協会ニュース

歯科用貴金属改定/6月から金パラ引き上げ3,299円へ(+2.1%)

歯科用貴金属改定/6月から金パラ引き上げ3,299円へ(+2.1%)

4月23日に開催された中央社会保険医療協議会(中医協)総会で、歯科用貴金属価格の6月随時改定が決定された。

6月1日からの金パラの告示価格は1g当たり3,299円(3,230円から69円引き上げ)、30g当たりでは98,970円(96,900円から2,070円の引き上げ)となる。

保険でより良い歯科医療を/署名提出への”4ステップ”  会員6,000人の「声」で要求実現を

保険でより良い歯科医療を/署名提出への4ステップ

◆「う蝕は減っている」といえるのか

歯科の現状を考える上で、「患者の口腔内がどうなっているのか」ということに焦点を当ててみる。概ね24歳まで、う蝕の有病率は年々減少傾向にあるが、3554歳にかけては有病率100%になる傾向は改善されていない(図1)。仕事や家事、育児などにより多忙となり、口腔のメインテナンスが後回しにされている可能性が高い。

また、高齢者の有病率増加は、8020の推進の結果、残存歯が多くなり、根面う蝕が増加していることがうかがえる。

◆家計が厳しいと患者は受診をやめる

物価上昇に賃金上昇が追い付いていないといわれて久しい。低所得者になるほど医科よりも歯科治療費を切り詰める傾向がある。経済的な理由による治療の中断は、他の調査でも示されている(表1)。この調査では、中断の理由として約7人に1人が「金銭的に余裕がなかった」ことをあげている。

患者は、家計が苦しくなると歯科治療の継続を諦め、医療機関においては患者数が一定程度減る可能性を示唆するものである。患者が歯科医院を受診しなければ、口腔の健康は守れない。

◆会員6,000人で取り組もう

協会は、患者の負担軽減と歯科医療費の総枠拡大などを求める「保険でより良い歯科医療の実現を求める」請願署名を集めて、本通常国会へ提出する活動を行っている(図2・3 参照)。

図3 署名用紙

署名用紙、返信用封筒をご希望の方は、お申し込みフォームまたは電話(運動本部:03-3205-2999)までご連絡ください。

東京歯科保険医新聞2025年(令和7年)5月1日号

東京歯科保険医新聞2025年(令和7年)5月1日号

こちらをクリック▶「東京歯科保険医新聞」2025年(令和7年)51日号

【新聞5月号】

 

1面】

 1.「歯科医療費の総枠拡大を」国会議員へ要請/歯科の諸課題・保険証発行終了後の問題に理解求める

 2.5月末までに再届出をしなければ・外安全1、外感染1 (旧外来環)・口管強(旧か強診)の施設基準が失効してしまいます!

 3.東京歯科保険医協会第53回定期総会ご案内

 4.本会役員の任期満了に伴う役員選挙の公示について/東京歯科保険医協会 選挙管理委員会

 5.「探針」

 6.ニュースビュー

 

2面】

  7.<マイナ保険証>スマホ搭載時期を検討/「」などトラブル対策は進展なし

 8.来年7月まで全ての後期高齢者に資格確認書/アナログ・デジタル併用が1年延長

 9.療担規則義務付けの院内掲示事項/531日までにウェブサイトへの掲載を

10.忘れていませんか?施設基準の再届出

 

3面】

 11.OTC類似薬の見直しで起きる歯科の影響/痛み止め・軟膏・うがい液へ波及必至

12.会員寄稿「声/歯科医師減少時代克服のカギは女性歯科医師の活躍に」船木勝介(ふなき・かつゆき)/練馬区

13.グループ生命保険PR

14.「お詫びと訂正」

 

4面】

 

15.経営・税務相談Q&A No.428「試用期間中の労務の注意点解雇と辞職への対応

16.5月会員無料相談のご案内

17.第40回保団連医療研究フォーラム演題募集

 

5面】

 18.研究会・行事のご案内

 

6面】

 19.保険でより良い歯科医療を/署名提出への“4ステップ

20.教えて!会長!!No.94/歯科衛生士が行う浸潤麻酔

21.歯科用貴金属改定/6月から金パラ引き上げ 3299円へ(+2.1%)

 

7面】

 22.解説/ベア評価料 改善計画書・実績報告書提出期限示される

23.IT相談室「AIとは何か歯科医療界での活用」

24.通信員便りNo.150

25.理事会だより

26.協会活動日誌

 

8面】

 27.インタビュー 文京学院大学名誉教授・法学博士・山下 泰子さん/低迷する日本のジェンダーギャップ解消へ「根本的に転換できる」(前編)

28.神田川界隈「20XX年 歯科技工士がいなくなったら」(理事・森元主税/北区)

 

910面】

 29.共済募集キャンペーン折込

 

1112

 30.運動署名折込

マイナ保険証/スマホ搭載時期を検討  「●」などトラブル対策は進展なし

マイナ保険証/スマホ搭載時期を検討 「●」などトラブル対策は進展なし

4月3日に行われた社会保障審議会医療保険部会では、マイナ保険証のスマホ搭載や、次なる規格の顔認証付きカードリーダーについて検討された。しかし、協会などが行ったアンケート調査で明らかになった「が出る」「資格が無効と表示される」など、医療機関の負担増加につながっているトラブル対策への新たな提案はなかった。

◆スマホ搭載早ければ8月に

今年6月頃より、病院3施設、医科診療所4施設、歯科診療所2施設、薬局2施設程度でスマホ搭載の実証実験を行い、早ければ8月より運用を開始する。読み取りに必要な汎用カードリーダーも示された図1)

汎用カードリーダーの導入は医療機関の任意とされ、義務ではない。これまでのオンライン資格確認システムで起きた混乱を考えれば任意の導入は当然だが、導入済み・未導入の医療機関が混在する。厚労省は、初めて医療機関を受診する際はマイナ保険証も持参するよう呼びかける予定としているが、国民に十分周知できるかが重要である。

なお、今後は導入に対する補助が検討される予定だ。

◆次期カードリーダー現状のトラブル解決できず

さらに、20263月末から現在の顔認証付きカードリーダーが保守期限を随時迎えることを受け、次期顔認証付きカードリーダーの規格も検討された。新しい仕様を決めた後にメーカーを公募し、26年夏頃からの販売開始を見込んでいる図2

仕様をみると、汎用カードリーダーがなくてもスマホを読み取れる機能が加わっている。そのため、汎用カードリーダーを購入すべきか、または次期顔認証付きカードリーダーへの買い替えで対応すべきか、導入費用を負担する医療機関としては、判断に迷うところであろう。厚労省は、助成金もセットで提案するなど分かりやすく適切な提案をすべきである。

また、今回の提案では、「が出る」や「新しい資格情報が反映されず、無効と表示される」といった今現在、医療機関を悩ませているトラブルへの対応策は示されていない。新しい機器を検討することも良いが、まずは現行の顔認証付きカードリーダーで起きている問題に向き合うべきではないのか。

協会は引き続き、現場の声を集め、行政に届けていく。

「歯科医療費の総枠拡大を」国会議員へ要請/歯科の諸課題・保険証発行終了後の問題に理解求める

「歯科医療費の総枠拡大を」国会議員へ要請/歯科の諸課題・保険証発行終了後の問題に理解求める

物価高で国民の生活や歯科医療機関の経営は苦しくなっている。患者の窓口負担軽減と歯科医療費の総枠拡大を求め、416日に早坂美都副会長が国会議員へ要請を行い、健康保険証の発行終了後に起きている問題も訴えた。さらに、前厚生労働大臣の武見敬三参議院議員を表敬訪問した。

早坂副会長は、口腔が健康な患者の医療費や介護費は、健康でない患者よりも低いとの調査結果を紹介しつつ、高齢者のう蝕や歯周病の有病率は増加傾向であると説明。歯科は医科よりも経済的な理由で診療を中断する場合が多く、患者負担の軽減と歯科医療費の総枠拡大は国民の健康の観点からも重要であるとした。

また、マイナ保険証の利用率は昨年122日の健康保険証の発行終了後も低調であり、その背景には国民がマイナンバーカードの紛失などに不安を感じているからではないかと指摘。全国保険医団体連合会が実施したアンケートでも、医療機関の業務負担が増えているという結果が出ており、健康保険証の存続や併用を求める声が多いことなどを紹介した。

塩村あやか議員/左

川田龍平議員/左

田村まみ議員/左

牧山ひろえ議員/右

武見敬三議員/右

◆活発な意見交換を展開

要請では活発な意見交換が行われた。協会の提案に対して、国会議員からは「口腔の健康が全身の健康に寄与する話はよく聞いている」「マイナ保険証の利用率は低く、保険証の発行終了はもっと丁寧に進めるべきだった」と概ね賛同する意見があった。一方で、「医療職の人手不足が懸念される中、独居老人が激増する。医療提供体制の維持には、スマートウォッチなど、デジタルによる健康管理ができる仕組みは不可欠」「歯科予算の拡大は理解できるが、財源の捻出も重要。その点で、デジタル化による効率化は推進すべき」「マイナ保険証には医療費控除が簡単になるなどのメリットもある。デメリットが強調されすぎではないか」との指摘もあった。

協会は、国会議員や行政との意見交換を通じ、現場の声を届けつつ、歯科への理解を深めてもらうとともに、国民と歯科医療機関をめぐる諸課題を解決するべく要請を行っていく。引き続き、協会の諸活動へのご協力をいただきたい。

療担規則義務付けの院内掲示事項/5月31日までにウェブサイトへの掲載を

療担規則義務付けの院内掲示事項/5月31日までにウェブサイトへの掲載を

療養担当規則の中で、保険医療機関に院内掲示が義務付けられている事項については、原則として5月31日までにウェブサイトに掲載しなければならない。ただし、自ら管理するウェブサイトを有していない場合は対象外となる。
従来から院内掲示が必要とされていたものを含め、歯科においては以下の三つの事項が「院内掲示事項及びウェブサイト掲載事項」として定められている(表参照)。

(1)厚生局に届け出た施設基準に関する事項と施設基準の要件で院内掲示が定められている事項がある。厚生局に届け出た施設基準については、療養担当規則により、院内掲示およびウェブサイトへの掲載が義務付けられている。また、施設基準の要件として、院内掲示およびウェブサイトへの掲載が定められている事項(医療情報取得加算、明細書発行体制加算など)がある。
(2)明細書の発行状況については、明細書発行体制加算の算定の有無にかかわらず、発行体制の有無、手続きや費用徴収の有無などを院内掲示およびウェブサイトに掲載しなければならない。
(3)保険外負担に関しては、①物品の販売などであって患者から費用の支払を受けるものに関する事項として、義歯の名入れ、カルテ開示の開示手数料などがある。②保険外併用療養費については、関東信越厚生局に報告している事項がある。
なお、当会のホームページに掲載すべき事項について解説をしている。また、デンタルブックからは、院内掲示ポスターをダウンロードできるので、院内掲示とともに自院のウェブサイトに掲載する際に活用していただきたい。

【インタビュー】山下 泰子氏(文京学院大学名誉教授・法学博士)

【インタビュー】低迷する日本のジェンダーギャップ解消へ 「根本的に転換できる」(前編)/山下 泰子氏(文京学院大学名誉教授・法学博士)

 「戦後民主主義教育の洗礼を受けた」―。戦中・戦後と歴史的な社会の変化とともに幼少期を過ごす中で、自らの人権意識が醸成されたと語る文京学院大学・山下泰子名誉教授(86歳)。社会に出た時の経験をきっかけに、ジェンダー法の道を歩むようになり、現在も女性差別撤廃条約の選択議定書批准を目指し、精力的に活動する。2回にわたり、日本のジェンダー問題や課題解決に向けた取り組みについて聞いた。聞き手は、協会の早坂美都副会長。

―ご自身の生い立ちやジェンダー問題に関心をもったきっかけを教えてください。

1945年に国民学校に入学し、終戦を迎えた8月15日を境に教科書を墨塗りして使うようになり、小学生ながらに価値観の転換を体感しました。1947年に日本国憲法が施行され、基本的人権や男女平等についてしっかり学びました。そんな中、中央大学法学部を卒業しても、4年制大卒の女性の就職は厳しく、ようやく採用された貿易会社も、社員教育から男女差別がありました。毎日、お茶くみと社長のお昼のお運びに明け暮れて、1年で退職。大学院に戻って国際人権法を学ぶことにしました。

戦時中の教科書―終戦とともに価値観の変化が訪れた

―社会の変遷やご自身の原体験が今の活動に通じているのですね。その後はどのような歩みを。

1979年に国連で女性差別撤廃条約が採択されたのを機に、条約に関する研究を始めました。1985年5月、国会で女性差別撤廃条約批准案件の審議中に、国際法学会で「女子性差別撤廃条約における男女平等」を報告。同年7月、ケニアのナイロビで開催された第3回世界女性会議NGOフォーラムに参加し、圧倒的な女性たちのエネルギーに接し、「女性の力が社会を変える」と確信したことから、女性差別撤廃条約を研究テーマに決めました。振り返ると、人生のターニングポイントで社会的な矛盾を感じたことが、私を女性差別撤廃条約の研究に向かわせたのだと思います。

―改めてジェンダーについて教えてください。
ジェンダーとは、「生物学的な性・セックス(sex)」に対する、「社会的・文化的に構築された性別(gender)」とされています。ジェンダーの概念は、日常生活の中に組み込まれ、考え方や振る舞い方の中に潜む性差別=男性優位の考え方を形成し、家父長制の基盤となっているものだと考えます。しかし、これは人間が生み出したものなので、根本的に転換できるはずです。国際社会におけるジェンダー平等に向けた取り組みの加速に反して、日本は取り残され、世界経済フォーラムの「Global Gender Gap Report」2024年版で、世界146カ国中118位と低迷しています。

―日本の課題はどこに。

2024年10月、日本における女性差別撤廃条約の実施状況の審議が、国連女性差別撤廃委員会(CEDAW、於ジュネーブ)で行われました。その結果、60項目の「総括所見」が日本政府に示されました。総括所見には、2年以内に勧告を実施するための措置を取り、CEDAWに報告しなければならない項目が4つあります。
1つ目は、選択的夫婦別姓の導入。夫婦の姓については、総括所見で民法の改正を要請されるのが今回で4回目です。1996年には、法制審議会の改正要綱までできていますが、それからでも29年が経過しており、対応が遅すぎます。約95%もの女性が旧姓を失って困難に直面している事実に向き合うべきです。
2つ目は、暫定的特別措置として女性の立候補時の供託金の減額。ずばり「女性が国会議員に立候補するために必要な300万円の供託金を減額すること」を勧告しています。
3つ目は、緊急避妊を含む安価で近代的避妊法へのアクセス。16、17歳の少女が避妊薬を入手するために親の同意を得るという要件を撤廃することを含め、すべての女性と少女に、緊急避妊薬を含む安価な近代的避妊法への適切なアクセスを提供することを勧告しています。中絶の方法にも問題があります。
4つ目は、妊娠中絶における配偶者の同意要件の削除。世界203カ国・地域のうち、配偶者の同意が法的要件とされているのは、日本ほか11カ国のみ、G7では日本のみです。国際基準から遅れている日本の状況を変えなければなりません。

―女性差別撤廃条約に関する運動の展開を。

これまでに「女性の権利を国際基準に」という点を念頭にNGO団体を3つ設立しました。まず1997年設立の「国際女性の地位協会」。条約の研究・普及を目指して条文のコンメンタール(法律文書に対する注釈書)2冊とその英訳他、研究成果の出版、年報の発行、シンポジウムの開催などを通じ、国際的な動向を周知するよう努めてきました。2つ目は2002年に結成した「日本女性差別撤廃条約NGOネットワーク」。CEDAWにNGOレポートを提出し、日本の実施状況についての審議がある時には、ニューヨークやジュネーブに傍聴に行き、その結果の総括所見を政府が実行しているかをウォッチし、評価表を作成してCEDAWに提出するなど、差別を受けている女性とCEDAWをつなぐ役割を担っています。3つ目は2019年結成の「女性差別撤廃条約実現アクション」で、「選択議定書の批准」をシングルイシューにしています。日本が女性差別撤廃条約を批准してから40年経過しますが、条約の実効性を高めるための「選択議定書」は批准していません。批准により「個人通報制度」「調査制度」が有効になります。条約上の権利が侵害されて、最高裁まで行っても救済されない場合には、個人通報制度を利用して、直接、個人がCEDAWに申し立てをすることができるようになります。CEDAWは裁判所ではないので、出される「見解」(勧告)に法的拘束力はありませんが、各国政府によって65%ほどは実行されています。

2024年10月、ジュネーブで行われた国連女性差別撤廃委員会を傍聴した日本女性差別撤廃条約NGOネットワークの一団(写真提供:JNNC)

―日本が長らく選択議定書に批准しないのはなぜでしょうか。

最大の要因は、ポリティカル・ウィル(政治的意思)がないことです。2024年10月のCEDAWでの日本報告審議の際、選択議定書の批准について、日本政府の対応状況やタイムライン(見通し)について尋ねられた外務省の担当者は、「23回にわたり、個人通報制度関係省庁研究会を開催するとともに、諸外国における個人通報制度の導入前の準備や準備の実態などについて調査などを行っています。(中略)引き続き政府として各方面から寄せられる意見を踏まえつつ、早期締結について真剣に検討してまいりたいと考えてございます」と回答しました。ここ数年の国会答弁とまったく変わらず、NGO席から失笑が漏れました。タイムラインについては、2020年の事前質問事項で聞かれているのに、4年経っても進展がなく、真剣に検討しているとはいえません。
(後編へ続く)

Profile
やました・やすこ/東京都生まれ。法学博士、文京学院大学名誉教授、ジェンダー法学会元理事長。国際女性の地位協会名誉会長、日本ネパール女性教育協会理事長、男女共同参画社会づくり功労者内閣総理大臣表彰(2015)、外務大臣表彰(2017)。

▼過去のインタビュー記事を読む

5月末までに再届出をしなければ<外安全1、外感染1(旧外来環)> <口管強(旧か強診)>の施設基準が失効してしまいます!

5月末までに再届出をしなければ<外安全1、外感染1(旧外来環)> <口管強(旧か強診)>の施設基準が失効してしまいます!

2024年度診療報酬改定以前に「外来環」「か強診」を届け出ていた保険医療機関は、院内掲示事項をウェブサイトに掲載するなど、新たな要件を満たし、531日までに再届出をする必要がある。再届出をしなければ、531日をもって施設基準が失効するので、注意してほしい。

また、ベースアップ評価料の届出を行った医療機関は改善計画書、実績報告書の提出が必要となる。

◆忘れていませんか?施設基準の再届出

2024年度診療報酬改定で、歯科外来診療環境体制加算(外来環)が、歯科外来診療医療安全対策加算(外安全)と歯科外来診療感染対策加算(外感染)に再編された。また、かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所(か強診)は口腔管理体制強化体加算(口管強)に改変されている。

改定以前、「外来環1」や「か強診」を届け出ていた保険医療機関は、531日までに新たに施設基準の要件を満たし、再届出をする必要がある。研修について、外安全1、外感染1の再届出に当たり再受講は必要ないが、口管強は、「エナメル質初期う蝕、根面う蝕の継続管理等に係る研修」「小児の心身の特性に関する研修」を追加で受講したうえで再届出が必要になるので注意が必要である。未受講の会員は、5月開催の追加研修を受講いただきたい。再届出がない場合、施設基準が失効し、61日以降は算定できないことになる。

自院の届出受理状況は関東信越厚生局ホームページから確認できる。ぜひ、施設基準要件など詳細は協会ホームページ「施設基準の再届出特設ページ」をご覧いただきたい。

◆「賃金改善計画書」の作成と提出

2025年3月3日までにベースアップ評価料の届出を行った医療機関は、「賃金改善計画書」を6月30日まで、「賃金改善実績報告書」を8月31日までに提出しなければならないことが、このほど厚生労働省から示された。
ここでは、「賃金改善計画書」「賃金改善実績報告書」の作成と提出方法について解説する。詳細は厚生労働省の「ベースアップ評価料等について」をご参照いただきたい。

(1)24年度分(賃金改善開始〜25年3月まで)の「ベースアップ評価料収入」と「賃金改善措置による賃金増加分」を確認する。

①ベースアップ評価料収入(ベースアップ評価料算定金額)の集計

ベースアップ評価料の算定を開始してから25年3月までの、ベースアップ評価料収入の金額を集計する。

②賃金改善措置による賃金増加分(賃金改善実績額)の計算賃金改善をしたことによるベースアップ評価料対象職員の賃金増加分(全員の合計額)を計算する。

③前記①の「ベースアップ評価料収入」と②の「賃金改善措置による賃金増加分」の差額を計算差額を参考にしながら、必要に応じて、24年度の賃金改善計画における対象職員へのベア等の金額を見直すことができる。もし、「ベースアップ評価料収入分」に余りが出ている場合には、余り分は25年度に繰り越して、25年度の賃金改善分に用いる必要がある。

25年度の賃金改善計画において、繰り越し分プラス25年度の「ベースアップ評価料算定金額見込み」により、ベアなどの金額(対象職員の基本給などにかかる1カ月の賃金改善見込み額)を再度調整する。

(2)630日までに25年度分の「賃金改善計画書」を届け出る。

ベースアップ評価料を届け出ている医療機関は、「賃金改善計画書」を毎年4月に作成して、630日までに、地方厚生(支)局に届け出る必要がある。「賃金改善計画書」は、届出様式のエクセルファイルに含まれている。ベースアップ評価料(Ⅰ)のみを届出している医療機関は評価料Ⅰ専用届出様式を用いる。

(3)831日までに24年度分の賃金改善実績報告書を届ける。

前年度にベースアップ評価料を届け出ている医療機関は、前年度分の「賃金改善実績報告書」を作成し、831日までに、地方厚生(支)局に届け出る必要がある。

ベースアップ評価料特設ページに掲載されている「報告書専用様式」のエクセルファイルを用いて、賃金改善実績報告書を作成する。

東京都医療機関等物価高騰緊急対策支援金(2025年4月~9月分)について

東京都の「東京都医療機関等物価高騰緊急対策支援金(2025年度)」の概要のご案内です。

歯科診療所78,000円/施設の支給となります。

概要(抜粋)
1 対象事業者
(1) 健康保険法第63条第3項第1号に定める歯科診療所(保険医療機関)
―略―
(4) 歯科技工所
 歯科技工士法第21条第1項の規定に基づき開設届出のなされた歯科技工所のうち、2の対象期間内において、保険診療に係る案件を歯科医師に納品する予定である歯科技工所に限る。

2 交付対象期間
 2025年4月1日から2025年9月30日まで

3 支援金の基準単価
 支援金の額は、対象医療機関等ごとに以下の基準単価をもとに算出する。

光熱費 歯科診療所  78,000円

歯科技工所   39,000円

4 スケジュール(予定)
歯科診療所・歯科技工所

① Jグランツによる申請スケジュール

6月中旬から下旬頃 支援金関連要綱及び様式の公表
   10月上旬頃 交付申請兼実績報告受付開始 
   10月下旬頃 交付申請兼実績報告受付締切
   12月~ 支援金支給 

注)既にGビズIDを取得している方はそのIDを使用します。改めて取得する必要はありません。

② 書面による申請スケジュール

6月中旬~下旬頃 支援金関連要綱及び様式の公表
8月下旬~10月上旬頃 Webによる事前申込受付開始(申込内容の審査完了後、順次交付申請兼実績報告提出の御案内を送付)
10月下旬頃 交付申請兼実績報告受付締切
12月~ 支援金支給

5 その他
(1)申請開始時には支援金のコールセンターを設置予定
(2)東京都医療機関等物価高騰緊急対策支援金 案内ページ(東京都)
https://www.hokeniryo.metro.tokyo.lg.jp/iryo/jigyo/h_gaiyou/iryo-bukka

6 Jグランツ・GビズID
申請手続に当たってはデジタル庁が運営する補助金申請システムjGrants(Jグランツ)を活用します。

Jグランツについて(東京都の案内ページより)
Jグランツの活用により、いつでも・どこでも補助金申請を行うことが可能となり、交通費・郵送費等のコスト削減や、過去に申請した情報の入力・書類への押印が不要になるなど、事業者の皆様における手間やコスト削減に繋がります。
Jグランツでの申請には、GビズID(gBizIDプライム)の取得が必要となりますので、未取得の場合は下記URL より御準備いただきますようお願いいたします(取得に2~3週間ほどかかります)。
 【参考:G ビズID】 https://gbiz-id.go.jp/top/

協会でG ビズIDの取得手順をまとめました
以下の「Gビズ IDプライム申請方法」をクリックしてご覧ください。
注)PDFファイルです。動画ではありません。
★ こちらをクリック ⇒ Gビズ IDプライム申請方法

Jグランツに関する問合せ先
0570-023-797
【受付時間】9:00~17:00(土・日・祝日、年末年始を除く)

東京歯科保険医新聞2025年(令和7年)4月1日号

東京歯科保険医新聞2025年(令和7年)41日号

こちらをクリック▶「東京歯科保険医新聞」2025年(令和7年)4月1日号

【お詫び】本紙「東京歯科保険医新聞」第661号(4月1日号)の7面記事「3つのポイントで全身疾患等回避を/医療安全講習会で雨宮啓氏が強調」にて、以下の表記誤りがありました。お詫びして訂正させていただきます。※ホームページでは、訂正済みの紙面を公開しています。
誤:アドレナリン1.8mlCt
正:アドレナリン含有リドカイン塩酸塩製剤1.8mlCt

 【新聞4月号】

 1面】

  1.高額療養費制度問題 患者を守れ 「生きることを諦めることに」

  2.健康保険証発行終了後も低いマイナ保険証の利用率 窓口業務増大を訴える声も

  3.協会が皆さまの助けに 未入会の先生をご紹介ください 組織部長 福島 崇

  4.東京歯科保険医協会第53回定期総会ご案内

  5.「探針」

  6.ニュースビュー

 2面】

  7.歯科診療報酬/期中改定・4月からの変更点 口腔機能指導加算など引き上げ、算定区分を再編

 3面】

   8.物価・人件費高騰が深刻な問題に/「物価高騰に関する医療機関の緊急調査」集計結果で明らかに

  9.「貯金切り崩し、治療と生活」(1面から続く)

10.東京都 医療機関緊急対策支援金15万円/実績報告期限は44日 お忘れなく!

 4面】

11.経営・税務相談Q&A No.427「歯科医師・歯科衛生士の新規採用の届出と注意事項」

12.書籍「2025年版保険医の経営と税務」会員は1冊無料/2025年度最新の税務対応版を発行!

13.分科会・ポスターセッション演題募集/第40回 保団連医療研究フォーラム

14.4月会員無料相談のご案内

15.デンタルブックPR

 5面】

16.研究会・行事ご案内

17.春の会員優待PR

 6面】

18.家計が厳しい今こそ、患者負担の軽減を/受診抑制打開へ向け青い歯科署名” 420日までにご返送ください

 7面】

19.3つのポイントで全身疾患等回避を/医療安全講習会で雨宮啓氏が強調

20.生産性向上・職場環境整備等支援事業の案内を協会ホームページに掲載

21.施設基準を新規届出するために/歯初診や外安全・口管強など施設基準講習会を開催

22.新版を無料配布中/大好評!「知って得する」パンフ/意外と知らない控除・減免・払い戻しがまる分かり

23.特集は追いつめられる歯科医師たち「月刊保団連」4月号

 8面】

24.教えて!会長!! Vol93/接着カンチレバー装置とは

25.6回メディア懇談会/「時代に逆行」高額療養費制度問題

26.IT相談室/AIとは何か

 9面】

27.症例研究「CAD/CAMインレー修復に対する光学印象法について」

 10面】

28.震災と歯科医師~東北・能登の現状~/能登・被災診療所のいま(後編)「被災1懸念は高齢避難者の口腔機能低下」石川県保険医協会副会長:平田米里(平田歯科医院)「石川県創造復興プラン」提言の賛同へのお願い(協会理事:矢野正明)

29.会員投稿「声」/保険医がワイン審査 売上の一部は紛争地へ「第1回ドクターアワード」

 11面】

30.118回歯科医師国家試験/2136人が合格 合格率は70.3%に

31.神田川界隈「診療報酬の決め方」(理事・松島良次/目黒区)

32.理事会だより

33.通信員便りNo.149

34.協会活動日誌

 12面】

35.退き際の思考 歯科医師をやめる(小柳浩子さん)「患者のための医院譲渡『真心いただいた』協会が守り神に」

36.春の共済募集キャンペーン中!/会員だけの特別な制度にご加入ください!

「能登・被災診療所のいま(後編)/ 被災1年―懸念は高齢避難者の口腔機能低下」

「能登・被災診療所のいま(後編)/ 被災1年―懸念は高齢避難者の口腔機能低下」

 石川県保険医協会副会長  平田 米里/平田歯科医院

 

3月11日、東北地方を中心に甚大な被害をもたらした東日本大震災から14年が経過した。2024年は元旦に能登半島地震が発生し、石川県保険医協会会員の歯科診療所が被災した。地域医療の一端を支える各地の歯科保険医は、こうした災害とどのように向き合ってきたのか。宮城県保険医協会・井上博之理事長、石川県保険医協会・平田米里副会長に綴ってもらい、今回は平田氏の後編を掲載する。

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◆地道な活動で被災会員の傷を

この1年、石川県保険医協会はどのような活動をしてきたのでしょうか?義援金を届けるばかりではなく、政府広報資料の迅速かつ正確な情報提供に努めてきました。それも大事ですが、今、私が思うに、協会事務局による会員の安否確認に始まり、被害状況の聞き取り、その後の状況把握など、何度も現地に足を運び、被災した会員と直接言葉を交わしながら、強い関係性を構築してきたことが最も大切な活動であったのではないでしょうか。こうした地道な活動によって被災した会員の心の傷を少しは癒すことができたのではないかと思っています。

後に、能登総合病院の口腔外科医の危惧を紹介します。彼は言います。「確かに発災直後は歯科診療車に代表されるような緊急対応が必要だった。1年を経過した今、仮設暮らしの通院困難な高齢者の口腔機能低下が心配だ。その分野の歯科需要は、今後の課題として浮上してくる。対応を準備しなければならない」―と。

能登には仮設住宅で暮らす人のほかに、遠方に避難したまま、意に反して帰宅できないでいる人も多い(事実、避難所の多くは既に閉鎖され、現在は仮設住宅に移っている方がほとんど。石川県内では202412月末時点で少なくとも2699人が仮住まいや避難を余儀なくされている)。石川県の創造的復興プランにみられるような抑制的予算に縛られることなく、今こそ、能登に住み続けたいと願う人に、国が本来の責務を果たすべきでしょう。(完)

輪島市の仮設住宅―。現在もなお、多くの人々が仮設住宅での生活を余儀なくされている

2024年9月21日の能登半島豪雨後の輪島市役所前の状況

 

「石川県創造復興プラン」提言の賛同へのお願い

「『石川県創造復興プラン』検討会議」は2024731日、石川県が策定した「石川県創造的復興プラン」に対して「提言」をまとめ、石川県に提出しました。

この提言には「住み続ける権利の保障」=「被災者・地域住民が、どこに、だれと住むか、どのように住むかを自己決定し、自分らしく生き、自己の願い・希望を実現することを人権として保障する」という視点から、県復興プランに対して9項目の提言を行っており、東京歯科保険医協会も団体として賛同しています。同検討会議では、広く賛同者を募集しています。ご賛同いただける方は、下記URLからお申し込みをお願いします。

「石川県創造的復興プラン」に対する提言への賛同はコチラ

<当協会・矢野理事より>

東日本大震災の時と違い、能登半島地震に対して具体的には何もすることができませんでした。1年以上経過しても復興への道は見えてきません。せめて被災地域への一助となればと思い私も復興プランの提言に賛同しました。ぜひ皆さまもご協力ください。

【IT相談室】AIとは何か/医療分野への波及・影響は…

【IT相談室】AIとは何か/医療分野への波及・影響は…

AI」と聞くと何を思い浮かべるでしょうか。本物そっくりのニセ動画?プロも敵わない囲碁や将棋などのボードゲーム?「AIでなくなる仕事ランキング」などの特集記事?

今回は、なんとなくドキドキするけれど、具体的なイメージが定まらないAIと歯科の関わりについて解説していきます。

◆AIは「知能」か

AIは、「人工知能」(Artificial Intell-igence)の略となります。正確で疲れを知らないコンピューターですが、指示した通りの動作しかしない点は機械やロボットと変わらず、人工知能とは呼べません。

例えば、製品などを検品する機械は以前からありましたが、AI出現以前は色や大きさなど、数値化できる基準で良品と不良品を区別していました。

医療の世界では、AIの実用例として読影支援があります。AIは、数値化や数式化できない微妙な違いを読み取り、注意すべきかどうかを「判断」することで、診断を支援します。

◆17年にブレークスルー

2017年に発表された、ビートルズの曲名をもじった「Attention Is All You Need」という画期的な論文により、AIは一気に実用化されました。

AIは何十年も研究されてきましたが、技術的なブレークスルーが起きたことで、大きく進化しました。過去のAIやプログラミングの考え方とは大きく異なり、実用に耐える技術になりました。

◆歯科での応用例

歯科の世界でもAIが取り入れられています。また、診療以外でも活用できるAI関連のサービスも多くあります。

第6回メディア懇談会「時代に逆行」高額療養費制度問題/メディア側は負担引き上げ問題に危機感

第6回メディア懇談会 「時代に逆行」高額療養費制度問題/メディア側は負担引き上げ問題に危機感

「命の選別につながる話」「国際的な趨勢を見ても時代に逆行した制度」と参加者から厳しい言葉が相次いだ。314日、協会が開催した第6回メディア懇談会では高額療養費の患者負担引き上げの問題について、報道関係者と活発な議論が交わされた。

題解説に当たった本橋昌宏副会長は、協会が石破茂総理大臣、福岡資麿厚生労働大臣に宛てた自己負担限度額引き上げ撤回の要請書などをもとに、患者らが厳しい状況に置かれかねないと、危機感を示した。参加者からは、「借金して窓口負担を払わなければならない。ほとんどの人に『治療を受けない』という選択肢が浮かぶ世界になってしまう」との意見や、諸外国の事例と比べても「外すことができない制度」と、高額療養費制度の重要性について触れる意見があった。

一方で、高額な費用がかかる治療が患者にもたらす効果については「追及されていないと思う。その治療が本当に意味があるのかどうか、チェックしてはどうか」との意見もあった。

また、厚生労働省による生産性向上・職場環境改善を目的とした給付金(18万円)や、東京都による物価高騰対策の支援金(15万円)も議題として取り扱った。「医療機関にとって1518万円はどんな意味があるのだろうかと思う。それがなければやっていけないという気持ちも分かるが、こうしたことを毎回繰り返していて良いのだろうか。医療制度の根幹が機能していくのだろうか」と単発的な支援金の在り方を疑問視する声もあがった。

 この日は44名のメディアが参加し、早坂美都副会長が司会を務めた。

教えて!会長!! Vol.93/接着カンチレバー装置とは

教えて!会長!! Vol.93/接着カンチレバー装置とは

Q 2024年度診療報酬改定で新設された「接着カンチレバー装置」とは。

A 新たに保険収載された「接着カンチレバー装置」は、保険では、M017ポンティックの算定留意事項通知(6)のイの(ト)に「隣接歯などの状況からやむをえず、支台歯1歯およびポンティック1歯による接着カンチレバー装置を製作する場合は、切歯(上顎中切歯を除く)の1歯欠損症例において、支台歯を生活歯に求める場合に限り認められる」と記載されました。なお、24426日付け厚生労働省保険局医療課の事務連絡「疑義解釈の送付について(その3)」の中で、「接着カンチレバー装置」は「ブリッジに該当する」と明記されました。この事務連絡前の同年41日に公益社団法人日本補綴歯科学会(以下、補綴学会)が通知した「接着カンチレバー装置の基本的な考え方」では、「いわゆる『ブリッジ』と近似した装置であるが、(中略)ブリッジとは異なる装置として定義する」と示されています。したがって、学術名称と保険用語が異なっていることになり、患者さんに説明する際などには注意が必要です。

また、同年412日の事務連絡「疑義解釈の送付について(その2)」では、「接着カンチレバー装置とは、次の要件を全て満たす補綴装置」とされています。前記と重複する点もありますが、次のように明記しています。

  • 支台装置が接着冠であること

②支台歯及びポンティックがそれぞれ1歯ずつの2ユニット型の接着ブリッジであること

③上顎中切歯を除く切歯の1歯欠損症例において,隣在歯等の状況からやむをえず製作するものであること

なお、「接着カンチレバー装置」の製作にあたっては、公益社団法人日本補綴歯科学会の「接着カンチレバー装置の基本的な考え方」を参考とすること

 

Q 補綴学会の「接着カンチレバー装置の基本的な考え方」とは。

A 補綴学会ホームページの「雑誌刊行物」→「診療ガイドライン」→「1.おしらせ」の中に「接着カンチレバー装置の基本的な考え方」の記載があります。適応症例がありましたら、確認することをお勧めします。以下に、抜粋して紹介します。

・適応症 保険診療における「接着カンチレバー装置」を適用できる症例は、上顎中切歯を除く切歯1歯欠損で支台歯となる隣在歯が健全な症例である。すなわち、装置の欠損部位(ポンティックとなる歯)は上顎側切歯と下顎切歯の計6歯のうちの1歯である。装置の数に制限は設けないが、2歯連続の欠損は本装置の適応症としない。このため、上顎2装置、下顎2装置が一口腔内における最大装置数となる。また、支台歯が歯周疾患に罹患していない症例であること、あるいは支台歯が歯周疾患に罹患している場合であって、歯周基本治療等が終了し、歯周組織検査により動揺および歯周組織の状態等から支台歯としての機能を十分維持しうるとの判断がなされた症例を適応症とする。

・禁忌症 従来の接着ブリッジでは、動揺が顕著である支台歯は、接着界面に剥離応力や回転応力が加わりやすくなるため、禁忌症例とされていた。しかしながら、接着カンチレバー装置では、ポンティックと支台装置が支台歯と共に動くため剥離応力や回転応力が加わりにくく、Ⅰ度程度の動揺度であれば許容しうる。ただし、咬耗が顕著である歯列、咬合が緊密である歯列、ブラキシズムを有する症例では予後不良と思われるため、他の補綴装置を検討するのが望ましい。齲蝕罹患傾向の高い患者は 装着後も口腔内に露出した歯面から齲蝕が発生する可能性があり、避けた方が良い。

・設計の基本原則と留意事項()保険診療における接着カンチレバー装置は支台装置1個とポホンティックからなる2ユニットとする。形成はエナメル質の範囲内を原則とする。形成デザインとしては、 ①可能な限り被着面積を大きくする、②歯質削除量は最小限とし、できるだけエナメル質の被着面とする、③歯肉側フィニッシュラインは歯周組織に悪影響を及ぼさないよう歯肉縁から1㎜程度離す、④切縁側のフィニッシュラインは支台歯の透明感を損なわないよう切縁から1㎜程度離す―などが原則であり、これらは接着ブリッジにおける形成デザインと共通する。

・使用材料 金属材料としては歯科鋳造用12%金銀パラジウム合金を用いる。ポンティックの前装材料としては健康保険適用の間接修復用コンポジットレジンを用いる。

・咬合調整 四接着カンチレバー装置は、咬合に配慮する必要がある。ポンティック部に過大な応力が加わると、支台歯への荷重負担は必然的にブリッジタイプ以上に大きくなる。本装置を咬合に関与させる場合、支台歯の負担が過重とならないよう、下記のような調整を行う。

①ポンティック部に早期接触がないように調整し、安定した咬合接触を与える。ただし無咬合とはしない

②ポンティック部の咬合接触は1点とする

③ポンティック部には偏心運動時の滑走部位をつくらない

④支台歯では、歯質とメタルフレームの双方に咬合接触を与える

以上ですが、抜歯後であれば欠損粘膜の治癒期間や審美性回復を目的とした暫間補綴についての記載がないことが残念です。さらに、レジン歯などを使用した暫間補綴が保険で評価されていないことが問題であることを付記しておきます。

東京歯科保険医協会

会長 坪田 有史

※「東京歯科保険医新聞」2025年4月号掲載

3つのポイントで全身疾患等回避を/医療安全講習会で雨宮啓氏が強調

3つのポイントで全身疾患等回避を/医療安全講習会で雨宮啓氏が強調

協会は227日、「歯科医師と歯科衛生士とで学ぶ臨床歯科麻酔学︱全身疾患やストレスによるリスクを回避する3つのポイント︱」をテーマに、藤沢歯科ペリオ・インプラントセンターの雨宮啓氏を講師に迎え、医療安全講習会を開催。会場9名、WEB76名の合計85名が参加した。

まず雨宮氏は、歯科麻酔学的配慮として、歯科治療を受けることによる精神的ストレス、局所麻酔薬や内服薬(抗菌剤や鎮痛剤)の使用、超高齢化や生活習慣病の増加により、生体予備力の低下したハイリスク患者の治療などで起こる偶発症があると説明。

次に、虚血性心疾患患者の局所麻酔薬は血管収縮薬に注意する。健康成人の基準投与量はアドレナリン含有リドカイン塩酸塩製剤1.8mlCt換算8.8本であるが、肥大型心筋症や甲状腺機能亢進症、重症糖尿病患者にはアドレナリン無添加麻酔薬の使用が好ましく2022年より伝達麻酔も保険適用追加になったスキャンドネストⓇなどを活用する。心血管疾患患者の局所麻酔下における治療時合併症は90分を超えると増加するので、手術時間は90分以内にとどめ、疼痛や精神的ストレスを与えない配慮が必要なことを解説した。

さらに、今年2月に開催された厚生労働省の歯科衛生士の業務のあり方等に関する検討会での歯科衛生士による局所麻酔行為に関して「歯科診療の補助行為とみなされ、歯科衛生士法に違反しない」との考え方を紹介した上で、現在の歯科衛生士学校では局所麻酔行為を実施する教育は行っていないと説明。同検討会では歯肉縁上、縁下歯石除去(SRP)時の疼痛除去を目的とする場合としてはどうかとされていること、さらに麻酔実施の研修内容案が示されたと説明した。

会員アンケートからも「解りやすい説明でよく理解できた」と好評だった。

◆講演の模様を動画配信中

講師のご厚意により、講演を動画配信しているので、ぜひ、ご覧いただきたい。視聴にはデンタルブックアカウントが必要。

歯科診療報酬/期中改定・4 月からの変更点 口腔機能指導加算など引き上げ、算定区分を再編

歯科診療報酬/期中改定・4 月からの変更点 口腔機能指導加算など引き上げ、算定区分を再編

 1.期中改定

診療報酬の期中改定が41日から実施され、歯科衛生実地指導料の口腔機能指導加算、歯科技工士連携加算がそれぞれ2点、10点引き上げられた。

これは、高齢化の進展などにより歯科診療のニーズが増加している中、歯科診療所などで、より専門的な業務を行う歯科衛生士、歯科技工士を確保し、限られた人材で歯科医療を効率的に提供する観点から、歯科衛生士、歯科技工士の業務に関する評価を見直したものである。具体的な内容は以下の通り。

【各点数の算定要件】

◆口腔機能指導加算の主な算定要件

口腔機能の発達不全を有する患者または口腔機能の低下を来している患者に対して、主治の歯科医師の指示を受けた歯科衛生士が、実地指導と併せて口腔機能に係る指導を行った場合に加算する。

◆歯科技工士連携加算1の主な算定要件

施設基準に適合するものとして届け出た保険医療機関において、レジン前装金属冠、レジン前装チタン冠またはCAD/CAM冠を製作することを目的として、前歯部の印象採得を行うに当たって、歯科医師が歯科技工士とともに対面で色調採得および口腔内の確認などを行い、補綴物の製作に活用した場合に加算する。

◆歯科技工士連携加算2の主な算定要件

施設基準に適合するものとして届け出た保険医療機関において、レジン前装金属冠、レジン前装チタン冠またはCAD/CAM冠を製作することを目的として、前歯部の印象採得を行うに当たって、歯科医師が歯科技工士とともに情報通信機器を用いて色調採得および口腔内の確認などを行い、補綴物の製作に活用した場合に加算する。

2.4月からの変更点

【算定区分の再編】

4月1日から電子処方箋の導入の有無によって、医療DX推進体制整備加算(医DX)が3区分から6区分に、在宅医療DX情報活用加算(在DX)が2区分に再編された。

電子処方箋を導入していない場合でも引き続き算定することが可能となったが、マイナ保険証の利用率が引き上げになる。

電子処方箋を導入している医療機関は、44日(必着)までに、施設基準の再届出が必要であったが、導入率は東京の歯科診療所で1%しかないので、再提出は稀なケースといえる。

また、202410月以降のマイナ保険証利用率の実績要件は、附帯意見を踏まえ、7月を目途に検討、設定される予定。なお、両加算を初めて算定するには施設基準の届出が必要である。

◆医DXに用いる利用率

医療DX推進体制整備加算の算定に用いられるマイナ保険証利用率の実績は、支払基金から毎月通知されるメールまたは医療機関等向けポータルサイトで確認できる。

なお、利用率については、35カ月前のうち数値が最も高い月の「レセプト件数ベースマイナ保険証利用率」を用いる。

3.5月末までに再届出が必要な施設基準(外安全、外感染1、口管強)再届出をしなければ施設基準が失効

2024年度診療報酬改定で、歯科外来診療環境体制加算(外来環)が歯科外来診療医療安全対策加算(外安全)および歯科外来診療感染対策加算(外感染)に再編された。また、かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所(か強診)が口腔管理体制強化加算(口管強)に改編されている。

改定以前に外来環やか強診を届け出ていた保険医療機関は、新たな施設基準の要件を満たし、再届出をする必要がある。再届出がない場合は、531日をもって施設基準が失効するので、ご留意願いたい。

詳細は協会ホームページ「施設基準の再届出 特設ページ」)をご覧いただきたい。両届出に必要な用紙も当該ホームページに掲載しているので、ご利用いただきたい。

【再届出に追加で必要な研修や主な要件】

◆外安全

・日本医療機能評価機構が行う、歯科ヒヤリ・ハット事例収集等事業に登録または医療事故、インシデント等を報告、分析し、その改善策を実施する体制を整備している

・院内掲示事項を原則としてウェブサイトに掲載している

◆口管強

・エナメル質初期う蝕、根面う蝕の継続管理等に係る研修(※)

・小児の心身の特性に関する研修(※)

・過去1年間に歯管(口腔機能発達不全症または口腔機能低下症の管理を行う場合に限る)、実地指の口腔機能指導加算、小機能、口機能または歯リハ3を併せて12回以上算定している

※協会では、再届出に必要な両研修を「追加研修」として実施している。詳細は、本ホームページ「研究会・行事のご案内」コーナーをご覧いただきたい。

【疑義解釈(その22) 2025年3月24日】

◆外安全

(問)歯科外来診療医療安全対策加算について、「疑義解釈資料の送付について(その4)」(令和65 10 日事務連絡)別添4の問2において、本登録までに時間を要する場合であって、歯科ヒヤリ・ハット事例収集等事業への参加登録の申請を行い、「参加登録申請書」の郵送を行った場合は、仮登録である旨を届出書添付書類(様式4)に記載すれば届出を行うことができるとされているが、当該機構の Web ページから参加登録の申請のみを行い、「参加登録申請書」の郵送を行っていない場合についてはどのような対応をすればよいのか。

(答)当該機構の Web ページから参加登録の申請のみを行い、「参加登録申請書」を郵送していない場合は、当該施設基準を満たさないため、当該機構へ「参加登録申請書」の郵送を行う必要がある。

なお、当該事業に参加するためには、当該機構の Web ページで参加登録の申請を行った上で、当該機構へ「参加登録申請書」を郵送する必要があり、本登録が完了すると本登録が完了した旨の電子メールが当該機構から送信される。また、本登録完了から約1か月程度で、本登録が完了した歯科医療機関(参加登録歯科診療所)として、当該機構の Web ページに掲載される。

(参考)公益財団法人日本医療機能評価機構「歯科ヒヤリ・ハット事例収集等事業参加登録歯科診療所一覧

4.4月1日からの薬価改定実施内容

2025年度の中間年改定(2年ごとの診療報酬改定のない年に行われる薬価改定)は、過去2回の中間年改定と違い、改定の対象範囲を医薬品のカテゴリごとに、①新薬創出加算対象品目、②新薬創出加算対象外の新薬、③長期収載品、④後発医薬品、⑤その他―の5つに分けて設定された。

今回の改定による薬剤費の削減額は9,320品目2,466億円としている。協会で作成した41日からの薬価点数表を「デンタルブック」のデンタル書庫に掲載しているので、ご活用いただきたい。

(例)ペリオクリン歯科用軟膏1シリンジ 53点→52

   ロキソニン細粒101g 2点→1

東京歯科保険医協会 第53回定期総会 ご案内

東京歯科保険医協会 第53回定期総会ご案内

第53回定期総会を下記の日程で開催します。参加方法などは本紙や協会ホームページなどで順次お知らせしますので、ご案内までお待ちください。なお、記念講演には、東京新聞記者の長久保宏美氏が登壇し、 「 マイナ保険証と保険証廃止―担当記者の2年間」をテーマにご講演いただく予定です。
◆開催日時◆
・2025年6月15日(日)午後2時30分~7時45分
・総会議事 午後2時30分~4時15分

・記念講演 午後4時30分~6時00分
      講 師:長久保宏美氏(東京新聞社会部編集委員)
      テーマ:「マイナ保険証と保険証廃止―担当記者の2年間」
・懇 親 会 午後6時15分~7時45分
・開催場所 TKP市ヶ谷カンファレンスセンター
      (住所:新宿区市谷八幡町8番地 TKP市ヶ谷ビル)

高額療養費制度問題患者を守れ/「生きることを諦めることに」

高額療養費制度問題患者を守れ/「生きることを諦めることに」

「薬をやめたら、生きることを諦めることになる」「一生懸命に闘病し、生きようとしている人たちの望みを切り捨てるようなやり方だ」―。

3月13日、国会議事堂前に集まった患者らが、高額療養費制度の負担限度額引き上げの問題について強く訴えた。

この日、全国保険医団体連合会(保団連)が開いた国会前集会には約150人が集まり、医師・歯科医師のほか、患者や駆け付けた国会議員が声を上げた。

◆「貯金切り崩し、治療と生活」

がんで7年間闘病している水戸部裕子氏は、「治療のために働く時間を削り、しかも十分に働けない。そんな方はたくさんいます」と患者の苦労を明かし、「このままでは若い人たちが希望を失ってしまいます」と、負担限度額の引き上げに反対する意見を述べた。また、別の患者は「薬の副作用のために仕事を辞め、アルバイトをして貯金を切り崩しながら、治療と生活を成り立たせています」と話し、引き上げの白紙撤回を求めた。

また、国会議員からは「見送るということは復活があり得る。絶対に白紙撤回させていかなければならない」「多くの方から高額「療養費の問題についてお声をいただいている。皆さんと力を合わせて白紙撤回を求めていきたい」などの発言があった。

最後には保団連の森元主税副会長(当協会理事)を中心に、国会議事堂に向かって参加者でシュプレヒコールを行った。

◆高額療養費問題協会は首相らに要請書

高額療養費制度の上限額引き上げを巡っては、2025年度政府予算案に盛り込まれ、一時、258月から所得区分に応じて上限額が引き上げられることが決まっていた。しかし、患者団体などからの反発を受水戸部裕子氏け、37日に石破茂首相が引き上げ見送りの方針を発表した。

なお、この問題に関連して、協会は213日付けで石破首相、福岡資麿厚生労働大臣宛に要請書「高額療養費制度の見直しは『一部修正』ではなく撤回を」を提出していた。

協会が皆さまの助けに/未入会の先生をご紹介ください

協会が皆さまの助けに/未入会の先生をご紹介ください

組織部長 福島 崇 

今春3月は、生産性向上・職場環境整備等支援事業やそれに伴うベースアップ評価料の届出、その他、医療DX加算や口管強、外安全と外感染の再届出などさまざまな施設基準のお問い合わせが例月よりも多く寄せられました。改めて、「協会を頼りにしていただいている」ことを実感しています。しかしながら、近年の物価高騰にはとても対応できないほど低く抑えられている診療報酬の状況の中、オンライン請求やオンライン資格確認、マイナ保険証への移行など医療のDX化、頻繁に変わる施設基準などへの対応を理由に歯科医院を閉院される会員が増加しており、非常に憂慮しています。このまま診療報酬が低く抑えられたままでは、歯科医院の経営を継続させること自体が難しくなってしまいます。

また、次々に新しい施設基準が創設されていくことに対し、歯科医師の裁量が強く縛られていくような感覚を抱く先生も多くいらっしゃるのではないでしょうか。このような現場の苦しい状況を、東京都や国に対して伝えていかなければいけませんが、一人ひとりの声ではなかなか届きません。協会は、そのような会員の先生方の声を集め、しっかりと東京都や国に届けていきます。

また、新規開業された先生方の中には、新規個別指導の詳しい状況をご存じで、そのことを心配され、協会にご入会をいただく先生も増えています。厳しい指導を受けるのではないかと不安を抱く声をたくさんいただきますが、しっかりとルールを理解し、適切な保険診療を行っていれば、その先生が再指導などの対象になってしまうことはないと思います。そのためにも、ご入会いただいた先生には、保険診療の基礎とカルテ記載などが勉強できる「新規開業医講習会」へのご参加をお勧めしています。

◆保険診療の基礎は「新規開業医講習会」で

協会は必ず皆さまの助けになります。もし、身近にご入会されていない先生がいらっしゃいましたら、ぜひ、ご紹介ください。また、この案内をご覧になられている未入会の先生がおられましたら、この機会にご入会をご検討ください。

医科歯科連携研究会/糖尿病は歯科も含む統括管理が必須

医科歯科連携研究会/糖尿病は歯科も含む統括管理が必須

東京歯科保険医協会と東京保険医協会、千葉県保険医協会の共催による医科歯科連携研究会202422日、「糖尿病診療・歯周病対策の最前線」をテーマに開催。会場とWEB参加合わせ128名が参加した。

医科から栗林伸一氏(医療法人社団三咲内科クリニック理事長)、歯科からは山本龍生氏(神奈川歯科大学歯学部社会歯科学系 社会歯科学講座口腔衛生学分野教授)が講演した。

栗林氏は、「糖尿病診療の現状と対策~治療薬の画期的進歩と咀嚼機能維持を踏まえて~」と題し、最新の糖尿病患者のデータや管理、治療薬の特徴について解説した後、生活習慣病管理料(Ⅱ)の問題点に言及。歯科との関わりとして、咀嚼機能維持の重要性や、歯科の定期受診の有無により、糖尿病腎症の進行度に差があることなどを報告。糖尿病は歯科介入も含む統括的管理が必須とした。

栗原伸一氏

次いで、山本氏は、「歯周病対策の最前線予防の重要性と糖尿病を踏まえた医科歯科連携」と題し、歯周病の病変について解説した後、歯周病治療にはブラッシングが最も重要で有益であることを報告した。また、歯周病と全身疾患の罹患率と糖尿病の関係についてのガイドラインにも触れ、歯周治療の重要性を訴えた。

山本龍生氏

参加者からは、「糖尿病と歯周病の理解が深まった」「積極的な医科との連携が重要と再確認した」などの感想が寄せられた。

★なお、当日の講演は、デンタルブックで公開中。ぜひご覧ください。

https://dentalbook.tokyo-sk.com/member/public/MemberAuth_input

東京歯科保険医新聞2025年(令和7年)3月1日号

東京歯科保険医新聞2025年(令和7年)3月1日号

こちらをクリック▶「東京歯科保険医新聞」2025年(令和7年)3月1日号

【新聞3月号】

【1面】
  1. 東京の〝低い〞保険収益を改善へ 総枠拡大へ現場の訴えを届けよう
  2. マイナ保険証8割が「メリット感じず」 9割が健康保険証廃止に反対
  3. 石破総理・福岡厚労大臣に向け/高額療養費制度の見直し撤回を 要請書提出
  4. 東京歯科保険医協会 第53回定期総会のご案内
  5. 12.2以降のマイナ保険証窓口トラブル調査 ご協力のお願い
  6.「探針」
  7. ニュースビュー

【2面】
  8. 医療DX加算 4月から見直し
  9. 高額療養費制度/引き上げ対象は 全年代の全所得階層
10. 厚生労働省医療指導監査室/2025年度に高点数個別指導実施の公算 事務連絡で「高点数」の運用を明記
11. 歯科用貴金属改定情報(3月~) 金パラは引き上げに

【3面】
12. 総枠拡大には何が必要なのか? 会員調査から考える現制度の問題点
13. 確定申告個別相談会/定額減税、賃上げ促進税制にも解説
14. 確定申告は「定額減税」に注意! 記入を忘れずに

【4面】
15. 経営・税務相談Q&A No.426「採用に関するQ&A~新規採用の定着・解雇・退職~」
16. 東京都の医療機関向け支援金/追加受付の要望書を提出 〝煩雑申請〞で手続き漏れ医療機関も
17. 会員無料相談
18. 東京反核医師の会映画上映会のご案内 「生きて、生きて、生きろ。」
19.『杳かなる』上映情報

【5面】
20. 教えて!会長!! No.92/立憲民主党の「保険証復活法案」について                  
21. 通信員便りNo.148
22.  IT相談室「ステルスマーケティング その規制事例を見る/ネットの口コミとの向き合い方」 
23. 理事会だより
24. 協会活動日誌

【6面】
25. 研究会・行事ご案内
26. デンタルブックPR
27. 会員優待サービス

【7面】
28. 記念講演/東京反核医師の会が第37回総会 ガザ地域での医療支援の現状報告
29. 医科歯科連携研究会 糖尿病は歯科も含む統括管理が必須
30. 神田川界隈「台湾有事で全島避難?」(理事・矢野正明/板橋区)
31. マンガで学ぶ/アラフォーのリスク対策(健康編)

【8面】
32. 震災と歯科医師~東北・能登の現状~/「14回目のありがとう」宮城県保険医協会理事長:井上博之(松島海岸診療所)
33. 震災と歯科医師~東北・能登の現状~/能登・被災診療所のいま(前編)「再建襲った豪雨にも屈せず 地元のため奮い立つ会員」石川県保険医協会副会長:平田米里(平田歯科医院)

【IT相談室】ステルスマーケティング/その規制事例を見る/ネットの口コミとの向き合い方

IT相談室】ステルスマーケティング その規制事例を見る/ネットの口コミとの向き合い方

日本でも2023101日から、通称「ステマ規制」と呼ばれるステルスマーケティング規制が導入されました。2024年の違反事例をベースにご説明します。

ステマを一言で説明すると「やらせ記事」です。インフルエンサーと呼ばれる、いわゆる有名人に依頼して商品やサービスについて有利な記事をSNSなどに投稿させ、依頼したことを隠して、その投稿を宣伝していく手法です。

2024年66日に消費者庁から大森の内科医院に、Googleの口コミについて是正の措置命令が出されました。来院した患者に口コミを依頼すること自体は違法ではありませんが、星5つの投稿をすると予防接種費用を割引することを引き替えに、口コミの投稿内容の決定に関与したことなどが問題とされたようです。このことは、医療広告ガイドラインに抵触する事象です。

本件について消費者庁や大森医師会からは、6月初旬にホームページなどで報告があったにも関わらず、当該医院のホームページでは1216日付けでの報告となり、対応の遅さも目立ちました。

◆信頼性はそれほどないネット投稿の実態

無記名で自由に投稿できるGooleの口コミは、本来それほどの信頼性はありません。見る側もそれを理解して判断するものであり、医療機関となればなおさらです。診療やサービスの結果として現れる多くの反応の一つとして捉えておくべきではないでしょうか。

※次回は歯科とAIの関わ りについて考察します。

クレセル株式会社

(東京歯科保険医新聞202412月号4面掲載)

【教えて! 会長!!  Vol.92】立憲民主党の「保険証復活法案」について

【教えて! 会長!! Vol.92】立憲民主党の「保険証復活法案」について

Q 立憲民主党が「保険証復活法案」を衆議院に提出したそうですね。

 立憲民主党は2025年1月28日に「医療保険の被保険者証等の交付等の特例に関する法律案」(以下、保険証復活法案)を衆議院に提出しました。これは、従来の「紙の保険証」の新規発行を再開して健康保険証として復活させ、マイナ保険証との併用を可能とすることを目的としています。

当会が取り組んできた請願署名「現行の健康保険証を残してください」の署名にご協力いただいた先生には、心から感謝申し上げます。お手元に署名用紙がある方は、当会までご返送いただくよう、ご協力をお願い申し上げます。集めていただいた署名は、当会活動の重要な柱「国会行動」を通じ、署名に賛同していただける与野党の国会議員に要請を行います。その際、特にご協力いただける議員には、本署名をお渡しし国会に提出していただいています。この活動の模様は、既に本紙などで報告し、ご協力いただいた国会議員も紹介しています。署名の趣旨や内容上、野党議員に国会提出していただいていますが、その野党議員には多くの立憲民主党所属議員がいます。少なからず当会のこれらの活動が背景となり、立憲民主党が「保険証復活法案」を衆議院に提出されたと考えています。

Q 「保険証復活法案」の内容を教えてください。

 立憲民主党は、「医療分野のデジタル化を推進する立場」であることが前提です。協会もデジタル化そのものに反対しているわけではありません。その上で「国民の不安払拭など一定の条件が整うまでは、従来の健康保険証を使えるようにすべき」という内容です。

政府は2412月2日に健康保険証の新規発行を終了し、マイナ保険証への一本化を推進しました。しかし、マイナ保険証の利用率は2412月時点で約25%にとどまっていることから、立憲民主党は「国民の間に浸透していない」と評価しました。そこで本法案は、資格確認の安全性、国民世論、または高齢者や障害者などへの影響を考慮して十分な環境整備が整うまで、従来の保険証の発行を復活させるべきだとしています。したがって、保険証復活法案は、新規発行が終了された健康保険証の再発行を期限を定めて認め、マイナ保険証との併用を可能とする内容となっています。

Q 期限はどのように決めるのですか。

 以下の結果に基づいてその期限を決めるとしています。

①電子資格確認による被保険者などであることの確認が安全かつ確実に行われるための環境整備の状況

②被保険者などが療養を受ける際の保険証の利用の状況

③保険証の廃止が高齢者および障害者をはじめとする被保険者などに支障を及ぼさないようにするための施策の策定および実施の状況

④保険証の廃止に関する国民世論の動向、そのほかの事情を勘案して検討する

本稿執筆時には、通常国会で来年度予算の成立に向けて与野党協議が行われています。したがって、立憲民主党は本法案について、国会会期中の6月までの成立を目指し、野党各党に協力を呼びかけています。

当会は不偏不党の立場を明確に宣言していますが、多くの声を立法府に届ける活動により、賛同して協力していただいた議員らに感謝する意味もあり、当会の主張に沿った法案が提出されたことを紹介させていただきました。

東京歯科保険医協会

会長 坪田有史

※「東京歯科保険医新聞」2025年3月号掲載

5月31日までにホームページに掲載すべき事項について

5月31日までにホームページに掲載すべき事項について

2024年度診療報酬改定で保険医療機関は書面掲示することとされている事項について、5月31日までに原則としてウェブサイトに掲載しなければならなくなりました。
※4月25日に「令和6年度診療報酬改定において経過措置を設けた施設基準の取扱いについて」の通知が出され、6月1日以降も引き続き算定する場合の期限に変更がありました。
5月31日→6月6日と変更されています。
期限が延びましたが、お早めのご対応をお願いします。
<参考>「令和6年度診療報酬改定において経過措置を設けた施設基準の取扱いについて」

掲載すべき項目は以下の通りです。

○ 厚生局に届け出た施設基準
○ 明細書の発行状況に関する掲示
○ 物品の販売等であって患者から費用の支払を受けるものに関する事項(当該費用の支払が法令の規定に基づくものを除く)

○ 保険外併用療養費に関するもの
  ・ 金属床による総義歯に係る費用徴収その他必要な事項
  ・ う蝕に罹患している患者の指導管理に係る費用徴収その他必要な事項
  ・ う蝕に罹患している患者の指導管理に係る費用徴収その他必要な事項
  ・ 長期収載品(後発医薬品のある先発医薬品)の処方

自ら管理するウェブサイトを有しない保険医療機関は対象外です。

デンタルブックでは、院内掲示ポスターがダウンロードできます。
院内掲示ポスターの内容を活用してHPにも掲載してください。
各医院に適したものをダウンロードしてご利用ください。


① デンタルブックにログインし、「デンタル書庫」を選択

 
② 「デンタル書庫」内の「院内掲示ポスター/患者配布チラシ」を選択


③ 必要な施設基準をダウンロードし、ご利用ください。PDFやPowerPointデータなどでもダウンロードできます。

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東京都の医療機関向け支援金/追加受付の要望書を提出  〝煩雑申請″で手続き漏れ医療機関も

東京都の医療機関向け支援金/追加受付の要望書を提出 〝煩雑申請″で手続き漏れ医療機関も

東京都は20251月から、物価高騰に直面する医療機関などの負担軽減に向けた緊急対策として、都内に開設している医療機関などに対し、支援金支給事業を行った。

支援金の交付申請は、事前に申込手続きが必要で、なおかつWEBによる手続きが前提となるなど、これまでの申請手続きとは異なる方法で行われた。また、支援金申込期間は19日間と短く、コールセンターも繋がりにくいなど、混乱が広がった。

協会には、支援金の申込受付が締め切られた127日以降「都へのWEB申込ができなかった。申請はもうできないのか」などの問い合わせが寄せられた。今回の支援金の申請に関しては

(1)jGrantsを利用した申請手続きが複雑であった

(2)WEB申請が前提となった

(3)申請期間が短かった

などの対応困難な状況により、申し込みができなかった医療機関が発生した。中には、jGrantsの申請だけを行ってしまった医療機関もあった。

この支援金事業は、物価高騰に直面する医療機関などの負担軽減に向けた緊急対策として行われており、物価高騰に苦しむすべての医療機関が受給するべきものだ。

東京都も支援金の周知に当たり、ハガキを送るなど一定の試みをしてはいるが、申し込みができなかった医療機関が発生してしまった。そのため協会は東京都に対し、医療機関等物価高騰緊急対策支援金の手続き漏れの医療機関を対象に、支援金受付の2次募集を実施するよう求める要望書を214日に提出した。

震災と歯科医師 —東北・能登の現状②—  「能登・被災診療所のいま(前編): 再建襲った豪雨にも屈せず地元のため奮い立つ会員」/石川県保険医協会副会長  平田 米里/平田歯科医院

震災と歯科医師 —東北・能登の現状②—

 「能登・被災診療所のいま(前編)/ 再建襲った豪雨にも屈せず地元のため奮い立つ会員」

  石川県保険医協会副会長  平田 米里/平田歯科医院

能登半島地震によって、七尾市以北の歯科医療機関は何らかの被害を受け、ある地区では、電気が回復しても上下水道が破壊されたまま。またある地区では、電気の復旧すらできぬ故に長期にわたり機能停止となりました。再開できても周辺人口の減少で診療時間の短縮を余儀なくされたケースも多いです。さらには、地域全域が壊滅的被害を受け、発災から1年を経過しても住民の帰還もままならない中で、たとえ再建を目指しても、将来の見通しが立たず不安だと吐露する方もいます。

◆生きていたことが奇跡

半島の西にある、重要文化財の總持寺祖院で有名な輪島市門前町。その地で寺の門徒代表でもある後輩の歯科医師が、発災時に2分間にも及ぶ長いトルネードのような激しい振動に襲われ、「前半は神や仏が自分に課した『試練』と思い込もうとしたが、後半はあまりの長さと激しさのあまり、不謹慎にも『怒り』に変わった」と表現しました。それも頷けます。なにせ、彼の自宅はぺしゃんこに潰れ、生きていたことが奇跡と思える有様でした。心に深い傷を負ったにもかかわらず、比較的早く再開に漕ぎつけたのは、自らの生活と地域の医療を守ろうという彼の執念だったのでしょうか。

門前町から少し西に移動した海岸一帯は黒島地区。セメントで造られた堤防らしき囲みの内側は、海水が消え250m沖合まで砂浜となりました。その北には4mの隆起と報道された鹿磯漁港は海底の岩が露出。地震のエネルギーの大きさがいかに巨大なものかと思い知らされます。門前町に隣接する南側は原発のある志賀町。原発は休眠中でしたが、それでも「海にも空にも逃げられなかった」と避難計画の見直しについて町長が発言したのです。松本清張の推理小説「ゼロの焦点」の舞台となった「ヤセの断崖」や「巌門」も近く、崖崩れも発生。一度、観光がてら現地を訪ねてみてください。

半島の東端にある珠洲市ですが、最も甚大な被害を受け、生業再建はおろか、未だに公費解体も半分程度しか進んでいません(今年110日時点で最も進んでいる珠洲市が60.3%、輪島市が34.1%)。住民の帰還は現場の肌感覚では半分と認識されています。珠洲市は上下水道が長く途絶えていた(今でも一部は仮設トイレ)ため、歯科診療所の再開が遅れに遅れた地区。5軒のうち、1軒は頑健な建物だったため配管の一部損傷程度の被害に留まり、上水道の復旧の後には半日診療程度の再開ができました。今年1月にさらに1軒が午前中診療に漕ぎつけました。2月には仮設商店街の一角で、3軒目も再開しましたが、資金に余裕がないため、倒壊した旧診療所から使える機材(ユニット1台に流し台一式程度は使えたものの、レントゲンや滅菌機は壊れました)を業者の協力を得て運び出して 、再出発したのです。今後の設備投資や診療時間延長などは、患者さんの動向を見てからの判断にならざるを得ませんが、3年後には、その仮設店舗さえ退去を強いられることに「理不尽だ」との思いを漏らしています。

◆人口減少による閉院も

輪島の市街と珠洲市の間の山間に輪島市町野町があります。私の友人歯科医師が長く開業してきた地区です。発災直後、テレビに安否不明者として彼の名が流れたときは衝撃を受けました。我々関係者の動揺をよそに、彼は避難所となった寒々とした体育館で、歯科医師としての使命からいち早く口腔ケアを始め、歯科衛生士の奥さんは避難所のトイレの汚物処理を続けていたことを後で知りました。町野町は北前船で栄えた「時国家」の屋敷に近く、土地の地名にもなっている姓を背負った彼は、逃げ出すわけにもいかない、怯むわけにもいきません。早くから再建を目指し動き始めたのです。「石川県なりわい再建支援補助金」の申請に悶絶しながら、家屋や診療所の再建を担う職人の手配に奔走し、しばらくして、もう一歩というところまで漕ぎつけました。

しかしその矢先、921日の集中豪雨に襲われたのです。そばを流れる河川が氾濫し、床上170cmの泥水が真新しい壁を流し、至る所を泥で埋めました。普通なら、ここで挫折してもおかしくない…。だが彼は、地元のために奮い立ちました。ただ同じ地区のもう1軒の歯科診療所は、人口減少などにより昨年12月末で閉院してしまいました。(続く)

震災と歯科医師 —東北・能登の現状① —/「14回目のありがとう」 宮城県保険医協会理事長  井上 博之/松島海岸診療所

震災と歯科医師 —東北・能登の現状① —

≪はじめに≫

3月11日、東北地方を中心に甚大な被害をもたらした東日本大震災から14年が経過した。2024年には元日に能登半島地震が発生し、石川県保険医協会会員の歯科診療所が被災した。地域医療の一端を支える各地の歯科保険医は、こうした災害とどのように向き合ってきたのか。被災当時の様子や、復興への道のりを宮城県保険医協会・井上博之理事長、石川県保険医協会・平田米里副会長に綴ってもらった。なお、両氏ともにお原稿を本年2下旬におまとめいただいた点にご考慮をいただきたい。

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「14回目のありがとう」

  宮城県保険医協会理事長  井上 博之/松島海岸診療所

今年も3.11が近づいてきました。もう14回目になるのですね。忘れっぽい私ですが、14年前のこの日に始まる一連の記憶だけははっきりしています。この日がなければなかったであろう、現在の私を想うときでもあります。

私は、診療中に松島町で被災しました。それでも無事に避難し、その夜は松島湾内の小島に打ち砕ける津波の様子を眺めながら、高台のホテルで過ごしました。その後、徐々に他の地域の被災者の悲惨な状況を知るにつれて、私は大層恵まれていたのだと気付かされました。無事だった私は、診療所のスタッフとともに、翌日から避難所巡りを始めました。その後、県外からの医療支援を受けながら3カ月、県内各地の避難所の歯科医療支援を続けました。松島海岸診療所での歯科診療が再開してからは、外からの支援スタッフに頼ることが多くなりました。

活動地域は、松島町の他、東隣の東松島市とその東の石巻市の避難所でした。県外から来られた支援者たちは、頼れる人たちでした。その中で、とても印象深かったのは、東京歯科保険医協会から派遣されてきた方々でした。避難者への支援の在り方や実際の活動など、多くのことを学ばせていただきました。また、この活動地域が、その5カ月後から今日まで、私が訪問診療専任の歯科医として13年余り活動を続けてきた診療圏となりました。

当初は、「歯科でも往診してもらえるのですか」という声ばかりが聴こえました。被災直後、福祉避難所への支援で繋がりのできた介護施設での歯科診療を皮切りとして、特養などから次々と依頼が来るようにもなりました。医科や介護関係のスタッフとも連携できるようになってきました。3.11があったから、今の私の歯科訪問診療があるのです。

◆県外からの支援が力に

私がパート医として勤める東松島市の歯科医院の院長は、津波で全壊となった診療所の再建を決意された背景について、「東京からのご支援に大きく支えられた」と語っています。あの時、県外からのご支援はとても大きな意義がありました。

現在の被災地は、誰を守るのか分からない巨大な防潮堤がある一方、高台に移住して数年、今では住民が生活に落ち着きを取り戻したこともあり、現段階での復興の評価はさまざまです。その中でも、大震災当時の被災者と支援者の心温まる交流は、無形の財産を築いたのだと思います。被災地の311日は、犠牲者を悼む日であるとともに、「ご支援いただきありがとうございました」と声を挙げたくなる特別な日として今後も続いていくことでしょう。

確定申告個別相談会/定額減税、賃上げ促進税制にも解説

確定申告個別相談会/定額減税、賃上げ促進税制にも解説

協会は220日、確定申告個別相談会を開催し、協会顧問税理士が個別に会員4名から確定申告相談を受けた。「確定申告をする前の最終的な確認をしたい」「特措法26条を活用したい」などの相談や、2024年に導入された定額減税、賃上げ促進税制の解説を求める会員もいた。

参加者からは「毎年自分で確定申告をしているので(協会の税理士による相談会は)心強い」「年々、追加・変更される制度について詳しく説明をしてもらえるので安心」などの感想が寄せられた。

厚生労働省医療指導監査室/2025年度に高点数個別指導 実施の公算 事務連絡で「高点数」の運用を明記

厚生労働省医療指導監査室/2025年度に高点数個別指導 実施の公算 事務連絡で「高点数」の運用を明記

厚生労働省保険局医療課の医療指導監査室は127日付で各地方厚生局医療課に対し、「令和7年度における高点数を理由とする個別指導について」の事務連絡を出した。これは、2025年度に実施される「高点数」を理由とする個別指導の取り扱いを示したもの。

事務連絡では、個別指導は「指導大綱どおり実施する」としているが、集団的個別指導については2023年度に集団的個別指導を実施した保険医療機関のうち、2024年度も高点数保険医療機関に該当した医療機関を2025年度の個別指導の対象とした。

ただし、「高点数」による個別指導の実施に当たっては、2025年度に対象となる保険医療機関の上位より概ね半数程度(最大で上位4%程度)を選定した上で、さらに2019年度の平均点数が上位から概ね8%の範囲にある保険医療機関を対象とする。

コロナ禍の影響で、2020年度以降は「高点数」を理由とした個別指導は行われていなかったが、2024年度から指導の実施が計画された。協会が、関東信越厚生局東京事務所に開示請求した資料では、2024年度指導計画において8件が予定されていた。そこから推察すると、2025年度においても厚労省の事務連絡に基づき、「高点数」による個別指導が計画されると考えられる。

協会では、今後も行政資料の開示請求などを通じて、会員に個別指導の現状を周知していく。

◆3月30日(日)の新規開業医講習会をぜひ受講してください

なお、保険診療やカルテ記載などについて改めて確認したいと考える会員にも330()に新規開業医講習会を開催するので、ぜひ参加いただきたい。詳しくは、本ホームページの「研究会・行事」コーナーをご覧いただきたい。

医療DX加算 4月から見直し

医療DX加算 4月から見直し

初診料に対する加算である医療DX推進体制整備加算(医DX)と在宅医療DX情報活用加算(在DX)が4月診療分から見直される。施設基準において電子処方箋を発行する体制を有していることの経過措置が2025331日までとされていたが、電子処方箋の導入が進んでいないことから、41日以降については電子処方箋の要件なしの区分が設けられた。電子処方箋を導入していない医療機関の点数に変更はない。

なお、マイナ保険証利用率の実績要件は4月から引き上げられる。具体的には、10月以降の実績要件は7月を目途に検討され、設定されることになる。

社会保障審議会医療保険部会で示された電子処方箋の導入状況は、25112日現在、病院311施設(3.9%)、医科診療所8,172施設(9.9%)、歯科診療所1,010施設(1.7%)に留まっており普及が進んでおらず、低調である。

また、昨年1219日、電子処方箋で医師の処方と異なる薬剤が薬局で表示される不具合が生じたことから、システムを停止し、導入済みの医療機関・薬局に一斉点検を求めるという事案が発生した。電子処方箋導入済みの医療機関では、処方箋発行の有無にかかわらず、マイナ保険証受け付け時にシステムに自動アクセスするが、そのたびにエラーで受付処理が止まるなどの混乱を来した。当初、点検は同20日から24日とされたが、点検期間は延長され、システム再開は27日になった。電子処方箋の導入率が低い段階で既に問題が起きていることから、拙速な導入推進は時期尚早と言わざるを得ない。