7件実施へ
   8.新規開業医講習会 持参物・指摘事項・算定要件…40人が受講
   9.知識と技術を高める/研究会・行事のご案内QRコード
   10.夏季休診のご案内ポスター
   11.電子書籍「デンタルブック」ご案内

3面】

   12.歯系議員2氏は再選果たす/自民63、立憲17、維新12
   13.夏のあとがき~参院選後の今こそ、思いを巡らす~/会員投稿・菊地三四郎氏
   14.接遇講習会 2年ぶりの対面開催/患者に選ばれるため診療所全体の底上げを

【4面】

   15.経営・税務相談Q&A No.395 年次有給休暇 夏季休暇にあてられる?
   16.研究会・行事のご案内①
   17.Facebookお知らせ
   18.法律相談、経営&税務相談

【5面】

   19.研究会・行事のご案内②

【6面】

   20.能楽師・野村太一郎氏インタビュー「亡き父から最期の言葉 伝統継承を目指す若き才能」

【7面】

   21.暑中お見舞い名刺広告

【8面】

   22.協会史を振り返り現在・未来を見つめる Vol.2/「か初診」の登場とその後・中川勝洋氏
   23.教えて!会長!!Vol.61

【9面】

   24.症例研究/混合歯列期の患者に対するP重防

【10面】

   25.連載/私の目に映る歯科医療界⑰(東洋経済新報社・大西富士男氏)マイナ保険証使うシステム強制は大問題 国の義務化議論に欠くユーザー国民視点
   26.理事会だより
   27.協会活動日誌/2022年7月
   28.診療報酬改定 関連書籍「歯科疾患管理計画書」ご案内

11面】

   29.会員投稿「声」本日休診~小説「ツユクサ」を読み~石渡利幸先生
   30.IT相談室/Googleの口コミを気にしなくていい理由/氏(クレセル株式会社)
   31.保団連夏季セミナー
   32.新理事就任のお知らせ/池川裕子氏(葛飾区)
   33.会員優待サービスのお知らせ
   34.共済部だより

12面】

   35.第2回メディア懇談会/歯科医療総枠拡大に向け「国民の信頼を獲得するしかない」
   36.神田川界隈/医療費の総枠拡大はなぜできない?(加藤開副会長/豊島区)
   37.通信員便り No.124
   38.ひまわりのそばに(上)「戦後77年を迎え―」/黒田政俊氏
   39.新聞に投稿してみませんか?/投稿案内

13・14面】

   40.開業歯科会員アンケート

長期維持管理政策の歴史 vol.2

「か初診」の登場とその後

2000年(平成12年)の診療報酬改定で、歯科初診料186点とは別に「かかりつけ歯科医初診料」、いわゆる「か初診」が270点で導入され医科初診料と同じになったが、再診料は40点で医科とは異なった。初・再診料の医科歯科格差解消は歯科の長年の要望であったが、か初診以外は従来のままで据え置かれた。その算定要件は、以下の3項目であった。
そして、この要件の中で「同意と文書提供」という縛りを付け、再び「か初診」を算定できるのは、治療終了後3カ月目からとし、また、説明手段のスタディモデル(50点)と口腔内写真(50点)は包括化され算定できない。「か初診」は医科と同じになったが、指導管理を主とする医科との格差はむしろ拡大したと言え、1口腔1初診の歯科の概念が強化された。医科でも00年度診療報酬改定に際して「かかりつけ医機能」について検討され、指導料に対する継続管理加算が導入された。
1日平均16名~20名の患者数の歯科では加算点数はなく、270点だけの算定であり、医科と比べて厳しい「かかりつけ機能」の要件となっており、歯科の中での「かかりつけ機能」の定義付けがされていない中、最初に270点ありきであった。

02年(平成14年)の改定は、初のマイナス改定となった。初診料は186点から180点へ引き下げられたが、「か初診」は270点のまま据え置かれた。また、歯周病に「治癒と病状安定」の概念が取り入れられ、2回目の歯周病検査で病状安定と判断されたら継続治療診断(基本検査・精密検査)を行い100点を算定、①継続治療計画を作成し、②1~3カ月間隔で検査・基本治療・指導という「継続管理」を行う。算定点数は左記表の通りだ。
05年は憂鬱な年となった。橋本龍太郎元首相への1億円献金がワイロとの疑いで日本歯科医師会・日本歯科医師連盟元会長の臼田貞夫氏をはじめ5名の逮捕者を出し、「か初診」と「1億円献金」が連日のように新聞・テレビに取り上げられることとなり、結果、中医協に歯科側委員は出席せず、保険者側の「保険者機能を推進する会」の活動が活発化した。06年(平成18年)の改定で「か初診」は廃止となり、保険者主導のかかりつけ歯科医路線へと姿をかえた。
02年以降、協会は「かかりつけ歯科医」は歯科医師が決めることではなく患者さんが選択することだとして、「か初診」の廃止運動を行ってきた。協会アンケートでは会員の92%は算定していなかった。しかし、患者さんへの情報提供は必要であるので「お口の治療計画書」を協会独自に作成し、従前から会員に提供してきたが、9月の保団連理事会では、いくつかの協会から廃止運動と矛盾しているとの発言がなされた。保団連歯科理事会議ではそのような発言はなされいなかったので、9月に保団連に意見書を提出し、訂正を求めた。

中川勝洋
東京歯科保険医協会 第3代会長、協会顧問

なかがわ・かつひろ:1967年東京歯科大学歯学部卒業、1967年桜田歯科診療所開設、1981年東京歯科保険医協会理事、昭和大学医学部医学博士授与。1993年協会副会長、2003年協会会長、2011年協会会長を辞し理事に。2022年理事を勇退し協会顧問に就任。

【教えて!会長!! Vol.61】CAD/CAMインレー

—4月の診療報酬改定でCAD/CAMインレーが保険収載されました。

坪田有史会長:新しい技術が保険収載された場合、今まで多くの技術で医療技術評価提案書を提出した学会や関連学会から診療指針(ガイドライン)が示されてきました。現時点でCAD/CAMインレーに関しては学会からの診療指針が示されていません。4月の改定以降、本会にCAD/CAMインレーに関して会員から多数の質問や問い合わせがあります。そこで今回、臨床的な視点でCAD/CAMインレーについて解説します。

—診療報酬上の算定について教えてください。

坪田:CAD/CAMインレーを保険で行うにはCAD/CAM冠と同じく、施設基準の届出が必要ですが、既に4月の改定前からCAD/CAM冠の届出を行っている医療機関は再度の届出は不要です。院内掲示物の名称を、「CAD/CAM冠」から「CAD/CAM冠及びCAD/CAMインレー」に変更してください。
「表1」に22年7月現在のCAD/CAMインレーとメタルインレーの比較を示します。なお、12%金銀パラジウム合金(以下、「金パラ」)の材料料の点数は、10月1日に予定されている随時改定により変更される可能性があります。
CAD/CAMインレーの適用は、小臼歯と第一大臼歯の複雑窩洞に限られます。なお、上下左右すべての第二大臼歯が残存し左右の咬合支持があり、過度な咬合圧が加わらない場合に第一大臼歯に適用できます。歯科用金属アレルギー患者はすべての臼歯部に適用できますが、大臼歯については医科と連携の上、診療情報提供に基づく場合に限られます。

—窩洞形成の注意点を教えてください。

坪田:図にCAD/CAMインレーの窩洞形成について示します。表内の形成量には注意が必要です。「表2」に窩洞形成の注意点を示します。
間接法で作業模型からの製作のみが認められているため、精確な印象採得を行い、製作されてきたCAD/CAMインレーの装着は、必ず接着性レジンセメントを使用し、装着前処理として接着面にアルミナ・サンドブラスト処理およびシラン処理(内面処理加算1:45点)を行うことが推奨されます。

会長 坪田有史

(東京歯科保険医新聞2022年8月号8面掲載)

 

東京歯科保険医新聞2022年(令和4年)7月1日

こちらをクリック▶東京歯科保険医新聞2022年(令和4年)7月1日 第628号

1面】

   1.第50回定期総会を開催/22年度活動計画ほか7議案を承認
   2.個別指導を計画/東京都
   3.東京23区、高校生等の医療費無償化へ/所得制限設けず 自己負担なし
   4.ニュースビュー
   5.「探針」

2面】

   6.記念講演 チタン・CAD/CAM冠の適用拡大を求める 金パラ代替テーマに
   7.決議/第50回定期総会
   8.東京歯科保険医協会 第50回定期総会 祝電・メッセージ等一覧

3面】

   9.会員寄稿“声”「参院選前に歯科医師の地位向上を考える」(菊地三四郎氏/渋谷区)
   10.声明 オンライン資格確認システムの導入“義務化”に反対する
   11.共済部だより

【4面】

   12.経営・税務相談Q&A No.394 水漏れ事故の対応は?備えは必要?
   13.IT相談室/登録した覚えがない医療情報サイトから請求が…どうする?/氏(クレセル株式会社)
   14.診療報酬改定 関連書籍/歯科疾患管理計画書のご案内
   15.法律相談、経営&税務相談

【5面】

   16.研究会・行事のご案内

【6面】

   17.Special Serial No.5 「新型コロナウイルス感染症は転換期を迎えている」山本光昭氏(社会保険診療報酬支払基金理事)
   18.教えて!会長!!Vol.60
   19.中川理事が今期で勇退

【7面】

   20.協会史を振り返り現在・未来を見つめる Vol.1/長期維持管理政策の歴史・中川勝洋氏
   21.(一社)日本接着歯学会 理事長に坪田氏

【8面】

   22.information≪研究会・行事≫
   23.歯科医院からも多数申請 事業復活支援金の特徴点/税理士・櫻木敦子氏
   24.電子書籍「デンタルブック」
   25.夏季休診案内ポスター&卓上型タイプ

【9面】

   26.症例研究/レジン前装チタン冠、総合医療管理加算

【10面】

   27.連載/私の目に映る歯科医療界⑯(東洋経済新報社・大西富士男氏)骨太方針に突如「国民皆歯科健診」入る
   28.理事会だより
   29.協会活動日誌2022年6月

11面】

   30.<国会要請>75歳以上窓口2割化中止を求める
   31.神田川界隈/四方山話(橋本健一理事/東村山市)
   32.第26回参議院選挙 投開票は7月10日に
   33.会員優待サービスご案内
   34.好評博す施設基準の講習会開催/歯初診・外来環・歯援診・か強診に対応
   35.院内感染防止対策講習会/「徹底した洗浄」が鍵 重要な3要素を解説

12面】

   36.通信員便り No.123
   37.「骨太方針2022」に国民皆歯科健診を明記
   38.金銀パラジウム合金等 引き上げに/銀合金、メタルコアおよび14Kも改定

税務調査の事前通知聞き取り項目について

例年夏ごろから税務調査の連絡があったという相談が寄せられ始めます。

税務調査では税務署より事前に連絡があります。その際に法律で定められている以下の11項目を必ず聞き取ってください。

1,実地の調査を行うことの旨

2,調査官の所属官署と氏名

3,調査を受けるものの氏名・名称と住所

4,調査開始日時

5,調査開始場所

6,調査開始日時と調査開始場所は合理的理由があれば協議できるという説明

7,調査の目的

8,調査の対象となる税目

9,調査の対象期間

10,調査の対象となる帳簿書類や物件

11,通知事項以外に非違が行われることとなった事項は改めて通知しなくても調査できるという説明

 

なお、調査開始日時や調査開始場所については都合が悪ければ変更できます。

また、無予告で来院した場合は、身分証明書や質問検査証の提示を求め、氏名・所属を確認しましょう。捜査令状のない調査は、強制調査ではなく、全て任意調査です。都合がつかない場合などはきっぱりと断り、改めて日程調整をするようにしましょう。

 

2022年度施設基準等の7月定例報告について

  2022年度施設基準等の7月定例報告について

 施設基準の届出を行った保険医療機関は、毎年7月1日現在で届出書の記載事項について地方厚生(支)局長(東京の場合、関東信越厚生局 東京事務所)へ報告を行うこととされています。

 各医療機関には、7月上旬に「施設基準の届出状況等の報告について」というハガキが送られてきます。

 厚生局Webサイトの該当ページはこちら。

 提出期限は7月29日(金)です。

 以下、歯科における報告の手順について掻い摘んでご紹介します。

 ※東京都内の医療機関向けに作成しています。 都外の場合、書類の提出先や該当リンクなどが異なります。

デンタルブックに届け出用紙の例をUPしています。

デンタルブックマイページへ

  1.届け出ている施設基準を確認する

東京の届出受理医療機関名簿(PDFファイル)に、医療機関ごとの届出状況が掲載されています(「受理番号」の列)。

 ※PDFがリンク切れの場合、こちら(施設基準受理状況一覧)から探してください。
 略称で掲載されているため、略称一覧(PDFファイル)を適宜参照してください。


 地区順に並んでいますが、掲載量が膨大なので、文字列検索でご自身の医療機関名を検索するのが早いです。

Windowsなら「Ctrl+F」(Ctrlキーを押しながらFキー)

Macbookなら「Command+F」(Commandキーを押しながらFキー)

で検索窓が開きます。

Macbookの場合の注意:Safariで「医療機関ごとの届出状況」のPDFを表示した場合、うまく「Command+F」で検索ができない場合があります。そのため「プレビュー」などアプリで「Command+F」をお試しください。Firefoxでは検索ができることが確認できました。

  2-1.施設基準を満たしているか自己点検する

 施設基準の要件は、協会会員にお送りしている「歯科保険診療の研究」や、厚生局Webサイト基本診療料の届出一覧特掲診療料の届出一覧などで確認してください。

  2-2.施設基準を満たしていないものがある場合

 基準を満たしていないものについて、
施設基準の届出の確認について(報告)(PDF)

辞退届(PDF)
の提出(郵送)が必要となります。

 提出先は、関東信越厚生局 東京事務所です。
関東信越厚生局 東京事務所
〒163-1111
東京都新宿区西新宿6-22-1 新宿スクエアタワー11階
TEL 03-6692-5119


  3.定例報告が必要なものは、所定の様式で報告する


 報告が必要なものおよび様式はこちら(歯科診療所に係る定例報告等について)でご確認ください。報告については、所定の様式に必要事項を記載したものを、上記 関東信越厚生局東京事務所宛に1部のみ郵送します。

 

  4.これで定例報告は終了

 なお、届け出ている点数の施設基準を全て満たしており、かつ「3.の定例報告が必要なもの」を届け出ていない医療機関は、特に提出するものはありません。

 東京歯科保険医協会では、会員向けに施設基準に関するご質問も受け付けております。会員の方はお気軽にお問い合わせください。

デンタルブックに届け出用紙の例をUPしています。

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長期維持管理政策の歴史 vol.1

はじめに

2003年6月の第31回定期総会において、大多和彦二会長の辞任に伴い、私が会長に指名された時から26年が経ちました。その私が2011年に会長を退いて以降も協会理事、保団連理事と会務を務めてまいりましたが、2022年6月19日の第50回定期総会をもって会務から退くことといたしました。協会の活動に参加してから42年にわたり、これまで会員の皆様よりのご協力をいただきありがとうございました。今後は協会顧問として、協会の諸活動を見守らせていただきます。(中川勝洋)

 

―今後の論議を注視国民皆歯科健診

6月7日に「骨太の方針2022」が発表され、「歯科専門職による口腔健康管理の充実」「医療機関連携の推進」「オーラルフレイル対策」等が示され、その中に「国民皆歯科健診の具体的な検討」が盛り込まれたことが明らかになりました。これを行うことで、医療費全体の削減に寄与できるとしています。率直なところ、「遂に、長期維持管理政策がここまで来たか」、との思いがします。
まだ詳細は分かりませんが、歯科健診が義務化されると、ドイツのように歯科健診を受けない国民へのペナルティーが導入されるかもしれません。今後の論議を見守りたいと思います。


―改定変遷の振り返り 「か初診」から「か強診」へ

1990年から2020年まで、「歯界展望」(医歯薬出版株式会社刊)誌上に診療報酬改定ごとに書かせていただいた「診療報酬改定の特徴と評価」を読み返して厚生労働省の歯科医療、歯科保健政策の変遷を振り返ってみました。
1996年(平成8年)3月末、それまでのPⅠ型・PⅡ型などの歯周病治療から現在の歯周病治療の体系である「歯周病の診断と治療のガイドライン」に再編されました。基本検査と精密検査に基づく治療の流れが示され、初診月には算定できなかった指導料も65点で導入されました。同時に歯冠修復物に対する補綴物維持管理料、いわゆる「補管」が2年間の縛り付きで導入されています。
日本歯科医師会は改定財源を確保するためだとし、「責任と保証」という言葉遣いでの説明は回避。しかし、2年以内の破損等での再製作に係わる費用が算定できないことは、診療側が責任を取り、維持管理料という名前の保証料で再製作を引き受けるということです。歯冠修復物の再製作での請求が多いことへの対応ではありますが、クラウン150点、ブリッジ 5歯以上500点、6歯以上670点のためか、保団連の一部は反発したものの大きな運動にはならず、結果は歯冠修復物の請求が減少し、保証料を下回りました。


―英独海外視察の原点

この制度もドイツで充填、補綴物の保証というペナルティーとともに導入されており、後日、協会による2006年のイギリス・ドイツへの歯科医療視察団派遣の原点となりました。

 

 

中川勝洋
東京歯科保険医協会 第3代会長、協会顧問

なかがわ・かつひろ:1967年東京歯科大学歯学部卒業、1967年桜田歯科診療所開設、1981年東京歯科保険医協会理事、昭和大学医学部医学博士授与。1993年協会副会長、2003年協会会長、2011年協会会長を辞し理事に。2022年理事を勇退し協会顧問に就任。

オンライン資格確認システムの導入〝義務化〟に反対する

   
 マイナンバーカードを利用したオンライン資格確認システムの運用を開始した医科・歯科医療機関及び保険薬局数は2022年5月22日時点で4万4284機関、参加率は19・3%となっている。そのうち、全国の歯科医療機関数は9263機関、同13・1%、東京の歯科医療機関数は903機関、同8・4%にとどまっている。協会には実際に導入している歯科医療機関からオンライン資格確認システムの利用者は月1~2人の利用者しかいないという声も寄せられている。
 導入した医療機関には毎月のランニングコストの負担や受付の患者対応などの負担がかかる。そのため、診療報酬改定で、電子的保健医療情報活用加算が新設された。
 しかし、政府は患者負担が増えることが報道されると、同加算の廃止を早々と打ち出した。加算が廃止されればオンライン資格確認システムのランニングコストなどは完全に医療機関側が負担することとなる。また、診療報酬の諮問機関である中医協を飛び越えて、政府が方針を打ち出すのはいかがなものだろうか。
 また、患者負担があるため、オンライン資格確認システムの利用者が少ないという声もあるが、そもそもマイナンバーカードの全国普及率は5月1日時点で44・0%であり、東京では47・8%である。健康保険証利用登録が済んでいるのは全人口でわずか7%未満に過ぎない。いったい、マイナンバーカードを健康保険証として持ち歩く国民がどの程度いるだろうか。
 現行システムでは、資格確認以外の薬剤情報や特定健診記録などの医療情報へアクセスするためにはマイナポータルでの登録が必要である。マイナポータルの利用規約にはすべてのトラブルについて「自己責任」での解決をすることが定められており、全ての責任を利用者に押し付ける内容となっている。医療機関にあるオンライン資格確認システムのカードリーダーはその場で健康保険証とマイナンバーカードの紐づけができるため、医療機関で紐づけを行えば、医療機関側がマイナポータルの利用規約への同意を促してしまうことになる。また、一旦紐づけが完了してしまえば取り消すことはできないため、取り消しを希望する患者さんとの間で新たなトラブルともなりかねない。
 さらに、昨今の半導体不足の影響で、オンライン資格確認システムに使用する機器なども不足しており、導入まで半年以上待たされているという医療機関も存在する。半導体の世界的需要の高まりやウクライナ情勢の影響で、物資供給が不安定な中で優先的に導入を進めていくべきものなのかは甚だ疑問である。
 オンライン資格確認システムの最大のメリットは健康保険の資格確認がその場でできることとされてきたが、2021年10月より支払い側で資格喪失後のレセプトの振替などの作業を行っており、返戻は減りつつあるため歯科での導入のメリットは少ない。導入を義務化すれば、必要のない新たな負担を強いられるなどのデメリットが大きくなる。
 コロナ禍で経済的に打撃を受けている医療機関に対し、マイナンバーカードの普及率の低さを解消するため、オンライン資格確認システムの導入を〝義務化〟し、負担を強いることが今求められていることなのか。マイナンバーカードの普及については、政府が正しく運用するのであれば、新型コロナウイルスに係る給付金などに活用をすることができることなどから、推進をしていく必要性もあると思われるが、現状ではさまざまな点で不安が払しょくできない。そもそも医療をマイナンバーカード普及の出しに使うことについて、国民に理解を得られているとは到底考えられない。
 以上よりオンライン資格確認システムの導入〝義務化〟に反対する。

2022年6月9日
東京歯科保険医協会
第5回理事会

第50回定期総会を開催/22年度活動計画ほか7議案を承認

当会第5代会長 坪田有史

定期総会

 協会は6月19日、中野サンプラザで第50回定期総会を開催した。会場には一般会員と役員合わせて50名が出席。委任状は994名で、両者を合わせると1044名の出席となり、総会成立要件である会員数の10%を超え、総会は成立した。昨年と一昨年は総会のみの開催であったが、新型コロナウイルス感染拡大が緩和したこともあり、今回は記念講演を3年ぶりに実施し、協会の坪田有史会長が講師を務めた。

 前年度の目標を振り返る

 総会は、山本鐵雄副会長の開会の言葉で幕を開け、冒頭、坪田会長が挨拶に立ち、まずコロナ禍にも関わらず総会に参加いただいた会員に対し謝意を表明。さらに、2021年度の総会で掲げた3つの目標を振り返り、1つ目の会員数増加については「6月19日時点で5949名が会員となり、6000名という大台が見えてきた。引き続き会員拡大に注力したい」と強調。2つ目の協会のデジタル化、特にペーパーレス化推進については「まだ紙媒体もあるが、徐々に進んでいる」と説明。3つ目の事務局のスキルアップに関しては「各個人が自己研鑽しており、一定のスキルアップができた」と報告した。
 その後、早坂美都理事が関係団体や議員からの祝電を披露したほか、多数のメッセージが寄せられていることを紹介。議事に入る前には、議長に橋村威慶氏(文京区)、副議長に池川裕子氏(葛飾区)が選出され、議事が進められた。

 第1~7号議案が賛成多数で承認

 続いて、議案7本の審議に入ったが、加藤開副会長が第1号議案「2021年度活動報告の承認を求める件」、半田紀穂子理事が第2号議案「2021年度決算報告の承認を求める件」、西田紘一監事が「会計監査報告」を提案し、いずれも賛成多数で承認された。
 次に、坪田会長が第3号議案「役員の件(顧問の承認)」、川戸二三江副会長が第4号議案「2022年度活動計画案の件」、半田理事が第5号議案「2022年度予算案の件」、坪田会長が第6号議案「選挙管理委員承認の件」、最後に川本弘理事より第7号議案として「決議採択の件」がそれぞれ提案され、いずれも賛成多数で承認された。

 質疑応答 丁寧に回答

 議案の質疑応答では、会場から「オンライン資格確認は医療DX化の基本とされ、電子カルテの標準化なども進めるとされているが、現状では電子カルテをまともに活用できるシステムはなく、対応するのはかなり厳しい。協会はどのように考えているか」「診療報酬改定では、歯科医療の改善が依然として実現されていないように思う。歯保連で実施したタイムスタディ調査の結果をもとに、さらに行政に改善を求めるなど、もっと歯科医師の技術料が評価されるような仕組みにしてほしい」「オンライン資格確認の義務化は行政の暴走であるように感じる。行政に改善を求めてほしい」などの質問や要望があり、担当役員が丁寧に回答した。
 最後に松島良次副会長が挨拶を行い、閉会した。

第50回定期総会における質疑

(質問:会員S先生)

コロナ禍の中で世の中は物価の上昇、また診療報酬の改定はゼロ改定であり歯科医院の経営環境は一層厳しくなっている。そんな中、協会の役員を務めている手当のベースアップは更なる協会活動のためにも必要だと思うが、ベースアップする予定はあるのか。

(回答:坪田有史会長)

歯科医師のおける環境のことはおっしゃるとおりであり、そのような提言をしていただき感謝申し上げます。しかしながら、他団体などと比較しても決して手当は安いわけではなく、私自身の感覚では妥当な金額と考えています。あくまでも金額については個人的な感覚など、異なる点もあり、歯科業界がさらに苦しくなっていくこともあるかと思うので、今後そのようなご意見を踏まえ、検討していく必要があると思います。ご意見ありがとうございました。

 

(質問:会員M先生)

歯科業界は引き続き厳しいと思うが、協会の会費の値上げがされる可能性はあるのか。

(回答:坪田有史会長)

他の保険医協会の会費と比較して東京歯科は最も低い水準にあるものの、総会の中で報告した通り健全な財政を維持しています。そういった中で会費を値上げする理由はないので現時点では値上げする必要はないと考えています。

 

(質問:会員S先生)

歯科医療の改善について。今回の改定の中で、新技術や新病名、新しい検査なども盛り込まれました。しかし、開業してから30年になりますが、改善されているという実感がわきません。それは技術の部分が評価されず、低い点数のままで改善されていないことが原因であると思う。その評価方法についてはタイムスタディなどが挙げられ、歯保連でタイムスタディについての考え方が示されたが考慮されているとは思えない。その結果、人数を多くさばくことによって点数を多く稼ぐしかなくなる。協会ではタイムスタディの活用など考えているのか。考えていなければぜひ検討していただきたい。

(回答:坪田有史会長)

改定はやはり財源という大きな問題があり、増点するのは厳しいのだと思う。タイムスタディの報告を厚労省はあまり参考にしていないように感じます。そうなるとそれをもとに点数の増点を要請するのは厳しい。しかし、先生方の臨床が満足いくように協会として改善を求めていく必要はあると考えている。

 (質問:会員S先生)

わかりました。歯科はブラック企業のようなものだと行政に強く訴えてほしい。

 

(質問:会員M先生)

オンライン資格確認の問題で、マイナンバーカードの義務化など報じられており、行政の暴走を感じる。協会としてはどのように捉えているか。

(回答:坪田有史会長)

協会として義務化には強く反対をしている。義務化というと一律でそれを強制させることになるので、それを容認するのは厳しいと思う。義務化には反対だが、将来的に必要とされ、取り入れていく必要はあるように感じている。そのバランスを踏まえて協会として活動していく必要があると思う。

 

(質問:会員N先生)

協会には休業保障で非常にお世話になり感謝している。先ほどのM先生の質問にオンライン資格確認があった。その歯科のDX化の中で電子カルテ化というものも挙げられているが、歯科で電子カルテとして機能しているものがあるかは疑問である。もし本当に電子カルテ化というものを目指すのであれば、保険診療の仕組み自体を大幅に見直す必要もあるのではないか。協会としての考えを伺いたい。

(回答:坪田有史会長)

オンライン資格確認はマイナンバーカードから患者の情報を得るということになるが、その際はオンライン請求が要件になっています。しかし、それはオンライン請求のみでカルテの内容を見るということではありません。それもゆくゆくは対応の必要があるかもしれませんし、将来的には国はそれを一定進めたいのだと思います。先生のご質問は電子カルテについてですが、まともに機能しているものがあるかどうかはわからないですが、単に電子レセプトにのみ対応している先生方が多いと思います。医科は電子カルテに対応しているという体裁になっているが、実態としては100%出来てはいないのではないでしょうか。今後は実態を見て、電子カルテについての必要性などを考えなければならないでしょう。協会としては、まず電子カルテの現状について改めて調査した上で会員に周知していく必要があると思います。

(回答:馬場安彦副会長)

協会はレセコンメーカーと懇談会を実施しています。電子カルテに求められていることをレセコンメーカーの中で対応できている、できていない、費用面などの話題も大事です。先生からのご質問など、具体的な話がメーカーから回答できるかもしれません。ぜひレセコンメーカーと懇談会に向けてご意見をお寄せいただきたい。

新型コロナウイルス感染症は 転換期を迎えている Special Serial No.5/完

次の新たな感染症に対峙する医療・公衆衛生体制の充実を

2020年1月、国内で初めて新型コロナの感染事例が確認された頃には、「封じ込め」を目指す「戦略」が取られ、感染者の隔離のみならず濃厚接触者にも厳重な措置をとるなどの「戦術」が開始されたが、その時点においてはそれなりの妥当性があった。しかしながら、本連載で既述したように、現在においては、「封じ込め」が不可能であること、ワクチンや診断・治療法が確立し、致死率が着実かつ大幅に減少してきていることから、「戦略」を見直し、「戦術」を改めるときに至っている。

わが国において一刻も早くとるべき戦略

これまでの感染者の全数届出・隔離、濃厚接触者の行動制限という「封じ込め」を目指す戦略から、「重症化・死亡者数の最小化」とともに「恐怖の病原体というイメージの払拭」を目指す戦略へ転換する段階に現在到達している。
重症化や死亡のリスクは、高齢者や高度肥満者、コントロールが良くできていない糖尿病等の基礎疾患を合併している患者という知見が明らかとなっている。小児や若年者は、無症状か軽症者が大多数であり、感染すること自体を問題視するよりも、重症化リスクが高く死に至る人をいかに守るかに保健医療資源を充てていくべきである。
また、「防災」ではなく「減災」というコンセプトがあるように、感染リスクゼロを目指すような感染拡大の「防止戦略」から、感染機会や重症化リスクの「軽減戦略」への発想転換も考慮されるべきではないか。

重症化・死亡者数の最小化に向けて

広くまん延し、封じ込めができないということから、今となっては濃厚接触者の行動制限の意義は低く、即刻止めるべきである。その上で、感染者の重症化予防のための的確な診断、適時適切な治療へのアクセスの確保が重要であり、保健所を絡ませず、診療所等の外来機能による早期発見・早期治療、医療機関連携による患者紹介、転院、救急搬送といった通常の医療システムに戻すことが急務である。そのためにも、新型コロナの全数届出は不要とし、定点医療機関におけるサーベイランス対象感染症といった運用に切り替え、風邪やインフルエンザのごとく、一般の診療所や中小病院における受け入れがなされるようにすることが重要である。また、流行時には、高齢者施設や病院等における会話時のマスク着用など感染リスクの軽減も必要であろう。
なお、重症化予防の事前策としての、高齢者、高度肥満や基礎疾患等を有する者に対する重症化予防の「個人防衛」としての定期的なワクチン追加接種の勧奨も必須である。

もはや「恐怖の感染症」ではない

元々「恐怖の病原体」というものは、社会から隔離・排除すべきという意識と根強い「偏見・差別」意識と連動する。これは、ハンセン病やHIV感染症での経験そのものであり、治療法等の確立によって「恐怖の病原体」「不治の病」では無くなり、その疾病イメージが変わり、偏見・差別問題は改善するという歴史が繰り返されている。
一方、高齢者などでは続発する細菌性肺炎等で死に至ることが多々ある風邪症候群や季節性インフルエンザなどは、仮に罹患しても、偏見・差別を受けることはほぼ無く、それは「恐怖の病原体」というイメージが作られていないからである。このため、新型コロナウイルス感染症に対する疾病イメージを変えて、感染のリスクはすべての人にあり、感染自体を恐れるべきでないという政策を進め、偏見・差別、風評被害を無くしていくことが求められている。

最後に

幸い、4回目のワクチン接種は高齢者および基礎疾患を有する者を対象にしたり、屋外での非会話時のマスク着用は不要としたりなど、私が提言してきた戦略・戦術が徐々に政府でも取り上げられつつある。
新型コロナウイルス感染症問題の収束に期待するとともに、今回の教訓を踏まえた次の新たな危機的な感染症の発生に向けた医療・公衆衛生体制の更なる充実も期待して、本連載を終えたい。


山本光昭(やまもと・みつあき)
前 東京都中央区保健所長 / 現 社会保険診療報酬支払基金 理事

1984年3月、神戸大学医学部医学科卒業後、厚生省に入省。横浜市衛生局での公衆衛生実務を経て、広島県福祉保健部健康対策課長、厚生省健康政策局指導課課長補佐、同省国立病院部運営企画課課長補佐、茨城県保健福祉部長、厚生労働省東京検疫所長、内閣府参事官(ライフサイエンス担当)、独立行政法人国立病院機構本部医療部長、独立行政法人福祉医療機構審議役、厚生労働省近畿厚生局長などを歴任し、2015年7月、厚生労働省退職。兵庫県健康福祉部医監、同県健康福祉部長、東京都中央区保健所長を経て、2021年4月より現職。

第50回定期総会 記念講演/チタン・CAD/CAM冠の適用拡大求める

定期総会後半の「記念講演」では、協会の坪田有史会長が壇上に上がった。テーマは「臨床の視点で金パラの代替を考える」。昨今の診療報酬改定や基本診療料の点数の変遷、金パラの代替材料についての現状、そして近未来について持論を展開した。司会は阿部菜穂理事が務めた。

―2022年度診療報酬
改定について
坪田会長は、まず2022年度診療報酬改定について触れ、基本認識、基本的視点として、口腔疾患の重症化予防、口腔機能低下への対応の充実、QOLに配慮した歯科医療の推進を挙げ、それらを通じて、国民の健康寿命の延伸とQOLの改善に寄与することと説明した。
診療報酬改定率については、全体としてプラス0・43%(財源:300億円)、歯科では、プラス0・29%の87億円と紹介。坪田会長が歯科医師となった1989年には国民医療費における歯科医療費の割合は10%であったが、20年後の2019年では6・8%に減ってしまったとし、国民医療費における歯科医療費の割合が10%で維持できていれば、約1兆円も少ない現状であると指摘した。

―基本診療料の変遷を前に
2022年度改定で、歯科の初診料は261点から264点、再診料は53点から56点へと、各3点ずつアップした。医科の初診料と再診料は、歯科の初診料より24点、再診料は17点高く、会員からは「医科と同じ点数にすべき」との声があがっている。歯科は初診料を1点上げるのに8億円、再診料を1点上げるのに32億円、初診料・再診料を各1点ずつ上げるのに40億円が必要とし、2022年度改定で初診料・再診料を各3点ずつ上げたので、120億円の財源の確保が必要と説明した。その上で、歯科の財源の不足分は、P基処の廃止により充当されたと説明した。P基処の廃止により、110億7000万円の削減となるため、初診料・再診料の点数が上がったメリットを享受できていないと感じる歯科医師が多いと指摘した。
さらに、過去10年間における初診料・再診料の変遷において、点数は引き上げられているものの、消費税率の引き上げに伴う対応分が含まれているため、実質的な基本診療料の評価には繋がっていないことを指摘し、歯科において国民の健康寿命の延伸やQOLの改善だけでなく、歯科に係る諸問題を改善するために歯科医療費の総枠拡大の必要性を強く訴えた。

―金パラの代替材料
保団連が実施した金パラモニター調査のデータを引用し、金パラ告示価格と実勢価格が乖離している状況や、パラジウム、金の先物チャート図をもとに、世界情勢の影響を受けやすく、投資家の投機対象となる材料を保険の材料としていることを問題視。また、歯科用貴金属の価格変動が歯科医療機関に与える影響を緩和するため、年4回公定価格の改定を行うなど、対応が行われたが、金パラ告示価格と実勢価格が乖離している状況は改善されないとし、抜本的な対応を国に求めていくと強調した。
さらに、金パラによる歯冠修復の問題点として、審美障害や金属アレルギーが挙げられるが、接着の技術改善により、接着ブリッジやCAD/CAM冠などのメタルフリーの歯冠修復物の適用が拡大していると説明した。金パラの代替材料として、メタル系ではチタン、コバルトクロム合金、合成樹脂としては、コンポジットレジン(HJC、CRインレー)、ハイブリッドレジンブロック(CAD/CAM冠、CAD/CAMインレーなど)、PEEK、無機材料としては、セラミック(ジルコニア)をピックアップした。
ただし、フルジルコニアクラウンの保険収載は財源が大幅に増加しなければ厳しいという見解を示した。今後は、国としても脱メタル化を推し進めているため、メタルフリーの歯冠修復における保険適用の拡大がさらに進むとの見解を示した。
そのほか、各材料の臨床における特徴や問題点を実際の臨床データを用いながら解説。保険適用となったチタンの改善案としては、①CAD/CAM冠用のチタンブロックを用いて、CAD/CAM技術での製作を行う、②ブリッジへの適用拡大―の2点を挙げた。このうち、②のブリッジへの適用拡大については、保団連を通じて働きかけていくとした。
そして、CAD/CAM冠の適用の問題として、第二大臼歯のすべてが残存していなければ第一大臼歯には適用不可となっているが、その条件におけるデータやエビデンスがあまりにも少ないと指摘した。一律的にルールに縛られているため、患者に保険で適切な治療を行うことが難しい状況にあることから、歯科医師の裁量を認めさせる必要があると強調した。

―歯科医療費総枠拡大
坪田会長は改めて金パラの代替材料として、チタンやCAD/CAM冠の適用拡大の必要性を強調し、患者への適切な治療のためには、歯科医師の裁量権の拡大が不可欠とし、歯科業界を取り巻く諸問題の抜本的な解決策として、歯科医療費の総枠拡大の必要性を訴えた。
そして、歯科医療費の総枠拡大が果たせなければ、歯科医師が望む保険適用の拡大や、増点は望めないとし、国会議員や厚生労働省への働きかけを強めていくと強調した。
歯科医師が日々できることは、高点数を理由とする個別指導を恐れた萎縮診療に陥るのではなく、患者、国民の健康維持、健康寿命の延伸のため、エビデンスに基づいた正しい保険請求を行うことであり、それが歯科医療費の総枠拡大に繋がると訴え、結びとした。
講演後の質疑応答では、オーラルスキャナーを用いたCAD/CAMインレーの保険収載の可能性など、フロアーからの質問に、坪田会長が回答した。

【決議】東京歯科保険医協会 第50回定期総会(2022年6月19日)

 厚生労働省に行った歯科用金銀パラジウム合金の材料費が診療報酬の告示価格を上回る問題に関する改善要求から、今次診療報酬改定において、変動幅に係らず3ヶ月毎に告示価格を改定する仕組みが新設された。しかし、ウクライナ侵攻などから歯科用金銀パラジウム合金の市場流通価格は日々高騰を続けており、問題は一向に解決していない。医療機関の経営は更に厳しさを増しており、歯科医療に従事する人材を維持・確保できなくなる恐れがあるなど、医療提供体制の崩壊が懸念される。

 長期化する新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、医療用物資の高騰や患者の受診抑制が慢性化している。今次診療報酬改定で初診料および再診料が僅か各々3点しか引き上げられておらず、そもそもコロナ禍以前より院内感染防止対策に係る評価は十分とは言えず、国は速やかに院内感染防止対策の適切な評価を行うべきである。

 なお、感染拡大を受け、厚生労働省は今年度も高点数による個別指導を実施しないこととした。これは、協会が廃止を求めてきた成果の1つであり、必要性が乏しいことを厚生労働省は認めたと言える。萎縮診療にもつながる当該指導は、速やかに廃止すべきである。

 国は、一定の収入がある75歳以上の国民の負担割合を、今年10月から1割から2割に引き上げる。健康寿命の延伸や在宅医療の医療提供が喫緊の課題となる中で、その患者の負担割合を引き上げる動きには反対である。

 「経済財政運営と改革の基本方針2022」の原案において、国民皆歯科健診の検討が盛り込まれた。疾病の早期発見および健康寿命の延伸に繋がると期待され、実現に向けてできる限り協力したい。なお、実施の際には患者が負担を気にせず健診が受けられるよう、適切な制度設計が検討されるべきである。

 2月24日に開始されたロシア軍のウクライナ侵攻は、国連憲章および国際法を踏みにじる行為であり、いかなる理由であっても許されるものではない。国民の命と健康を守る団体、そして唯一の被爆国として、人の命を奪う戦争や核兵器使用で世界の諸国を威嚇するいかなる行動にも断固として反対する。

 また、政府が推し進めている今後増加する高齢者のために一人当たりの社会保障費を削減する動きや、患者への安心安全な医療の実現を妨げる動きに断固反対し、国民の生活と歯科医療のより一層の充実に向けた運動を国民とともに力を合わせ、推進するために、以下の要求を国民、政府及び歯科保険診療に携わる全ての方に表明する。

 

 

一.国は、現行の社会保障を後退させず、世界の国々が模範とする日本の社会保障制度を更に充実させること。

一.国は、これ以上の患者負担増計画は中止し、医療保険や介護保険の自己負担率を引き下げること、または公費助成を充実させることにより、国民負担を軽減すること。

一.国は、患者が負担を気にせずにかかりつけの医療機関で健診が受けられるよう、国民皆歯科健診の適切な制度設計を行うこと。

一.国は、院内感染防止対策の評価を更に引き上げるなど診療報酬の諸問題を改善すること。

一.国は、歯科用金銀パラジウム合金の材料費が診療報酬の告示価格を上回ることのないよう、さらなる制度改善を行うこと。

一.国は、高点数の保険医療機関を対象とした指導を廃止すること。

一.私たち歯科医師は、平和を妨げるすべての動きに反対する。

2022年6月19日

東京歯科保険医協会 第50回定期総会

第50回定期総会 「決議」

第50回定期総会「決議」

厚生労働省に行った歯科用金銀パラジウム合金の材料費が診療報酬の告示価格を上回る問題に関する改善要求から、今次診療報酬改定において、変動幅に係らず3カ月毎に告示価格を改定する仕組みが新設された。しかし、ウクライナ侵攻などから歯科用金銀パラジウム合金の市場流通価格は日々高騰を続けており、問題は一向に解決していない。医療機関の経営は更に厳しさを増しており、歯科医療に従事する人材を維持・確保できなくなる恐れがあるなど、医療提供体制の崩壊が懸念される。

長期化する新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、医療用物資の高騰や患者の受診抑制が慢性化している。今次診療報酬改定で初診料および再診料が僅か各々3点しか引き上げられておらず、そもそもコロナ禍以前より院内感染防止対策に係る評価は十分とは言えず、国は速やかに院内感染防止対策の適切な評価を行うべきである。

なお、感染拡大を受け、厚生労働省は今年度も高点数による個別指導を実施しないこととした。これは、協会が廃止を求めてきた成果の1つであり、必要性が乏しいことを厚生労働省は認めたと言える。萎縮診療にもつながる当該指導は、速やかに廃止すべきである。

国は、一定の収入がある75歳以上の国民の負担割合を、今年10月から1割から2割に引き上げる。健康寿命の延伸や在宅医療の医療提供が喫緊の課題となる中で、その患者の負担割合を引き上げる動きには反対である。

「経済財政運営と改革の基本方針2022」の原案において、国民皆歯科健診の検討が盛り込まれた。疾病の早期発見および健康寿命の延伸に繋がると期待され、実現に向けてできる限り協力したい。なお、実施の際には患者が負担を気にせず健診が受けられるよう、適切な制度設計が検討されるべきである。

2月24日に開始されたロシア軍のウクライナ侵攻は、国連憲章および国際法を踏みにじる行為であり、いかなる理由であっても許されるものではない。国民の命と健康を守る団体、そして唯一の被爆国として、人の命を奪う戦争や核兵器使用で世界の諸国を威嚇するいかなる行動にも断固として反対する。

また、政府が推し進めている今後増加する高齢者のために一人当たりの社会保障費を削減する動きや、患者への安心安全な医療の実現を妨げる動きに断固反対し、国民の生活と歯科医療のより一層の充実に向けた運動を国民とともに力を合わせ、推進するために、以下の要求を国民、政府及び歯科保険診療に携わる全ての方に表明する。

一.国は、現行の社会保障を後退させず、世界の国々が模範とする日本の社会保障制度を更に充実させること。

一.国は、これ以上の患者負担増計画は中止し、医療保険や介護保険の自己負担率を引き下げること、または公費助成を充実させることにより、国民負担を軽減すること。

一.国は、患者が負担を気にせずにかかりつけの医療機関で健診が受けられるよう、国民皆歯科健診の適切な制度設計を行うこと。

一.国は、院内感染防止対策の評価を更に引き上げるなど診療報酬の諸問題を改善すること。

一.国は、歯科用金銀パラジウム合金の材料費が診療報酬の告示価格を上回ることのないよう、さらなる制度改善を行うこと。

一.国は、高点数の保険医療機関を対象とした指導を廃止すること。

一.私たち歯科医師は、平和を妨げるすべての動きに反対する。

 

2022619

東京歯科保険医協会

50回定期総会

 

 

 

 

 

東京歯科保険医新聞2022年(令和4年)6月1日

こちらをクリック▶東京歯科保険医新聞2022年(令和4年)6月1日 第627号

1面】

     1.診療報酬/オンライン資格確認 原則義務化
     2.第50回定期総会のご案内
     3.定期総会議案書
     4.ニュースビュー
     5.「探針」

2面】

     6.会員寄稿“声”「今後不可欠な『訪問歯科』 現場の視点で見る改定」(葛飾区・池川裕子氏)
     7.会員寄稿“声”「歯科はなぜ疲弊しているのだろうか?」(文京区・太田順子氏)
     8.歯科訪問診療/初電・再電の摘要欄記載不要に
     9.遡及による新規個別指導 4月から対象変更

3面】

     10.経営・税務相談Q&A No.393 賞与・退職金~導入で気を付けることは?~
     11.IT相談室/インターネットに関するプロバイダの選び方/(クレセル株式会社)
     12.診療報酬改定 関連書籍/歯科疾患管理計画書のご案内
     13.法律相談、経営&税務相談

【4面】

     14.インタビュー「歯科医師、歯科技工士、歯科衛生士 三位一体で活動する場が必要」日本歯科審美学会・大槻昌幸さん

【5面】

     15.研究会・行事のご案内

【8面】

     17.Special Serial No.4 「新型コロナウイルス感染症は転換期を迎えている」山本光昭氏(社会保険診療報酬支払基金理事)
     18.教えて!会長!!Vol.59

【9面】

     19.症例研究/2022年度診療報酬改定 初期の根面う蝕のF局および咬調

【10面】

     20.連載/私の目に映る歯科医療界⑮(東洋経済新報社・大西富士男氏)他人事ではない!英国の歯科保険難民発生
     21.理事会だより
     22.協会活動日誌2022年5月

11面】

     23.金パラ原価割れ解消へ 国会議員に要請/金パラ問題 理解示す
     24.視点/若者の投票率向上へ 政治理解深める教育を
     25.夏季休診案内ポスター
     26.第2休業保障制度(団体所得補償保険)募集キャンペーンのご案内
     27.第33回全国保険医写真展ご案内

12面】

     28.7月金パラ引き上げ/1g3413円→3715円に
     29.第1回メディア懇談会「患者側の意識は?」金パラ価格変動について議論
     30.神田川界隈/今年度改定のご評価は?(西田紘一監事/八王子市)
     31.通信員便り No.122
     32.電子書籍「デンタルブック」ご案内
     33.会員優待サービスご案内

13・14面】

     34.第2休業保証制度(団体所得補償保険)募集キャンペーン

理事会声明 オンライン資格確認システムの導入“義務化”に反対する

 マイナンバーカードを利用したオンライン資格確認システムの運用を開始した医科・歯科医療機関及び保険薬局数は2022年5月22日時点で44,284機関、参加率は19.3%となっている。そのうち、全国の歯科医療機関数は9,263機関、同13.1%、東京の歯科医療機関数は903機関、同8.4%にとどまっている。協会には実際に導入している歯科医療機関からオンライン資格確認システムの利用者は月1~2人の利用者しかいないという声も寄せられている。

 導入した医療機関には毎月のランニングコストの負担や受付の患者対応などの負担がかかる。そのため、診療報酬改定で、電子的保健医療情報活用加算が新設された。

 しかし、政府は患者負担が増えることが報道されると、同加算の廃止を早々と打ち出した。加算が廃止されればオンライン資格確認システムのランニングコストなどは完全に医療機関側が負担することとなる。また、診療報酬の諮問機関である中医協を飛び越えて、政府が方針を打ち出すのはいかがなものだろうか。

 また、患者負担があるため、オンライン資格確認システムの利用者が少ないという声もあるが、そもそもマイナンバーカードの全国普及率は5月1日時点で44.0%であり、東京では47.8%である。健康保険証利用登録が済んでいるのは全人口でわずか7%未満に過ぎない。いったい、マイナンバーカードを健康保険証として持ち歩く国民がどの程度いるだろうか。

 現行システムでは、資格確認以外の薬剤情報や特定健診記録などの医療情報へアクセスするためにはマイナポータルでの登録が必要である。マイナポータルの利用規約にはすべてのトラブルについて「自己責任」での解決をすることが定められており、全ての責任を利用者に押し付ける内容となっている。医療機関にあるオンライン資格確認システムのカードリーダーはその場で健康保険証とマイナンバーカードの紐づけができるため、医療機関で紐づけを行えば、医療機関側がマイナポータルの利用規約への同意を促してしまうことになる。また、一旦紐づけが完了してしまえば取り消すことはできないため、取り消しを希望する患者さんとの間で新たなトラブルともなりかねない。

 さらに、昨今の半導体不足の影響で、オンライン資格確認システムに使用する機器なども不足しており、導入まで半年以上待たされているという医療機関も存在する。半導体の世界的需要の高まりやウクライナ情勢の影響で、物資供給が不安定な中で優先的に導入を進めていくべきものなのかは甚だ疑問である。

 オンライン資格確認システムの最大のメリットは健康保険の資格確認がその場でできることとされてきたが、2021年10月より支払い側で資格喪失後のレセプトの振替などの作業を行っており、返戻は減りつつあるため歯科での導入のメリットは少ない。導入を義務化すれば、必要のない新たな負担を強いられるなどのデメリットが大きくなる。

 コロナ禍で経済的に打撃を受けている医療機関に対し、マイナンバーカードの普及率の低さを解消するため、オンライン資格確認システムの導入を“義務化”し、負担を強いることが今求められていることなのか。マイナンバーカードの普及については、政府が正しく運用するのであれば、新型コロナウイルスに係る給付金などに活用をすることができることなどから、推進をしていく必要性もあると思われるが、現状ではさまざまな点で不安が払しょくできない。そもそも医療をマイナンバーカード普及の出しに使うことについて、国民に理解を得られているとは到底考えられない。

以上よりオンライン資格確認システムの導入“義務化”に反対する。

2022年6月9日

東京歯科保険医協会 第5回理事会

新型コロナウイルス感染症は 転換期を迎えている Special Serial No.4

「2類か」「5類か」ではなく、本質的な議論を

新型コロナウイルス感染症の感染症法上のカテゴリーを2類相当から5類相当へ変更すべきという議論があるが、そもそも、既に同感染症は2類相当という運用はなされていない。
本来2類であれば、感染症指定医療機関へ入院勧告するが、一般病院に入院させるし、ホテルや自宅療養すらしている。
現状の新型コロナ対応が2類相当の運用ではない以上、5類相当の運用にすべきというのは議論の本質ではなく、言葉だけが一人歩きしている状態であり、私が考える5つの論点を紹介したい。

① 隔離が必要か

今となっては、新型コロナで隔離する必要はない。実際、膨大な数の感染者がいることから、隔離は不可能な状態に陥っているが、家のなかで閉じこもっていなくても、外で唾液を飛び散らかせるような行為を行わなければ感染は広がらない。保健所の実施した多くの疫学調査の結果からも、会話時のマスクが徹底されている場合、感染の拡大は起きていないことが圧倒的である。

② 全数届出が必要か

 初期の頃は感染経路等の検証のためにも全数届出が必要であったが、新型コロナに関しては結核などと異なり感染拡大防止対策としての貢献度が低く、医療・公衆衛生の限られた人的・物的資源を有効に使うには、今となっては全数届出を止めるべきである。医療機関及び保健所における全数把握するための労力の多大さに比べ、得られる便益が低すぎる。また、全数届出であるが故に、万一クラスターが待合室や病棟等で起きれば、「バッシング」を受けることを恐れ、受け入れに消極的な医療機関すらあるはずである。一般的に、感染者数の多い感染症は全数届出でなく、定点医療機関からの届出により、地域別の流行状況の把握や変異等に関するモニタリングを行ない、情報提供している。この情報提供により、流行時にはワクチンの追加接種や会話時のマスク着用などの行動を地域住民に促すことが効果的であろう。

③ 保健所による直接の健康管理が妥当か

まず、最も厳しいエボラ出血熱等の1類感染症であっても、一義的に、感染症指定医療機関という医療機関の管理下において治療がなされる。そもそも、画像検査や血液検査、投薬が出来ない保健所が管理するより、医療機関が直接管理するほうが病状にあった迅速な処置や投薬が可能だ。特に、「自宅療養」という名目の「自宅放置」のもと、実際に死者が出たことは最悪の悲劇であり、保健所の健康管理下におかない方が良い。患者の希望により早期に適切な診断・治療が可能な、わが国の抜群のアクセスの通常の医療システムに戻さなければならない。わが国が優れているのは、CTも含む画像診断装置の普及をはじめとする地域医療の質の高さと、機能に応じた医療機関同士の役割分担と連携にあるからである。

④ ワクチン接種をどう考えるか

ワクチンには感染予防と重症化予防という、大きく分けて2つの効果がある。感染予防に期待が集まっているが、今回のコロナワクチンは重症化予防を目的に実施すべきものと私は考えている。新型コロナは封じ込めが不可能な病原体なので、「社会防衛」的に全員が接種することによる封じ込め効果は期待できない。そのためにも、個人の「接種しない」という判断は、得られる利益と副反応のバランスを勘案して許容されるべきで、接種しない者に対する差別は決してあってはならない。なお、高齢者をはじめ重症化リスクが高い人は重症化を防ぎ自らの命を守るためにワクチンを「個人防衛」として接種すべきで、当面の間、追加接種を継続的に実施していくべきであろう。

⑤ 医療費の公費負担をどう考えるか

5類相当になると通常の保険診療で3割自己負担となるから反対という考えもあるようだが、これは本質的な問題ではない。難病の医療費助成制度と同様に、例えば、まだ十分には解明されていない「後遺症」のデータを収集し治療研究を推進するという理屈であれば、当面の間、引き続き公費で助成していくこともありえるからである。
次回は、わが国における今後のあるべき戦略・戦術について、解説する。

山本光昭(やまもと・みつあき)
前 東京都中央区保健所長 / 現 社会保険診療報酬支払基金 理事

1984年3月、神戸大学医学部医学科卒業後、厚生省に入省。横浜市衛生局での公衆衛生実務を経て、広島県福祉保健部健康対策課長、厚生省健康政策局指導課課長補佐、同省国立病院部運営企画課課長補佐、茨城県保健福祉部長、厚生労働省東京検疫所長、内閣府参事官(ライフサイエンス担当)、独立行政法人国立病院機構本部医療部長、独立行政法人福祉医療機構審議役、厚生労働省近畿厚生局長などを歴任し、2015年7月、厚生労働省退職。兵庫県健康福祉部医監、同県健康福祉部長、東京都中央区保健所長を経て、2021年4月より現職。

東京歯科保険医協会 第50回定期総会 開催のご案内

東京歯科保険医協会第50回定期総会を下記の通り開催致します。

日時

2022年6月19()午後2時30分~6時00

定期総会 午後2時30分~4時15

記念講演 午後4時30分~6時00

「臨床の視点で金パラの代替について考える」

講師 坪田有史(東京歯科保険医協会会長)

 【抄録】

金銀パラジウム合金(以下、「金パラ」)の価格は、コロナショックによる素材価格の上昇、そして2022年に入ってウクライナショックにより、さらに上昇した。

2022年度診療報酬改定で歯科用貴金属価格の随時改定の仕組みが変更され、さらに急遽5月に改定が行われたが、素材価格が様々な因子によって上下動するため、根本的な解決とはならない。これらの問題から厚生労働省は、金パラの代替材料の保険適用を積極的に進めてきた。

 2014年度診療報酬改定では、小臼歯限定でCAD/CAM冠が保険収載され、その6年後の2020年には条件付きで上下顎第一大臼歯、そして前歯部までCAD/CAM冠に適用拡大され、またチタン冠が保険収載された。そして今回の2022年度改定では、CAD/CAMインレーが保険収載された。これらの「脱金パラ」の流れは、今後もさらに進むであろう。

今回、臨床例を交えて金パラの代替について考察する。

会場

中野サンプラザ 13階コスモルーム (住所:東京都中野区中野4-1-1

交通 中野駅北口より徒歩5分

 

総会議事

第1号議案  2021年度活動報告の承認を求める件

第2号議案 2021年度決算報告の承認を求める件付・会計監査報告

第3号議案 役員の件(顧問の承認)  

第4号議案 2022年度活動計画案の件

第5号議案 2022年度予算案の件

第6号議案 選挙管理委員承認の件

第7号議案 決議採択の件    

 

新型コロナウイルス感染症の感染防止に関わるお知らせ

以下に該当する方のご参加はご遠慮ください。

37.5℃以上の発熱がある方。

・体調のすぐれない方(味覚、嗅覚などの異常を含む)。

・新型コロナウイルス感染症「陽性」と診断されている方、または同感染症「陽性者」と診断された方と濃厚接触された方。

※昨年同様、感染症防止対策を十分に行います。

※ご出席の際は、マスク着用などご自身および周囲への配慮をお願い致します。

※定期総会後の懇親会は、新型コロナウイルス感染症の影響により昨年同様に開催を中止とさせていただきます。

※今後の感染拡大状況によって、定期総会の開催・運営に関して大きな変化が生じる場合は、当会ホームページもしくはデンタルブック等でお知らせ致します。

【この夏ご利用ください】夏季休診案内のご案内(2023年版)

 

▲卓上型 夏季休診案内

診療所などで使える夏季休診案内をご用意しました。壁に貼って使えるポスタータイプと受付に置いて卓上タイプがございます。

以下のPDFをダウンロード、プリントアウトの上、診療所の夏季休診にあわせてご利用ください。

また、郵送をご希望の方(会員限定)は、フォームからお申し込みください。

 

 夏季休診案内ポスター①

 

夏季休診案内ポスター②

 

夏季休診案内(卓上型)

【ご協力のお願い】「訪問歯科診療」の安定供給に関するアンケート調査について

この度、中久木康一氏(東京医科歯科大学 救急災害医学分野 非常勤講師)より、「訪問歯科診療」の安定供給に関するアンケート調査への協力依頼が届きました。

同氏は、2019年2月に開催した第1回地域医療研究会で「歯科診療所で備えるべき災害対策」と題する講演を頂き、2019年9月から2020年3月の7カ月にわたり、東京歯科保険医新聞の「歯科診療所と開業医に伝えたい災害コラム」と題し、連載して頂きました。

このアンケートは、今後も需要が増して行くと考えられる訪問歯科診療を含む歯科保健医療を人口過疎地においても継続して供給していく方策を検討することを目的とし、集計・分析結果は、政策提言等に活用されるものです。

訪問歯科診療への考え方に対する質問項目もありますので、所在の地域に関わらず、是非Webアンケートへのご協力をお願い申し上げます。

【ご略歴】
中久木 康一 氏
・東京医科歯科大学大学院 医歯学総合研究科 救急災害医学分野 非常勤講師(客員教授)
・千葉大学大学院 医学研究院 法医学 特任研究員(非常勤)
・日本災害歯科公衆衛生研究会世話人、災害歯科保健医療連絡協議会ワーキンググループ委員など。
・著書
「災害歯科保健標準テキスト」(一世出版)
「災害歯科医学」(医歯薬出版)
「繋-災害歯科保健医療対応への執念-」(クインテッセンス出版)
「災害時の歯科保健医療対策 連携と標準化に向けて」(一世出版)など多数。

【アンケートの詳細】

ご回答に際して、「Web調査質問一覧PDF」を下記URLよりダウンロードして頂き、全体像を把握し、回答フォームにアクセス頂いた方がご負担が少ないかと存じます。

↓↓↓参考資料(Web調査質問一覧PDF)はこちらから↓↓↓

http://jsdphd.umin.jp/research.xhtm

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆回答はこちらから◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

東京歯科保険医新聞2022年(令和4年)5月1日

こちらをクリック▶東京歯科保険医新聞2022年(令和4年)5月1日 第626号

1面】

     1.在宅歯科医療の改定内容に限定/第3回新点数説明会を開催)

     2.保険請求時の留意点を指摘/第4回新点数説明会

     3.第50回定期総会案内

     4.講演の模様はオンデマンド配信中

     5.ニュースビュー

     6.「探針」

2面】

    7.レセプト記載要領の主な変更点

    8.22年度改定疑義解釈/咬合調整は改定前の状況に関わらず4月から算定可

    9.東京都知事および都議会各会派へ撤回を求める

    10.高点数による個別指導実施せず2022年度指導計画

3面】

    11.会員が見た診療報酬「私から見た歯科訪問診療の実際と診療報酬改定」(葛飾区・池川裕子)

    12.会員が見た診療報酬「DXの視点から見た診療報酬改定―メリットがあるのは誰?」(町田市・杉島康義)

    13.会員寄稿“声”「米国の人手不足 トヨタの賃上げ そして歯科は?」(練馬区・船木勝介)

    14.2022年診療報酬改定書籍「歯科保険診療の研究」お届けします

【4面】

    15.経営・税務相談Q&A No.392 これってパワハラ?「パワーハラスメント防止措置」の義務化

    16.IT相談室/インターネット取引(歯科材料、感染防止品)の注意点/(クレセル株式会社)

    17.法律相談、経営&税務相談

【5面】

    18.「点数変わらない」6割強/新点数説明会アンケート

    19.5月金パラが引き上げに ―銀合金、メタルコアおよび14Kも改定―

    20.Facebookご案内

【6面】

    21.インタビュー「ホワッと観て ホクっと… そんな映画でありたい」映画監督・平山秀幸さん

【7面】

    22.研究会・行事のご案内

    23.会員優待サービスご案内

    24.デンタルブックご案内

【8面】

    25.Special Serial No.3 「新型コロナウイルス感染症は転換期を迎えている」山本光昭氏(社会保険診療報酬支払基金理事)

    26.教えて!会長!!Vol.58

    27.東京歯科保険医協会公式サイト

【9面】

    28.症例研究/2022年診療報酬改定 CAD/CAMインレーの新設

【10面】

    29.連載/私の目に映る歯科医療界⑭(東洋経済新報社・大西富士男)訪問診療や女性医師増が歯科業界に構造転換迫る

    30.理事会だより

    31.協会活動日誌2022年4月

11面】

    32.4・21国会要請行動/渡辺・伊藤両衆議院と懇談実現―金パラ原価割れ解消も強く訴える

    33.電子書籍「デンタルブック」ご案内

    34.「保団情報サービス」ご案内

    35.共済制度ご案内

12面】

    36.現場の声で 5月に緊急改定/7月随時改定を待たずに引き上げを

    37.神田川界隈/今年度改定のご評価は?(本橋昌宏理事/荒川区)

    38.通信員便り No.121

    39.日本歯科評論 別冊「保険診療と歯冠修復」/2022年診療報酬改定関連書籍

新型コロナウイルス感染症は 転換期を迎えている Special Serial No.3

PCR検査の意義や限界、目的が理解できていない

封じ込めは不可能であり、検査目的を再検討すべき

新型コロナの特性の把握や対応法も確立していなかった段階では、感染拡大防止のために「封じ込め」の可能性を意識して、無症状者も含めて検査を実施し、陽性者の把握、濃厚接触者の特定・行動制限などを実施することにはそれなりの合理性があった。

しかしながら、この2年にわたる知見の集積の中で、新型コロナに関しては、①人から猫などの動物にも感染し、再び動物から人に感染するという、変異を繰り返しながらの永遠のサイクルになること、②無症状や軽症のことが多いため、感染拡大しやすいこと、③ワクチンの効果が6カ月程度で減弱することなどから、反復してのワクチン接種や早期発見・隔離などを徹底しても「封じ込め」は不可能であること―が明らかとなり、検査の目的を再検討すべき時期に至っている。

PCR検査を絶対視する不可思議

病院における新型コロナ検査では、LAMP法やPCR法を同時に実施することも多い。すると、LAMP陽性、PCR陰性など、異なる結果が出ることがある。検体が正確に採取できていたかどうかによっても、結果が左右されるからである。例えば、インフルエンザ検査キットは、特異度は高く、結果が陽性であればほぼ感染していると言える反面、陰性であっても感染していないとは言い切れない。感染している人を正しく陽性と判定する割合を「感度」というが、インフルエンザ検査の感度は60%程度と言われ、新型コロナの検査も同程度と言われている。すなわち、見落とし(偽陰性)は多く、少数とはいえ〝濡れ衣(偽陽性)〟の可能性もある。その意味で、一つの検査を絶対視するのは不可解としか言いようがない。

さらに、検査の陽性はあくまでも、感染したという「結果」を確認しているにしか過ぎない。本来、感染しないための予防という「行動」こそが「感染拡大防止」につながるわけで、無症状者が検査陰性といって安心し、感染リスクの高い行為を重ねることこそ、感染拡大につながっているともいえる。すなわち、「陰性証明」の検査こそ、感染拡大につながっている可能性すら、ありうるわけである。

それでは、なぜ、今なお日本も含め、世界においても感染拡大防止につながると思い込み、無症状者も含めPCR検査や抗原検査が行われるのか。私は、日本だけなく世界でも、検査の意義や限界、目的が理解できていない人たちが発言し、それがそのまま鵜呑みにされている社会構造にあるのではないかと感じている。

今となっては診療の一環、治療目的と考えるべき

検査は本来、疾病の治療を目的に行うべきである。また、歯科医療も含め、通常の医療においては疾病診断にあたり、必ず複数の検査を実施し、総合的な判断のもと、治療を実施していく。

新型コロナが疑われる場合、まずウイルスのタンパク質をみる抗原検査、遺伝子をみるLAMP法やPCR法などの手法の異なる複数の検査を駆使し、ウイルスの活性状況を判定する。そして、会話時のマスク着用など、他者への感染の配慮の上で通常のように医療機関に通院してもらいながら、患者を的確に医療機関の管理下に置き、鎮痛解熱剤といった症状を和らげる薬なども処方し、症状が深刻であれば、血液検査やCTなどの画像検査を実施する。

一刻も早く通常の医療システムに戻すことが必要

このように様々な検査を駆使しながら、患者の重症化リスクを検討する一方、中和抗体療法や抗ウイルス薬投与などを考慮する。そして、重症化が想定される場合や酸素投与が必要な場合などは入院させ、免疫暴走により急激な悪化が起こった場合は、ステロイド剤を投与するといった治療を行うのである。

新型コロナの予防・診断・治療法が確立した今、一刻も早く、アクセスの良い通常の医療システムに戻すべきである。

次回は、新型コロナウイルス感染症のカテゴリー議論について、解説する。

山本光昭(やまもと・みつあき)
前 東京都中央区保健所長 / 現 社会保険診療報酬支払基金 理事

1984年3月、神戸大学医学部医学科卒業後、厚生省に入省。横浜市衛生局での公衆衛生実務を経て、広島県福祉保健部健康対策課長、厚生省健康政策局指導課課長補佐、同省国立病院部運営企画課課長補佐、茨城県保健福祉部長、厚生労働省東京検疫所長、内閣府参事官(ライフサイエンス担当)、独立行政法人国立病院機構本部医療部長、独立行政法人福祉医療機構審議役、厚生労働省近畿厚生局長などを歴任し、2015年7月、厚生労働省退職。兵庫県健康福祉部医監、同県健康福祉部長、東京都中央区保健所長を経て、2021年4月より現職。