協会ニュース

【Health Care】 No.4 新興感染症の医療介護 医療か経済か両方か

医療経済学の専門家で東京大学大学院特任教授の田倉智之氏による連載の4回目。今回のテーマは「新興感染症の医療介護医療か経済か両方か」。

COVID―19については、まだ不明な点が多く臨床的な議論などもあるため、油断は禁物ではあるが、社会的にはある程度落ち着いてきたと推察される。このような新興感染症は、繰り返す感染の波なども視野に入れた長期的な取り組みが必要であるうえ、「社会的距離(social distance)」を始めとする裾野の広い感染症対策が不可欠であり、衛生資材などの健康医療産業のみならず、経済活動全般に大きな影響を及ぼすことは論を待たない。

一般に、感染症対策を含む医療システムにおける活動は、それを支える原資自体が社会全般の経済活動と相互関係にあるため、継続的な対策が必要な場合ほど、臨床的な課題と経済的な側面のバランスを図りながら、社会システムの発展に努める必要がある。

そのため、ハイリスク層である高齢者や基礎疾患を有する国民の健康・生命の確保を最優先にしつつも、経済活動の低下をできるだけ小さくする努力は、各種の防疫活動(行動変容)の推進とともに重要な視点と思慮される。例えば、重症患者の受け皿(ICUなど)を確保することは、臨床成績を担保しながら経済活動の許容範囲を拡げる可能性もあり、結果として、医療を支える経済的な損失は減少するため、感染症対策にかかる費用は相殺され、死亡者数も低く抑えられることが想像される。

そこで次に、この社会経済的な投資と回収のバランスの意義について、関わる概念やデータを整理してみる(コンセプト:図1)。COVID―19のような臨床的な特性および経済(社会)的な影響を有する特異な感染症に適切かつ効率的に相対し、市民の健康・生命のみならず医療制度などの国民福祉を恒常的に支えるためには、従来(平常時)の医療提供体制の強化に加え、感染症蔓延(緊急時)に伴う財政支援などが不可欠と考えられる。特に、ICUとともにHCU(高度治療室)などをも有効活用し、集中治療供給体制の拡充を行うには、平常時の備えとして、人工呼吸器および関連設備などとともに、医師・看護師などのマンパワーの充足も必要になる。これらは、社会保障や医療経営の負担を高める懸念も生じるが、感染慢性時に実体経済へのマイナス影響を抑制し、経済的な成果を生むことも期待される。例えば、ICUも含む急性期病床の人口あたりの密度が高いと、COVID―19による人口あたり死亡者数が低い傾向も認められる(図2, p< 0.01)[1]

加えて、国内総生産(GDP)の成長率と急性期病床の人口あたりの密度の関係を眺めると、平常時の急性期病床の密度は、COVID―19の蔓延に伴うGDPの成長率のマイナス影響を減じる傾向も示唆される(p<0.05)。以上から、不確実性の高い感染症の特徴に配慮しつつ、感染蔓延時のみならず平常時の備えや終息後の防疫を促進するには、経済活動の継続性も視野に入れて、中長期的な応対や関係者の意識改革を進めることが望まれる。新興感染症への対応策とはつまるところ、医療と経済の両立が理想であるため、臨床対応を優先しつつも、経済復興を早める工夫も不可欠であると考えられる。

これらは、国民のコンセンサスの醸成が前提でもあるため、普段より国民全体で共有すべきテーマと推察される。 

田倉 智之(たくら・ともゆき):博士(医学)、修士(工学)東京大学 大学院医学系研究科 医療経済政策学講座 特任教授。1992年に北海道大学大学院工学研究科修了。東京大学医学部の研修を経て、2010年より大阪大学大学院医学系研究科 特任教授。2017年より現職。厚生労働省(中医協)費用対効果評価専門組織 委員長、内閣府 客員主任研究官、大阪大学医学部招聘教授、東邦大学医学部客員教授、日本循環器学会 Circulation Reports Associate Editor、日本心臓リハビリテーション学会 評議員など歴任

【文献】

[1]田倉智之. 医療のグローバル化とその課題_国際診療の社会経済. 整形・災害外科. Vol.64 No.3, pp.341-347. 2021

【Health Care】 No.3 アドヒアランスを制することが次世代の目標

医療経済学の専門家で東京大学大学院特任教授の田倉智之氏による連載の3回目。今回のテーマは「アドヒアランスを制することが次世代の目標」。

 アドヒアランスは、医療者から患者等への一方通行ではなく協同のもとで、患者が治療の必要性について理解し、自発的、積極的に参加する姿勢を指す概念である。WHOの定義(2003年)を意訳すると、「人間の主体的な健康行動が適切(医療専門家の方針と一致)であること」になる。なお、狭義の生物学面や疾病機序が同様でも、長期予後に差異が生じるケースは散見するが、その背景として、患者固有のアドヒアランスの存在も想像される。以上から、アドヒアランスの見える化とそのコントロールは、健康寿命や社会経済に大きな恩恵をもたらすと期待される[]

例えば、服薬コンプライアンスや患者モラルハザードは、臨床成績と密接に関係し、健康行動だけでなく医療費などの社会経済的要因にも大きな影響を与えることが明らかになっている[2、3]。つまり、これらの向上は、患者の慢性疾患の負担だけでなく、経済的負担も軽減するわけである[ ]。特に、自己管理やヘルスリテラシーを含む広義のアドヒアランスは、疾病予防行動に影響を与える[]。このような中、限られた共有財の枯渇を避け、医療資源の配分の公平性を管理する必要もある厚生政策では、有害事象につながる可能性のある重複受診に伴う医療費の増加も懸念されている[1、5、6]

以上を整理すると、アドヒアランス(健康関連行動)の定義は、議論の立場によってやや変わるものと考えられる。つまり、公共市場を背景に集団の健康を論じる場合は、「自主/積極性」に「社会協調性」「モラルハザード」も関係してくるわけである。そこで、ここからは、広義のアドヒアランスの見える化とともに、その長期の臨床経済効果を検証した我が国の研究を紹介する[ ]。この研究は、定量化されたアドヒアランス(10水準のASHRO*スコア:低いと良い)が長期(48カ月間)の医療・介護費用や生命予後、他の臨床指標に与える影響を48,456人(循環器領域)のコホートで検証しつつ、予測モデルを開発している。

ASHROスコアは、収縮期血圧、LDLコレステロール、HbA1c、eGFR等の因子とも有意な相関関係を担保しつつスコア化されている。危険因子を揃えた予測モデルの全死亡に対する検証の結果、スコアの低い群と高い群の間には、3年以上後の累積死亡率に統計学的有意な差が認められている(2vs.7%、p< 0・001)。また、生命予後(全死亡)に対するASHROスコアのオッズ比は、1.860 95 % CI:1.740- 1・980、p<0・001)である。さらに、48カ月後の医療・介護費用の変位は、アドヒアランスが悪い群(スコア10)は、平均(スコア5)に対して、一定の精度のもとで将来の医療介護の累積費用が140%以上増加することを示している()。

ここまでの話しを医療保険財政のひっ迫等を背景にまとめると、やや大げさに聞こえるかもしれないが、アドヒアランスを制することで、将来、医療システムの安定供給を手に入れられると考えられる。すなわち、医療制度において国民のもっとも重要な財産(価値)を安定供給と見なした場合、アドヒアランスの向上が大きな価値を育むことになる。

田倉 智之(たくら・ともゆき):博士(医学)、修士(工学)東京大学 大学院医学系研究科 医療経済政策学講座 特任教授。1992年に北海道大学大学院工学研究科修了。東京大学医学部の研修を経て、2010年より大阪大学大学院医学系研究科 特任教授。2017年より現職。厚生労働省(中医協)費用対効果評価専門組織 委員長、内閣府 客員主任研究官、大阪大学医学部招聘教授、東邦大学医学部客員教授、日本循環器学会 Circulation Reports Associate Editor、日本心臓リハビリテーション学会 評議員など歴任

 

*Adherence Score for Healthcare Resource Outcome

【文献】

1 Takura T, et al. Development of a predictive model for integrated medical and long-term care resource consumption based on health behaviour: application of healthcare big data of patients with circulatory diseases. BMC medicine. 2021;19(1):15.

2 Cleemput I, et al. A review of the literature on the economics of noncompliance. Room for methodological improvement. Health Policy. 2002;59:65‒94.

3 Robertson CT, et al. Distinguishing moral hazard from access for high-cost healthcare under insurance. Plos One. 2020;15:e0231768.

4 Neiman AB, et al. CDC grand rounds: improving medication adherence for chronic disease management̶innovations and opportunities. MMWR Morb Mortal Wkly Rep. 2017;66:1248‒51.

5 Hassanally K. Overgrazing in general practice: the new tragedy of the commons. Br J Gen Pract. 2015;65:81.

6 Porco TC, et al. When does overuse of antibiotics become a tragedy of the commons? Plos One. 2012;7:e46505.

【IT相談室】 歯科医院の効果的なチャットアプリ活用と労働基準法の遵守 その1

近年、SNSやチャットアプリ(以下、SNSなど)がコミュニケーション手段として広く活用されるようになりました。歯科医院においても業務の効率化やスムーズなコミュニケーションの手段として活用するケースが増えています。しかし、SNSなどを活用した業務連絡等については、一斉に連絡ができるなど便利な反面、注意しなければいけない点があります。これらの点について解説し、適切な運用方法について考えてみましょう。

【労働条件とチャットアプリの関係】

労働基準法は、労働者の権利保護と健全な労働環境の確保を目的として制定された法律です。この法律に基づき、就業規則や労働契約などが結ばれ、賃金や労働時間、休憩時間など労働条件が定められます。さて、労働基準法や就業規則、労働契約など(以下、労働基準法等)で定められている就業時間とは、始業時刻から終業時刻までの時間のことであり、使用者の指揮命令下に置かれている時間をいいます。休憩時間や終業時刻以後の時間は、労働者は使用者の指揮命令下にはありません。このことを念頭に少し考えてみたいと思います。

【就業時間との関係】

就業時間外にSNSなどを使って業務連絡を行う場合には注意が必要です。仕事に関する連絡は簡単な場合であっても〝仕事〞であり、賃金支払いの対象となります。また、就業時間外に送られたSNSなどの連絡を「見なければいけない」「必要に応じて返信をしなければいけない」など、あらかじめ定めておく必要もあります。これらを事前に定めておくことで、業務連絡としての活用が可能となるでしょう。これらの取り決めがない場合は、見るも見ないも受け手任せになり、業務連絡としての役割を果たすことができません。また、緊急連絡としての機能も果たせなくなります。前提として、就業時間外にSNSなどを利用した業務連絡を行う場合には、時間外労働・休日労働に関する協定(36協定)の締結・届出が必要になります。36協定の締結・届出がない場合には、就業時間後や休日にSNSなどを活用した業務連絡は違反行為になりますので注意が必要です。

【自己判断による労働の回避】

SNSなどで業務連絡を行ったところ、スタッフが気を利かせて、就業時間外に自主的に翌日の準備を行った。仕事への意欲については褒めたいところですが、この場合も時間外労働として賃金が発生する可能性があります。明確な指示はなくとも、SNSなどの連絡が〝指示〞と取られれば、時間外労働と解釈されかねません。

【利用の制限】

36協定を締結・届出し、SNSなどの利用について取り決めをしてもそれだけでは不十分です。先輩スタッフが後輩スタッフに、就業時間外にSNSなどを活用して仕事のアドバイスをするなども考えられます。就業時間外にメモのつもりで行ったSNSなどの投稿を見た後輩スタッフが、そのことでやり取りを行うなどした場合には、業務と取られる可能性があります。

クレセル株式会社

(東京歯科保険医新聞20239月号11面掲載)

※「東京歯科保険医新聞」7月号の「IT相談室」はお休みました。

【IT相談室】 マイナンバーカードの不具合

今年に入ってからマイナンバーカードについてのニュースを聞かない日はありません。今回は一体、何が起きているのかを確認したいと思います。

最近、一番多いケースが、「他人の情報に紐づけられて間違った情報が表示される」もしくは「誤って紐づいた口座にお金が振り込まれる」などの「個人の誤認」です。

そもそもマイナンバーカードは、当初、住民基本台帳と似たような機能を担うことを想定して設計されていました。主に行政サービスを受ける際の本人であることの証明や、個人データへの参照の鍵とすることが目的でした。

個人に関する情報は、国、都道府県、区市町村などがそれぞれ個別に管理しています。これをマイナンバーカードを鍵として、ばらばらに管理された情報を統合するのではなく、それぞれを「連携」させることで参照できる仕組みとすることが狙いです。

今では銀行口座、健康保険証、今後は運転免許証とも連携します。

この「連携」は国、都道府県、区市町村など別々のデータベースに接続していくので非常に煩雑で「間違い」「誤解」「うっかり」などの人的なミスが多く起こり得ます。このため、連携システム構築作業の中に「徹底したテストと改善」を実施する必要があります。今の問題は、それができていないために起きているのであり、設計段階の問題とも言えます。そしてここまで大規模な情報連携の経験を誰も持っていないことも根本的な問題です。

元々、マイナンバーの設計を行った時点で、ここまで広範囲に連携を行うことが計画されていたなら、もっと準備も上手にできたことでしょう。締切だけ決まっていて計画もなく、とりあえずスタートさせるという流れに、どの自治体の担当者も追い立てられているのではないでしょうか。さまざまな情報との連携を包括的に考え計画を立てなければ、今後もこのような問題の発生は必ず続きます。まさにⅠT系の「あるある」です。

さて、ここからは実際に歯科医院内で似たようなトラブルが起きた場合のお話です。

トラブルが起きた時には、院内の操作や機械に問題があったのか、それともデータベースの情報連携に問題があるのか、現場スタッフは瞬時に判断ができないので一時的な混乱が予想されます。

「他人の情報が表示される。本人の情報が参照できない」という場合はデータベースの情報連携に問題がある場合が多いです。さまざまなトラブルを想定して、現場スタッフは焦らず騒がず対処できるように、日頃から院内でのコミュニケーションを取っておくとよいでしょう。

クレセル株式会社

(東京歯科保険医新聞20238月号4面掲載)

※「東京歯科保険医新聞」7月号「IT相談室」はお休みしました。

【教えて!会長!! Vol.74】 半世紀を迎えて

協会設立から50周年とのこと。

東京歯科保険医協会は、国民皆保険制度を守るとともに、保険診療の充実を図るため、歯科保険医の要望に応えるべくして50年前にスタートし、50周年を迎えました。過去から現在までのすべての会員の先生方、事務局員、そして協会にご協力、ご支援を賜った方々に対し、協会を代表して心から御礼申し上げます。直前に迫っておりますが、2023年9月10日(日)に都市センターホテル(千代田区平河町)で東京歯科保険医協会設立50周年記念として、記念シンポジウムならびに記念レセプションを開催します。「これからの歯科を考える」と題しての記念シンポジウムに引き続き、記念レセプションでは参加されたすべての方に記念品のプレゼント、また豪華景品が当たる抽選会、ミニデンタルショーなどを企画しました。詳細は、このホームページにも記載しています。スタッフやご家族の方も無料で参加できます。協会が設立以来半世紀を迎えることができたことを多くの方をお迎えし、ともに喜びを分かち合いたいと思います。奮ってご参加のほど、よろしくお願い申し上げます。

協会の経緯と現状を教えてください。

今から50年前、第1回の総会は1973年4月22日に開かれ、当時の会員数は180名と記録されています。そして、10年前となる40周年に作成した記念誌「『現在過去未来へ』2」に、当時の松島良次会長が挨拶文で「あと数十名で歯科会員5,000名となる予定」と記されています。すなわち、40年間で約28倍の会員数となり、東京都の多くの歯科医師の先生方にとって協会が必要とされてきたことが分かります。

本年6月18日に第1回から数えて51回目の第51回定期総会が開催され、その直前に会員数は6,000名を超え、現在の会員数は、6,024名(2023年8月25日現在)と直近10年間で1,000名以上の先生がご入会されました。この会員増は、さまざまな要因がありますが、その一つには既会員の先生からのご紹介によるものも少なくありません。新たな会員をご紹介いただいた会員の先生に対して、この場をお借りして感謝申し上げます。

現在の協会は、日々の保険診療についての会員の疑問に答えるとともに、開業医の医院経営のサポート・共済保険・税務・学術・スタッフ教育・平和運動まで幅広い活動を行っています。保険請求のサポートのため「電子書籍デンタルブック」を無料提供し、さらに行政などが発する情報を速やかに共有するため、デンタルブックニュースとしてメールで随時会員に配信しています。

一方、厚生労働省や東京都に対しては一人の歯科医師が個人で意見を届けることは容易ではありません。そこで、特に保険制度や歯科医業にかかわる要望を中心に協会は、多くの歯科医師で構成されている一団体としてさまざまなアプローチを行っています。それらのアプローチをするためには、バックアップするツールが必要です。例えば、会員アンケートの結果、あるいは先生方に署名していただいた紙署名用紙の束を持って、国会議員や行政に会員の声を要望として届けています。今後もご協力よろしくお願い申し上げます。

また、歯科界のあらゆる情報をチョイスして、できるだけ迅速に会員へデンタルブックニュースとしてメール配信、あるいはFAX、協会ホームページなどを通じて発信しています。その際、行政などから発出される少し難解な文章を平易に解説し、さらにその文章の裏、そしてその先を読んだ上で、情報を会員と共有することに努めています。来年は改定年度で「トリプル改定」が行われますので、先生方にとって情報を知ることが特に重要と言えます。

我々は、2020年前半から長期に渡って新型コロナ感染症による影響を受けてきていす。そして、本年になってオンライン資格確認の原則義務化、マイナ保険証への対応、電子処方箋の導入、続けてオンライン請求の義務化、そして電子カルテの導入など、さらに順番にさまざまな項目が強制されることが予定されています。すなわち、歯科保険医の環境は現在から将来に向かって、対応が困難となる可能性がある案件が控えています。協会は会員のため、これらの案件への対策、対応を行う所存です。

未だ会員になられていない先生がいらっしゃいましたら、ぜひ入会をご検討ください。

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これからも東京歯科保険医協会は、歯科医師が保険で安心してきちんとした診療が日々できるよう、そして患者・国民から信頼される歯科診療を提供するためのサポートを行なっていきます。重ねて半世紀と長きに渡って協会を大きく成長させてくださった先輩方や会員の先生方に心より感謝申し上げます。今後も協会のさらなる発展のためご協力をよろしくお願い申し上げます。

東京歯科保険医協会

会長 坪田有史

(東京歯科保険医新聞2023年9月号8面掲載)

【教えて!会長!! Vol.73】 「電子カルテ」とは その3

さらに「電子カルテ」について教えてください。

電子カルテについて、これまで639号から2回にわたって取り上げてきました。電子カルテには先月号で解説した「電子保存の三原則」である「真正性」「見読性」「保存性」を備える必要があります。また、「電子保存の三原則」とともに「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」にも対応していなければなりません。電子カルテに詳しい識者の方にお聞きしたところ、歯科において「電子保存の三原則」ならびに「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」に準拠し、適切に許容できる市販システムは、現時点では数少ないとのことでした。

「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」とは?

厚生労働省が策定した「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」とは、個人情報の中でも厳重な保護が必要とされる患者の電子カルテなどの医療情報を適切に管理するために国が定めたガイドラインです。本ガイドラインは、2005年に第1版が公表され、患者の個人情報を守るため、個人情報保護法、e文章法、医療法、医師法などを根拠として作成されています。なお、改正個人情報保護法の施行など、法律の改正に合わせて版を重ね、直近のガイドラインは、本年5月に「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン第6.0版」として公表されています。本改定は、本年4月から保険医療機関・薬局でオンライン資格確認の導入が原則義務化されたタイミングでネットワーク関連のセキュリティ対策がより多くの医療機関などに求められるため、実施されました。すなわち、保険医療機関としてガイドラインの理解が求められています。ガイドラインの詳細は、下記QRを読み込みご覧ください。

電子カルテに変更を余儀なくされるのはいつ頃ですか?

2030年に普及率90%という数字が示されていますが、未だ不明ですし、歯科では難しいのではないかと思います。歯科医療機関の経済的な問題以外に、理由の一つとして医科に比較してレセプト作成と連動させる必要性がある歯科にとって、標準化した規格を作成することのハードルが高いのではと考えます。したがって、電子カルテは現時点ですぐに対応しなければならない訳ではありませんが、オンライン資格確認の導入から始まった国が考える医療DXの先にある「電子カルテ」について、本会は情報収集、知識向上を今後も図っていきます。「電子カルテ」が現在使用しているレセコンに代わって原則義務化となり、強制的に導入しなければならなくなった時、国に正しい意見、要望ができるよう、さらに会員に明確に説明できるよう今後も準備を進めます。会員の先生方におかれましては、質問あるいはご意見があれば本会までお寄せください。

東京歯科保険医協会

会長 坪田有史

(東京歯科保険医新聞2023年8月号8面掲載)

【教えて!会長!! Vol.72】 「電子カルテ」とは その2

 今、なぜ、電子カルテを取り上げるのですか。

前号の電子カルテの普及率には、驚きました。前回の続きで電子カルテについて解説します。今年4月の中医協総会で「医療DX」として全国の医療機関・薬局において、電子カルテ情報の一部の共有、閲覧を可能とする電子カルテ情報交換サービス(仮称)の構築に取り組み、医療機関における標準規格に対応した電子カルテの導入を推進することが示されました。「診療報酬改定DX対応方針取組スケジュール(案)」では、病院、診療所、薬局などが対象であることが示されており、診療所の対象には歯科の表記があり、歯科医療機関にも電子カルテの導入が予定されています。

医療機関に光回線によるオンライン環境を構築させるためのオンライン資格確認システム、マイナ保険証、そして環境構築後にオンライン請求、電子処方箋と、次々に強権的な義務化が予定されています。これらの先に、電子カルテ導入が予定されています。

前号の電子カルテの普及率には、驚きました。

厚労省の医療施設調査の結果を示しました(下記参照)。直近の2020 年(令和2年)の調査(聞き取り調査)では、歯科診療所の電子カルテの普及率は48.7%と示されています。先日、協会会員の新規開業医相談会において、事前アンケートでの「カルテの作成方法は?」との問いに対し、電子カルテを導入していると回答された先生を担当させていただきました。お話しを聞いたところ、電子カルテではなく、レセコンから紙に印刷されていました。なお、その時の相談者全体で事前に電子カルテを導入していると回答された会員は6月13日時点で46%でしたが、すべての会員が電子カルテでなく、レセコンでの対応でした。したがって、多くの方がレセコンと電子カルテを間違えて認識されていることがわかります。恣意的ではないにせよ、行政側が現実とまったく違う数字を利用して電子カルテ導入を推し進めることができないようにすることが必要です。したがって、電子カルテとレセコンを間違えないよう、ご確認をよろしくお願い申し上げます。なお、協会は近々、厚労省に対して、正確な調査を行うように要請する予定です。

「電子保存の三原則」とは。

従前、紙媒体による管理が義務付けられていた診療録などが、1999年(平成11年)4月の厚生省通知「診療録等の電子媒体の保存について」によって規制緩和され、いわゆる「電子保存」が認められました。この通知では、医療情報システムの安全管理に加えて、診療に供する情報を扱うため、医療固有の要求事項が示されています。これが「電子保存の三原則」と呼ばれ、「真正性」「見読性」「保存性」の3つの要件で構成されています。

「真正性」とは、第三者からみて作成者の責任の所在が明確であり、かつ、書き換え、消去・混同、改ざんを防止していることです。また、記名・押印が必要な文書については、電子署名、タイムスタンプを付すことが必要です。

「見読性」とは、診療に用いるのに支障がないことと、監査などに差し支えないようにすることで、必要に応じて肉眼で見読可能な状態にできること、直ちに書面に表示できることです。

「保存性」とは、記録された情報が法令に定める保存期間内、復元可能な状態で真正性を保ち、見読できる状態で保存されることです。

将来、電子カルテの導入を強いられた時のため、電子カルテを十分に理解した上で、正しいカルテの記載や算定要件に沿った請求を知識として持つ必要があります。そして協会は、導入費用やランニングコストなどの歯科医業に関係するさまざまな問題に対して、現場の意見を行政側に訴えていきます。

 

東京歯科保険医協会

会長 坪田有史

(東京歯科保険医新聞2023年7月号8面掲載)

 

歯科界への私的回想録【NARRATIVE Vol.12】 「口唇口蓋裂議員連盟」が会合/槇昭和大歯科病院長が講演/歯科から島村議員が参加

▼設立は6月20日

自民党・公明党の与党による「口唇口蓋裂議員連盟」の設立総会が620日に行われ、初会合を開催した。役員として、会長には衆議院の橋本岳議員(自民党)、事務局長に細野豪志議員(自民党)、事務局次長に吉田宣弘議員(公明党)、幹事に山本博司議員(公明党)、顧問には野田聖子議員(自民党)が、それぞれ選任された。

▼7月27日に第2回会合

続いて同議連は727日、参議院議員会館内の会議室で第2回会合を開催した。今回は、昭和大学歯科病院長で同大特任教授も務める槇宏太郎氏が講師に招かれ“口唇口蓋裂”について講演を行った。

会合は、吉田事務局次長の司会で進められ、特に口唇口蓋裂の課題として、前回、指摘された内容を集約した。「現在18歳未満は育成医療、18歳以上は更生医療に分類されている。その一方で、顎修正手術並びに手術後の歯科矯正治療は身体の成長がほぼ完了する18歳以降が望ましいとされているが、現在の更生医療制度下での身体障害者手帳の取得が取りづらい」などと指摘。患者側からも「育成医療の年齢期限延長」などを求める声があることを紹介。こうした社会的な課題に対し、臨床的な発症(生誕)からその後の成長過程に伴う口唇口蓋裂症状への対応について説明を行った。

▼昭和大歯学部病の槇院長の講演内容

一方、槇病院長は、口唇口蓋裂学会理事長を歴任した経験から、改めて口唇口蓋裂の形成外科・口腔外科から矯正歯科診療を臨床的な視点から説明。まず「外科的診療のその技術も発展してきている。日本のレベルはトップクラスであると思われる。矯正歯科も上顎と下顎の成長速度が違うので、下顎が前に出てしまうのです。その問題への対応が重要ですが、そのレベルも良くなっています」としつつ、「障害者総合支援法、自律支援医療(更生医療・育成医療)」についても併せて説明。特に、障害者総合支援法の対象として区市町村が実施主体になる“自立支援医療”にも言及し、「対象は18歳未満で、音声、言語、咀嚼機能障害のある児童であること」などを紹介した。

講演後に行われた質疑応答では役員(議員)の橋本会長から「育成医療・更生医療の適用には規定があるが、口唇口蓋者の治療が終える術後の年齢が2326歳となるとその差のギャップをどう理解するのか」との質問があり、続いて、自民党参議院の島村大議員が「治療期間のことを考えると、ある程度の期間が必要。具体的には夏休みなどになるが、生徒には大事な教育もあるため、その点への配慮が必要」と指摘した。

そのほかの参加議員からは、「育成医療・更生医療の適用年齢の延期への課題は何か」「日本口蓋裂学会の認定制度が2019年度からスタートしているが認定医は全体のどの程度を占めているのか」などの質問があった。

▼友の会会員からは本音を交えた報告が

さらに、口唇・口蓋裂友の会会員からは、「診療できる病院も限定されているのが現実。都市部と地方では違いがあります。手術後の診療の対応がバラバラです」「まだ、社会に知られていないのも事実。紹介された診療所で『本院では診られない』と、断られることもありました」など、現状からの意見を交えた報告が行われ、その改善項目を役員に訴えた。

▼育成医療と更生医療の課題検討を再確認

なお、今回の会合では、特に行政・法律面からの指摘がクローズアップされたが、育成医療(18歳まで)と更生医療(18歳以上)への理解・課題などが、さらに議論を詰める必要があると各議員から再確認され、衆院法制局からも、「今後のこの年齢規定の件、厚労省と議論すべく申し入れしています」と報告された。内閣提出法案と議員立法の相違と適否などについて、専門の立場からの説明も行われた。

歯科医療界ではあまり話題にならない「口唇口蓋裂」ですが、議連の活躍に期待します。 ただ、私の立場からは、患者関係者には、さらに歯科への理解を願うばかりです。

 

✎奥村勝氏プロフィール

おくむら・まさる オクネット代表、歯科ジャーナリスト。明治大学政治経済学部卒業、東京歯科技工専門学校卒業。日本歯科新聞社記者・雑誌編集長を歴任・退社。さらに医学情報社創刊雑誌の編集長歴任。その後、独立しオクネットを設立。「歯科ニュース」「永田町ニュース」をネット配信。明治大学校友会代議員(兼墨田区地域支部長)、明大マスコミクラブ会員。

歯科界への私的回想録【NARRATIVE Vol.11】 3年半ぶりの対面形式メディア懇談会の意義/痛感した意見交換・雑談の「忘れてはいけない価値」

◆通算96回目のメディア懇談会

7月14日、東京歯科保険医協会が2023年度第2回メディア懇談会(メディア懇)を開催しました。083 18日の初開催以来、通算96回目とのことでした。今回は参加に当たり、会場における対面形式とオンライン形式(Zoom)の選択を可能としました。コロナ禍による203月のオンライン開催以後、実に3年半ぶりとなる会場対面形式によるメディア懇に出席しました。早坂美都副会長の司会、坪田有史会長の報告・解説で進められました。

この日の議題は、①マイナ保険証・オン資トラブル関連( 今後の協会の動向)、国会要請、署名、メディア懇直近の会員からの問い合わせ、②オンライン請求義務化撤回関連(社保・学術部長談話)、③東京都2024年度予算要請関連、④第51回定期総会の開催後報告関連、⑤50周年記念企画―などでした。内容は、協会広報・ホームページ部のまとめ記事に譲ります。

〝対面(会場)〞で参加しますと、毎回熱心な一般紙マスコミの記者諸氏、そして今回、新たな新聞社の記者参加もあり、リアルで新鮮な印象がありました。常連諸氏とは早速、挨拶・雑談を交わしました。そこで、改めて〝対面形式の意義〞を考察してみました。

◆改めて問う対面式の意義

主催者(司会)側からの報告と説明が終わると、質疑応答を開始。マスコミ側から「問題の評価」「事実の確認」「今後の活動」などが質され、主催者側が丁寧に回答。貴会の見解を確認しました。

◆一般紙と専門紙の相違

ここで、懸念される一般マスコミと業界マスコミの違いが確認できましたので指摘しておきます。マイナ保険証・オン資トラブル関連は、本質的には医療機関の共通問題です。ただし「歯科と医科の経済的・診療形態などの背景に相違があることを一般マスコミはもっと理解してほしい」と痛感しました。また、マスコミからの質問に、回答する側の表情・表現・言葉、ニュアンスから、見えない「情報」も得られました。これが「対面形式の意義」の一つです。

また、メディア懇開始前と終了後の雑談からも〝新たな情報〞を得ることができました。本音として、これがマスコミ関係者には非常に重要になります。質問に対する回答によっては、憶測・推測が働き、次の質問や問題意識に影響を与える場合もあります。

◆オンライン形式の効果

諸事情で会場参加できない・しない場合には、確かにオンライン形式の意義があります。まさに進化した文化の恩恵です。同時にネットから配布資料を得られるよう配慮されていますので対面形式と同様になり、経費・時間などの点からは、その効果は明確です。

さて、618日に開催された貴会総会の中で、記念講演会を行った社会保険診療報酬支払基金理事の山本光昭氏が興味深い報告をしていました。行政へのアプローチ方法として、①業務関係の手続きからアプローチ、②法人幹部の出身高校や大学の同窓のルートを通じる、③様々な講演会、セミナーなどで、これはと思える行政官の講師がいた場合、すばやく名刺交換―と強調していました。特に大事なのは、③で指摘している〝名刺交換〞です。これは、対面形式のメディア懇談会(記者会見とは様相が違います)でも指摘できます。

◆枠を超える〝縁〞とは

今回のメディア懇では、新たに参加したマスコミ記者諸氏と名刺交換。挨拶を含め意見交換しました。もちろん社交辞令で終わることもありますが、それは承知の上です。今回、来場しなかったマスコミ関係者は新規記者と〝縁〞ができませんでした。やはり、関係当事者と直接、意見交換・雑談することで人間関係ができ、時には、想定外に意味がある話を聞くこともできたりします。そして、年齢、性別、派閥、組織、職階、さらには国境などの枠を超えたタテとヨコのつながり、点と線のつながりが面に拡がり、ネットワーク化し、広い人脈形成へと発展して行くことが多々あります。

現在行われているFacebookLINE、各種SNSなどによる連絡、情報提供、意見交換、これはまさに世界の潮流です。一方で「効率第一」「無駄の排除」を最優先とする価値観が社会を占めています。だからこそ、人と人との意見交換・雑談の意味が、「忘れてはいけない価値」だと痛感したのが、今回のメディア懇談会でした。

 

✎奥村勝氏プロフィール

おくむら・まさる オクネット代表、歯科ジャーナリスト。明治大学政治経済学部卒業、東京歯科技工専門学校卒業。日本歯科新聞社記者・雑誌編集長を歴任・退社。さらに医学情報社創刊雑誌の編集長歴任。その後、独立しオクネットを設立。「歯科ニュース」「永田町ニュース」をネット配信。明治大学校友会代議員(兼墨田区地域支部長)、明大マスコミクラブ会員。

歯科界への私的回想録【NARRATIVE Vol.10】 口蓋裂診療の「チーム医療」から学ぶ/主体は形成外科医・口腔外科医・矯正歯科医・言語聴覚士など

歯科にある学会の中で特異な学会であるのが一般社団法人日本口蓋裂学会である。その総会・学術集会が52526日の両日、東京・千代田区の一橋講堂(総合学術センター)で開催された。一般臨床家からは、関心の低い臨床分野であるが、疾患は500人当たり1人(0.2%)が罹患する先天性疾患である。そうした疾患を対象に研究する学会であり、三十余名の会員数から構成されている。臨床では、医師、歯科医師、言語聴覚士、心理職など多職種が担い、歯科の分野では、主に口腔外科、矯正歯科、小児歯科、歯科衛生士、歯科技工士が担っている。

また、患者(患児)本人とその家族が集うグループが全国各地にあり、例えば「口友会」(東京)、「たんぽぽ会」(愛知)、「笑みたち会」(大阪)などが地味ながら活動しており、そこでの参加者間の交流が貴重な時間になっており、ここが大きな特徴だ。「同じ立場の人とは話がしやすいし、気が紛れましたので、精神的には落ち着きましたね」(東京・Y氏)、「生を授かった後、不愉快な経験をされた人もいるかも知れません。しかし、当時の関係者に歯科医師等がいらっしゃり、本当にお世話になりました」(大阪府・K氏)は、振り返りながらコメントしていた。基本的には、「臨床・予後を通して歯科医師ほか関係者に感謝」というものであった。

▶口唇口蓋裂診療は〝チーム医療〞が要諦

こうした背景がある学会から、見えて来る姿もあった。今回、講演・示説の演題(70題)から私が確認したのだが、演題を多く発表した順で見ると、阪大11、東医歯大8、昭和大8、東北大7、愛知学院大7、九大5、大阪母子医療センター5であった。当然であるが、研究・臨床の主となる大学は、歴史、地域性、同系病院の存在などの条件もあり、今回の学術大会の演題における研究症例報告数だけで評価は論じられないが、患者視点からすれば、全国のどの地域でも気兼ねなく相談・受診できることが望ましい。その点については、現在はネット社会であり随分改善されてきている。臨床対応で実績・評価を得ているのは、昭和大、愛知学院大、大阪母子医療センターなどである。口唇口蓋裂診療はチーム医療が要諦とされているが、前記の専門職のチーム医療で対応をしている。某教授は「口蓋裂症の診療は、ある意味でチーム医療をしていくのが大前提で、さらに、患児の家族との理解・相互信頼がないと診療ができません」と述べている。

▶何気ない当たり前のことが重要

当日の学会では、「言語聴覚士の集い」が企画された。座長の井上直子氏(言語聴覚士/大阪母子医療センター)と佐藤亜希子氏(帝京平成大学講師)から、その意図が説明され、「乳幼児から成人期までの言語管理が環境整備、言語評価・訓練などステージに応じた役割があります。臨床は医療施設だけでなく、福祉・教育施設などさまざまであり、多岐にわたっています」。そこで言語管理を指摘されると、私自身がそうでしたから、2019年の新潟大会で、赤神周子氏(言語聴覚士/鳥取大学医学部歯科口腔外科)が、口蓋裂児の鼻咽腔閉鎖機能の課題に言及したことを思い出す。「口腔機能の増加は、当然ながら食事・会話を支え、社会生活を支える基本です。乳幼児からこの問題に関係する〝発音・構音〞は重要です。まさに、形成外科医・口腔外科医・矯正歯科医・言語聴覚士などの〝チーム医療〞が大切です。出生前診断、手術、構音構築、患児の精神成長など個々のステージでの対応・連携がシームレスに実施されることが重要」と強調していた。さらに、コロナ禍での生活から学んだことと共通するのが、何気ない当たり前のことがいかに重要なのかという点であり、これを再認識してほしいです。

補足となるが、保険適用となる歯科分野の先天性疾患としては、顎変形症、唇顎口蓋裂、6歯以上の先天性部分(性)無歯症、口腔・顔面・指趾症候群、その他顎・口腔の先天異常(顎・口腔の奇形、変形を伴う先天性疾患であり、当該疾患に起因する咬合異常について、歯科矯正の必要性が認められる場合)などがある。

▶関連議員連盟が発足

世間、巷間では〝見た目が一番〞という言葉が躍る時もあり、複雑な気持ちになるのも口唇口蓋裂患児(患者)の本音で悩みは尽きない。

こうした中で、与党の国会議員有志が620日、「口唇口蓋裂議員連盟」を設立したニュースが舞い込んできた。今後の活動は詳細には不明だが、患者の視点に立った活動に期待したい。

なお、会長には橋本岳衆院議員(自民)、事務局長には細野豪志衆院議員(自民)が就いたという。

 

◆奥村勝氏プロフィール

おくむら・まさる オクネット代表、歯科ジャーナリスト。明治大学政治経済学部卒業、東京歯科技工専門学校卒業。日本歯科新聞社記者・雑誌編集長を歴任・退社。さらに医学情報社創刊雑誌の編集長歴任。その後、独立しオクネットを設立。「歯科ニュース」「永田町ニュース」をネット配信。明治大学校友会代議員(兼墨田区地域支部長)、明大マスコミクラブ会員。

【Health Care】 No.2 医療価値評価は必要か、論じるのは難しいのか

医療経済学の専門家で東京大学大学院特任教授の田倉智之氏による連載の2回目。今回のテーマは「医療価値評価は必要か、論じるのは難しいのか」。

 やや僭越であるものの、読者である医療関係者の多くは、「医療価値」について深く考える機会は、さほど多くないと拝察する。一方で、医療システムの課題にまつわるニュースを見聞きする時に、その解決策の一つとして、医療価値が語られているのに気が付く場合もあるはずである。つまり、医療制度の綻びや不条理、または医療経営の本質や不満の議論などにおいて、医療価値は述べられることが多い傾向にある。例えば、診療報酬の水準に関わるステークホルダー間の討論は、医療価値に対する相互の認識の差異が背景にあり、それが顕在化したケースとも考えられる。特に最近、高額な医薬品などの薬価収載では、製造販売業者から行政当局者へ不満が述べられる時に、医療価値的なキーワードが挙げられることも増えている。ただし、この医療価値を臨床経済面から具体的かつ科学的に示すことは、一筋縄にはいかず、議論が噛み合わない場合も多い。今後、医療介護の発展や国民福祉の向上のために、さらなる経済投資や資源整備が必要になるが、それを目指すには、ステークホルダー間で合理的な合意形成が重要になると、前回述べた。それに対して重要な役割を果たすと期待されるのが「医療介護の価値評価」である。そこで今回は、この価値評価について、健康や生命を扱う医療介護分野の特性も考慮しつつ、学際的な観点から、その考え方を整理してみる。実体経済(リアルワールド)を標榜した医療価値の議論においては、一般に、費用対効果分析と限界効用理論を応用することで、医療サービスが有する価値の評価が限定的ながらも可能になる。その主な理論を次に概説する。通常、ミクロ経済学では、基礎的な効用理論を背景とした需給均衡に基づいて価格が収斂し、サービス提供の効率が最大化される[]。また、この需要と供給が均衡した価格は、価値を体現するとみなされる。

一方、公益性の高い医療分野においては、効率性も考慮しつつ衡平性(wellbeingなどのバランス)の視点を取り入れ、患者の診療要望(選好、支払意思)と政府の医療財政(所得再配分、財政収支)の調和を念頭に公益的な価値を論じる必要がある。したがって医療の価値は、厚生経済学なども背景に、個人と社会の関係も織りまぜながら、健康プログラム単位あたりの効用(健康成果)と費用(資源消費)の変位のバランスを検討することになる(図1)[ ]。その結果、ある予算範囲内で効用を最大化すると、そのパフォーマンスが高いほど集団全体の効用が大きくなり、利害関係者の「価値」が高まることになる。この医療における価値評価のアプローチは、他の概念的な議論に比べて、実体経済や日常生活(国民コンセンサス)の価値観(例:1QALY*当り600万円前後)との整合性も比較的取れるため、公的部門における医療サービスの価値を検討するのに適していると考えられる[]

 

例えば、患者の医療費が年間約500万円で財政負担が1兆6千億円程度の規模の「末期腎不全患者」に対する透析医療について、その価値を評価した本邦の報告がある(図2)[ ]。その研究の意義を整理すると、救命や健康の社会経済的な価値を定量的に示した(費用対効果:約650万円/QALY)ことが挙げられる。すなわち、年間医療費が高額であり財政負担が大きくても、国民の価値判断の基準から眺めると、診療報酬の水準は適切であると理解される訳である。

田倉 智之(たくら・ともゆき):博士(医学)、修士(工学)東京大学 大学院医学系研究科 医療経済政策学講座 特任教授。1992年に北海道大学大学院工学研究科修了。東京大学医学部の研修を経て、2010年より大阪大学大学院医学系研究科 特任教授。2017年より現職。厚生労働省(中医協)費用対効果評価専門組織 委員長、内閣府 客員主任研究官、大阪大学医学部招聘教授、東邦大学医学部客員教授、日本循環器学会 Circulation Reports Associate Editor、日本心臓リハビリテーション学会 評議員など歴任

*注釈)

QALY:質調整生存年(完全な健康水準で1年間の生存を確保する単位/2019年度より公的医療保険制度に導入された概念で、1QALY当り500万円~750万円が評価基準)

【文献】

1] 田倉智之. 医学書院. 2021.

2 Tomoyuki Takura.IntechOpen. 2022.

3] 田倉智之. 日本看護協会出版. 2023.

4 Tomoyuki Takura, et al. Clinicoecon Outcomes Res. 2019.

【Health Care】 No.1 医療介護システムの発展に不可欠な視点とは

医療経済学の専門家で東京大学大学院特任教授の田倉智之氏の連載を始める。全6回にわたり、医療介護システムの発展、費用対効果評価や、診療価値と病院経営などをテーマとする。第1回は「医療介護システムの発展に不可欠な視点とは」—。

医療介護分野は、誰もができるだけ低い経済負担で、公平に診療やケアを受けられるようにすべきである。そのため、世界の多くの国では、1978年のアルマ・アタ宣言などにならって、多かれ少なかれ医療介護分野を公的制度として整備してきている。一方で、近年注目を集めるユニバーサルヘルスカバレッジ(UHC)の推進には、社会経済的な要因が大きな影響を及ぼすことも明らかとなっている[1]。すなわち、医療介護の環境整備において、臨床と経済の調和が望まれている訳である。また、医療介護分野の進歩に影響をおよぼす各種イノベーションも、社会経済的なメカニズム(バリューチェーン)をとおして、UHCと関係が深いことが示唆されている[2]。以上のように、今後の医療介護システムの発展には、臨床的な議論を中心としつつも、経済的な側面を論じることの重要性が増している。

ではなぜ、近年において医療経済的な要因が顕在化してきたのかを考えると、次のような医療介護分野を取り巻く潮流が挙げられる。一つ目は、言うまでもなく社会保障財源のひっ迫である(図1)。この背景は至極簡単で、医療や介護の需要増加(高齢化の進展)と実体経済の伸び悩み(GDPの停滞)が大きな割合を占める[]。二つ目は、治療技術のイノベーションとその超高額化である。この両者を合わせると、数量増加と単価上昇により、国民医療費等が膨らんでいくことは容易に想像される。一方で、現役世代の人口減少と経済負担の許容水準から、保険財源の収入が追い付いていないようである。結局のところ、受益と負担のバランス低下が根源と考えられる。これらを俯瞰すると、将来の医療介護システムの発展に不可欠な視点は、おのずと明らかになってくる。そのキーワードは、価値評価と健康行動である。

まずは、医療介護システムの価値(存在意義)を、ステークホルダーの間で再認識する必要がある。その価値をUHCの理念も絡めて一言で表すと、「安定供給」となる。享受をしているからこそ認識できる価値(診療)のみならず、失ってみて初めてわかる価値(健康)は、この概念で整理がなされる。このように考えると、医療価値等を評価し関係者で共有することは、国民や患者の負担の議論のみならず未来に向けた医療介護のかじ取り(意思決定)に

おいて、計り知れない意義がある。さらに、価値に見合った行動変容を促える。特に、アドヒアランスの見える化とそのコントロールは、健康寿命や社会経済に大きな恩恵をもたらすと期待される[](図2)。

最近、医療保険制度に導入された効用値をアウトカム指標とする費用対効果評価や、介護保険制度に導入された介護サービスの質の評価と科学的介護の取組の推進は、間接的ながらも、上記のようなコンセプトに連なる施策であると想像される。

文 献

1) Tomoyuki Takura, Hiroko Miura. Socioeconomic Determinants of Universal Health Coverage in the Asian Region. Int. J. Environ. Res. Public Health. 2022; 19(4):2376.

2) ユニバーサルヘルスカバレッジと医療革新. 東京大学22世紀医療センターシンポジウム. 2023. http://sympo-ut-22c.umin.jp/2023/pdf/2023-4.pdf (Access: 2023.03.07)

3) 田倉智之. 医療の価値と価格-選択と決定の時代へ. 東京. 医学書院; pp.0-276. 2021

4) Tomoyuki Takura, Keiko Goto, Asao Honda. Development of a predictive model for integrated

medical and long-term care resource consumption based on health behaviour: application of

healthcare big data of patients with circulatory diseases. BMC medicine. 19(1):15. 2021.

 

 

田倉 智之(たくら・ともゆき):博士(医学)、修士(工学)東京大学 大学院医学系研究科 医療経済政策学講座 特任教授。1992年に北海道大学大学院工学研究科修了。東京大学医学部の研修を経て、2010年より大阪大学大学院医学系研究科 特任教授。2017年より現職。厚生労働省(中医協)費用対効果評価専門組織 委員長、内閣府 客員主任研究官、大阪大学医学部招聘教授、東邦大学医学部客員教授、日本循環器学会 Circulation Reports Associate Editor、日本心臓リハビリテーション学会 評議員など歴任。

 

 

 

東京歯科保険医新聞2023年(令和5年)8月1日

こちらをクリック▶東京歯科保険医新聞2023年(令和5年)8月1日

【新聞8月号】

【1面】

1.要件緩和を要請 CAD/CAM・ニッケルチタンの加算など
2.2024年度診療報酬改定 中医協で議論始まる
3.物価高騰対策支援 各自治体で支援始まる
4.「探針」
5.ニュースビュー

【2面】

6.オン資「義務化」撤回訴訟 争点は法律の委任
7.指導結果通知の遅れが改善 会員の切実な声が実る
8.第52回保団連夏季セミナー
9.2022年歯科疾患実態調査 8020達成率は51.6%で微増

【3面】

10.社会医療診療行為別統計 検査増 初診・再診減
11.第1回学術研究会 認知症を〝口〟から支えるには
12.新規開業医講習会を開催 新規個別指導を中心に解説
13.第1回これから始める歯科訪問診療講習会~保険請求の基本
14.院内感染防止対策講習会を開催
15.お知らせ/8月1日以降書籍購入時送料が変更

【4面】

16.経税Q&A第407・インボイス制度~よくあるご質問をご紹介します!~
17.IT相談室「マイナンバーカードの不具合 何が起きているのか?」
18.第1回東京都歯科医師認知症対応力向上研修
19.8月会員無料相談

【5面】

20.研究会・行事ご案内

【6面】

21.インタビュー/新井麻衣子氏「能楽師にして三児の母」

【7面】

22.東京歯科保険医協会50周年記念企画

【8面】

23.教えて!会長!!vol.73「電子カルテ 3」
24.通信員便りNo.136
25.暑中見舞い名刺広告

【9面】

26.症例研究「歯科診療特別対応加算」

【10面】

27.連載「歯科界への私的回想録⑪」
28.理事会だより「第6・7・8回理事会」
29.7月協会活動日誌
30.会員優待ご案内
31.デンタルブックご案内
32.保団連情報サービスのご案内

【11面】

33.Health Care⑥完田倉智之氏/訪日外国人の診療対応
34.当選おめでとうございます!! 高級ステーキ肉をゲット
35.共済部だより

【12面】

36.神田川界隈(松島良次/目黒区)
37.第2回メディア懇談会 3年半ぶりリアル開催
38.「よい歯」東京連絡会が夏の市民講演会
39.第23回IPPNW世界大会
40.協会設立50周年を迎え 「回顧」

【談話】次期診療報酬改定に向けて~診療側の視点に立った適切な評価を〜/社保・学術部長

次期診療報酬改定に向けて~診療側の視点に立った適切な評価を〜

7月12日に開催された中央社会保険医療協議会(以下、中医協)の2024年度診療報酬改定に向けた「歯科医療について(その1)」の議論の中で、支払側より「予防的な部分に保険診療の領域が拡大していくことに強い問題意識を持っている」という発言があった。

確かに、国民健康保険法の第二条には、「国民健康保険は、被保険者の疾病、負傷、出産又は死亡に関して必要な保険給付を行うものとする」とある。そのため、健康保険は疾病等、あくまで診断に至ったものに対して給付されるべきものという考えが根強いのだろう。また、保険医療機関及び保険医療養担当規則の第一条 療養の給付の担当の範囲に「診察、薬剤・治療材料の支給、処置・手術その他の治療」とあり、これも疾病を前提にした記載である。

しかし、歯周疾患や口腔機能低下症など、「歯科疾患の重症化予防」が重要視されていることは周知の事実である。これからの歯科医療には、疾病の進行を抑制するためにも「重症化予防」の視点を積極的に取り入れていくことが求められている。

診療側より出された意見について、「施設基準の重複」の整理が必要なこと、口腔機能や口腔疾患に大きな影響を与える全身的な疾患等において医・歯・薬のより深い「医療連携を深める」ことができるよう検討すること、また要件の緩和はあったものの、1998年より長期にわたり評価が据え置かれていた「歯科衛生実地指導料」についても、この間の社会情勢の変化や人件費の高騰に対応した適切な評価をすべきである。

前述の「重症化予防」にも繋がるが、口腔機能管理の中で行われる機能の獲得や維持、機能が低下した場合には、回復および向上のための「訓練に対する評価がない」ことに対しても意見が出されている。また、歯科用材料については、支払側も診療側も市場価格に左右されない非金属の新しい材料を積極的に活用すべきと意見が一致しているようである。これらの診療側の意見は、今後の歯科保険医療を充実させるために重要な視点ばかりである。

これからの歯科医療は「重症化予防」を抜きに、国民に対する歯科医療提供体制の構築はできないのではないか。また診療側から出された意見も、国が推進する地域包括ケアを含めたこれからの歯科医療には不可欠な検討課題であり、より歯科保健医療を充実させることを念頭に置いた議論を今後の中医協に期待したい。

2023年7月28

東京歯科保険医協会

社保・学術部長 本橋昌宏

談話「次期診療報酬改定に向けて ~診療側の視点に立った適切な評価を〜」

7月12日に開催された中央社会保険医療協議会(以下、中医協)の2024年度診療報酬改定に向けた「歯科医療について(その1)」の議論の中で、支払側より「予防的な部分に保険診療の領域が拡大していくことに強い問題意識を持っている」という発言があった。

確かに、国民健康保険法の第二条には、「国民健康保険は、被保険者の疾病、負傷、出産又は死亡に関して必要な保険給付を行うものとする」とある。そのため、健康保険は疾病等、あくまで診断に至ったものに対して給付されるべきものという考えが根強いのだろう。また、保険医療機関及び保険医療養担当規則の第一条 療養の給付の担当の範囲に「診察、薬剤・治療材料の支給、処置・手術その他の治療」とあり、これも疾病を前提にした記載である。

 しかし、歯周疾患や口腔機能低下症など、「歯科疾患の重症化予防」が重要視されていることは周知の事実である。これからの歯科医療には、疾病の進行を抑制するためにも「重症化予防」の視点を積極的に取り入れていくことが求められている。

 診療側より出された意見について、「施設基準の重複」の整理が必要なこと、口腔機能や口腔疾患に大きな影響を与える全身的な疾患等において医・歯・薬のより深い「医療連携を深める」ことができるよう検討すること、また要件の緩和はあったものの、1998年より長期にわたり評価が据え置かれていた「歯科衛生実地指導料」についても、この間の社会情勢の変化や人件費の高騰に対応した適切な評価をすべきである。

前述の「重症化予防」にも繋がるが、口腔機能管理の中で行われる機能の獲得や維持、機能が低下した場合には、回復および向上のための「訓練に対する評価がない」ことに対しても意見が出されている。また、歯科用材料については、支払側も診療側も市場価格に左右されない非金属の新しい材料を積極的に活用すべきと意見が一致しているようである。これらの診療側の意見は、今後の歯科保険医療を充実させるために重要な視点ばかりである。

 これからの歯科医療は「重症化予防」を抜きに、国民に対する歯科医療提供体制の構築はできないのではないか。また診療側から出された意見も、国が推進する地域包括ケアを含めたこれからの歯科医療には不可欠な検討課題であり、より歯科保健医療を充実させることを念頭に置いた議論を今後の中医協に期待したい。

7月28
東京歯科保険医協会
社保・学術部長
本橋昌宏

<7月30日締切>医療用物資の配布について

東京都保健医療局にて医療用物資の配布の申請を7月30日まで受け付けています。

なお、東京都保健医療局への申請は東京都の医療機関に限ります。

他道府県の医療機関については所轄の保健局へお問い合わせください。

概要は以下の通りです。

【使用用途】
今夏の感染拡大に向けたものではなく、今冬に向けた対応等のためのもの。

【配布する個人防護具】
(1)N95マスク
(2)アイソレーションガウン
(3)フェイスシールド
(4)非滅菌手袋
※100枚単位での申請です。

【配送予定期間】
厚生労働省より9月以降配送を開始し2023年12月中に配送完了予定 

【申請期限】
2023年7月30日(日曜日)23時59分(厳守)

【申請フォーム】
申請はこちらから

【問い合わせ先】
東京都保健医療局感染症対策部医療体制整備第一課 物資管理担当(03-5320-4214)

 

※多く寄せられているご質問について

Q上限はありますか。

A上限はありませんが、一度に受け取れるだけの注文にしてくださいという回答を得ています。周りはどれくらい頼んでいますかという質問もありますが、上限はありませんので、必要な分をご申請ください。

 

Q100単位で頼むというのはどういうことか。

A100単位なので、100、200、300・・・といった形での注文になります。

歯科医院におけるインボイス制度について

2023年10月1日より適格請求書等保存方式(インボイス制度)が始まります。

歯科医院におけるインボイス制度について東京歯科保険医新聞2023年4月号折り込みチラシにてお知らせをいたしました。4月号折り込みチラシは以下のリンクよりご確認いただけます。

4月号の折り込みチラシはこちら

インボイス制度とは課税売上に係る消費税の集計額から課税仕入に係る消費税の集計額を差引控除して、消費税として申告納税するシステムです。
課税売上とは、消費税が課税される売上のことです。歯科医療機関では、自費収入、金属買取売上、健診事業団体(歯科医師会,市区町村,企業等)からの報酬などがあげられます。
インボイス制度が始まると、消費税の計算において仕入税額控除できるのは、消費税法に規定するインボイスを保存しているものに限られます。インボイス発行事業者として登録をすると課税事業者に登録する必要があり、免税事業者の場合、納税負担が増える可能性があります。

また、歯科医院の請求書発行先の多くは「患者」になるため、発行先がインボイスを必要としないケースが非常に多いと考えられます。まずはご自身が課税事業者にあたるか、免税事業者にあたるかを確認し、インボイス発行事業者に登録するかをご検討ください。

 

また、2023年8月31日にインボイス制度研究会を行います。詳細は以下の通りです。

テーマ:インボイス制度研究会

講 師:枇杷阪隆貴税理士(税制経営研究所)

日 時:2023年8月31日19:00~21:00

対 象:会員、会員診療所の経理担当者

定 員:25名

参加費:無料

場 所:東京歯科保険医協会会議室

予 約:こちらをクリックしてからご予約ください

都内歯科技工所の皆様へ アンケートにご協力ください

現在、歯科技工所が大変な状況にあることがマスコミなどで度々取り上げられています。低収入・経営難が恒常化し、若手技工士の離職率も高い状態が続いており、歯科技工士養成学校の閉鎖も相次ぐなど、10年後には歯科技工の担い手がいなくなるのではとの指摘もあります。

この様な状況に対し、当協会では歯科医師の最大のパートナーである歯科技工士及び歯科技工所が置かれている問題の解決に向け、2020年に行ったアンケート結果の周知や国や都に歯科技工士及び歯科技工所の待遇改善の要請などを行ってきました。

前回のアンケートから3年が経過し、この間、新型コロナウイルス感染症や物価の高騰等の影響により、歯科医業界全体も苦しい状況が続いております。このような情勢下における問題解決には、歯科技工所の現状を理解・共有することが必要であると考え、この度、都内歯科技工所の皆様にアンケートをお願いし、忌憚のない意見を拝聴したいと考えております。

都内歯科技工所の皆様には9月初旬にアンケートを送付いたしますので、ぜひご協力をお願いいたします。

なお、アンケート結果についてはホームページにて公表するとともに、行政への要請活動や学会発表などに活用する予定です。

また、前回アンケート結果については下記リンクよりアクセスできます。

前回アンケート結果はこちら

東京歯科保険医新聞2023年(令和5年)7月1日

こちらをクリック▶東京歯科保険医新聞2023年(令和5年)7月1日

【新聞7月号】

【1面】

1.第51回定期総会を開催 坪田有史会長が信任され4期目に
2.マイナ保険証厚労省調査 「メリット実感なし」56%超
3.「探針」
4.ニュースビュー

【2面】

5.第51回定期総会記念講演 社会保険診療報酬支払基金理事 山本光昭氏「保健医療の中での歯科分野への期待」
6.第51回定期総会「決議」
7.「骨太方針」閣議決定
8.今回選出された役員一覧《任期は第53回定期総会まで》
9.第51回定期総会祝電・メッセージ等一覧

【3面】

10.保険証廃止はありえない!国会内集会「命につながる問題」各団体が訴え
11.「保険でよい歯」を東京連絡会が議員要請
12.今年度は6件実施予定 生活保護の指導計画
13.都が歯科医療機関に1万円支給へ 物価高騰対策支援の要請が実る
14.7月金銀パラジウム合金等の随時改定 金パラは引き下げ14Kは引き上げ
15.会員優待ご案内

【4面】

16.経営・税務相談Q&A No.406 年次有給休暇夏季休暇にあてられる?
17.7月会員無料相談

【5面】

18.研究会・行事ご案内
19.「デンタルスタッフのための歯科保険診療ハンドブック2023年版」のご案内

【6面】

20.インタビュー/堤未果「『何のため』議論なくデジタル化進む日本 ショック ・ ドクトリンに見る保険証廃止問題『立ち止まって』」

【7面】

21.オン資トラブル事例アンケート「保険者情報の反映不備」が最多 メディアから相次ぐ反響
22.オンライン請求「義務化」方針の撤回を求める要請署名316筆を国会議員に
23.全国保険医写真展 2氏が入選
24.協会設立50周年を迎え「回顧」
25.書籍のご案内&読者プレゼント「堤未果のショック・ドクトリン 政府のやりたい放題から身を守る方法」

【8面】

26.教えて!会長!! Vol.72「電子カルテ」とは その2
27.施設基準のための講習会を開催認知症や多職種連携等の重要性確認
28.歯科技工士・中川直樹さんに総理表彰 国際アビリンピック金メダリスト
29.接遇講習会に58人が参加 「接遇の5原則」を伝授
30.休業保障制度/開業医・勤務医の先生へ
31.共済部だより

【9面】

32.症例研究「咬合調整と口腔内装置の再製作」

【10面】

33.連載/歯科界への私的回想録⑩(オクネット・奥村勝氏)「口蓋裂診療の〝チーム医療〟から学ぶ…」
34.第3回保団連代議員会 保険証廃止問題で今後の対応討議
35.理事会だより「2023年度第第4・5 回(暫定)理事会」
36.6月協会活動日誌

【11面】

37.Health Care④(田倉智之/東京大学大学院 特任教授)/新興感染症の…
38.不安払拭が大前提 マイナトラブル今秋まで総点検も
39.通信員便り № 135
40.お知らせ 【8月1日以降】書籍購入時の送料が変更となります

【12面】

41.ご協力ありがとうございました<国会議員に署名提出>【要請】健康保険証廃止・・・
42.神田川界隈/歯科技工士がいなくなる前に(森元主税理事/北区)
43.「思い切って患者さんに説明を」署名取り組んだ会員の想い
44.夏季休診ポスターのご案内
45.50周年記念企画

<歯科医療機関が利用できる物価高騰対策>各自治体まとめ(協会把握分)

2023年7月14日時点で協会が把握している23区の歯科医療機関でも利用が可能な物価高騰対策をまとめています。

支援金:青梅市(10万円) 葛飾区(10万円)(受付終了) 

融資:葛飾区、品川区、江東区、荒川区、目黒区、北区

概要は各区のHPにてご確認ください。以下リンクです。(リンク切れ等がございましたらお知らせください)

 

(支援金)

青梅市(申請期限:2024年3月31日まで)

医療機関等に対する物価高騰支援給付金(青梅市の歯科診療所に10万円の支援)

https://www.city.ome.tokyo.jp/soshiki/32/69406.html

 

葛飾区※受付終了

葛飾区福祉施設等経営安定化支援金(葛飾区の歯科診療所に10万円の支援)

https://www.city.katsushika.lg.jp/business/1000011/1000069/1032468.html

 

(融資)

葛飾区

物価・原油価格高騰等対策緊急(借換)融資

https://www.city.katsushika.lg.jp/business/1000011/1030233/1000071/1029777.html

 

品川区

物価高騰等総合支援資金

https://www.mics.city.shinagawa.tokyo.jp/yushi_sodan/yuushi/2339.html

 

江東区

原油価格・物価高騰対策資金(限度額1,000万円)

https://www.city.koto.lg.jp/102010/genyukakakubukkakoutou.html

 

荒川区

経済急変対応融資(原油価格・物価高騰等対応)

https://www.city.arakawa.tokyo.jp/a021/yushi.html

 

目黒区

物価高対応等融資支援金

https://www.city.meguro.tokyo.jp/smph/kurashi/shigoto/enjo/r5yushishienkin.html

 

北区

北区原油価格・物価高騰対策緊急資金

https://www.city.kita.tokyo.jp/sangyoshinko/yushi_josei/bukkakoutou.html

 

 

必要な方は診療所の所在する各自治体へお問い合わせください。

また、各自治体で行われている支援策などをご存じでしたらぜひお寄せください。

【インタビュー】堤未果(ジャーナリスト)「何のため」議論なくデジタル化進む日本/ショック ・ ドクトリンに見る保険証廃止問題 「立ち止まって」

▶堤未果さん(ジャーナリスト)のインタビュー全文を読む

▼書籍プレゼントのご案内(会員限定)/「堤未果のショック・ドクトリン 政府のやりたい放題から身を守る方法」

 

 

 

 

過去のインタビューはこちらから

新型コロナウイルス感染症 マスク着用に関する院内掲示ポスター

新型コロナウイルス感染症の感染症法上の取り扱いが5月8日以降、2類相当から5類に変更されたことで、会員の先生方から患者さんに対するマスク着用に関する対応についての相談が増えております。

厚労省から発出されている資料では、マスク着用は個人または事業主の判断に委ねるとされています。

https://www.tokyo-sk.com/wp/wp-content/uploads/2023/06/1365f09f80d114691ab589872e841324.pdf

協会では、マスク着用について、各歯科医院でご利用いただける院内掲示ポスターを作成しました。

 

マスク着用

マスク着用2

マスク着用3

マスク着用4

マスク着用5-2

マスク着用6

 

用途に応じてご活用ください。

東京歯科保険医新聞2023年(令和5年)6月1日

こちらをクリック▶東京歯科保険医新聞2023年(令和5年)6月1日

【新聞6月号】

【1面】

1.マイナ保険証にトラブル続出/健康保険証廃止は撤回を!
2.地域医療に悪影響「閉院に追い込まれる医院も」
3.東京歯科保険医協会2023年度第51回定期総会のご案内/記念講演案内
4.「探針」
5.ニュースビュー

【2面】

6.社保・学術部長談話「〜現場の声を反映し、医療機関側に裁量権を与えよ〜」
7.オンライン請求「義務化」方針の撤回を求める署名にご協力を―現場の声を…
8.改定時期は今夏までに決定/診療報酬改定DX対応方針を提示
9.7月歯科用貴金属価格改定/金パラは引き下げ
10.治療薬治療薬「シダキュア」歯科医療機関が注意喚起
11.保団連情報サービスのご案内

【3面】

12.2023年度指導計画/新規個別指導の予定件数 前年比133件増加
13.教えて!会長!!Vol.71「電子カルテ」とはその1
14.会員寄稿 「声」/かかりつけ歯科医」の色~子ども編~(長尾広美氏)
15.50周年記念企画/これからの歯科を考える…

【4面】

16.経営・税務Q&A第405回「テナントオーナーから家賃の値上げの通知が来た」
17.6月会員無料相談
18.書籍紹介「デンタルスタッフのための歯科保険診療ハンドブック2023年版」

【5面】

19.研究会・行事ご案内

【6面】

20.インタビュー/荻原博子氏「健康保険証廃止、情報の中央集権化/今のやり方は危険」

【7面】

21.第三次オン資「義務化」撤回訴訟/原告団へのご参加を
22.オン資「義務化」撤回訴訟/第二次訴訟で原告団結成集会
23.マイナ保険証・オン資システム/トラブル報道相次ぐ 阿部理事にテレビ取材も
24.心底考えたのは「患者さんの不自由な思いを防ぎたい」/署名525筆を持参
25.協会設立50周年を迎え「回顧」

【8面】

26.Health Care③(田倉智之/東京大学大学院 特任教授)/アドヒアランスを制する…
27.共済部だより/グループ生命保険・保険医休業保障共済保険・保険医年金
28.第2休保2023年度募集キャンペーンのご案内
29.書評:日本歯科評論/別冊「CAD/CAM冠 CAD/CAMインレー」

【9面】

30.症例研究「糖尿病患者の歯清と総医、混合歯列期のP重防」

【10面】

31.連載/歯科界への私的回想録⑨(オクネット・奥村勝氏)「協会の歴史と存在性」
32.世田谷地区は警戒を厳に/歯科診療所狙う窃盗事件多発~身の安全を最優先に
33.理事会だより「2023年度第1・2回(暫定)理事会」
34.5月協会活動日誌

【11面】

35.全国から集めた署名 67万余を国会に提出
36.オンライン請求〝義務化〟をすれば歯科は大変なことに
37.署名へのご協力ありがとうございました
38.IT相談室「初心者向けIT用語を解説」/クレセル・永田氏
39.会員優待ご案内
40.デンタルブックご案内

【12面】

41.2023年度第1回メディア懇談会/健康保険証廃止の問題点を指摘
42.通信員便りNo.134
43.8月1日から書籍購入時の送料が変更となります
44.お詫びと訂正
45.神田川界隈/過渡期(川戸二三江副会長/渋谷区)

【13・14面】

46.共済部折込(第2休業保障制度)

第51回定期総会「決議」

国は、医療DX(Digital Transformation)を進めており、マイナンバーカードの導入を理由に2024年秋に健康保険証を廃止するマイナンバー法等の一部改正法案を成立させた。自動的に交付される健康保険証と異なり、施設に入居している患者などマイナンバーカードによる資格確認を受けることができない方は資格確認書の申請が必要であり、申請漏れによる無保険者を続出させる危険性をはらんでいる。国民皆保険制度の根本をゆるがす問題であり、国民誰しもが保険診療を受けられるように健康保険証の廃止はするべきではない。

また、当協会も実施した全国保険医団体連合会のアンケートでは、「他人の情報が紐づけられていた」ケースが少なくとも37件あるなど、オンライン資格確認システム自体にも深刻なトラブルが発生していることが明らかになった。不完全なシステムであれば検証と修正をするべきであり、改善されないまま導入義務化を継続するべきではない。

さらに、歯科の半数以上が電子媒体で診療報酬を請求している中で、20244月よりオンライン請求の義務化が検討されている。しかし、電子レセプトの提出方法を郵送ではなくオンラインに限定する審査上の必要性はなく、医療機関側には移行に伴うコストが生じる一方で、利点としては審査機関側の事務コスト削減しかない。このように、医療機関側のみに不利益を生じさせる施策は直ちに止めるべきである。

他方、医療機関の経営をみれば、物価高が深刻な影響を及ぼしている。コストを踏まえた診療報酬の引き上げを、次期診療報酬改定で行うことが必須である。

国が推し進めている安心安全な医療の提供を脅かす動き、そして人の命を奪う戦争や核兵器使用で諸国を威嚇するいかなる行動に断固反対し、国民の生活と歯科医療のより一層の充実に向けた運動を国民とともに力を合わせ、推進するために、以下の要求を国民、政府及び歯科保険診療に携わる全ての方に表明する。

一.国は、現行の社会保障を後退させず、世界の国々が模範とする日本の社会保障制度を更に充実させること。

一.国は、健康保険証を存続させ、オンライン請求およびオンライン資格確認システムの導入義務化を撤回すること。

一.国は、物価高騰を踏まえ、診療報酬の引き上げを行うこと。

一.私たち歯科医師は、平和を妨げるすべての動きに反対する。

 

2023年6月18日

東京歯科保険医協会

第51回定期総会

第51回定期総会会場の風景

協会が第51回定期総会を開催/会長に坪田有史氏を互選・4期目に/副会長に早坂・本橋の2氏が新任

協会は2023618日、中野区の中野サンプラザにおいて、第51回定期総会を開催した。今総会を迎えるに当たり会員数は6000名を超え、新たな一歩を踏み出すにふさわしい総会となった。

総会には、役員と一般会員の39名が出席。委任状は1057名、両者を加えると1096名の参加となり、総会成立要件である会員数の10%を満たし、総会は成立した。

総会冒頭で挨拶に立つ坪田有史会長

また、役員改選が行われ、規約に基づき、総会で理事22名と監事2名の合計24名を選出した。さらに、理事の中から会長および5名の副会長を総会後の第6回臨時理事会で互選。会長には坪田有史氏が選出されたほか、副会長には川戸二三江氏と松島良次氏の交代に伴い、早坂美都氏、本橋昌宏氏の2氏が新任され、今後の協会活動への抱負を述べた。

 

 

記念講演で講師を務めた山本光昭氏

総会終了後は、社会保険診療報酬支払基金理事の山本光昭氏による記念講演「保健医療に係る最近の話題と歯科分野への期待」を行った。

 

 

 

なお、昨年と同様、新型コロナ禍での開催となったため、懇親会は開催せず、総会と記念講演のみの開催とした。

第51回定期総会会場の様子

 

 

 

 

 

 

 

予定していた以下の議案6本は、すべて承認された。

【議案】

・第1号議案:2022年度活動報告の承認を求める件

・第2号議案:2022年度決算報告の承認を求める件/付:会計監査報告

・第3号議案:2022年度活動計画案承認の件

・第4号議案:2023年度予算案承認の件

・第5号議案:役員改選の件

・第6号議案:決議採択の件

なお、第6号議案では「決議(案)」は賛成多数で採択された。

【理事・監事・顧問紹介(五十音順・敬称略)/役職名・氏名(開業地)】

◆会 長(1名):坪田有史(文京区)

◆副会長(5名):加藤開(豊島区)、馬場安彦(世田谷区)、早坂美都(世田谷区)

本橋昌宏(荒川区)、山本鐵雄(大田区)

◆理 事(16名): 阿部菜穂(江東区)、池川裕子(葛飾区)、岡田尚彦(世田谷区)、川本  弘(足立区)、川戸二三江(渋谷区)、呉橋美紀(大田区)、相馬基逸(品川区)、高山史年(豊島区)、橋本健一(東村山市)、濱﨑啓吾(練馬区)、半田紀穂子(台東区)、福島崇(大田区)、松島良次(目黒区)、森元主税(北区)、矢野正明(板橋区)、横山靖弘(港区)

◆監 事(2名):西田紘一(八王子市)、藤野健正(渋谷区)

◆顧 問(1名):中川勝洋(港区)

新たに互選された新役員の面々

【IT相談室】初心者向けIT用語を解説

WEBに係る歯科関連の法令やトラブル対応などについて、
歯科専門にサイト制作、運用、コンサルディングを手掛ける専門家が解説する本連載。
今回のテーマは、診療所のPCでUSBメモリを使用すると危険なの?
―。

「IT相談室」過去の連載はこちらから

 ここ最近の本連載では、レセコンやオンライン資格確認システムの管理、運用上のポイントや、サイバー攻撃に関する内容を執筆してきました。一方で、会員の先生方から「クラウド、サーバー、何のことやら理解できず…」「初心者もわかるような解説がほしい!」「用語が難しくて大変」というご意見をいただいています。
そこで今回は、インターネットやWEBに関連した基本的な用語を解説してみたいと思います。たくさんの用語があるので、この連載だけでは書ききれませんが、ネット関係の業者との打ち合わせや、自院のネット環境を整える時のためなど…何かのきっかけになればと思います。それではどうぞ。

クレセル株式会社

(東京歯科保険医新聞2023年6月号11面掲載)

【IT相談室】診療所のPCでUSBメモリを使用すると危険なの?

WEBに係る歯科関連の法令やトラブル対応などについて、
歯科専門にサイト制作、運用、コンサルディングを手掛ける専門家が解説する本連載。
今回のテーマは、診療所のPCでUSBメモリを使用すると危険なの?
―。

「IT相談室」過去の連載はこちらから

 診療室のレセコンに限らず、個人で使用しているパソコンからUSBを介して他のパソコンとファイルを共有する場合には、ウイルス感染のリスクが常に存在します。特に、「入れた記憶の無いどこかで見たことのあるアイコン」が入っていた場合には、ウイルス感染が懸念され、USBを媒介とした感染である可能性があります。
 このようなUSBの使用による感染を回避するためには、以下の注意点を守ることが重要です。
まず、ウイルス感染のリスクを軽減するために、USBを使用する前には必ずウイルススキャンを実行し、USBそのものがウイルスに感染していない安全な状態であることを確認する必要があります。また、ファイルを共有する際には、共有先のパソコンがウイルス対策ソフトウェアで保護されていることが大切です。万が一、USBが感染している場合でも、ウイルス対策ソフトウェアがパソコンを感染から守ってくれます。
 ウイルスに感染してしまうと、センシティブな医療情報が含まれるレセコンのデータが漏洩するリスクがあります。漏洩した情報が悪用された場合、患者や社会からの信頼を失いかねません。そのため、パソコン間でファイルを共有する場合には、細心の注意を払うことが必要です。マルウェアと言われる悪意を持ったウイルスに感染した場合、情報漏洩のほか、医療情報を含むデータが改ざんされたり、削除されたりする可能性があります。このようなことになると、患者の医療に影響が出るだけでなく、法的な問題にも発展する可能性があります。
 最後に、共有するファイルが機密情報である場合には、暗号化することでセキュリティを強化することができます。暗号化することで、不正アクセスや盗聴などからファイルを保護することもできます。
 以上の注意点を守ることで、USBを介してファイルを共有する際のウイルス感染やセキュリティリスクを軽減できます。しかし、完全にリスクを排除することは困難であるため、機密情報の入ったPCにはUSBをはじめ外部からのアクセスを一切排除する業務の流れが最高の対策です。

クレセル株式会社

(東京歯科保険医新聞2023年5月号11面掲載)

【IT相談室】レセコンをクラウドで管理する場合のメリットとデメリット

WEBに係る歯科関連の法令やトラブル対応などについて、
歯科専門にサイト制作、運用、コンサルディングを手掛ける専門家が解説する本連載。
今回はレセコンをクラウドで管理する場合のメリットとデメリット
について―。

「IT相談室」過去の連載はこちらから

 歯科診療所の心臓部ともいえるレセコンの運用、データをどのように管理するのかは永遠の課題かもしれませんが、近頃はクラウド形式で運用管理される人が増えてきました。そこで今回は、クラウド管理のメリット、デメリットを考えてみます。
 まず、メリットですが、院内のサーバー等がなくなることで設備が簡略化されるため、コストダウンに繋がる可能性があります。クラウド専用のセキュリティが考慮された回線が必要になる場合もありますが、それを差し引いてもコストは下がります。すべてクラウド上で常に最新の状態になっていますので、レセコンメーカーの方が来訪しての作業、電話やメールなどを利用したアップデートなどは必要なくなり、煩わしい作業や時間等の拘束からも解放されることでしょう。
 そして、これまで院内で物理的に保管されていたデータが常にさらされてきた火災、水害、事故などの脅威、盗難などによる紛失という危険性。これらはクラウド化によって払拭されるため、心理的にも大きなメリットではないでしょうか。
 デメリットは、データはクラウドでもそこに接続する回線が通じていなければアクセスできないということです。接続が不安定なケースや、回線の障害が発生した時には、その段階からレセコンには一切アクセスできなくなります。忙しい時間帯に回線の不調でアクセスできなくなった時、レセコン業者と回線業者に対して別々に連絡をするなどの対応を誰がどのように行うか、予め決めておいたほうが良いでしょう。また、クラウドは外部にあるコンピュータですので、操作に若干の遅さを感じることがあります。このちょっとした遅れをものすごく大きなストレス、業務時間のロスと考える方もいらっしゃると思います。導入前に、必ず一度はデモンストレーションを実施すべきです。
 そして何よりも、クラウドという〝保管庫〟に障害が発生して「データがなくなる、漏えいする」というリスクも考えなければなりません。IT業界では有名なエピソードですが、2012年に、あるレンタルサーバー企業がアップデート作業時に誤って顧客データをすべて削除するという事故がありました。データは復旧することができず、顧客は大きな損害を被りました。しかし、月々の使用料が返還されただけで、それ以上の補償がないという状況で、顧客にとって大きなダメージが残る事故となりました。 
 レセコンをクラウドで管理する際には、既に導入している診療所が、万が一の時の備えをどのようにしているのかを、必ず確認してみてください。

クレセル株式会社

(東京歯科保険医新聞2023年4月号4面掲載)

【教えて!会長!! Vol.71】 「電子カルテ」とは その1

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 「医療DX令和ビジョン2030」をさらに教えてください。

 前号で、自由民主党の政務調査会が昨年5月に発表した「医療DX令和ビジョン2030」の提言の概要を紹介しました。その中で「電子カルテ」に触れましたが、詳細を知りたいとの会員の声が多数ありました。そこで今回は、「電子カルテ」の現状を取り上げます。
「医療DX令和ビジョン2030」では、日本の医療分野の情報の問題点や課題を根本から解決するため、
①「全国医療情報プラットフォーム」の創設
②電子カルテ情報の標準化(全医療機関への普及)
③「診療報酬改定DX」
以上3つの取り組みを同時並行で進めるとしています。

電子カルテ情報の標準化とは。

 当然ですが、まずは医科がターゲットです。しかし、歯科も電子カルテを推進することになっています。電子カルテ情報の標準化とは、国際基準になりつつある標準規格準拠(HL7 FHIR規格でのデータ・情報ができる)を活用して、共有すべき項目の標準コードや交換手順を厚労省が定めます。すなわち、一般診療現場での必要な情報の標準化(統一)を行政側が明確に示すことを指しています。
 表に、厚労省の医療施設調査から電子カルテの普及率を示しました。直近の2020年では、歯科診療所における電子カルテの普及率は48・7%となっています。驚きませんか?データでは半数近くがすでに電子カルテを導入していることになっています。行政の調査結果です。本当なのでしょうか。
 レセコンと電子カルテを間違えて回答しているのでは?と思ってしまいます。そうでないと、私の周囲の状況と整合性が取れません。レセコンと電子カルテは違うのです。これらのデータは厚労省からのもので、データ通りに歯科の半数近くが電子カルテを導入しているならば、あと半分だから高いハードルではないと、厚労省が都合よく考えて義務化するのではと懸念しています。

レセコンと電子カルテの違いは。

 紙面の都合上、このご質問は次号で詳細に回答しますが、レセコンはレセプトを作成することを主目的にしています。これに対し電子カルテとは、患者さんの情報を電子データとして保存するもので、すべての情報が一元管理されます。特に、電子カルテには「タイムスタンプ」があります。「タイムスタンプ」とは、入力された時間が記録されることを指します。したがって、カルテ入力を行った後に、整備のための入力を行うと、治療の流れとは違う不自然なタイムスタンプが刻印され、不正請求が疑われる危険性があります。この機能がレセコンにはないことが、もっとも大きな違いです。
 5月17日の参議院地方創生及びデジタル社会の形成等に関する特別委員会(本紙1面参照)などを契機にして、その後のテレビや新聞などのメディアが、「マイナ保険証」「オンライン資格確認システム(以下、オン資)」などを取り上げ、その問題点を指摘しています。東京保険医協会(須田昭夫会長)が中心となって起こした「オンライン資格確認義務不存在確認等請求訴訟」は、1千名を超える原告団となりました。そして、現在第3次訴訟の原告団への参加を呼びかけています(本紙7面)。オン資により回線ネットワークを構築させた上で、オンライン請求の義務化、そして標準化した電子カルテで情報を瞬時に集めることを目標としていることが示されています。そうです。すべての入り口はオン資義務化なのです…。

東京歯科保険医協会 会長 坪田 有史
(東京歯科保険医新聞2023年6月号3面掲載)

【教えて!会長!! Vol.70】 自民党の提言 「医療DX令和ビジョン2030」

▼「教えて!会長!!」バックナンバーをチェックする

 

自民党の提言「医療DX令和ビジョン2030」がニュースになっていましたが。

 政権与党である自由民主党の政務調査会は、昨年2022年5月に「医療DX令和ビジョン2030」の提言(以下、「提言」)を発表しています。そしてさらに本年4月13日付けで、同提言の実現に向けた新たな提言「(同提言の)実現に向けて〜保健医療情報のデジタル活用により、すべての国民が最適な医療を受けられる国へ〜」をまとめました。
 自民党の提言は、政府に対して強い影響力があり、また政策を進めるために発出されますので、医療機関にとっての今後の方向性を見据えるうえで注目すべきと思います。

提言、そのほかについて教えてください。

 現在、「マイナンバーカード普及」「マイナンバーカードの健康保険証利用」「オンライン資格確認義務化(以下、「オン資」)」「マイナポータル活用」「オンライン請求義務化」「電子処方箋導入」「電子カルテ情報の標準化」「診療報酬改定DX」「医療DX」の推進などは、具体的な政策として進められています。これらは実際、日々の歯科臨床に直接関係がないため、拒否感を持っている先生が少なくないと思います。
 この中で「医療DX」を厚労省は、「保健・医療・介護の各段階(疾病の発症予防、受診、診察・治療、薬剤処方、診断書などの作成、診療報酬の請求、医療介護の連携によるケア、地域医療連携、研究開発など)において発生する情報やデータを、全体最適された基盤を通して、保健・医療や介護関係者の業務やシステム、データ保存の外部化・共通化・標準化を図り、国民自身の予防を促進し、より良質な医療やケアを受けられるように、社会や生活の形を変えることと定義できる」としています。そこで自民党の「提言」の概要を示します(表参照)。


 政府では昨年10月に総理を本部長とする「医療DX推進本部」を設置しました。この政府の動きを踏まえ、自民党政務調査会などは医療DXの取組みを力強くかつ速やかに進めるべく、本年4月に「実現に向けて」の提言を発表したのです。
その主な内容は、以下の4項目となっています。

(1)グランドデザイン:医療DXを通じたより効果的かつ効率的で質の高い医 療の提供の実現など
(2)ガバナンスの強化:厚労省の司令塔機能を有する部署の確保など
(3)全国医療情報プラットフォーム:オンライン資格確認などシステムの拡充など
(4)電子カルテ情報の標準化など:標準化に関する集中的な取組みの実施など

 要は、すべて前述した進行中などの案件は既に仕組まれていて「力強くかつ速やかに進める」の文言により速いスピードが求められているのです。その結果、拙速感が強く、説明不足などにより、我々医療機関、そして国民の多くがついていけないのが現状ではないでしょうか。
 今後、歯科においても「オンライン請求」「電子カルテ」などの「義務化」が要求される可能性が高いと考えています。現在、協会は「義務化反対」の立場で様々な活動を行っていますが、提言などからさらに医療機関に押し付けてくることが推測されます。現在、「オン資」を導入されている会員へ「報告フォーム」により、トラブル事例を募っています。さらに多くの先生の回答結果を受けて、問題点をまとめ、よりよい改善に向けて行政などに訴えます。
 この「報告フォーム」は、すでにデンタルブックメールニュースでお知らせしています。また、協会ホームページからも回答できます。ご協力のほど、よろしくお願い申し上げます。

東京歯科保険医協会 会長 坪田 有史
(東京歯科保険医新聞2023年5月号8面掲載)